説明

肥料及び栽培方法

【課題】本発明は、植物体の生育に不可欠なカルシウムを、薬害等の悪影響を生じさせずに水溶液の形態で植物体に供給することができる肥料及び該肥料を用いた栽培方法を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、次亜リン酸カルシウムを有効成分とする肥料であり、次亜リン酸カルシウムを水に溶解させた液体肥料の形態で使用される。かかる液体肥料を、植物体の根圏域、或いは植物体の茎及び/又は葉に散布することにより、カルシウムが植物体内に有効に取り込まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肥料及び栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カルシウムは、作物や花卉類等の植物体の成長に欠かせない重要な成分の一つであり、以前より作物の栽培を開始するに当たって元肥として石灰を畑土壌に混和してカルシウムの補給及び土壌pHの調整を行う、所謂、土作りが行われている。
【0003】
しかしながら、カルシウムを始めとする肥料成分を一度に大量供給すると、河川への流出、塩類集積等の問題が生じ、それらの供給量に制約が生ずるのが避けられない。また、カルシウムは植物体の成長に伴って相当量が必要となるが、土壌中に十分量のカルシウムが存在していても、土壌が強酸性又はアルカリ性の土壌である場合及び土壌にアンモニア態窒素が多量に存在する場合、根圏域の一時的な乾燥により根が損傷を受けると、カルシウムの根からの吸収量が低下し、またカルシウムは植物体内で移行しにくい性質があるために、カルシウム欠乏症が発生しやすくなる。特に、近年盛んに行われている培地耕法、水耕法、養液土耕栽培法等のような根圏域が制限された栽培法の場合には、カルシウム欠乏症の発生懸念が顕著に高まっている。
【0004】
このため、植物体にカルシウムを根及び茎葉から適切に供給することにより、カルシウム欠乏症の発生を予防もしくは治療する処置が講じられている。
【0005】
カルシウムの供給源としてリン酸カルシウムが安価であることから常用されてきたが、リン酸カルシウムは水に難溶性であるため、粉末、塊状物等の固体状態のままで施肥せざるを得ない。植物体は、土壌中の水分によって溶け出したカルシウム分を利用することになるが、部分的にカルシウムの濃度差が生じ、植物体への供給に過不足を生じたり、速効的な効果が得られ難い問題点がある。
【0006】
このような実情から、植物体の根からのカルシウムの吸収不足を補う目的で、植物体に必要量を供給しやすい水溶液とした葉面散布用の肥料が好ましく使用されている。例えば、ギ酸カルシウム、酢酸カルシウム、プロピオン酸カルシウム等の有機カルボン酸のカルシウム塩を含有する葉面散布用肥料が提案されており(特許文献1〜3)、中でもギ酸カルシウムの水溶液が商品化されている。しかしながら、本来、葉面からのカルシウムの吸収は低いと考えられており、有機カルボン酸のカルシウム塩によるカルシウムの葉面吸収も必ずしも十分ではない。
【0007】
一方、亜リン酸カルシウムを用いた葉面散布用の肥料が提案されている(特許文献4)。亜リン酸カルシウムが水に難溶性であることから、特許文献4では、亜リン酸カルシウムは懸濁状態で使用されている。しかしながら、懸濁物の散布は、散布器のスプレーノズルを詰まらせる虞れが強く、また、果実又は葉菜類の可食部に散布すると、不溶物(亜リン酸カルシウム)が「汚れ」となって商品価値を低下させることになり、実質的に使用できない。また、亜リン酸は植物体に薬害を与えることがあり、懸濁物が葉面上に存在することで部分的な高濃度域を生じ、同時に存在する亜リン酸による薬害が危惧される。
【特許文献1】特開昭59−137384号公報
【特許文献2】特開昭60−260487号公報
【特許文献3】特開平4−202080号公報
