説明

胡瓜の実の栽培用袋

【課題】栽培から消費者に届くまで人の手に直接触れず衛生的で剥離作業も容易に行うことができ、規格形状のまっすぐな胡瓜の実10を栽培することを可能とする。
【解決手段】袋本体1は厚さ40ミクロンのOPPフィルムよりなり、周長さが90mmで長さが244mm程度の筒体に形成されている。袋本体1の上端開口半周部分には蓋片3、4を連続して上方向に延設している。蓋片3、4には剥離シール7、8を備えた粘着部5、6を設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、まっすぐで所定規格の胡瓜の実を栽培可能で、且つ生産者から消費者に届くまでの流通過程においても胡瓜の実に直接手を触れることなく衛生的で、しかも鮮度劣化を遅延させ得る胡瓜の実の栽培用袋に関する。
【背景技術】
【0002】
胡瓜の実は形状により商品価値が異なる。開花後受粉し、萎びた花を付けて実が長く生長し、この長い実を食用に供するのであるが、実の生長過程で部位により径が著しく異なったり、一方向に曲ったりするものが生産されているのが現状である。生産者側は味覚及び視覚上の見地より最適な径と長さを秀品として規格し、この規格に近付いた形状でまっすぐな胡瓜の実を生産すべく種々の栽培方法を提案している。
【0003】
従来、胡瓜の実をケース内に入れて整形する栽培方法として、上下両端を狭窄した円筒体の内側に、長さが5〜6cmに生長した胡瓜の実を挿入配設して所定長さになるまで生長させる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の栽培方法であると、ケース内に胡瓜の実を配設後、上端狭窄部に胡瓜の実の上端若しくは茎を引っ掛けて胡瓜の実をケース内に安定的に配設しようとするものであるが、胡瓜の実の径が上端狭窄部内径よりも大径に生長する迄の期間は、胡瓜の実からケースが抜け落ちる確率が極めて高いという欠点があった。特に、路地栽培による場合は、風により容易に脱落する。又、材料に塩化ビニール樹脂を厚さ1mm以下に展延したものを用いているため、ケースの硬度が高く、胡瓜の実の径が大きくなりケースに胡瓜の実の周面から外側方向に圧力を加えると、反作用により胡瓜の実の周面へは内側方向に力が作用し、胡瓜の実の表面に胡瓜の実独特のイボが発現せず、胡瓜の実らしい外観を呈しないという欠点があった。又、ケース硬度が高いため、胡瓜の実の径が大きくなり周面でケースに力を加えると、ケースに胡瓜の実が密着する。消費者が胡瓜の実からケースを剥離する際に、ケースに包丁等で切り目を入れると、誤って胡瓜の実を損傷させる事態が発生する場合があるという欠点があった。
【0004】
又、規格形状と同一内径、長さを有する円筒状チューブの上端を半球体状に閉塞形成し、この上端には軸心線位置を中心として放射状切込みを形成したケースが提案されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2記載の発明であると、放射状切込みの切縁で茎を挟持しケース内に胡瓜の実を吊り下げるため、特許文献1記載のケースを用いた場合と比較するとケースの脱落する確率は低い。しかし、未成熟の胡瓜の実をケース内に挿入する際に切込みの鋭利な切縁で胡瓜の実を損傷しやすいという欠点がある。又、特許文献2記載の発明は、肉厚が0.3〜0.5mm程度の透明なポリエチレンのブロー成型品であるため、ケースが硬く、胡瓜の実が生長し周面でケース内周面を圧迫すると反作用によりケースから胡瓜の実に対し内側方向に力が加わり、胡瓜の実の表面に本来形成されるべきイボが形成されず、胡瓜の実らしい外観を呈しない。又、流通過程で商品を手に取る際に切込みで手指を損傷する危険性があるという問題点があった。
【0005】
