説明

背面投射型スクリーン

【課題】 マイクロレンズアレイを用いたスクリーンにおいて、輝度や視角特性を低下させることなく外光に対する遮光効果を向上させてコントラストの良い背面投射型スクリーンを安価に提供するとともに、ホコリを吸着し難いために長期に渡って画質の劣化を起こさない背面投射型スクリーンを提供することを目的とする。
【解決手段】 平行に入射した光を焦点に集光するマイクロレンズ3を一方の面に配列してなる透明なマイクロレンズアレイシート1と、特定方向からの光を透過し、それ以外の光を吸収する開口を持った指向性光吸収シート2とを少なくとも有する背面投射型スクリーンであって、上記開口は、上記マイクロレンズ3の焦点近傍に開口したピンホール5を配列したピンホールアレイであり、上記ピンホールの開口部は錐体台形をしてなる構造とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、背面投射型プロジェクションテレビなどの映像表示装置に用いられる背面投射型スクリーンに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、背面投射型プロジェクションテレビは、低価格で大画面画像を得ることが可能な映像表示装置として市場を伸ばしつつある。
【0003】
背面投射型プロジェクションテレビに投影される画像の輝度、コントラスト、視角特性は、そこに用いられる背面投射型スクリーンの特性が大きく寄与する。そこで、スクリーンの特性を改善するために、図18に示すようにプロジェクタからの発散光105をフレネルレンズシート103で平行光106に変換し、平行光に変換された光をマイクロシリンドリカルレンズアレイであるレンチキュラレンズシート102でブラックストライプ101の隙間104に高効率で集光して発散出射させるレンチキュラレンズタイプのものが良く知られていた。このレンチキュラレンズタイプのものでは、さらに視角特性を改善するために、ブラックストライプ101を透過した光を光拡散シート100によってさらに拡散して出射角の広い放射光108とするのが一般的であった。このような構成において、フレネルレンズシート103とレンチキュラレンズシート102は輝度を向上させる機能を有しており、ブラックストライプ101は表面の外光の反射を抑えてコントラストを向上させる機能を有している。
【0004】
レンチキュラレンズタイプの背面投射型スクリーンは、レンチキュラレンズシートが光を1次元方向にしか集光できないために、スクリーンの上下と左右の両方の光出射角を制御するためには互いに稜線が直交した2枚のレンチキュラレンズシートを組み合わせて用いなければならないために、光利用効率が低下し、また部品点数が増えるためにコストアップになってしまうという課題を有していた。このような課題を解決するために、レンチキュラレンズシートの替わりに、上下と左右で曲率の異なる楕円面を持ったマイクロレンズを配列したマイクロレンズアレイシートを用いた背面投射型スクリーンが提案されている(特許文献1)。
【0005】
さらにまた、ルーバー状の光吸収壁列をブラックストライプと光拡散シートとの間に配して、外光に対する影響の少ない背面投射型スクリーンを構成した例が開示されている(特許文献2)。
【0006】
【特許文献1】特開2000−131506号公報(第3頁、第2図)
【特許文献2】特開平11−167167号公報(第5項、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のマイクロレンズアレイシートを用いた背面投射型スクリーンは、遮光層すなわちピンホールアレイを印刷やフォトリソグラフィーあるいはセルフアライメント法で作製するために、遮光層に厚みを持たせることが困難であり、その結果、照明などの外光に対する遮光効果を高めるのが困難であるという課題を有していた。
【0008】
一方、ルーバー状光吸収壁列はブラックストライプと併用しないと光透過方向の開口が大きくなり過ぎて充分に外光を遮蔽することができないために、部品点数が多くなり、コストが嵩んで高価になるという課題を有していた。
【0009】
また、従来のスクリーンは帯電しやすいために、長期間使用していると静電気でホコリを吸着したりして画質を劣化させてしまうという課題を有していた。
【0010】
すなわち、本発明は、従来のマイクロレンズアレイを用いたスクリーンにおいて、輝度や視角特性を低下させることなく外光に対する遮光効果を向上させてコントラストの良い背面投射型スクリーンを安価に提供するとともに、ホコリを吸着し難いために長期に渡って画質の劣化を起こさない背面投射型スクリーンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の背面投射型スクリーンは、平行に入射した光を焦点に集光するマイクロレンズを一方の面に配列してなる透明なマイクロレンズアレイシートと、特定方向からの光を透過し、それ以外の光を吸収する開口を持った指向性光吸収シートとを少なくとも有する背面投射型スクリーンであって、上記開口は、上記マイクロレンズの焦点近傍に開口したピンホールを配列したピンホールアレイであり、上記ピンホールの開口部は錐体台形をしてなる構造とした。
【0012】
このようにピンホールを錐体台形にした指向性光吸収シートを用いることによって、最小の開口を維持した状態で、照明光など特定の大きさ以上の入射角を持って斜入射する光を有効に吸収することができるために高コントラストの画像を表示できる上に、マイクロレンズ側からの収束光は効率的に出射することができるために輝度を低下させることがなく、上記課題を解決することができた。
【0013】
また、上記マイクロレンズの配列形状を正方形または矩形としたこ背面投射型スクリーンとした。
【0014】
このようにすることによって、プロジェクタからの全ての光を効率的に集光することができる上に、上下方向と左右方向で曲率の異なるマイクロレンズであっても細密に充填することが可能となり、その結果輝度の向上を実現することができ上記課題を解決することができた。
【0015】
さらに、上記ピンホールの配列間隔が、スクリーン中央部から周縁部に向かうに従って広く形成されている構造の背面投射型スクリーンとした。
【0016】
このことによって、プロジェクタからの発散光に対してフレネルレンズを用いることなく効果的にマイクロレンズで集光された光を各ピンホールから出射することが可能となり、安価で高輝度なスクリーンとすることができ、上記課題を解決することができた。
【0017】
上記マイクロレンズアレイシートの上記ピンホールアレイによる開口面が凸面または凹面に湾曲したレンズ面となっている構造の背面投射型スクリーンとした。
【0018】
このように開口を湾曲させることによって、開口からの出射項の広がり角を制御することが可能となり、その結果視角の広い画像が表示可能となり、上記課題を解決することができた。
