育苗方法
【課題】 育苗途中で苗が倒伏すると育苗不良となり、圃場への移植時に植付欠株を発生させるおそれがある。また、圃場への移植時に苗が倒伏すると、移植機の苗取出装置が倒伏した苗に不適正に作用して苗を損傷させるおそれがある。
そこで、苗の倒伏を防止するために、覆土量を多くして覆土の厚みを増すと、播種した種子が発芽しにくくなり、逆に育苗不良を発生させるおそれがある。
【解決手段】 育苗容器(1)に床土を供給し、段差を有する押圧面を備える押圧突起(3)により、供給された床土を上方から押圧して育苗床の上面に低位側上面(2a)と高位側上面(2b)とで段差を形成し、前記低位側上面(2a)に播種し、該低位側上面(2a)の上方に前記高位側上面(2b)と同じ高さになるよう覆土し、発芽後に育苗容器(1)の上端まで再度覆土して育苗する育苗方法とした。
そこで、苗の倒伏を防止するために、覆土量を多くして覆土の厚みを増すと、播種した種子が発芽しにくくなり、逆に育苗不良を発生させるおそれがある。
【解決手段】 育苗容器(1)に床土を供給し、段差を有する押圧面を備える押圧突起(3)により、供給された床土を上方から押圧して育苗床の上面に低位側上面(2a)と高位側上面(2b)とで段差を形成し、前記低位側上面(2a)に播種し、該低位側上面(2a)の上方に前記高位側上面(2b)と同じ高さになるよう覆土し、発芽後に育苗容器(1)の上端まで再度覆土して育苗する育苗方法とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、育苗方法に関する。
【背景技術】
【0002】
育苗容器に床土供給装置により床土を供給し、押圧具となる押圧ローラにより供給された床土を上方から押圧して育苗床を形成し、播種装置により前記育苗床の上面に播種し、該育苗床の上面に覆土するという一連の播種作業を行う播種機が知られている(例えば、特許文献1参照)。この播種機により播種作業が施された後の育苗容器は、育苗施設内で育苗作業がなされる。
【特許文献1】特開平8−187015号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
背景技術に示される播種作業は各種の苗において共通するものであるが、例えば根量が乏しく根張りの悪い苗や根量に対して茎葉部が極めて大きい苗等は、その分倒伏し易く、育苗途中で倒伏することで育苗不良となり、また移植機で圃場に移植するとき、移植機の苗取出装置が倒伏した苗に不適正に作用して苗を損傷させたり、前記育苗不良により植付欠株を発生させたりするおそれがある。特に、圃場での移植時は、風にさらされたり移植前に灌水したりすることにより、播種作業で施した覆土が飛散したり該覆土の厚みが低下するおそれがあり、更に苗が倒伏し易くなる。
【0004】
そこで、苗の倒伏を防止するために播種作業時の覆土量を多くすることが考えられるが、覆土量を多くして覆土の厚みを増すと、播種した種子が発芽しにくくなり、逆に育苗不良を発生させるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記課題を解決するべく次のような技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1に係る発明は、育苗床に播種し、覆土し、発芽後に再度覆土して育苗する育苗方法とした。
【0006】
従って、請求項1に係る発明によると、播種した後に覆土し、発芽後に再度覆土するので、播種した後の覆土量を種子の発芽を阻害しない程度にすれば、発芽精度を高めることができ、発芽後の再度の覆土により育苗される苗の倒伏を防止することができる。
【0007】
また、請求項2に係る発明は、育苗容器(1)に床土を供給し、段差を有する押圧面を備える押圧具(10)により、供給された床土を上方から押圧して育苗床の上面に低位側上面(2a)と高位側上面(2b)とで段差を形成し、前記低位側上面(2a)に播種し、該低位側上面(2a)の上方に前記高位側上面(2b)と同じ高さになるよう覆土し、発芽後に育苗容器(1)の上端まで再度覆土して育苗する請求項1に記載の育苗方法とした。
【0008】
従って、請求項2に係る発明によると、請求項1に係る発明の作用に加えて、押圧具(10)により育苗床の上面に低位側上面(2a)と高位側上面(2b)とで段差を形成し、播種した前記低位側上面(2a)の上方に前記高位側上面(2b)を目安に該高位側上面(2b)と同じ高さになるよう覆土でき、発芽後に育苗容器(1)の上端を目安に該上端まで再度覆土できるので、不慣れな作業者でも播種後と発芽後の各々の覆土量を適正にすることができ、ひいては、より発芽精度を高めると共に育苗される苗の倒伏を防止することができる。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明によると、発芽精度を高めると共に育苗される苗の倒伏を防止することができるので、育苗を良好に行え、移植機で圃場に移植するとき、移植機の苗取出装置が苗を損傷させたり、育苗不良により植付欠株を発生させたりするようなことを防止できる。
【0010】
請求項2に係る発明によると、請求項1に係る発明の作用に加えて、不慣れな作業者でも播種後と発芽後の各々の覆土量を適正にすることができるので、覆土作業を容易に行え、播種作業の作業能率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
この発明の実施の一形態を、以下に説明する。
