能動免疫療法のためのTh1ワクチン接種プライミング
本開示には、個体を同種異系抗原でプライミングして、Th1表現型の、抗同種異系の記憶細胞を高い力価で生じさせるための組成物および方法が記載されている。本発明は、ワクチン組成物、および能動免疫療法においてこのワクチン組成物を使用するための方法を含む。このワクチン組成物は同種異系の活性化Th1記憶細胞を含む。この組成物はまた、1つまたはそれより多い疾患関連抗原を含み得る。この方法は、このワクチン組成物を投与して、正常な個体、または疾患にかかりやすい患者もしくは微小残存病変を有する患者にTh1フットプリントを提供することを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はワクチンの分野に関連し、そしてより特に治療ワクチン方法に関連する。詳しくは、本発明は、Th1記憶を増加させるためにプライミング(priming)するための同種異系の細胞を含む薬学的組成物の使用のための方法に関連し、この記憶は後で活性化され得、そしてがんおよび感染性疾患ならびに他の加齢の疾患の能動免疫療法のためのアジュバントとして役立つ。
【背景技術】
【0002】
免疫系の力を利用し、慢性感染性疾患またはがんを処置することは、免疫療法の主要な目的である。ワクチン接種(別名、能動免疫療法)方法は、免疫系を活性化して侵入している病原体を特異的に認識させそしてこの病原体から保護するように設計される。200年より永くにわたって、能動免疫療法のアプローチは、痘瘡、狂犬病、腸チフス、コレラ、悪疫(plague)、麻疹、水痘、流行性耳下腺炎、灰白髄炎、B型肝炎、ならびに破傷風毒素およびジフテリア毒素を含む多数の感染性疾患を予防するため利用されてきた。
【0003】
能動免疫療法の概念は現在、存在する腫瘍を処置するまたは腫瘍の再発を予防する意図で治療がんワクチンを開発するために応用されており、そして慢性ウイルス感染の処置に応用されている。しかしながら、存在する能動免疫療法の技術は、HIV/AIDS、C型肝炎およびがんのような、標的である現代の疾患の多くから保護することに成功していない。このことは、現行のワクチン接種技術は、正しい型の免疫応答を誘発し得ないことに部分的に起因している。
【0004】
感染または他の抗原チャレンジに対して生成された免疫応答の型は、応答に関係する、ヘルパーT(Th)細胞のサブセットによって一般に区別され得る。免疫応答は大まかに2つの型であるTh1およびTh2に分類され得る。Th1免疫の活性化は、ウイルスのような細胞内感染物について最適化され、そして感染した細胞を溶解し得る、ナチュラルキラー(NK)細胞および細胞溶解性T細胞(CTL)の活性化を含み、他方、Th2免疫応答は体液性(抗体)応答について最適化される。Th1免疫の活性化はがん治療のために最も強く望まれ、そしてTh2免疫応答は特異的な抗体の分泌に対してより指向され、そして腫瘍治療において相対的に価値がより少ない。先行技術のワクチン組成物は、Th2応答または体液性免疫応答を誘発することに特化している。これらの応答はがんおよび大部分のウイルス性疾患に対して有効ではない。
【0005】
がんの根絶および寛解の維持はTh1免疫の活性化を必要とする。従って、能動免疫療法の目的の1つは、内在するTh2応答をTh1応答へと偏向させ得る方法を開発することである。しかしながら、腫瘍に対して潜在的に有効なTh1免疫応答を発揮する、またはTh1免疫応答を発揮するように治療によって免疫されているいくらかの患者において、腫瘍は影響を受けずに依然として増殖し続ける。
【0006】
Th1免疫患者におけるこのような有効性の欠如および腫瘍に対して生得の免疫応答が有効でないことは、腫瘍が免疫の攻撃を回避するための種々の戦略を利用する能力に起因するとされている。腫瘍によって利用されるこのようなイミュノアボイダンス(immunoavoidance)機構は免疫系を寛容にし、そして能動免疫療法による抗腫瘍エフェクター機構の特異的なアップレギュレーションの後でさえ腫瘍が免疫の監視に妨げられずに増殖することを可能にする。従って、能動免疫療法の戦略は免疫調節の作用機構に加えて、腫瘍のイミュノアボイダンス機構に打ち勝つ戦略を必要とする。
【0007】
腫瘍に対する自己寛容の確立は、自己免疫疾患を予防するように通常は利用される存在する自然免疫機構に関連すると考えられる。通常は有益なこの効果が腫瘍の免疫回避を担い得ることは、自己免疫を妨げる寛容機構の多くが免疫破壊を妨げるために腫瘍によって利用されるものと同じである、という観察によって支持される。「危険仮説(danger hypothesis)」は、免疫系は主として非自己から自己を区別するものではないが、代わりに、抗原が免疫系に呈示される状況に依存してその抗原を認識しそして抗原に応答するように主に適応されていることを提案する。
【0008】
アジュバントの使用は久しくワクチン組成物中の抗原に対する免疫応答に影響を与えるための戦略である。アルミニウム塩、およびスクアレンの水中油乳剤(MF59)は、ヒトワクチンにおいて最も広く使用されるアジュバントである。しかしながら、これらのアジュバントは抗原に対するTh2応答を優位に促進し、そして血清抗体の力価を高めることにおいて有効ではあるが、細胞免疫応答を有意に誘発しない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示には、個体を同種異系抗原でプライミングして、Th1表現型の、抗同種異系の記憶細胞を高い力価で生じさせるための組成物および方法が記載されている。その次に、プライミングされた、感染性疾患またはがんを有する個体に、アジュバントとして同じ同種異系抗原を用いた能動免疫療法が施され得る。プライミングされた個体における同種異系抗原の導入は、強力なアジュバント効果を有するTh1サイトカインの著しいバースト(burst)を提供する。プライミング方法は中高年の個体が免疫の健康を維持する際に特に有益である。なぜなら個体は年齢が高まるにつれて、Th1細胞の数がより低くなる傾向があるからである。
【0010】
本明細書において記載された方法は、Th1サイトカインを産生する生きている同種異系の細胞の投与によって、患者において循環中のTh1細胞の数(「Th1フットプリント」)を増加させる手段を提供する。同種異系の細胞は、免疫細胞によって処理(process)されそして抗同種異系の免疫の発揮へと導く同種異系抗原を含む。同種異系の細胞がTh1サイトカインを産生するように調製されるとき、このサイトカインは、同種異系抗原に対する免疫応答を引き起こしTh1の方向に向けるアジュバントとして働き、従って、患者のTh1フットプリントを増加させる。Th1サイトカインを産生する同種異系の細胞を多数回注射することは、このTh1フットプリントを引き上げる(boost)のに役立つ。
【0011】
プライミングワクチン接種は、一般に中高年の患者のような、疾患に対する高い感受性を有する患者に施される。プライミングワクチン接種はまた、がんを有しているが寛解の状態にありそして微小残存病変を有し得るが腫瘍の完全なチャレンジは有しないかもしれない患者に施され得る。プライミングによって生成したTh1フットプリントは、将来においていつでも、追加の抗原チャレンジの注射によって、Th1方向に向けるサイトカインを産生するように患者の免疫系を活性化し得る。言い換えれば、この患者の免疫系はプライミングされており、そして待機モード(standby mode)の状態にある。従って、プライミングされた患者が疾患を発症した場合、同種異系の細胞を含むワクチン組成物は単独でまたはこの疾患からの抗原と組み合わせて患者に投与され得る。Th1フットプリントを生成するための患者のこのプライミングに続く(flowed)、能動免疫療法は、免疫系に、より効果的に治療応答を生じさせる(mount)。存在する疾患を有する患者はまた、能動免疫療法に先立ってプライミングされ得る。
【0012】
1つの局面において、本開示は、疾患に対するワクチン接種を患者に行う方法を含む。この方法は、この患者に同種異系の活性化Th1記憶細胞のプライミング組成物を投与してTh1フットプリントを提供することを含み、ここでは、このプライミング組成物は、この患者がその疾患の症状を示していないときに投与される。
【0013】
もう1つ局面において、本開示は、患者における疾患の再発を減らす方法を含む。この方法は、同種異系の活性化Th1記憶細胞および疾患関連抗原の、プライミング組成物を患者に投与することを含む。
【0014】
さらなる局面において、本開示は、患者にTh1フットプリントを生じさせて、免疫療法を活性化するためのアジュバントとして役立たせる方法を含む。この方法は、同種異系の活性化Th1記憶細胞を含むプライミング組成物を投与することを含み、ここでは、このプライミング組成物は、患者が疾患の症状を示していないときに投与される。
【0015】
さらにもう1つの局面において、本開示は、患者の疾患を処置するための治療組成物を含む。この組成物は同種異系の活性化Th1記憶細胞を含み、ここでは、この治療組成物は、投与すると、患者において循環中のTh1細胞の数を増加させる。
【0016】
さらにもう1つの局面において、本開示は、処置後の、循環中のTh1細胞の数を増加させることによって疾患を処置するための医薬の製造における、同種異系のTh1記憶細胞を含有する組成物の使用を含む。
【0017】
さらにもう1つの局面において、本開示は、腫瘍または病原体に対する、患者のためのワクチン組成物キットを含む。このキットはプライミング組成物および活性化組成物を含み、ここでは、このプライミング組成物およびこの活性化組成物は両方とも、同じ源からの、同種異系の活性化Th1記憶細胞を含有し、そしてここでは、このプライミング組成物は、投与すると、患者において循環中のTh1細胞の数を増加させる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1A】図1Aは、アジュバントなしでのBCL1に対する免疫応答を示す棒グラフである。
【図1B】図1Bは、アジュバントありでのBCL1に対する免疫応答を示す棒グラフである。
【図2A】図2Aは、0日目から6日目までの、CD45RB、CD62L、およびCD44における表現型推移のプロットを示す。
【図2B】図2Bは、0日目、6日目、および活性化された際の、培養状態に置いているCD4+細胞中のCD40Lエフェクター分子の発現における、表現型の変化のプロットを示す。
【図2C】図2Cは、0日目、6日目、および活性化された際の、培養状態に置いているCD4+細胞中のCD25の発現における、表現型の変化のプロットを示す。
【図3A】図3Aは、CD3/CD28架橋Th1記憶細胞のサイトカイン産生の棒グラフである。
【図3B】図3Bは、CD3/CD28架橋Th1記憶細胞の免疫原性の棒グラフである。
【図4】図4は、同種異系の活性化Th1記憶細胞の保護(protective)ワクチン接種能力、および腫瘍チャレンジに対する応答を示すプロットである。
【図5】図5は、同種異系の活性化Th1記憶細胞の治療ワクチン接種能力を示すプロットである。
