説明

胃粘膜内へのペプチド送達方法及び装置

本発明は、非ヘリコバクター関連疾患の治療のためのペプチド送達であって、ペプチドが生体内で粘膜に送達されるペプチド送達の分野に関する。特に、本発明は、i)ヘリコバクター・ピロリのウレアーゼ酵素をコードする遺伝子内にペプチドをコードする遺伝子を挿入してインフレーム遺伝子が発現した時にウレアーゼ酵素機能を弱めるように、インフレーム遺伝子を産生し、ii)ヘリコバクター・ピロリが粘膜にコロニーを形成するように、前記動物を換算させる工程を含む、治療を必要とする動物の粘膜にペプチドを送達する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、非ヘリコバクターペプチドを含む新規なヘリコバクター構築物が提供されるような、ヘリコバクターをベースとするベクター、プラスミドベクター及びシャトルベクターの分野に関する。本発明は、生体内で、ペプチドが粘膜に送達される、非ヘリコバクター関連疾患の治療のためのペプチド送達の分野にも関する。
【背景技術】
【0002】
ヘリコバクター・ピロリは、ほとんどヒトの胃粘膜中にのみ見られるらせん状グラム陰性菌である。ヒトの胃の酸性度は、ヘリコバクター種以外の実質的に全ての細菌にとってコロニー形成の有効な障壁となる。
【0003】
ピロリ菌(ピロリ菌)は、慢性感染症の原因物質として説明されてきた。特に、ヘリコバクターは、消化性潰瘍、胃腺癌及び原発性胃リンパ腫において重大な役割を果たしていることが証明されてきた。
【0004】
ピロリ菌(ピロリ菌)は、粘膜炎症及び免疫応答の発生にもかかわらず、ヒトの胃粘膜内に数十年コロニー形成し続けるという独特の能力を有している。この特性は粘膜を介したペプチド送達のために興味のある候補にならしめている。しかし、この特定の適用は、ある程度は種々の疾患における関与のために、粘膜送達システムにおける利用を見出していなかった。宿主に対する病状のリスクを減少させる、これらの重要な生物を使用する、ペプチドの送達システムに対する要求は継続している。
【0005】
粘膜送達の開発は、粘膜の区画へのアクセスを阻止する宿主の生まれつきの関門機能のため、慣習的なアプローチにより送達される抗原の弱い免疫原性によって妨害されてもきた。それ故、有用かつ有益な免疫応答を誘発するのに十分な粘膜表面におけるペプチドのような薬理学的活性分子のための改善された送達メカニズムのための医術における要求性が存続している。これらは、薬理学的活性薬剤のための効果的な生体内送達システム、及び効果的な免疫法を提供する。すなわち、通常の体液性及び粘膜免疫応答を誘発するのに十分な抗原が粘膜表面においてさらされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,570,004号− Blaser等(2003).
【特許文献2】米国特許第6,680,179号− Collins等(2004).
【特許文献3】米国特許第6,383,496号 − Curtiss等(2002).
【特許文献4】米国特許第6,150,170号 − Powell等(2000).
【特許文献5】米国特許第6,410,012号 − Seizmore等(2002).
【特許文献6】米国特許第6,550.419号 − Hone等(2002).
【特許文献7】米国特許第6,531,313号 − Goudsmit等(2003).
【特許文献8】米国特許第6,682,729号 − Powell等(2004).
【特許文献9】米国特許出願公開2005/0075298 − Chen等(2005).
【特許文献10】米国特許出願公開第2002/0176848 − Seizemore等(2002) .
【特許文献11】米国特許出願公開第2005/0096288 − Guevara等(2005)
【特許文献12】米国特許出願公開第2004/0236072 − Olmsted等(2004)
【特許文献13】米国特許出願公開第2004/0203039 − Hensel等(2004).
【特許文献14】米国特許出願公開第2004/0005325 − Kusters等(2004)
【特許文献15】米国特許出願公開第2002/0032152 − Torossian(2002).
【特許文献16】米国特許出願公開第2003/0170264 − Turner等(2003).
【特許文献17】米国特許出願公開第2003/0204068 − Blasec等(2003).
【特許文献18】米国特許出願公開第2002/0161192 − Meyer等(2002).
【特許文献19】WO96/33274 − Covacci等(1996).
【特許文献20】WO99/21959 − Ellis等(1999).
【特許文献21】WO01/94599 − Burman等(2001).
【特許文献22】WO2005 021026 − Baron等(2005)
【非特許文献】
【0007】
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【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記課題の克服に関し、また、疾患の治療におけるヘリコバクターの使用に関する。本発明は多くの実施及び用途において例示され、そのいくつかを以下に要約する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ある態様においては、プロモーター領域、及び興味のある非ヘリコバクター分子をコードする非ヘリコバクター配列を有するヘリコバクター配列を含む、ヘリコバクターをベースとする構築物を製造及び使用するための組成物、方法及びシステムが提供される。ある態様においては、この構築物は、プロモーター配列が、興味のある分子をコードする非ヘリコバクター配列の発現を制御し得る、ベクター又はプラスミドベクターとして説明される。
ヘリコバクター構築物:
一態様においては、本発明は、ヘリコバクター構築物、特に、ヘリコバクター・ピロリ核酸構築物を含む組成物を提供する。胃壁(胃粘膜)内にペプチドを送達するために、細菌がコードペプチドを発現できるように、DNA配列が、ヘリコバクター・ピロリのウレアーゼ遺伝子の中及び間に挿入される。
【0010】
ある実施態様においては、ヘリコバクター構築物のヘリコバクターヌクレオチド配列は、第一のヘリコバクター配列Y1、第二のヘリコバクターY2、及び興味のある非ヘリコバクター分子をコードする非ヘリコバクター配列Xを含む。この構築物の一実施態様の概略図を式1に示す。
式1:
【0011】
【化1】

【0012】
興味のある非ヘリコバクターヌクレオチド配列、「X」は、興味のあるペプチドをコードする核酸配列を含む。ある実施態様においては、非ヘリコバクター配列Xは、ヘリコバクター・ピロリ種に対して異種である。この興味のある分子は、動物に導入される構築物を含む組換え型ヘリコバクター由来の産物を発現するように、送達される動物に対して有益及び/又は治療的効果を供給することができるように、いくつかの実施態様において更に開示される。
ある実施態様においては、構築物は、野生型UreA又はUreB遺伝子配列の第一の部分として定義される第一のヘリコバクター配列Y1、野生型UreA又はUreB遺伝子の第二の部分として定義される第二のヘリコバクター配列Y2、及び興味のある非ヘリコバクター・ピロリヌクレオチド配列「X」を含む。
ある実施態様においては、ヘリコバクター構築物は、図12に定義されるような構築物を含む。
他の実施態様においては、ヘリコバクター構築物は、更に、弱毒化ヘリコバクター・ピロリ構築物として定義される。
ある実施態様においては、ヘリコバクター・ピロリ核酸構築物は、更にプロモーター配列、分泌配列及び/又はレポーター遺伝子配列を含んでもよい。特定の実施態様においては、ヘリコバクター構築物で形質転換された組換え細胞が提供される。ある実施態様においては、これらの組換え細胞は大腸菌(E.coli)細胞又はピロリ菌(H.pylori)細胞である。
ある実施態様においては、ヘリコバクター構築物を含む、ヘリコバクターをベースとするベクター及びベクタープラスミド構築物は、タンパク質、ペプチド又は任意の他の分子として定義される興味のある薬学的活性分子を含む。ある実施態様においては、分離された拡散分子は、更に、cDNA、ゲノムDNA、RNA又はそれらのハイブリッド分子を含むとして定義される。特定の実施態様においては、核酸はcDNAである。
【0013】
具体例として、興味のあるタンパク質及び/又はペプチドには、グレリン、アミリン、インシュリン、モチリン、β−グルコシダーゼ、化学シャペロン、又はゴーシェー病、細胞消耗、ヒト免疫不全症(AIDS)、食欲抑制の治療及び/又は管理に有用な他の分子、糖尿病の治療に有用な製剤等が含まれる。
【0014】
組換え細胞:
他の態様においては、本明細書に記載されるようなヘリコバクター構築物を含むプラスミドベクター及び/又はベクターで形質転換される細胞からなる組換え細胞を含む組成物が提供される。ある実施態様においては、組換え細胞は、興味のある非ヘリコバクター・ピロリの薬理学的に活性な分子をコードする配列を含む。他の実施態様においては、興味のある非ヘリコバクター・ピロリの薬理学的活性な分子をコードする核酸配列は、分泌型シグナルポリペプチドを含む。ある実施態様においては、組換え細胞は、組換え細胞の表面において、興味のある非ヘリコバクター分子に対応する発現産物を分泌することができる。この件に関し、興味のある分子の発現産物は、腸粘膜のような、動物の粘膜表面において、又は通して送達される。ある実施態様においては、組換え細胞は、ヘリコバクター株26695又はB128のようなヘリコバクター・ピロリ細胞である。
【0015】
医薬製剤:
本発明は、例えば、経胃的、経口的又は鼻腔内で送達されるような、種々の薬学的に許容される製剤を提供する。特定の実施態様においては、組成物は、粘膜表面における送達に適している。特定の実施態様においては、組成物は、粘膜表面又は内層への送達に適している。ある実施態様においては、粘膜表面は胃の粘膜表面である。
【0016】
本明細書に記載された特定のヘリコバクター、ヘリコバクター構築物及び他の送達媒体の所定の特定のタイプ及び比率、並びに、参考文献として本明細書に組み入れられる、Remington’s Pharmaceutical Sciences,20th edition,Mack Publishing Companyに開示されたような、製剤の分野において公知の製剤技術を用いて、本発明の実施に用いるために、種々の組成物の送達形態が容易に製造される。送達システムは、特に、ヒト、ウマ、ウシ、ヒツジ及びげっ歯類を含む霊長類、魚及び鳥を含む動物において用いることができることが想像される。製剤は、幼児及び成人の両方、並びに親から、又は妊娠及び授乳動物のための投与に用いることができることも予想される。製剤及び方法は、更にオス及びメスの動物のいずれにも適しているとして記載される。
【0017】
ワクチン:
ある実施態様においては、組成物は、薬理学的に許容される担体溶液中のワクチンとして定義される。ワクチンの一部として、ヘリコバクター構築物を含む組成物が、発現産物、すなわち、興味のある分子「X」が動物の粘膜表面と、又は粘膜表面において接触することができるような方法で動物に導入される。具体例として、動物の粘膜表面には、胃の粘膜、鼻の粘膜等が含まれる。
【0018】
ある実施態様においては、ヘリコバクターをベースとするワクチンは、本明細書に記載されるようなプラスミドベクターのようなヘリコバクターをベースとする構築物で形質転換された細胞を含む。具体例として、ヘリコバクターをベースとするプラスミドベクターで形質転換された細胞には、大腸菌又はヘリコバクター・ピロリ細胞が含まれる。ある実施態様においては、更に、ワクチンは弱毒化生ワクチンとして定義される。特定の実施態様においては、組成物にはアジュバントが含まれる。ある実施態様においては、ワクチンは、粘膜表面において、興味のある非ヘリコバクター分子の送達をもたらすことができる。
【0019】
ワクチン接種/免疫付与
更に他の態様においては、動物にワクチン接種する方法が提供される。ある実施態様においては、該方法は、本明細書に記載されたようなヘリコバクターをベースとするベクター及び/又はプラスミドベクターで形質転換された細胞を含むワクチンを含む組成物を投与することを含む。他の実施態様においては、疾患若しくは特定の生理学的及び/又は病理学的状態を排除又は阻害するのに十分な、又は興味のある薬理学的活性分子に対して特異的な免疫応答を誘発するのに十分な、興味のある薬理学的活性分子の有効量の送達のための方法が提供される。
【0020】
具体例として、本発明のワクチン製剤において、動物に供給される興味のある非ヘリコバクター分子には、ほ乳動物又は非ほ乳動物のタンパク質、ペプチド、酵素、ホルモン又はそれらの任意の組み合わせが含まれる。特定の実施態様においては、興味のある分子は、更に、興味のあるヒト薬理活性薬剤である、興味のある薬理学的活性分子として定義される。ある実施態様においては、興味のある薬理学的活性分子は、アミリン又はその類似体又は誘導体、グレリン又はその類似体又は誘導体のような、ヒト病原体分子/抗原、ヒトタンパク質抗原である。
【0021】
特定の実施態様においては、本発明のワクチンは、免疫性及び/又はヒト病原体、エボラウイルス、HIVウイルス、マールブルグウイルス、インフルエンザウイルス等に対する耐病性の増強を付与する。エボラ糖タンパク質及びマールブルグ糖タンパク質を含む、弱毒化された組換え型水疱性口内炎ウイルスベクターをベースとする複製可能なワクチンは、Jonesら(2005)43に開示されている。従って、本明細書に記載された、それら及びヒト病原体に関連する他の糖タンパク質を含むヘリコバクターをベースとするベクターシステム及びプラスミドベクターシステムも、本発明によって提供される。
【0022】
他の態様においては、動物に免疫付与する方法が提供される。ある実施態様においては、該方法は、本明細書に記載されたようなヘリコバクターワクチンを含む組成物を動物に供給し、動物において許容される免疫応答を誘発するのに十分な有効量の組成物を動物に投与することを含む。ある実施態様においては、許容される免疫応答は、1種以上の有効量の組成物を含む治療計画の投与によって誘発される。これらの方法は、獣医の免疫付与、並びにヒトの免疫付与において用いることができる。
【0023】
下記核酸及びアミノ酸配列が、本発明の記述を通じて参照される:
【0024】
配列番号:1−プラスミドpHP1のヌクレオチド配列(2796ヌクレオチド) +ve鎖
【0025】
配列番号:2−pHP1のヌクレオチド配列(2796ヌクレオチド) −ve鎖
配列番号:3−プラスミドpHP3のヌクレオチド配列(3444ヌクレオチド)
【0026】
配列番号:4−C型肝炎ウイルス抗原(HCV)ヌクレオチド配列(580ヌクレオチド)
【0027】
配列番号:5−C型肝炎ウイルス(HCV)コア抗原由来の免疫原性コード配列の5−ヌクレオチド配列135bp(45アミノ酸)
【0028】
配列番号:6−ピロリ菌のHopE遺伝子(nt504位、aa168位)の表面暴露ループのヌクレオチド配列(1108ヌクレオチド)
【0029】
配列番号:7−上流プライマー(29ヌクレオチド)
【0030】
配列番号:8−下流プライマー(28ヌクレオチド)
【0031】
配列番号:9−オリゴヌクレオチドプライマー(15ヌクレオチド)
【0032】
配列番号:10−ピロリ菌挿入構築物のヌクレオチド配列、興味のある「X」のヌクレオチド配列を有するHopE遺伝子(580bp HopE−「X」bp−502bp HopE)。興味のあるヌクレオチド配列「X」は、興味のある生物学的に重要な分子のような、興味のある分子をコードする核酸配列を含む。興味のある生物学的に重要な分子には、胃の粘膜のような粘膜表面を通して、又は粘膜表面において発現産物として送達され、動物に有益又は治療的効果を付与することのできる、酵素、タンパク質、ペプチド、又は他の分子が含まれる。ある実施態様においては、「X」は、60ヌクレオチド塩基〜150ヌクレオチド塩基、又は69ヌクレオチド塩基〜138ヌクレオチド塩基を含む核酸配列である。
【0033】
配列番号:11−HopE配列におけるヌクレオチド504位(アミノ酸168位に対応)において、p60核酸配列(23アミノ酸)が挿入された、HopE及びp60の融合タンパク質のためのヌクレオチド配列
【0034】
配列番号:12−HopE核酸配列におけるヌクレオチド504位(アミノ酸168位に対応)において、HCCA核酸配列(46アミノ酸)が挿入された、HopE及びHCCAの融合タンパク質のためのヌクレオチド配列
【0035】
配列番号:13−p60のための核酸配列(69ヌクレオチド塩基)
【0036】
配列番号:14−HCCAのための核酸配列(138ヌクレオチド塩基)
【0037】
本発明を、添付する図面を用いて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施態様による図1は、ベクター構築物、pHPA1(2.8kb)を示す。
【図2】本発明の一実施態様による図2は、プラスミド構築物pHP3(3.4kb)の概略図を示す。
【図3】本発明の一実施態様による図3は、ベクター構築物pTMI03−8を示す。
【図4】本発明の一実施態様による図4は、スルファサラジン(SSN)の化学構造を示す。
【図5】本発明の一実施態様による図5は、色素(アズールA)と結合したイオン交換樹脂(Amberlite XE−96)を用いた概略図を示す。
【図6】本発明の一実施態様による図6は、HCCA又はp60エピトープをコードする核酸配列のような、興味のある配列についての挿入部位を示す、HopEの予想される構造を示す。本明細書に組み入れられるBina及び共同研究者からの出典。
【図7】本発明の一実施態様による図7は、SOE PCRを用いて産生された組換えDNA分子を示す。HCCA又はp60エピトープのいずれかをコードするDNAが、HopEの168位のアミノ酸に対応する位置で、hopEに挿入された。ピロリ菌中のhopEのゲノムコピーの相同的な組換え及び置換を可能にするため、ゲノムのhopEに相同的な配列が、DNAをコードするエピトープについての挿入部位のフランキング領域に含まれる。
