説明

胸部X線撮影装置

【課題】胸部X線撮影装置において、胸部撮影時の被撮影者の負担を軽減すると共に、画像の画質の低下を避けること。
【解決手段】胸部X線撮影装置10は、X線検出装置13と、X線検出装置13の検出面より後方で保持され、X線検出装置13の左右方向を軸に回動するクランク軸171と、被撮影者Pの各手によって握持可能な左右のハンドル部分を有し、クランク軸171の回動によって被撮影者Pを背面から検出面に案内する形状を有する左右のクランクハンドル172と、左右のハンドル部分がクランク軸171より下方にある場合に左右のハンドル部分を検出面の後方から前方の向きに回動させないようにクランク軸171の回動の係止を行なうと共に、その係止を解除可能な係止部173と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様としての本実施形態は、胸部のX線撮影に使用される胸部X線撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
学校及び会社等の団体では、年に1回程度、胸部X線撮影装置を用いた胸部撮影によって胸部画像を生成し、その胸部画像に基づいて診断を行なうことが義務付けられている。胸部撮影では、技師は、被撮影者一人一人の体に触れて被撮影者のポジショニングを行なう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−229346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術によると、技師等の撮影者は、被撮影者一人一人の体に触れて被撮影者のポジショニングを行なう必要があるので、検査効率が悪かった。
【0005】
また、従来技術によると、被撮影者の撮影体勢が不自然であるので、撮影終了まで撮影体勢を維持するのに被撮影者の負担があった。被撮影者が撮影中に動いて撮影体勢が崩れると、取得される画像の画質が低下してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態の胸部X線撮影装置は、上述した課題を解決するために、X線照射部と、複数のX線検出素子を設けるX線検出部と、前記X線検出部の検出面より後方で保持され、前記X線検出部の左右方向を軸に回動するクランク軸と、被撮影者の各手によって握持可能な左右のハンドル部分を有し、前記クランク軸の回動によって前記被撮影者を背面から前記検出面に案内する形状を有する左右のクランクハンドルと、前記左右のハンドル部分が前記クランク軸より下方にある場合に前記左右のハンドル部分を前記検出面の後方から前方の向きに回動させないように前記クランク軸の回動の係止を行なうと共に、前記係止を解除可能な係止部と、を備えた。
【0007】
本実施形態の胸部X線撮影装置は、上述した課題を解決するために、X線照射部と、複数のX線検出素子を設けるX線検出部と、前記X線検出部の検出面より後方で前記X線検出部に一体として保持され、前記X線検出部の左右方向を軸に回動するクランク軸と、被撮影者の各手によって握持可能な左右のハンドル部分を有する左右のクランクハンドルと、前記左右のハンドル部分が前記クランク軸より下方にある場合に前記左右のハンドル部分を前記検出面の後方から前方の向きに回動させないように前記クランク軸の回動の係止を行なうと共に、前記係止を解除可能な係止部と、を備えた。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1実施形態の胸部X線撮影装置を含むX線診断装置の全体構成を示す側面外観図。
【図2】第1実施形態の胸部X線撮影装置の撮影補助装置の構成を示すための側面外観図。
【図3】第1実施形態の胸部X線撮影装置の撮影補助装置の構成を示すための側面外観図。
【図4】第1実施形態の胸部X線撮影装置の撮影補助装置の構成を示すための側面外観図。
【図5】第1実施形態の胸部X線撮影装置の撮影補助装置の構成を示すための正面外観図。
【図6】第1実施形態の胸部X線撮影装置の撮影補助装置の構成を示すための上面外観図。