【図6】図6は、プライミングおよび治療ブースターからの結果を示すプロットである。
【図7A】図7Aは、クライオアブレーション(cryoablation)された全身性腫瘍モデルにおける応答を示すプロットである。
【図7B】図7Bは、クライオアブレーションされた固形腫瘍モデルにおける応答を示すプロットである。
【図7C】図7Cは、反対側(右側)の固形腫瘍の腫瘍増殖における応答を示すプロットである。
【図7D】図7Dは、全身性腫瘍モデルの生存を示すプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、プライミングワクチン組成物、および能動免疫療法においてこのプライミングワクチン組成物を使用するための方法を含む。好ましくは、このプライミングワクチン組成物は、注射時に活性化される同種異系のTh1記憶細胞を含む。この方法は、このプライミングワクチン組成物を投与して、正常な個体、または疾患にかかりやすい患者もしくは微小残存病変を有する患者にTh1フットプリントを提供することを含む。その次に、これらの個体におけるそのTh1フットプリントは、疾患の発症または再発のときに、同種異系のTh1記憶細胞を含む、活性化ワクチン組成物を投与することによる能動免疫療法によって動員され得る。この活性化ワクチン組成物はまた、疾患関連抗原を含み得る。この活性化ワクチン組成物は、患者において治療Th1免疫を誘発するように使用され得、他方、この組成物はまた、疾患病原体および腫瘍の、イミュノアボイダンス機構に打ち勝つための手段を提供し得る。患者のこのようなプライミングは、Th1免疫の方向に向けるためのインサイチューの強力なアジュバントを有利に作り出す。従って、この患者が病原体またはがんチャレンジにさらされるとき、免疫系は、よりタイミングの良いおよびより有効な応答を生じさせ得る。
【0020】
本発明は、生きている免疫細胞を含有するプライミングワクチン組成物を含み、その場合少なくとも一部はT細胞である。このT細胞は、好ましくは、Th1表現型(IFN−γを産生しそしてIL−4を産生しないCD4+ T細胞)の記憶T細胞(CD45RO+,CD62LLo)であり、そして本明細書において「記憶細胞」または「Th1記憶細胞(memory Th1 cells)」と呼ばれる。このTh1記憶細胞(memory Th1 cells)は処方および患者への導入の時に活性化される。この活性化の好ましい方法は、このT細胞上でのCD3表面分子およびCD28表面分子の架橋による。この活性化記憶T細胞は、好ましくは、活性化される際にCD40Lを発現し、そして多量の炎症性サイトカイン(例えば、IFN−γ、GM−CSF、およびTNF−α)を産生する。この活性化Th1記憶細胞は、好ましくは、患者に対して同種異系である。いくつかの実施態様において、このプライミング組成物はまた、疾患関連抗原物質を含み得る。
【0021】
活性化Th1記憶細胞を有するこの組成物は、予防目的もしくは治療目的または両方の目的のために使用され得る。本明細書において記載されたこのプライミング組成物は、疾患の症状を少しも示していない個体に投与される場合、特に好ましい。より一層好ましいのは、症状を少しも示していないが疾患にかかりやすい患者にこのプライミング組成物を投与することである。このプライミング組成物はまた、疾患の早い段階における患者、またはがん患者の場合において、寛解の状態にある患者もしくは微小残存病変を有する患者に投与され得る。症状を示している患者へのこの組成物の適用もまた、本発明の範囲内にある。この組成物は、ワクチンについて従来用いられるまたは推奨される全ての経路を経由して投与され得、この経路は非経口経路、皮内経路、筋肉内経路、皮下経路、または粘膜経路を含む。その上、この組成物は骨内、鞘内、腹膜内または板内(intralaminally)に投与され得る。ある実施態様において、この組成物はまた、結節内(intranodally)または腫瘍内(intratumorally)に投与され得る。
【0022】
本発明の、プライミングワクチン接種の薬学的組成物は、生きている活性化免疫細胞を含み、それに関して少なくとも一部はT細胞である。この組成物はまた、疾患関連抗原を含み得る。疾患関連抗原は、本明細書において言及されるように、疾患を引き起こす病原体に関連する抗原、腫瘍からの細胞もしくは溶解産物、または疾患に関連する他の抗原を含む。本発明の、プライミングワクチンのこの薬学的組成物において使用される、活性化Th1記憶細胞は、好ましくは、正常なドナーの血液に由来する。本発明における使用に適した細胞の処理および生産のための好ましい方法は、米国特許第7,435,592号および米国特許第7,402,431号ならびに公開された係属中の米国特許出願第2005/0191291号にHar−Noyによって記載され、これらの全体は本明細書において参考として援用される。
【0023】
ワクチン組成物において使用されるTh1記憶細胞の数は変わり得、そしてこの数はまた投与経路に依存し得る。プライミング組成物および活性化組成物は一般に約1×106個と約1×1010個との間の細胞を有する。好ましくは、これらの組成物は、これらの組成物が皮内または腫瘍内に投与される場合、約1×106個と約1×108個との間の細胞を有し、これらの組成物が腹膜内、骨内、または鞘内に投与される場合、約1×107個と約1×109個との間の細胞を有し、そしてこれらの組成物が静脈内に投与される場合、約1×108個と約1×1010個との間の細胞を有する。これらの範囲外のTh1記憶細胞を有する組成物もまた本発明の範囲内にある。
【0024】
同種異系のTh1記憶細胞を含む組成物でプライミングされている患者は、一般に抗同種異系抗原免疫を生じる。その後の、同種異系の細胞の注射は、抗同種異系抗原の細胞のプールを活性化し得、この細胞のプールは免疫アボイダンス(avoidance)機構を無効にするために必要な炎症性サイトカインを放出し得る。
【0025】
いくつかの実施態様において、プライミングワクチン組成物は、疾患にかかりやすい患者に投与され得る。この疾患は、中高年の患者においてよく生じる疾患であり得る。このプライミングワクチン組成物は、がんにかかりやすい患者、または感染性疾患(例えばHIV/AIDS、B型肝炎、C型肝炎、ヘルペス(herpes)、結核およびマラリア)にかかりやすい患者について有効であり得る。このプライミングワクチン組成物がこれらの患者に投与されるとき、それらの患者は抗同種異系抗原免疫を生じる。これらの患者の免疫系は、必要なときに活性化され得るTh1フットプリントを有し得る。言い換えれば、この患者の免疫系は待機モードの状態にあり、そして抗原チャレンジに対する、より有効なTh1応答のためにプライミングされている。この患者が特定の疾患の症状を生じるとき、以下に記載されるような活性化ワクチン組成物が投与され得る。
【0026】
いくつかの実施態様において、プライミングワクチン接種は、がんのような疾患をすでに有しているが寛解の状態にある患者に施され得る。寛解の状態にある患者は微小残存病変(MRD)をときどき有し得る。MRDの場合には、患者はがん細胞を依然として有しうるが、量において、この細胞は臨床的に症候的ではない。時間が過ぎると、このがん細胞は増殖し得、そしてその疾患の再発へと導き得る。活性化Th1記憶細胞、および初期のがんの細胞からの1つまたはそれより多い抗原を含むプライミングワクチン接種は、寛解の状態にある患者に施され得てTh1フットプリントを作り出し得る。この患者が再発のしるしを示すとき、活性化ワクチン組成物は投与され得、この組成物はこの活性化Th1記憶細胞、および1つまたはそれより多い疾患関連抗原を含む。この患者は前にプライミングされたので、内在する抗同種異系抗原記憶はすぐに応答を生じさせ得て、本格的な抗原チャレンジとより効果的に戦い得る。
【0027】
本発明に従うプライミングワクチン組成物は、寛解の状態にある患者に投与される場合、ただ1つの病原体またはがんに対する免疫化を意図した組成物(すなわち、この組成物はただ1つの病原体またはがんからの、1つまたはそれより多い抗原を含有する)であり得るか、またはそうでなければ、この組成物は、いくつかの異なる病原体またはがんに対する免疫化を意図した組成物であり得る(それゆえ、その組成物はワクチン組合せ物と言及される)。
【0028】
活性化Th1記憶細胞のアジュバント作用は、活性化Th1細胞および疾患関連抗原が投与前に組み合わせられる場合、得られ得る。あるいは、この活性化Th1記憶細胞は、この(複数の)疾患関連抗原と別に投与される。好ましくは、この活性化Th1記憶細胞は、患者内への投与の前にこの疾患関連抗原と組み合わせられる。
【0029】
腫瘍および疾患生物が免疫破壊を回避する能力を、無効にし得る炎症性の環境を維持するために、単独のまたは抗原と共に処方された活性化Th1記憶細胞の、さらなる複数のブースター組成物が投与され得る。これらのブースター組成物は、好ましくは、少なくとも3日から7日離して投与され(made)得、そしてより好ましくは、7日から14日離して投与され得る。必要とされる場合、さらなる複数のブースター組成物が月基準または年基準でこの患者に投与され得る。
【0030】
上記薬学的組成物の抗原成分は、1つまたはそれより多い疾患関連抗原を含む。どの抗原源も処方において使用され得る。例えば、生きている細胞または生物はこれらの抗原の源となり(source)得、この源となる物質(source material)は放射線照射(または他の不活化方法)で不活化され得、この源となる物質は細胞全体もしくは生物全体、またはそれらからの溶解産物として使用され得る。特に、腫瘍細胞または腫瘍細胞溶解産物は、これらの抗原のための、細胞源物質として役立ち得る。この細胞源物質は、自己の細胞源もしくは同種異系の細胞源、または細胞系統に由来し得る。抗原源は2009年5月1日に出願された米国特許出願第12/434,168号において記載され、この出願は本明細書において参考として援用される。
【0031】
上記の患者が特定の疾患の症状を生じるとき、活性化Th1記憶細胞、および1つまたはそれより多い源の疾患関連抗原を有する活性化ワクチン組成物がこの患者に投与される。この患者の免疫系は活性化され得て、完全な規模のTh1応答をすぐに生み出し得る。そしてこのように、この抗原に対する、より有効な応答が、この患者にすでにある抗同種異系抗原免疫に起因して生じ得る。
【0032】
活性化ワクチン組成物は一般に、本明細書においてプライミングワクチン組成物について記載されるような、同種異系の活性化Th1記憶細胞を含む。この活性化組成物中の、患者に投与されるこの同種異系のTh1記憶細胞は、好ましくは、このプライミング組成物において使用されるその同種異系のTh1記憶細胞と同じ源からの、細胞である。患者に投与される同種異系の活性化Th1記憶細胞の数は、このプライミング組成物中の、投与される同種異系の細胞の数と、ほぼ同じであり得る。しかし、より多いまたはより少ない量の細胞であっても、活性化組成物における細胞の使用は本発明の範囲内にある。活性化ワクチン組成物はまた、本明細書において記載されるような疾患関連抗原を含み得る。この同種異系のTh1細胞およびこの疾患関連抗原は、1つの活性化ワクチン組成物として、一緒に投与され得る。あるいは、この同種異系のTh1細胞およびこの疾患関連抗原は、別々の組成物として投与され得る。