【図8】本発明の一実施態様による図8は、ピロリ菌中の組換え遺伝子の図を示す。カラムA:抗原(Ag)をコードするDNAが、推定上の表面暴露ループに対応する領域中の168位のアミノ酸に対応する部位においてhopEに挿入された;カラムB:抗原をコードするDNAが、cagA停止コドンの上流の5’末端におけるcagAに直接挿入された。カラムC:B128 vacAが、26695 vacaプロモーター配列、シグナル配列(ss)、成熟(m)vacA、パッセンジャードメイン及びオートトランスポーター(AT)ドメインをコードするDNAと置換された。抗原をコードするDNAは、シグナル配列の上流に直接挿入された。
【図9】本発明の一実施態様による図9は、HCCAを含むピロリ菌 B128(7,13)(B128:HCCA:hopE)のウェスタンブロット解析を示す。ブロットA.1°抗体:α−HopE;2°抗体;α−ウサギ−AP複合体、レーン1:マーカー;レーン2:B128;レーン3:B128:HCCA:hopE;レーン4:B128:p60:hopE.ブロットB:1°抗体:α−HCCA;2°抗体;α−マウス−AP−複合体.レーン1:マーカー;レーン2:B128:HCCA;hopE;レーン3:B128.ブロットC.1°抗体:α−p60;2°抗体;α−マウス−Ap複合体(2°抗体).レーン1:マーカー;レーン2:B128:p60:hopE;レーン3:B128.白い矢印は、HopE又は融合タンパク質のいずれかに対応するバンドを示す。
【図10】本発明の一実施態様による図10は、HopEに挿入されたHCCAを含むピロリ菌 B128(B128:HCCA:hopE)の顕微鏡解析に基づく免疫蛍光法を示す。上の列:位相差顕微鏡法;下の列:蛍光顕微鏡法。カラムA:ピロリ菌 B128.1°抗体:α−HopE;2°抗体;α−ウサギAlexafluor 488(AF−488).カラムB:ピロリ菌 B128.2°抗体;α−ウサギAF−488.カラムC.ピロリ菌 B128.1°抗体:α−HCCA;2°抗体:α−マウスAF−488.カラムD:ピロリ菌 B128:HCCA:hopE.2°抗体:α−マウスAF−488.カラムE.ピロリ菌 B128:HCCA−hopE.1°抗体:α−HCCA:2°抗体:α−マウスAF−488。
【図11】本発明の一実施態様による図11は、組換え型ピロリ菌 26695及びB128(7.13)の全細胞をベースとするELISA解析を示す。カラムA:組換え型26695:HCCA:hopE又は26695:p60:hopE;カラムB:組換え型B128:HCCA:hopE B128:p60:hopE; p60抗原の検出:1°抗体:α−p60;2°抗体:α−マウス−アルカリホスファターゼ(AP)複合体;HCCAの検出:1°抗体:α−HCCA;2°抗体:α−マウス−AP複合体.エラーバー:SEM(n=3)。
【図12】図12は、提示タンパク質への抗原の挿入のための可能な部位の位置を示す。
【図13】図13は、SOE PCRを用いたDNA構築の方法を示す。A:2個のアンプリコンの構築のためのプロトコール。B:3個のDNAアンプリコンの構築のためのプロトコール。
【図14】図14は、ピロリ菌 X47株において、rpsL.ermBカセット(ref)で置換された、ureA又はureBの欠失領域を示す。X47の各組み換え体は、1個の挿入のみを含む。
【図15】図15は、細菌が産生する機能的ウレアーゼについての選択性を示す。左側(増殖):野生型X47(ウレアーゼ陽性);右側(増殖せず):UreA及びUreBの産生を妨害するrpsLermBカセットを有するX47(ウレアーゼ陰性)
【図16】図16は、ピロリ菌ウレアーゼの分子構造を示す。
【図17】図17は、ストレプトマイシン逆選択(contra−selection)システムを用いたピロリ菌の形質転換のプロトコールを示す。
【図18】図18は、2個のヘムアグルチニンエピトープへのフレーム融合において用いられる挿入部位を示し、FLAGエピトープは、それらの対応する番号1a〜8により表わされる。リンカー及び小さいGPSLリンカーはエピトープの間にある。ウレアーゼオペロンのゲノム構成を示す。矢印の頭部はureA、ureB、ispA及びureI遺伝子を示す。示されるDNA断片の長さは、塩基対単位(bp)により示す。
【図19】図19は、組換え型ウレアーゼのウェスタンブロット解析を示す。レーン1:タンパク質分子量マーカー;レーン2:サイト1a;レーン3:サイト3;レーン4: サイト4;レーン5: サイト8;レーン6:サイト1a;レーン7:サイト3;レーン8: サイト4;レーン9:サイト8。レーン2〜5は、1:6に希釈した試料である。レーン6〜9は1:2に希釈した試料である。結果は、FLAG標識されたエピトープが、ウレアーゼのサイト1a、4及び8に存在することを示した。最も高い希釈においては、サイト3についてのエピトープは検出することができない:エピトープは、最も高い希釈において検出できた(それぞれ、レーン3及び7)。
【図20】図20は、0日に、メスのC57BL/6マウス(n=5)を、ピロリ菌を用いて、胃内で200mLの10cfu/mLで免疫したことを示す。73日後、マウスを出血させ、血清を集めた。IgG力価は、HA−B細胞エピトープ特異的なIgG産生を測定し、ELISAにより測定した。BHIBは、培地BHIBで免疫したコントロール群を示し、X47はX47野生型ピロリ菌で免疫した群、Sila、Si3、Si4及びSi8は、それぞれ、挿入部位1a、3、4及び8でヘムアグルチニンエピトープを発現する組換え型ピロリ菌で免疫した群である。黒い平らな名ベルは、ピロリ菌を移植したマウスを示し、空の白いラベルは、73日目にコロニー形成したマウスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明は、ヘリコバクター又はヘリコバクターをベースとするベクター送達システムを含む種々のタイプの細菌及びワクチン構築物に適用できると信じられている。本発明を説明する前に、いくつかの用語を定義するのが有利である。本発明は、必ずしもこのような用途に限定されるものではないが、これに関連した種々の実施例の議論を通して本発明の種々の態様が理解されるであろう。
【0040】
本発明を詳細に説明する前に、本発明は特に例示された方法に限定されず、当然に変化し得ることを理解すべきである。本明細書で用いられる用語は、単に、本発明の特定の実施態様を説明する目的のためであり、単に、添付された請求の範囲によって限定されることを意図しないことも理解されるべきである。
【0041】
本明細書に引用された、全ての出版物、特許及び特許出願は、前述したものであろうと、後述するものであろうと、全体として、参考文献として本明細書に組み入れられる。しかし、本明細書に示された出版物は、その出版物に報告され、本発明に関連して用いられるプロトコール、試薬及びベクターを記述し、開示する目的のために引用される。本発明が、先願発明によって、そのような開示に先行する権利を与えられないという承認として解釈されるものは本明細書にはない。
【0042】
更に、特に示されない限り、本発明の実施は、当業者の範囲内の従来の免疫学的及び分子生物学的技術並びに薬理学を使用する。このような技術は当業者に周知であり、文献に十分に説明されている。例えば、Coligan et a1.,(Current Protocols in Protein Science(1999)Volume I and II(John Wiley & Sons Inc.);Sambrook et a1.,(Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd & 3rd Editions.Cold Spring Harbor Laboratory press(1989)(2001);及びBailey,S F.and Ollis,D.F.,Biochemical Engineering,Fundamentals.McGraw−Hill Book Company, NY,1986を参照されたい。本明細書及び添付された請求の範囲で用いられる場合、単数の「一つ(a)」、「一つ(an)」及び「その(the)」は、内容が明らかに示さない限り、複数の言及を含む。従って、例えば、「1つの核酸」への言及は、複数のこのような核酸を含み、「1つの分離ペプチド」への言及は、1個以上のペプチドへの言及である。
【0043】
特に定義しない限り、本明細書で用いられる技術的及び科学用語は、本発明が属する分野における当業者によって通常に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されるのと同じ又は同等の任意の材料を、本発明を実施するために用いることができるが、好ましい材料及び方法を以下に説明する。
【0044】
動物の身体内の特定の標的部位への治療組成物及び核酸の送達は、薬剤開発工業による、継続中の挑戦課題である。本発明者は、生物学的活性薬剤をコードするベクターを伝達することのできる、ヘリコバクターをベースとする細菌性の送達システムを開発した。一実施態様においては、細菌はヘリコバクター種、ピロリ菌(ピロリ菌)である。ある実施態様においては、ピロリ菌の株は、この分野で公知の任意の株である。ある実施態様においては、ピロリ菌株は、ゲノム株26695のような非病原性の株である。用いることのできる他の株は、ピロリ菌株B128、特に変異株7.13である。
【0045】
他の実施態様においては、宿主に対する有意な毒性なしで、胃粘膜、若しくは消化管、尿路、気管支上皮又は他の粘膜器官の他の領域を慢性的にコロニー化する能力を備えたヘリコバクター又はピロリ菌を有する細菌を遺伝的に変異させたヘリコバクター以外の細菌が用いられる。
【0046】
一実施態様においては、ピロリ菌を操作して、病原性特性のいくつかを除去及び/又は弱毒化する。例えば、空胞化細胞毒素及びcag病原因子群島遺伝子を除去し、ピロリ菌の病原性を弱めることができる。N−メチル−N−sニトログアニジンを用いる化学的な非特異的突然変異誘発、又は組み換えDNA技術を用いてヘリコバクターに弱毒化の突然変異が導入することができる。
【0047】
当業者は、生物学的活性薬剤を送達するために、本発明の方法を用いることができることを認識するであろう。適切な物質の具体例には、局所的又は全身において機能できるもの、例えば局所又は全身代謝に影響する内分泌活性を発揮できる薬剤、及び/又 は免疫/造血系に属する細胞活性を調節できる薬剤、及び/又は身体の種々の正常又は腫瘍細胞の生存率、成長及び分化に影響できるか、又は損傷及び感染に対する急性相炎症応答の免疫制御又は誘発に影響できる薬剤、及び/又は標的細胞受容体に作用する細胞組織の感染に対する抵抗、又は上皮細胞増殖又は創傷治癒の促進を増強又は誘発できる薬剤、及び/又は身体細胞により物質発現又は産生を操作する物質が含まれる。
【0048】
このような生物学的活性薬剤の具体例には、インシュスリン、成長ホルモン、プロラクチン、カルシトニン、黄体形成ホルモン、副甲状腺ホルモン、ソマトスタチン、甲状腺刺激ホルモン、血管活性腸管ポリペプチド、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、GM−CSF、M−CSF、SCF、IFN−γ、EPO、G−SCF、LIF、OSM、CNTF、GH、PRL又はIFNα/βのような逆平行4αらせん束状構造適応のグループ1型構造サイトカイン、サイトカインファミリーの腫瘍壊死因子(TNF)のような、細胞表面に関連し対称ホモ三量体を形成する場合があり、かつそのサブユニットがあるウイルス外殻タンパク質を記述するβ−ゼリーロール配座をとるグループ2型構造サイトカイン、例えばTNFα、TNFβ、CD40、CD27又はFASリガンド、サイトカインファミリーのIL−1、線維芽細胞成長因子ファミリー、血小板由来増殖因子、形質転換成長ホルモンβ及び神経成長因子、それぞれが細胞外領域に少なくとも一つの上皮細胞成長因子(EGF)を含む巨大膜貫通先駆分子として産生する短鎖α/β分子からなるグループ3型構造サイトカイン、例えばサイトカインのEGFファミリー、保存システイン残基の周囲(C−−C又はC−−X−−Cケミカインサブグループ)に集まるアミノ酸配列保持の特徴を有するケモカイン、インスリン関連サイトカイン、異なるドメインからなるヘレグリンやニューレグレンのようなモザイク構造を示すグループ4型構造サイトカイン、例えば、EGF、免疫グロブリン類似体及びクリングルドメインが含まれる。
【0049】
また、生物活性薬剤は前記定義のように生物学的活性薬剤についての受容体又はアンタゴニストであってもよい。
【0050】
ある実施態様においては、ピロリ菌をベースとするベクター及び/又はベクタープラスミド構築物が、形質転換細胞製剤を投与する宿主の粘膜において、興味のある非ヘリコバクター薬理学的活性薬剤の発現及び分泌を可能にする、形質転換細胞(大腸菌又はヘリコバクター細胞のような)を作成するために用いられる。この形質転換細胞(又はベクター)中に含まれる単離核酸分子は、興味のある薬理学的活性分子がピロリ菌の制御配列の制御下で1種以上の核酸構築物を含んでもよい。
【0051】
適切なベクター及びシャトルベクターは、必要に応じて、プロモーター配列、ターミネーター断片、エンハンサー配列、マーカー遺伝子及び他の配列を含む適切な制御配列を含むように選択又は構築してもよい。ベクターは、必要に応じて、プラスミド、ウイルス、例えばファージ又はやファージミドでもよい。より詳細には、例えば、前記Sambrookらを参照されたい。核酸の操作のための多くの技術及びプロコール、例えば、核酸構築物の製造、突然変異生成、配列決定、細胞へのDNAの導入及び遺伝子発現、及びタンパク質の分析は、Short Protocols in Molecular Biology,Second Edition,Ausubel et al.eds.,John Wiley & Sons,1992に詳細に開示されているように公知である。前記Sambrookら、及びAusubelらは、本明細書に参考文献として組み入れられる。
【0052】
ある実施態様においては、興味のある薬理学的活性分子はオペロン、すなわち、多シストロン発現用核酸構築物中に含まれる。オペロンにおいては、それぞれ自身が適切な位置にあるリボソーム結合部位の上流を有する、1種以上のコード配列を含むmRNAを生じる。従って、1種以上の薬剤(興味のある薬理学的活性分子)が、単一のmRNAから翻訳され得る。オペロンの使用は、強調する興味のある薬理学的活性薬剤の発現を可能にする。
【0053】
興味のある薬理学的活性分子についてのコード配列を含む核酸構築物又はベクターは、好ましくはピロリ菌の発現用プロモーターの制御下にある。
【0054】
一実施態様においては、本発明により用いられるプロモーターはピロリ菌中で構成的に発現する。構成的プロモーターの使用は、発現を起こすための誘発物質や他の調節信号の必要を回避する。好ましくは、プロモーターはピロリ菌宿主細胞が生存可能なレベルの発現を命令する、即ち成長が低下しても、ある程度の代謝活性を保持する。好都合には、この発現は低レベルにできる。例えば、発現産生物が細胞内に蓄積すると、発現レベルは発現産生物の蓄積を細胞タンパク質の約10%より低く、 好ましくは約5%より低く、例えば約1〜3%にする。
【0055】
ある実施態様においては、興味のある分子をコードする核酸配列に対応するmRNA配列のようなメッセンジャー核酸配列を動物に送達する方法が提供される。具体例として、治療ペプチド、タンパク質、ホルモン又はホルモンに対応するメッセンジャー核酸配列(mRNA)は、動物内でメッセンジャー核酸配列の発現により動物にペプチド、タンパク質又はホルモンを供給するように製造される。例えば、このようなホルモンは、インシュリンであり、このようなプロホルモンはプロインシュリンである。従って、本発明が、糖尿病の治療のような、ヒトの疾患の治療のための遺伝子療法としての用途を有することが想像される。
【0056】
プロモーターは、用いられるピロリ菌、すなわち、天然にあるピロリ菌株に見出されるものに同種であってもよい。ある実施態様においては、プロモーターはアラビノース誘発性プロモーターである。他のプロモーターには、FlaBシグマ54プロモーター(Josenhans et al.,1998,FEMS Microbiol Lett,161(2):263−73)、T7プロモーター及びサルモネラのnirBプロモーター(Chatfield et al.,1992,Biotechnology,10(8):888−92)が含まれる。
【0057】
他の実施態様においては、プロモーターは誘導性である。臨床用ベクターと一緒に用いられる誘発性プロモーターには、Kullenらに発行された米国特許第6,242,194号に開示された誘発性プロモーター、大腸菌において用いられるような乳糖誘発性プロモーター(例えば、Stratagene由来のpBluescript(登録商標)又は乳酸桿菌中の内在性乳糖プロモーター、及びAristarkhov et at.,(1999)J.Bacteriology,178(14),4327−4332に開示されるような、アルコールデヒドロゲナーゼ(adhE)用プロモーターのような、嫌気性増殖の間に誘導されるプロモーターが含まれるが、これらに限定されない。
【0058】
一実施態様においては、本発明の構築物は毒性遺伝子をも含む。これら毒性遺伝子は、好ましくは誘発性プロモーター制御下にあり、その結果として処理完了時にヘリコバクターが毒性遺伝子発現を誘発することにより容易に除去することができる。毒性遺伝子の非限定的な具体例には、誘発性プロモーター制御下における細菌性自己溶菌酵素が含まれる。自家融解遺伝子が次いで直ぐ上に記載の一つ以上の誘発性プロモーターを用いて消化管に適切時と適切位で引き起こされる。
【0059】
ある実施態様においては、設計されたヘリコバクターベクター及びプラスミドベクター構築物は酸素に感受性である。この酸素感受性は、本発明の臨床用ベクターの内転移を制限する他の方法である。ヒトの腸環境は酸素が非常に低濃度で、ヘリコバクターを含む嫌気性及び微好気性微生物の増殖に適する。従って、腸廃棄物が酸素が豊富な外部環境に放出する際、人体から放出されるヘリコバクターを除去する有効な手段は、酸素感受性を与える形質転換微生物に遺伝子操作することである。
【0060】