【図7】第2実施形態の胸部X線撮影装置を含むX線診断装置の全体構成を示す側面外観図。
【図8】第2実施形態の胸部X線撮影装置の撮影補助装置の構成を示すための側面外観図。
【図9】第2実施形態の胸部X線撮影装置の撮影補助装置の構成を示すための側面外観図。
【図10】第2実施形態の胸部X線撮影装置の撮影補助装置の構成を示すための側面外観図。
【図11】第2実施形態の胸部X線撮影装置の撮影補助装置の構成を示すための正面外観図。
【図12】第2実施形態の胸部X線撮影装置の撮影補助装置の構成を示すための上面外観図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施形態の胸部X線撮影装置を含むX線診断装置について、添付図面を参照して説明する。
【0010】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の胸部X線撮影装置を含むX線診断装置の全体構成を示す側面外観図である。
【0011】
図1は、第1実施形態の胸部X線撮影装置10を含むX線診断装置1を示す。X線診断装置1は、撮影室R1に設置された胸部X線撮影装置10と、操作室R2に設置された撮影制御・画像処理装置20によって構成される。
【0012】
X線診断装置1の胸部X線撮影装置10は、X線照射装置11、X線照射側支持装置12、X線検出装置13、X線検出側支持装置14、撮影台15、X線高電圧装置16、及び撮影補助装置17を備える。
【0013】
X線照射装置11は、X線管装置11a及びX線可動絞り装置11bによって構成される。X線管装置11aは、被撮影者Pに照射するためのX線を発生する。X線可動絞り装置11bは、被撮影者Pに照射するX線の照射範囲を制限する。
【0014】
X線照射側支持装置12は、X線照射装置11を天井から支持する。なお、X線照射側支持装置12は、X線照射装置11を壁面や床面から支持する構成でもよい。X線照射側支持装置12は、X線照射装置11を上下方向、左右方向に移動させる移動調整機構を備える。
【0015】
X線検出装置13は、平面検出器である。X線検出装置13は、X線照射装置11と対向配置され、被撮影者Pの透過X線を検出して、その検出データをディジタル画像データに変換して読み出す。
【0016】
X線検出側支持装置14は、X線検出装置13を床面から支持する。X線検出側支持装置14は、被撮影者Pの撮影部位である胸部に位置決めするために、X線検出装置13を被撮影者Pの胸部位置(身長)に合わせて上下方向に昇降する移動調整機構を備えている。X線照射側支持装置12の移動調整機構と、X線検出側支持装置14の移動調整機構とを用いて、被撮影者Pの胸部をX線照射範囲に位置決めできるように構成されている。
【0017】
撮影台15は、被撮影者Pを載置する。
【0018】
X線高電圧装置16は、X線撮影条件に対応してX線管装置11aの陽極と陰極間に印加する高電圧を発生する機能と、X線管装置11aの陽極と陰極間に流れる電流を制御する機能を備える。
【0019】
撮影補助装置17の構成は、図2乃至図6を用いて後述する。
【0020】
X線診断装置1の撮影制御・画像処理装置20は、画像処理装置21及び操作装置22を備える。
【0021】
画像処理装置21は、胸部X線撮影装置10のX線検出装置13で検出したディジタル画像データに、X線検出装置13の暗電流補正、ゲイン補正等の各種補正処理を施し、この補正処理された画像データにダイナミックレンジ圧縮処理、フィルタ処理等を行って得られた画像データから撮影画像を生成する。
【0022】
操作装置22は、入力装置、表示装置、及び撮影制御装置を備える。入力装置は、撮影条件、撮影部位、患者名、及び撮影や、画像処理に必要な各種のパラメータを入力する。表示装置は、X線画像を表示するCRT(cathode ray tube)や液晶モニタ等を備え、入力装置22によって入力され設定した、撮影に必要なパラメータ等を表示する。撮影制御装置は、操作装置で設定したX線撮影条件及び撮影制御パラメータに基づいて撮影を制御する。