【実施例】
【0033】
マウス−−5から6週齢の雌Balb/c(H−2d/d)および雄C57BL/6(H−2b/b)のマウスをHebrew University−Hadassah Medical School Animal Facility,Jerusalem,Israelから購入した。特定病原体未感染(SPF)条件下ですべてのマウスを維持し、そして酸性化した水および食餌を自由に与えた。本研究はHebrew University Medical SchoolのAnimal Ethical Committeeにより承認された。実験に配置された時、全てのマウスは6から8週齢であった。
【0034】
BCL1腫瘍モデル−−BCL1はBalb/cが起源の自然発生B細胞白血病/リンパ腫である。Balb/cレシピエント内で連続継代することにより、このBCL1腫瘍系統をインビボで維持させる。これらの実験では、尾静脈を介して、0日目に、100%のこれらのマウスにおいて致死的である2000個のBCL1細胞を、動物に静脈内注入した。いくつかの実験では、1×104個のBCL1をBalb/cマウスの脇腹に皮下移植した。BCL1は、この設定で、リンパ腫/プラズマ細胞腫に似る、速やかに増殖する固形の腫瘍を形成する。
【0035】
同種異系のTh1記憶細胞の調製−−同種異系のTh1記憶細胞を調製した。手短に言えば、CD4+細胞を雄のC57BL/6の脾臓から単離し、ビーズ:CD4細胞の初期比が3:1の、抗CD3および抗CD28コーティングを施した常磁性ビーズ(CD3/CD28 T細胞Expanderビーズ,Dynal/Invitrogen)と、20IU/mLの組換えマウス(rm)IL−2、20ng/mL のrmIL−7、10ng/mLのrmIL−12(Peprotech,New Jersey)および10μg/mLの抗マウスIL−4 mAb(Becton Dickenson)とともに、10%のFBSと、ペニシリン−ストレプトマイシン−グルタミンと、可欠アミノ酸(NEAA)(Biological Industries,Israel)と、3.3mMのN−アセチルシステイン(NAC;Sigma)とを含むRPMI 1640媒体(完全媒体)の中で、6日間培養した。6日間培養した後、これらのCD4細胞を採取し、物理的な破壊および磁石上の通過によりビーズから外した。これらの細胞を新鮮なまま使用したか、または将来の使用のために液体窒素の中で保存した。使用に先立って、完全媒体の中で、抗CD3/抗CD28コーティングを施したナノビーズとともに、4時間インキュベートすることにより、これらの細胞を活性化した。
【0036】
ワクチン接種−−0.1mlのHBSSまたは完全媒体に懸濁したワクチン組成物をマウスに接種した。接種は、交互に足の肉趾の中、または毛をそった脇腹の皮膚の層の中のどちらかに行った。
【0037】
BCL1腫瘍抗原の調製−−BCL1溶解産物、および放射線照射されたBCL1細胞を腫瘍抗原源として使用した。2mLのHBSSに懸濁し、凍結(−80℃の冷凍庫の中)−融解(37℃の水槽)を3回繰り返すことで溶解した、1×107個のBCL1細胞から複数バッチ分のBCL1溶解産物を得た。トリパンブルー染色を利用し、顕微鏡で全ての細胞が破壊されていることを確認した。溶解産物を、確実に均質な溶液にするためによく混合し、別々の0.2mlの用量に分けた。これら用量のものを、使用する前に−80℃で保存した。新鮮なBCL1細胞に20Gyで放射線照射し、処置して1時間以内に使用した。
【0038】
モノクローナル抗体−−次のモノクローナル抗体(mAb)を表面表現型分析(phenotyping)に使用した:抗mCD4−PerCP−Cy5(IgG2a);アイソタイプの対照であるラットIgG2a−PerCP−Cy5.5;抗mCD62L−APC(IgG2a);アイソタイプの対照であるラットIgG2a−APC;抗mCD45RB−PE(IgG2a);アイソタイプの対照であるラットIgG2a−PE;抗mCD8a−FITC(IgG2a);アイソタイプの対照であるラットIgG2a−FITC;抗mCD44−FITC(IgG2b);アイソタイプの対照であるラットIgG2b−FITC;抗mCD154(CD40L)−PE(IgG);アイソタイプの対照であるラットIgG−PE;抗mCD25−APC(IgG1);アイソタイプの対照であるラットIgG1−APC;抗mCD3e−PerCP−Cy5.5(IgG);アイソタイプの対照であるアルメニアンハムスターIgG−PERCP−Cy5.5(すべてeBioscience,Inc.(San Diego,USA)からのものである)。
【0039】
ELISPOTアッセイ−−免疫したマウスからの脾臓細胞の単個細胞懸濁液を調製した。2×106個の生きた細胞が24ウェルプレートのウェルの中の2mlの完全媒体で培養されるように、これらの細胞を分けた。それぞれのウェルの脾臓細胞に検査抗原をパルス適用した(pulsed)。完全媒体の中に懸濁した、凍結融解された溶解産物として、この検査抗原を調製した。未処置の同質遺伝子的なマウスからの、BCL1、同種異系のTh1細胞、または脾臓細胞のいずれかの1×107個の細胞からの溶解産物を、それぞれのウェルにパルス適用した。加湿したCO2インキュベーターの中で、37℃で24時間、パルス適用したウェルを培養した。24時間後、非接着性細胞を採取し、洗浄し、数を数えた。その次に、抗IFN−γおよび抗IL−4プレコーティングを施したプレート(eBioScience,San Diego,CA)上で、1ウェルにつき100,000個の生きた細胞の割合で、これらの細胞を3つ組で培養し、20IU/mlのrmIL−2(Peprotech)を補充した完全媒体の中で、さらに20時間、インキュベートした。PHAで活性化した、同質遺伝子的なマウスからの新鮮な脾臓細胞をそれぞれのプレートに対する陽性の対照として使用した(データは示さない)。これらのプレートを、製品の使用説明書に従って顕色し、自動化した画像解析システム上で読み取った。
【0040】
低温免疫療法(cryoimmunotherapy)の腫瘍モデル−−両側固形腫瘍モデル、および全身性疾患を伴う固形腫瘍モデルの、2つの腫瘍モデルを低温免疫療法プロトコールに使用した。この両側固形腫瘍モデルは、0日目に1×104個のBCL1腫瘍細胞を毛をそった脇腹の両側に皮下注射したマウスからなっていた。この全身性疾患を伴う固形腫瘍モデルについては、マウスに、0日目に1×104個のBCL1の、左脇腹への単一の皮下接種を行い、その上2000個のBCL1を静脈内注入した。
【0041】
クライオアブレーション−−(液体窒素中に維持して)凍結したピンセットを10秒間腫瘍に軽く押し付けることで、麻酔をかけたマウス(塩酸ケタミン、100mg/kg、腹膜内)にクライオアブレーション処置を施した。腫瘍は処置時には16−25mm2であった。完全な腫瘍塊が氷状の球体に覆われた。ワクチン接種の前に、処置した領域の完全な融解を確実に行うために、1時間後に腫瘍内処置を行った。
【0042】
統計学−−二元配置(two−way)ANOVAを使用して、サイトカインレベル、ELISPOT応答頻度、および腫瘍体積の変化における有意差を決めた。0.05未満のP値を有意であるとみなした。ログランクおよびハザード比分析を使用して、Kaplan−Meier生存曲線を比較した(Graphpad Software;San Diego,CA)。60日より長く生存した動物をこの分析から除いた。
【0043】
アジュバントあり、またはなしでのBCL1ワクチン接種に対する免疫応答。(図1Aおよび図1B)アジュバントなしの(図1A)、または1×103個のCD3/CD28架橋した同種異系のTh1細胞(allo Th1)をアジュバントとして混合した(図1B)、凍結融解したBCL1腫瘍溶解産物(f/t BCL1)もしくは放射線照射したBCL1(irrad BCL1)の、皮内へのワクチン接種を、Balb/cマウス(n=3)に、1週間おきに4回行った。最初の接種に続いて5週目に、動物を屠殺し、脾臓を採取し、脾臓細胞の単個細胞懸濁培養物に、f/t BCL1、もしくは対照としてナイーブBalb/cマウスからのf/t脾臓細胞を、パルス適用した。24時間後、非接着性T細胞を取り出して、3つ組みで、抗IFN−γおよび抗IL−4コーティングを施したELISPOTプレートのウェル1つ当たり1×105個の細胞の割合で、培養した。20時間の培養の後、IFN−γおよびIL−4スポットを顕色し、コンピューター支援ビデオ画像分析により、数を数えた。それぞれの棒は、105個のT細胞中の、3つ組みの平均スポット数±SEを表す。図1Aおよび図1B上のアステリスク(*)は、対照と比較して、および括弧(])を付けた値の間で、有意差があること(p<0.05)を示し、n.s.は有意でない(p>0.05)ことを示す(ANOVA両側検定)。
【0044】
CD3/CD28架橋Th1細胞の特徴付け。(図2A、図2B、および図2C)ポジティブセレクションしたC57BL/6由来CD4+ T細胞を0日目に、rmIL−12、rmIL−7、rmIL−2および中和抗IL−4 mAbを補充したcRPMIの中で培養状態に置いて、3:1のビーズ:細胞比で、CD3/CD28結合T細胞Expanderビーズ(Dynal/Invitrogen)で活性化した。この細胞を3日目から6日目まで毎日分け、追加のT細胞Expanderビーズ、rmIL−7、rmIL−2、および抗IL−4 mAbを補充した。6日目に、この細胞を採取し、CD3/CD28結合ナノビーズで活性化した。0日目から6日目までの、CD45RB、CD62L、およびCD44における表現型シフトを図2Aに示す。黒色で埋めた領域はアイソタイプ対照を表す。黒色の線は0日目のCD4+細胞の表現型である。灰色で埋めた領域は、CD3/CD28ナノビーズ活性化前の、6日目の細胞の表現型であり、灰色の線はCD3/CD28ナノビーズ活性化後の表現型を表す。図2Bは、6日目に採取したCD3/CD28ナノビーズ活性化前後の細胞と比較した、0日目に培養状態に置いたCD4+細胞中のCD40Lエフェクター分子の発現における、表現型の変化を示す。活性化した細胞だけが、顕著な量のこのエフェクター分子を発現した。図2Cは、CD3/CD28ナノビーズ活性化の前および後の6日目の細胞と比較した、0日目のCD4+細胞中のCD25発現における、表現型の変化を表す。活性化した6日目の細胞の表現型は、CD4+,CD62Llo,CD45RBhi,CD44hi,CD40L+,CD25+であった。
【0045】