本発明の核酸構築物は分泌シグナル配列を含んでいてもよい。従って、ある実施態様においては、生物学的活性分子(例えば、非ヘリコバクターポリペプチド)をコードする核酸は、分泌シグナル配列のコード化核酸配列をこの分子(ポリペプチド)をコードする核酸配列と適切に結合して、細胞膜においてこの分子を分泌してもよい。ポリペプチドを分泌する核酸を有するヘリコバクターの性能は、ヘリコバクターの生存率を維持する培養条件で生体外で試験してもよい。
【0061】
適切な分泌シグナル配列には、エシェリキア菌、クレブシエラ菌及ぶサルモネラ菌のようなグラム陰性生物中で活性を有するあらゆるものが含まれる。分泌シグナル配列には、グラム陽性及びグラム陰性宿主のいずれでも機能することが知られている、ブドウ球菌のある株により分泌されるスタフィロキナーゼ酵素が含まれる(”Gene Expression Using Bacillus”,Rapoport(1990),Current Opinions in Biotechnology,1:21−27を参照されたい)。
【0062】
用いられる他の分泌シグナルには、例えば、β−ラクタマーゼ遺伝子(Talmadge et al.,1980,Proc.Natl.Acad Sci.USA 77:3369−3373)又は腸管組織侵入性大腸菌溶血素A(hlyA)(Su et al.,1992,Microbial Pathogen,13:465−476)が含まれる。分泌シグナル配列の具体的なリストは、Pugsley,1988,Protein secretion across the outer membrane of gram−negative bacteria.In:Protein Transfer and Organelle Biogenesis,R.C.Dand and P.W.Robbins(eds).Academic Press,Inc.,San Diego,pp 607−652に示されている。
【0063】
選択可能マーカーは、形質転換微生物を混合群の非形質転換微生物と区別する便利な方法を、研究者及び技術者に提供する。形質転換生物体を区別する一手段は選択可能マーカー核酸配列を興味のある遺伝子を含むプラスミドに組み入れることである。この選択可能マーカー配列は、通常、興味のある遺伝子の下流に挿入して、同一プロモーターに追い払われる。結果として、興味のある遺伝子とうまく形質転換した細胞は、選択可能マーカー核酸配列で又形質転換される。この選択可能マーカーとして抗生物質耐性を用いる場合、形質転換細胞のみがこの抗生物質含有媒体で生き残り、及び/又は増殖する。
【0064】
従って、形質変換体を開発する場合、抗生物質耐性は便利でよく用いられる表現型である。しかし、選択性マーカーとして抗生物質耐性遺伝子を有するベクターは、抗生物質耐性表現型を他の生物体に与えられる遺伝子水平伝播が可能である。ヘリコバクターを治療ベクターの一部として用いる場合、この危険は特に深刻である。
【0065】
ヘリコバクターを動物への遺伝子送達システムとして用いるために、ある実施態様においては、本発明により、抗生物質選択マーカーを用いない臨床用ベクター系が提供される。本発明の送達システムにより提供される抗生物質耐性遺伝子使用の代替え手段の1種には、「ハウスキーピング」遺伝子の染色体欠失又は致死突然変異を有する臨床用ベクターが含まれる。次いで、機能的類似のハウスキーピング遺伝子が興味のある薬理学的活性分子をコードするプラスミドに挿入される。結果として、ハウスキーピング遺伝子は形質転換体の迅速な単離及び同定が可能な選択可能マーカーとなる。
【0066】
「ハウスキーピング」遺伝子の具体例には、キナーゼ、プロテアーゼ、合成酵素、脱水素酵素及びその他を含む代謝調整因子及び/又は酵素をコードする多くの遺伝子が含まれる。本発明により提供される抗生物質耐性遺伝子の他の代替え遺伝子には、興味のある薬理学的活性分子をコードする遺伝子を含むプラスミドに取り込まれたレポーター遺伝子を有する臨床用ベクターが含まれる。本発明の教示によるレポーター遺伝子の他の具体例には、緑色蛍光タンパク質(GFP)、β―ガラクトシダーゼ及びアミラーゼが含まれる。
【0067】
一実施態様においては、興味のある薬理学的活性分子はサイトカイン活性を有する。サイトカインは、The Cytokine Facts Rook,Callard and Gearing(1994),Academic Pressnに議論されている。サイトカイン活性を有するポリペプチドのような好ましい分子は、インターロイキン−2(IL−2)及びインターロイキン−6(IL−6)を含むインターロイキンである。
【0068】
ある実施態様においては、前述したような核酸構築物を含むヘリコバクターベクター及びプラスミドベクターシステムがヘリコバクター又は他の適切な宿主細胞に導入され、形質転換細胞が得られる。従って、更なる態様は、開示された核酸を非病原性ヘリコバクターに導入することを含む方法を提供する。ヘリコバクターのような宿主細胞の培養物の形質転換には、任意の利用可能な技術が用いられる。ピロリ菌細胞に対しては、適切な技術には、塩化カルシウム形質転換、電気穿孔及びバクテリオファージ使用の形質移入が含まれる。
【0069】
ヘリコバクター細胞へのベクタープラスミド導入に続いて、核酸の発現が、例えばこの遺伝子発現に適した条件下でピロリ菌の培養により起こるか、又は可能になる。興味のある薬理学的活性分子の発現条件下で培地内のヘリコバクターの増殖を用い、このヘリコバクターがコード核酸を含み、コード化分子を産生できることを証明できる。
【0070】
更なる態様においては、本発明は、生体内で生物学的活性薬剤の治療又は予防用量を送達する方法を提供し、その方法は、本発明のピロリ菌組成物及びワクチンの有効量の非病原性製剤を被験者に投与することを含む。
【0071】
本明細書に記載される、本発明の方法及び非侵襲性又は非病原性ヘリコバクターの使用は、当業者が、例えば被験者の免疫反応を操作することができる広範囲な治療法を提供することが理解される。従って、一態様においては、本明細書で定義されるような非侵襲性又は非病原性ヘリコバクターを被験者に投与することを含む、細胞又は組織の生存、増殖、分化、エフェクター機能又は感染に対する感受性の調節法が提供される。
【0072】
他の態様においては、本明細書で定義された非侵襲性又は非病原性ヘリコバクターを被験者に投与することを含む、腫瘍細胞、又は粘膜表面、隣接又は遠位組織のコロニー形成感染に対する免疫応答の増強法が提供される。
【0073】
更に他の態様においては、本明細書で定義された非侵襲性又は非病原性ヘリコバクターを被験者に投与することを含む、病原性感染性薬剤に対する免疫応答(抗体対細胞媒介)型の調節方法が提供される。
【0074】
他の態様においては、本明細書で定義された非侵襲性又は非病原性ヘリコバクターを被験者に投与することを含む、炎症細胞又は腫瘍細胞による正常組織の浸潤調節法が提供される。
【0075】
ある態様においては、本明細書で定義された非侵襲性又は非病原性ヘリコバクターを被験者に投与することを含む、腫瘍細胞の増殖速度、浸潤速度又は生存の調節法が提供される。
【0076】
更に他の態様においては、本明細書で定義された非侵襲性又は非病原性ヘリコバクターを被験者に投与することを含む、腫瘍細胞におけるアポトーシスの誘発法が提供される。
【0077】
他の態様は、本明細書で定義されたような興味のある薬理学的活性薬剤を発現する非侵襲性又は非病原性ヘリコバクターを被験者に投与することを含む、免疫応答の下方制御法を提供する。
【0078】
他の態様においては、興味のある薬理学的活性薬剤を発現する非侵襲性又は非病原性ヘリコバクターを被験者に投与することを含む、アレルギー性自己免疫疾患又は他の免疫調節不全の治療方法が提供される。
【0079】
被験者は、任意の霊長類、ウマ、ウシ、豚、羊、げっ歯動物、魚又は鳥であってもよい。一実施態様においては、被験者はヒトである。投与は経鼻又は経口が都合がよい。
【0080】
治療状況、すなわち、興味のある生物学的活性分子が被験者に対して有益な効果をもたらす場合、薬剤の量及び/又は治療計画は、好ましくは、被験者に利益を示すのに十分な「治療的有効量」で供給される。このような利益は少なくとも回復であるか、又は少なくとも1種の症状の重症度又は発生の減少である。予防的状況においては、この量は、例えば、免疫反応の強化により、後の病原の挑戦において被験者に対する有害な影響を減少するのに十分な量でよい。実際に投与される量、投与速度、及び投与の時間経過は、投与の目的、例えば、挑戦の性質及び重症度を考慮して求められる生物学的効果に依存し、最適化についての日常課題である。予防的ワクチンを含む治療処方、例えば、投与量の決定は、一般の開業医及び他の医師の責任の範囲内である。
【0081】
本発明のヘリコバクターを含む組成物は、単独で、又は他の治療と併用し、同時又は逐次に投与することができる。
【0082】
本発明は、開示されたヘリコバクターを含む医薬組成物をも提供する。一実施態様においては、このような医薬組成物は粘膜への適用に適している。
【0083】
本発明の医薬組成物及び本発明により用いられる医薬組成物は、ヘリコバクターに加え、当業者に周知の薬学的に許容される賦形剤、担体、バッファー、安定剤又は他の材料を含んでいてもよい。このような材料は無毒であるべきであり、興味のある薬理学的活性分子の効果妨害すべきでない。担体又は他の材料の性質は投与経路に依存してもよい。経口投与については、発熱物質を含まず、適切なpH、等張性及び安定性を有する非経口的に許容される水溶液を用いてもよい。当業者は、適切な溶液を十分に製造することができる。必要に応じて、保存剤、安定剤、バッファー、酸化防止剤及び/又は他の添加剤を含有させてもよい。議論したように、本発明の投与用のヘリコバクターを含む製剤は、1種以上の栄養物質、例えば、グルコース、アミノ酸等を含んでいてもよい。他の態様においては、個体への投与に適した適切な担体媒体と一緒に、開示されたヘリコバクターを製剤化することを含む医薬製剤の製造方法が提供される。一実施態様においては、製剤は個体の粘膜への適用に適している。
【0084】
更に他の態様においては、例えば、予防(ワクチン接種)を含む手術又は治療によりヒト又は動物の身体の治療法において用いるための、薬学的用途のための興味のある異種の薬理学的活性分子を発現する非病原性のヘリコバクターが提供される。
【0085】
一実施態様においては、前記方法は、癌のような疾患を治療、予防又は寛解するために用いることができる。この方法及び送達システムは、免疫/造血系の疾患又は病状、生殖系の疾患又は病状、筋骨格系の疾患又は病状、心臓血管系の疾患又は病状、混合胎児として記載される疾患又は病状、排泄系の疾患又は病状、神経/感覚系の疾患又は病状、呼吸系の疾患又は病状、消化系の疾患又は病状及び結合組織/上皮組織に関連する疾患又は状病、若しくは細菌、ウイルス又は寄生虫感染により起こる疾患又は病状を治療又は予防することができる。
【0086】
他の実施態様においては、本明細書に記載されるヘリコバクター送達システムは、本明細書に記載される多くの疾患又は病状を治療することのできる産生物をコードする多くの異なる核酸分子の同時又は逐次送達が可能である。更に、好ましい送達システムは、食欲抑制又は増進のような追加の望ましい生理学的効果をもたらすことができる組成物を送達することもできる。
【0087】
ピロリ菌における自殺システムの具体例は、Panthelら,2003(Infection & Immunity,71:109−116)により開示されている。このシステムは、PhiX174溶解遺伝子Eを含むプラスミドをピロリ菌に導入する。この株を根絶するためには、42℃における5時間のインキュベーションが用いられる。これは、生体内でおいて、この動物が45〜50℃で飲料を消費し、胃環境が42℃より高い温度に上昇することを意味する。
【0088】
第二の具体例は、補充プレート上で細菌突然変異の生存を可能にするために通常用いられるL−Dap選択システムである(例えば、Kirata et al.1997(Infection & Immunity,65:4158−4164)を参照されたい。このシステムにおいては、動物被検体は、DapE欠失のピロリ菌突然変異が生存するために、欠失基質、すなわちジアミノ−ピメリン酸(DAP)を補充しなければならない。この突然変異を根絶するために、DAP消費は停止する。
【0089】
第三の可能なシステムは、そのrdxA遺伝子のためにピロリ菌のメトロニダゾール感受性と関連する。rdxA遺伝子の過剰な複製は、ほ乳動物及び大腸菌にとって有害である。しかし、複製は細菌によって許容され得る。従って、本発明のヘリコバクター種は、正常な突然変異依存rdxA欠失を防止するrdXAの2個のコピーを含むように設計される。少なくとも2個の機能性rdxA遺伝子のヘリコバクターゲノムへの導入は、メトロニダゾールに永続的に感受性のヘリコバクター株をもたらす。Jeongら,2000(J.Bacteriol.,182:5082−5090)は、機能性rdxA遺伝子により産生されたニトロレダクターゼが、メトロニダゾールをプロドラッグから殺菌性化合物に変換することを示した。活性化合物の作用様式はヘリコバクターゲノムのDNA切断を引き起こすことである。
【0090】
文脈に他の必要性がない限り、明細書を通じて、「含む」なる用語又は「を含む」又は「含んでいる」のような変形は、記載される整数又は整数群を含むが、他の整数又は整数群を排除しないことを示すことが理解されるであろう。
【0091】
定義:
本発明を説明する前に、以下に用いられるであろう特定の用語の定義を説明することは、それを理解するのに有用であろう。
【0092】
本明細書において用いられる場合、「一つの(a)」及び「その(the)」なる用語は、1個(単数)及び1個以上(複数)のいずれをも含むことを意味する。
【0093】
「有効レベル」なる語句は、興味のある薬理学的活性分子の所望の活性レベルを意味し、必ずしも分子の数に限定されない。例えば、アミリン(興味のある薬理学的活性分子の具体例として)の有効レベルは、被験者に存在する遊離のアミリン量の必然的な減少なしで、アミリンアンタゴニストを用いることによりグレリン分泌刺激を減少してもよい。
【0094】
本明細書で定義される場合、「抗生物質耐性遺伝子」はベクターに意図的に提供し、選択システムとして用いられる異種核酸配列を含む。
【0095】
「抗生物質耐性遺伝子」なる用語には、以前に発生するミクロフローラ生物体に抗生物質耐性を付与する他のメカニズム又は遺伝子は含まれない。
【0096】
例えば、細菌株、特に大腸菌又はヘリコバクター・ピロリのようなヘリコバクター株を記述するために本明細書で用いられる場合、「弱毒化される」なる用語は、天然の野生型細菌株よりも有毒及び/又は毒性(侵襲性)が低い株として定義される。
【0097】
本明細書で用いられる場合、「生物学的活性」なる用語は、生物学的機能を実施する能力を意味し、ポリペプチドに関しては、ポリペプチドが天然の高次構造と同一化し極めて類似している、安定な高次構造(折りたたみ形状)を含むことを意味する。例えば、適切に折りたたまれた単位のα−ヘリックス、β−シート、ドメイン、ジスルフィド架橋等により、正しく又は実質的に正しく折りたたまれた場合、ポリペプチドは、その天然の機能を実施する能力を有するはずである。一般に、ポリペプチドの機能単位はドメインである。
【0098】
本明細書で用いられる場合、「臨床用ベクター」は、ヘリコバクターの特徴を有するように設計された、ヘリコバクター又は非病原性細菌中で発現することができるプラスミド又は他の発現ベクターを意味する。本発明の臨床用ベクターは、選択のために抗生物質耐性マーカーを用いず、及び/又は自殺ベクターのような宿主外複製を防止するように修飾されている。
【0099】
本明細書で用いられる場合、「検出可能な免疫応答」は、抗原に応答する動物中で形成される抗体(液性)又は細胞障害(細胞性)応答のいずれかであり、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、放 射性免疫測定法(RIA)、酵素結合免疫スポット(ELISPOT)、免疫蛍光測定法(IFA)、補体結合測定法(CF)、ウエスタンブロット(WB)又はそれらの同等物を含むが、これらに限定されない日常的実験室法を用いて測定することができる。
【0100】
本明細書で用いられる場合、「興味のある遺伝子」は、発現が望まれるポリペプチド又はタンパク質のような興味のある薬理学的活性分子をコードする任意の核酸配列を意味する。核酸配列は、プロモーター又は他の調節成分を含んでいても、含んでいなくてもよい。ベクター及びプラスミドベクターは、アンチセンスRNAを産生することができる構築物をも含む。本明細書で用いられる場合、「遺伝子療法」は、サイトカイン、抗炎症性物質、抗増殖性物質、代謝阻害剤/活性剤及び免疫学的活性抗原及びその断片を含むが、これらに限定されない、治療又は予防タンパク質又はポリペプチドをコードする導入遺伝子であってもよい。更に、本明細書で用いられる場合、「遺伝子療法」は、遺伝性及び非遺伝性障害の両者において向けられた遺伝子置換技術をも含む。
【0101】
用語ヘリコバクターには、ピロリ菌及びヘリコバクター・ムステラエを含むヘリコバクター属の全ての細菌が含まれる。この用語には、霊長類の胃粘膜に存在することができ、及び/又は慢性であるが、粘膜の孤立性感染を確立することができるピロリ菌と類似の生物学を有する細菌もが含まれる。この用語は、胃粘膜に存在する能力のようなピロリ菌の特徴を有するように修飾された細菌をも含む。
【0102】
「異種」ポリペプチドは、天然でない、又はヘリコバクター内に存在するような天然の形態から変異したペプチド、すなわち、天然又はヘリコバクターに導入前のヘリコバクター又はそれらの祖先により発現されていないペプチドである。
【0103】
本明細書で用いられる場合、「宿主」は、本発明の治療用組成物の受容体と定義される。宿主には全ての動物が含まれる。具体的には、宿主には、霊長類(ヒトを含む)、ウシ、ウマ、イヌ、ネコ、ブタ、ヒツジ、ウサギ、げっ歯類、鳥及び魚が含まれるが、これらに限定されない。
【0104】
本明細書で用いられる場合、「免疫学的に不活性な」は、宿主内で有意な免疫応答を刺激しないミクロフローラのような微生物が含まれる。本明細書で用いられる場合、免疫学的に不活性な物質には、ステンレススチール、L−ポリラクチドのような生体適合性ポリマー、医薬用プラスチック及び本発明のミクロフローラ生物体が含まれる。