育苗容器として縦横に複数の育苗ポット1を備える苗トレイを使用する。この苗トレイの育苗ポット1に、ピートモス及びベントナイト等を含む一般的な粒状培土を供給して床土を詰める。その後、床土の上面に例えば野菜等の種子を供給して播種し、その上にバーミキュライト等の軽量の粒状培土を覆土する。この播種後の覆土は、軽量培土を使用するため、種子の発芽は促進されるが、風にさらされたり灌水したりすることにより、飛散したり該覆土の厚みが低下するおそれがある。そこで、発芽後の本葉抽出前の時期に、再度播種後の培土より比重の大きい培土(例えば、粒径3mm以下の乾燥土)を育苗ポット1の上端まで覆土する。これにより、発芽精度を高めることができると共に、発芽後の再度の覆土fにより育苗される苗nの倒伏を防止することができる。よって、後の育苗を良好に行え、移植機で圃場に移植するとき、移植機の苗取出装置が苗を損傷させたり、育苗不良により植付欠株を発生させたりするようなことを防止できる。尚、図1に示すように、発芽した芽がその近傍の土壌を押し上げるため、芽の周囲の土壌に窪みkが発生することがあるが、2回目の覆土に粒径3mm以下の乾燥土を使用するので、2回目の覆土fにより前記窪みkを埋めることができると共に、苗nの株元の土壌を頑丈にして苗の倒伏を防止できる。
【0012】
尚、上述の覆土を行う方法として、床土を詰めた後、段差を有する押圧面を備える押圧具により、育苗ポット1内の床土を上方から押圧して育苗床の上面に低位側上面2aと高位側上面2bとで段差を形成し、前記低位側上面2aに播種し、該低位側上面2aの上方に前記高位側上面2bと同じ高さになるよう覆土し、発芽後に育苗ポット1の上端まで再度覆土することができる。これにより、押圧具により育苗床の上面に低位側上面2aと高位側上面2bとで段差を形成し、播種した前記低位側上面2aの上方に前記高位側上面2bを目安に該高位側上面2bと同じ高さになるよう覆土でき、発芽後に育苗容器となる育苗ポット1の上端を目安に該上端まで再度覆土できるので、不慣れな作業者でも播種後と発芽後の各々の覆土量を適正にすることができ、覆土作業を容易に行え、播種作業の作業能率を向上させることができると共に、より発芽精度を高めると共に育苗される苗の倒伏を防止することができる。前記押圧具として、外周に育苗ポット1のピッチと同じピッチで配列される押圧突起3を複数備える押圧ローラ10を採用できる。
【0013】
前記押圧突起は、育苗ポット1内の育苗床の上面が該育苗ポット1の中央部で低く外周部で高くなるよう、中央部3aと外周部3bとが平面状に構成されると共に、中央部3aが外周部3bに対して段状に高くなっている。尚、前記押圧突起3の中央部3aのど真ん中には、播種穴2cを形成するための球面状の播種用突起部3cを備えている。従って、該押圧ローラ10を苗トレイの上方で回転させながら苗トレイ側に押圧することにより、図3に示すように、育苗ポット1の中央部の育苗床の上面に平面状の低位側上面2aを形成し、育苗ポット1の外周部の育苗床の上面に平面状の高位側上面2bを形成し、育苗ポット1のど真ん中の育苗床の上面に球面状の播種穴2cを形成し、前記低位側上面2aと高位側上面2bとで段差を形成することができる。
【0014】
前述した床土詰めから覆土までの一連の作業は、播種機6により自動的に行うことができる。この播種機6は、苗トレイを搬送する搬送コンベア7を備えると共に、該搬送コンベア7の上側に搬送上手側から順に苗トレイ供給装置8、床土供給装置9、回転ブラシ16、潅水装置17、押圧ローラ10、播種装置11、覆土装置12を備えている。尚、搬送コンベア7上においては、上方に開口する箱型のアンダ−トレイに苗トレイを載せてアンダ−トレイを搬送することにより苗トレイを搬送するようになっている。尚、前記アンダートレイは、水稲用苗箱等を兼用することができる。また、搬送コンベア7の終端には着脱可能な補助レール13を設けており、床土の供給、播種及び覆土作業が完了して搬送コンベア7により搬送される苗トレイ及びアンダ−トレイを作業者が該補助レール13上で取り上げて回収するようになっている。尚、補助レール13には、該レール13を地面から支えるための脚部13aを設けている。播種機6にも搬送コンベア7の搬送方向における前後2か所にそれぞれ脚部6a,6bを設けており、搬送コンベア7の搬送下手側の脚部6bの下端には左右一対の移動用車輪14を設けている。播種機6を移動するときには、補助レール13を取り外し、作業者が搬送コンベア7の搬送上手側の脚部6aが地面から浮き上がるように播種機6の端部を少し持ち上げ、移動用車輪14により移動させるようになっている。苗トレイ供給装置8は、空の苗トレイを複数枚積み重ねた苗トレイ群の下側から一枚ずつ搬送コンベア7上へ空の苗トレイを繰り出すようになっている。従って、作業者が苗トレイ供給装置8の下方の搬送コンベア7上にアンダ−トレイを載置することにより、該アンダ−トレイ上に空の苗トレイが供給される。そして、搬送コンベア7によりアンダ−トレイごと空の苗トレイを搬送し、床土供給装置9で苗トレイの育苗ポット1へ床土が供給され、押圧ローラ10で育苗ポット1内の床土を上方から押圧して低位側上面2a、高位側上面2b及び播種穴2cを形成し、播種装置11で前記播種穴2cへ所定粒数ずつ例えばコ−ティングされた種子を供給し、覆土装置12の土繰出ベルトで播種された種子の上に培土を供給して覆土するようになっている。
【0015】
尚、押圧ローラ10の押圧突起3は床土を押圧するので土が付着しやすく低位側上面2a、高位側上面2b及び播種穴2cの形状が適正に維持されにくいが、押圧ローラ10の押圧突起3に付着する土を除去するブラシ状のスクレーパを設けると、低位側上面2a、高位側上面2b及び播種穴2cの形状を適正に維持することができる。押圧ローラ10は、機枠側の上下に長い長孔15に上下位置調節可能に取り付けられており、低位側上面2a、高位側上面2b及び播種穴2cの形成状態を確認しながら該ローラ10を上下位置調節することにより、低位側上面2a、高位側上面2b及び播種穴2cを適正にすることができる。これにより、発芽率が安定し、良好に育苗することができる。従来の押圧ローラは、播種穴を形成するための播種用突起部しか設けられておらず、また上下位置調節できないように設けられていたので、搬送コンベア等の周辺の部材の寸法誤差により播種穴の深さが不適正となって播種深さが不適正となり、発芽率が安定せず苗を良好に育苗できなくなるおそれがある。
【0016】
尚、回転ブラシ16も、前記押圧ローラ10と同様に搬送コンベア7に対して上下位置調節可能に設けられている。