CD3/CD28架橋Th1記憶細胞の、サイトカイン産生(図3A)および免疫原性(図3B)。6時間目の細胞培養物からの上清中の、IFN−γおよびIL−4サイトカイン産生をELISAで分析した。IL−12(1日目から3日目のみ)、IL−7およびIL−2の存在下で、6日間培養したC57BL/6からポジティブセレクションしたCD4細胞は、60から100倍に拡張し、CD45RBhi、CD44hiエフェクター/記憶細胞に分化した。これらの細胞を6日目に採取し、洗浄し、そしてCD3/CD28ナノビーズで再活性化し、6時間培養し、そしてELISAでの分析(図3A:新鮮な活性化Th1)のために上清を集めた。これらの結果と、最初に液体窒素中で凍結し、それから後で融解して、CD3/CD28ナノビーズで活性化した、同じ6日目に採取した細胞の、6時間目の培養物からの上清とを比較した(図3A:融解した活性化Th1)。比較のために、ポジティブセレクションしたCD4細胞(0日目に培養状態に置いたのと同じもの)のサンプルからの上清を、3:1のビーズ:細胞比で、CD3/CD28T細胞Expanderビーズで活性化し、6時間培養した(図3A:CD4ナイーブ)。6日目に採取した細胞からの上清はまた、6時間、CD3/CD28活性化なしで培養した(図3A:新鮮な非活性化Th1)。
【0046】
これらの細胞組成物の免疫原性をELISPOTで検査した(図3B)。C57BL/6マウスに由来する、1×104個の、新鮮な活性化Th1細胞、新鮮な非活性化Th1細胞、もしくはポジティブセレクションしたCD4細胞(対照)を、同種異系のBalb/cマウスに、4週間にわたり、1週間に1回皮下接種した。5週目の間に、これらのマウス(n=3)を屠殺し、脾臓を取り出し、そして脾臓細胞の単個細胞培養物を立ち上げた(establish)。この培養物に、凍結/融解したCD57BL/6脾臓細胞の溶解産物をパルス適用し、24時間培養した。その次に非接着性T細胞画分を採取し、洗浄し、そして1×105個の細胞を、3つ組みで、抗IFN−γもしくは抗IL−4コーティングを施したELISPOTプレートに移して、さらに20時間、20IUのrmIL−2の存在下で培養した。それぞれの棒は、3つ組みの平均スポット数±SEを表す。
【0047】
保護ワクチン接種および腫瘍チャレンジ。BCL1腫瘍に対してワクチン接種されたBalb/cマウスのKaplan−Meier生存曲線(それぞれのグループにつきn=8)。(図4)0日目に、全てのマウスに2000個のBCL1細胞を静脈内注入した。腫瘍チャレンジに先立って、−22日目、−15日目、−8日目、および−1日目に、媒体のみ(対照)、1×104個の同種異系のCD3/CD28架橋Th1細胞(Th1のみ)、放射線照射したBCL1を混合した1×104個の同種異系のCD3/CD28架橋Th1細胞(irrad BCL1+Th1)、もしくは凍結/融解したBCL1腫瘍溶解産物を混合した1×104個の同種異系のCD3/CD28架橋Th1細胞(f/t BCL1+Th1)のいずれかを、マウスに皮内接種した。対照マウスの生存期間(survival)の中央値は21日であった。irrad BCL1のみ(生存期間の中央値=20.5日)もしくはf/t BCL1のみ(生存期間の中央値=20.0日)のワクチン接種は、対照と比較して生存期間に有意に影響しなかった。Th1のみの前処置は、平均24日へと有意に生存期間を延長した(ハザード比=3.14)。アジュバントとしてTh1を用いてirrad BCL1をワクチン接種することは、生存期間に有意な効果がなかった(平均生存期間=22日)。f/t BCL1とTh1との混合は、50%のマウスが致死腫瘍チャレンジにおいて生存する結果となり、生存期間の中央値は46日であった(ハザード比=6.08)。
【0048】
治療ワクチン接種。0日目に2000個のBCL1が静脈内に注入されたBalb/cマウス(1グループにつきn=6)のKaplan−Meier生存曲線。(図5)1日目、8日目、および15日目に、1×104個の同種異系CD3/CD28架橋Th1記憶細胞のみ(Th1)、もしくはTh1を混合した、1×106個のBCL1のf/t溶解産物(f/tBCL1+Th1)の、いずれかの、皮内注射をマウスに行った。対照マウスは平均19.5日生存した。Th1のみをワクチン接種されたマウスは、対照より有意に長く生存し、平均26日生存した(ログランク:p=0.001;ハザード比:3.981)。f/tBCL1+Th1をワクチン接種されたマウスもまた、対照マウスより有意に長く生存し、平均生存期間は34日であり(ログランク:p=0.001;ハザード比:3.981)、そしてそれはTh1のみのグループに比べて有意に異ならなかった。
【0049】
治療ブースターを用いたプライミング。BCL1腫瘍に対してワクチン接種されたBalb/cマウスの、Kaplan−Meier生存曲線(それぞれのグループにつきn=8)。(図6)0日目に全てのマウスに2000細胞のBCL1を静脈内注入した。腫瘍チャレンジに先立って、−22日目、−15日目、−8日目、および−1日目に、媒体のみ(対照)、1×104個の同種異系のCD3/CD28架橋Th1細胞(Th1)、または凍結/融解したBCL1腫瘍溶解産物を混合した、1×104個のTh1(Th1+f/t BCL1プライミング)の、いずれかを皮内接種することで、マウスをプライミングした。7日目に、Th1のみ、もしくはf/t BCL1を混合したTh1の、いずれかを用いて、いくつかのマウスに治療ブースターの皮内接種を施した。対照マウスは中央値20日生存した。Th1のみのワクチン接種は、中央値23日へと、有意に生存期間を延長する結果となった(ログランク:p=0.011;ハザード比:2.478)。Th1のみのワクチン接種に続いてTh1ブースターを施すことで、対照と比較して、有意な生存の利益(生存期間の中央値=25日)(ログランク:p<0.0001;ハザード比=3.915)が生じ、Th1のみと比較して有意な生存(ログランク:p=0.03、ハザード比=2.337)が生じた。アジュバントとしてTh1を用いた、f/t BCL1のワクチン接種(Th1+f/t BCL1プライミング)によりプライミングされたマウスは、生存期間の中央値が57.5日であり、50%のマウスが致死チャレンジにおいて生存した。Th1+f/t BCL1でプライミングされ、Th1ブースターを施されたマウスは、75%が致死チャレンジにおいて生存した。Th1細胞のみでプライミングされ、f/t BCL1+Th1を用いた治療ブースター注射を施されたマウスは、対照と比較して有意な生存の利益を有し、生存期間の中央値は46日であり(ログランク:p<0.0001;ハザード比=5.633)、37.5%のマウスが致死チャレンジにおいて生存した。
【0050】
低温免疫療法への固形腫瘍および全身性腫瘍の応答。固形腫瘍モデルにおいて、0日目に、Balb/cマウスに、両側の毛をそった脇腹への、1×104個のBCL1腫瘍細胞の皮下接種を施した。全身性腫瘍モデルにおいて、0日目に、Balb/cマウスに、1×104個のBCL1腫瘍細胞の左脇腹への接種、および尾静脈を介した2000個のBCL1の静脈への接種を施した。14日目に、左側の腫瘍塊の全ての観察できた腫瘍のクライオアブレーションを単独で(cryoのみ)、もしくは腫瘍内を同種異系のCD3/CD28架橋Th1記憶細胞(Th1)とともに(cryo+Th1)、またはクライオアブレーションなしで、腫瘍内をTh1細胞のみで(Th1のみ)、処置された全身性腫瘍モデル(図7A)および固形腫瘍モデル(図7B)マウス(それぞれのグループにつきn=8)のKaplan−Meier生存曲線。対照マウスは、全身性モデルにおいては中央値21日、固形腫瘍モデルにおいては28.5日、生存した。cryo+Th1処置は、全身性モデルにおいて、有意な生存の利益を生じた(ログランク:p=0.0059;ハザード比=3.194)。固形腫瘍モデルにおける生存の利益は有意ではなかった(n.s.)。全てのマウスに対して、7日目に、1×105個のTh1の静脈内注入を加えて、同じ実験を繰り返した。図7Cは、このプロトコールを用いて処置されたマウスについて、反対側にある未処置の腫瘍塊の腫瘍増殖曲線を示す。cryo+Th1で処置されたマウスの40%は疾患が治癒した。結局疾患で死んだ、もう一方の60%のマウスにおいて、反対側の腫瘍の増殖は有意に抑制された(p<0.01)。全身性腫瘍モデル(図7D)における、Kaplan−Meier生存曲線を示す。腫瘍内をTh1細胞のみで処置されたマウスは、平均28日生存し、そしてそれは、平均19日生存した対照マウスより有意に長かった(ログランク:p<0.0001;ハザード比=4.291)。cryo+Th1で処置されたマウスの40%は90日より長く生存した。
【0051】
結果
BCL1免疫原性−−Balb/cマウスにおける、BCL1ワクチン接種に対するネイティブの免疫応答を特徴付けし、アジュバントを加えることの生物学的効果を分析するためのベースライン(baseline)として役立たせた。BCL1は長年にわたりインビボで連続して継代されているので、現行のBCL1クローンは、同質遺伝子的なBalb/cマウスにアジュバントなしで投与される場合、「イミュノエディティング(immunoediting)」に起因して、非免疫原性であると証明されることになる。
【0052】
放射線照射されたBCL1全体(irrad BCL1)もしくはBCL1の凍結融解された溶解産物(f/t BCL1)のいずれかである、BCL1の2つのワクチン調製物の免疫原性を、アジュバントなし(図1A)、またはアジュバントとして1×103個のCD3/CD28架橋同種異系のTh1細胞(allo Th1)を混合して(図1B)、検査した。「危険仮説」は、f/t BCL1溶解産物の調製物は、irrad BCL1調製物より免疫原性があることを予想している。f/t BCL1およびirrad BCL1調製物の免疫原性を検査するために、4週間にわたり、1週間につき1回、Balb/cマウスに、0.2mlのHBSS中でこれらを皮内(i.d.)へ投与した。
【0053】
アジュバントなしの、irrad BCL1およびf/t BCL1の両方のワクチン接種は、有意な腫瘍特異的な免疫応答を誘発し得た(図1A参照)。irrad BCL1のワクチン接種後の、腫瘍特異的なT細胞の平均頻度(IL−4+IFN−γスポット)は、1/64であり、そしてそれはf/t BCL1ワクチン接種後の平均頻度である1/227より、有意に高かった(3.5倍)。両方のワクチン接種のプロトコールは、対照の平均頻度である1/3333と比較して、応答するT細胞を有意に高い頻度で生じた(p<0.001)。
【0054】
両方のワクチン調製物は、Th2(IL−4)に偏った、腫瘍特異的なT細胞の応答を引き起こした。irrad BCL1ワクチン接種に対して応答した、T細胞IL−4の平均頻度は、1/93であり、そしてIFN−γ応答は有意に低く(p<0.001)、1/208であった。f/t BCL1ワクチン接種されたマウス中の、IL−4応答物の平均頻度は、IFN−γ応答の平均頻度である1/769より、有意に高く(p<0.01)、1/322であった。irrad BCL1ワクチン接種されたマウス中のIFN−γ応答物の平均頻度は、f/t BCL1ワクチン接種されたマウスと比べて、有意に異ならなかった。