【特許文献4】特開2006−176390号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、植物体の生育に不可欠なカルシウムを、薬害等の悪影響を生じさせずに水溶液の形態で植物体に供給することができる肥料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、次亜リン酸カルシウムを水に溶解させた液体肥料とし、これを植物体の根圏域、或いは植物体の茎及び/又は葉に散布することにより、カルシウムが植物体内に十分に取り込まれることを見出した。また、次亜リン酸のカルシウム塩とすることにより、亜リン酸又はその塩の使用により懸念されるような薬害を抑制できることをも見出した。本発明は、このような知見に基づき完成されたものである。
【0010】
本発明は、下記項1〜7に示す肥料及び栽培方法を提供する。
項1.次亜リン酸カルシウムからなる肥料。
項2.次亜リン酸カルシウムを水に溶解させてなる液体肥料。
項3.次亜リン酸カルシウムをCaO換算濃度で0.0001〜2重量%含有する請求項2に記載の液体肥料。
項4.次亜リン酸カルシウムをCaO換算濃度で0.0005〜1重量%含有する項3に記載の液体肥料。
項5.項3又は4に記載の液体肥料を、植物体の茎及び/又は葉に施用することにより、植物体を栽培する方法。
項6.項3又は4に記載の液体肥料を、植物体の根圏域に潅水施用することにより、植物体を栽培する方法。
項7.潅水施用が点滴潅水施用である、項6に記載の方法。
【0011】
本発明の肥料は、次亜リン酸カルシウム(Ca(PH222)を有効成分とするものである。本発明の肥料は、実質的に次亜リン酸カルシウムから構成されている。
【0012】
本発明の肥料は、次亜リン酸カルシウムを水に溶解させることにより液体肥料とすることができる。
【0013】
本発明の液体肥料に含まれる次亜リン酸カルシウムの量としては、作物の種類、生育状況、欠乏症状の程度等によって適宜設定されるべきであるが、一般的にはカルシウム(CaO換算)濃度で、液体肥料全体の0.0001〜2重量%(1〜20000ppm)、好ましくは0.0005〜1重量%(5〜10000ppm)、更に好ましくは0.001〜0.1重量%(10〜1000ppm)である。
【0014】
また、リン酸(P25換算)濃度とすれば、液体肥料全量の0.000254〜5.1重量%(2.5〜51000ppm)程度、好ましくは0.00127〜2.54重量%(12.7〜25400ppm)程度、更に好ましくは0.00254〜0.254重量%(25.4〜2540ppm)程度である。
【0015】
本発明液体肥料の施用量としては、作物の種類、施用濃度等を考慮して適宜設定されるものであるが、一般には1000m2当たり、10〜2000リットル程度、好ましくは100〜1000リットル程度とすればよい。
【0016】
本発明の液体肥料の施用方法としては、植物体の果実、葉、茎等の地上部に対して散布する方法であれば特に制限されず、植物体の形状や施用箇所、栽培面積等に応じて公知の方法を適宜選択することができる。このような方法としては、例えば、植物体の葉及び/又は茎にかかるよう上方より如雨露、散布機等で散布する方法;ヘリコプター、飛行機、ラジコン飛行機等を用いて空中散布する方法;植物体の果実等にかかるよう局所的に散布機等を用いて散布する方法;細かな霧状(ミスト)にしてハウス内で散布する方法等が挙げることができる。
【0017】
また、本発明の液体肥料は、植物体への施肥管理を行う養液栽培法への適用に優れている。
【0018】
養液栽培法としては、例えば、れき、砂、ピート、バーミキュライト、軽石、オガクズ、ロックウール、ウレタン等の支持体に植物体を定植し、この植物体に液肥を供給する培地耕法及び水耕法;土壌に定植された植物体の根圏域に液体肥料を供給して肥料成分の添加と潅水とを同時に行う養液土耕栽培法等が知られている。これらの養液栽培法は、施肥量を制御でき、適量の液体肥料をどの植物体にも均等に与えることができるため、植物体への施肥管理に優れた栽培方法である。本発明の液体肥料をこれら養液栽培法に適用し、植物体の根圏域に施肥することができる。例えば、水耕法においては、掛け流し式又は循環式の培養液として使用することにより潅水施肥ができ、また、養液土耕栽培法においては点滴チューブを介して点滴潅水施肥することができる。
【0019】
本発明の肥料は、水溶解性に優れた次亜リン酸カルシウムを有効成分としているので、水溶液中の沈殿物等が生じ難く、養液栽培において潅水施肥システム内のフィルター及び潅水チューブの潅水孔の目詰まり、混入機等のポンプ機器類への負荷等の懸念がなく、必要な施肥管理を可能とすることができる。