尚、播種装置11と覆土装置12との間に、薬剤供給装置を設けることができる。これにより、育苗時や圃場での栽培時に薬剤を供給する手間が省け、作業の効率化が図れる。
【0017】
尚、押圧ローラ10と覆土装置12との間隔を苗トレイの1枚分以上の間隔に設定し、播種装置11をワンタッチで簡易に上方へ取り外せる構成とすれば、搬送コンベア7で搬送する苗トレイを容易に取り出すことができる。尚、播種装置11の前後に苗トレイが搬送コンベア7から浮き上がらないように上方から押さえる苗トレイ押さえ具を設けた場合、該苗トレイ押さえ具を播種装置11に一体で設け、苗トレイ押さえ具を播種装置11と一体で取り外せる構成とすれば、搬送コンベア7で搬送する苗トレイを容易に取り出すことができる。
【0018】
この播種機6を使用して播種作業を行うとき、先ずは、苗トレイ供給装置8、床土供給装置9、回転ブラシ16、潅水装置17、押圧ローラ10、播種装置11、覆土装置12の全ての装置を作動させて、播種後の覆土までを行う。このとき、覆土装置12の培土の繰出量は、土繰出ベルトの駆動速度を調節する等して、育苗ポット1内の育苗床の高位側上面2bの高さまで覆土されるようにする。そして、播種後の覆土まで行った苗トレイは、温度管理及び湿度管理がなされた発芽施設等で発芽させる。
【0019】
本葉抽出前の時期になると、苗トレイを再度播種機6へ供給する。このとき、搬送コンベア7及び覆土装置12以外の装置(苗トレイ供給装置8、床土供給装置9、回転ブラシ16、潅水装置17、押圧ローラ10、播種装置11)を非作用状態にする。尚、前記回転ブラシ16及び押圧ローラ10は、これらの上下位置調節により、苗トレイに接触しない高さまで上昇させて退避させることで非作用状態にする。また、播種装置11は、上方へ取り外すことにより、播種をしない非作用状態にすることができる。また、苗トレイ供給装置8、床土供給装置9及び灌水装置17は、各々の供給のための繰出機構の作動を停止させて非作用状態にすることができる。尚、これらの搬送コンベア7及び覆土装置12以外の各々の装置の非作用状態への切替にあたっては、上述の通り、退避させる方法や取り外す方法や作動停止させる方法を適宜使用すればよい。そして、搬送コンベア7を駆動して苗トレイを搬送させながら、覆土装置12により育苗ポット1の上端まで覆土する。尚、播種後の覆土と発芽後の覆土とで使用する培土が異なり、また覆土量も異なるので、覆土装置12の土貯留タンク内の培土を入れ替えると共に覆土装置12の培土の繰出量を調節するか、又は前記土貯留タンクあるいは覆土装置12自体を交換する必要がある。ところが、搬送コンベア7に沿って複数種類(2種類)の覆土装置を設け、播種後の覆土用培土を土貯留タンクに充填した覆土装置と発芽後の覆土用培土を土貯留タンクに充填した覆土装置とを準備しておけば、覆土装置の作動の入切だけで対応でき、土貯留タンク内の培土を入れ替えたり覆土装置の培土の繰出量を調節したり前記土貯留タンクあるいは覆土装置自体を交換したりする手間が省ける。
【0020】
尚、播種後及び発芽後の覆土を上方から押圧してもよい。これにより、種子に徒長抑制ホルモンであるエチレンの発生を促し、徒長を抑制することができる。また、この覆土の鎮圧でできた育苗ポット1内の窪みに川砂等の比重の重い培土を覆土すれば、更なる徒長抑制効果を得ることができる。このような覆土の鎮圧は、播種機6により自動的に行うこともできる。また、発芽後の覆土を鎮圧した後の3回目以降の覆土は、前述したように苗トレイを播種機6に供給して行うことができる。
【0021】
播種作業を終えた苗トレイは、アンダートレイに載せた状態で、鎮圧ローラ等で100〜300g/(平方センチメートル)程度の圧力で押圧された置床に載置されて育苗される。これにより、置床が押圧され固められているので、苗トレイからの根が育苗ポット又はアンダートレイの排水孔から置床に伸長しにくく、根が置床に伸長しても根巻きする程に旺盛に伸長しないため、その分育苗ポット1内での根の伸長を促進でき、苗の床部を頑丈にでき、育苗後の育苗ポット1からの苗の取出を良好に行え、ひいては圃場への苗の移植を適正に行える。尚、前記置床は、粘土とシルト分とを合わせて20%以上含む粘土質の土壌により形成すれば、粘土分が多いので押し固めやすく、根が置床に伸長するのを効率的に抑制することができる。また、他の育苗方法として、例えば育苗施設内で苗トレイをアンダートレイごと棚に載せ、育苗ポット又はアンダートレイの底面を空気にさらすことでエアープルーニング効果を生じさせ、育苗ポット又はアンダートレイの排水孔からの根の伸長を抑えて育苗ポット内の根巻きを促す方法がある。但し、この方法は、苗トレイやアンダートレイ等の底部が空気にさらされているため、床土が乾燥しやすく、灌水を頻繁に行う必要がある。
【0022】
上述のような育苗方法で育苗された野菜苗は、例えばトマト等の接木用として使用されることがある。接木は、台木用苗と穂木用苗とを準備し、各々の苗の胚軸を切断し、互いの切断面を接合しクリップ20で固定することにより行われる。尚、一般的に台木用苗は、根鉢部分を切除し断根して接木用苗として使用される。従来、この接木を行った接木苗は、挿苗機等で床土を詰めた別の苗トレイに挿苗して養生が行われている。しかし、この接木苗にはクリップ20が装着されているので、苗トレイに苗を挿苗するとき、クリップ20が邪魔になって挿苗作業が困難である。そこで、図5に示すような養生用資材21を使用することができる。この養生用資材21は、4側方を囲む側壁22と、該側壁22で囲まれる空間内に設けた多数の板材で構成される格子23と、該格子23で区切られる各スペースに前記板材から突出する各々のフック24とを備え、各々のフック24にクリップ20を引っ掛けて接木苗を前記各スペース内で支持して養生する構成となっている。尚、養生用資材21の一方側の最端列のフック24は、側壁22から突出して支持されている。尚、前記フック24は、上方に屈曲する鉤形状である。これにより、接木苗の挿苗作業が不要になり、接木苗のクリップ20をフック24に引っ掛けるだけの簡単な作業で養生させることができ、接木作業の容易化が図れる。尚、養生は、温度及び湿度が維持された養生室内で行われるのが一般的である。尚、前記フック24は、板材から上方へ直線状に延びる棒材で構成してもよい。これにより、養生用資材の製作の容易化が図れる。また、前記の棒材のフックは、格子23の交差部から上方へ延びる構成としてもよい。