【0055】
irrad BCL1もしくはf/t BCL1がワクチン接種されたマウスのいずれも、2000個のBCL1細胞が尾静脈を介して静脈内に投与された、致死チャレンジにおいて生存し得ず(図4参照)、このことは、両方のBCL1ワクチン接種プロトコールに対する有意な免疫応答は、保護的ではなかったことを示している。
【0056】
CD3/CD28架橋Th1記憶細胞の特徴付け−−最初に、表面表現型(図2A−C)、サイトカイン産生プロファイル(図3A)、および同種異系のBalb/cマウスに週1回の皮内注射を4回行った後の免疫応答(図3B)について、C57BL/6由来CD3/CD28架橋Th1記憶細胞を特徴付けした。
【0057】
CD62L、CD45RB、CD44、CD25、およびCD40Lの表面発現を分析し、0日目のCD4+源の細胞のFACS分析(FACS)により、6日間の培養の間の細胞の分化を特徴付けし、そしてこの染色パターンを、CD3/CD28架橋による活性化の前および後、6日間培養した後採取された同じ細胞と、比較した。結果は図2Aに示す。
【0058】
脾臓細胞から、0日目にポジティブセレクションされたCD4+細胞は、CD62Lhi、CD44hiと染色されたが、CD62Lhi表現型からCD62Llo表現型に変わった。従って、6日目のCD3/CD28架橋細胞は、CD4+、CD62Llo、CD45RBhi、CD44hiの表現型を発現した。
【0059】
表現型の上で、マウス記憶細胞は通常はCD62Llo、CD45RBlo、CD44hiである。本発明者らの培養方法により産生された細胞の、CD62Llo,CD45RBlo,CD44hi表現型は、以前から、自己免疫疾患および同種異系移植拒絶と結び付けて考えられている、記憶/エフェクター細胞と同じ表現型を発現する。
【0060】
6日目の細胞をCD3/CD28架橋により4時間活性化することは、9.27%から67.65%へとCD40Lを発現する細胞の数の有意な増加(図2B)を引き起こし、そしてこのことは、63.09%から91.52%へとCD25を発現する細胞が増加したこと(図2C)と相互に関連した。
【0061】
これらのCD3/CD28活性化されたCD4+,CD62Llo,CD45RBhi,CD44hi,CD40L+,CD40L+,CD25+記憶/エフェクター細胞(n=6バッチ)の検査を、新鮮なままの6日目に採取された細胞、もしくは液体窒素中で凍結され、融解され、そして活性化された、6日目に採取された細胞が、CD3/CD28架橋により活性化された後のサイトカイン産生について、行った。活性化された0日目のCD4+細胞、および活性化されなかった新鮮なままの6日目に採取された細胞を、比較のために含めた(図3参照)。
【0062】
新鮮な活性化CD4+記憶/エフェクター細胞は、多大な量のIFN−γ(4210±169.7pg/ml/6h)およびごくわずかのIL−4(52.33±6.8pg/ml/6h)を発現したことから、これらの細胞はTh1記憶細胞に属するものとされる。これらのTh1記憶細胞を活性化に先立って液体窒素中で凍結し、そしてその後融解し、活性化するとき、これらは、Th1表現型を維持するが、新鮮な細胞より約29%少ないIFN−γおよびIL−4を発現する(2985±173.5pg/ml/6hのIFN−γ、および37.2±6.95pg/ml/6hのIL−4)。非活性化Th1記憶細胞は、ごくわずかの量のサイトカインを産生した(13±6.7pg/ml/6hのIFN−γ;8.8±3.6pg/ml/6hのIL−4)。通常のC57BL/6脾臓細胞の単個細胞懸濁物からポジティブセレクションにより単離された、源のCD4+細胞は、CD3/CD28結合マイクロビーズ(microbeads)を用いた活性化の際に、Th2に偏ってサイトカインを産生した(254±50.2pg/ml/6h IL−4;53.5±11.4pg/ml/6h IFN−γ)。
【0063】
これらのデータは、この培養条件によって、Th2に偏ったCD4+ナイーブ細胞が生じ、強く極性化した(polarized)Th1記憶/エフェクター細胞に分化することを実証する。そしてこの細胞は、CD3/CD28架橋の際にCD40Lを発現し、そして通常と異なる(unusual)CD62Llo、CD45RBhi、CD44hi記憶表現型を発現する。
【0064】
同種異系のCD3/CD28架橋Th1記憶細胞に対する免疫応答−−同種異系のCD3/CD28架橋Th1記憶細胞が、1型免疫(Type 1 immunity)の促進のためのアジュバント活性を与える能力を特徴付けるために、研究を行い、C57BL/6由来Th1記憶細胞は、それ自身の同種異系抗原に対する1型免疫を同種異系のBalb/c宿主(hosts)において、誘発し得るかどうかを決めた。マウスに、1×104個のCD3/CD28架橋Th1記憶細胞、または1×104個のCD3/CD28架橋のないTh1記憶細胞を、0.1mlのcRPMI中で、皮内投与した。cRPMIのみ(along)の接種を対照として用いた。マウス(n=6)に、4週間にわたり、1週間につき1回、接種した。
【0065】
最初のワクチン接種の後、5週目の間に、マウスを屠殺し、そして脾臓を取り出し、そして以前のように、ELISPOT分析のために単個細胞懸濁物を調製した。結果を図3Bに示す。
【0066】
同種異系のCD4細胞(0日目)のみのワクチン接種は、1/348のT細胞という、ベースラインである同種異系の免疫応答平均頻度(IFN−γ+IL−4)を生じた。CD3/CD28架橋のない同種異系のTh1細胞(6日目)は、1/268のT細胞という応答平均頻度を生じた。そしてこの頻度は、CD4細胞のみと比べて有意に異ならなかった。しかしながら、同種異系のTh1細胞のCD3/CD28架橋は、1/34という同種異系抗原特異的なT細胞の平均頻度を生じた。そしてこの頻度は、同種異系のCD4細胞および非活性化同種異系のTh1細胞の応答頻度より、有意に高かった(p<0.0001)。
【0067】
同種異系のCD4細胞および非活性化同種異系のTh1記憶細胞に対する免疫応答は、歪んで(skewed)Th2免疫を生じ、他方、CD3/CD28架橋同種異系のTh1記憶細胞は、強く極性化したTh1応答を誘発した。CD4細胞ワクチン接種は、1/181というIL−4産生するT細胞の平均頻度を生じ、そしてこの頻度は、1/4167というIFN−γ産生するT細胞の平均頻度より、有意に高かった(p<0.0001)。非活性化同種異系のTh1記憶細胞は、1/147というIL−4応答するT細胞の平均頻度を誘発し、そしてこの頻度は、1/1587というIFN−γ応答するT細胞の平均頻度より、有意に高かった(p<0.0001)。同質遺伝子的な脾臓細胞対照は、検出することができる、適応免疫応答(adaptive immune response)を誘発しなかった(結果は示さない)。
【0068】
保護ワクチン接種およびチャレンジ−−同種異系のTh1細胞が、アジュバントとして役立ち得て、BCL1腫瘍の致死チャレンジからマウスを保護するかどうかを決めるために、凍結/融解したBCL1溶解産物(f/t BCL1)または放射線照射されたBCL1細胞(irrad BCL1)のいずれかのワクチン混合物を調製し、単独(対照)または1×104個の同種異系のTh1細胞と混合して、使用した。腫瘍抗原源のない同種異系のTh1細胞のみを対照として用いた。マウス(それぞれのグループにおいてn=8)に、−22日目、−15日目、−8日目、および−1日目に、1週間おきに、4回のワクチン調製物の皮内接種を受けさせた。媒体のみの注射を対照として用いた。0日目に、全てのワクチン接種されたマウスに、2000個のBCL1細胞の、致死静脈内チャレンジを受けさせた。
【0069】
マウスを生存について追跡した(図4参照)。媒体のみの対照マウスの生存期間の中央値は、21日であった。irrad BCL1、f/t BCL1、または同種異系のTh1のみのいずれかのワクチン接種は、腫瘍チャレンジからの保護を生じなかった。興味深いことに、同種異系のTh1のみのワクチン接種は、保護的ではなかったが、チャレンジされたマウスの生存期間を平均24日へと有意に延長した(ハザード比=3.14)。irrad BCL1+TH1細胞の組成物のワクチン接種は、生存期間に影響せず(生存期間の中央値=22日)、保護を与えなかった。f/t BCL1+Th1細胞のワクチン接種によって、46日という生存期間の中央値が生じ(ハザード比=6.08)、50%のマウスが致死腫瘍チャレンジにおいて生存した。
【0070】
治療ワクチンプロトコール−−上記のデータは、腫瘍のなかった(tumor free)時にワクチン接種され、その次に致死用量の腫瘍でチャレンジされた動物における、f/t BCL1およびアジュバントとして用いられた同種異系のCD3/CD28架橋Th1記憶細胞のワクチン接種の保護的な効果を実証した。この保護的な効果はまた、治療効果を与え得るかどうかを決めるために、前もって存在する(pre−existing)腫瘍を有したマウスにおける、ワクチン接種プロトコールを調べた。
【0071】
4回の、1週間につき1回の皮内接種(28日)に続く、35日目の腫瘍チャレンジを、以前の保護ワクチン接種プロトコールは含んでいた。マウスは、致死BCL1注入の19日から22日後に疾患で死ぬので、このワクチン接種スケジュールを本発明者らのモデルにおける治療設定に移すことはできなかった。従って、マウス(それぞれのグループにつきn=6)に、0日目に、静脈内への致死用量の2000個のBCL1細胞を受けさせ、そして1日目、8日目、および15日目に、1×104個の同種異系のCD3/CD28架橋Th1記憶細胞のみ(Th1)、または同種異系のTh1を混合した1×106個のBCL1のf/t溶解産物(f/t BCL1+Th1)のいずれかの皮内への治療ワクチン接種を受けさせた。同じスケジュールで媒体のみの接種を対照として役立たせた。結果は図5に示す。
【0072】
対照マウスは平均19.5日生存した。興味深いことに、どの腫瘍抗原源もなしで、Th1のみをワクチン接種されたマウスは、対照より有意に長く生存し、平均26日生存した(ログランク:p=0.001;ハザード比:3.981)。f/t BCL1+Th1をワクチン接種されたマウスはまた、対照マウスより有意に長く生存し、平均生存期間は34日であったが(ログランク:p=0.001;ハザード比:3.981)、これは同種異系のTh1のみのグループと比べて有意に異ならなかった。これら治療ワクチン接種プロトコールのいずれを用いても、マウスは治癒しなかった。
【0073】