【0019】
上記ピンホールを形成する錐体台形の開口部の上底面側が上記マイクロレンズアレイシート側を向いており、上記マイクロレンズの焦点は上記上底面近傍に配されている構造の背面投射型スクリーンとした。
【0020】
このような構造にすることによって、ある角度以上で斜入射した外光が開口面に到達することを防ぎ、その結果外光の表面反射を防止することが可能となり、コントラストを向上させることができ、上記課題を解決することができた。
【0021】
上記錐体台形をしたピンホール内部に透明樹脂に分散された拡散粒子が配されている背面投射型スクリーンとした。あるいはまた、上記マイクロレンズアレイシートのマイクロレンズに対向する面において、少なくとも上記ピンホールによって露出している面は光を散乱させるためのシボが形成されている背面投射型スクリーンとした。
【0022】
このようにすることによって、出射光が拡散し、視角の広い背面投射型スクリーンとなり、上記課題を解決することができた。
【0023】
さらにまた、上記ピンホールを形成する錐体台形の開口部の下底面が上記マイクロレンズアレイシート側を向いており、上記マイクロレンズアレイシートのマイクロレンズに対向する面には上記ピンホールを形成する錐体台に相似な錐体台突起が一体に形成されており、上記ピンホールを形成する錐体台に上記錐体台突起が篏合した構造の背面投射型スクリーンとした。
【0024】
このような構成とすることによって、ピンホールの開口位置とマイクロレンズの焦点位置とを正確に合わすことができ、その結果、輝度を損失することなく明るい画像を得ることができ上記課題を解決することができた。
【0025】
上記ピンホールを形成する錐体台において、その上底面はスクリーン面の中心から最も遠い端部の高さが最も低くなるように傾斜しており、その傾斜の角度はスクリーンの中心から遠い錐体台ほど大きくなるように形成した。
【0026】
このことによって、マイクロレンズシートの光入射側にフレネルレンズシートなどを用いて光発散角度を調整することなく、スクリーン上のどの点からも一様な光放射角で投影光を出射することが可能となり、輝度分布の視角依存性を低減することが可能となり上記課題を解決することができた。
【0027】
上記錐体台突起の上底面は光を散乱させるための光散乱面とした。
【0028】
このようにすることによって、スクリーンからの出射光の放射角を広げることができ、その結果視角に広いスクリーンとすることができ、上記課題を解決することができた。
【0029】
さらに、上記指向性光吸収シートの出射側の面は光を散乱させるための光散乱面とした。
【0030】
このことによって指向性光吸収シート表面から視点に入射する光量を低減することが可能となり、その結果、指向性光吸収シート表面の黒レベルが向上し、表示画像のコントラストを向上させることができ、上記課題を解決することができた。
【0031】
上記指向性光吸収シートとマイクロレンズアレイシートは熱可塑性高分子材料で形成されており、上記指向性光吸収シートを形成する材料の軟化点は上記マイクロレンズアレイシートを形成する材料の軟化点よりも高いものを用いた。そして、この指向性光吸収シートとマイクロレンズアレイシートとを熱融着により一体に形成した。
【0032】
このようにすることによって、指向性光吸収シートとマイクロレンズアレイとの融着を容易にし、また、指向性光吸収シートとマイクロレンズアレイとを一体化することによって、上記開口位置とマイクロレンズ焦点位置との関係を安定に保つことが出来るようになった。
【0033】
上記指向性光吸収シートを形成する熱可塑性材料に、カーボン粒子または金属粒子が分散して形成した。
【0034】
このことによって、指向性光吸収シートの光吸収効果を向上させることができ、上記課題を解決することができた。
【0035】
上記指向性光吸収シートは表面に光吸収層を形成した金属板によって形成した。
【0036】
このようにすることによって、本発明の背面投射型スクリーンを安価かつ容易に作製することを可能とし、上記課題を解決することができた。
【0037】
上記指向性光吸収シートと上記マイクロレンズアレイシートとをインサート成形によって一体に構成した。
【0038】
このようにすることによって、製造と同時に指向性光拡散シートとマイクロレンズアレイシートとを一体化することができ、品質が安定した背面投射型スクリーンを安価に製造することができ上記課題を解決することができた。
【0039】
上記指向性光吸収シートの厚みはおよそ40μm以上とした。
【0040】
このようにすることによって、指向性光拡散シートの指向性を充分に保つことを可能とし上記課題を解決することができた。
【0041】
上記マイクロレンズアレイシートの光入射面の前に投影光の広がり角を制御するためのフレネルレンズシートを配した。
【0042】
このようにフレネルレンズを用いることによって、本発明の背面投射型スクリーンの製造を容易にし上記課題を解決することができた。
【0043】
上記指向性光吸収シート、マイクロレンズアレイシート、およびフレネルレンズシートは帯電防止材料で形成するか、もしくは帯電防止処理を施すかして本発明の背面投射型スクリーンを構成した。
【0044】
このようにすることによって、本発明の背面投射型スクリーンの各構成要素が帯電することを防ぎ、また、その結果、ホコリを吸着してスクリーン特性を劣化させることがなくなり、上記課題を解決することができた。
【発明の効果】
【0045】
本発明の背面投射型スクリーンは、照明などの外光の影響を受けず、また、プロジェクタからの投影光を効率良く出射することができるために、明るい部屋でもコントラストが高く明るい画像を表示させることができるという効果を有する。
【0046】
また、その結果、比較的低出力の光源を用いても明るい画像を得ることができるために、プロジェクタに用いる光源の寿命を長くすることができると共に、液晶表示素子の寿命を向上させたり、その表示品質を安定させたりすることができるという効果を有する。
【0047】
さらに、その結果、本発明を用いた背面投射型表示装置の価格を下げることができるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
以下に、本発明の背面投射型スクリーンを実施するための最良の形態に関して図面を用いながら説明する。
【0049】
本発明の背面投射型スクリーンを用いた背面投射型表示装置の1実施形態を図2に示す。本発明の背面投射型スクリーンは、少なくともマイクロレンズアレイシート25と指向性光吸収シート24とから構成されている。このスクリーンとフレーム28は暗箱を形成し、この暗箱中にプロジェクタ26とミラー27が配されている。プロジェクタ26から投影された光画像はミラー27で反射され、マイクロレンズアレイ25で例えば行列状に分割された微小領域ごとに集光され、指向性光吸収シート24に形成された図示されていないピンホールから上記暗箱の外に出射されて画像鑑賞者の視点に入る。