【0023】
また、接木苗の下部を養液に浸して養生を行い、接木苗の活着及び発根を促すことができる。この養生方法により養生された接木苗を養液栽培における栽植回数の多い低段密植栽培に用いると、該栽培における栽植が容易になり、栽培において省力化及びコストダウンが図れる。このとき、断根された台木用苗を使用した接木苗は、床土が無いため、養液内に土が混入するようなことがなく、病害の発生を防止できる。従来の低段密植栽培は、土付き苗を使用していたので、栽植が難しく、栽培コストを上昇させていた。尚、接木苗の下部を養液に浸して養生を行うにあたり、養液を貯留する上方が開口された貯留容器25と該貯留容器25の開口部分に載せる苗支持用マット26とを使用すればよい。前記苗支持用マット26は、縦横に所定のピッチ(25〜40mm)で切れ目状の無数の苗支持用孔26aを備え、該苗支持用孔26aに接木苗を挿して該苗を支持する構成であり、貯留容器25の開口部分に載せることで支持された苗の下部が貯留容器25内の養液に浸される構成である。
【0024】
また、苗トレイで育苗された葱や玉葱の苗は圃場に移植され栽培されるが、栽培された葱や玉葱等の作物は、図10乃至図13に示す掘取り機30で掘り出して収穫することができる。前記掘取り機30は、トラクタ等の走行車両に牽引されるものであり、側面視で前後に複数本(4本)の掘取フレーム31,32を配列して設け、該掘取フレーム31,32が土中に突入して前進することにより作物を掘り取る構成となっている。前記複数本(4本)の掘取フレーム31,32は、前側のものから順に作物に対して左右に交互に配置され、後側のものほど収穫する作物に近い位置となるよう左右方向の位置が設定されている。これにより、作物の周囲の土壌を前側の掘取フレーム31から順に徐々に崩すことができ、作物をあまり傷めずに容易に収穫することができる。また、前側の2本の掘取フレーム31は機体に固定されているのに対して、後側の2本の掘取フレーム32は、走行車両側からの動力により駆動する偏心軸33からロッド34を介して伝達されて前後に揺動する構成となっている。これにより、前側の2本の掘取フレーム31である程度土壌を崩した後、揺動する後側の2本の掘取フレーム32で土壌を細かく分解することができ、収穫の容易化が図れる。尚、偏心軸33に連結するロッド34の連結位置(偏心位置)を変更することにより、後側の掘取フレーム32の揺動量を変更して土質(固さ、脆さ)等に対応することができる。
【0025】
また、図14は上述とは異なる収穫機をしめすものである。この収穫機40は、葱や玉葱等の作物を収穫するものであり、前端部に土中へ突入して作物の根を切断しながら土中から作物を持ち上げる根切りカッタ41を備える根切り部42と、該根切り部42の後方で持ち上げられた作物を後側へ搬送する搬送ベルト43を備える搬送部44と、該搬送部44の後方で搬送されてきた作物を整列させる整列部45と、該整列部45の後方で整列されてきた作物を結束する結束部46とを備え、前後左右計4輪の走行車輪47,48で走行しながら作物を収穫する。機体の後端部には操縦ハンドル49とエンジン50とを備え、エンジン50から主伝動ケース51及び左右の副伝動ケース52を介して左右の後輪48へ伝動する構成である。前記根切りカッタ41は、作物の根の長さに対応するべく上下高さを調節できる構成となっている。前記整列部45は、後下がりに傾斜し前後に揺動する揺動棚53と、該揺動棚53の左右一方側(右側)に設けた案内搬送ベルト54とを備え、作物を後方へ搬送しながら整列させる構成となっている。揺動棚53は、下方に貫通するよう網目状に構成され、主伝動ケース51からの動力がロッド55,56及びアーム57,58,59を介して伝達されて揺動し、作物を整列搬送しながら作物に付着する土を落とす。また、揺動棚53は、左右に若干の角度で傾斜しており、左右一方側(右側)に作物を寄せながら案内搬送ベルト54で案内して搬送する構成となっている。結束部46は、整列部45から搬送されてきた作物を貯留する貯留容器61を設け、結束ロープrを装填し、大きさを変更できるリング60内に作物を入れて該リング60の大きさまで作物が溜まったら結束ロープrを繰り出して結束する。尚、整列部46の後端には開閉シャッタ62を設けており、該開閉シャッタ62により結束部46で結束作業をしている間は整列部45から作物が供給されないように作物を受け止める構成となっている。この収穫機40により、葱や玉葱等の作物の収穫作業が容易に行える。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】発芽後の本葉抽出前の時期の苗の状態を示す断面図
【図2】2回目の覆土をした状態を示す断面図
【図3】押圧突起で育苗床を押圧した状態を示す断面図
【図4】播種機を示す側面図
【図5】養生用資材を示す平面図
【図6】接木苗をフックに引っ掛けた状態を示す断面側面図
【図7】フックに引っ掛けたクリップを示す平面図
【図8】貯留容器に苗支持用マットを載せた状態を示す側面図
【図9】苗支持用マットを示す平面図
【図10】掘取り機を示す側面図
【図11】掘取り機を示す背面図
【図12】後側の掘取フレームの揺動機構を示す側面図
【図13】後側の掘取フレームの揺動機構を示す背面図
【図14】収穫機を示す側面図
【符号の説明】
【0027】
1:育苗ポット、2a:低位側上面、2b:高位側上面、10:押圧ローラ
【技術分野】
【0001】
本発明は、育苗方法に関する。
【背景技術】
【0002】
