股付き衣類
【課題】屈曲動作時に膝蓋骨にかかる負荷を軽減し、膝関節の安定した動きをサポートする。
【解決手段】ボトムウエア部2と、緊締ベルト部3と、膝蓋サポート部4とを有する股付き衣類であり、ボトムウエア部2、緊締ベルト部3、膝蓋サポート部4の3つの部分の緊締力、伸長性を対比したときに、緊締ベルト部の緊締力が膝蓋サポート部の緊締力よりも大きく、かつ膝蓋サポート部の緊締力がボトムウエア部の緊締力よりも大きく、膝蓋サポート部の伸長性が緊締ベルト部の伸長性よりも小さく、かつ緊締ベルト部の伸長性がボトムウエア部の伸長性よりも小さい。
【解決手段】ボトムウエア部2と、緊締ベルト部3と、膝蓋サポート部4とを有する股付き衣類であり、ボトムウエア部2、緊締ベルト部3、膝蓋サポート部4の3つの部分の緊締力、伸長性を対比したときに、緊締ベルト部の緊締力が膝蓋サポート部の緊締力よりも大きく、かつ膝蓋サポート部の緊締力がボトムウエア部の緊締力よりも大きく、膝蓋サポート部の伸長性が緊締ベルト部の伸長性よりも小さく、かつ緊締ベルト部の伸長性がボトムウエア部の伸長性よりも小さい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、股付き衣類に関し、特に、スポーツ用股付き衣類に適用されるものである。
【背景技術】
【0002】
図12に示すように、膝関節は膝伸展機構を有する。膝伸展機構は、膝蓋骨、膝蓋骨に末端部が接続される大腿四頭筋、膝蓋骨から下方に伸びて頚骨上端の前面(頚骨粗面)に接続される膝蓋靭帯等の複合体からなり、大腿四頭筋や膝蓋靭帯が縮退して膝関節が直立し、伸長して屈曲する。従来のスポーツ用股付き衣類のなかには、このような膝関節の直立、屈曲(屈伸)運動をサポートするものがあった。
【0003】
例えば、特許文献1には、膝蓋骨に対応する膝の前面を左右から挟み込むように緊締力の強いサポート部を設け、このサポート部によって膝関節の屈伸運動における筋肉の動きをサポートするスポーツ用股付き衣類(スポーツ用スパッツ)が開示されている。
【特許文献1】特開平10−110306号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで膝関節が直立した状態では、図12(a)に示すように体重は主として頚骨に支えられ、膝伸展機構にはあまり負荷がかからない。しかし膝関節が屈曲動作している時には同図(b)に示すように膝伸展機構の膝蓋骨に大きな負荷がかかってしまう。特に、ランニング等のスポーツでは瞬間的に大きな衝撃が発生するため、この衝撃が局所的に膝蓋骨に伝わり、非常に大きな負荷がかかる。
【0005】
しかしながら従来のスポーツ用スパッツでは筋肉の伸縮をサポートすることはできても、膝蓋骨にかかる負荷を十分にサポートすることはできなかった。また膝蓋骨にかかる負荷が十分にサポートされないために、膝関節の屈伸運動が不安定になっていた。そのため、膝蓋骨が十分に保護され、屈伸運動の際の不安定感が解消されるような股付き衣類が強く要望されていた。
【0006】
本発明は、以上の問題を解消するためになされたものであり、屈曲動作時に膝蓋骨にかかる負荷を軽減し、膝関節の安定した動きをサポートできる股付き衣類を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、少なくとも脚部の一部を被覆し、脚部の形状に応じて伸縮するボトムウエア部と、ボトムウエア部に取り付けられるとともに膝蓋骨に対応する膝蓋エリアの内側及び外側に設けられ、脚部の上下方向に伸長し、収縮力を発生させる緊締ベルト部と、緊締ベルト部で挟まれた膝蓋エリアを被覆し、膝関節の屈伸運動に応じて伸縮する膝蓋サポート部とを有し、ボトムウエア部、緊締ベルト部、膝蓋サポート部の3つの部分の緊締力、伸長性を対比したときに、緊締ベルト部の緊締力が膝蓋サポート部の緊締力よりも大きく、かつ膝蓋サポート部の緊締力がボトムウエア部の緊締力よりも大きく、膝蓋サポート部の伸長性が緊締ベルト部の伸長性よりも小さく、かつ緊締ベルト部の伸長性がボトムウエア部の伸長性よりも小さいことを特徴とする股付き衣類である。
【0008】
本発明では、緊締力が最も大きいが、伸長性が膝蓋サポート部とボトムウエア部との中間の大きさになる緊締ベルト部が膝蓋エリアの内側と外側に配置され、脚部の上下方向に伸長し、収縮力が働いて締め付ける。そのため、膝関節が直立状態から屈曲状態に移行するときには、屈曲動作を必要以上に拘束することなく伸長し、膝関節が屈曲状態から直立状態へ移行する時には、強い収縮力が働いて膝関節の屈伸運動を効果的にサポートする。それにより、動的快適性(動作したときの皮膚との密着性)を保ちつつ膝関節の屈曲動作に対するサポート性も奏する。
【0009】
また緊締力が緊締ベルト部とボトムウエア部との中間の大きさであって、伸長性が最も小さい膝蓋サポート部が膝蓋エリアを被覆する。そのため、膝関節の屈伸動作時にボトムウエア部よりも大きな応力が膝蓋エリアにかかり、その応力によって膝蓋骨にかかる負荷を軽減する。
【0010】
更に緊締力が最も小さく、伸長性が最も大きいボトムウエア部によって股付き衣類全体での締め付け感や圧迫感を最低限に抑えつつ、股付き衣類全体でのフィット感を維持する。
【0011】
また、本発明における上記緊締ベルト部は、膝蓋エリアの上部と下部で交叉して膝蓋エリアを囲むように設けられている伸縮帯状体によって形成されるようにしてもよい。
【0012】
このようにすれば膝蓋エリアを囲む伸縮帯状体が伸長し、収縮力が働いて膝関節の屈伸運動をサポートするようになる。
【0013】
また、本発明における上記緊締ベルト部は、膝蓋エリアの上部と下部に隙間を空けて設けられている伸縮帯状体によって形成されるようにしてもよい。
【0014】
この場合、膝蓋エリアの上部と下部に隙間を空けて設けられている伸縮帯状体によって形成されるため、膝蓋エリアの内側と外側に設けられた伸縮帯状体は互いに非接触となる。そのため、内側と外側に設けられた各伸縮帯状体が互い干渉することなく伸縮し、その伸縮によって膝関節の屈伸運動をサポートするようになる。
【0015】
また、本発明におけるボトムウエア部を構成する生地が、緊締ベルト部と膝蓋サポート部の肌側を構成するようにしてもよい。
【0016】
このようにすれば、ボトムウエア部、緊締ベルト部、膝蓋サポート部の肌側の生地が共通する。そのため股付き衣類と皮膚との間の接触力が同一となり、皮膚との密着性が高まってサポート性が向上する。
【0017】
また、本発明における緊締ベルト部の緊締力が、8000〜13000の範囲に含まれるようにしてもよい。
緊締ベルト部における緊締力の値が小さいほど、膝回りにゆとりが生じ、ゆっくりと、大きく膝を曲げる動きをする場合などに楽に動くことができ、大きいほど膝回りの生地の密着度が上がり、強いジャンプ時などの特に膝に衝撃がかかる場合や、強めの跳躍を繰り返す場合などの膝の安定性が上がる。しかし、上記数値範囲を超えた場合には、膝関節の屈伸運動の効果的なサポート性や動的快適性が損なわれてしまうようになる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、屈曲動作時に膝蓋骨にかかる負荷を軽減し、膝関節の安定した動きをサポートできるという優れた効果を期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係る実施の形態を図面に基づき説明する。なお、本発明における「上」「下」「内側」「外側」は、利用者によって正規に着用された状態を基準とし、「上」とは腰部側、「下」とは下腿部側、「内側」とは両膝関節の対向する方向、「外側」とはその逆方向を意味する。また、「膝蓋エリア」とは、膝蓋骨を中心に構成される膝伸展機構に対応する膝の前面側である。
【0020】
まず、図1、図2を参照して本発明の第1の実施の形態に係るスポーツ用スパッツ(スポーツ用の股付き衣類)について説明する。図1は、スポーツ用スパッツの正面図、図2は膝部分を中心に示すスポーツ用スパッツの側断面図、図3は膝蓋サポート部と膝蓋エリアとの関係を示す説明図である。
【0021】