【0020】
本発明の肥料は、固体である次亜リン酸カルシウムを前記所定濃度になるように水に溶解させて調製してもよく、また、予め高濃度水溶液を作成しておき、使用時に水で希釈して調製してもよい。
【0021】
本発明の肥料には、必要に応じてその他の成分を配合してもよく、例えば、硫安、硝安、尿素、塩安等の水溶性化学肥料、その他公知の水溶性肥料成分、アルキル硫酸エステル塩類、アリールスルホン酸塩類、ポリオキシエチレングリコールエーテル類、多価アルコールエステル類、ジアルキルスルホサクシネート類、ポリカルボン酸類等の界面活性剤、防菌防黴剤、安定化剤、効力増強剤、増粘剤、香料、染料、顔料、着色剤、滑り剤等の添加剤を適宜加えることもできる。
【0022】
本発明の肥料は、通常栽培される一般的な作物体に適用可能である。そのような作物体としては、例えば、リンゴ、ナシ、ビワ等の仁果類;ミカン、ハッサク、ポンカン、オレンジ、スダチ等の柑橘類;トマト、ナス、ピーマン、キュウリ、イチゴ、メロン、スイカ等の果菜類;ホウレンソウ、チンゲンサイ、コマツナ、キャベツ、レタス、ハクサイ等の葉菜類;モモ、ウメ、オウトウ、スモモ等の核果類;洋蘭、バラ、チューリップ、カーネーション等の花卉類又はその切花類;芝類等を挙げることができる。
【0023】
本発明の肥料は、特に、カルシウム欠乏症の予防及び/又は治療に有効である。本発明の肥料は、具体的には、リンゴのビタービット;ナシのミツ症;柑橘類の浮皮、虎斑症;トマトの尻腐れ果、窓空き果、葉先枯れ;ナスの尻腐れ果、すじ果、がく割れ果;ピーマンの尻腐れ果;キュウリの肩こけ果、落下傘葉、心止まり;イチゴのチップバーン;メロンの発酵果、肩こけ果;スイカの変形果、肉質悪変果;葉菜類の心腐れ、縁腐れ、チップバーン等の予防及び/又は治療に使用される。また、本発明の肥料は、これら作物の棚持ち向上及び果実の硬度向上、花卉類の葉先枯れ予防、茎の硬度向上、芝類の硬度向上、耐病性の向上等にも有効である。
【0024】
これら効果の発現のために、本発明の液体肥料の使用時期、カルシウム濃度(CaO換算)及び1000m2(10a)当たりの散布量としては、例えば、リンゴ、ナシに対しては着果から肥大期、柑橘類に対しては肥大期又は着色期で、80〜500ppm程度を200〜700リットル散布、トマトに対しては各果房ごとに開花から幼果期、葉先枯れを対象とした場合には生育期、ナス、ピーマンに対しては開花から幼果期、キュウリに対しては定植10日頃から収穫盛期、イチゴに対しては各花房ごとに開花から幼果期、メロン、スイカに対しては交配後から肥大始期、葉菜類に対しては育苗期及び生育期、花卉類に対しては生育期及び採花期で、80〜500ppm程度を100〜500リットル散布、芝類に対しては生育期(通年)で、500〜2300ppm程度を200〜1000リットル散布するのが、好ましい。
【0025】
本発明の肥料は、植物体中の硝酸態窒素濃度を低減する効果を有している。硝酸態窒素は、土壌中の窒素濃度が過剰である場合や植物体中の同化能が低下した際に体内に過剰蓄積される。この硝酸態窒素を蓄積した植物体を摂取することで動物体内に取り込まれた場合に、メトヘモグロビンの生成、極度の酸欠状態と呼吸作用の阻害をもたらしたり、発癌物質であるニトロソアミンを生成する等、健康被害を生じるという報告が近年なされている。本発明の肥料は、植物体中の硝酸態窒素濃度を低減する効果を有しているので、その特性を生かし、葉中の硝酸態窒素濃度の低減化用資材として利用することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の肥料は、水溶液の形態で使用することができ、茎葉散布用肥料として使用することができる。
【0027】
また、本発明の肥料は、水溶解性に優れるため、養液土耕栽培法等で使用される点滴潅水処理が可能であり、また、水耕栽培法等の潅水処理にも使用できる。
【0028】