プライミングおよび治療ブースターワクチン接種−−治療ワクチンプロトコールにおいてどのマウスも治癒しなかったので、BCL1腫瘍が注入されたマウスの、19日から22日の寿命は、速やかに増殖する腫瘍を圧倒し得る適応免疫応答を発揮するのに、十分な時間ではなかった。従って、検査を実施し、腫瘍チャレンジに先立って同種異系のTh1を含むワクチン接種を用いてプライミングされたマウスは、治療ワクチン接種に対してもっとよく応答するかどうかを決めた。これらの実験において、−22日目、−15日目、−8日目、および−1日目に、媒体のみ(対照)、1×104個の同種異系のCD3/CD28架橋Th1細胞(Th1)、または凍結/融解したBCL1腫瘍溶解産物を混合した1×104個のTh1(Th1+f/t BCL1プライミング)のいずれかの皮内接種により、マウスをプライミングした。0日目に全てのマウスに2000個のBCL1を注入した。7日目に、1×104個のTh1のみ、またはf/t BCL1を混合した1×104個のTh1のいずれかの、皮内治療ブースター接種をいくつかのマウスに施した。結果を図6に示す。
【0074】
対照マウスは中央値20日生存した。再びTh1のみでプライミングすることによって、中央値23日へと有意な生存期間の延長が生じた(ログランク:p=0.011;ハザード比:2.478)。Th1のみを用いたプライミングに続くTh1治療ブースターによって、対照と比較して有意な生存の利益(生存期間の中央値=25日)が生じ(ログランク:p<0.0001;ハザード比=3.915)、そしてTh1プライミングのみと比較して有意な生存を生じた(ログランク:p=0.03;ハザード比=2.337)。アジュバントとしてTh1を用いたf/t BCL1のワクチン接種(Th1+f/t BCL1プライミング)によりプライミングされたマウスは、生存期間の中央値が57.5日であり、50%のマウスが致死チャレンジにおいて生存し、本発明者らの以前の実験において同じ結果を得た(図4参照)。Th1+f/t BCL1でプライミングされ、Th1治療ブースターを投与されたマウスは、致死チャレンジ後75%が生存した。Th1細胞のみでプライミングされ、f/t BCL1+Th1を用いた治療ブースター注射を施されたマウスは、対照と比較して有意な生存の利益を有し、生存期間の中央値は46日であり(ログランク:p<0.0001;ハザード比+5.633)、そして37.5%のマウスが致死チャレンジにおいて生存した。
【0075】
Th1プライミング/Th1+f/t BCL1ブースターグループについてのKaplan−Meier生存曲線の形状は、致死BCL1注射後同様にマウスが治癒する結果となった他のグループと比較して、異なる。Th1+f/t BCL1プライミング後生存しなかった、50%のマウス、および致死チャレンジにおいて生存しなかった、Th1+f/t BCL1プライミング/Th1ブースターグループの25%は、直ちに白血病のしるしを示し(触診可能な脾腫および有意な重量増加)、そして非常に早く、平均24日の時にこの疾患で死んだ。対照的に、同様に明らかな白血病を有したが対照マウスより有意に長く生存したマウスサブセット(62.5%)、および外見上は治癒し、そして決して白血病のしるしを示さなかった、別のサブセット(37.5%)を、Th1プライミング+f/t BCL1処置グループは含んでいた。
【0076】
低温免疫療法−−治療ワクチン接種の効能をさらに向上させることを試みるために、壊死によるインサイチューの腫瘍死(tumor death)は、本発明者らの他の凍結融解した溶解産物の調製物より強力な適応免疫応答を与えると、仮定した。壊死により死滅した細胞(Neurotically killed cells)は、DCの供給および成熟の原因である、窮迫(distress)の内因性シグナルを活性化することが知られており、このシグナルは、健康なまたはアポトーシスで(apoptotically)死んだ細胞により生成されず、そして本発明者らの溶解産物の調製物には欠けている可能性がある刺激である。その上、これらの刺激への未熟なDCの暴露は、局所および全身(systematic)のTh1免疫の開始に重要な、成熟シグナルを提供する。
【0077】
壊死によりインサイチューの死を引き起こすために、クライオアブレーションプロトコールを用いた。クライオアブレーション手術は、臨床(clinic)に移すことができる手法であり、そしてこの手術は組織壊死を誘導し得る、十分にねらいが定められ(well−aimed)および制御された方法であることが示されている。クライオアブレーションは、(凍結された組織の自己の抗原に対して特異的な免疫学的応答を生成し得る)抗原刺激を誘発することが知られている。
【0078】
クライオアブレーション(cryoblation)について皮下腫瘍が利用可能であった2つの腫瘍モデルを立ち上げた。固形腫瘍モデルにおいては、Balb/cマウスに0日目に、1×104個のBCL1腫瘍細胞の、毛をそった脇腹の両側への皮下接種を施した。全身性腫瘍モデルにおいては、Balb/cマウスに0日目に、左脇腹へ1×104個のBCL1腫瘍細胞の接種物(inoculous)および尾静脈を介して静脈内へ2000個のBCL1の接種物を投与した。その次に、固形腫瘍が16mm2より広い面積へと増殖した後、14日目に、これらの動物(1グループにつきn=8)の左側の腫瘍を、クライオアブレーション(cryoblation)のみ、腫瘍内への1×103個の同種異系のCD3/Cd28架橋Th1記憶細胞と共にクライオアブレーション(cryoblation)(Th1)、Th1細胞のみ、または対照として腫瘍内への完全媒体のみを用いて処置した。結果を図7Aおよび図7Bに示す。
【0079】
全身性腫瘍モデル(図7A)において、対照マウスの平均生存期間は21日であった。クライオアブレーション(cryoblation)のみおよびTh1のみで処置されたマウスの生存期間は、対照と比べて異ならなかった。しかしながら、クライオアブレーション(cryoblation)の腫瘍内Th1処置との組み合わせによって、平均28.5日へと有意に延長した生存期間を生じた(ログランク:p=0.0057;ハザード比:3.194)。固形腫瘍モデル(図7B)において、対照マウスの平均生存期間は28日であった。このモデルにおいて検査された処置はどれも、有意な生存の利益を提供しなかった。
【0080】
このクライオアブレーション(cryoblation)プロトコールによって、その処置の結果治癒したマウスは生じなかったことから、本発明者らは処置を改変し、全てのマウスについて7日目に1×105個の同種異系のTh1の静脈内注入を含ませた。0日目にBCL1が、致死させるように(lethally)注射されたマウスにおいて、7日目に1×105個の同種異系のTh1細胞を静脈内注入することによって有意な生存の利益が生じることが、以前に示されている。この処置は治癒する能力のある(potentially curative)適応免疫応答を発揮するためのより長い時間を提供し、そして従って、低温免疫療法(cryoummunotherapy)を施されたマウスの生存期間に影響する、と仮定した。その上、この処置は、同種異系抗原免疫についてプライミングし、前に(図6)生存の利益を提供することが示されている。
【0081】
これらの研究の結果を図7C(固形腫瘍モデル)および図7D(全身性腫瘍モデル)に示す。固形腫瘍モデルにおいて、カリパスを用いた腫瘍の最も長い幅および長さの測定により、腫瘍の面積を決めた。クライオアブレーション(cryablation)による左側の腫瘍の完全なアブレーション(ablation)の後、反対側にある未処置の腫瘍塊だけを測定した。反対側のみの腫瘍増殖曲線、ならびにクライオアブレーション(cryoblation)および腫瘍内への同種異系のTh1の組み合わせ(cryo+Th1)で処置されたマウス。組み合わせ治療を用いて処置されたマウスの40%は、腫瘍の証拠なく生存した。反対側にある腫瘍の面積は、生存した40%のマウスおよび結局疾患で死んだ60%の、応答を別々に示すように提示されている。反対側にある腫瘍の増殖は、結局疾患で死んだ、60%のマウスにおいて有意に抑制された(p<0.01)。全身性腫瘍モデル(図7D)において、腫瘍内への同種異系のTh1細胞のみで処置されたマウスは平均28日生存した。この生存は平均19日生存した対照マウスより有意に長かった(ログランク:p<010001;ハザード比=4.291)。cryo+Th1で処置されたマウスの40%は90日より長く生存した。
【0082】
本発明は好ましい実施態様を参照して記載されてきたが、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく形態および詳細において変更が行われ得ることを当業者は認識する。
【技術分野】
【0001】
本発明はワクチンの分野に関連し、そしてより特に治療ワクチン方法に関連する。詳しくは、本発明は、Th1記憶を増加させるためにプライミング(priming)するための同種異系の細胞を含む薬学的組成物の使用のための方法に関連し、この記憶は後で活性化され得、そしてがんおよび感染性疾患ならびに他の加齢の疾患の能動免疫療法のためのアジュバントとして役立つ。
【背景技術】
【0002】
免疫系の力を利用し、慢性感染性疾患またはがんを処置することは、免疫療法の主要な目的である。ワクチン接種(別名、能動免疫療法)方法は、免疫系を活性化して侵入している病原体を特異的に認識させそしてこの病原体から保護するように設計される。200年より永くにわたって、能動免疫療法のアプローチは、痘瘡、狂犬病、腸チフス、コレラ、悪疫(plague)、麻疹、水痘、流行性耳下腺炎、灰白髄炎、B型肝炎、ならびに破傷風毒素およびジフテリア毒素を含む多数の感染性疾患を予防するため利用されてきた。
【0003】
能動免疫療法の概念は現在、存在する腫瘍を処置するまたは腫瘍の再発を予防する意図で治療がんワクチンを開発するために応用されており、そして慢性ウイルス感染の処置に応用されている。しかしながら、存在する能動免疫療法の技術は、HIV/AIDS、C型肝炎およびがんのような、標的である現代の疾患の多くから保護することに成功していない。このことは、現行のワクチン接種技術は、正しい型の免疫応答を誘発し得ないことに部分的に起因している。
【0004】
感染または他の抗原チャレンジに対して生成された免疫応答の型は、応答に関係する、ヘルパーT(Th)細胞のサブセットによって一般に区別され得る。免疫応答は大まかに2つの型であるTh1およびTh2に分類され得る。Th1免疫の活性化は、ウイルスのような細胞内感染物について最適化され、そして感染した細胞を溶解し得る、ナチュラルキラー(NK)細胞および細胞溶解性T細胞(CTL)の活性化を含み、他方、Th2免疫応答は体液性(抗体)応答について最適化される。Th1免疫の活性化はがん治療のために最も強く望まれ、そしてTh2免疫応答は特異的な抗体の分泌に対してより指向され、そして腫瘍治療において相対的に価値がより少ない。先行技術のワクチン組成物は、Th2応答または体液性免疫応答を誘発することに特化している。これらの応答はがんおよび大部分のウイルス性疾患に対して有効ではない。
【0005】
がんの根絶および寛解の維持はTh1免疫の活性化を必要とする。従って、能動免疫療法の目的の1つは、内在するTh2応答をTh1応答へと偏向させ得る方法を開発することである。しかしながら、腫瘍に対して潜在的に有効なTh1免疫応答を発揮する、またはTh1免疫応答を発揮するように治療によって免疫されているいくらかの患者において、腫瘍は影響を受けずに依然として増殖し続ける。