スポーツ用スパッツ1は、腰部から下腿部(本実施の形態に係る脚部)までを被覆するスパッツであり、その基礎となるボトムウエア部2と、ボトムウエア部2に取り付けられるとともに膝蓋骨に対応する膝蓋エリアHの内側と外側に設けられ、脚部の上下方向に伸長し、収縮力を発生させる緊締ベルト部3と、緊締ベルト部3で挟まれた膝蓋エリアHを被覆し、膝関節の屈伸運動に対応して伸縮する膝蓋サポート部4とを有する。
【0022】
ボトムウエア部2、緊締ベルト部3、膝蓋サポート部4は、伸縮性を有する生地によって構成され、伸長すると収縮力が働いて締め付ける。また、ボトムウエア部2、緊締ベルト部3、膝蓋サポート部4は、それぞれ異なる生地によって形成され、各部の緊締力、伸長性は異なっている。
【0023】
本実施の形態で示す緊締力は、後述する生地の弾性力測定方法によって求められる。簡単に説明すると、緊締力は、布状の生地に対して垂直方向に負荷をかけたときに生じる応力の発生時からピークに達するまでの応力の積分値であり、伸長したときに発生する収縮力の大きさに対応して大きくなる。緊締力が大きいほど、圧迫感や締め付け感が強くなり、また生地が変形し難く、変形した際に元に戻ろうとする力が最も強くなる。逆に小さいほど人体の動作に追従して変形しやすくなる。
【0024】
一方、伸長性は、「JIS L 1018.14.2のカットストリップ法」に係る試験方法(以下、「規格試験」という)で求められる「定荷重時伸び率(%)」に近似し、上記試験方法のうち、以下の(a)〜(c)の内容を変更した試験(以下、「伸長性試験」という)で求められる値である。
(a) 規格試験では、「初荷重は29mN」であるが、伸長性試験では「初荷重を0mN」とした。
(b) 規格試験では「引張速度は、1分間当たり、つかみ間の距離の約100%又は50%の伸長」であるが、伸長性試験では「引張速度は、1分間当たり、つかみ間の距離の300%の伸長」とした。
(c) 規格試験では「一定荷重を加えたまま1分間放置後の印間の長さ」を測るが、「伸長性試験」では「一定荷重を加えたまま0秒間放置後の印間の長さ」を測るようにした。
【0025】
本実施の形態に係るボトムウエア部2、緊締ベルト部3、膝蓋サポート部4の3つの部分の緊締力、伸長性を対比したときの大小関係が、以下の(1)、(2)の要件を総て満足するようになっている。
(1)緊締ベルト部3の緊締力が膝蓋サポート部4の緊締力よりも大きく、かつ膝蓋サポート部の緊締力がボトムウエア部2の緊締力よりも大きい。
(2)膝蓋サポート部4の伸長性が緊締ベルト部3の伸長性よりも小さく、かつ緊締ベルト部3の伸長性がボトムウエア部2の伸長性よりも小さい。
【0026】
このように構成することで、屈曲動作時に膝蓋骨にかかる負荷を軽減し、膝関節の安定した動きをサポートできる。
【0027】
より詳しくは、緊締力が最も大きいが、伸長性が膝蓋サポート部4とボトムウエア部2との中間の大きさである緊締ベルト部3が膝蓋骨の左右の靭帯に沿って配置されている。そのため、膝関節が直立状態から屈曲状態に移行するときには、屈曲動作を必要以上に拘束することなく伸長し、膝関節が屈曲状態から直立状態へ移行する時には、強い収縮力が働いて大腿四頭筋等の縮退をサポートする。それにより、動的快適性(動作したときの皮膚との密着性)を保ちつつ膝関節の屈曲動作を効果的にサポートする。
【0028】
また緊締力が緊締ベルト部3とボトムウエア部2との中間の大きさであって、伸長性が最も小さい膝蓋サポート部4が膝蓋エリアHを被覆する。そのため、膝関節の屈伸動作時にボトムウエア部2よりも大きな応力が膝蓋エリアHにかかり、その応力によって膝蓋骨にかかる負荷を軽減する。そのためボトムウエア部2で膝蓋エリアHを被覆する場合に比べて膝関節の屈曲動作時において膝蓋骨にかかる負荷を軽減できる。つまり、膝関節が屈曲するときには伸長して膝蓋骨側(膝外エリアH)に応力をかけ、その応力で膝蓋骨を支えて保護する。
【0029】
スポーツ用スパッツ1の基礎となるボトムウエア部2は脚部全体に占める面積が最も大きく、脚部全体のフィット感や締め付け感(拘束感)に最も影響する。そのため拘束感を必要以上に大きくしないようにするために、緊締力は最も小さくなり、逆に伸長性は最も大きくなる。
【0030】
以下、スポーツ用スパッツ1の詳細を説明する。
ボトムウエア部2は、図1に示すように腰部から下腿部までの全体を被覆する形状にて形成されており、利用者の着用時に脚部の形状に応じて伸縮する。また、ボトムウエア部2は、図2に示すようにボトムウエア部2を構成する生地が、緊締ベルト部3や膝蓋サポート部4の肌側(皮膚S側)を構成している。
【0031】
緊締ベルト部3は、図1に示すように膝蓋エリアHの上部と下部で交叉して膝蓋エリアを囲むように配置されている2本の帯状の生地(伸縮帯状体31、32)を有しており、ボトムウエア部3の表面側(皮膚Sに接触する裏面に対して反対の面)に縫合されて形成されている。一方の伸縮帯状体31は、着用時に股間近傍から大腿部の前側を通り、膝蓋エリアHの上部を抜けて膝蓋エリアHの外側に至り、そこから膝蓋エリアHの下部を抜けてふくらはぎの内側に到達し、そのままふくらはぎに沿って足首まで達する。他方の伸縮帯状体32は、着用時に大転子近傍から大腿部の前側を通り、膝蓋エリアHの上部で一方の伸縮帯状体31と交叉して膝蓋エリアHの内側に至り、そこから膝蓋エリアHの下部で再び一方の伸縮帯状体31と交叉してふくらはぎの外側に達し、そのままふくらはぎに沿って足首まで達する。
【0032】
膝蓋サポート部4は、着用時を基準としたときに上下に縮径した略レンズ形状をなし、図3に示すように膝蓋エリアHにおける膝蓋骨中央Aと頚骨粗面中央Bを覆うように形成されている。
【0033】
膝蓋サポート部4の横径L1は、4cm(膝蓋骨中央Aを挟んで左右(内、外側)に2cmずつ)以上とする必要があり、特に6cm以上であると好適である。4cm未満であると膝蓋骨にかかる負荷の軽減を期待できないからでる。また、膝蓋サポート部4の縦径L2は、膝蓋骨中央Aと頚骨粗面中央Bとを覆う寸法を必要とし、日本人の標準的な体型から9cm以上とする必要がある。なお、本実施の形態では、膝蓋骨中央Aから上の縦径L21は2.5cmであり、下の縦径L22は6.5cmである。
【0034】
また、膝蓋骨の横幅、縦幅、膝蓋骨中央Aから頚骨粗面中央Bまでの寸法は、総て膝関節の直立時よりも屈曲時の方が長くなる。例えば横幅は、6.4cmから7.7cm程度になり、縦幅は5.1cmから7.7cm程度になり、膝蓋骨中央Aから頚骨粗面中央Bまでの寸法は、6.6cmから9.7cm程度になる。そのため、これらの寸法変化を許容できる範囲の寸法で形成すると好適である。
【0035】
以上の構成からなるスポーツ用スパッツ1の作用について、主に膝蓋サポート部4の作用を中心に説明する。図4は膝関節の屈伸運動中におけるスポーツ用スパッツ1の作用を説明する説明図である。
【0036】
図4(a)に示すように、膝関節の屈曲時には、膝の湾曲面に沿って膝蓋サポート部4が矢印P1方向に引っ張られて伸長する。この伸長によって膝蓋サポート部4は、膝の湾曲面に沿って膝蓋エリアHを包み込むように伸びて広がり、収縮方向に弾性力が働いて締め付けるために膝蓋エリアHに向けて一定の応力P2が作用する。この応力P2によって屈曲時に膝蓋骨にかかる負荷(特にランニング時に局所的にかかる負荷)が軽減され、屈曲動作が安定する。
【0037】
続いて同図(b)に示すように、膝関節が屈曲状態から直立状態に移行する時には、膝蓋サポート部4は縮退し、膝蓋エリアHに作用する応力P2も徐々に減少する。この時、膝蓋サポート部4は、速やかに回復し、皮膚との密着性を維持する。なお、このときに、緊締ベルト部3が大腿四頭筋等の筋肉の縮退をサポートして膝関節の屈伸動作を助ける。
【0038】
次に図5を参照し、膝関節の屈曲動作に対する負荷軽減の効果について説明する。図5は、膝周辺にかかる衝撃力を客観的に測定した第1の実験結果を示す棒グラフである。この第1の実験では、加速度計を用いてランニング中に膝にかかる衝撃力を測定しており、図5の“A”は通常のスパッツであり、“B”は本実施の形態にかかるスポーツ用スパッツであり、“C”は従来のスポーツ用スパッツである。棒グラフが高いほど、衝撃力が大きいことを意味しており、図5から明らかなように本実施の形態に係るスポーツ用スパッツ“B”の衝撃力が最も低く、膝蓋骨にかかる負荷が軽減されていることがわかる。
【0039】