更に、本発明の肥料は、植物体の根部は勿論、茎葉部からのカルシウムの吸収にも優れるため、カルシウム欠乏による障害、病気に対する予防効果や即効的な治療効果を十分に発揮することができる。また、次亜リン酸はリン酸成分として植物体が利用することができ、優れた肥料効果が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、実施例、比較例及び試験例を掲げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、カルシウム濃度は、CaO換算濃度として示し、Ca濃度と表記する。
【0030】
実施例1
次亜リン酸カルシウム0.308gを水1000mlに溶解させて液体肥料1(Ca濃度:100ppm)を調製した。
【0031】
上記と同様に次亜リン酸カルシウムを所定のCa濃度(及びリン酸(P25換算)濃度)となるように、水に溶解させて、下記表1に示す各種液体肥料2〜8を調製した。
【0032】
【表1】

【0033】
次亜リン酸カルシウムの水溶解性は良好で、液体肥料1〜8中に目視観察で沈殿物等の固体物は認められなかった。
【0034】
比較例1
ギ酸カルシウムを有効成分とする市販品A(商品名:液体ハイカルック、晃栄化学工業株式会社製、Ca濃度10.0%水溶液)を水で1000倍希釈して、比較液肥1(Ca濃度:100ppm)を調製した。
【0035】
比較例2
塩化カルシウム及び硫酸カルシウムを有効成分とする市販品B(商品名:セルバイン、白石カルシウム株式会社製、Ca濃度35.0%懸濁液)を水で3500倍希釈して、比較液肥2(Ca濃度:100ppm)を調製した。
【0036】
比較例3
塩化カルシウム0.278gを水1000mlに溶解させて比較液肥3(Ca濃度:100ppm)を調製した。
【0037】
比較例4
亜リン酸カルシウム1.851gを水1000mlに加えて(Ca濃度:500ppm)十分に撹拌したが、懸濁状態を維持することができず、直ちに沈殿物が生じた。これに次亜リン酸0.1gを加えて十分に撹拌したが、同様に懸濁状態を維持することができず、直ちに亜リン酸カルシウムと思われる結晶が沈殿した。
【0038】
試験例1
セル成型ポット「BEE POT Y16型(縦6cm×横6cm×深さ5cm)」(キャネロン化工株式会社製)に培地「愛菜2号」(片倉チッカリン株式会社製)180mlを入れ、コマツナ(品種:夏楽天)を播種し、肥料A([(大塚ハウス1号(大塚化学株式会社製)1500重量部+大塚ハウス2号(大塚化学株式会社製)1000重量部]/水4000000重量部)250ml/日を培地(根圏域)に潅水施肥して28日間生育させた。
【0039】
実施例1で調製した液体肥料1〜4、比較例1〜3で調製した比較液肥1〜3又は水(対照試験区)のみをコマツナの葉のみにハンドスプレーを用いて十分量を散布した。
【0040】
肥料Aの施用を止め、水のみを底面吸水で与え、散布7日後に葉面を純水でよく洗浄し、葉面に残った水をペーパータオルで拭き取った。
【0041】
処理区毎にコマツナ葉をミキサーですり潰して得られた各汁液をメンブランフィルター(0.2μm)でろ過し、ろ液中のCa濃度を誘導結合プラズマ発光分光装置(Inductively Coupled Plasma atomic emission spectrometer(ICP))(SPS1700、セイコー電子工業株式会社製)で測定した。なお、試験は、各処理区8株1反復で行った。
【0042】
結果を表2に示す。表中の値は、植物中のCaO濃度である。
【0043】
また、実施例1で調製した液体肥料1〜4及び対照試験区について、同様にろ液中の次亜リン酸(P2O5換算)濃度をイオンクロマトグラフIC-2001(東ソー株式会社製)で測定した。通常、コマツナ葉中に次亜リン酸は認められない。同じ保持時間の有機酸ピークを差し引いた濃度で示した。なお、試験は、各処理区8株1反復で行った。
【0044】
結果を表3に示す。表中の値は、植物中の次亜リン酸(P25換算)濃度である。
【0045】
【表2】

【0046】
【表3】

【0047】
試験例2
1/5000aワグネルポット(株式会社藤原製作所製)に培地「愛菜2号」2500mlを入れ、キュウリ(品種:ハイグリーン22)苗(3葉期)を移植し、前記肥料A250mlを天候に応じて1日1〜2回供給して生育させ、本葉12枚展開し、果実収穫中のものを試験に用いた。
【0048】