【0023】
図2乃至図4は、第1実施形態の胸部X線撮影装置10の撮影補助装置17の構成を示すための側面外観図である。図5は、第1実施形態の胸部X線撮影装置10の撮影補助装置17の構成を示すための正面外観図である。図6は、第1実施形態の胸部X線撮影装置10の撮影補助装置17の構成を示すための上面外観図である。
【0024】
図2乃至図6に示すように、撮影補助装置17は、クランク軸171、クランクハンドル172、係止部173、グリップ174、バー175及びパット176によって構成される。なお、グリップ174、バー175、及びパット176は、胸部X線撮影装置10に必須の構成要素ではない。
【0025】
クランク軸171は、X線検出装置13の検出面より後方でX線検出装置13に一体として保持され、X線検出装置13の左右方向を軸に回動する。クランク軸171は、1つ備えられてもよいし、左右方向に2つ備えられてもよい。胸部X線撮影装置10では、クランク軸171が左右に2つ備えられるものとして説明する。
【0026】
クランクハンドル172は、左右に2つ設けられる。左右のクランクハンドル172は、被撮影者Pの各手によって握持可能な左右のハンドル部分を有し、クランク軸171の回動によって被撮影者Pを背面からX線検出装置13の検出面に案内する形状を有する。クランク軸171が1つ備えられる場合、左右のクランクハンドル172は、1つのクランク軸171にそれぞれ支持される。
【0027】
クランクハンドル172は、X線診断装置1によって取得される画像に写らない形状とすることが望ましい。しかし、画像に写るクランクハンドル172の部分がアーチファクトであると明確に区別できるのであれば、クランクハンドル172が画像に写る形状であってもよい。
【0028】
係止部173は、左右のクランク軸171に従って左右に設けられる。左右の係止部173は、左右のハンドル部分がクランク軸171より下方にある場合に左右のハンドル部分をX線検出装置13の検出面の後方から前方の向き(向きD2)に回動させないようにクランク軸171の回動の係止を行なうと共に、その係止を解除可能な機構である。係止部173は、例えば、機械式のラチェット機構である。また、係止部173として、クランク軸171の回動によってロッドが伸縮移動する油圧シリンダを採用してもよい。
【0029】
グリップ174は、左右に2つ設けられる。左右のグリップ174は、左右のクランクハンドル172の各ハンドル部分にそれぞれ支持され、被撮影者Pが各手で握るためのものである。左右のグリップ174は、左右のクランクハンドル172の各ハンドル部分に、ハンドル部分に対して回動自在にそれぞれ取り付けられる。また、グリップ174は、握持する被撮影者Pの手の凹凸に合わせて象られた形状を有する。
【0030】
バー175は、左右のクランクハンドル172の間に架設される。バー175は、クランク軸171が2つ備えられる場合に、左右のクランクハンドル172を連動して動作させる。また、バー175を、左右のハンドル部分がクランク軸171より下方にある場合の、X線検出装置13の検出面の後方の位置で被撮影者Pの左右の腰部付近となるように架設してもよい。その場合、被撮影者Pのポジショニングの補助としても使用できる(被撮影者Pの腰部付近の補助)。
【0031】
パット176は、左右に2つ設けられる。左右のパット176は、前記左右のクランクハンドル172の、クランク軸171の回動によって被撮影者Pの左右の肩部付近に接触する箇所にそれぞれ備えられる。
【0032】
次に、撮影補助装置17の動作について説明する。
【0033】
被撮影者Pのポジショニングを開始する際、図2に示すクランクハンドル172の第1位置Q1において技師等の撮影者は、係止部173を用いて向きD2への回動の係止を行なう。そして、撮影台15上に案内された被撮影者Pは、X線検出装置13の検出面に対して正対する。撮影者は、被撮影者Pの身長に合わせてX線検出装置13をX線検出側支持装置14に対して上下方向に動かす。撮影補助装置17は、X線検出装置13と一体として構成されているので、X線検出装置13の上下方向の動きに従って上下方向に動かされる。