【0050】
この背面投射型画像表示装置は、プロジェクタ26からの光画像の輝度が大きいほど、スクリーンの透過率が高いほど明るい画像を得ることができる。また、プロジェクタ26からの投影画像のコントラストが高いほど、暗箱内が暗いほど、スクリーン外表面の光反射が小さいほど表示画像のコントラストは高くなる。
【0051】
本発明は、上記のスクリーン透過率を向上させ、暗箱内の明るさを低減させ、スクリーン外表面反射率を低減させて、高輝度で高コントラストな画像を表示可能な背面投射型スクリーンを提供することを目的とする。
【0052】
マイクロレンズアレイシート25は、少なくとも片面に平行光を集光するマイクロレンズを配列して形成されている。そのマイクロレンズを形成する面は一般的に非球面をなしているが、設計と加工が容易な球面で構成する場合が多い。このようなマイクロレンズは一般的に行列状に配列する場合が多いが、千鳥状にずらせて最密充填しても良い。
【0053】
一方、指向性光吸収シートは特定の範囲の入射角を持った光を透過し、それ以外の光は遮断する機能を持っている。本発明の場合、具体的には、上記マイクロレンズで集光された光は少なくとも透過する構造となっている。
【0054】
このような構造を実現するために、本発明の指向性光吸収シートは、光吸収性の基板に、錐体台形の開口を持ったピンホールを形成した。このピンホールは、上記マイクロレンズの焦点近傍に形成されている。そのため、マイクロレンズによって焦点に集光された光は上記ピンホールに妨げられることなく透過する。一方、外光も開口から入射するが、開口自体がピンホールであるためにその開口率分しかスクリーン内部に入ることはないために、背面投射型表示装置内部で迷光となったり、ノイズ成分となったりする影響を小さくすることができる。さらにまた、開口が錐体台形をしているために斜めに入射してくる外光成分は錐体台形の側面で遮られるために、開口からスクリーン内部に入り込むことがなく、従来から用いられてきた通常のピンホールに比較して実質的に開口率の小さなピンホールとして機能する。一方、スクリーン表面で反射する外光成分に関しても、上記の理由のために、実質的に開口部表面からの反射光は通常のピンホールよりも小さくなる。そのため、本発明の背面投射型スクリーンは従来の背面投射型スクリーンに比較して、より黒レベルが高くなる。その結果、本発明のスクリーンに表示される画像は、外光の存在下においても、輝度(すなわち、白レベル)と黒レベルが高いために、高いコントラストを持った高品質な画像を提供することができる。
【0055】
本発明の背面投射型スクリーンのもう一つの目的は、静電気でスクリーン表面にホコリが付着することによる画像の表示品質の経時変化を防止することを目的とする。
【0056】
すなわち、本発明においてはマイクロレンズアレイシートと指向性光吸収シートは非帯電材料を用いたり、非帯電処理したりして帯電しないようになっている。その結果、本発明のスクリーンは長期間使用しても、帯電によるホコリの蓄積がなく、長期間に渡って良好な表示品質を保持することができる。
【0057】
具体的には、本発明の背面投射型スクリーンに用いる各要素は通常高分子材料で形成されており、指向性光吸収シートは染料や顔料を内部に含んだ、または光吸収性の材料で形成された高分子材料で作られており、マイクロレンズアレイシートは透明な高分子材料で形成されている。
【0058】
指向性光吸収シートにおいては、カーボン粒子や金属粉末を混合して導電性を向上させることができる。また、指向性光吸収シートとマイクロレンズアレイシートにおいては、可溶型界面活性剤、共重合型界面活性剤、またはポリマー型界面活性剤を内部に混練したり、これらを用いて表面処理したりすることによって非帯電材料とすることが可能となる。
【0059】
なお、本発明の背面投射型スクリーンは、指向性光吸収シートとマイクロレンズアレイシートとを、例えばロール成形やプレス成形またはシート厚によっては射出成形で成形することができる。このとき、例えば、一度指向性光吸収シートを成形した後、マイクロレンズアレイシートをそれに重ねて成型加工する、いわゆるインサート成形を行うことによってマイクロレンズシートに形成されたマイクロレンズと、指向性光吸収シートに形成されたピンホールの位置を正確に合わせて作製することが可能となる。
【0060】
このようなインサート成形を行う場合は、指向性光吸収シートを形成する高分子材料の軟化点がマイクロレンズアレイシートを形成する高分子材料の軟化点よりも高い方が、成形条件の自由度を大きく取ることが可能となり、また加工精度も良くなる。
【0061】
指向性光吸収シートを例えばアルミニウムなどの金属材料で形成し、その上に黒アルマイト処理などの光吸収処理を施したものを用いることによって、上記インサート成形はより簡単に行うことが可能となる。
【0062】
以下に本発明の照明装置に関する実施例を、図面を用いて具体的に説明する。
【0063】
[実施例1]
図1は本発明の背面投射型スクリーンに係る1実施例を示した要部拡大斜視断面図である。図1において、マイクロレンズアレイシート1は、一方の面にマイクロレンズ3が形成された透明なシートである。マイクロレンズ3は表面が球面、楕円面、非球面等で形成された微小なレンズである。用途等の諸条件に応じた形状に形成される。マイクロレンズアレイシート1は、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、シクロオレフィン樹脂、ポリエチレン樹脂などの透明な高分子材料で形成することができる。
【0064】
マイクロレンズ3は正方形または矩形に分割された領域の中心を対称の中心とした球面または楕円面等となっている。この正方形または矩形に分割された領域のピッチは、100〜500μmであり、典型的には150〜220μmとするのが好ましい。
【0065】
また、マイクロレンズアレイシート1のシート厚はおよそ400μm以上あることが望ましいが、使用する材料の屈折率やマイクロレンズアレイのピッチによっては、それよりも薄くても良い。
【0066】
マイクロレンズ3が形成されている領域は上記のように微小な領域であるために、マイクロレンズ3の個々の領域においては、プロジェクタからの投影画像は近似的に平行光であると考えることができる。
【0067】
マイクロレンズ3側から入射した平行光は、指向性光吸収シート側の所定の点(焦点)に集光される。この指向性光吸収シート側の焦点は、マイクロレンズ3が球面レンズであるときは一般に1点であるが、マイクロレンズ3が楕円レンズである場合は非点となり、楕円の長軸方向と短軸方向で異なった2点に集光される。しかし、どちらの場合においても、これらの焦点は指向性光吸収シート2に形成されているピンホール5の近傍にある。なおここでは、マイクロレンズ3の焦点が指向性光吸収シート2の内側に位置するように設定したが、指向性光吸収シート2と整合する位置、指向性光吸収シート2の外側位置でもよい。諸条件に応じて適宜設定する。