次に図6を参照し、屈伸運動に対する拘束性の効果について説明する。図6は屈伸運動に対する影響(動作の妨げ)を客観的に測定した第2の実験結果を示すグラフであり、同図(a)は測定箇所の説明図であり、同図(b)は第2の実験結果を棒グラフで示している。第2の実験は、同図(a)に示すようにランニング途中における膝関節が伸びきった状態(直立状態)での膝の裏の部分の角度(deg)と、膝関節が屈曲した状態(屈曲状態)での膝の裏の部分の角度(deg)との差を算出して実験結果を求めている。棒グラフが高いほど角度差が大きく、屈伸運動に対する拘束性が低い、つまり、動的快適性が高いということを意味している。図6から明らかなように本実施の形態に係るスポーツ用スパッツ“B”は、従来のスポーツ用スパッツ“C”とほぼ同じであり、膝関節の動作を必要以上に妨げていないことを意味している。
【0040】
次に図7を参照し、本実施の形態に係るスポーツ用スパッツと従来のスポーツ用スパッツを一般モニターに使用してもらった結果について説明する。図7は、モニターから聞いたアンケート結果を示す表である。このアンケート結果によれば、膝にかかる衝撃度は圧倒的に本実施の形態にスポーツ用スパッツ“B”の方が低いと感じており(9名中8名)、また、ランニングに適しているという質問に対しても圧倒的にスポーツ用スパッツ“B”の方が優れていると感じている(9名中6名)。
【0041】
その他、本実施の形態に係るスポーツ用スパッツ“B”を使用したモニターの感想として、「膝蓋骨(膝の皿)の下にかかる衝撃が少ない。」、「膝が、ぶれにくく、安定して走れる。」、「脚を上げる(脚を前にもっていく)力が強い。」、「脚を動かし易く、走り易い。」等があった。
【0042】
以上のように本実施の形態に係るスポーツ用スパッツ1(図1〜4)によれば、膝関節の動作を不必要に妨げることがなく、体重をしっかりと支え、膝への衝撃を軽減しているために、屈曲動作時に膝蓋骨にかかる負荷を軽減し、膝関節の安定した動きをサポートできる。
【0043】
なお、一般人の約41%が運動時において膝に不安を持っており(競技者では57%)、また、下り坂や階段の昇り降りの際の屈伸動作時に膝が不安定になったり、痛みが出るのではないかと不安に思っている。そのため、本実施の形態に係るスポーツ用スパッツ1を着用することで、より安全(膝の障害を気にせず)にスポーツを楽しむことができる。
【0044】
また、本実施の形態では、緊締ベルト部3の伸縮帯状体31、32が膝蓋エリアHの上部と下部で交叉して膝蓋エリアHを囲み、上下方向に伸長し、収縮力が働いて締め付け、膝関節のぶれを効果的に抑止する。
【0045】
更に、本実施の形態では、ボトムウエア部2を構成する生地が、緊締ベルト部3と膝蓋サポート部4の肌側を構成しているために、皮膚との接触力が同一となるため皮膚との密着性が高まってサポート性が向上する。また、接触感が同一となるため、利用者に違和感を生じさせない。
【0046】
次に、本実施の形態に係るスポーツ用スパッツ1で用いた生地の緊締力の測定方法(生地の弾性力測定方法)について説明する。図8は、生地の弾性力測定方法に使用される試験装置の概略を示す正面図であり、図9は測定結果の一例を示すグラフである。
【0047】
この試験装置51は、圧縮ロードセル53の先端に圧縮子54を備えた圧縮試験機本体52と、生地70を弛みなく張架する枠材を備えた保持具55と、保持具55を圧縮子54に向けて往復動作(上下動作)させる昇降手段56(ピストンとシリンダ)とを備える。保持具55に張架された生地70は、圧縮子54に接触配置され、駆動手段56によって往復動作によって圧縮子54を押圧し、また押圧を解除する。なお、この圧縮試験機本体52は、カトーテック社製の圧縮試験機(KES−G5)からなる。
【0048】
測定時には圧縮試験機本体52は固定され、昇降手段56を駆動して保持具55を1分間に60回、1.5cmの距離を上下に往復動作させる。この上下の往復動作とともに生地70も往復動し、生地70に接触配置された圧縮子54が感知する応力の経時変化を測定した。
【0049】
図9は、駆動手段56が生地70を繰り返し上下動作させた3回分の山Mを示し、山Mの前半部分M1は、駆動手段56が保持具55を上昇させて圧縮子54に押し上げ荷重を作用させた部分に該当し、山Mの後半部分M2は、駆動手段56が保持具55を下降させて圧縮子54への荷重を解除した部分に該当する。山Mの前半部分M1の応力積分値が緊締力に相当し、縦軸で示す負荷に応じて発生する応力と、横軸で示す応力発生時から応力がピークに達する時間との積から求められる。
【0050】
次に、本実施の形態に係るスポーツ用スパッツ1の各部を構成する生地の組み合せについて説明する。図10は、スポーツ用スパッツ1を構成する生地の組み合せを変えて実験した結果を示す表であり、サンプルA、サンプルB、サンプルC、サンプルDは、本発明に係る緊締力、伸長性に関する大小関係の要件を満たし、サンプルE、サンプルFは、上記大小関係を満たしていない。そしてサンプルA〜Dについては、本発明に係る効果を有すると判定され、サンプルE,Fについては、効果無しと判定された。
【0051】
なお、各サンプルを作成するために用いた生地に関し、図10のNo.1で示す生地は「ツーウェイトリコット(a)」、No.2で示す生地は「ツーウェイトリコット(b)」、No.3で示す生地は「ツーウェイトリコット(a)とサテンパワーネットとの組み合せ」、No.4で示す生地は「ツーウェイトリコット(a)とダブルニットとの組み合せ」、No.5で示す生地は「ツーウェイトリコット(a)の3重使い」、No.6で示す生地は「ツーウェイラッセル(a)」、No.7で示す生地は「ツーウェイラッセル(b)」である。また、「ツーウェイトリコット(a)」は、エステル84.6%(56dtex)とポリウレタン15.4%(44dtex)からなり、「ツーウェイトリコット(b)」は、ポリウレタン17.1%(44dtex)とポリエステル82.9%(56dtex)からなる。また、「ツーウェイラッセル(a)」は、ナイロン75%(44dtex)とポリウレタン25%(155dtexと33dtexの組み合せ)からなり、「ツーウェイラッセル(b)」は、ナイロン(66)83%(44dtex)とポリウレタン17%(44dtexと78dtexの組み合せ)からなる。更に図10で示す効果の有無は、各サンプルを着用したモニターの過半数以上が膝蓋骨にかかる負荷の軽減を実感し、屈曲動作が安定して膝関節の屈伸動作が楽になったと感じた場合を効果有りと判定し、過半数未満の場合を効果無しと判定した。
【0052】
本実験で用いたサンプルA、B、C、Dに係る緊締ベルト部3の生地は、「ツーウェイトリコット(a)とサテンパワーネットとの組み合せ」(No.3)からなり、緊締力の値は“8380.9”となっている。膝関節の安定した動きをサポートするために、緊締ベルト部3の緊締力は“8000”以上にする方が好ましいと考えられ、サンプルA、B、C、Dの生地は、この下限値(“8000”)に近い値となっている。
【0053】
この下限値に近いほど、膝回りにゆとりが生じ、ゆっくりと、大きく膝を曲げる場合などに楽になる。そのため、下限値に近いほど、高齢者用の衣類として好適になる。一方、緊締ベルト部3の緊締力が大きくなるほど、膝回りの生地の密着度が上がり、強くジャンプする場合などの特に膝に衝撃がかかる場合や、強めの跳躍を繰り返す場合などに膝の安定性が上がる。そのため、緊締ベルト部3の緊締力が大きくなるほど、スポーツ用衣類として好適となる。
【0054】
しかし、緊締ベルト部3の緊締力が大きくなり過ぎると、伸長したときに締め付ける力が強くなり過ぎて動的快適性が損なわれてしまう可能性があるため、緊締ベルト部3の緊締力の緊締力は、“13000”以下にする方が好ましい。
【0055】
続いて、本発明の第2の実施の形態に係るスポーツ用スパッツ5について説明する。図11は、第2の実施の形態に係るスポーツ用スパッツ5の正面図である。なお、スポーツ用スパッツ5の説明において、第1の実施の形態に係るスポーツ用スパッツ1と同一の作用、効果を奏する部分等については同一の符号を付して詳細説明を省略する。
【0056】
本実施の形態に係るボトムウエア部2、緊締ベルト部6、膝蓋サポート部4の3つの部分の緊締力、伸長性を対比したとき大小関係が、以下の(1)、(2)の要件を総て満足するようになっている。