【0034】
次いで、撮影台15上の被撮影者Pは、クランクハンドル172を握って、クランク軸171が向きD1に回動するようにクランクハンドル172を回動させる。又は、撮影者は、クランクハンドル172を握って、クランク軸171が向きD1に回動するようにクランクハンドル172を回動させて、クランクハンドル172を被撮影者Pに渡す。すなわち、クランクハンドル172は、図2に示す第1位置Q1から図3に示す位置となる。
【0035】
続けて、被撮影者Pは、左右のクランクハンドル172の各ハンドル部分(又は左右のグリップ174)を各手で握って、クランク軸171が向きD1に回動するようにクランクハンドル172を回動させる。すなわち、クランクハンドル172は、図3に示す位置から図4乃至図6に示す第2位置Q2となる。クランクハンドル172が図3に示す位置から図4乃至図6に示す第2位置Q2に至るまでの間、被撮影者Pの各手がX線検出装置13の検出面の前方から後方に徐々に移動するので、被撮影者Pの前面がX線検出装置13の検出面に徐々に押し付けられる。また、クランクハンドル172が図3に示す位置から図4乃至図6に示す第2位置Q2に至るまでの間、被撮影者Pの各手によってクランクハンドル172が向きD2に徐々に回動するので、クランクハンドル172のパット176が被撮影者Pの肩部付近をX線検出装置13の検出面に徐々に押圧する。
【0036】
なお、図2に示す第1位置Q1から図4乃至図6に示す第2位置Q2までの過程で向きD2への回動の係止を解除する必要がある場合、例えば再ポジショニングの場合、撮影者は、係止部173を用いて向きD2への回動の係止を適宜解除することができる。
【0037】
被撮影者Pのポジショニングが終了すると、図4乃至図6に示す第2位置Q2で、被撮影者Pが左右のクランクハンドル172の各ハンドル部分(又は左右のグリップ174)を各手で握ったまま胸部撮影が行なわれる。撮影が終了すると、撮影者は、係止部173を用いて向きD2への回動の係止を解除する。被撮影者Pは、クランクハンドル172を握って、クランク軸171が向きD2に回動するようにクランクハンドル172を回動させた後、撮影台15上から降りる。すなわち、クランクハンドル172は、図4乃至図6に示す第2位置Q2から図2に示す第1位置Q1に戻る。
【0038】
撮影補助装置17によると、被撮影者Pが自ら、クランクハンドル172を図4乃至図6に示す第2位置Q2までもっていき、ポジショニングを行なうことができる。すなわち、撮影者が個々に被撮影者Pのポジショニングを行なう必要がないので、撮影効率が向上する。
【0039】
また、撮影補助装置17によると、図4乃至図6に示す第2位置Q2のクランクハンドル172はクランク軸171の向きD2には回動しないので、撮影中の被撮影者Pは、ポジショニングされた撮影体勢を容易に維持することができ、被撮影者Pが撮影中に動いてしまうことが避けられるので、取得される画像の画質低下を避けることができる。
【0040】
さらに、パット176を備える撮影補助装置17によると、クランクハンドル172が図4乃至図6に示す第2位置Q2にある場合、被撮影者Pの肩甲骨を開いてより好適な撮影体勢を維持できる。
【0041】
(第2実施形態)
図7は、第2実施形態の胸部X線撮影装置を含むX線診断装置の全体構成を示す側面外観図である。
【0042】
図7は、第2実施形態の胸部X線撮影装置10Aを含むX線診断装置1Aを示す。X線診断装置1Aは、撮影室R1に設置された胸部X線撮影装置10Aと、操作室R2に設置された撮影制御・画像処理装置20によって構成される。
【0043】
X線診断装置1Aの胸部X線撮影装置10Aは、X線照射装置11、X線照射側支持装置12、X線検出装置13、X線検出側支持装置14、撮影台15、X線高電圧装置16、及び撮影補助装置27を備える。
【0044】
撮影補助装置27の構成は、図8乃至図12を用いて後述する。
【0045】