【0068】
ピンホール5の大きさは、上記マイクロレンズ3の焦点近傍において、マイクロレンズ3で集光された入射光の光束とほぼ同じ大きさ(直径)又は当該光束より大きく設定されている。これにより、マイクロレンズ3で集光された入射光を全て外部に透過させると共に、外部からの光をマイクロレンズアレイシート1の内部に極力侵入させないようにしている。なお、ピンホール5の形状は、マイクロレンズ3により焦点に絞られる光の形状に合わせて、円形、楕円形、四角形(正方形、長方形)等に適宜設定される。
【0069】
ピンホール5の開口6の形状は、図1に示すように錐体台形をしている。図1に示す例では、上底面(図1中の右側面)がピンホール5と一致し、下底面(図1中の左側面)が開いた台円錐形(断面形状が台形状)を有している。なお、この開口6の形状は、入射光が上下左右に同じ角度で広がるように設定する場合は図1のように円錐形状にするが、要求される条件に応じて、横長、縦長の楕円形円錐状や、正方形又は長方形の四角錐状等に適宜設定する。また、後述するように、階段台形状に形成してもよい。
【0070】
指向性光吸収シート2の開口6以外の部分は光吸収材料で形成されており、開口6以外の部分に照射された光は吸収されて透過されない。この光吸収材料としては、高分子材料に金属粉やカーボン粉を混合して着色したものや、黒色染料を混合して着色したものを用いることができる。
【0071】
指向性光吸収シート2の開口6の部分は、設定によって、透明の合成樹脂を充たしたり、空洞にしたりする。マイクロレンズアレイシート1と同一材料を用いることもあるが、通常は指向性光吸収シート2の開口6と上記マイクロレンズアレイシート1の屈折率の比が、その境界でピンホール5を外部へ向けて通過した光が適切な方向に偏向されるように設定する。具体的には、マイクロレンズアレイシート1に用いられる材料の屈折率との関係で決まる屈折率、即ち、ピンホール5を外部へ向けて通過した光が拡散される屈折率の透明材料を用いる。
【0072】
図1に示した背面投射型スクリーンに対する光の振る舞いを図3に示す。図3には、平行光がスクリーン面に垂直に入射する場合を示している。このように光がスクリーン面に垂直に入射するのはスクリーンの中央付近である。
【0073】
ここでは、マイクロレンズ3が球面レンズである場合を説明する。マイクロレンズ3を形成する球面の中心をCとすると、中心Cに向かって入射した光は、そのまま直進して焦点Fを通過する。焦点Fの位置は、マイクロレンズアレイシート1を形成する材料の屈折率と、マイクロレンズ3の曲率半径、および空気の屈折率によって決まる。図3では、焦点Fはマイクロレンズシート1の内部にあるが、ピンホール5の近傍であればマイクロレンズアレイシート1の外部にあっても良い。
【0074】
一方、マイクロレンズ3の端部に入射した光30は、マイクロレンズ3で屈折されて焦点Fを通り、マイクロレンズアレイシート1の他面に入射し、スネルの法則に従って屈折され光線32として出射する。マイクロレンズアレイシート1を構成する材料の屈折率は、出射側の媒質(空気)の屈折率よりも大きいために、出射光32の出射角は入射面への入射角よりも広くなる。その結果、より視角を広げることができる。
【0075】
指向性光吸収シート2の開口6は円錐体台形をしている。この円錐台の頂角は、マイクロレンズアレイシート1からの光出射角と同程度か、それよりも大きくなっている。そのため、マイクロレンズアレイシート1から出射した光は、指向性光吸収シート2に吸収されることなく出射される。
【0076】
一方、外光35のように照明7から大きな入射角でスクリーンに入射する光は、指向性光吸収シート2で吸収される。この外光の入射角が円錐体台の頂角よりも小さい場合にも、ピンホール5に直接入射してきた光以外は全て指向性光吸収シート2で吸収される。多くの場合、室内照明は天井に設けられており、また窓からの外光なども背面投射型表示装置の側面から入射する場合が多いために、外光の多くの割合が円錐体台の頂角よりも大きな入射角で入射すると考えられる。そのために、本発明のスクリーンは外光の多くを吸収して、高い黒レベルを実現することができるのである。
【0077】
また、ピンホール5を通してスクリーン内部に入射する光は、おおよそ開口6の円錐体台の頂角よりも小さな入射角の光であるために円錐体台形の開口6の側面4で吸収されるために、従来のピンホールを用いた場合にスクリーン内部に入射する光よりも減少する。すなわち、背面投射型表示装置の暗箱内に入射する光を従来のものに比較して減少させることができる。
【0078】
以上の結果から、本発明の背面投射型スクリーンは、表示画像のコントラストを改善することが可能となる。
【0079】
図4に、平行光がスクリーン面に対して傾斜して入射する部分における本発明のスクリーンの構造について説明する。この場合、外光に対する作用は、図3で説明した場合と同様であるためにその説明を省略する。
【0080】
図4において、入射光のうちマイクロレンズ3の中心Cに向かって入射してきた光は直線的にマイクロレンズアレイシート1内部を透過し、見かけの焦点F1を通過して他面に到達する。この見かけの焦点F1は、垂直入射光に対する焦点Fと略同一平面上にある。一方、マイクロレンズ3の端部に入射した光30はマイクロレンズ3の表面で屈折されて、見かけの焦点F1に集光され他面に到達する。
【0081】
指向性光吸収シート2に形成されているピンホール5は、見かけの焦点F1の近傍に設けられている。すなわち、ピンホール5は実質的に光を集光する焦点の近傍に設けられているのである。このピンホール5の中心は、マイクロレンズ3の中心Cに向かって入射する光の入射角と、中心Cと他面との距離によって決定することができる。例えば、光入射角が30度で、中心Cと他面との距離が250μmであるならば、ピンホール5の中心を図3で示した場合よりも、およそ145μm上にずらして形成すれば良いことが分かる。
【0082】
図2に示したように、プロジェクタからの光の出射角はスクリーンの中心と端部で異なっている。これはスクリーンの上下方向と左右方向の両方について言えることである。その違いの程度は、プロジェクタの仕様や画面の大きさなどによって異なってくる。従って、本発明の背面投射型スクリーンは、背面投射型表示装置の構成に応じて、ピンホール5の配列間隔をスクリーン中央部から周縁部に向かうに従って広く形成して、プロジェクタからの投影画像がピンホールから効率的に出射されるように形成されている。
【0083】
[実施例2]
