説明

肩こり・五十肩治療用貼付剤

【解決手段】 膏体中にリドカイン又はその薬学的に許容される塩0.5〜5重量%を含有することを特徴とする肩こり・五十肩治療用貼付剤。
【効果】 肩こりや五十肩の治療に顕著な効果を示し、かつ一般用(大衆向け)医薬品としても使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、肩こりやいわゆる五十肩の治療に用いるリドカイン含有貼付剤に関する。
【0002】
【従来の技術】肩こりは、現代社会においては、老若男女を問わず多発する疾患であり、軽症のものから重症のものがあり、多くの場合はその原因は、明確でないことが多い。一方、いわゆる五十肩は、特別な誘因なく発症し、疼痛を伴うことが多い。特に、夜間に痛みは増悪し睡眠が障害される。前記症状を有し、X線所見で異常所見がほとんど認められないことにより五十肩と診断される。
【0003】五十肩の治療は、一般的に急性期と慢性期に分けて行われており、急性期には、最も効果的な方法として局所麻酔薬やステロイド薬が、肩峰下滑液包内や肩関節内に注射投与されるのが一般的である。疼痛が軽減した慢性期には、理学療法、運動療法が主流となって行く。このような治療は、肩こりの重症のケースにおいても、同様であり、やはり急性期には肩に筋肉注射が行われる。急性期に行われる注射による治療は、苦痛を伴い、しかもこれらの疾患は繰り返し発症するため、繰り返し投与する必要があるものの、注射は組織損傷を与えるため頻回の投与が難しい欠点がある。
【0004】外皮から局所麻酔薬を吸収させることを目的とした製剤が特開平4−208229号に記載されているが、この製剤は短時間での局所麻酔効果発現を達成することを目的としており、この製剤がどのような疾患の治療に応用できるかについて全く言及していない。また、この製剤は、リドカイン等の局所麻酔薬を接着剤層中(膏体中)40〜65重量%含有するものであるが、リドカインを5重量%を超えて含有する外用剤は劇薬に指定されており、一般用(大衆向け)医薬品として使用することはできない。
【0005】また、リドカインの5重量%軟膏剤が外傷、熱傷、刺傷、凍傷や痔疾の疼痛と痒みの緩和に用いられているが(第11改正日本薬局方解説書)、これらは基本的には損傷皮膚又は粘膜への投与であるので肩こり、五十肩のように正常皮膚への投与を示唆するものではなく、またリドカイン含有外用剤が肩こりや五十肩の治療に用いられたとの報告もない。更に、軟膏剤は効果の持続性の点で必ずしも十分とはいえない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、肩こりや五十肩の治療に顕著な効果を示し、かつ一般用(大衆向け)医薬品としても使用することができる貼付剤を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者は、前記の課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、膏体中にリドカイン又はその薬学的に許容される塩0.5〜5重量%を含有する貼付剤を肩こりや五十肩の患者の肩患部周辺に貼付したところ、これらの疾患の急性期の治療に極めて有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、膏体中にリドカイン又はその薬学的に許容される塩0.5〜5重量%を含有することを特徴とする肩こり・五十肩治療用貼付剤である。
【0008】以下、本発明を詳細に説明する。本発明の貼付剤において、有効成分としてはリドカインの他、その薬学的に許容される塩、例えば塩酸塩を用いることができる。本発明の貼付剤の剤形は、リドカインを含有し外皮から投与できるものであれば特に限定されるものではなく、例えばテープ剤、パップ剤が挙げられる。
【0009】本発明の貼付剤は、膏体中に有効成分としてリドカイン又はその薬学的に許容される塩0.5〜5重量%を含有することを必要とする。該有効成分の含有量が0.5重量%未満であると、肩こり・五十肩の治療効果が不十分となり、一方、5重量%を超えると、治療効果が向上せず、不経済であるばかりか、劇薬に指定され、一般用(大衆向け)医薬品として使用することはできなくなる。該有効成分の含有量が0.5〜2重量%でも十分に治療効果が得られことから、経済面から当該範囲の含有量とすることが好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明の貼付剤は、膏体中に有効成分としてリドカイン又はその薬学的に許容される塩0.5〜5重量%を含有させること以外は、通常の貼付剤の製造方法と同様に製造することができ、また使用方法も通常の貼付剤と同様である。
【0011】例えば、テープ剤は、リドカイン又はその薬学的に許容される塩を粘着剤に混合して得られた膏体を柔軟な支持体上に塗布することにより製造することができる。粘着剤としては、例えばアクリル酸エステル系、ゴム系、シリコン系の接着剤が挙げられる。支持体は、柔軟で薬物を透過しないものであれば特に限定されず、具体的には、例えばポリオレフィン、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン等のフィルムやシート、更にこれらの2種以上を用いた積層シートが挙げられる。