【0105】
本明細書で用いられる場合、「挿入構築物」は、HopE遺伝子をコードする核酸配列の一部のようなヘリコバクター・ピロリ核酸配列の一部、及び興味のある分子をコードする非ヘリコバクター核酸配列を含む核酸構築物を意味する。
【0106】
「単離核酸」は、天然に存在する核酸、又は3個以上の分離遺伝子にわたる天然に存在するゲノム核酸の人の断片と同一でない核酸配列である。従って、この用語は、例えば、(a)天然に存在するゲノムDNA分子の一部の配列を有するが、天然に存在する生物体のゲノム中の分子の一部に隣接するコード配列の両者に隣接していないDNA分子、(b)得られる分子が天然に存在する任意のベクター又はゲノムDNAと同一でないように、原核生物又は真核生物のベクター又はゲノムDNA導入された核酸、(c)cDNA、ゲノム断片、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により産生された断片、又は制限酵素断片のような分離された分子;及び(d)雑種遺伝子、すなわち、融合タンパク質をコードする遺伝子の一部である組換えヌクレオチド配列にも及ぶ。
【0107】
2個のアミノ酸配列又は2個の核酸配列の「同一性の割合」(相同性)は、Karlin及びAltschul,1990,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.87:2264−2268,1990, Karlin及びAltschulにより改良された(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873−5877,1993)アルゴリズムを用いて決定する。このようなアルゴリズムは、Altschulら(J.Mol.Biol.215:403−410,1990)のNBLAST及びXBLASTプログラムに取り入れられている。BLASTヌクレオチド検索は、本発明の核酸分子と相同的なヌクレオチド配列を得るために、スコア=100、ワード長=12でNBLASTプログラムを用いて実行する。BLASTタンパク質検索は参照ポリペプチド(例えば、配列番号:2)と相同的なアミノ酸配列を得るために、スコア=50、ワード長=3でXBLASTプログラムを用いて実行する。比較の目的でギャップ配列を得るために、Altschulら(Nucleic Acids Res.25:3389−3402,1997)に開示されたギャップBLASTが用いられる。BLAST及びギャップBLASTプログラムを用いる場合、各プログラム(例えば、XBLAST及びNBLAST)のデフォルトパラメーターが用いられる。
【0108】
本明細書の記載において用いられる場合、「薬理学的活性」分子は、例えば、細胞培養中、化学又は生物化学的反応媒体又はアッセイ中、又は動物中で、細胞内で薬理学的に検出可能な活性又は反応を誘発し得る、ペプチド、タンパク質、核酸若しくは他の有機又は無機物質のような分子として定義される。本発明の興味のある薬理学的活性分子には、例えば、本明細書に記載されるような生物学的活性分子が含まれる。
【0109】
本明細書の記載において用いられる場合、「興味のある分子」は、適切であると考えられる病状、欠乏症又は他の状態、例えば、疾患の治療において、矯正及び/又は治療することができる、タンパク質、ペプチド、酵素又は他の分子として定義される。本明細書で用いられる場合、「レポーター遺伝子」なる用語は、興味のある分子を発現する形質転換ベクターに同定可能な表現型を与える、興味のある薬理学的活性分子をコードする異種核酸配列に組み入れられた(又は隣接した)核酸配列である。レポーター遺伝子の非限定的具体例には、GFP、β−ガラクトシダーゼ、アミラーゼ及びCATが含まれる。
【0110】
本明細書で用いられる場合、「スクリーニングマーカー」は、本発明の教示により作成される形質転換ベクターに供給される同定特性(表現型)を意味する。本発明の一実施態様においては、スクリーニングマーカーはレポーター遺伝子である。
【0111】
本明細書で用いられる場合、「選択可能マーカー」、「選択可能遺伝子」、「レポター遺伝子」及び「レポーターマーカー」(以下、「選択可能マーカー」と言う)は、形質転換された細菌ベクターの迅速な同定及び分離を可能にする表現型特性をコードする核酸配列を意味する。一般的に、「臨床用」と考えられ、本発明の教示により作成される細菌ベクターは、抗生物質耐性についてコードしない選択可能マーカーを有するそれらのベクターである。
【0112】
「有意な免疫応答」は、所定の免疫原性分子又は免疫原に対して動物内で免疫を付与する(すなわち、特定の抗体の生産を引き起こす)あらゆる免疫応答である。
【0113】
本明細書に記載される場合、興味のある薬理学的活性分子又は前記分子の組み合わせの「治療的有効量」は、所望の反応を誘発するが、特性反応を起こすには不十分な量を含むことと理解される。例えば、所望の反応は、血液試料中で十分及び/又は許容される検出可能な抗体力価レベルを形成することからなる。被験者に投与される製剤の治療の用量及び期間は、治療を必要とする被験者を看護する医療従事者により決定され、被験者の年齢、性、体重、現在の病状及び/又は組織損傷の程度、及び被験者の治療に用いられるヘリコバクター及び興味のある遺伝子の特定の製剤を考慮する。
【0114】
本明細書で用いられる場合、「トランス遺伝子」は、正常遺伝子としての機能、複製及び伝達を確実にする方法でcDNA技術を用いて、細胞内へ挿入される遺伝子を意味する。
【0115】
本明細書で用いられる場合、「形質転換核酸配列」は、興味のある薬理学的活性分子をコードする核酸配列を含むプラスミド又は他の発現カセットを意味する。本発明のある実施態様においては、核酸配列は、1種以上の治療薬をコードし得る。「形質転換核酸配列」は、本発明の特定の実施態様により、「トランス遺伝子」をも意味し得る。本発明の他の実施態様においては、形質転換核酸配列は、プロモーター及び/又は他の調節成分をコードする核酸を含む。
【0116】
本明細書で用いられる場合、「癌」は、腫瘍性疾患、例えば、白血病、癌及び「過剰増殖障害を意味する。腫瘍は:大腸、腹部、骨、乳房、消化器系、肝臓、膵臓、前立腺、腹膜、肺、血液(例えば白血病)、内分泌腺(副腎、副甲状腺、下垂体、精巣、卵巣、胸腺、甲状腺)、子宮、眼、頭頸部、神経(中枢性及び末梢性)、リンパ系、骨盤、皮膚、軟組織、脾臓、胸部及び泌尿生殖器からなる群から選択される組織に位置する。
【0117】
一実施態様においては、「癌」なる用語は、過形成(例えば、子宮内膜増殖症)、化生(例えば、結合組織化生)及び/又は異形成症(例えば、頸部異形成症及び気管支肺異形成症)からなる群から選択される前癌状態をも包含する。
【0118】
他の実施態様においては、「癌」なる用語は、両性腫瘍、繊維嚢胞性状態及び組織肥大からなる群から選択される良性過増殖性障害をも包含する。
【0119】
本明細書で用いられる場合、「免疫/造血系の疾患又は病状」なる用語は、貧血、汎血球減少症、白血球減少症、血小板減少症、白血病、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、急性リンパ球性貧血(ALL)、プラズマ細胞腫、多発性骨髄腫、バーキットリンパ腫、関節炎、喘息、エイズ、自己免疫疾患、関節リウマチ、肉芽腫症、免疫不全、炎症性腸疾患、敗血症、好中球減少症、好中球増多症、乾癬、移植臓器及び組織に対する免疫応答、全身性エリテマトーデス、血友病、凝固性亢進、糖尿病、心内膜炎、髄膜炎、ライム病、セリアック病(グルテン過敏症)及びアレルギーからなる群から選択される疾患又は病状を意味する。
【0120】
本明細書で用いられる場合、「生殖器系の疾患又は病状」なる用語は、睾丸停留、前立腺炎、鼠径ヘルニア、精索静脈瘤、ライディヒ細胞腫瘍、疣状癌、前立腺炎、マラコプラキア、ペーロニ病、陰茎癌、扁平上皮過形成、月経困難症、卵巣腺癌、ターナー症候群、粘液膿性子宮頸管炎、セルトリーライディヒ腫瘍、卵巣癌、子宮癌、骨盤内感染症、睾丸癌、前立腺癌、クラインフェルター症候群、ヤング症候群、早漏、糖尿病、嚢胞性線維症、カールタジュナー症候群、精巣萎縮、睾丸性女性化症、無睾丸症、異所性精巣、精巣上体炎、精巣炎、淋病、梅毒、睾丸捻転、結節性精管炎、胚細胞腫瘍、間質腫瘍、月経困難症、後傾子宮、子宮内膜症、子宮筋腫、腺筋症、無排卵性出血、無月経、クッシング症候群、胞状奇胎、アッシャーマン症候群、早発月経、性的早熟、子宮ポリープ、不正子宮出血、子宮頸管炎、慢性子宮頸管炎、粘液膿性子宮頸管炎、子宮頚部形成異常、頚管ポリープ、ナボチアン嚢胞、子宮腟部糜爛、頸管無力症、頚管腫瘍、仮性半陰陽及び月経前症候群からなる群から選択される疾患又は病状を意味する。
【0121】
本明細書で用いられる場合、「骨格筋系の疾患又は病状」なる用語は、骨癌(例えば、骨軟骨腫、良性軟骨腫、軟骨芽細胞腫、軟骨 粘液線維腫、類骨骨腫、巨細胞腫、多発性骨髄腫、骨肉腫)、パジェット病、関節リウマチ、全身性エリマトーデス、骨髄炎、ライム病、痛風、滑液包炎、腱炎、骨粗鬆症、変形性関節症、筋ジストロフィー、ミトコンドリア性筋障害、悪液質及び多発性硬化症からなる群から選択される疾患又は病状を意味する。
【0122】
本明細書で用いられる場合、「心臓血管系の疾患又は病状」なる用語は、粘液腫、線維腫、横紋筋腫、心臓血管異常(例えば、先天的心臓欠陥、脳動静脈奇形、中隔欠損)、心疾患(例えば心不 全、鬱血性心疾患、不整脈、頻脈、細動、心膜疾患、心内膜炎)、心停止、心臓弁膜症(例えば、狭窄、逆流、脱出症)、血管疾患(例えば高血圧、冠動脈疾患、 狭心症、動脈瘤、動脈硬化、末梢血管障害)、低ナトリウム血症、高ナトリウム血症、低カリウム血症及び高カリウム血症からなる群から選択される疾患又は病状を意味する。
【0123】
本明細書で用いられる場合、「混合胎児生として記載した疾患又は病状」なる用語は、脊椎披裂、内水頭症、神経線維腫症、胎児期アルコール症候群、糖尿病、フェニルケトン尿症(PKU)、ダウン症候群、パトー症候群、エドワーズ症候群、ターナー症候群、アペール症候群、カーペンター症候群、コンラーディ症候群、クルーゾン症候群、皮膚弛緩症、コルネリヤドランゲ症候群、エリスファンクレフェルト症候群、ホルト−オーラム症候群、カルタゲナー症候群、メッケル−グルーバー症候群、ヌーナン症候群、パリスター−ホール症候群、ルビンシュタイン−テイビ症候群、三日月刀症候群、スミス−レムリ−オピッツ症 候群、血小板減少・橈骨欠損(TAR)症候群、トレチャー・コリンズ症候群、ウイリアムス症候群、ヒルシュスプルング病、メッケル憩室、多発性嚢胞腎、 ターナー症候群、性器発育異常症、クリッペル−ファイル症候群、骨形成不全症、筋ジストロフィー、ティ−サックス病、ウイルム腫瘍、神経芽細胞腫及び網膜芽細胞腫からなる群から選択される疾患又は病状を意味する。
【0124】
本明細書で用いられる場合、「排泄系の疾患又は病状」なる用語は、膀胱癌、前立腺癌、良性前立腺肥大、膀胱障害(例えば、尿失禁、尿閉、尿路閉鎖、尿路感染症、間質性膀胱炎、前立腺炎、過敏膀胱、血尿)、腎機能異常(例えば、水腎症、タンパク尿、腎不全、腎孟腎炎、尿路結石症、逆流性腎症及び片側閉鎖性尿路疾患)からなる群から選択される疾患又は病状を意味する。
【0125】
本明細書で用いられる場合、「神経/感覚系の疾患又は病状」なる用語は、脳腫瘍(例えば、脳幹グリオーマ、脳腫瘍、中枢神経系(原発性)リンパ腫、中枢神経系リンパ腫、小脳状細胞腫、神経変性障害(例えば、アルツハイマー病、クロイツフェルト−ヤコブ病、パーキンソン病及び特発性初老期痴呆)、脳脊髄炎、脳マラリア、髄膜炎、代謝性脳疾患(例えば、フェニルケトン尿症及びピルビン酸カルボキシラーゼ欠損症)、小脳性運動失調症、毛細血管拡張性運動失調症、エイズ痴呆、統合失調症、注意欠陥障害、注意欠陥多動性障害、自閉症及び強迫性障害からなる群から選択される疾患又は病状を意味する。
【0126】
本明細書で用いられる場合、「呼吸器系の疾患又は病状」なる用語は、喉頭癌、 咽頭癌、気管癌、喉頭蓋癌、肺癌、扁平上皮細胞癌、小細胞(燕麦細胞)癌、大細胞癌及び腺癌のような呼吸器系癌、アレルギー反応、嚢胞性疾患、サルコイドーシス、組織球症X、浸潤性肺疾患(例えば、肺線維症及びリンパ球様間質性肺炎)、閉鎖性気道疾患(例えば、喘息、気腫、慢性又は急性気管支炎)、職業性肺疾患(例えば、硅肺及び石綿沈着症)、肺炎及び肋膜炎からなる群から選択される疾患又は病状を意味する。
【0127】
本明細書で用いられる場合、「内分泌系の疾患又は病状」なる用語は、内分泌組織及び内分泌器官の癌(例えば、視床下部、下垂体、甲状腺、副甲状腺、脾臓、副腎、卵巣及び睾丸の癌)、糖尿病(例えば尿崩症、I型及びII型糖尿病)、肥満症、下垂体関連障害(例えば、下垂体機能亢進症、下垂体機能低下症及び下垂体性小人症)、甲状腺機能低下症、甲状腺機能亢進症、甲状腺腫、繁殖障 害(例えば、男性及び女性の不妊)、副腎関連障害(例えば、アジソン病、コルチコステロイド欠損症及びクッシング症候群)、腎臓癌(例えば、腎細胞癌、移行上皮癌及びウイルム腫瘍)、糖尿病性ネフロパチー、間質性腎炎、多発性嚢胞腎、糸球体腎炎(例えば、グッドパスチャー症候群のような自己免疫障害により起こるIgMメサンギウム増殖性糸球体腎炎及び膜性増殖性糸球体腎炎)及び腎石灰沈着症からなる群から選択される疾患又は病状を意味する。
【0128】
本明細書で用いられる場合、「消化器系の疾患又は病状」なる用語は、潰瘍性大腸炎、虫垂炎、クローン病、肝炎、肝性脳炎、門脈圧亢進症、胆石症、消化器系癌(例えば、胆管癌、胃癌、大腸癌、胃癌、膵臓癌、胆管癌、大腸腫瘍(例えば、ポリープ又は癌)及び肝硬変、膵炎、潰瘍性疾患、幽門狭窄、胃腸炎、胃けいれん、胃萎縮症、十二指腸の良性腫瘍、膨張、過敏性腸症候群、吸収不良、小腸の先天性疾患、細菌及び寄生虫感染症、巨大結腸、ヒルシェスプルング病、先天性巨大結腸、後天性巨大結腸、大腸炎、肛門直腸障害(例えば痔瘻、痔核)、肝臓の先天性障害(例えば、ウイルソン病、ヘモクロマトーシス、嚢胞性線維症、胆道閉鎖症及びアルファ1−アンチトリプシン欠乏症)、門脈圧亢進症、胆石症及び黄疸からなる群から選択される疾患又は病状を意味する。
【0129】
本明細書で用いられる場合、「結合性/上皮性の疾患又は病状」なる用語は、結合組織化成、混合結合組織病、局所性上皮性肥厚、上皮化成、粘膜上皮性異形成、移植片対宿主病、多発性筋炎、膿疱性過形成、脳異形成、組織肥大、 アルツハイマー病、リンパ増殖症候群、ワルデンストロンマクログロブリン血症、クローン病、悪性貧血、特発性アジソン病、糸球体腎炎、水疱性類天疱瘡、シェーグレン症候群、糖尿病、嚢胞性線維症、骨芽細胞腫、骨巨細胞腫、骨肉腫、軟骨肉腫、骨粗鬆症、変形性関節炎、歯周病、創傷治癒、再発性多発性軟骨炎、脈管炎、結節性多発性動脈炎、ヴェグナー肉芽腫炎、蜂巣炎、関節リウマチ、乾癬性関節炎、円盤状紅斑性狼瘡、強皮症、クレスト症候群、多発性筋炎、皮膚筋炎、混合結合組織病、再発性多発性軟骨炎、脈管炎、ヘーノホ−シェーンライン症候群、結節性紅斑、多発性動脈炎、側頭(巨細胞性)動脈炎、高安動脈炎、ヴェグナー肉芽腫炎、ライター症候群、ベーチェット症候群、強直性脊椎炎、蜂巣炎、ケロイド、エーラーダンロス症候群、マルファン症候群、弾性線維性仮性黄色腫、骨形成不全症、軟骨異形成、表皮水疱症、アルポート症候群及び皮膚弛緩症からなる群から選択される疾患又は病状を意味する。
【0130】
「グレリン関連疾患及び障害」なる用語は、グレリン活性の調節を通して治療、予防又は寛解することのできる任意の状態を意味する。これらには、グレリンにより増強、悪化又は刺激する状態、例えば成長ホルモン放徐又は食欲が含まれる。グレリンの生理作用には、具体例して、成長ホルモン放徐の刺激、乳腺刺激物及び副腎皮質刺激因子からのホルモン分泌の刺激、食欲促進作用及び血管作用、甲状腺癌及び乳癌に対する坑増殖性効果及び迷走神経媒介による胃運動性及び酸分泌の調節が含まれると考えられる(WO2005021026を参照されたい)。
【0131】
用語の定義がその用語の通常使用の意味から逸脱する場合には、具体的に示さない限り出願人は明細書に与えられた定義の使用を意図する。
【0132】
次に、本発明について、更に以下の非限定的な実施例を参照して説明する。しかし、以下の実施例は例示的なものであり、本明細書に記載の本発明の一般性を決して制限するものと考えるべきでないと理解すべきである。特に、本発明は、特定のピロリ菌の使用について詳細に記載するが、本明細書における成果がこの株に限定されないことは明白に理解されるであろう。
【0133】
実施例1 異種タンパク質の安定発現のためのベクター及び遺伝子組換えピロリ菌生物体
ピロリ菌の遺伝子操作は珍しい。本実施例は、遺伝的に形質転換されたヘリコバクター、特に形質転換ピロリ菌を提供する本発明の有用性を明らかにする。形質転換細菌は大腸菌のような非ヘリコバクター生物体における先行操作に従ったヘリコバクター由来プラスミド及びプラスミドベクターを用いて産生する。
【0134】
文献に記載された、ある種のピロリ菌プラスミドは、ピロリ菌/大腸菌シャトルベクターにうまく変換することができる。多くの大腸菌株は自然にDNA取り込み能力を有する。ストレプトマイシン、リファンピン及びメトロニダゾールに対する耐性マーカーが大部分のピロリ菌株にうまく形質転換された。しかし、大腸菌及び他の生物体由来のプラスミドDNAはピロリ菌に導入することができるが、これらプラスミドは安定に維持することができない。更に、ピロリ菌プラスミドは大腸菌又はヘリコバクター種に形質転換することができない。従って、ピロリ菌シャトルベクターを作成する必要がある。
【0135】
ピロリ菌由来の2種のプラスミドを、図1及び図2に示す。ベクターpHPAI(2.8kb)(図1)及びpHP3(3.4kb)(図2)が配列決定され、pHPAIがシータ形式のプラスミド複製により複製されることが明らかになった。ローリングサークル複製プラスミドとは対称的に、シータプラスミドは複製中一本鎖DNA中間体を生成せず、非正統的組み換えを受けにくいため、より安定なベクター候補である。更に、pHPAI起源の複製(ori)は、複製の調節に関与し、安定なコピー数を維持する一連の直接反復配列(「イテロン」と命名)を含む。ベクターpH623はこの特性の多くを共有する。これら二種のベクターのヌクレオチド配列を以下に示す。
【0136】