育苗容器に床土供給装置により床土を供給し、押圧具となる押圧ローラにより供給された床土を上方から押圧して育苗床を形成し、播種装置により前記育苗床の上面に播種し、該育苗床の上面に覆土するという一連の播種作業を行う播種機が知られている(例えば、特許文献1参照)。この播種機により播種作業が施された後の育苗容器は、育苗施設内で育苗作業がなされる。
【特許文献1】特開平8−187015号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
背景技術に示される播種作業は各種の苗において共通するものであるが、例えば根量が乏しく根張りの悪い苗や根量に対して茎葉部が極めて大きい苗等は、その分倒伏し易く、育苗途中で倒伏することで育苗不良となり、また移植機で圃場に移植するとき、移植機の苗取出装置が倒伏した苗に不適正に作用して苗を損傷させたり、前記育苗不良により植付欠株を発生させたりするおそれがある。特に、圃場での移植時は、風にさらされたり移植前に灌水したりすることにより、播種作業で施した覆土が飛散したり該覆土の厚みが低下するおそれがあり、更に苗が倒伏し易くなる。
【0004】
そこで、苗の倒伏を防止するために播種作業時の覆土量を多くすることが考えられるが、覆土量を多くして覆土の厚みを増すと、播種した種子が発芽しにくくなり、逆に育苗不良を発生させるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記課題を解決するべく次のような技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1に係る発明は、育苗床に播種し、覆土し、発芽後に再度覆土して育苗する育苗方法とした。
【0006】
従って、請求項1に係る発明によると、播種した後に覆土し、発芽後に再度覆土するので、播種した後の覆土量を種子の発芽を阻害しない程度にすれば、発芽精度を高めることができ、発芽後の再度の覆土により育苗される苗の倒伏を防止することができる。
【0007】
また、請求項2に係る発明は、育苗容器(1)に床土を供給し、段差を有する押圧面を備える押圧具(10)により、供給された床土を上方から押圧して育苗床の上面に低位側上面(2a)と高位側上面(2b)とで段差を形成し、前記低位側上面(2a)に播種し、該低位側上面(2a)の上方に前記高位側上面(2b)と同じ高さになるよう覆土し、発芽後に育苗容器(1)の上端まで再度覆土して育苗する請求項1に記載の育苗方法とした。
【0008】
従って、請求項2に係る発明によると、請求項1に係る発明の作用に加えて、押圧具(10)により育苗床の上面に低位側上面(2a)と高位側上面(2b)とで段差を形成し、播種した前記低位側上面(2a)の上方に前記高位側上面(2b)を目安に該高位側上面(2b)と同じ高さになるよう覆土でき、発芽後に育苗容器(1)の上端を目安に該上端まで再度覆土できるので、不慣れな作業者でも播種後と発芽後の各々の覆土量を適正にすることができ、ひいては、より発芽精度を高めると共に育苗される苗の倒伏を防止することができる。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明によると、発芽精度を高めると共に育苗される苗の倒伏を防止することができるので、育苗を良好に行え、移植機で圃場に移植するとき、移植機の苗取出装置が苗を損傷させたり、育苗不良により植付欠株を発生させたりするようなことを防止できる。
【0010】
請求項2に係る発明によると、請求項1に係る発明の作用に加えて、不慣れな作業者でも播種後と発芽後の各々の覆土量を適正にすることができるので、覆土作業を容易に行え、播種作業の作業能率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
この発明の実施の一形態を、以下に説明する。
育苗容器として縦横に複数の育苗ポット1を備える苗トレイを使用する。この苗トレイの育苗ポット1に、ピートモス及びベントナイト等を含む一般的な粒状培土を供給して床土を詰める。その後、床土の上面に例えば野菜等の種子を供給して播種し、その上にバーミキュライト等の軽量の粒状培土を覆土する。この播種後の覆土は、軽量培土を使用するため、種子の発芽は促進されるが、風にさらされたり灌水したりすることにより、飛散したり該覆土の厚みが低下するおそれがある。そこで、発芽後の本葉抽出前の時期に、再度播種後の培土より比重の大きい培土(例えば、粒径3mm以下の乾燥土)を育苗ポット1の上端まで覆土する。これにより、発芽精度を高めることができると共に、発芽後の再度の覆土fにより育苗される苗nの倒伏を防止することができる。よって、後の育苗を良好に行え、移植機で圃場に移植するとき、移植機の苗取出装置が苗を損傷させたり、育苗不良により植付欠株を発生させたりするようなことを防止できる。尚、図1に示すように、発芽した芽がその近傍の土壌を押し上げるため、芽の周囲の土壌に窪みkが発生することがあるが、2回目の覆土に粒径3mm以下の乾燥土を使用するので、2回目の覆土fにより前記窪みkを埋めることができると共に、苗nの株元の土壌を頑丈にして苗の倒伏を防止できる。
【0012】
尚、上述の覆土を行う方法として、床土を詰めた後、段差を有する押圧面を備える押圧具により、育苗ポット1内の床土を上方から押圧して育苗床の上面に低位側上面2aと高位側上面2bとで段差を形成し、前記低位側上面2aに播種し、該低位側上面2aの上方に前記高位側上面2bと同じ高さになるよう覆土し、発芽後に育苗ポット1の上端まで再度覆土することができる。これにより、押圧具により育苗床の上面に低位側上面2aと高位側上面2bとで段差を形成し、播種した前記低位側上面2aの上方に前記高位側上面2bを目安に該高位側上面2bと同じ高さになるよう覆土でき、発芽後に育苗容器となる育苗ポット1の上端を目安に該上端まで再度覆土できるので、不慣れな作業者でも播種後と発芽後の各々の覆土量を適正にすることができ、覆土作業を容易に行え、播種作業の作業能率を向上させることができると共に、より発芽精度を高めると共に育苗される苗の倒伏を防止することができる。前記押圧具として、外周に育苗ポット1のピッチと同じピッチで配列される押圧突起3を複数備える押圧ローラ10を採用できる。