実施例1で調製した液体肥料1〜4又は水のみ(対照試験区)をキュウリの葉、花及び果実にハンドスプレーを用いて300ml/株を散布し、散布から1日後、3日後及び7日後に薬害の有無を観察した。その結果、各処理区において、葉、花及び果実に薬害は全く認められなかった。
【0049】
試験例3
高設ベッド「徳島農業研究所V型ベンチ(ベッド幅40cm、ベッド長19m)」(徳農種苗株式会社製)にヤシガラ培地「ココブロック」(カネコ種苗株式会社製)を培地容量8リットル/株となる量入れ、フリー苗からポット採苗したイチゴ(品種:さがほのか)を定植し(株間20cm、一条植)、肥料B[タンクミックスF(大塚化学株式会社製)1100重量部+タンクミックスB(大塚化学株式会社製)2000重量部]/水10000重量部)を生育ステージや天候に合わせてさらに液肥混入機S2型(大塚化学株式会社製)を用いて658〜900倍に希釈して、1日2〜4回、点滴チューブ「ラム20(大塚化学株式会社製)」を使用して培地(根圏域)に点滴潅水施肥(かけ流し)して7ヶ月間栽培した。栽培期間中の温度管理は、空中温度は最低8℃(温湯暖房)、培地温度は最低15℃(温湯暖房)に設定し、無電照とした。芽数は1芽で管理し、各果房10果で摘果、交配はミツバチを用いた。
【0050】
実施例1で調製した液体肥料1、比較例1で調製した比較液肥1又は水のみ(対照試験区)をイチゴの第2次腋果房及び第3次腋果房の開花〜果実肥大期に地上部全体にハンドスプレーを用いて十分量を散布した。
【0051】
尚、栽培期間中は毎日継続して肥料Bの点滴潅水施肥を行った。
【0052】
第2次腋果房及び第3次腋果房の収穫適期に収穫した果実のうち、重量及び着色程度の類似した果実を選別し、各果房10果ずつ、KM型果実硬度計(株式会社藤原製作所製)を用いてイチゴ果実の硬度を測定した。なお、試験は各処理区7株1反復で行った。
【0053】
結果を表4に示す。表4における数値は10果の平均値である。
【0054】
【表4】

【0055】
表4から、次亜リン酸カルシウムの処理により第2次腋果房の果実硬度が高まり、更に気温の上昇に伴う果実の軟化を最も抑制し得ることが明らかである。
【0056】
試験例4
試験例1と同様に生育させたコマツナに、実施例1で調製した液体肥料6〜8又は水のみ(対照試験区)をコマツナの葉にハンドスプレーを用いて十分量を散布した。翌日、葉面を純水でよく洗浄し、葉面に残った水をペーパータオルで拭き取った。
【0057】
処理区毎にコマツナ葉をミキサーですり潰して得られた各汁液をメンブランフィルター(0.2μm)でろ過し、ろ液中の硝酸態窒素(NO3−N)濃度をICP(SPS1700)で測定した。なお、試験は各処理区8株1反復で行った。
【0058】
結果を表5に示す。
【0059】
【表5】

【0060】
表5から、次亜リン酸カルシウムの処理濃度が高まるにつれて、葉中の硝酸態窒素含有量が減少していることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次亜リン酸カルシウムからなる肥料。
【請求項2】
次亜リン酸カルシウムを水に溶解させてなる液体肥料。
【請求項3】
次亜リン酸カルシウムをCaO換算濃度で0.0001〜2重量%含有する請求項2に記載の液体肥料。
【請求項4】
次亜リン酸カルシウムをCaO換算濃度で0.0005〜1重量%含有する請求項3に記載のの液体肥料。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の液体肥料を、植物体の茎及び/又は葉に施用することにより、植物体を栽培する方法。
【請求項6】
請求項3又は4に記載の液体肥料を、植物体の根圏域に潅水施用することにより、植物体を栽培する方法。
【請求項7】
潅水施用が点滴潅水施用である、請求項6に記載の方法。

【公開番号】特開2008−273774(P2008−273774A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−118354(P2007−118354)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(302060306)大塚化学株式会社 (88)
【Fターム(参考)】