図5に本発明の背面投射型スクリーンに係る他の実施例に関する拡大断面図を模式的に示す。図5に示す実施例が、図1に示す実施例と異なっている点は、ピンホール5の形状が正方形または矩形になっており、また開口6の形状が四角錘体台形になっていることである。それ以外の部分に関しての機能は第一実施例と同様であるために、その説明を省略する。
【0084】
図5に示す実施例では、ピンホール5の形状が正方形または矩形になっており、開口部6が四角錘台形となっているために、指向性光吸収シート2に上下方向と左右方向に異方性を持たせることができる。上述したように、照明光や窓などからの外光は、上下方向および左右方向からスクリーンに入射する場合が多く、このような構造にすることによって各々の外光を効率良く遮光することができる。
【0085】
さらにまた、スクリーンからの出射角を上下方向と左右方向で異ならせる場合、すなわち、マイクロレンズ3の上下方向と左右方向の球半径が異なる楕円レンズを用いる場合は、開口6の四角錐体台形状における上下方向と左右方向の頂角を上記出射角に対して最適化することによって、出射効率と遮光効率の両方を最大化することが可能となる。
【0086】
さらにまた、開口6の断面形状を四角錐体の台形とすることによって、この形状をプレス成形やロール成形で形成するための成形型の加工が極めて容易になり、安価に指向性光吸収シートを製造することが可能となった。
【0087】
[実施例3]
図6に本発明の背面投射型スクリーンに係る実施例の拡大断面図を模式的に示す。図6が図4と異なっている点は、指向性光吸収シート2に形成されている開口内に光散乱粒子11が透明なバインダーと共に充填されている点である。
【0088】
図4に示すようにスクリーンの端部でピンホール5の位置を外側にずらすことによって、プロジェクタからの光を効率良くスクリーン面から出射させることができるが、その結果、スクリーン中央部と端部とで、出射光の放射分布が異なり視角依存性が異なってくる。すなわち、画面を見る角度によって、スクリーン上の画像の明るさが異なることになる。
【0089】
図6ではこのような場合でも、スクリーンからの出射光の放射分布の偏りを少なくして、スクリーン上の画像をどの角度から見ても一様な輝度で観察できるようにしたものである。すなわち、マイクロレンズ3で焦点F1に集光された光はピンホール5から円錐体台形の開口に入射する。この開口には光拡散粒子11が図示されない透明なバインダーで結合されて充填されているため、開口に入射した光は拡散されて出射される。その結果、出射光の放射分布の偏りが均一化して、視角依存性を向上させることができる。
【0090】
光拡散粒子としては、アクリル樹脂やポリスチレン樹脂などの透明な高分子で形成された透明あるいは透光性のビーズを用いることができる。この光拡散粒子の粒径と屈折率を調節することによって、スクリーンから出射する光の拡散性能を制御することができる。例えば、上記のアクリル樹脂やスチレン樹脂のビーズを用いる場合は、粒径1〜20μm程度のものを適当な粒度分布を持たせてやれば良い。
【0091】
図6には明確に示していないが、上記の光拡散粒子11は、開口内部のみ以外にも、指向性光吸収シート2の表面に塗布しても良い。そのことによって、指向性光吸収シート2の表面の光沢反射を抑え、より黒いスクリーン面を実現することができる。
【0092】
[実施例4]
図7に本発明の背面投射型スクリーンに係る実施例を表す拡大斜視断面図を模式的に示す。図7に示す実施例においては、マイクロレンズアレイシート1におけるマイクロレンズ3の集光点に対応した位置に円錐台形の突起12が形成されている点である。この突起12は、マイクロレンズアレイシート1と別体に設けても良いが、光学的界面を形成しないで一体に設けるのが好ましい。
【0093】
突起12は、下底面13をマイクロレンズ3側に、上底面5をスクリーン表面側に向けて形成されており、側面4はマイクロレンズ3側に開いて傾斜している。
【0094】
突起12は、指向性光吸収シート2に設けられたピンホールに嵌合されている。指向性光吸収シート2のピンホール以外の部分は、光吸収材料で形成されている。
【0095】
図8に図7で示した本発明の背面投射型スクリーンの中央部近傍における光の振舞いを説明するための説明図を示す。図8において、マイクロレンズ3に入射した平行光のうちレンズの中心Cに向かって入射してきた光33は、そのまま直進して焦点Fを通過してそのままスクリーン出射面から出射する。指向性光吸収シート2のピンホールは突起12の上底面部に対応し、焦点Fはそのピンホールの近傍にある。図8においては、焦点Fは突起12の内部にあるが、ピンホールの近傍であればスクリーン外部にあっても良い。
【0096】
一方、マイクロレンズ3に入射してきた平行光の内、レンズ周縁部に入射してきた光30はマイクロレンズ3の表面で屈折され焦点Fに集光され、突起12の上底面すなわちピンホールで屈折を受けてスクリーン表面から出射される。焦点Fはピンホールの近傍にあるために、マイクロレンズ3で集光された光は、指向性光吸収シート2に形成されている円錐体台形の開口の側面4で吸収をほとんど受けることなく、効率良くスクリーンから出射される。
【0097】
一方、照明7などからの外光は、光線35で示すようにスクリーン表面に斜入射してくる。このような外光の内、指向性光吸収シート2のピンホールが形成されていない表面に照射された光は、そのまま指向性光吸収シート2によって吸収されて、スクリーン内部に入ることはないし、観察者の視点に入ることもない。また、図8に示すように、光線35のようにある入射角以上の角度でピンホール内部に入射した光も、屈折されて突起12内部に入射した後、側面4で吸収を受けてスクリーン内部に入り込むことはない。この遮光効果は、指向性光吸収シート2の開口率が小さく、指向性光吸収シート2の厚みが厚いほど大きくなる。典型的には、この指向性光吸収シート2の厚みは40μm以上あるのが好ましい。
【0098】
図9に本実施例の背面投射型スクリーンの周縁部における光の振舞いについての説明図を示す。スクリーン周縁部においては、プロジェクタからマイクロレンズ3に入射する光はマイクロレンズ3の光軸に対して傾斜している。しかしながら、入射光線の内マイクロレンズの曲率中心Cに向かって入射してきた光線はマイクロレンズ3の表面で屈折を受けることなく直進し、見かけの焦点F1を通過して、突起の上底面から屈折を受けて光線34のように出射する。
【0099】
一方、マイクロレンズ3の周縁部に入射してきた光線30は、マイクロレンズ3の表面で屈折を受けて見かけの焦点F1に集光され、その後突起の上底面から屈折を受けて光線32のように出射する。
【0100】
言うまでもないが、円錐体台形状をした突起はその回転中心近傍に見かけの焦点が来るように形成されている。この見かけの焦点F1が焦点Fからのシフト量は、マイクロレンズ3の曲率半径中心Cと焦点Fとの距離、および光線33と直線CFとがなす角度によって決まる。言いかえれば、マイクロレンズ3の曲率半径とマイクロレンズアレイシート1の屈折率、および光線33と直線CFがなす角度によって決定される。