(1)緊締ベルト部6の緊締力が膝蓋サポート部4の緊締力よりも大きく、かつ膝蓋サポート部4の緊締力がボトムウエア部2の緊締力よりも大きい。
(2)膝蓋サポート部4の伸長性が緊締ベルト部6の伸長性よりも小さく、かつ緊締ベルト部6の伸長性がボトムウエア部2の伸長性よりも小さい。
【0057】
このように構成することで、屈曲動作時に膝蓋骨にかかる負荷を軽減し、膝関節の安定した動きをサポートできる。
【0058】
緊締ベルト部6は、膝蓋エリアHの上部と下部に隙間を空けて配置されているニ本の伸縮帯状の生地(伸縮帯状体61、62)からなり、ボトムウエア部2の表面側(皮膚Sに接触する裏面に対して反対の面)に縫合されて形成されている。一方の伸縮帯状体61は、着用時に股間近傍から大腿部に沿って膝蓋エリアHの内側に至り、そのままふくらはぎの内側に沿って足首まで達する。他方の伸縮帯状体62は、着用時に大転子近傍から大腿部に沿って膝蓋エリアHの外側に至り、そのままふくらはぎの外側に沿って足首まで達する。この各伸縮帯状体61、62は、長手方向(縦方向)の伸長性が大きく、横方向の伸長性が低い。
【0059】
本実施の形態に係るスポーツ用スパッツ5によれば、膝関節の動作を不必要に妨げることがなく、体重をしっかりと支え、膝への衝撃を軽減しているために、屈曲動作時に膝蓋骨にかかる負荷を軽減し、膝関節の安定した動きをサポートできる。そのため、本実施の形態に係るスポーツ用スパッツ5を着用した利用者は、より安全(膝の障害を気にせず)にスポーツを楽しむことができる。
【0060】
また、ボトムウエア部2を構成する生地が、緊締ベルト部6と膝蓋サポート部4の肌側を構成しているために、皮膚との接触力が同一となるため皮膚との密着性が高まってサポート性が向上する。また、接触感が同一となるため、利用者に違和感を生じさせない。
【0061】
更に本実施の形態では、緊締ベルト部6の伸縮帯状体61、62が膝蓋エリアHの上部と下部に隙間を空けて配置され、膝蓋エリアHの上部と下部で交叉していない(非接触である)。また、伸縮帯状体61、62の伸長性の高い方向が、膝関節の屈伸運動における筋肉の伸縮方向に沿って配置されており、屈伸運動におけるサポート性を向上できる。
【0062】
なお、第2の実施の形態に係るスポーツ用スパッツ5を構成する生地の組み合わせについては、第1の実施の形態に係るスポーツ用スパッツ1に関して行ったモニター実験の結果(図10参照)と同様の結果となった。
【0063】
以上、第1、第2の実施の形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は、以上の実施の形態のみに限定されるものではない。つまり、以上の説明では、股付き衣類の代表例としてスポーツ用スパッツについて説明したが、本発明は、スポーツ用スパッツ以外にも適用可能である。例えば、ガードル、スポーツ用タイツ、スパッツ型の水着、スポーツウエア、ストッキングおよびタイツ等の股付き衣類にも適用できる。
【0064】
また、以上の実施の形態では、ボトムウエア部2を構成する生地が、緊締ベルト部3、6と膝蓋サポート部4の肌側を構成する態様にて説明したが、肌側を構成する生地をそれぞれ別の生地として縫合させて形成するようにしてもよい。つまり、ボトムウエア部2、緊締ベルト部3、6、膝蓋サポート部4を所定の生地からなる所定形状のパーツによって形成し、それらをつなぎあわせて形成してもよい。
【0065】
また、ボトムウエア部2に対する緊締ベルト部3、6や膝蓋サポート部4の付与方法は、複数の伸長性生地を重ね合わせてそれを縫合させることによって形成してもよいし、ボトムウエア部2に所定の生地を接着させたり、複数枚の伸長性生地を重ね合わせて接着させて形成してもよい。これらの方法によれば、緊締力、伸長性を適宜に設定しやすく、また、大きな緊締力等の差をつけることも可能である。また、ボトムウエア部2に所定形状の伸長性生地を引き伸ばして重ね合わせて縫合または接着する方法によって緊締ベルト部3、6や膝蓋サポート部4を形成してもよい。また、ボトムウエア部2の所定部分に弾性樹脂含浸または弾性樹脂フイルムの貼り合わせによる方法によって緊締ベルト部3、6や膝蓋サポート部4を形成してもよい。これらの方法によれば、緊締ベルト部3、6や膝蓋サポート部4の厚みが比較的薄いものを得ることができる。弾性樹脂としてはポリウレタン樹脂やポリエステルエラストマー樹脂その他の弾性樹脂が適用可能である。これらの方法によれば、重ね合わせをしなくてもすむので、緊締ベルト部3、6や膝蓋サポート部4の厚みがより薄いものを得ることができる。また、ボトムウエア部2を構成する伸長性生地を経編や丸編のジャカードにより編み組織をかえることにより、緊締力や伸長性を変えるようにしてもよい。これらの方法によれば、同様に重ね合わせをしなくてもすむ。また、股付き衣類を形成する生地として丸編地などを用いる場合には、部分的に糸を足すカットボス編手法によって、緊締力の強い緊締ベルト部3、6や膝蓋サポート部4を形成することもできる。丸編みによる場合は、編み組織を変える方法と部分的に糸を足すカットボス編方法とを組み合わせて緊締力の強弱差等を設けることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】第1の実施の形態に係るスポーツ用スパッツの正面図である。
【図2】膝部分を中心に示すスポーツ用スパッツの側断面図である。
【図3】膝蓋サポート部と膝蓋エリアとの関係を示す説明図である。
【図4】膝関節の屈伸運動中におけるスポーツ用スパッツの作用を説明する説明図である。
【図5】膝周辺にかかる衝撃力を客観的に測定した第1の実験結果を示す棒グラフである。
【図6】屈伸運動に対する影響(動作の妨げ)を客観的に測定した第2の実験結果を示すグラフであり
【図7】第1の実施の形態に係るスポーツ用スパッツと従来のスポーツ用スパッツを一般モニターに使用してもらった結果を示す表である。
【図8】生地の弾性力測定方法に使用される試験装置の概略を示す正面図である。
【図9】測定結果の一例を示すグラフである。
【図10】第1の実施の形態に係るスポーツ用スパッツを構成する生地の組み合せを変えて実験した結果を示す図である。
【図11】第2の実施の形態に係るスポーツ用スパッツの正面図である。
【図12】屈曲時と直立時に膝蓋骨へかかる負荷の大きさを説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0067】
1A,1B・・・スポーツ用スパッツ、2・・・ボトムウエア部
3、6・・・緊締ベルト部、31、32、61、62・・・伸縮帯状体
4・・・膝蓋サポート部
H・・・膝蓋エリア
【技術分野】
【0001】
本発明は、股付き衣類に関し、特に、スポーツ用股付き衣類に適用されるものである。
【背景技術】
【0002】
図12に示すように、膝関節は膝伸展機構を有する。膝伸展機構は、膝蓋骨、膝蓋骨に末端部が接続される大腿四頭筋、膝蓋骨から下方に伸びて頚骨上端の前面(頚骨粗面)に接続される膝蓋靭帯等の複合体からなり、大腿四頭筋や膝蓋靭帯が縮退して膝関節が直立し、伸長して屈曲する。従来のスポーツ用股付き衣類のなかには、このような膝関節の直立、屈曲(屈伸)運動をサポートするものがあった。
【0003】
例えば、特許文献1には、膝蓋骨に対応する膝の前面を左右から挟み込むように緊締力の強いサポート部を設け、このサポート部によって膝関節の屈伸運動における筋肉の動きをサポートするスポーツ用股付き衣類(スポーツ用スパッツ)が開示されている。
【特許文献1】特開平10−110306号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで膝関節が直立した状態では、図12(a)に示すように体重は主として頚骨に支えられ、膝伸展機構にはあまり負荷がかからない。しかし膝関節が屈曲動作している時には同図(b)に示すように膝伸展機構の膝蓋骨に大きな負荷がかかってしまう。特に、ランニング等のスポーツでは瞬間的に大きな衝撃が発生するため、この衝撃が局所的に膝蓋骨に伝わり、非常に大きな負荷がかかる。
【0005】