【0013】
前記押圧突起は、育苗ポット1内の育苗床の上面が該育苗ポット1の中央部で低く外周部で高くなるよう、中央部3aと外周部3bとが平面状に構成されると共に、中央部3aが外周部3bに対して段状に高くなっている。尚、前記押圧突起3の中央部3aのど真ん中には、播種穴2cを形成するための球面状の播種用突起部3cを備えている。従って、該押圧ローラ10を苗トレイの上方で回転させながら苗トレイ側に押圧することにより、図3に示すように、育苗ポット1の中央部の育苗床の上面に平面状の低位側上面2aを形成し、育苗ポット1の外周部の育苗床の上面に平面状の高位側上面2bを形成し、育苗ポット1のど真ん中の育苗床の上面に球面状の播種穴2cを形成し、前記低位側上面2aと高位側上面2bとで段差を形成することができる。
【0014】
前述した床土詰めから覆土までの一連の作業は、播種機6により自動的に行うことができる。この播種機6は、苗トレイを搬送する搬送コンベア7を備えると共に、該搬送コンベア7の上側に搬送上手側から順に苗トレイ供給装置8、床土供給装置9、回転ブラシ16、潅水装置17、押圧ローラ10、播種装置11、覆土装置12を備えている。尚、搬送コンベア7上においては、上方に開口する箱型のアンダ−トレイに苗トレイを載せてアンダ−トレイを搬送することにより苗トレイを搬送するようになっている。尚、前記アンダートレイは、水稲用苗箱等を兼用することができる。また、搬送コンベア7の終端には着脱可能な補助レール13を設けており、床土の供給、播種及び覆土作業が完了して搬送コンベア7により搬送される苗トレイ及びアンダ−トレイを作業者が該補助レール13上で取り上げて回収するようになっている。尚、補助レール13には、該レール13を地面から支えるための脚部13aを設けている。播種機6にも搬送コンベア7の搬送方向における前後2か所にそれぞれ脚部6a,6bを設けており、搬送コンベア7の搬送下手側の脚部6bの下端には左右一対の移動用車輪14を設けている。播種機6を移動するときには、補助レール13を取り外し、作業者が搬送コンベア7の搬送上手側の脚部6aが地面から浮き上がるように播種機6の端部を少し持ち上げ、移動用車輪14により移動させるようになっている。苗トレイ供給装置8は、空の苗トレイを複数枚積み重ねた苗トレイ群の下側から一枚ずつ搬送コンベア7上へ空の苗トレイを繰り出すようになっている。従って、作業者が苗トレイ供給装置8の下方の搬送コンベア7上にアンダ−トレイを載置することにより、該アンダ−トレイ上に空の苗トレイが供給される。そして、搬送コンベア7によりアンダ−トレイごと空の苗トレイを搬送し、床土供給装置9で苗トレイの育苗ポット1へ床土が供給され、押圧ローラ10で育苗ポット1内の床土を上方から押圧して低位側上面2a、高位側上面2b及び播種穴2cを形成し、播種装置11で前記播種穴2cへ所定粒数ずつ例えばコ−ティングされた種子を供給し、覆土装置12の土繰出ベルトで播種された種子の上に培土を供給して覆土するようになっている。
【0015】
尚、押圧ローラ10の押圧突起3は床土を押圧するので土が付着しやすく低位側上面2a、高位側上面2b及び播種穴2cの形状が適正に維持されにくいが、押圧ローラ10の押圧突起3に付着する土を除去するブラシ状のスクレーパを設けると、低位側上面2a、高位側上面2b及び播種穴2cの形状を適正に維持することができる。押圧ローラ10は、機枠側の上下に長い長孔15に上下位置調節可能に取り付けられており、低位側上面2a、高位側上面2b及び播種穴2cの形成状態を確認しながら該ローラ10を上下位置調節することにより、低位側上面2a、高位側上面2b及び播種穴2cを適正にすることができる。これにより、発芽率が安定し、良好に育苗することができる。従来の押圧ローラは、播種穴を形成するための播種用突起部しか設けられておらず、また上下位置調節できないように設けられていたので、搬送コンベア等の周辺の部材の寸法誤差により播種穴の深さが不適正となって播種深さが不適正となり、発芽率が安定せず苗を良好に育苗できなくなるおそれがある。
【0016】
尚、回転ブラシ16も、前記押圧ローラ10と同様に搬送コンベア7に対して上下位置調節可能に設けられている。
尚、播種装置11と覆土装置12との間に、薬剤供給装置を設けることができる。これにより、育苗時や圃場での栽培時に薬剤を供給する手間が省け、作業の効率化が図れる。
【0017】
尚、押圧ローラ10と覆土装置12との間隔を苗トレイの1枚分以上の間隔に設定し、播種装置11をワンタッチで簡易に上方へ取り外せる構成とすれば、搬送コンベア7で搬送する苗トレイを容易に取り出すことができる。尚、播種装置11の前後に苗トレイが搬送コンベア7から浮き上がらないように上方から押さえる苗トレイ押さえ具を設けた場合、該苗トレイ押さえ具を播種装置11に一体で設け、苗トレイ押さえ具を播種装置11と一体で取り外せる構成とすれば、搬送コンベア7で搬送する苗トレイを容易に取り出すことができる。
【0018】
この播種機6を使用して播種作業を行うとき、先ずは、苗トレイ供給装置8、床土供給装置9、回転ブラシ16、潅水装置17、押圧ローラ10、播種装置11、覆土装置12の全ての装置を作動させて、播種後の覆土までを行う。このとき、覆土装置12の培土の繰出量は、土繰出ベルトの駆動速度を調節する等して、育苗ポット1内の育苗床の高位側上面2bの高さまで覆土されるようにする。そして、播種後の覆土まで行った苗トレイは、温度管理及び湿度管理がなされた発芽施設等で発芽させる。
【0019】