【0101】
従って、マイクロレンズアレイシート1に形成された突起、言いかえれば、指向性光吸収シート2に形成されているピンホールの間隔はスクリーンの中心から離間するに従って広く形成される。このようにすることによって、本発明のスクリーンのマイクロレンズアレイシート1に入射したプロジェクタからの光を全て効率良く指向性光吸収シート2に形成されたピンホールアレイに導くことが可能となり、高輝度な画面を実現することができる。
【0102】
なお、このときスクリーン中心部と周縁部とでは投影画像の画素間隔に違いが出てくるが、その量は高だか数百μmであるため、実際に観察される画像に違和感は生じない。
【0103】
[実施例5]
図10に本発明の背面投射型スクリーンに係る別の実施例について拡大断面図を用いて模式的に示す。図10が図7と異なっている点は、マイクロレンズアレイに形成されている突起形状あるいは指向性光吸収シート2に形成されているピンホールの開口形状が四角錐台形になっている点である。すなわち、傾斜した側面14を持ってマイクロレンズアレイシートに連続した下底面16とピンホールとしての上底面15とからなる四角錐台形の突起アレイがマイクロレンズアレイに対向して形成されている。この四角錐台形の突起の間隙は指向性光吸収シート2で充填されている。
【0104】
このような構造にすることによって、第二実施例と同様に、指向性光吸収シート2に面内方向の異方性を付与することができ、左右と上下の放射角異方性を持たせたマイクロレンズアレイを用いた場合にも、出射効率の最適化をはかることができる。
【0105】
また、突起およびピンホール開口の形状を四角錐台形とすることによって、これらの要素を製造するための金型の加工が容易になり、製造コストを低減化することができた。
【0106】
[実施例6]
図11に本発明の背面投射型スクリーンに係る別の実施例についての拡大断面図を模式的に示す。図11に示す背面投射型スクリーンのマイクロレンズアレイシート1に設けられている突起および指向性光吸収シート2に設けられているピンホールの開口形状は、マイクロレンズアレイシート1側に向かうに従って、ステップ状(階段台形状)に大きくなっていく形状となっている。このとき、開口の側面17は不連続で略垂直な面となっている。本発明では、このように上底面18から下底面19に向かってステップ状に次第に大きくなっていく形状も錐体台形状として考える。このステップが微小な無数に多くのものとなっているものが、図10に示した四角錐体台形の開口である。
【0107】
図11に示す錐体台のステップ数を2から5程度にすることによって、極めてこれらの突起やピンホール開口を作製するのが容易になる。また、このようにすることによっても、実質的に上記までに説明してきた指向性光吸収シートとしての特性をほぼ維持することが可能となる。
【0108】
[実施例7]
図12に本発明の背面投射型スクリーンに係る他の実施例についての拡大断面図を模式的に示す。図12に示す実施例においては、実施例4から6に示した実施例における突起の上底面20を傾斜して形成したものである。この傾斜の角度は、マイクロレンズ3の曲率半径の中心Cに入射してきた光線33が見かけの焦点F1を通過して、上記上底面20から出射するときの出射角がゼロ度になるように傾斜させてある。すなわち、このときスクリーン表面から出射される光線34はスクリーン面に垂直に出射される。このような角度は、上底面への光入射角とマイクロレンズアレイシート1の屈折率が分かっていると、スネルの法則から容易に求めることができる。
【0109】
背面投射型スクリーンの中心から周縁部にずれるに従って光線33の傾きは大きくなるから、突起の上底面20の傾きもスクリーンの周縁部になるに従って大きくなる。言いかえれば、上記上底面20の傾斜の角度はスクリーンの中心から遠い錐体台ほど大きくなるように形成され、その上底面20はスクリーン面の中心から最も遠い端部の高さが最も低くなるように傾斜している。
【0110】
このようにすることによって、従来の背面投射型スクリーンのようにフレネルレンズを用いてプロジェクタからの光の広がり角を補正することなく、スクリーンのどの位置から出射される光の放射分布も一様となり、スクリーン上の画像のスクリーン位置による視角依存性を低減することが可能となる。
【0111】
[実施例8]
図13に本発明の背面投射型スクリーンに係る他の実施例を説明するための拡大断面図を模式的に示す。図13において、突起12のピンホール側の表面が外側に凸面20aになっている。本発明では、このように開口表面が凸面になっている場合の開口形状をも錐体台形状の開口という。
【0112】
図13ではスクリーンの中心近傍における光の振舞いを示してある。そのため、マイクロレンズ3の曲率半径の中心Cに向かって入射した光33は屈折を受けずにマイクロレンズアレイシート1の中に入り、突起12の凸面から外部に光線34として出射する。本実施例の場合は、マイクロレンズ3の焦点Fはマイクロレンズアレイシート1の外にある。一方、マイクロレンズ3の周縁部に入射した光30は、マイクロレンズ3に入射するとき屈折を受けて焦点Fに集光されるようにマイクロレンズアレイシート3内部を光線31として伝播する。光線31は焦点Fに到達する前に突起12の凸面20aに到達して、図示しないマイクロレンズ3と凸面20aとの合成焦点に集光され光線32として出射される。このように、マイクロレンズ3と突起12の凸面20aとの合成レンズ系を形成することによって、出射光の発散の程度を広い範囲で制御することが可能となり、スクリーンの視角を広げることができた。
【0113】
本実施例では、突起12の凸面20aの頂点が指向性光吸収シート2の表面よりも飛び出した状態になっているが、凸面20aの頂点は指向性光吸収シート2の表面と同レベルであってもよいし、それよりも引っ込んだ位置にあっても良いことは言うまでもない。その場合も、凸部12の斜面と指向性光吸収シート2に形成されている開口斜面4とは略一致しているのが好ましい。
【0114】
なお、図13はスクリーンの中央近傍を示したものであり、スクリーンの周縁部に向かうに従って焦点Fの位置はスクリーン外側にシフトした見かけの焦点に移動する。それに伴って、突起12も見かけの焦点近傍に移動することは言うまでもない。
【0115】
[実施例9]
図14に本発明の背面投射型スクリーンに係る別の実施例を説明するための拡大断面図を模式的に示す。図14に示す実施例が図12に示した実施例と異なっている点は、突起12のピンホール側の表面が凹面20bになっていることである。本発明では、このように開口表面が凹面になっている場合の開口形状をも錐体台形状の開口という。
【0116】