しかしながら従来のスポーツ用スパッツでは筋肉の伸縮をサポートすることはできても、膝蓋骨にかかる負荷を十分にサポートすることはできなかった。また膝蓋骨にかかる負荷が十分にサポートされないために、膝関節の屈伸運動が不安定になっていた。そのため、膝蓋骨が十分に保護され、屈伸運動の際の不安定感が解消されるような股付き衣類が強く要望されていた。
【0006】
本発明は、以上の問題を解消するためになされたものであり、屈曲動作時に膝蓋骨にかかる負荷を軽減し、膝関節の安定した動きをサポートできる股付き衣類を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、少なくとも脚部の一部を被覆し、脚部の形状に応じて伸縮するボトムウエア部と、ボトムウエア部に取り付けられるとともに膝蓋骨に対応する膝蓋エリアの内側及び外側に設けられ、脚部の上下方向に伸長し、収縮力を発生させる緊締ベルト部と、緊締ベルト部で挟まれた膝蓋エリアを被覆し、膝関節の屈伸運動に応じて伸縮する膝蓋サポート部とを有し、ボトムウエア部、緊締ベルト部、膝蓋サポート部の3つの部分の緊締力、伸長性を対比したときに、緊締ベルト部の緊締力が膝蓋サポート部の緊締力よりも大きく、かつ膝蓋サポート部の緊締力がボトムウエア部の緊締力よりも大きく、膝蓋サポート部の伸長性が緊締ベルト部の伸長性よりも小さく、かつ緊締ベルト部の伸長性がボトムウエア部の伸長性よりも小さいことを特徴とする股付き衣類である。
【0008】
本発明では、緊締力が最も大きいが、伸長性が膝蓋サポート部とボトムウエア部との中間の大きさになる緊締ベルト部が膝蓋エリアの内側と外側に配置され、脚部の上下方向に伸長し、収縮力が働いて締め付ける。そのため、膝関節が直立状態から屈曲状態に移行するときには、屈曲動作を必要以上に拘束することなく伸長し、膝関節が屈曲状態から直立状態へ移行する時には、強い収縮力が働いて膝関節の屈伸運動を効果的にサポートする。それにより、動的快適性(動作したときの皮膚との密着性)を保ちつつ膝関節の屈曲動作に対するサポート性も奏する。
【0009】
また緊締力が緊締ベルト部とボトムウエア部との中間の大きさであって、伸長性が最も小さい膝蓋サポート部が膝蓋エリアを被覆する。そのため、膝関節の屈伸動作時にボトムウエア部よりも大きな応力が膝蓋エリアにかかり、その応力によって膝蓋骨にかかる負荷を軽減する。
【0010】
更に緊締力が最も小さく、伸長性が最も大きいボトムウエア部によって股付き衣類全体での締め付け感や圧迫感を最低限に抑えつつ、股付き衣類全体でのフィット感を維持する。
【0011】
また、本発明における上記緊締ベルト部は、膝蓋エリアの上部と下部で交叉して膝蓋エリアを囲むように設けられている伸縮帯状体によって形成されるようにしてもよい。
【0012】
このようにすれば膝蓋エリアを囲む伸縮帯状体が伸長し、収縮力が働いて膝関節の屈伸運動をサポートするようになる。
【0013】
また、本発明における上記緊締ベルト部は、膝蓋エリアの上部と下部に隙間を空けて設けられている伸縮帯状体によって形成されるようにしてもよい。
【0014】
この場合、膝蓋エリアの上部と下部に隙間を空けて設けられている伸縮帯状体によって形成されるため、膝蓋エリアの内側と外側に設けられた伸縮帯状体は互いに非接触となる。そのため、内側と外側に設けられた各伸縮帯状体が互い干渉することなく伸縮し、その伸縮によって膝関節の屈伸運動をサポートするようになる。
【0015】
また、本発明におけるボトムウエア部を構成する生地が、緊締ベルト部と膝蓋サポート部の肌側を構成するようにしてもよい。
【0016】
このようにすれば、ボトムウエア部、緊締ベルト部、膝蓋サポート部の肌側の生地が共通する。そのため股付き衣類と皮膚との間の接触力が同一となり、皮膚との密着性が高まってサポート性が向上する。
【0017】
また、本発明における緊締ベルト部の緊締力が、8000〜13000の範囲に含まれるようにしてもよい。
緊締ベルト部における緊締力の値が小さいほど、膝回りにゆとりが生じ、ゆっくりと、大きく膝を曲げる動きをする場合などに楽に動くことができ、大きいほど膝回りの生地の密着度が上がり、強いジャンプ時などの特に膝に衝撃がかかる場合や、強めの跳躍を繰り返す場合などの膝の安定性が上がる。しかし、上記数値範囲を超えた場合には、膝関節の屈伸運動の効果的なサポート性や動的快適性が損なわれてしまうようになる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、屈曲動作時に膝蓋骨にかかる負荷を軽減し、膝関節の安定した動きをサポートできるという優れた効果を期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係る実施の形態を図面に基づき説明する。なお、本発明における「上」「下」「内側」「外側」は、利用者によって正規に着用された状態を基準とし、「上」とは腰部側、「下」とは下腿部側、「内側」とは両膝関節の対向する方向、「外側」とはその逆方向を意味する。また、「膝蓋エリア」とは、膝蓋骨を中心に構成される膝伸展機構に対応する膝の前面側である。
【0020】
まず、図1、図2を参照して本発明の第1の実施の形態に係るスポーツ用スパッツ(スポーツ用の股付き衣類)について説明する。図1は、スポーツ用スパッツの正面図、図2は膝部分を中心に示すスポーツ用スパッツの側断面図、図3は膝蓋サポート部と膝蓋エリアとの関係を示す説明図である。
【0021】
スポーツ用スパッツ1は、腰部から下腿部(本実施の形態に係る脚部)までを被覆するスパッツであり、その基礎となるボトムウエア部2と、ボトムウエア部2に取り付けられるとともに膝蓋骨に対応する膝蓋エリアHの内側と外側に設けられ、脚部の上下方向に伸長し、収縮力を発生させる緊締ベルト部3と、緊締ベルト部3で挟まれた膝蓋エリアHを被覆し、膝関節の屈伸運動に対応して伸縮する膝蓋サポート部4とを有する。
【0022】
ボトムウエア部2、緊締ベルト部3、膝蓋サポート部4は、伸縮性を有する生地によって構成され、伸長すると収縮力が働いて締め付ける。また、ボトムウエア部2、緊締ベルト部3、膝蓋サポート部4は、それぞれ異なる生地によって形成され、各部の緊締力、伸長性は異なっている。
【0023】
本実施の形態で示す緊締力は、後述する生地の弾性力測定方法によって求められる。簡単に説明すると、緊締力は、布状の生地に対して垂直方向に負荷をかけたときに生じる応力の発生時からピークに達するまでの応力の積分値であり、伸長したときに発生する収縮力の大きさに対応して大きくなる。緊締力が大きいほど、圧迫感や締め付け感が強くなり、また生地が変形し難く、変形した際に元に戻ろうとする力が最も強くなる。逆に小さいほど人体の動作に追従して変形しやすくなる。
【0024】
一方、伸長性は、「JIS L 1018.14.2のカットストリップ法」に係る試験方法(以下、「規格試験」という)で求められる「定荷重時伸び率(%)」に近似し、上記試験方法のうち、以下の(a)〜(c)の内容を変更した試験(以下、「伸長性試験」という)で求められる値である。
(a) 規格試験では、「初荷重は29mN」であるが、伸長性試験では「初荷重を0mN」とした。
(b) 規格試験では「引張速度は、1分間当たり、つかみ間の距離の約100%又は50%の伸長」であるが、伸長性試験では「引張速度は、1分間当たり、つかみ間の距離の300%の伸長」とした。
(c) 規格試験では「一定荷重を加えたまま1分間放置後の印間の長さ」を測るが、「伸長性試験」では「一定荷重を加えたまま0秒間放置後の印間の長さ」を測るようにした。
【0025】
本実施の形態に係るボトムウエア部2、緊締ベルト部3、膝蓋サポート部4の3つの部分の緊締力、伸長性を対比したときの大小関係が、以下の(1)、(2)の要件を総て満足するようになっている。
(1)緊締ベルト部3の緊締力が膝蓋サポート部4の緊締力よりも大きく、かつ膝蓋サポート部の緊締力がボトムウエア部2の緊締力よりも大きい。
(2)膝蓋サポート部4の伸長性が緊締ベルト部3の伸長性よりも小さく、かつ緊締ベルト部3の伸長性がボトムウエア部2の伸長性よりも小さい。
【0026】
このように構成することで、屈曲動作時に膝蓋骨にかかる負荷を軽減し、膝関節の安定した動きをサポートできる。
【0027】