二本鎖型で示したプラスミドpHP1(上の鎖は配列番号:1(+鎖)であり;下の鎖は(−鎖)(配列番号:2)である。
【0137】
【化2】







【0138】
一本鎖型で示されるプラスミドpHP3(配列番号:3):
【0139】
【化3】





【0140】
クローニングされた追加のヌクレオチド配列は、配列番号:4として提供され、これは、45個のアミノ酸のペプチド(配列番号:5)をコードする135bpの断片を含む。このより小さい45個のアミノ酸のペプチドは、C型肝炎ウイルス(HCV)コア抗原の免疫原性ポリペプチドである。45個のアミノ酸ペプチドをコードする核酸配列を、下線を引いた、示される135ヌクレオチドと共に以下に示す(配列番号:5)。
【0141】
【化4】



【0142】
発現した産物がHopE遺伝子産物の表面暴露ループの一部に位置するように、配列番号:4の核酸を、ピロリ菌26695のhopE遺伝子(配列番号:6、以下に示す)に、配列番号:4のnt504(太字/下線で示す;タンパク質酸性物のアミノ酸残基168に相当)でクローニングした。ベクターpTMI03−8(図3)と命名したこのベクターは、大腸菌の表面で発現した。
【0143】
【化5】



【0144】
すなわち、hopE遺伝子の分離を実施する1つの方法は、TagDNAポリメラーゼを用いることによりピロリ菌22695を増幅することである。BamRI部位を含む上流プライマー5’−AAGGATCCGATAGGAATGTAAAGGAATGG−3’(配列番号:7)及びEcoRI部位を含む架硫プライマー5’−CCGAATTCTAAAGGCATGAACGCTTGCA−3’(配列番号:8)は、Perkin−Elmer Applied Biosystems,Inc.モデル332(ABI;ミシサーガ、オンタリオ州、カナダ)のようなDNAシンセサイザーを用いて構築することができる。得られたPCR断片をlacプロモーターと同じ配向のpBluescript II KS(+)のEcoRVVに平滑末端クローニングすることができる。
【0145】
次いで、C型肝炎ウイルス(HCV)コア抗原由来の135bpの免疫原性コード配列を挿入するためのhopE遺伝子中に2個のユニークな制限酵素部位を挿入するようにPCRプライマーを設計することができる。Tag DNAポリメラーゼを用いるPCR増幅は、下記のようなタッチダウン増幅法を用いて実施することができる。PCRサーモサイクラーを、96℃の初期変性工程を4分間、次いで65℃の初期アニーリング温度を18サイクル(90秒間)、各連続サイクルごとに0.5℃降温し、72℃における伸長工程を6分間、及び96℃における変性を1分間を18サイクル実施するようにプログラムした。最初の18サイクルの完了に次いで、一定の55℃のアニーリング温度を伴う、72℃の伸長及び96℃の変性工程を用いることにより、追加の14回の増幅サイクルを実施することができる。次いで、得られたアンプリコンをカラムにより精製し、エタノールで沈殿させ、DNAポリメラーゼのクレノウ断片を用いて消化することにより、ブラント末端を作成する。PCR産物を制限酵素で消化し、鋳型DNAを除去し、アラビノース誘発プロモーターの制御したにpTMI03.8のような適切なベクターに再連結し、大腸菌 JM105に形質転換することができる。
【0146】
組換え型クローンは、PCR増幅反応において、オリゴヌクレオチドプライマー5’−AGATCTAAGGACGTC−3’(配列番号:9)及び逆配列プライマーを用いて同定することができる。同定したクローンを配列決定し、挿入制限エンドヌクレアーゼ部位がフレーム内にあり、hopE遺伝子にエラーが導入されていないことを証明することができる。次いで、C型肝炎ウイルス(HCV)コア抗原由来の135bpの免疫原性コード配列を、標準技術を用いて挿入することができる。
【0147】
いったん、ベクターpTMI03−8が形成されると、大腸菌に形質転換し、37℃で増殖させ、次いで、細胞を収集し、DCV挿入物の発現をウェスタンブロットにより継続した。
【0148】
すなわち、この方法は以下の通りである。細胞を約20個のプレートから集め、10mM Tris−HCl(pH8.0)中に50mgのDNアーゼI(Boehringer Mannheim)を含む20%ショ糖に再懸濁する。次いで、細胞をフレンチプレスを用いて15,000 lb/平方インチで破壊する。破壊された細胞を、1mLの70%と、10mM Tris−HCl(pH8.0)中の6mLの70%ショ糖とのショ糖段階勾配に重層する。素塗膜画分を集め、150,000×gでペレット化し、ペレットを10mLの蒸留水に再懸濁する。また、500mLの対数増殖期培養物の外膜を10mM Tris−HCl(pH8.0)−3%n−オクチル−ポリオキシエチレン中に可溶化し、23℃で1時間インキュベートし、173,000×gで30分間遠心分離する。ペレットを、10mM Tris−HCl(pH8.0)−オクチル−ポリオキシエチレン−5mM EDTA(pH8.0)に再懸濁し、23℃で1時間インキュベートし、173,000×gで30分間遠心分離し、上清を集める。ウェスタン免疫ブロットは、第二の可溶化工程の上清にHCV/hopEが存在することを示す。HCV/hopEを含む上清を、当量の0.125M Tris−HCl(pH6.8)、4%(重量/容量)ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)及び20%(容量/容量)グリセロールと混合し、SDS−12%ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)に供する。必要であれば、HCV/hopEのバンドを、ゲルの染色していない部分から切り取り、10mM Tris−HCl(pH8.0)、1mM EDTA(pH8.0)及び100mM NaCl中に、4℃で一晩溶出することができる。次いで、溶出した上清をSDS−PAGEゲルで電気泳動し、純度を確認し、標準技術を用いてウェスタン免疫ブロットを実施する。例えば、分離した外膜を15μg/レーンで積載することができる。次いで、不連続12%ポリアクリルアミドゲルによるSDS−PAGEにより電気泳動を実施することができる。次いで、クマシーブリリアントブルーを用いてタンパク質を染色する。ウェスタン免疫ブロットについて、未染色のゲルをイモビロン−P膜(Millipore,Bedford,Mass.)で電気ブロットすることができる。リン酸緩衝食塩水(PBS)中の3%ウシ血清アルブミン(BSA;Boehringer Mannhaim)−0.1% Tween20(Sigma)を用いて2℃で2時間ブロッキングした後、次いで、膜をPBS中の1%BSA−0.05% Tween20中の1/10,000に希釈した抗−HCVウサギ抗血清を用いて37℃で1時間インキュベートする。次いで、膜をPBSで洗浄し、1/5,000に希釈したアルカリホスファターゼを結合した二次抗体(Bio−Rad,Richmond,Clifornia)で37℃で1時間インキュベートする。結合した抗体を、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルホスフェート(BCIP,Calbiochem.La Jolla,California)及びニトロブルーテトラゾリウム(NBT,Sigma)を用いて検出する。
【0149】
実施例2 発現ベクター及び安定発現のための抗原の選択
HopEはピロリ菌の固有のタンパク質なので、この生物に耐性であり、そのため、ピロリ菌内で外来抗原又は他の異種遺伝子産物を発現するのに有用な構築物を作成することができる。前述のようにして容易に発現することのできる他のピロリ菌/大腸菌シャトルベクターには、例えば、各宿主について適している2個のプラスミドori部位及びマーカーを含むベクターが含まれる。マーカーには、クロラムフェニコール/カナマイシン耐性用遺伝子、並びに大腸菌及びピロリ菌の両方の転写系により認識することのできるプロモーターが含まれる。
【0150】
大腸菌の複製のための必要条件は、多くの公知の大腸菌プラスミド(例えば、pBR322)のいずれかにより実現することができる。
【0151】
構築したシャトルベクターは、生体外における大腸菌及びピロリ菌の両者の複製について試験し、文献に記載の存在するシャトルプラスミドと比較することができる。発現すべき抗原又は他の異種遺伝子産物の選択は、理想的にはピロリ菌及び大腸菌に毒性でなく、哺乳類の選択部位に送達された時に非常に免疫原性(又は他の好ましい特性を有する)のものである。
【0152】
哺乳類の免疫化用の発現抗原の場合、このような部位は粘膜部位であってもよい。
【0153】
実施例1に記載されるように、hopE/HCVコア抗原融合タンパク質は大腸菌表面で発現し得る。pTMI03−8産物(図3)は、好ましくはピロリ菌の外膜を標的とし、それにより、粘膜周囲にHCV抗原を示す。破傷風毒素はひとにおける抗原として広く研究され、それに対する免疫応答が十分に特徴づけられている。TTは、経口又は鼻腔内投与され、細菌胞子表面で示された場合に、良好な粘膜免疫反応を誘発する(Due & Cutting,2003,Expert Opinion Biol Ther,3(8),1263−70)。破傷風毒素C断片は、前述のようにhopE遺伝子産物と融合し、又は膜アンカー及び細胞表面標的配列を含むように設計することができる。このシステムの利点は、ワクチン接種法の効果の評価のための十分に特徴づけられたマウスモデルが存在することであるが、HCVの場合には、公知のマウスモデルは、通常、免疫不全マウスに依存する。サイトメガロウイルス(CMB)のgBタンパク質は、gB抗原を発現する人工ワクチンウイルスの致死量に対してマウスを免疫することが示された。従って、HCV抗原に代え、gB抗原を含む、本明細書に記載されたもののようなシャトルベクターを、実施例1に記載のプロトコールを用いて構築することができる。
【0154】
シャトルベクターにおいて、多くのプロモーターを用いることができる。理想的には、用いられるプロモーターは、ヘリコバクターの生体内コロニー形成メカニズム、又は消費することのできる無害な食料品又は化学薬品を用いた誘発のいずれかにより誘発される。例えば、ピロリ菌ヒスチジンキナーゼHP165由来のプロモーターを用いてもよい。ピロリ菌ヒスチジンキナーゼHP165由来のプロモーターは酸性pHにより誘発され、胃粘膜コロニー形成に関連する毒性因子であることが報告されている。このプロモーターの利点は生体外で作成することができることである。外来抗原は、胃粘膜の酸性環境にさらされた時にのみ発現するであろう。
【0155】
他のプロモーターには、pTMI03.S及びFlaBシグマ54プロモーター(Josenhans et al.,1998,EEMS Microbial Lett.,16 1(2),263−73)で用いられるアラビノース誘発性プロモーター、構成的かつ誘発性大腸菌系で用いられるT7プロモーター、及び嫌気性環境で誘発されるサルモネラのnirプロモーター(Chatfield et al.,1992,Biotechnology,10(8):888−92)が含まれる。ピロリ菌中で機能する、これらのあらゆるプロモーターの能力は、ピロリ菌プラスミドベクター中でプロモーター活性の読み出しとしてCAT及びGFPプロモーターを用いる、Angeliniら(2004)(Plasmid,51:101−107)によって開発されたシステムを用いて試験することができる。
【0156】
発現の標的部位は、用いられる抗原又は他の遺伝子産物に依存するであろう。初期の研究は、ピロリ菌の細胞表面に対する発現ポリペプチド(例えば、抗原)を標的とするHopEタンパク質及び融合ポリペプチドに焦点を合わせていた。
【0157】
プラスミドの安定性も非常に重要であり、プラスミドの維持のための選択決定因子としての抗生物質耐性遺伝子の使用は生体外では有効であるが、生体内では実用性が低い。代替え物としては、平衡致死系、例えば、サルモネラにおいて不活性化に用いられるasd遺伝子である。ピロリ菌内で自然に存在するasd遺伝子は、グラム陰性細菌の細胞壁ペプチドグリカンの必須成分である、アスパラギン酸−β−セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ(ジアミノピメリン酸(DAP)の生合成経路における酵素)をコードする。DPAの非存在下では、asd突然変異体は溶解する。DAPは哺乳類組織に存在しないので、この平衡致死系は、全ての生存するピロリ菌の必要条件として、組換え型asd遺伝子含有プラスミドの保有を課する。
【0158】
asd遺伝子系を用いるためには、標準的な遺伝子ノックアウトプロトコールを用いてasd遺伝子のゲノムコピーを不活性化する。次いで、このピロリ菌株は、DAPの供給により、又はasd遺伝子を含むプラスミドによってのみ増殖するであろう。
【0159】
同じ目的のために用いることのできる他のシステムには、粘膜アジュバントとしての大腸菌エンテロトキシン又はコレラトキシン(CT)が含まれる。アジュバントは、粘膜免疫応答を増給するためにも用いることができる。このような2種のアジュバントは、発現する抗原が、その強い粘膜アジュバント特性を維持するが毒性が低下したLTB及びCTB突然変異体に融合する、CT及び大腸菌エンテロトキシン(LT)である。
【0160】
実施例3 毒性、LD50
実施例1及び2に記載したように、pHP3及びpHP623のようなヘリコバクターをベースとするベクターは、マウス又はヒトのような哺乳類において感染に対する予防を提供し得る。本実施例においては、マウスモデルを用いて、興味のある薬学的活性分子の、ヒトを含む哺乳類への送達をもたらすためのヘリコバクターをベースとするシステムを用いる有用性を証明する。マウスモデルを用いて、生体内において発現した表面抗原に対する血清反応を誘発するピロリ菌の遺伝子導入株の活性を証明する。
【0161】
マウスを野生型ピロリ菌で感染させ、他のマウスに、実施例2に記載された温度感受性ピロリ菌を胃管栄養法により接種する。コントロール及び試験動物の両方からの血清を抗体についてアッセイし、表1に示したスケジュールに従い、屠殺した動物の胃の組織像の試験を実施した。マウスの尿素呼気試験も用いた。
【0162】
毒性の50%(75%〜40%)低下が観察された。特異抗体力価はベースラインから4倍上昇し、血清応答であることを示唆する。血清試料を、ベースライン、12週、24週及び48週で採取した。これらの時期に、10、10及び20匹の動物を屠殺し、胃組織像の試験を実施した。
【0163】
実施例4 温度感受性ピロリ菌株の毒性及び抗原性の比較
外膜タンパク質の発現/修飾に関する毒性における変化を検出するために、マウスに、実施例3に記載の温度感受性ピロリ菌を接種した。同じサイズのマウスのコントロール群を野生型のピロリ菌株で感染させた。ピロリ菌の存在又は非存在を検出するために非侵襲性の方法を用いた。抗体測定のために、3及び6ヶ月でマウスを採血した。屠殺の際、組織増試験を実施し、胃炎をアッセイし、コロニー形成を確認した。
【0164】
実施例5 肺炎球菌抗原に対する温度感受性ピロリ菌のワクチン接種効果を評価するためのLD50の研究
標準的病原体(肺炎球菌)によるヘリコバクターをベースとするワクチン予防効果を証明するために、マウスに、胃管栄養法により温度感受性ピロリ菌を接種した。同じサイズのコントロール群を野生型のピロリ菌で感染させた。実施例4に記載したように、ピロリ菌の存在又は非存在を検出するために非侵襲性の方法を用いた。感染の6ヶ月後、Aabergeら(1995,Microb.Pathog.,18:141−152)の方法により、LD50の10倍量の生筋の毒素型肺炎球菌4型(約20CFU/マウス)を、全マウスの腹腔内に抗原投与した。
【0165】
コントロールにおいては、75%の死亡率であることを考慮すると、この研究は、死亡率50%の低下を検出する、0.8の能力を有している(50%に対する75%)。
【0166】
実施例6 マウスのピロリ菌状態の決定:呼気試験法
本実施例においては、ヒトにおいて用いられる尿素呼吸試験をマウスにおける使用に適用した。
【0167】
10匹のマウスに、ウレアーゼを欠いた食餌(未調理大豆)を与えた。次いで、マウスに、胃管栄養法により200μL中の風味のあるクエン酸中の3.7kBq[14]C尿素を投与し、空気を満たした2Lのプラスチックジップロックバッグ中に20分間置いた。次いで、バッグ中の空気を交換せずにマウスを取り出した。次いで、エタノール中の0.1ミリモルのハイアミンを導入し、シンチラントをハイアミン溶液に加え、10分間、又は1,000dpmのカウントまでカウントした。
【0168】
実施例7 ヒトにおける研究
ヒトにおける毒性及び抗体反応を確認するため、「Baylor株」のようなピロリ菌株を用い、以下の基準を適用する。
【0169】
1.感染個体は症状がなく、軽度以上の組織損傷がなく、肝炎ウイルス又はHIVによる感染の証拠がない。
【0170】
2.単離株は単一株であり、cagA陰性であり、メトロニダゾール、クラリスロマイシン、テトラサイクリン及びアモキシシリンに感受性である。
【0171】
3.抗原投与を受けるボランティアは正常な胃組織像を有し、消化性潰瘍の組織像がなく、家に子供がなく、幼児との定常的な接触がなく、感染治療に必要な抗生物質に対するアレルギーがなく、健康である。
【0172】
抗原投与は、就寝時における40mgのファモチジン、次いで、朝のビーフスープ中のピロリ菌の経口投与からなる。被験者は、14日間、毎日接触する。7日及び14日後に13c−UBTを実施し、2週及び3ヶ月後に、定量的培養物を用いた内視鏡検査及び組織試験を実施した。感染を根絶するために抗生物質を用いた。
【0173】
実施例8 生体内における野生型及び/又はTSHPの検出のための外部化学マーカーの開発
生体内における野生型又はTSHPの検出に用いることのできる化学マーカーの具体例は、図4に示す構造のスルファサラジン(SSN)である。
【0174】
無菌マウス及び通常のマウスにおける研究は、腸内細菌のみがジアゾ結合の還元に関与し、SSNの還元的異化作用並びにスルファピリジン及び5−アミノサリチル酸の放出をもたらすことを示した。この反応を触媒する酵素は、ジアゾレダクターゼ(アゾレダクターゼの同義語)と呼ばれる。SSNを与えられた通常のマウスは、尿及び糞中に5−アミノサリチル酸及びスルファピリジン(及びそれぞれの複合体)を排泄するが、無菌ラットはSSN分解の証拠を示さない。