本葉抽出前の時期になると、苗トレイを再度播種機6へ供給する。このとき、搬送コンベア7及び覆土装置12以外の装置(苗トレイ供給装置8、床土供給装置9、回転ブラシ16、潅水装置17、押圧ローラ10、播種装置11)を非作用状態にする。尚、前記回転ブラシ16及び押圧ローラ10は、これらの上下位置調節により、苗トレイに接触しない高さまで上昇させて退避させることで非作用状態にする。また、播種装置11は、上方へ取り外すことにより、播種をしない非作用状態にすることができる。また、苗トレイ供給装置8、床土供給装置9及び灌水装置17は、各々の供給のための繰出機構の作動を停止させて非作用状態にすることができる。尚、これらの搬送コンベア7及び覆土装置12以外の各々の装置の非作用状態への切替にあたっては、上述の通り、退避させる方法や取り外す方法や作動停止させる方法を適宜使用すればよい。そして、搬送コンベア7を駆動して苗トレイを搬送させながら、覆土装置12により育苗ポット1の上端まで覆土する。尚、播種後の覆土と発芽後の覆土とで使用する培土が異なり、また覆土量も異なるので、覆土装置12の土貯留タンク内の培土を入れ替えると共に覆土装置12の培土の繰出量を調節するか、又は前記土貯留タンクあるいは覆土装置12自体を交換する必要がある。ところが、搬送コンベア7に沿って複数種類(2種類)の覆土装置を設け、播種後の覆土用培土を土貯留タンクに充填した覆土装置と発芽後の覆土用培土を土貯留タンクに充填した覆土装置とを準備しておけば、覆土装置の作動の入切だけで対応でき、土貯留タンク内の培土を入れ替えたり覆土装置の培土の繰出量を調節したり前記土貯留タンクあるいは覆土装置自体を交換したりする手間が省ける。
【0020】
尚、播種後及び発芽後の覆土を上方から押圧してもよい。これにより、種子に徒長抑制ホルモンであるエチレンの発生を促し、徒長を抑制することができる。また、この覆土の鎮圧でできた育苗ポット1内の窪みに川砂等の比重の重い培土を覆土すれば、更なる徒長抑制効果を得ることができる。このような覆土の鎮圧は、播種機6により自動的に行うこともできる。また、発芽後の覆土を鎮圧した後の3回目以降の覆土は、前述したように苗トレイを播種機6に供給して行うことができる。
【0021】
播種作業を終えた苗トレイは、アンダートレイに載せた状態で、鎮圧ローラ等で100〜300g/(平方センチメートル)程度の圧力で押圧された置床に載置されて育苗される。これにより、置床が押圧され固められているので、苗トレイからの根が育苗ポット又はアンダートレイの排水孔から置床に伸長しにくく、根が置床に伸長しても根巻きする程に旺盛に伸長しないため、その分育苗ポット1内での根の伸長を促進でき、苗の床部を頑丈にでき、育苗後の育苗ポット1からの苗の取出を良好に行え、ひいては圃場への苗の移植を適正に行える。尚、前記置床は、粘土とシルト分とを合わせて20%以上含む粘土質の土壌により形成すれば、粘土分が多いので押し固めやすく、根が置床に伸長するのを効率的に抑制することができる。また、他の育苗方法として、例えば育苗施設内で苗トレイをアンダートレイごと棚に載せ、育苗ポット又はアンダートレイの底面を空気にさらすことでエアープルーニング効果を生じさせ、育苗ポット又はアンダートレイの排水孔からの根の伸長を抑えて育苗ポット内の根巻きを促す方法がある。但し、この方法は、苗トレイやアンダートレイ等の底部が空気にさらされているため、床土が乾燥しやすく、灌水を頻繁に行う必要がある。
【0022】
上述のような育苗方法で育苗された野菜苗は、例えばトマト等の接木用として使用されることがある。接木は、台木用苗と穂木用苗とを準備し、各々の苗の胚軸を切断し、互いの切断面を接合しクリップ20で固定することにより行われる。尚、一般的に台木用苗は、根鉢部分を切除し断根して接木用苗として使用される。従来、この接木を行った接木苗は、挿苗機等で床土を詰めた別の苗トレイに挿苗して養生が行われている。しかし、この接木苗にはクリップ20が装着されているので、苗トレイに苗を挿苗するとき、クリップ20が邪魔になって挿苗作業が困難である。そこで、図5に示すような養生用資材21を使用することができる。この養生用資材21は、4側方を囲む側壁22と、該側壁22で囲まれる空間内に設けた多数の板材で構成される格子23と、該格子23で区切られる各スペースに前記板材から突出する各々のフック24とを備え、各々のフック24にクリップ20を引っ掛けて接木苗を前記各スペース内で支持して養生する構成となっている。尚、養生用資材21の一方側の最端列のフック24は、側壁22から突出して支持されている。尚、前記フック24は、上方に屈曲する鉤形状である。これにより、接木苗の挿苗作業が不要になり、接木苗のクリップ20をフック24に引っ掛けるだけの簡単な作業で養生させることができ、接木作業の容易化が図れる。尚、養生は、温度及び湿度が維持された養生室内で行われるのが一般的である。尚、前記フック24は、板材から上方へ直線状に延びる棒材で構成してもよい。これにより、養生用資材の製作の容易化が図れる。また、前記の棒材のフックは、格子23の交差部から上方へ延びる構成としてもよい。
【0023】
また、接木苗の下部を養液に浸して養生を行い、接木苗の活着及び発根を促すことができる。この養生方法により養生された接木苗を養液栽培における栽植回数の多い低段密植栽培に用いると、該栽培における栽植が容易になり、栽培において省力化及びコストダウンが図れる。このとき、断根された台木用苗を使用した接木苗は、床土が無いため、養液内に土が混入するようなことがなく、病害の発生を防止できる。従来の低段密植栽培は、土付き苗を使用していたので、栽植が難しく、栽培コストを上昇させていた。尚、接木苗の下部を養液に浸して養生を行うにあたり、養液を貯留する上方が開口された貯留容器25と該貯留容器25の開口部分に載せる苗支持用マット26とを使用すればよい。前記苗支持用マット26は、縦横に所定のピッチ(25〜40mm)で切れ目状の無数の苗支持用孔26aを備え、該苗支持用孔26aに接木苗を挿して該苗を支持する構成であり、貯留容器25の開口部分に載せることで支持された苗の下部が貯留容器25内の養液に浸される構成である。
【0024】