なお、図7に示すX線診断装置1Aにおいて、図1に示すX線診断装置1と同一部材には同一符号を付して説明を省略する。
【0046】
図8乃至図10は、第2実施形態の胸部X線撮影装置10Aの撮影補助装置27の構成を示すための側面外観図である。図11は、第2実施形態の胸部X線撮影装置10Aの撮影補助装置27の構成を示すための正面外観図である。図12は、第2実施形態の胸部X線撮影装置10Aの撮影補助装置27の構成を示すための上面外観図である。
【0047】
図8乃至図12に示すように、撮影補助装置27は、クランク軸271、クランクハンドル272、係止部273、グリップ274、ベルト(ゴムバンド)275、及び自動ロック式巻取部276によって構成される。なお、グリップ274、ベルト275、及び自動ロック式巻取部276は、胸部X線撮影装置10Aに必須の構成要素ではない。
【0048】
クランク軸271は、X線検出装置13の検出面より後方でX線検出装置13に一体として保持され、左右方向を軸に回動する。クランク軸271は、1つ備えられてもよいし、左右方向に2つ備えられてもよい。胸部X線撮影装置10Aでは、クランク軸271が左右に2つ備えられるものとして説明する。
【0049】
クランクハンドル272は、左右に2つ備えられる。左右のクランクハンドル272は、被撮影者Pの各手によって握持可能な左右のハンドル部分を有する。クランク軸271が1つ備えられる場合、左右のクランクハンドル272は、1つのクランク軸271にそれぞれ支持される。
【0050】
係止部273は、左右のクランク軸271に従って左右に設けられる。左右の係止部273は、左右のハンドル部分がクランク軸271より下方にある場合に左右のハンドル部分をX線検出装置13の検出面の後方から前方の向きに回動させないようにクランク軸271の回動の係止を行なうと共に、その係止をそれぞれ解除可能な機構である。係止部273は、例えば、機械式のラチェット機構である。また、係止部273として、クランク軸271の回動によってロッドが伸縮移動する油圧シリンダを採用してもよい。
【0051】
グリップ274は、左右に2つ備えられる。左右のグリップ274は、左右のクランクハンドル272の各ハンドル部分にそれぞれ支持され、被撮影者Pが各手で握るためのものである。左右のグリップ274は、左右のクランクハンドル272の各ハンドル部分に、ハンドル部分に対して回動自在にそれぞれ取り付けられる。また、グリップ274は、握持する被撮影者Pの手の凹凸に合わせて象られた形状を有する。
【0052】
ベルト275は、左右に2つ設けられる。左右のベルト275は、一端が左右のクランクハンドル272にそれぞれ支持される。
【0053】
自動ロック式巻取部276は、左右に2つ備えられる。左右の自動ロック式巻取部276は、X線検出装置13の上部側(被撮影者Pの肩部より高い位置)でX線検出装置13に一体として保持される。左右のベルト275をそれぞれ引き出した左右の自動ロック式巻取部276は、任意の位置で左右の自動的にベルト275の引き出しをそれぞれロック可能である。左右のベルト275は、X線検出装置13の検出面の上部側(被撮影者Pの左右の肩部付近)を介して、左右のクランクハンドル272と左右の自動ロック式巻取部276とをそれぞれ接続する。
【0054】
次に、撮影補助装置27の動作について説明する。
【0055】
被撮影者Pのポジショニングを開始する際、図8に示すクランクハンドル272の第1位置Q1において技師等の撮影者は、係止部273を用いて向きD2への回動の係止を行なう。そして、撮影台15上に案内された被撮影者Pは、左右のベルト275とX線検出装置13の間に内側から各手をそれぞれ通し、X線検出装置13の検出面に対して正対する。この時、自動ロック式巻取部276は、自動的にベルト275の引き出しをロックする。撮影者は、被撮影者Pの身長に合わせてX線検出装置13をX線検出側支持装置14に対して上下方向に動かす。撮影補助装置17は、X線検出装置13と一体として構成されているので、X線検出装置13の上下方向の動きに従って上下方向に動かされる。
【0056】