より詳しくは、緊締力が最も大きいが、伸長性が膝蓋サポート部4とボトムウエア部2との中間の大きさである緊締ベルト部3が膝蓋骨の左右の靭帯に沿って配置されている。そのため、膝関節が直立状態から屈曲状態に移行するときには、屈曲動作を必要以上に拘束することなく伸長し、膝関節が屈曲状態から直立状態へ移行する時には、強い収縮力が働いて大腿四頭筋等の縮退をサポートする。それにより、動的快適性(動作したときの皮膚との密着性)を保ちつつ膝関節の屈曲動作を効果的にサポートする。
【0028】
また緊締力が緊締ベルト部3とボトムウエア部2との中間の大きさであって、伸長性が最も小さい膝蓋サポート部4が膝蓋エリアHを被覆する。そのため、膝関節の屈伸動作時にボトムウエア部2よりも大きな応力が膝蓋エリアHにかかり、その応力によって膝蓋骨にかかる負荷を軽減する。そのためボトムウエア部2で膝蓋エリアHを被覆する場合に比べて膝関節の屈曲動作時において膝蓋骨にかかる負荷を軽減できる。つまり、膝関節が屈曲するときには伸長して膝蓋骨側(膝外エリアH)に応力をかけ、その応力で膝蓋骨を支えて保護する。
【0029】
スポーツ用スパッツ1の基礎となるボトムウエア部2は脚部全体に占める面積が最も大きく、脚部全体のフィット感や締め付け感(拘束感)に最も影響する。そのため拘束感を必要以上に大きくしないようにするために、緊締力は最も小さくなり、逆に伸長性は最も大きくなる。
【0030】
以下、スポーツ用スパッツ1の詳細を説明する。
ボトムウエア部2は、図1に示すように腰部から下腿部までの全体を被覆する形状にて形成されており、利用者の着用時に脚部の形状に応じて伸縮する。また、ボトムウエア部2は、図2に示すようにボトムウエア部2を構成する生地が、緊締ベルト部3や膝蓋サポート部4の肌側(皮膚S側)を構成している。
【0031】
緊締ベルト部3は、図1に示すように膝蓋エリアHの上部と下部で交叉して膝蓋エリアを囲むように配置されている2本の帯状の生地(伸縮帯状体31、32)を有しており、ボトムウエア部3の表面側(皮膚Sに接触する裏面に対して反対の面)に縫合されて形成されている。一方の伸縮帯状体31は、着用時に股間近傍から大腿部の前側を通り、膝蓋エリアHの上部を抜けて膝蓋エリアHの外側に至り、そこから膝蓋エリアHの下部を抜けてふくらはぎの内側に到達し、そのままふくらはぎに沿って足首まで達する。他方の伸縮帯状体32は、着用時に大転子近傍から大腿部の前側を通り、膝蓋エリアHの上部で一方の伸縮帯状体31と交叉して膝蓋エリアHの内側に至り、そこから膝蓋エリアHの下部で再び一方の伸縮帯状体31と交叉してふくらはぎの外側に達し、そのままふくらはぎに沿って足首まで達する。
【0032】
膝蓋サポート部4は、着用時を基準としたときに上下に縮径した略レンズ形状をなし、図3に示すように膝蓋エリアHにおける膝蓋骨中央Aと頚骨粗面中央Bを覆うように形成されている。
【0033】
膝蓋サポート部4の横径L1は、4cm(膝蓋骨中央Aを挟んで左右(内、外側)に2cmずつ)以上とする必要があり、特に6cm以上であると好適である。4cm未満であると膝蓋骨にかかる負荷の軽減を期待できないからでる。また、膝蓋サポート部4の縦径L2は、膝蓋骨中央Aと頚骨粗面中央Bとを覆う寸法を必要とし、日本人の標準的な体型から9cm以上とする必要がある。なお、本実施の形態では、膝蓋骨中央Aから上の縦径L21は2.5cmであり、下の縦径L22は6.5cmである。
【0034】
また、膝蓋骨の横幅、縦幅、膝蓋骨中央Aから頚骨粗面中央Bまでの寸法は、総て膝関節の直立時よりも屈曲時の方が長くなる。例えば横幅は、6.4cmから7.7cm程度になり、縦幅は5.1cmから7.7cm程度になり、膝蓋骨中央Aから頚骨粗面中央Bまでの寸法は、6.6cmから9.7cm程度になる。そのため、これらの寸法変化を許容できる範囲の寸法で形成すると好適である。
【0035】
以上の構成からなるスポーツ用スパッツ1の作用について、主に膝蓋サポート部4の作用を中心に説明する。図4は膝関節の屈伸運動中におけるスポーツ用スパッツ1の作用を説明する説明図である。
【0036】
図4(a)に示すように、膝関節の屈曲時には、膝の湾曲面に沿って膝蓋サポート部4が矢印P1方向に引っ張られて伸長する。この伸長によって膝蓋サポート部4は、膝の湾曲面に沿って膝蓋エリアHを包み込むように伸びて広がり、収縮方向に弾性力が働いて締め付けるために膝蓋エリアHに向けて一定の応力P2が作用する。この応力P2によって屈曲時に膝蓋骨にかかる負荷(特にランニング時に局所的にかかる負荷)が軽減され、屈曲動作が安定する。
【0037】
続いて同図(b)に示すように、膝関節が屈曲状態から直立状態に移行する時には、膝蓋サポート部4は縮退し、膝蓋エリアHに作用する応力P2も徐々に減少する。この時、膝蓋サポート部4は、速やかに回復し、皮膚との密着性を維持する。なお、このときに、緊締ベルト部3が大腿四頭筋等の筋肉の縮退をサポートして膝関節の屈伸動作を助ける。
【0038】
次に図5を参照し、膝関節の屈曲動作に対する負荷軽減の効果について説明する。図5は、膝周辺にかかる衝撃力を客観的に測定した第1の実験結果を示す棒グラフである。この第1の実験では、加速度計を用いてランニング中に膝にかかる衝撃力を測定しており、図5の“A”は通常のスパッツであり、“B”は本実施の形態にかかるスポーツ用スパッツであり、“C”は従来のスポーツ用スパッツである。棒グラフが高いほど、衝撃力が大きいことを意味しており、図5から明らかなように本実施の形態に係るスポーツ用スパッツ“B”の衝撃力が最も低く、膝蓋骨にかかる負荷が軽減されていることがわかる。
【0039】
次に図6を参照し、屈伸運動に対する拘束性の効果について説明する。図6は屈伸運動に対する影響(動作の妨げ)を客観的に測定した第2の実験結果を示すグラフであり、同図(a)は測定箇所の説明図であり、同図(b)は第2の実験結果を棒グラフで示している。第2の実験は、同図(a)に示すようにランニング途中における膝関節が伸びきった状態(直立状態)での膝の裏の部分の角度(deg)と、膝関節が屈曲した状態(屈曲状態)での膝の裏の部分の角度(deg)との差を算出して実験結果を求めている。棒グラフが高いほど角度差が大きく、屈伸運動に対する拘束性が低い、つまり、動的快適性が高いということを意味している。図6から明らかなように本実施の形態に係るスポーツ用スパッツ“B”は、従来のスポーツ用スパッツ“C”とほぼ同じであり、膝関節の動作を必要以上に妨げていないことを意味している。
【0040】
次に図7を参照し、本実施の形態に係るスポーツ用スパッツと従来のスポーツ用スパッツを一般モニターに使用してもらった結果について説明する。図7は、モニターから聞いたアンケート結果を示す表である。このアンケート結果によれば、膝にかかる衝撃度は圧倒的に本実施の形態にスポーツ用スパッツ“B”の方が低いと感じており(9名中8名)、また、ランニングに適しているという質問に対しても圧倒的にスポーツ用スパッツ“B”の方が優れていると感じている(9名中6名)。
【0041】
その他、本実施の形態に係るスポーツ用スパッツ“B”を使用したモニターの感想として、「膝蓋骨(膝の皿)の下にかかる衝撃が少ない。」、「膝が、ぶれにくく、安定して走れる。」、「脚を上げる(脚を前にもっていく)力が強い。」、「脚を動かし易く、走り易い。」等があった。
【0042】
以上のように本実施の形態に係るスポーツ用スパッツ1(図1〜4)によれば、膝関節の動作を不必要に妨げることがなく、体重をしっかりと支え、膝への衝撃を軽減しているために、屈曲動作時に膝蓋骨にかかる負荷を軽減し、膝関節の安定した動きをサポートできる。
【0043】
なお、一般人の約41%が運動時において膝に不安を持っており(競技者では57%)、また、下り坂や階段の昇り降りの際の屈伸動作時に膝が不安定になったり、痛みが出るのではないかと不安に思っている。そのため、本実施の形態に係るスポーツ用スパッツ1を着用することで、より安全(膝の障害を気にせず)にスポーツを楽しむことができる。
【0044】
また、本実施の形態では、緊締ベルト部3の伸縮帯状体31、32が膝蓋エリアHの上部と下部で交叉して膝蓋エリアHを囲み、上下方向に伸長し、収縮力が働いて締め付け、膝関節のぶれを効果的に抑止する。
【0045】
更に、本実施の形態では、ボトムウエア部2を構成する生地が、緊締ベルト部3と膝蓋サポート部4の肌側を構成しているために、皮膚との接触力が同一となるため皮膚との密着性が高まってサポート性が向上する。また、接触感が同一となるため、利用者に違和感を生じさせない。