又、肉厚0.2mm程度の塩化ビニルレジンフィルムを材料とし、内径30mmで長さ180mmの円筒部と、内径3mmで長さ6mmの口部とよりなる胡瓜の実の栽培用袋が提案されている(例えば、特許文献3参照)。特許文献3記載の発明であると、口部から胡瓜の実を挿入することは極めて困難で現実の使用には不適当である。又、袋に多数の微少孔を穿設する内容が記載されているが、生食することの多い胡瓜の実に直接農薬が付着し好ましくない。
【特許文献1】特開昭52−102131号公報
【特許文献2】特開昭53−22051号公報
【特許文献3】特開昭53−143526号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明は、胡瓜の実を袋本体内に配設する際に胡瓜の実を損傷することなく簡便な挿入配設作業が可能で、害虫や農薬から胡瓜の実を保護し、胡瓜の実の表面のイボの形成を阻害せず、まっすぐで所望規格の胡瓜を生産可能で、生産から消費者に届く流通過程で、胡瓜の実を人が直接触れることなく衛生的に提供でき、しかも、鮮度が長期間保持可能な胡瓜の実の栽培用袋を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、まっすぐな胡瓜の実を栽培するための胡瓜の実の栽培用袋であって、透光性、透明性及び非伸縮性を有する薄片を材料とし、内側に胡瓜の実を収容配設可能に、出荷時の所望規格の胡瓜の実の直径及び長さと略同径で略同一長さの中空部を設けた筒状袋本体を形成し、この筒状袋本体の上端開口縁に於ける周方向半周部分に亘たり、この半周部分を略2等分する位置で左右に分離する2枚の蓋片を前記開口縁より夫々上方に連続して延設し、これら2枚の蓋片の基部近傍には前記上端開口縁と平行な切り取り用ミシン目を設け、前記蓋片を折り返して前記袋本体の上端開口を閉蓋可能に、前記蓋片には粘着手段を具備してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、胡瓜の実にケースを取り付ける場合、開口が大きいため、胡瓜の実を損傷することなく容易に取り付けることができ作業性が向上し、所望規格の形状でまっすぐな胡瓜の実を栽培できるという効果を有する。
2枚の蓋片間に茎が通過して胡瓜の実に袋を装着するため、風によっても胡瓜の実から袋は脱落しないという効果がある。
胡瓜の実を1本ずつ袋に配設しているため、胡瓜の実が相互に直接当たることがなく、胡瓜の実が損傷せず、又、他の胡瓜の実から発生するエチレンガスによる影響を受けないので長寿命化するという効果がある。
胡瓜の実に袋本体をかけた状態で胡瓜を収穫可能で、袋本体内に入れた状態で市場を流通して消費者に届けることができ、消費者が調理する時まで直接胡瓜の実を触れることが一切無く衛生的で、又、蓋片で袋本体の上端を閉蓋しているため散布された農薬が胡瓜の実に付着せず、安全な胡瓜を提供し得るという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【実施例1】
【0009】
図1は胡瓜の実の栽培用袋の正面図、図2は袋本体の上端開口の開口状態を示す切欠斜視図、図3は生長途中の胡瓜の実を袋本体内に配設し閉蓋した状態を示す斜視図、図5は収穫直前の胡瓜の実と袋との関係を示す説明図、図5は流通過程で取引される胡瓜の実を示す説明図である。
【0010】
これらの図において袋本体1は透光性、透明性及び非伸縮性を有する薄片を材料とし、内側に物が挿入されれば筒状の形状を呈するように形成され、上下両端方は開口されている。袋本体1は内側に中空部を設け、膨らませた状態で胡瓜の所望規格の径と略同一の内径と長さを有する形状に形成されている必要性がある。実施例1では、袋本体1は肉厚が40ミクロン程度の内面に防曇加工処理を施したOPPフィルム(オリエンテッドポリプロピレン)を用い、胡瓜に被せる前は薄く折り畳み、折り畳んだ状態で横幅が45mmで長さが244mmの大きさに形成されている。本実施例では、横幅が45mmで長さが280mmの略矩形状シートに、横幅45mmで長さが244mmの略矩形状シートを下端縁を一致させて重合し、左右両端縁を融着して形成している。袋本体1の下端両端は収穫直前の胡瓜の実の生長を妨害しないように斜め上方に傾斜した切り欠き2を設けている。