【0175】
ある種の細菌種はジアゾレダクターゼ(AZR’s)を有することが示された。予備的なバイオインフォマティックス研究は、ピロリ菌はAZR遺伝子を含まないことを示した。
同様の類似配列の存在は、否定的な結果を生じなかった。これらの環境下では、生存可能で機能的アゾレダクターゼを有するピロリ菌(azr+TSHP)の遺伝子導入株(TSPH)を、これらのマーカー使用の評価するために用いることができる。
【0176】
プラスミドpTMI03−02をEcoRI及びHindIIIにより消化し、EcoRI及びHindIIIで処理した枯草菌由来のアゾレダクターゼ(AZR)遺伝子と結合し、HopEの168アミノ酸及びAZRの両者を含む、pTMI103−azrと命名されたベクターを作成した。このプラスミドを大腸菌に形質転換し、HopE及び枯草菌のAZRの発現が起こるかどうかを評価した。pTMI02は、全長のC型肝炎コア抗原(HCCA)で同様に処理した場合、ウェスタンブロット及び抗−HopE抗体を用いて、HopE::HCCAの大腸菌外膜へ輸送されることを証明した。
【0177】
マウス(n=30)を、胃管栄養法によりazr+TSHPで感染させ、尿及び糞中への5−アミノサリチル酸及びスルファピリジン(及びそれらの複合体)を産生するための、生体内でのAZR発現がいったん証明されると、ヒトの試験を始めることができる。
【0178】
実施例9 マーカーとしてのダイアグネックスブルーの使用
診断薬「ダイアグネックスブルー(diagnex blue)は、色素(アズール−A)と結合したイオン交換樹脂(Amberlite XE−96)を含む。この試験は、
樹脂−色素の組み合わせが2.5より低いpHで解離し、その後に色素が吸収され、尿中に現れるという事実に依存している。尿中に色素がないヒトは無酸症である。この原理を図5に示す。
【0179】
同じ原理を、ピロリ菌について試験するために用いることができる。例えば、pH>7.0で解離する色素−樹脂の組み合わせは、樹脂が尿素を付与する場合、ウレアーゼを検出することができる。これは、ピロリ菌が存在する粘膜層内でpH>7.0を生じ、そのために色素を放出する。
【0180】
マウス(n=3)に、野生型のピロリ菌株を接種し、無菌マウス(n=30)をコントロールとして用いる(予備実験)。ピロリ菌の活性感染の確立が可能な最適な期間の後に、試験群及びコントロールに、胃管栄養法により、所定量の樹脂−色素の組み合わせを導入した。これに尿素溶液を続ける(0.01M〜0.5Mの範囲)。このマウスを代謝用ケージ中に維持し、アズール色素の排泄を監視し、定量した。樹脂及び尿素濃度の種々の比で試験し、用いる最適な組み合わせを確認した。
【0181】
実施例10 送達製剤
製剤を送達するために、本実施例は、エアロゾル噴霧製剤が提供されるように、本発明の有用性を証明するために提供される。これらのいくつかの実施態様においては、エアロゾルは、適切な噴霧剤を用いて加圧パック又は噴霧器の形態を選択し得る。加圧エアロゾルの場合、容量単位は、測定量を送達するためのバルブを備えることにより決定することができる。製剤は、吸入により投与するための粉末として調製することができる。吸入による投与は、本発明の組成物を含む溶液又は懸濁液を粉砕することにより実施することもできる。
【0182】
本発明の組成物は、静脈内製剤として被験者に投与するため、経口消化のための液剤に製剤化してもよい。
【0183】
本発明の種々の製剤全ては、当業者によく知られた方法により、必要であれば更に適切な薬学的補助剤を用いて製造することができる。本発明の組成物は、有利にはヘリコバクター種を単独で、又は他の所望の成分と組み合わせて含む。前記の単独又は組み合わせのヘリコバクター製剤のいずれもが、本発明の薬学的に許容される組成物を含む医薬組成物に含まれていてもよい。本明細書に記載される医薬組成物は、個体(例えば、粉末、粒子、顆粒、サチェ剤、錠剤、カプセル等)、半固体(ゲル、ペースト等)又は液状(液体、分散液、懸濁液、エマルジョン、混合物等)の形状であってもよく、例えば、消化管及び胃粘膜経由の投与に適用してもよい。従って、医薬組成物は、使用前に水性媒体中に分散する粉末又は粒子形状であってもよい。
【0184】
液状形態の医薬組成物は、ヘリコバクター組成物及び電解質溶液、例えば、生理条件に適応する組成物、例えば生理学的に許容される溶液を含む分散形状であってもよい。本発明の医薬組成物は、更に、他の治療的、予防的及び/又は診断的に活性な物質を含んでいてもよい。
【0185】
他の態様においては、本発明は、第一及び第二の溶液を含む薬剤キットであって、第一の容器が、本発明のプラスミド及び/又はプラスミドベクターを含むヘリコバクター組成物を含み、第二の溶液がヘリコバクター組成物用分散媒体を含むキットに関し、使用前の分散媒体中にヘリコバクター組成物の投与及び/又は服用のための使用説明書が添付されている。
【0186】
キットに含まれる本発明のヘリコバクター組成物は、粉末又は粒子形状であってもよい。
【0187】
本発明の薬剤キットは、ヘリコバクター組成物を分散媒体中に分散した後に投与すべき期間についての勧告を含む使用説明書を含んでいてもよい。
【0188】
実施例11 ヘリコバクターワクチン製剤を用いた免疫調節
TH1応答(T−ヘルパー細胞1型)は細胞媒介性応答である。これの過活性はリウマチ性関節炎(RA)及び狼瘡のような疾患の推定される原因である。対照的に、TH−2はワクチンの抗体型血清応答特性である。本実施例は、本発明のヘリコバクターをベースとするワクチン治療製剤を用いて治療した場合に、動物内でTH−2型応答を実現するための技術を提供するための本発明の有用性を証明する。
【0189】
ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)は抗体応答(TH2)を引き起こすが、最近では、胃粘膜内の主要な応答がTH1細胞媒介性応答であり得ることに注目されている。従って、本発明は、動物の粘膜に供給された時に両方のタイプの免疫応答を供給し得ることが想像される。
【0190】
本明細書に記載のヘリコバクターベクター及びベクタープラスミドシステムの使用は、動物における抗体応答を引き起こすために用いることができる。具体例として、細菌、クロストリジウムの形質転換を提供する構築物中の遺伝子発現カセット、及び形質転換クロストリジウムの表面に由来するタンパク質(S−層タンパク質)のそれに続く分泌を用い、粘膜ワクチン接種の開始をもたらす系は、その開示が全体として本明細書に組み入れられるWO−0194599に開示されている。これらの構築物は、ORF1、ORF3、ORF5−7、ORF7又はORF11から選択される分泌リーダー配列を含んでいてもよい。
【0191】
ワクチンのいくつかの実施態様によれば、ヘリコバクターをベースとするベクター及びベクタープラスミドは細菌の表層タンパク質をコードする配列を含んでいてもよい。
表層タンパク質は、本明細書において、細菌の外膜に発生し、細菌表層にさらされ得る、タンパク質、グリコール−タンパク質又はリポタンパク質等を含む、タンパク質性分子と定義される。S−層タンパク質は、細胞内の任意の他のクラスのタンパク質より大量に、継続し、かつ自然に産生され得る。
【0192】
S−タンパク質を有するグラム陰性の宿主細胞、クロストリジウムを含む細胞製剤の製造方法は、WO−97/28263にも提供されている。本発明のヘリコバクター構築物の一部としてS−タンパク質を組み入れるために本明細書に記載の方法により、その方法を修飾してもよい。
【0193】
従って、ある種のベクター及びベクタープラスミド構築物においては、ヘリコバクター配列と、興味のある非ヘリコバクター薬学的活性分子とを含む融合タンパク質が提供される。本発明のヘリコバクター構築物を用いたワクチンの免疫原性を増強するために、融合タンパク質のヘリコバクター配列は、S−層タンパク質をコードする配列を含んでいてもよい。融合タンパク質の一部としてS−層タンパク質を含むバチルス構築物は、バチルス表面でS−他パク質を発現することが報告されており(バシラス・スフェリカスを開示するWO−95/19371を参照されたい)、そのため、製剤の免疫原性が増強される。
【0194】
粘膜免疫は、経口ポリオワクチン、コレラ及び大腸菌による下痢に対する経口(飲用)ワクチンを含むいくつかの疾患に対して既に提供されている。ある実施態様においては、本発明のワクチンが不活化ワクチンを含むことが意図される。
【0195】
本発明は、担体生物体、ヘリコバクターが、抗原、すなわち、興味のある非ヘリコバクター薬学的活性分子を産生し続け、生体内で追加免疫をするので、単回投与の持続性ワクチン接種を提供するような、生ワクチンを意図する。更に、ワクチンはアジュバントと組み合わせて投与されるであろう。これらのアジュバントは、投与の強い部位の除去を遅くすることによりワクチンへの暴露時間を増加する、水酸化アルミニウム又は脂質小胞のような分子を含む。アジュバントは、サイトカイン及びケモカインと呼ばれる免疫調節ペプチドの酸性を引き起こすことをも作用する(Brewer et al.1997,J.Cytokines Cell Mol.Ther.,4:223−246)。従って、本発明のワクチンは、免疫応答を増強するためのサイトカインアジュバントを含んでいてもよい。
【0196】
ヒト又は動物のような哺乳類に経口又は胃に投与する場合、形質転換ヘリコバクター又は大腸菌は、コロニー形成の自然な部位である胃壁を通して、消化管のコロニー形成、所望のポリペプチドの酸性及び提示を提供するであろう。消化管は、種々のタイプの免疫増強反応に特化した強大な免疫装置に囲まれている。従って、組換え型ヘリコバクターワクチン又はペプチド酸性株による消化管コロニー形成は、従来のワクチン接種よりも長い免疫刺激を可能とする。更に、抗原は、腸壁又は管腔に優先的に提示され得る。
【0197】
実施例12 食欲抑制剤としてのヘリコバクター及びその使用
本実施例は、食欲抑制をもたらす製剤及び治療計画におけるヘリコバクターの使用方法としての本発明の有用性を証明するために提供される。特に、弱毒化ヘリコバクターを、グレリン又はグレリンのアゴニストのレベルを調節する興味のある非ヘリコバクター薬学的活性分子と一緒に含む構築物の腸粘膜への送達は、食欲及び満腹を調節する腸−脳軸の抑制をもたらす効果的な手段を提供することが期待される。
【0198】
研究は、グレリンが食欲刺激剤である、すなわち、グレリンがマウスにおいて食餌摂取量を増加することを示唆した(Asakawa et al.2003,Gut,52(7):947−52)。グレリンは、げっ歯類における脂肪組織中の脂肪の利用を減少し(Tschop et al.,2000,Nature,407:708−13)、ラットの脂肪生成に関与する(Choi et al.(2003),Endocrinology,144(3):751−9)ことが報告されている。グレリンは、食餌の入手が低い場合に、被験者に食べることを促進する空腹信号であることも報告されている。
【0199】
グレリン類似体及び核酸構築物に関する米国特許第6,967,237−Bednarek(2005)、及びグレリン保有複合体に関する米国特許出願20050191317−Bachmannら(2005)は、特に、これらの教示の補足、及び/又は本発明の理解及び認識の強化とする限りにおいて、参考文献として本明細書に組み入れられる。
【0200】
成長ホルモン分泌物質受容体(GHS−R)の内在性リガンドであるグレリンは、培養下垂体細胞からの成長ホルモン(GH)の放出を濃度依存的に促進し、主として胃底部の酸分泌腺に見られるA様細胞で産生され、分泌されている。グレリンは、GH放出のみでなく、食欲及び体重を制御することにおいても役割を果たしていることが知られている。
【0201】
非経口及び脳室内の両方で投与されたグレリンは、GH結合動物でさえも、食物摂取を促進し、体重を増加することが示された。食欲及び体重の調節はGHの放出に依存しない。
【0202】
28個のアミノ酸のペプチドであるグレリンは、その三番目のセリン残基がn−オクタン酸によりアシル化された場合に活性化し、GHS−Rは、全グレリンペプチドのオクタニル化セリン残基を含む最初の4又は五残基と反応する。GHS−Rは、下垂体、視床下部、副腎、甲状腺、膵臓、心筋、脾臓及び睾丸に存在することが示された。GHS−Rは、視床下部においてNPY及びAGRP両者のmRNAの発現を促進する。グレリンの中枢食欲促進効果は、視床下部内のNPY/AGRP発現神経細胞に媒介される。グレリンは、迷走神経求心性活性を抑制することも報告されている。グレリンの末梢食欲促進効果は、少なくともその一部において、迷走神経求心性活性における抑制効果により媒介される。IL−1βは、レプチンの発現を促進及び放出し、及び/又はレプチンからの過剰の負のフィードバックシグナル伝達の視床下部での効果を模倣することにより、悪液質プロセスを媒介する前炎症性サイトカインである。
【0203】
グレリンに対するアンタゴニストが、腸粘膜において動物に対して提供されると、動物による食餌摂取量が減少し、体重の増加が減少することが提案される。
【0204】
実施例13 癌及びエイズに付随する細胞の消耗
本実施例は、細胞の消耗、特にエイズ及び癌の病的状態に関連する細胞の消耗を予防又は阻害するであろう製剤としての使用についての本発明の有用性を証明する。
【0205】
悪液質は、消耗、衰弱、弱さ及び倦怠感により特徴づけられる病状である。最近、胃の中のグレリンペプチド及びグレリンmRNAのいずれもが、癌悪液質のマウスモデルにおいて上方制御されていることが報告された。IL−1βの血漿濃度が上昇している悪液質マウスにおいては、グレリンの血漿濃度も、悪液質の進行と共に上昇した。この結果は、グレリンの動きと、IL−1により媒介される悪液質プロセスとの間には密接な関係があることを示唆する。IL−1βは、CCK、レプチン、ガストリン関連タンパク質及びボンベシンと同様、食欲不振を起こす物質であり、グレリンの作用に拮抗する。
【0206】
Asakawaらは、非経口的に投与されたIL−1βが、視床下部内でのNPY mRNAの発現、及び胃内でのプレプログレリンmRNAの発現を減少し、腹腔内に投与されたグレリンがIL−1β誘発性食欲不振の重症度を阻害することを報告した。
【0207】
ピロリ菌感染は、胃炎、消化性潰瘍性疾患及び胃悪性腫瘍の発生における主な病原因子であることが知られている。ピロリ菌の胃粘膜への付着が、IL−1βを含む種々のサイトカインの放出と関連する炎症を誘発する。
【0208】
ピロリ菌の根絶に続き、体重、全コレステロール、全タンパク質及びアルブミンの血清濃度のようないくつかの栄養パラメータが改善される場合があることが臨床的に観察されている。ピロリ菌感染は、スナネズミにおける血漿及び胃グレリンの動きを修飾することができることが報告されている。しかし、ヒトにおいては、ピロリ菌根絶が、血漿グレリン濃度の上昇と関連することが示されているが、ピロリ菌感染が血漿グレリン濃度のいかなる変化とも関連しないことが報告されている。
【0209】
ピロリ菌が、例えば、胃粘膜への担体媒体として作用することにより、必要とする患者にアミリンを提供するための担体として用いることができることが提案されている。ある実施態様においては、ヘリコバクター担体は、グレリン濃度を減少させるために、アミリン、アミリンアゴニスト、類似体及び誘導体、及びアミリンアゴニスト(カルシトニン、カルシトニン遺伝子関連ペプチドを含む)及びそれらの誘導体を含むように構築されるであろう。
【0210】
アミリンアンタゴニストはグレリン濃度を上昇し得る。アミリン、アミリンアゴニスト、アミリンアンタゴニスト、又は抗体のようなアミリンの有効濃度を減少する他の化合物を用いた、アミリンの誘導濃度の調節は、グレリンの分泌を阻害、若しくはアンタゴンスト及び抗体の場合には促進し得る。それ故、この方法のある実施態様は、体内のアミリン又はアミリンアゴニストの有効濃度を上昇させ、若しくは直接又は間接的な手段により、若しくはアミリンアンタゴニストを用いてアミリンの誘導濃度を減少することにより、若しくはアミリンの産生を阻害することにより、グレリンの内在性濃度を調節することに関する。
【0211】
実施例14 ゴーシェ病の治療
本実施例は、ゴーシェ病のような酵素欠損により生じる疾患の治療として用いるための本発明の有用性を証明する。ゴーシェ病は、ヒトにおける最も一般的なリソソーム蓄積症であり、酵素、グルコセレブロシダーゼ(GC)の欠損により生じる(Nolta et al.,(1992),J.Clin.Invest.90(2):342−348)。
【0212】
化学シャペロンをコードする配列を含むヘリコバクターワクチン構築物を用いた酵素置換療法が提供される(Sawker et a1.,(2002),PNAS USA 99(24):15428−15433)。従って、機能性β−グルコシダーゼ(β−Glu,グルコセレブロシダーゼ)濃度の上昇が得られる。特に、化学シャペロン、デオキシノジリマイシン(NN−DNJ)がピロリ菌構築物内で用いられ、患者に経口又は胃内投与で投与される。
【0213】
この方法の更に他の実施態様の一部として、興味のある非ヘリコバクター薬理学的活性分子を有する、この場合には、グルコセレブロシダーゼ(GC)をコードするベクターを含む本明細書に記載のヘリコバクターをベースとする構築物が提供される。培養されたゴーシェ病骨髄のレトロウイルスが媒介する輸送は、Noltaら(1992)に、ゴーシェ病を治療するための1つのアプローチとして記載されている。しかし、このアプローチは極端に侵襲的である。欠損した酵素、グルコセレブロシダーゼをコードする配列を含む、本発明のヘリコバクターを用いた他の酵素置換療法は、このような療法に対し、より一層魅力的でより安価な代替えを提供する。
【0214】
実施例15 リンパ腫の治療
本実施例は、リンパ腫、特に粘膜関連リンパ組織リンパ腫のような細菌誘発性悪性腫瘍の治療及び/又は阻害に適した有用な製剤を提供するための、本明細書に記載のヘリコバクターベクター及び/又はプラスミドベクターを含むワクチン製剤を用いた本発明の有用性を証明するために提示される。
【0215】
Suttonら(2004)(Vaccine,22(20):2541−6)は、ヘリコバクター・フェリスに対する動物のワクチン接種/免疫の結果として、細菌誘導性悪性腫瘍、特に胃の原発性粘膜関連リンパ組織リンパ腫に対する防御を報告している。