図14ではスクリーンの中心近傍における光の振舞いを示してある。そのため、マイクロレンズ3の曲率半径の中心Cに向かって入射した光33は屈折を受けずにマイクロレンズアレイシート1の中に入り、焦点Fを通過して、突起12の凹面から外部に光線34として出射する。一方、マイクロレンズ3の周縁部に入射した光30は、マイクロレンズ3に入射するとき屈折を受けて焦点Fに集光されるようにマイクロレンズアレイシート3内部を光線31として伝播する。光線31は焦点Fに集光された後、突起12の凹面20bに到達して、図示しないマイクロレンズ3と凹面20bとの合成焦点から出射したかのように光線32として出射される。このように、マイクロレンズ3と突起12の凹面20bとの合成レンズ系を形成することによって、出射光の発散の程度を広い範囲で制御することが可能となり、スクリーンの視角を広げることができた。
【0117】
本実施例では、突起12の凹面20bの頂点が指向性光吸収シート2の表面よりも引っ込んだ位置になっているが、凹面20bの頂点は指向性光吸収シート2の表面と同レベルであってもよいし、それよりも飛び出した位置にあっても良いことは言うまでもない。その場合も、凸部12の斜面と指向性光吸収シート2に形成されている開口斜面4とは略一致しているのが好ましい。
【0118】
なお、図14はスクリーンの中央近傍を示したものであり、スクリーンの周縁部に向かうに従って焦点Fの位置はスクリーン外側にシフトした見かけの焦点に移動する。それに伴って、突起12も見かけの焦点近傍に移動することは言うまでもない。
【0119】
[実施例10]
図15に本発明の背面投射型スクリーンに係る別の実施例を説明する部分拡大断面図を模式的に示す。図15が図9と異なっている点は、突起表面に第一光散乱面21が、指向性光吸収シート2の表面に第二光散乱面22が形成されていることである。突起表面に第一光散乱面を形成することによって、プロジェクタからの入射光30や33がスクリーンを透過した後、スクリーン表面から出射する放射角を広げることができ、視角の広い画像表示を行うことができる。
【0120】
また、指向性光吸収シート2の表面に第二光拡散面22を形成することによって、外部の光がこの第二光拡散面22で拡散されて画像を見ている人の視点に入ってこないために、実質的に指向性光吸収シート2の表面の黒レベルを向上させることができる。その結果、明るい室内においてもコントラストの低下をまねくことなく、鮮明な画像を表示させることができる。
【0121】
なお、この第一光拡散面21は、突起の表面が図12に示す傾斜した上底面を持っている場合や、図13に示す凸面20aのような場合や、図14に示す凹面20bのような場合にも、有効に機能を果たす。
【0122】
これら第一光拡散面21と第二光拡散面22は、具体的には表面に光の波長レベルあるいはそれよりも若干大きなレベルの凹凸構造を形成することで実現できる。これは、例えばこれらの表面を形成する成形型の表面にシボパターンを形成したものを用いて、表面にシボパターンを形成して第一光散乱面21と第二光散乱面22を作製することができる。あるいはまた、スクリーンを図8や図9のように加工した後、サンドブラスト処理やフォトエッチング処理によって表面を粗しても良い。
【0123】
第一光拡散面21のヘイズ値は55〜100%程度、第二光拡散面のヘイズ値は35〜65%程度が好ましい。
【0124】
[実施例11]
図16に本発明の背面投射型スクリーンに係る別の実施例を説明するための拡大断面図を模式的に示す。図16においては、突起の上底面と指向性光拡散シート2の表面とで形成される背面投射型スクリーンの出射面全面に渡って光拡散粒子23が図示しないバインダーを介して塗布固着されている。この光拡散粒子23の機能は第10実施例における第一光拡散面および第二光拡散面と同じである。しかしながら、本実施例においては光拡散粒子23を用いるために、突起の表面も指向性光拡散シート2の表面も同一のヘイズ値となってしまうが、外光を入射方向とほぼ同方向に反射するために外光の影響を良く抑えることができるために黒レベルをより高くすることができる。また、マイクロレンズアレイシート1からの透過光に対しては、充分な光拡散性能を有している。
【0125】
光拡散粒子23としては、第3実施例の場合と同様の透明な樹脂ビーズを用いることができる。
【0126】
[実施例12]
図17に本発明の背面投射型スクリーンを用いた背面投射型画像表示装置の構成例を説明する断面図を模式的に示す。本実施例においては、背面投射型スクリーンは、指向性光吸収シート24、マイクロレンズアレイシート25、およびフレネルレンズシート36とから構成されている。このようにプロジェクタ26からの投影光の広がり角をフレネルレンズ36で平行光に補正してマイクロレンズアレイシート25に照射することによって、部品点数は多くなるが、指向性光吸収シート24に形成されているピンホールの位置とマイクロレンズとが略同一光軸上に配列するため、指向性光吸収シート24の加工が容易になるという長所がある。
【0127】
[変形例]
なお、上記各実施例では、図1のように外側へ向けて広がった形状の開口の場合と、図7のように内側へ向けて広がった形状の開口の場合とで、異なる態様の例を挙げて説明したが、これらに限定するものではなく、各実施例で挙げた態様は、外側へ向けて広がる開口及び、内側へ向けて広がる開口のいずれに対しても、適用可能なもの全てを組み合わせることができる。さらに、各実施例で挙げた態様同士も、適用可能なもの全てを組み合わせることができる。
【0128】
また、上記各実施例では、指向性光吸収シート2をマイクロレンズアレイシート1と一体的に設けたが、指向性光吸収シート2をマイクロレンズアレイシート1以外の他の光学部品に設けても良い。出射光を効率良く出射させる必要のある光学部品全てに用いることができる。この場合、指向性光吸収シート2の構成として、各光学部品に応じた態様の構成を、上述した各実施例の中から適宜選択して施す。複数の実施例の構成を組み合わせてもよい。
【0129】
これにより、各光学部品において、外光の影響を受けずに、出射光を効率良く出射させることができ、明るい部屋でもコントラストが高く明るい画面にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】本発明の背面投射型スクリーンの要部斜視図である。
【図2】本発明の背面投射型スクリーンを用いた背面投射型表示装置の断面図である。
【図3】本発明の背面投射型スクリーンの要部断面図である。
【図4】本発明の背面投射型スクリーンの要部断面図である。
【図5】本発明の背面投射型スクリーンの要部斜視図である。
【図6】本発明の背面投射型スクリーンの要部断面図である。
【図7】本発明の背面投射型スクリーンの要部斜視図である。
【図8】本発明の背面投射型スクリーンの要部断面図である。
【図9】本発明の背面投射型スクリーンの要部断面図である。
【図10】本発明の背面投射型スクリーンの要部斜視図である。
【図11】本発明の背面投射型スクリーンの部分斜視図である。