【0011】
袋本体1の上端開口縁における周方向半周部分に亘たり、この半周部分を略2等分する位置に厚さ40ミクロンで横幅45mm、長さ36mmのOPPフィルムによりなる蓋片3、4を開口縁より夫々上方に連続して延設している。蓋片3、4の内側面には粘着部5、6を設け、粘着部5、6には剥離シール7、8を貼着している。切り取り用ミシン目9は蓋片3、4の基部に開口端縁と平行に設けている。
【0012】
次に使用方法について説明する。胡瓜の実が6〜10cmに生長し花が萎むと花を摘み取り、袋本体1の上端開口より胡瓜の実10を袋本体1の中空部へ挿入配設し、剥離シール7、8を除去した蓋片3、4を折り返して、茎11を蓋片3、4間に介在させ、袋本体1のうち蓋片3、4と連設していない側の袋本体1の上部を袴いで外側面に粘着部を重合貼着して袋本体1の上端開口を閉蓋する。袋本体1は、胡瓜の規格の秀品形状を満足する形状に形成されているので、袋本体1の内周面と当接する形状に生長した胡瓜の実10を、茎11及び切り取り用ミシン目9を切断して袋と共に収穫し、袋本体1に挿入された状態の胡瓜の実10を流通過程へと送るものである。
【0013】
袋がOPPフィルムよりなるため、従来品より柔らかく、胡瓜本来のイボが発現し、外観上胡瓜らしさを呈する。又、2枚の蓋片間を茎が通る構成であるので、袋が風によっても脱落しない。又、切り取り線により袋本体の上下両端を開口した状態で消費者に届くので、衛生的で、OPPフィルムが胡瓜に密着しておらず袋の剥離作業も胡瓜を損傷することなく箇便にできる。個別包装であるため、他の胡瓜から排出されるエチレンガスによる影響を受けず、鮮度が長く保持される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】 胡瓜の実の栽培用袋の正面図である。(実施例1)
【図2】 袋本体の上端開口の開口状態を示す切欠斜視図である。(実施例1)
【図3】 生長途中の胡瓜の実を袋本体内に配設し閉蓋した状態を示す斜視図である。(実施例1)
【図4】 収穫直前の胡瓜の実と袋との関係を示す説明図である。(実施例1)
【図5】 流通過程で取引される胡瓜を示す説明図である。(実施例1)
【符号の説明】
【0015】
1 袋本体
3、4 蓋片
5、6 粘着部
9 切り取り用ミシン目
10 胡瓜の実

【特許請求の範囲】
【請求項1】
まっすぐな胡瓜の実を栽培するための胡瓜の実の栽培用袋であって、
透光性、透明性及び非伸縮性を有する薄片を材料とし、
内側に胡瓜の実を収容配設可能に、出荷時の所望規格の胡瓜の実の直径及び長さと略同径で略同一長さの中空部を設けた筒状袋本体を形成し、
この筒状袋本体の上端開口縁に於ける周方向半周部分に亘たり、この半周部分を略2等分する位置で左右に分離する2枚の蓋片を前記開口縁より夫々上方に連続して延設し、これら2枚の蓋片の基部近傍には前記上端開口縁と平行な切り取り用ミシン目を設け、前記蓋片を折り返して前記袋本体の上端開口を閉蓋可能に、前記蓋片には粘着手段を具備してなることを特徴とする胡瓜の実の栽培用袋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−20550(P2007−20550A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−234960(P2005−234960)
【出願日】平成17年7月15日(2005.7.15)
【出願人】(000201641)全国農業協同組合連合会 (69)
【Fターム(参考)】