【0012】また、パップ剤は、リドカイン又はその薬学的に許容される塩を、ゼラチン、カルメロースナトリウム、メチルセルロース又はその塩、ポリアクリル酸又はその塩等の、保水性に富む水溶性高分子を主体とした粘着剤(膏体基剤)と混和して、不織布等の支持体に展延し、膏体表面をポリエチレン、ポリプロピレン等のプラスチックフィルムで被覆し作ることができる。必須成分として、水や保湿剤も混和して作る。他に用いられる水溶性高分子としては、デンプン、寒天、マンナン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。これらの水溶性高分子は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いられ、その配合量は、好ましくは0.5〜50重量%、更に好ましくは5〜25重量%である。
【0013】膏体中には、前記有効成分、粘着剤の他、必要に応じて、通常の吸収助剤、例えばポリプロピレンアルコール、クロタミトン、ベンジルアルコール、エタノール、ジエチルセバケート等を含有させてもよい。本発明の貼付剤を肩こりや五十肩の患者の肩関節周囲の皮膚に貼付すると、皮膚を通してリドカインが吸収され、貼付後1〜2時間には、皮膚表面から深部局所にリドカインが浸透し、疼痛緩和の効果が得られる。
【0014】本発明の貼付剤によれば、重度の肩こりや五十肩による激しい痛みを訴え、治療が必要と認められた患者に、注射で投与することなく、貼付剤を外皮に貼付するのみで、痛みがコントロールでき、患者は、その後の理学、運動療法にスムースに移行できる。患者は、注射を行う必要がなくなり、筋肉や関節への注射という苦痛が軽減できるとともに、通院することなく反復投与が可能となり利便性の面においても著しく向上する。特に、夜間疼痛を特徴とする疾患(五十肩)においては、本発明の貼付剤を家庭に常備して置くことにより、突然に疼痛にあった場合に、緊急に治療が可能になる。
【0015】
【実施例】以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1) テープ剤の製造リドカイン2重量部とアクリル酸エステル系接着剤プライマルN−560(ローム&ハース/日本アクリル)の固形分98重量部を加え、酢酸エチルを加えて全固形分33%の溶液を得た。得られた溶液をポリエステル製剥離紙に乾燥後の厚みが20μmとなるように塗布した。これを温度100℃で5分間乾燥させ、リドカイン2重量%含有接着層(膏体)を得た。得られたリドカイン含有接着層を厚み12μmのポリエステル製支持体に貼り合わせた後、室温で24時間放置後用いた。
【0016】(実施例2) テープ剤の製造縦4〜8cm、横6〜12cm程度の大きさのポリエチレンフィルムテープやビニールテープ等に、1枚当たり5〜50mg(0.5〜5重量%)のリドカインを混合した粘着剤を塗布し、更にその上から薄いフィルム状のカバーを貼ることによりテープ剤を作成した。
【0017】(実施例3) パップ剤の製造(組成) (重量%)
リドカイン 0.5ポリアクリル酸ナトリウム 5.0カルメロースナトリウム 2.0プロピレングリコール 10.0ゼラチン 1.0グリセリン 20.070%ソルビトール液 15.0グリシナール 0.5精製水 46.0
【0018】(製法)精製水にリドカイン、プロピレングリコール、グリセリン、70%ソルビトール液を加え、均一な溶解液とした。これに残りの添加物を加え攪拌し均一なゲルを得た。これを不織布の上に均一な厚さになるように展延し、パップ剤を得た。
(実施例4)肩こりを強く訴える患者に、実施例1のテープ剤を肩に貼付した。貼付後効果の出始める時間(明らかに肩こりが楽になったと訴えた時間)と効果の持続時間(再度製剤を貼付した時間)を問診により検討した。貼付後効果の出始める時間について患者25名に問診して得られた結果を表1に、貼付後の効果持続時間について患者20名に問診して得られた結果を表2に示す。概して、効果は貼付後1〜2時間で効果が出始め、その後6〜12時間効果は持続した。
【0019】


【0020】


【0021】(実施例5)五十肩の症状を持つ患者に、実施例1のテープ剤を肩関節付近へ外用で投与した。投与後の疼痛の緩和を問診で評価した。更に、再発時に患者からの再投与依頼率を調べ、薬剤の有用性の目安とした。結果を表3に示す。
【0022】


【0023】
【発明の効果】本発明の貼付剤は、肩こりや五十肩の治療に顕著な効果を示し、かつ一般用(大衆向け)医薬品としても使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 膏体中にリドカイン又はその薬学的に許容される塩0.5〜5重量%を含有することを特徴とする肩こり・五十肩治療用貼付剤。
【請求項2】 テープ剤又はパップ剤である請求項1記載の貼付剤。
【請求項3】 膏体中にリドカイン又はその薬学的に許容される塩0.5〜2重量%を含有する請求項2記載の貼付剤。