【0216】
ヘリコバクター・フェリス以外の興味のある免疫原性抗原を含む免疫製造を供給するのに適したベクター及び/又はプラスミドベクターを含む、本発明のヘリコバクターピロリ構築物は、細菌誘発性悪性腫瘍、特に胃の原発性粘膜関連リンパ組織リンパ腫に対するワクチン保護を提供するために用いることもできる。具体例として、プラスミドベクターのある実施態様は、配列をコードするヘリコバクター・ピロリ、及び例えばヘリコバクター・フェリス抗原種以外の配列をコードする非ヘリコバクター・ピロリを含む融合タンパク質を含む。
【0217】
実施例16 ピロリ菌を用いた生ワクチン送達システム
本実施例は、生ワクチンにおけるピロリ菌の使用、特に、興味のあるタンパク質を動物の胃の粘膜に送達するための生ワクチン製剤の一部としてのピロリ菌の使用の有用性を証明する。特に、本実施例は、組換え型ヘリコバクター・ピロリの外膜の外表面を通して胃の粘膜において、動物に興味のある抗原を送達するための本発明の有用性を証明する。
【0218】
本研究は、主にピロリ菌B128株、変異株7.13(Francoら、(2005))を用いて実施した。ショ糖感受性及びカナマイシン耐性を付与するsacBカセットがピロリ菌のhopE遺伝子に挿入された。
【0219】
ピロリ菌は、ワクチン送達のための有用な媒体であることが証明され、動物、特にヒトの治療のための改善された細菌送達様式を提供する。ヒトの治療におけるピロリ菌をベースとするワクチンの有用性の確立において重要な因子は下記を含む。
【0220】
1.ピロリ菌に感染したヒトの大部分が無症状であり;
2.ピロリ菌による感染は適応的及び先天性免疫応答の両者を誘発し;
3.ピロリ菌による感染は胃粘膜内に存続し、抗原への長期露出を促進し;
4.ピロリ菌による感染は胃上皮を崩壊する分子を産生し、その結果、粘膜下免疫システムへの細菌の露出を促進し;
5.ゲノムデータ及び分子技術はピロリ菌のために容易に利用でき、その結果、その遺伝子操作を容易にする。
【0221】
HopEは、ピロリ菌の外膜タンパク質である。本実施例は、このタンパク質をコードする核酸配列が、興味のある分子(「X」)をコードする所望の配列を含むように修飾することができ、この修飾されたHopE配列を含むピロリ菌は、興味のある分子(「X」)を動物の粘膜表面に送達するために用いることができることを証明する。
【0222】
本実施例においては、p60タンパク質及びHCCAタンパク質が、送達の原理の証拠を証明するために用いられ、設計されたピロリ菌遺伝子を提供するために用いられるタンパク質の単純な具体例である。
【0223】
方法:
細菌株及び培養
ヘリコバクター・ピロリB128株(7.13)(52)又は26695(64)を、37℃、微好気性条件下で、5%のウマ血液を補充したコロンビア寒天(Oxoid,Basingstoke,United Kingdom)で培養した。ピロリ菌を自然形質転換(65、66)により形質転換した。クロラムフェニコール(10μg/mL)又はカナマイシン(10μg/mL)を用いて形質転換体を選択した。大腸菌DH5−α株(67)を37℃で、LuriaBertani(LB)培地中で増殖させ、エレクトロポレーション(68)により形質転換した。5%(w/v)ショ糖、カナマイシン(50μg/mL)又はアンピシリン(100μg/mL)を用いて形質転換体を選択した。DNeasy Tissue Kit(Quiagen)を用いてゲノムDNAを抽出した。プラスミドの抽出は、QlAprep Spin Miniprep Kit(Quiagen)を用いて実施した。
【0224】
組換えDNA分子の構築
組換えDNA分子は、スプライシングバイオーバーラックエクステンション(SOE)PCR(69)を用いて、個々のPCR産物を集めることにより構築した。プライマーは、PCR産物の末端で12bpの重複部分を導入するように設計し、産物がPCRの間に一緒に結合するのを可能にした(図8)。全ての調製用増幅は、Pwoポリメラーゼ(Roche Pharmaceuticals)を用いて実施した。
【0225】
組換えDNAを構築し、hopEにクロラムフェニコール耐性遺伝子を挿入した。hopEの部分を含む領域及び伸長する上流は、プライマーHopEF3及びHopER3を用いて増幅した(生成物A)。opaプロモーター及びクロラムフェニコール耐性遺伝子は、プライマーCATF及びCATRを用いて、pHe12(70)から増幅した。hopEの部分を含む流域及び伸長する上流は、プライマーHopEF4及びHopER5を用いて増幅した。産物A、B及びCは、Chalker及び共同研究者(69)により開示されたように、HopEF3及びHopER5を用いて一緒に結合した。
【0226】
対立遺伝子の置換は、sacBをベースとする選択システム(71)を用いて実施した。
ショ糖感受性及びカナマイシン耐性を付与されたsacBカセットを、興味のある遺伝子に導入した。ショ糖感受性ピロリ菌に、組換えDNAを形質転換した。形質転換DNAを用いたsacBの置換から得られた形質転換体はショ糖耐性であった。
【0227】
多くの段階で、sacBカセットをhopE DNAに結合した。まず、プライマーHopEF6及びHopER6を用いてhopE遺伝子を増幅した。生成したアンプリコンをNcoI及びBal11(Roche Pharceuticals)により消化した。アンプリコン及び同様に消化したpBADMyc−HisB(Invitrogen Life Technologies)を、Quick−stick Ligation Kit(Bioline)を用いて連結し、大腸菌に形質転換し、プラスミドpBAD1を作成した。第二に、hopEと下流の推定上のmraW遺伝子(5−S−アデノシルメチルトランスフェラーゼをコードする)との間の804bpの遺伝子間領域を含むDNAの領域を、HopEF7及びHopER7を用いて増幅した。生成したアンプリコンをBgl11及びXba11で消化し、同様に消化したpBAD1に連結し、大腸菌に形質転換し、プラスミドpBAD2を作成した。最後に、プライマーKanSacF及びKanSacRを用いてpENKSF(59)からsacBカセットを増幅した。アンプリコン及びpBAD2をBgl11で消化し、連結し、大腸菌に形質転換し、プラスミドpBAD3を作成した。
【0228】
同様に、sacBカセットをcagA及びvacAに挿入した。cagAについては、最初の段階において、cagAの直接下流の領域をcagAF2及びcagAR2を用いて増幅し、Xba1及びBgl11で消化した。第二段階において、3’末端に伸長するcagAの部分を、プライマーcagAF1及びcagAR1を用いて増幅し、Bgl11及びNcoIで消化した。最終段階において、sacBカセットを、Bgl11を用いてpBAD3から切り取り、同様に消化したpBADMyc−HisBに挿入した。vacAについては、最初の段階において、vacAのC−末端領域を含む部分をプライマーvacAF4及びvacAR4を用いて増幅し、HindIII及びXba1で消化した。断片を、同様に消化したpUC19にクローニングし、pUC1を作成した。第二に、vacAのN−末端領域を含むDNAの部分をプライマーvacAF3及びvacAR3を用いて増幅し、EcoRI及びKpn1で消化した。断片を同様に消化したpUC1にクローニングし、pUC2を作成した。最後に、sacBカセットを、プライマーKanSacF及びKanSacRを用いて増幅し、Bgl11で消化し、pUC3を作成した。
【0229】
組換え型分子を構築し、C型肝炎ウイルスコア抗原(HCCA)又はL.monocytogenesのp60タンパク質の抗原部分をコードするDNAをhopEに挿入し、sacBカセットを置換した。SOE PCRを用いてDNAを作成し、PCR産物A、B及びCを結合した。hopEの開始点からnt573に伸長する領域を、プライマーHopEF8及びHopER1を用いて増幅した(生成物A)。アミノ酸7〜53のHCCA抗原をコードする配列領域を、プライマーHCCAF1、HCV.2a、HCV3.s、HCCAR1を増幅することにより作成した(生成物B)。hopEのnt573の直接的下流領域を、HopEF2及びHopER8を用いて増幅した(生成物C)。SOE PCRからの生成物をプラスミドpCR4Blunt−TOPO(Invitrogen Life Technologies)にクローニングし、pCR4HCHを作成した。
【0230】
同様に、p60抗原の部分をコードするDNAをhopE及びcagAに挿入した。hopEについては、hopEの開始点からnt573に伸長する領域を、プライマーHopEF8及びHopER9を用いて増幅した(生成物A)。プライマーLmp60F2及びLmp60R2をアニーリングすることにより、p60抗原を作成した(生成物B)。hopEのnt573の直接的下流領域を、プライマーHopEF9及びHopER8を用いて増幅した(生成物C)。SOE PCRからの生成物を、Sma1で消化したpUC19プラスミドにクローニングし、pUCHLmを作成した。cagAについては、cagAの3’末端を含む領域を、プライマーCagAF6及びCagER6を用いて増幅した(生成物A)。プライマーLmp60F2及びLmp60R2をアニーリングすることにより、p60抗原を作成した(生成物B)。cagAの直接的下流領域を、cagAF6及びcagAR8を用いて増幅した(生成物C)。SOE PCRからの生成物を、Sma1で消化したpUC19プラスミドにクローニングし、pUCCLmを作成した。
【0231】
vacAについては、vacAの領域を、プライマーvacAF1及びvacAR1を用いて、遺伝子プロモーター及びシグナル配列を含む、26695株から増幅した(生成物1)。プライマーLmp60F3及びLmp60R3をアニーリングすることにより、p60抗原を作成した(生成物B)。オートトランスポーター及び成熟vacAをコードする領域を含むvacAの部分を、vacAF2及びvacAR2を用いて増幅した(生成物C)。SOE PCRからの生成物をXba1及びKpn1で消化し、同様に消化したpUC2にクローニングし、pUCVLmを作成した。
【0232】
ウェスタンブロット解析
組換え型細菌が、HopEと抗原性エピトープとの間に融合タンパク質を生成したかどうかを検出するために、ウェスタンブロット解析を実施した。
【0233】
ピロリ菌を、24時間の血液寒天からHEPES(pH7.4)に収集し、4500rcfで5分間の遠心分離によりペレットにし、超音波処理により破壊した。溶解物を4500rcfで5分間遠心分離し、溶解していない細菌をペレットにし、これを捨てた。全ての膜画分を集めるため、上清を100000rcfで60分間遠心分離した。全ての工程は4℃で実施した。試料をHEPESバッファーに再懸濁し、当量のLaemmliバッファーを加えた。タンパク質を、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)により12%Tris−HCl調製済みゲル(Biorad)中で分離し、0.45pMニトロセルロース(Biorad)に電気的に転写した。HopE及び他のタンパク質を検出するため、膜を、Tris緩衝食塩水(TBS)、pH7.4中の10%又は5%非脂肪ミルク(NFDM)を用いてブロッキングした。TBS中の1%NFDM中で、一次抗体又は二次抗体で膜を調査した。ポリクローナルウサギ抗−HopE抗体を提供され(Astra Zenica)、2:4000に希釈して用いた。モノクローナルマウス抗−p60(K3A7)を提供され(ブルツブルグ大学、ドイツ)、2:4000に希釈して用いた。マウス抗−HCCA(C7−50;Sigma)を2:4000に希釈して用いた。二次抗体をアルカリホスファターゼに結合し、ニトロブルーテトラゾリウムクロライド/5−ブロモ−4−クロロ3−インドリルホスファターゼ溶液(Roche Applied Science)を用いて検出した。
【0234】
表面局在の免疫をベースとするアッセイ
ピロリ菌を、24時間の血液寒天プレートからリン酸緩衝食塩水(PBS;pH7.4)に集めた。細菌を合計3回洗浄し、0.5のOD(600nm)に統一した。洗浄した細菌をポリ−L−リジンをコーティングしたチャンバースライドに4℃で一晩結合させた。結合した細菌を0.25%グルタルアルデヒドで固定し、次いで100mMグリシンバッファーでブロッキングした。次の工程の間、スライドを0.05%Tween20を含むPBS(TBS)で3回洗浄した。スライドを、PBST中の3%ウシ血清アルブミン(BSA)を37℃で2時間結合させた。抗体を、3%ウシ血清アルブミンを含むPBSTで1:200に希釈し、室温で1.5時間インキュベートした。スライドを洗浄し、表面に結合した抗体を蛍光顕微鏡で検出した。細胞全体のELISAを、以下の点を除き、間接免疫蛍光試験と同様に実施した。すなわち、細菌を、4℃で一晩又は1時間、Mxisorp(Nunc)プレートと結合させ;一次抗体を1:300に希釈し;アルカリホスファターゼを結合した二次抗体を1:1000に希釈し;マイクロタイタープレートリーダーを用いた405nmにおける検出のための基質としてニトロフェニルホスフェート(Sigma)を用いた。
【0235】
結果
組換え型ピロリ菌の構築
hopE、cagA又はvacA遺伝子のいずれかにsacBカセットを含む組換え型ピロリ菌B128(7.13)又は26695を作成した。sacBカセットを、これらの遺伝子内の特定の部位で抗原をコードするDNAと置換した。HCCA及びp60抗原を、両者とも推定上のループ構造(51)内の成熟HopEのアミノ酸168に対応する部位で、hopEに挿入した。p60抗原DNAも、CagAのC−末端に対応するcagA停止コドンの上流に直接導入した。VacA及び抗原タンパク質の融合を、VacAを産生しないB128株(7.13)中で実施した。B128(7.13)vacA中に挿入する前に、p60抗原DNAを、26695プロモーター、シグナル配列及びオートトランスポーターDNAと結合した。
【0236】
融合タンパク質の解析及び表面提示
今までは、HCCA又はp60抗原と融合したHopEのみを解析した。hopE中に挿入されたHCCA(B128:HCCA:hopE)又はp60抗原(B128:p60:hopE)DNAを産生するピロリ菌H128のウェスタンブロット解析は、抗原がHoPEに融合していることを示した(図9)。特に、抗−HopE抗体を用いて実施した解析は、組替え型ピロリ菌内では、天然のHopE(約31kDa)が、p60抗原(32kDa)又はHCCA(約35kDa)のいずれかと融合したHopEに置換されていることを示した。抗原特異的抗体を用いた更なる解析は、同様のサイズのタンパク質を検出した。
【0237】
表面提示を調べるため、2種の間接的な表面局在化の免疫をベースとするアッセイを用いた。ピロリ菌B128:HCCA:hopEの免疫蛍光法をベースとする顕微鏡解析は、HCCAに融合したHopEの表面提示を示した(図10)。しかし、p60抗原に融合したHopEの表面局在化を確認することはできなかった。これらの結果は、細胞全体をベースとするELISA解析により確認された(図11B)。p60抗原は、細菌をELISAプレートの一晩結合した後にこの方法を用いることによってのみ検出された(図11A)。
【0238】
本実施例における研究は、主にB128株、変異株7.13(Franco、2005)(52)を用いて実施した。ショ糖感受性及びカナマイシン耐性を付与するsacBカセットをピロリ菌のhopE遺伝子に挿入した。HCCA又はp60エピトープをコードするDNAを、スプライシングオーバーラッピングエクステンション(SOE)PCRを用いてhopEに結合した。組換えDNAを、自然形質転換及び相同的組換えを用いてショ糖感受性ピロリ菌に形質転換した。組換え型ピロリ菌は、sacBを形質転換DNAと置換することに由来し、ショ糖耐性であった。表1に示す以下のオリゴヌクレオチドプライマーを本明細書に記載のアッセイに用いた。
【0239】
[表1]
表1−オリゴヌクレオチドプライマー

【0240】
[表2]
表2−用いたピロリ菌の株及び開発したピロリ菌の株
株 挿入したDNA抗原 挿入部位 名称
B128(7.13) B128(7.13)
B128(7.13) p60 hopE B128:p60:hopE
B128(7.13) HCCA hopE B128:HCCA:hopE
B128(7.13) p60 vacA B128:p60:vacA
26695 26695
26695 p60 hopE 26695:p60:hopE
26695 HCCA hopE 26695:HCCA:hopE
26695 p60 cagA 26695:p60:cagA
【0241】
ピロリ菌B218株の自然形質転換は、配列解析により確認されたように、p60又はHCCA DNAのいずれかと融合したhopEを産生する組換え型細菌を生産する。得られた融合タンパク質は、未変化HopEよりも大きかった(図8)。HCCA表面局在化の確認は、蛍光顕微鏡を用いて示され(図9)、細胞全体をベースとするELISA解析からの結果により確認された。
【0242】
実施例17 フラッグタグのためのウレアーゼ遺伝子中の部位の決定
ピロリ菌細胞表面又は分泌タンパク質上のワクチン抗原の提示が、抗原特異的防御免疫反応の発生を可能にすると思われる。この研究において、タンパク質UreA及びUreBは、提示タンパク質と考えられた。これらの分子は、マルチサブユニット酵素ウレアーゼの形成と関連する。ウレアーゼは、以下のいくつかの理由のために選択される。
【0243】
1.ピロリ菌タンパク質の最も豊富なものの1種(全タンパク質の>5%);
2.ピロリ菌感染の間の抗原性;
3.構造が既知であり;
4.コロニーの色により活性が容易に検出され;
5.培養の間に、活性ウレアーゼを直接的に選択することができ;
6.ウレアーゼは生体内で必須であると思われ、活性ウレアーゼの選択が可能である。
【0244】