【0006】
Th1免疫患者におけるこのような有効性の欠如および腫瘍に対して生得の免疫応答が有効でないことは、腫瘍が免疫の攻撃を回避するための種々の戦略を利用する能力に起因するとされている。腫瘍によって利用されるこのようなイミュノアボイダンス(immunoavoidance)機構は免疫系を寛容にし、そして能動免疫療法による抗腫瘍エフェクター機構の特異的なアップレギュレーションの後でさえ腫瘍が免疫の監視に妨げられずに増殖することを可能にする。従って、能動免疫療法の戦略は免疫調節の作用機構に加えて、腫瘍のイミュノアボイダンス機構に打ち勝つ戦略を必要とする。
【0007】
腫瘍に対する自己寛容の確立は、自己免疫疾患を予防するように通常は利用される存在する自然免疫機構に関連すると考えられる。通常は有益なこの効果が腫瘍の免疫回避を担い得ることは、自己免疫を妨げる寛容機構の多くが免疫破壊を妨げるために腫瘍によって利用されるものと同じである、という観察によって支持される。「危険仮説(danger hypothesis)」は、免疫系は主として非自己から自己を区別するものではないが、代わりに、抗原が免疫系に呈示される状況に依存してその抗原を認識しそして抗原に応答するように主に適応されていることを提案する。
【0008】
アジュバントの使用は久しくワクチン組成物中の抗原に対する免疫応答に影響を与えるための戦略である。アルミニウム塩、およびスクアレンの水中油乳剤(MF59)は、ヒトワクチンにおいて最も広く使用されるアジュバントである。しかしながら、これらのアジュバントは抗原に対するTh2応答を優位に促進し、そして血清抗体の力価を高めることにおいて有効ではあるが、細胞免疫応答を有意に誘発しない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示には、個体を同種異系抗原でプライミングして、Th1表現型の、抗同種異系の記憶細胞を高い力価で生じさせるための組成物および方法が記載されている。その次に、プライミングされた、感染性疾患またはがんを有する個体に、アジュバントとして同じ同種異系抗原を用いた能動免疫療法が施され得る。プライミングされた個体における同種異系抗原の導入は、強力なアジュバント効果を有するTh1サイトカインの著しいバースト(burst)を提供する。プライミング方法は中高年の個体が免疫の健康を維持する際に特に有益である。なぜなら個体は年齢が高まるにつれて、Th1細胞の数がより低くなる傾向があるからである。
【0010】
本明細書において記載された方法は、Th1サイトカインを産生する生きている同種異系の細胞の投与によって、患者において循環中のTh1細胞の数(「Th1フットプリント」)を増加させる手段を提供する。同種異系の細胞は、免疫細胞によって処理(process)されそして抗同種異系の免疫の発揮へと導く同種異系抗原を含む。同種異系の細胞がTh1サイトカインを産生するように調製されるとき、このサイトカインは、同種異系抗原に対する免疫応答を引き起こしTh1の方向に向けるアジュバントとして働き、従って、患者のTh1フットプリントを増加させる。Th1サイトカインを産生する同種異系の細胞を多数回注射することは、このTh1フットプリントを引き上げる(boost)のに役立つ。
【0011】
プライミングワクチン接種は、一般に中高年の患者のような、疾患に対する高い感受性を有する患者に施される。プライミングワクチン接種はまた、がんを有しているが寛解の状態にありそして微小残存病変を有し得るが腫瘍の完全なチャレンジは有しないかもしれない患者に施され得る。プライミングによって生成したTh1フットプリントは、将来においていつでも、追加の抗原チャレンジの注射によって、Th1方向に向けるサイトカインを産生するように患者の免疫系を活性化し得る。言い換えれば、この患者の免疫系はプライミングされており、そして待機モード(standby mode)の状態にある。従って、プライミングされた患者が疾患を発症した場合、同種異系の細胞を含むワクチン組成物は単独でまたはこの疾患からの抗原と組み合わせて患者に投与され得る。Th1フットプリントを生成するための患者のこのプライミングに続く(flowed)、能動免疫療法は、免疫系に、より効果的に治療応答を生じさせる(mount)。存在する疾患を有する患者はまた、能動免疫療法に先立ってプライミングされ得る。
【0012】
1つの局面において、本開示は、疾患に対するワクチン接種を患者に行う方法を含む。この方法は、この患者に同種異系の活性化Th1記憶細胞のプライミング組成物を投与してTh1フットプリントを提供することを含み、ここでは、このプライミング組成物は、この患者がその疾患の症状を示していないときに投与される。
【0013】
もう1つ局面において、本開示は、患者における疾患の再発を減らす方法を含む。この方法は、同種異系の活性化Th1記憶細胞および疾患関連抗原の、プライミング組成物を患者に投与することを含む。
【0014】
さらなる局面において、本開示は、患者にTh1フットプリントを生じさせて、免疫療法を活性化するためのアジュバントとして役立たせる方法を含む。この方法は、同種異系の活性化Th1記憶細胞を含むプライミング組成物を投与することを含み、ここでは、このプライミング組成物は、患者が疾患の症状を示していないときに投与される。
【0015】
さらにもう1つの局面において、本開示は、患者の疾患を処置するための治療組成物を含む。この組成物は同種異系の活性化Th1記憶細胞を含み、ここでは、この治療組成物は、投与すると、患者において循環中のTh1細胞の数を増加させる。
【0016】
さらにもう1つの局面において、本開示は、処置後の、循環中のTh1細胞の数を増加させることによって疾患を処置するための医薬の製造における、同種異系のTh1記憶細胞を含有する組成物の使用を含む。
【0017】
さらにもう1つの局面において、本開示は、腫瘍または病原体に対する、患者のためのワクチン組成物キットを含む。このキットはプライミング組成物および活性化組成物を含み、ここでは、このプライミング組成物およびこの活性化組成物は両方とも、同じ源からの、同種異系の活性化Th1記憶細胞を含有し、そしてここでは、このプライミング組成物は、投与すると、患者において循環中のTh1細胞の数を増加させる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1A】図1Aは、アジュバントなしでのBCL1に対する免疫応答を示す棒グラフである。
【図1B】図1Bは、アジュバントありでのBCL1に対する免疫応答を示す棒グラフである。
【図2A】図2Aは、0日目から6日目までの、CD45RB、CD62L、およびCD44における表現型推移のプロットを示す。
【図2B】図2Bは、0日目、6日目、および活性化された際の、培養状態に置いているCD4+細胞中のCD40Lエフェクター分子の発現における、表現型の変化のプロットを示す。
【図2C】図2Cは、0日目、6日目、および活性化された際の、培養状態に置いているCD4+細胞中のCD25の発現における、表現型の変化のプロットを示す。
【図3A】図3Aは、CD3/CD28架橋Th1記憶細胞のサイトカイン産生の棒グラフである。
【図3B】図3Bは、CD3/CD28架橋Th1記憶細胞の免疫原性の棒グラフである。
【図4】図4は、同種異系の活性化Th1記憶細胞の保護(protective)ワクチン接種能力、および腫瘍チャレンジに対する応答を示すプロットである。
【図5】図5は、同種異系の活性化Th1記憶細胞の治療ワクチン接種能力を示すプロットである。
【図6】図6は、プライミングおよび治療ブースターからの結果を示すプロットである。
【図7A】図7Aは、クライオアブレーション(cryoablation)された全身性腫瘍モデルにおける応答を示すプロットである。
【図7B】図7Bは、クライオアブレーションされた固形腫瘍モデルにおける応答を示すプロットである。
【図7C】図7Cは、反対側(右側)の固形腫瘍の腫瘍増殖における応答を示すプロットである。
【図7D】図7Dは、全身性腫瘍モデルの生存を示すプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、プライミングワクチン組成物、および能動免疫療法においてこのプライミングワクチン組成物を使用するための方法を含む。好ましくは、このプライミングワクチン組成物は、注射時に活性化される同種異系のTh1記憶細胞を含む。この方法は、このプライミングワクチン組成物を投与して、正常な個体、または疾患にかかりやすい患者もしくは微小残存病変を有する患者にTh1フットプリントを提供することを含む。その次に、これらの個体におけるそのTh1フットプリントは、疾患の発症または再発のときに、同種異系のTh1記憶細胞を含む、活性化ワクチン組成物を投与することによる能動免疫療法によって動員され得る。この活性化ワクチン組成物はまた、疾患関連抗原を含み得る。この活性化ワクチン組成物は、患者において治療Th1免疫を誘発するように使用され得、他方、この組成物はまた、疾患病原体および腫瘍の、イミュノアボイダンス機構に打ち勝つための手段を提供し得る。患者のこのようなプライミングは、Th1免疫の方向に向けるためのインサイチューの強力なアジュバントを有利に作り出す。従って、この患者が病原体またはがんチャレンジにさらされるとき、免疫系は、よりタイミングの良いおよびより有効な応答を生じさせ得る。
【0020】
本発明は、生きている免疫細胞を含有するプライミングワクチン組成物を含み、その場合少なくとも一部はT細胞である。このT細胞は、好ましくは、Th1表現型(IFN−γを産生しそしてIL−4を産生しないCD4+ T細胞)の記憶T細胞(CD45RO+,CD62LLo)であり、そして本明細書において「記憶細胞」または「Th1記憶細胞(memory Th1 cells)」と呼ばれる。このTh1記憶細胞(memory Th1 cells)は処方および患者への導入の時に活性化される。この活性化の好ましい方法は、このT細胞上でのCD3表面分子およびCD28表面分子の架橋による。この活性化記憶T細胞は、好ましくは、活性化される際にCD40Lを発現し、そして多量の炎症性サイトカイン(例えば、IFN−γ、GM−CSF、およびTNF−α)を産生する。この活性化Th1記憶細胞は、好ましくは、患者に対して同種異系である。いくつかの実施態様において、このプライミング組成物はまた、疾患関連抗原物質を含み得る。
【0021】
活性化Th1記憶細胞を有するこの組成物は、予防目的もしくは治療目的または両方の目的のために使用され得る。本明細書において記載されたこのプライミング組成物は、疾患の症状を少しも示していない個体に投与される場合、特に好ましい。より一層好ましいのは、症状を少しも示していないが疾患にかかりやすい患者にこのプライミング組成物を投与することである。このプライミング組成物はまた、疾患の早い段階における患者、またはがん患者の場合において、寛解の状態にある患者もしくは微小残存病変を有する患者に投与され得る。症状を示している患者へのこの組成物の適用もまた、本発明の範囲内にある。この組成物は、ワクチンについて従来用いられるまたは推奨される全ての経路を経由して投与され得、この経路は非経口経路、皮内経路、筋肉内経路、皮下経路、または粘膜経路を含む。その上、この組成物は骨内、鞘内、腹膜内または板内(intralaminally)に投与され得る。ある実施態様において、この組成物はまた、結節内(intranodally)または腫瘍内(intratumorally)に投与され得る。