また、苗トレイで育苗された葱や玉葱の苗は圃場に移植され栽培されるが、栽培された葱や玉葱等の作物は、図10乃至図13に示す掘取り機30で掘り出して収穫することができる。前記掘取り機30は、トラクタ等の走行車両に牽引されるものであり、側面視で前後に複数本(4本)の掘取フレーム31,32を配列して設け、該掘取フレーム31,32が土中に突入して前進することにより作物を掘り取る構成となっている。前記複数本(4本)の掘取フレーム31,32は、前側のものから順に作物に対して左右に交互に配置され、後側のものほど収穫する作物に近い位置となるよう左右方向の位置が設定されている。これにより、作物の周囲の土壌を前側の掘取フレーム31から順に徐々に崩すことができ、作物をあまり傷めずに容易に収穫することができる。また、前側の2本の掘取フレーム31は機体に固定されているのに対して、後側の2本の掘取フレーム32は、走行車両側からの動力により駆動する偏心軸33からロッド34を介して伝達されて前後に揺動する構成となっている。これにより、前側の2本の掘取フレーム31である程度土壌を崩した後、揺動する後側の2本の掘取フレーム32で土壌を細かく分解することができ、収穫の容易化が図れる。尚、偏心軸33に連結するロッド34の連結位置(偏心位置)を変更することにより、後側の掘取フレーム32の揺動量を変更して土質(固さ、脆さ)等に対応することができる。
【0025】
また、図14は上述とは異なる収穫機をしめすものである。この収穫機40は、葱や玉葱等の作物を収穫するものであり、前端部に土中へ突入して作物の根を切断しながら土中から作物を持ち上げる根切りカッタ41を備える根切り部42と、該根切り部42の後方で持ち上げられた作物を後側へ搬送する搬送ベルト43を備える搬送部44と、該搬送部44の後方で搬送されてきた作物を整列させる整列部45と、該整列部45の後方で整列されてきた作物を結束する結束部46とを備え、前後左右計4輪の走行車輪47,48で走行しながら作物を収穫する。機体の後端部には操縦ハンドル49とエンジン50とを備え、エンジン50から主伝動ケース51及び左右の副伝動ケース52を介して左右の後輪48へ伝動する構成である。前記根切りカッタ41は、作物の根の長さに対応するべく上下高さを調節できる構成となっている。前記整列部45は、後下がりに傾斜し前後に揺動する揺動棚53と、該揺動棚53の左右一方側(右側)に設けた案内搬送ベルト54とを備え、作物を後方へ搬送しながら整列させる構成となっている。揺動棚53は、下方に貫通するよう網目状に構成され、主伝動ケース51からの動力がロッド55,56及びアーム57,58,59を介して伝達されて揺動し、作物を整列搬送しながら作物に付着する土を落とす。また、揺動棚53は、左右に若干の角度で傾斜しており、左右一方側(右側)に作物を寄せながら案内搬送ベルト54で案内して搬送する構成となっている。結束部46は、整列部45から搬送されてきた作物を貯留する貯留容器61を設け、結束ロープrを装填し、大きさを変更できるリング60内に作物を入れて該リング60の大きさまで作物が溜まったら結束ロープrを繰り出して結束する。尚、整列部46の後端には開閉シャッタ62を設けており、該開閉シャッタ62により結束部46で結束作業をしている間は整列部45から作物が供給されないように作物を受け止める構成となっている。この収穫機40により、葱や玉葱等の作物の収穫作業が容易に行える。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】発芽後の本葉抽出前の時期の苗の状態を示す断面図
【図2】2回目の覆土をした状態を示す断面図
【図3】押圧突起で育苗床を押圧した状態を示す断面図
【図4】播種機を示す側面図
【図5】養生用資材を示す平面図
【図6】接木苗をフックに引っ掛けた状態を示す断面側面図
【図7】フックに引っ掛けたクリップを示す平面図
【図8】貯留容器に苗支持用マットを載せた状態を示す側面図
【図9】苗支持用マットを示す平面図
【図10】掘取り機を示す側面図
【図11】掘取り機を示す背面図
【図12】後側の掘取フレームの揺動機構を示す側面図
【図13】後側の掘取フレームの揺動機構を示す背面図
【図14】収穫機を示す側面図
【符号の説明】
【0027】
1:育苗ポット、2a:低位側上面、2b:高位側上面、10:押圧ローラ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
育苗床に播種し、覆土し、発芽後に再度覆土して育苗する育苗方法。
【請求項2】
育苗容器(1)に床土を供給し、段差を有する押圧面を備える押圧具(10)により、供給された床土を上方から押圧して育苗床の上面に低位側上面(2a)と高位側上面(2b)とで段差を形成し、前記低位側上面(2a)に播種し、該低位側上面(2a)の上方に前記高位側上面(2b)と同じ高さになるよう覆土し、発芽後に育苗容器(1)の上端まで再度覆土して育苗する請求項1に記載の育苗方法。
【請求項1】
育苗床に播種し、覆土し、発芽後に再度覆土して育苗する育苗方法。
【請求項2】
育苗容器(1)に床土を供給し、段差を有する押圧面を備える押圧具(10)により、供給された床土を上方から押圧して育苗床の上面に低位側上面(2a)と高位側上面(2b)とで段差を形成し、前記低位側上面(2a)に播種し、該低位側上面(2a)の上方に前記高位側上面(2b)と同じ高さになるよう覆土し、発芽後に育苗容器(1)の上端まで再度覆土して育苗する請求項1に記載の育苗方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−82043(P2009−82043A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−254513(P2007−254513)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
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