次いで、撮影台15上の被撮影者Pは、左右のクランクハンドル272の各ハンドル部分(又は左右のグリップ274)を各手で握って、クランク軸271が向きD1に回動するように左右のクランクハンドル272を回動させる。すなわち、クランクハンドル272は、図8に示す第1位置Q1から図9に示す位置となる。
【0057】
続けて、被撮影者Pは、左右のクランクハンドル272の各ハンドル部分(又は左右のグリップ274)を各手で握ったまま、クランク軸271が向きD1に回動するようにクランクハンドル272を回動させる。すなわち、クランクハンドル272は、図9に示す位置から図10乃至図12に示す第2位置Q2となる。クランクハンドル272が図9に示す位置から図10乃至図12に示す第2位置Q2に至るまでの間、被撮影者Pの各手がX線検出装置13の検出面の前方から後方に徐々に移動するので、被撮影者Pの前面がX線検出装置13の検出面に徐々に押し付けられる。また、クランクハンドル272が図9に示す位置から図10乃至図12に示す第2位置Q2に至るまでの間、被撮影者Pの各手によってクランクハンドル272が向きD2に徐々に回動するので、引き出しがロックされたベルト275が被撮影者Pの肩部付近をX線検出装置13の検出面に徐々に押圧する。
【0058】
なお、図8に示す第1位置Q1から図10乃至図12に示す第2位置Q2までの過程で向きD2への回動の係止を解除する必要がある場合、例えば再ポジショニングの場合、撮影者は、係止部273を用いて向きD2への回動の係止を適宜解除することができる。
【0059】
被撮影者Pのポジショニングが終了すると、図10乃至図12に示す第2位置Q2で、被撮影者Pが左右のクランクハンドル272の各ハンドル部分(又は左右のグリップ274)を各手で握ったまま胸部撮影が行なわれる。撮影が終了すると、撮影者は、係止部273を用いて向きD2への回動の係止を解除する。被撮影者Pは、クランク軸271が向きD2に回動するように、握っている左右のクランクハンドル272の各ハンドル部分(又は左右のグリップ274)を回動させた後、撮影台15上から降りる。すなわち、クランクハンドル272は、図10乃至図12に示す第2位置Q2から図8に示す第1位置Q1に戻る。
【0060】
撮影補助装置27によると、被撮影者Pが自ら、クランクハンドル272を図10乃至図12に示す第2位置Q2までもっていき、ポジショニングを行なうことができる。すなわち、撮影者が個々に被撮影者Pのポジショニングを行なう必要がないので、撮影効率が向上する。
【0061】
また、撮影補助装置27によると、図10乃至図12に示す第2位置Q2のクランクハンドル272はクランク軸271の向きD2には回動しないので、撮影中の被撮影者Pは、ポジショニングされた撮影体勢を容易に維持することができ、被撮影者Pが撮影中に動いてしまうことが避けられるので、取得される画像の画質低下を避けることができる。
【0062】
さらに、ベルト275及び自動ロック式巻取部276を備える撮影補助装置27によると、クランクハンドル272が図10乃至図12に示す第2位置Q2にある場合、被撮影者Pの肩甲骨を開いてより好適な撮影体勢を維持できる。
【0063】
本実施形態の胸部X線撮影装置1,1Aによると、胸部撮影時の被撮影者Pの負担を軽減すると共に、画像の画質の低下を避けることができる。
【0064】
以上、本発明に係る胸部X線撮影装置を実施形態に基づき説明してきたが、本発明に係る胸部X線撮影装置の具体的な構成については、本実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載の発明の要旨を逸脱しない限り設計の変更や追加等は許容される。例えば、本発明に係る胸部X線撮影装置を実施形態ではデジタルシステムとして説明したが、本発明に係る胸部X線撮影装置をアナログシステムとすることもできる。
【符号の説明】
【0065】
1,1A X線診断装置
10,10A 胸部X線撮影装置
11 X線照射装置
13 X線検出装置
17,27 撮影補助装置
20 撮影制御・画像処理装置
171,271 クランク軸