【0046】
次に、本実施の形態に係るスポーツ用スパッツ1で用いた生地の緊締力の測定方法(生地の弾性力測定方法)について説明する。図8は、生地の弾性力測定方法に使用される試験装置の概略を示す正面図であり、図9は測定結果の一例を示すグラフである。
【0047】
この試験装置51は、圧縮ロードセル53の先端に圧縮子54を備えた圧縮試験機本体52と、生地70を弛みなく張架する枠材を備えた保持具55と、保持具55を圧縮子54に向けて往復動作(上下動作)させる昇降手段56(ピストンとシリンダ)とを備える。保持具55に張架された生地70は、圧縮子54に接触配置され、駆動手段56によって往復動作によって圧縮子54を押圧し、また押圧を解除する。なお、この圧縮試験機本体52は、カトーテック社製の圧縮試験機(KES−G5)からなる。
【0048】
測定時には圧縮試験機本体52は固定され、昇降手段56を駆動して保持具55を1分間に60回、1.5cmの距離を上下に往復動作させる。この上下の往復動作とともに生地70も往復動し、生地70に接触配置された圧縮子54が感知する応力の経時変化を測定した。
【0049】
図9は、駆動手段56が生地70を繰り返し上下動作させた3回分の山Mを示し、山Mの前半部分M1は、駆動手段56が保持具55を上昇させて圧縮子54に押し上げ荷重を作用させた部分に該当し、山Mの後半部分M2は、駆動手段56が保持具55を下降させて圧縮子54への荷重を解除した部分に該当する。山Mの前半部分M1の応力積分値が緊締力に相当し、縦軸で示す負荷に応じて発生する応力と、横軸で示す応力発生時から応力がピークに達する時間との積から求められる。
【0050】
次に、本実施の形態に係るスポーツ用スパッツ1の各部を構成する生地の組み合せについて説明する。図10は、スポーツ用スパッツ1を構成する生地の組み合せを変えて実験した結果を示す表であり、サンプルA、サンプルB、サンプルC、サンプルDは、本発明に係る緊締力、伸長性に関する大小関係の要件を満たし、サンプルE、サンプルFは、上記大小関係を満たしていない。そしてサンプルA〜Dについては、本発明に係る効果を有すると判定され、サンプルE,Fについては、効果無しと判定された。
【0051】
なお、各サンプルを作成するために用いた生地に関し、図10のNo.1で示す生地は「ツーウェイトリコット(a)」、No.2で示す生地は「ツーウェイトリコット(b)」、No.3で示す生地は「ツーウェイトリコット(a)とサテンパワーネットとの組み合せ」、No.4で示す生地は「ツーウェイトリコット(a)とダブルニットとの組み合せ」、No.5で示す生地は「ツーウェイトリコット(a)の3重使い」、No.6で示す生地は「ツーウェイラッセル(a)」、No.7で示す生地は「ツーウェイラッセル(b)」である。また、「ツーウェイトリコット(a)」は、エステル84.6%(56dtex)とポリウレタン15.4%(44dtex)からなり、「ツーウェイトリコット(b)」は、ポリウレタン17.1%(44dtex)とポリエステル82.9%(56dtex)からなる。また、「ツーウェイラッセル(a)」は、ナイロン75%(44dtex)とポリウレタン25%(155dtexと33dtexの組み合せ)からなり、「ツーウェイラッセル(b)」は、ナイロン(66)83%(44dtex)とポリウレタン17%(44dtexと78dtexの組み合せ)からなる。更に図10で示す効果の有無は、各サンプルを着用したモニターの過半数以上が膝蓋骨にかかる負荷の軽減を実感し、屈曲動作が安定して膝関節の屈伸動作が楽になったと感じた場合を効果有りと判定し、過半数未満の場合を効果無しと判定した。
【0052】
本実験で用いたサンプルA、B、C、Dに係る緊締ベルト部3の生地は、「ツーウェイトリコット(a)とサテンパワーネットとの組み合せ」(No.3)からなり、緊締力の値は“8380.9”となっている。膝関節の安定した動きをサポートするために、緊締ベルト部3の緊締力は“8000”以上にする方が好ましいと考えられ、サンプルA、B、C、Dの生地は、この下限値(“8000”)に近い値となっている。
【0053】
この下限値に近いほど、膝回りにゆとりが生じ、ゆっくりと、大きく膝を曲げる場合などに楽になる。そのため、下限値に近いほど、高齢者用の衣類として好適になる。一方、緊締ベルト部3の緊締力が大きくなるほど、膝回りの生地の密着度が上がり、強くジャンプする場合などの特に膝に衝撃がかかる場合や、強めの跳躍を繰り返す場合などに膝の安定性が上がる。そのため、緊締ベルト部3の緊締力が大きくなるほど、スポーツ用衣類として好適となる。
【0054】
しかし、緊締ベルト部3の緊締力が大きくなり過ぎると、伸長したときに締め付ける力が強くなり過ぎて動的快適性が損なわれてしまう可能性があるため、緊締ベルト部3の緊締力の緊締力は、“13000”以下にする方が好ましい。
【0055】
続いて、本発明の第2の実施の形態に係るスポーツ用スパッツ5について説明する。図11は、第2の実施の形態に係るスポーツ用スパッツ5の正面図である。なお、スポーツ用スパッツ5の説明において、第1の実施の形態に係るスポーツ用スパッツ1と同一の作用、効果を奏する部分等については同一の符号を付して詳細説明を省略する。
【0056】
本実施の形態に係るボトムウエア部2、緊締ベルト部6、膝蓋サポート部4の3つの部分の緊締力、伸長性を対比したとき大小関係が、以下の(1)、(2)の要件を総て満足するようになっている。
(1)緊締ベルト部6の緊締力が膝蓋サポート部4の緊締力よりも大きく、かつ膝蓋サポート部4の緊締力がボトムウエア部2の緊締力よりも大きい。
(2)膝蓋サポート部4の伸長性が緊締ベルト部6の伸長性よりも小さく、かつ緊締ベルト部6の伸長性がボトムウエア部2の伸長性よりも小さい。
【0057】
このように構成することで、屈曲動作時に膝蓋骨にかかる負荷を軽減し、膝関節の安定した動きをサポートできる。
【0058】
緊締ベルト部6は、膝蓋エリアHの上部と下部に隙間を空けて配置されているニ本の伸縮帯状の生地(伸縮帯状体61、62)からなり、ボトムウエア部2の表面側(皮膚Sに接触する裏面に対して反対の面)に縫合されて形成されている。一方の伸縮帯状体61は、着用時に股間近傍から大腿部に沿って膝蓋エリアHの内側に至り、そのままふくらはぎの内側に沿って足首まで達する。他方の伸縮帯状体62は、着用時に大転子近傍から大腿部に沿って膝蓋エリアHの外側に至り、そのままふくらはぎの外側に沿って足首まで達する。この各伸縮帯状体61、62は、長手方向(縦方向)の伸長性が大きく、横方向の伸長性が低い。
【0059】
本実施の形態に係るスポーツ用スパッツ5によれば、膝関節の動作を不必要に妨げることがなく、体重をしっかりと支え、膝への衝撃を軽減しているために、屈曲動作時に膝蓋骨にかかる負荷を軽減し、膝関節の安定した動きをサポートできる。そのため、本実施の形態に係るスポーツ用スパッツ5を着用した利用者は、より安全(膝の障害を気にせず)にスポーツを楽しむことができる。
【0060】
また、ボトムウエア部2を構成する生地が、緊締ベルト部6と膝蓋サポート部4の肌側を構成しているために、皮膚との接触力が同一となるため皮膚との密着性が高まってサポート性が向上する。また、接触感が同一となるため、利用者に違和感を生じさせない。
【0061】
更に本実施の形態では、緊締ベルト部6の伸縮帯状体61、62が膝蓋エリアHの上部と下部に隙間を空けて配置され、膝蓋エリアHの上部と下部で交叉していない(非接触である)。また、伸縮帯状体61、62の伸長性の高い方向が、膝関節の屈伸運動における筋肉の伸縮方向に沿って配置されており、屈伸運動におけるサポート性を向上できる。
【0062】
なお、第2の実施の形態に係るスポーツ用スパッツ5を構成する生地の組み合わせについては、第1の実施の形態に係るスポーツ用スパッツ1に関して行ったモニター実験の結果(図10参照)と同様の結果となった。
【0063】
以上、第1、第2の実施の形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は、以上の実施の形態のみに限定されるものではない。つまり、以上の説明では、股付き衣類の代表例としてスポーツ用スパッツについて説明したが、本発明は、スポーツ用スパッツ以外にも適用可能である。例えば、ガードル、スポーツ用タイツ、スパッツ型の水着、スポーツウエア、ストッキングおよびタイツ等の股付き衣類にも適用できる。