【図12】本発明の背面投射型スクリーンの部分断面図である。
【図13】本発明の背面投射型スクリーンの部分断面図である。
【図14】本発明の背面投射型スクリーンの部分断面図である。
【図15】本発明の背面投射型スクリーンの部分断面図である。
【図16】本発明の背面投射型スクリーンの部分断面図である。
【図17】本発明の背面投射型スクリーンを用いた背面投射型表示装置の断面図である。
【図18】従来のレンチキュラスクリーンの断面図である。
【符号の説明】
【0131】
1 マイクロレンズアレイシート
2 指向性光吸収シート
3 マイクロレンズ
4 側面
5 ピンホール
6 開口
7 照明
11 光拡散粒子
12 突起
13 下底面
14 側面
15 上底面
16 下底面
17 側面
18 上底面
19 下底面
20 上底面
20a 凸面
20b 凹面
21 第一光散乱面
22 第二光散乱面
23 光拡散粒子
24 指向性光吸収シート
25 マイクロレンズアレイシート
26 プロジェクタ
27 ミラー
28 フレーム
36 フレネルレンズシート


【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行に入射した光を焦点に集光するマイクロレンズを一方の面に配列してなる透明なマイクロレンズアレイシートと、
特定方向からの光を透過し、それ以外の光を吸収する開口を持った指向性光吸収シートとを少なくとも有する背面投射型スクリーンであって、
上記指向性光吸収シートの開口は、上記マイクロレンズの上記焦点近傍に開口したピンホールを配列したピンホールアレイであり、
上記ピンホールの開口部は錐体台形又は階段台形をしてなることを特徴とする背面投射型スクリーン。
【請求項2】
上記マイクロレンズの配列形状を正方形または矩形としたことを特徴とする請求項1に記載の背面投射型スクリーン。
【請求項3】
上記ピンホールの配列間隔が、スクリーン中央部から周縁部に向かうに従って広く形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の背面投射型スクリーン。
【請求項4】
上記マイクロレンズアレイシートの上記ピンホールアレイによる開口面が凸面または凹面に湾曲したレンズ面となっていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の背面投射型スクリーン。
【請求項5】
上記ピンホールを形成する錐体台形の開口部の上底面側が上記マイクロレンズアレイシート側を向いており、上記マイクロレンズの焦点は上記上底面近傍に配されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の背面投射型スクリーン。
【請求項6】
上記錐体台形をしたピンホール内部に透明樹脂に分散された拡散粒子が配されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の背面投射型スクリーン。
【請求項7】
上記マイクロレンズアレイシートのマイクロレンズに対向する面において、少なくとも上記ピンホールによって露出している面は光を散乱させるためのシボが形成されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の背面投射型スクリーン。
【請求項8】
上記ピンホールを形成する錐体台形の開口部の下底面が上記マイクロレンズアレイシート側を向いており、
上記マイクロレンズアレイシートのマイクロレンズに対向する面には上記ピンホールを形成する錐体台形に相似な錐体台形の突起が一体に形成されており、
上記ピンホールを形成する錐体台に上記錐体台形の突起が篏合してなることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の背面投射型スクリーン。
【請求項9】
上記ピンホールを形成する錐体台において、
その上底面はスクリーン面の中心から最も遠い端部の高さが最も低くなるように傾斜しており、
前記傾斜の角度はスクリーンの中心から遠い錐体台ほど大きくなるように形成されたことを特徴とする請求項8に記載の背面投射型スクリーン。
【請求項10】
上記錐体台形の突起の上底面は光を散乱させるための光散乱面になっていることを特徴とする請求項8又は9に記載の背面投射型スクリーン。
【請求項11】
上記指向性光吸収シートの出射側の面は光を散乱させるための光散乱面になっていることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の背面投射型スクリーン。
【請求項12】
上記指向性光吸収シートとマイクロレンズアレイシートは熱可塑性高分子材料で形成されており、上記指向性光吸収シートを形成する材料の軟化点は上記マイクロレンズアレイシートを形成する材料の軟化点よりも高いことを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の背面投射型スクリーン。
【請求項13】
上記指向性光吸収シートと上記マイクロレンズアレイシートとは熱融着により一体に形成されていることを特徴とする請求項12に記載の背面投射型スクリーン。
【請求項14】
上記指向性光吸収シートを形成する熱可塑性材料は、カーボン粒子または金属粒子が分散されてなることを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載の背面投射型スクリーン。
【請求項15】
上記指向性光吸収シートは表面に光吸収層を形成した金属板によって形成されていることを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の背面投射型スクリーン。
【請求項16】
上記指向性光吸収シートと上記マイクロレンズアレイシートとはインサート成形によって一体に構成されていることを特徴とする請求項15に記載の背面投射型スクリーン。
【請求項17】
上記指向性光吸収シートの厚みはおよそ40μm以上あることを特徴とする請求項1から16のいずれか1項に記載の背面投射型スクリーン。
【請求項18】
上記マイクロレンズアレイシートの光入射面の前に投影光の広がり角を制御するためのフレネルレンズシートが配されていることを特徴とする請求項1から17のいずれか1項に記載の背面投射型スクリーン。
【請求項19】
上記指向性光吸収シート、マイクロレンズアレイシート、又はフレネルレンズシートのいずれか又は全てが帯電防止材料で形成されているか、もしくは帯電防止処理が施されていることを特徴とする請求項1から18のいずれか1項に記載の背面投射型スクリーン。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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