ウレアーゼサブユニットの関連は複雑であり、酵素が任意の挿入を許容するかどうかは不明である。従って、挿入の初期許容が、フラッグタグ(8アミノ酸)及びp60抗原に隣接する後のフラッグタグ(合計で31アミノ酸)を用いて研究された。フラッグは、これに対する市販の抗体が入手できる、短い免疫原性タグである。L.monocytogenesのp60タンパク質は、細胞分裂に必須な極めて免疫原性のムレインヒドラーゼである。約60kDaのサイズのこのタンパク質は、リステリア類によって培地中に大量に分泌され、Iap(侵入関連タンパク質(invasion−associaed protein))によりコードされる。本研究で用いられるp60の部分は、p60タンパク質のCD4 T細胞及びB細胞エピトープを含み、その表面のエピトープを発現するサルモネラ株をワクチン接種することにより提示される場合に、マウスのリステリア症から保護することが示された。
【0245】
他の抗原担体として、関連するHcpA及びHcpCタンパク質も考慮される。結晶構造はHcpCのために解決された。タンパク質のSel−1様ファミリーに属するこれらの分子は、たぶん分泌され、それらはヒトにおいて免疫システムによって見られる。それらは細菌の培養には必要でなく;それらが感染の間に活性化される必要があるか又は貢献するかは試験する必要がある。
【0246】
前述したことをベースとし、本プロジェクトの目的は、フラッグタグ挿入のウレアーゼ耐性部位;ピロリ菌のマウスコロニー形成株におけるウレアーゼの耐性部位へのリステリアp60タンパク質エピトープの挿入、及びピロリ菌のマウスコロニー形成株におけるHcpA及びHcpCの耐性物へのリステリア60タンパク質エピトープの挿入を決定することであった。
【0247】
方法
細菌は、通常、血液基礎培地で培養した。用いた株は26695のストレプトマイシン耐性(StrR)変異株であり、X47(rpsLコドン88の突然変異のため、既にStrR耐性)でもあった。遺伝子融合は、Douglas Berg研究室(ワシントン大学)で開発されたストレプトマイシン対抗選択システム、表3に記載のプライマー及び自然形質転換を用いた(図17)。
【0248】
rspLermBカセットを興味のある遺伝子に挿入することにより受容株を作成した。rpsLermBカセットの、相同組換えのためのフラッグ及びフランキング配列を含むPCR産物での置換は、ストレプトマイシン耐性及びウレアーゼ活性を付与した。機能的ウレアーゼを有する形質転換体は、ストレプトマイシン及び尿素及びフェノールレッドを含む寒天プレートにより選択された(表4)。機能的組換え型ウレアーゼを産生するこれらの細菌のみが、尿プレート上で増殖することができた(図15)。
【0249】
[表3]

表3.本研究において設計したプライマー。上流及び下流は、抗原挿入のための部位に対して相同的領域のためのフランキング領域の位置を意味する。表示はゲノムの5’−3’である。
【0250】
アミノ酸の挿入を許容するために、ウレアーゼ中の8部位(図16)、及び各HcpA及びHcpCの2部位を同様に選択した。3種の可能な停止コドンのうちの2種を除外するために選択された5又は6種の半段ダムコドンによってフランキングする所望のエピトープ(FLAG)を有するPCR産物を、PCRの第二ラウンドで一緒にスプライシングし、受容株のDNA形質転換のために用いた(図13a)。FLAGに隣接するp60エピトープ(p60FLAG)の挿入のために同様の方法を実施した。しかし、鋳型ゲノムDNAを希釈し、得られたアンプリコンは、ゲノムDNAを除去するためのDpnIであった(図13b)。
【0251】
結果
ureA及びureB遺伝子を欠失し、可能な挿入部位の3種の異なるグループに関連するureA及びureBの3種の小さい部分を欠失し、SungSook Choi博士(サンユク大学、現在はバーグ研究室で休暇中)によるrpsLermBコントラセレクションカセットを用いて置換した(図14)。3種のrpsLermB挿入物を、ureA又はB内の8箇所の部位のそれぞれにおけるフラッグタグを含む、集合PCR産物を用いてDNA形質転換により置換した。これらのPCR産物を用いて作製した細菌形質転換体を、DNA配列決定により、ウレアーゼ及び3種のフラグタグを、3、4及び8部位で含むことを確認するように選択した(図12a)。集合PCR産物を、8箇所の部位において、ウレアーゼ内のフラッグタグに隣接してp60を挿入するように増幅した。ピロリ菌をこの集合産物で形質転換し、組み換え体を分離し、機能的ウレアーゼの1a、3又は4部位でp60フラグタグを含むことをPCRにより検出した。
【0252】
実施例18 フラッグタグの挿入のためのピロリ菌ウレアーゼの解析
ピロリ菌ウレアーゼ複合体の三次元構造を、結晶学的対象操作オペレーターを適用することにより、寄託された座標(PDB−id:1e9y)から再構築した。ウレアーゼは大きな球形複合体を形成し、12個のUreA(SwissProt−id;P14916)及び12個のUreB(SwissProt−id;P69996)ポリペプチド鎖からなる(図16a)。この複合体を、高い熱運動性をも示す表面露出ループについて視覚的に調べた。図16bは、熱運動性に従い着色した分子表面を示す。
【0253】
視覚的な試験は、3箇所の部位がFag−tags(DYKDDDDKペプチド)の挿入に適していると思われることを示した。この部位は、それらの適合性に従い順位付けした。
【0254】
部位1
この部位は最も安定であると思われる。UreBからの残基324〜333は完全に溶媒に露出され、高い熱可撓性を有する(図16b中の赤い表面)。この高い可撓性はウレアーゼコアとの相互作用の安定化の欠如により起こるように思われる。従って、ペプチド鎖の高次構造は制限されず、大きな挿入物を順応させるのに適している。Flagオクタペプチドに対してUreB(P69996)の残基L324DKSIKEDVQ333を置換することにより(結晶構造において、L324がリジンであることに注意しなさい)。ループは相対的に長いので、いくつかの置換及び挿入が可能であり、試験すべきである。このループは非常に柔軟であるが、いくつかのUreB配列中で十分に保存されている。それが道の細胞性機能に関与しているのでなければ(例えば、ピロリ菌細胞壁に対する付着)、ウレアーゼの分子機能の障害はあるべきである。
【0255】
部位2
UreA(P14916)の残基H224GAKSDDN231はFlagオクタペプチドに対する置換に適しているが、このループが三回回転対称軸の近くに位置しているので、例えば、C型肝炎コートタンパク質のような大きな断片の挿入には適していないと思われる。このループはUreAのC−末端の近くに位置しており、溶媒に露出し、柔軟であり、ウレアーゼのコアと弱い相互作用を示す。従って、突然変異はウレアーゼ活性に影響しないであろう。N231及びUreAのC−末端の間の7個のアミノ酸は、対称関連サブユニットと相互作用する。従って、私は、複数の配列アラインメントが、UreAのC−末端が少しの配列保存性を有するが、これらの残基を維持することを推奨する。
【0256】
部位3
UreAの残基E1O1ANGKLVl07をDYKDDDDKに対して置換することもできる。1個の追加のアミノ酸の挿入は、このループが高い熱可撓性を示すので、全ての構造により容認されるべきである。複数の配列アラインメントは、このループが異なる種由来のUreA相同体に挿入を含むことを示す。
【0257】
これらの部位は、単にHPウレアーゼの構造に基づき最良であると考えられる。これらの部位は、他の細菌由来の相同的ウレアーゼの構造に関してHPウレアーゼの重ね合わせに基づいて確認された。これらの重ね合わせは、強度で十分に保存された部位を特定し、エピトープの挿入にとって有用であるかもしれない柔軟な表面ループからそれらを識別するのに有用である。全てが多少類似しているウレアーゼの構造は、機能的抑制によるわずかな構造的柔軟性があることを示唆する。
【0258】
しかし、この重ね合わせにより、部位1〜3、UreAのCー末端及びUreBのN−末端がタグに順応するのに適していることが確認された。更に我々は、バックアップとして考えるべきUreB上の3個の追加の部位を発見した。
【0259】
番号付けは、SwissProt登録P69996を意味する:
部位4(UreB).NNPSKEE(65)NNNNNN DYKDDDDK NNNNNN L(66)DLIIT...
部位5(UreB).HIEVNPE(541)NNNNNN DYKDDDDK NNNNNN T(542)YHVFV...
部位6(UreB).YHVFVDG(549)NNNNNN DYKDDDDK NNNNNN K(550)EVTSKP...
【0260】
N−及びC−末端は自由に接近可能なので、私はフラッグタグを、C−末端...DILKQLKIKV XXX(フラッグタグ)(3〜4個の挿入残基と一緒に)、又は...GGLMA XXX(フラッグタグ)XXX EQDPK...のような、25及び26残基の間のリーダーペプチドの直後のいずれかに置くことを推奨する(前記式において、「X」は挿入残基を意味する)。今までのところ、我々は、HcpAが、マウスの免疫モデルにおいて良好な防御と十分に関連しているIFN−γの放出をより強力に誘発することをしている。HcpAは、
...ALKELKIEL XXXフラッグタグ)
及び
...RGLMA XXX(フラッグタグ)XXX EPDAK...である。
【0261】
構造的観点から、両末端は自由に接近可能なので、リンカーを挿入する必要は全くない。従って、C−末端構築物のリンカーを省略することにより、天然のC−末端の直後にフラッグタグを配置する。N−末端構築物については、我々は、N−末端シグナルペプチドとフラッグタグとの間に2個のアミノ酸の長いリンカーを配置する。この理由は、リーダーペプチダーゼの正確な切断部位の予測のための、いくつかの不明確さがあり、我々はフラグタグ内のどこかでリーダーペプチドが切断されることを回避することを望む。HcpA及び−Cについての可能か構築物は、
(HcpA/HpO211)
MLGNVKKTLFGVLCLGTLCLRGLMAEP(フラッグタグ)EPDAKELVNLGIESA...
(HcpC/Hp1098)
MLENVKKSFFRVLCLGALCLGGLMA EQ(フラッグタグ)EQDPKELVGLGAKSY...
のように思われる。
【0262】
明確な三次元構造に折りたたまれる大きなタグについては、我々はリンカーを考える。
【0263】
培地の調製
以下の抗生物質及び増殖補助剤の組み合わせは、真菌及び細菌の汚染なしで、通常にピロリ菌の増殖を可能にする。
【0264】
1.培地成分の混合は、抗生物質を加えるために十分な容量を可能にする。
2.培地をいったんオートクレーブし、水浴中で50℃まで冷却する。
【0265】
3.最終培地濃度がアイソバイタルエックス(0.4%v/v)、アンホテリシンB(8μg/mL)、バンコマイシン(6μg/mL)及びトリメトプリム(5μg/mL)となるように、100mLの抗生物質のストックを予め加温する。また、血液を予め加温する。
【0266】
4.オートクレーブした培地に、予め加温した血液を加える。
【0267】
5.泡の発生を回避するように試みながら完全に混合する。
【0268】
6.オートクレーブした培地に、予め加温した100mLの抗生物質溶液を加える。
【0269】
7.泡の発生を回避するように試みながら完全に混合する。
【0270】
8.任意のエタノール可溶性抗生物質(エリスロマイシン)を培地に加える。
【0271】
9.プレートに注ぐ。
【0272】
マウスの試験のための培地には、更に、ナリジクス酸(10μg/mL)、ポリミキシンB(10μg/mL)及びバシトラシン(200μg/mL)を補充する。
【0273】
尿素選択プレート
【0274】
[表4]
ウレアーゼ陽性ピロリ菌の選択のための媒体組成

成分 重量/容量 指示
ブルセラ培養液 28g オートクレーブの前
バクトアガー 15g オートクレーブの前
フェノールレッド 100mg オートクレーブの前
ウマ血清 70mL オートクレーブの後
尿素(40%w/v) 1.5mL オートクレーブの後
HCl(1N) 黄色になるまで オートクレーブの後
(約10mL?) 又はプレートが黄色オレンジになるまで
バンコマイシン 1mL オートクレーブの後
(6mg/mL)
水 合計
合計量 1L
【0275】
保存培地
トリプシン大豆培養液(g/L)及び20%(v/v)グリセロール。この培地中で25時間撹拌して培養し、ドライアイスを用いて急速に冷凍した。ストックは試料になるまで解凍せず、細胞を培養のための凍結した表面からこすり落とす。ストックは複数回再使用できる。
【0276】
液体培地
7%(v/v)ウマ血清及びバンコマイシン(6μg/mL)を補充したブルセラ培養液(g/L)。50mLのスクリューキャップコニカルフラスコ中で10mLを通常用い、コントロールガス中、37℃で150rpmで振盪する。
【0277】
SOE PCRによる構築
全ての構築物をSOE PCRにより構築し、細菌を形質転換するために用いた。この工程を図13に示す。
【0278】
ピロリ菌の形質転換
Berg形質転換プロトコールの概略説明図を図17に示す。
【0279】
実施例19 インフル煙波赤血球凝集素エピトープのウレアーゼへの融合
A/PR/8/34赤血球凝集素(HA)エピトープを、組換え型ウレアーゼ及びピロリ菌による送達による提示のための抗原として用た。このプロジェクトのために選択されたHAエピトープはHA T細胞エピトープ(アミノ酸配列:SFERFEIFPKE)及びHA B細胞エピトープ(アミノ酸配列:WLTEKEGSYP)である。これらのエピトープの組み合わせは、宿主内で体液性及び細胞媒介性免疫応答の両者の誘発をもたらすであろう。全ての構築物は、図13に示す工程を用いたSOE PCRにより組み合わせられる。A/PR/8/34赤血球凝集素(HA)エピトープの対応する核酸配列は、以下に記載されるプライマーを用いたPCRにより構築され、図18に示されるようにウレアーゼに挿入された。ピロリ菌の形質転換は、図17に示す形質転換プロトコールの概略図に従って実施され、機能的組換え型ウレアーゼ融合が選択された。
【0280】
組換え型ウレアーゼ内のエピトープを検出するため、ウェスタンブロット解析を実施した。インフルエンザエピトープに隣接するFLAGタンパク質タグ配列の含有は、市販の抗体を用いて、組換え型タンパク質の検出を可能にする。ウェスタンブロット解析は、FLAGが、より小さいタンパク質サブユニット、ureA上の部位1Aに挿入され、より大きいタンパク質サブユニット、ureB上の部位4及び8に挿入されたことを示した。非常に低いシグナルは、部位3におけるFLAGタンパク質タグについて検出した。このバンドは、どちらかといえばureBよりもureAにおけるフラッグタグに対応し、不適当なサイズである。
【0281】
実施例20 ウレアーゼに対してインフルエンザ凝集素エピトープを用いた免疫
遺伝的に修飾されたヘリコバクター・ピロリの免疫原性を決定するため、C57BL/6マウスを、ウレアーゼの部位1a、3、4又は8においてHAエピトープを発現するピロリ菌(sila、si3、si4及びsi8)の200μL(10cfu)を胃内に投与して免疫した。73日後、血清を集め、抗−HA IgG力価をELISAにより測定した。すなわち、プレートを、そのC−末端(SFERFEIFPKEC)によりリボヌクレアーゼHと結合したB−細胞エピトープで、5mg/mLでコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。2% PBST−BSAで37℃、2時間、プレートをブロッキングした後、血清試料を加え、プレートを室温で1時間インキュベートした。アルカリホスファターゼで標識したヤギ抗−マウスIgG二次抗体を用い、抗−HA IgG抗体を検出した。基質としてニトロフェニルホスフェートを用い、30分後にNaOHを用いて反応を停止した。405nmで吸光度を測定した。図20は、生きている組換え型ピロリ菌で免疫したマウスが、胃内でのコロニー形成の73日後に抗原特異的抗体を産生していることを示す。20匹の免疫したマウスのうち5匹が、血清中に抗原特異的抗体を産生していた。20匹の免疫したマウスのうち11匹が73日後にピロリ菌によりコロニー形成することがわかった。これらの血清学的に陽性のマウスは、sila、si4及びsi8で免疫した群に見られた。si3組換え型ピロリ菌で免役した群には抗原特異的免疫応答はなかった。
【0282】
[表5]
本研究に用いたプライマーは以下を含む:

【0283】
本明細書中に引用された、全ての文献、特許、雑誌及び全ての材料は、参考文献として組み入れられる。
【0284】
添付した図面を参照し、本発明のいくつかの実施態様と共に本発明を十分に説明したが、種々の変形及び修飾が当業者に明らかであることが理解される。このような変形及び修飾は、添付した請求項で定義した本発明の範囲から逸脱しない限り、その範囲内であると理解される。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)ヘリコバクター・ピロリのウレアーゼ酵素をコードする遺伝子にペプチドをコードする遺伝子を挿入し、インフレーム遺伝子が発現した時にウレアーゼ酵素機能が低下しないように、インフレーム遺伝子を産生する工程、及び
ii)ヘリコバクター・ピロリが粘膜にコロニー形成するように前記動物に感染させる工程を含む、送達を必要とする動物の粘膜にペプチドを送達する方法。
【請求項2】
i)ヘリコバクター・ピロリのウレアーゼ酵素をコードする遺伝子にペプチドをコードする遺伝子を挿入し、インフレーム遺伝子が発現した時にウレアーゼ酵素機能が低下しないように、インフレーム遺伝子を産生する工程、及び
ii)ヘリコバクター・ピロリが粘膜にコロニー形成するように前記動物に感染させる工程を含む、動物にワクチン接種をする方法。
【請求項3】
図12に示すようなヘリコバクター構築物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公表番号】特表2010−508828(P2010−508828A)
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−535528(P2009−535528)
【出願日】平成19年11月9日(2007.11.9)
【国際出願番号】PCT/AU2007/001725
【国際公開番号】WO2008/055316
【国際公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(507044985)
【Fターム(参考)】