【0064】
また、以上の実施の形態では、ボトムウエア部2を構成する生地が、緊締ベルト部3、6と膝蓋サポート部4の肌側を構成する態様にて説明したが、肌側を構成する生地をそれぞれ別の生地として縫合させて形成するようにしてもよい。つまり、ボトムウエア部2、緊締ベルト部3、6、膝蓋サポート部4を所定の生地からなる所定形状のパーツによって形成し、それらをつなぎあわせて形成してもよい。
【0065】
また、ボトムウエア部2に対する緊締ベルト部3、6や膝蓋サポート部4の付与方法は、複数の伸長性生地を重ね合わせてそれを縫合させることによって形成してもよいし、ボトムウエア部2に所定の生地を接着させたり、複数枚の伸長性生地を重ね合わせて接着させて形成してもよい。これらの方法によれば、緊締力、伸長性を適宜に設定しやすく、また、大きな緊締力等の差をつけることも可能である。また、ボトムウエア部2に所定形状の伸長性生地を引き伸ばして重ね合わせて縫合または接着する方法によって緊締ベルト部3、6や膝蓋サポート部4を形成してもよい。また、ボトムウエア部2の所定部分に弾性樹脂含浸または弾性樹脂フイルムの貼り合わせによる方法によって緊締ベルト部3、6や膝蓋サポート部4を形成してもよい。これらの方法によれば、緊締ベルト部3、6や膝蓋サポート部4の厚みが比較的薄いものを得ることができる。弾性樹脂としてはポリウレタン樹脂やポリエステルエラストマー樹脂その他の弾性樹脂が適用可能である。これらの方法によれば、重ね合わせをしなくてもすむので、緊締ベルト部3、6や膝蓋サポート部4の厚みがより薄いものを得ることができる。また、ボトムウエア部2を構成する伸長性生地を経編や丸編のジャカードにより編み組織をかえることにより、緊締力や伸長性を変えるようにしてもよい。これらの方法によれば、同様に重ね合わせをしなくてもすむ。また、股付き衣類を形成する生地として丸編地などを用いる場合には、部分的に糸を足すカットボス編手法によって、緊締力の強い緊締ベルト部3、6や膝蓋サポート部4を形成することもできる。丸編みによる場合は、編み組織を変える方法と部分的に糸を足すカットボス編方法とを組み合わせて緊締力の強弱差等を設けることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】第1の実施の形態に係るスポーツ用スパッツの正面図である。
【図2】膝部分を中心に示すスポーツ用スパッツの側断面図である。
【図3】膝蓋サポート部と膝蓋エリアとの関係を示す説明図である。
【図4】膝関節の屈伸運動中におけるスポーツ用スパッツの作用を説明する説明図である。
【図5】膝周辺にかかる衝撃力を客観的に測定した第1の実験結果を示す棒グラフである。
【図6】屈伸運動に対する影響(動作の妨げ)を客観的に測定した第2の実験結果を示すグラフであり
【図7】第1の実施の形態に係るスポーツ用スパッツと従来のスポーツ用スパッツを一般モニターに使用してもらった結果を示す表である。
【図8】生地の弾性力測定方法に使用される試験装置の概略を示す正面図である。
【図9】測定結果の一例を示すグラフである。
【図10】第1の実施の形態に係るスポーツ用スパッツを構成する生地の組み合せを変えて実験した結果を示す図である。
【図11】第2の実施の形態に係るスポーツ用スパッツの正面図である。
【図12】屈曲時と直立時に膝蓋骨へかかる負荷の大きさを説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0067】
1A,1B・・・スポーツ用スパッツ、2・・・ボトムウエア部
3、6・・・緊締ベルト部、31、32、61、62・・・伸縮帯状体
4・・・膝蓋サポート部
H・・・膝蓋エリア
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも脚部の一部を被覆し、前記脚部の形状に応じて伸縮するボトムウエア部と、
前記ボトムウエア部に取り付けられるとともに膝蓋骨に対応する膝蓋エリアの内側及び外側に設けられ、前記脚部の上下方向に伸長し、収縮力を発生させる緊締ベルト部と、
前記緊締ベルト部で挟まれた膝蓋エリアを被覆し、膝関節の屈伸運動に応じて伸縮する膝蓋サポート部と、を有し、
前記ボトムウエア部、前記緊締ベルト部、前記膝蓋サポート部の3つの部分の緊締力、伸長性を対比したときに、
緊締ベルト部の緊締力が膝蓋サポート部の緊締力よりも大きく、かつ膝蓋サポート部の緊締力がボトムウエア部の緊締力よりも大きく、
膝蓋サポート部の伸長性が緊締ベルト部の伸長性よりも小さく、かつ緊締ベルト部の伸長性がボトムウエア部の伸長性よりも小さいことを特徴とする股付き衣類。
【請求項2】
前記緊締ベルト部は、
前記膝蓋エリアの上部と下部で交叉して前記膝蓋エリアを囲むように設けられている伸縮帯状体によって形成されていることを特徴とする請求項1記載の股付き衣類。
【請求項3】
前記緊締ベルト部は、
前記膝蓋エリアの上部と下部に隙間を空けて設けられている伸縮帯状体によって形成されていることを特徴とする請求項1記載の股付き衣類。
【請求項4】
前記ボトムウエア部を構成する生地が、前記緊締ベルト部と前記膝蓋サポート部の肌側を構成していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の股付き衣類。
【請求項5】
前記緊締ベルト部の緊締力が、8000〜13000の範囲に含まれることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の股付き衣類。
【請求項1】
少なくとも脚部の一部を被覆し、前記脚部の形状に応じて伸縮するボトムウエア部と、
前記ボトムウエア部に取り付けられるとともに膝蓋骨に対応する膝蓋エリアの内側及び外側に設けられ、前記脚部の上下方向に伸長し、収縮力を発生させる緊締ベルト部と、
前記緊締ベルト部で挟まれた膝蓋エリアを被覆し、膝関節の屈伸運動に応じて伸縮する膝蓋サポート部と、を有し、
前記ボトムウエア部、前記緊締ベルト部、前記膝蓋サポート部の3つの部分の緊締力、伸長性を対比したときに、
緊締ベルト部の緊締力が膝蓋サポート部の緊締力よりも大きく、かつ膝蓋サポート部の緊締力がボトムウエア部の緊締力よりも大きく、
膝蓋サポート部の伸長性が緊締ベルト部の伸長性よりも小さく、かつ緊締ベルト部の伸長性がボトムウエア部の伸長性よりも小さいことを特徴とする股付き衣類。
【請求項2】
前記緊締ベルト部は、
前記膝蓋エリアの上部と下部で交叉して前記膝蓋エリアを囲むように設けられている伸縮帯状体によって形成されていることを特徴とする請求項1記載の股付き衣類。
【請求項3】
前記緊締ベルト部は、
前記膝蓋エリアの上部と下部に隙間を空けて設けられている伸縮帯状体によって形成されていることを特徴とする請求項1記載の股付き衣類。
【請求項4】
前記ボトムウエア部を構成する生地が、前記緊締ベルト部と前記膝蓋サポート部の肌側を構成していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の股付き衣類。
【請求項5】
前記緊締ベルト部の緊締力が、8000〜13000の範囲に含まれることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の股付き衣類。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−274510(P2006−274510A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−97918(P2005−97918)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000139399)株式会社ワコール (26)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000139399)株式会社ワコール (26)
【Fターム(参考)】
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