172,272 クランクハンドル
173,273 係止部
174,274 グリップ
175 バー
176 パット
275 ベルト
276 自動ロック式巻取部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線照射部と、
複数のX線検出素子を設けるX線検出部と、
前記X線検出部の検出面より後方で保持され、前記X線検出部の左右方向を軸に回動するクランク軸と、
被撮影者の各手によって握持可能な左右のハンドル部分を有し、前記クランク軸の回動によって前記被撮影者を背面から前記検出面に案内する形状を有する左右のクランクハンドルと、
前記左右のハンドル部分が前記クランク軸より下方にある場合に前記左右のハンドル部分を前記検出面の後方から前方の向きに回動させないように前記クランク軸の回動の係止を行なうと共に、前記係止を解除可能な係止部と、
を備えたことを特徴とする胸部X線撮影装置。
【請求項2】
前記クランク軸は、前記検出面より後方で前記X線検出部に一体として保持されたことを特徴とする請求項1に記載の胸部X線撮影装置。
【請求項3】
前記左右のクランクハンドルの、前記クランク軸の回動によって前記被撮影者の左右の肩部付近に接触する箇所に左右のパットをそれぞれ備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の胸部X線撮影装置。
【請求項4】
前記左右のクランクハンドル間にバーを架設したことを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一項に記載の胸部X線撮影装置。
【請求項5】
前記バーを、前記左右のハンドル部分が前記クランク軸より下方にある場合の前記検出面の後方の位置で前記被撮影者の左右の腰部付近となるように架設したことを特徴とする請求項4に記載の胸部X線撮影装置。
【請求項6】
X線照射部と、
複数のX線検出素子を設けるX線検出部と、
前記X線検出部の検出面より後方で前記X線検出部に一体として保持され、前記X線検出部の左右方向を軸に回動するクランク軸と、
被撮影者の各手によって握持可能な左右のハンドル部分を有する左右のクランクハンドルと、
前記左右のハンドル部分が前記クランク軸より下方にある場合に前記左右のハンドル部分を前記検出面の後方から前方の向きに回動させないように前記クランク軸の回動の係止を行なうと共に、前記係止を解除可能な係止部と、
を備えたことを特徴とする胸部X線撮影装置。
【請求項7】
前記クランク軸は、前記検出面より後方で前記X線検出部に一体として保持されたことを特徴とする請求項6に記載の胸部X線撮影装置。
【請求項8】
一端が前記左右のクランクハンドルにそれぞれ支持される左右のベルトと、
前記被撮影者の肩部より高い位置で前記X線検出部に一体として保持され、任意の位置で自動的に前記左右のベルトの引き出しをそれぞれロック可能である左右のロック式巻取部と、をさらに備え、
前記左右のベルトは、前記検出面の上部側を介して、前記左右のクランクハンドルと前記左右の自動ロック式巻取部とをそれぞれ接続することを特徴とする請求項6又は7に記載の胸部X線撮影装置。
【請求項9】
前記左右のハンドル部分に、前記左右のハンドル部分に対して回動自在にそれぞれ取り付けられる左右のグリップをさらに備えたことを特徴とする請求項1乃至8のうちいずれか一項に記載の胸部X線撮影装置。
【請求項10】
前記グリップは、握持する被撮影者Pの手の凹凸に合わせて象られた形状を有することを特徴とする請求項9に記載の胸部X線撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−40104(P2012−40104A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182562(P2010−182562)
【出願日】平成22年8月17日(2010.8.17)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】