【0022】
本発明の、プライミングワクチン接種の薬学的組成物は、生きている活性化免疫細胞を含み、それに関して少なくとも一部はT細胞である。この組成物はまた、疾患関連抗原を含み得る。疾患関連抗原は、本明細書において言及されるように、疾患を引き起こす病原体に関連する抗原、腫瘍からの細胞もしくは溶解産物、または疾患に関連する他の抗原を含む。本発明の、プライミングワクチンのこの薬学的組成物において使用される、活性化Th1記憶細胞は、好ましくは、正常なドナーの血液に由来する。本発明における使用に適した細胞の処理および生産のための好ましい方法は、米国特許第7,435,592号および米国特許第7,402,431号ならびに公開された係属中の米国特許出願第2005/0191291号にHar−Noyによって記載され、これらの全体は本明細書において参考として援用される。
【0023】
ワクチン組成物において使用されるTh1記憶細胞の数は変わり得、そしてこの数はまた投与経路に依存し得る。プライミング組成物および活性化組成物は一般に約1×106個と約1×1010個との間の細胞を有する。好ましくは、これらの組成物は、これらの組成物が皮内または腫瘍内に投与される場合、約1×106個と約1×108個との間の細胞を有し、これらの組成物が腹膜内、骨内、または鞘内に投与される場合、約1×107個と約1×109個との間の細胞を有し、そしてこれらの組成物が静脈内に投与される場合、約1×108個と約1×1010個との間の細胞を有する。これらの範囲外のTh1記憶細胞を有する組成物もまた本発明の範囲内にある。
【0024】
同種異系のTh1記憶細胞を含む組成物でプライミングされている患者は、一般に抗同種異系抗原免疫を生じる。その後の、同種異系の細胞の注射は、抗同種異系抗原の細胞のプールを活性化し得、この細胞のプールは免疫アボイダンス(avoidance)機構を無効にするために必要な炎症性サイトカインを放出し得る。
【0025】
いくつかの実施態様において、プライミングワクチン組成物は、疾患にかかりやすい患者に投与され得る。この疾患は、中高年の患者においてよく生じる疾患であり得る。このプライミングワクチン組成物は、がんにかかりやすい患者、または感染性疾患(例えばHIV/AIDS、B型肝炎、C型肝炎、ヘルペス(herpes)、結核およびマラリア)にかかりやすい患者について有効であり得る。このプライミングワクチン組成物がこれらの患者に投与されるとき、それらの患者は抗同種異系抗原免疫を生じる。これらの患者の免疫系は、必要なときに活性化され得るTh1フットプリントを有し得る。言い換えれば、この患者の免疫系は待機モードの状態にあり、そして抗原チャレンジに対する、より有効なTh1応答のためにプライミングされている。この患者が特定の疾患の症状を生じるとき、以下に記載されるような活性化ワクチン組成物が投与され得る。
【0026】
いくつかの実施態様において、プライミングワクチン接種は、がんのような疾患をすでに有しているが寛解の状態にある患者に施され得る。寛解の状態にある患者は微小残存病変(MRD)をときどき有し得る。MRDの場合には、患者はがん細胞を依然として有しうるが、量において、この細胞は臨床的に症候的ではない。時間が過ぎると、このがん細胞は増殖し得、そしてその疾患の再発へと導き得る。活性化Th1記憶細胞、および初期のがんの細胞からの1つまたはそれより多い抗原を含むプライミングワクチン接種は、寛解の状態にある患者に施され得てTh1フットプリントを作り出し得る。この患者が再発のしるしを示すとき、活性化ワクチン組成物は投与され得、この組成物はこの活性化Th1記憶細胞、および1つまたはそれより多い疾患関連抗原を含む。この患者は前にプライミングされたので、内在する抗同種異系抗原記憶はすぐに応答を生じさせ得て、本格的な抗原チャレンジとより効果的に戦い得る。
【0027】
本発明に従うプライミングワクチン組成物は、寛解の状態にある患者に投与される場合、ただ1つの病原体またはがんに対する免疫化を意図した組成物(すなわち、この組成物はただ1つの病原体またはがんからの、1つまたはそれより多い抗原を含有する)であり得るか、またはそうでなければ、この組成物は、いくつかの異なる病原体またはがんに対する免疫化を意図した組成物であり得る(それゆえ、その組成物はワクチン組合せ物と言及される)。
【0028】
活性化Th1記憶細胞のアジュバント作用は、活性化Th1細胞および疾患関連抗原が投与前に組み合わせられる場合、得られ得る。あるいは、この活性化Th1記憶細胞は、この(複数の)疾患関連抗原と別に投与される。好ましくは、この活性化Th1記憶細胞は、患者内への投与の前にこの疾患関連抗原と組み合わせられる。
【0029】
腫瘍および疾患生物が免疫破壊を回避する能力を、無効にし得る炎症性の環境を維持するために、単独のまたは抗原と共に処方された活性化Th1記憶細胞の、さらなる複数のブースター組成物が投与され得る。これらのブースター組成物は、好ましくは、少なくとも3日から7日離して投与され(made)得、そしてより好ましくは、7日から14日離して投与され得る。必要とされる場合、さらなる複数のブースター組成物が月基準または年基準でこの患者に投与され得る。
【0030】
上記薬学的組成物の抗原成分は、1つまたはそれより多い疾患関連抗原を含む。どの抗原源も処方において使用され得る。例えば、生きている細胞または生物はこれらの抗原の源となり(source)得、この源となる物質(source material)は放射線照射(または他の不活化方法)で不活化され得、この源となる物質は細胞全体もしくは生物全体、またはそれらからの溶解産物として使用され得る。特に、腫瘍細胞または腫瘍細胞溶解産物は、これらの抗原のための、細胞源物質として役立ち得る。この細胞源物質は、自己の細胞源もしくは同種異系の細胞源、または細胞系統に由来し得る。抗原源は2009年5月1日に出願された米国特許出願第12/434,168号において記載され、この出願は本明細書において参考として援用される。
【0031】
上記の患者が特定の疾患の症状を生じるとき、活性化Th1記憶細胞、および1つまたはそれより多い源の疾患関連抗原を有する活性化ワクチン組成物がこの患者に投与される。この患者の免疫系は活性化され得て、完全な規模のTh1応答をすぐに生み出し得る。そしてこのように、この抗原に対する、より有効な応答が、この患者にすでにある抗同種異系抗原免疫に起因して生じ得る。
【0032】
活性化ワクチン組成物は一般に、本明細書においてプライミングワクチン組成物について記載されるような、同種異系の活性化Th1記憶細胞を含む。この活性化組成物中の、患者に投与されるこの同種異系のTh1記憶細胞は、好ましくは、このプライミング組成物において使用されるその同種異系のTh1記憶細胞と同じ源からの、細胞である。患者に投与される同種異系の活性化Th1記憶細胞の数は、このプライミング組成物中の、投与される同種異系の細胞の数と、ほぼ同じであり得る。しかし、より多いまたはより少ない量の細胞であっても、活性化組成物における細胞の使用は本発明の範囲内にある。活性化ワクチン組成物はまた、本明細書において記載されるような疾患関連抗原を含み得る。この同種異系のTh1細胞およびこの疾患関連抗原は、1つの活性化ワクチン組成物として、一緒に投与され得る。あるいは、この同種異系のTh1細胞およびこの疾患関連抗原は、別々の組成物として投与され得る。
【実施例】
【0033】
マウス−−5から6週齢の雌Balb/c(H−2d/d)および雄C57BL/6(H−2b/b)のマウスをHebrew University−Hadassah Medical School Animal Facility,Jerusalem,Israelから購入した。特定病原体未感染(SPF)条件下ですべてのマウスを維持し、そして酸性化した水および食餌を自由に与えた。本研究はHebrew University Medical SchoolのAnimal Ethical Committeeにより承認された。実験に配置された時、全てのマウスは6から8週齢であった。
【0034】
BCL1腫瘍モデル−−BCL1はBalb/cが起源の自然発生B細胞白血病/リンパ腫である。Balb/cレシピエント内で連続継代することにより、このBCL1腫瘍系統をインビボで維持させる。これらの実験では、尾静脈を介して、0日目に、100%のこれらのマウスにおいて致死的である2000個のBCL1細胞を、動物に静脈内注入した。いくつかの実験では、1×104個のBCL1をBalb/cマウスの脇腹に皮下移植した。BCL1は、この設定で、リンパ腫/プラズマ細胞腫に似る、速やかに増殖する固形の腫瘍を形成する。
【0035】
同種異系のTh1記憶細胞の調製−−同種異系のTh1記憶細胞を調製した。手短に言えば、CD4+細胞を雄のC57BL/6の脾臓から単離し、ビーズ:CD4細胞の初期比が3:1の、抗CD3および抗CD28コーティングを施した常磁性ビーズ(CD3/CD28 T細胞Expanderビーズ,Dynal/Invitrogen)と、20IU/mLの組換えマウス(rm)IL−2、20ng/mL のrmIL−7、10ng/mLのrmIL−12(Peprotech,New Jersey)および10μg/mLの抗マウスIL−4 mAb(Becton Dickenson)とともに、10%のFBSと、ペニシリン−ストレプトマイシン−グルタミンと、可欠アミノ酸(NEAA)(Biological Industries,Israel)と、3.3mMのN−アセチルシステイン(NAC;Sigma)とを含むRPMI 1640媒体(完全媒体)の中で、6日間培養した。6日間培養した後、これらのCD4細胞を採取し、物理的な破壊および磁石上の通過によりビーズから外した。これらの細胞を新鮮なまま使用したか、または将来の使用のために液体窒素の中で保存した。使用に先立って、完全媒体の中で、抗CD3/抗CD28コーティングを施したナノビーズとともに、4時間インキュベートすることにより、これらの細胞を活性化した。
【0036】
ワクチン接種−−0.1mlのHBSSまたは完全媒体に懸濁したワクチン組成物をマウスに接種した。接種は、交互に足の肉趾の中、または毛をそった脇腹の皮膚の層の中のどちらかに行った。
【0037】
BCL1腫瘍抗原の調製−−BCL1溶解産物、および放射線照射されたBCL1細胞を腫瘍抗原源として使用した。2mLのHBSSに懸濁し、凍結(−80℃の冷凍庫の中)−融解(37℃の水槽)を3回繰り返すことで溶解した、1×107個のBCL1細胞から複数バッチ分のBCL1溶解産物を得た。トリパンブルー染色を利用し、顕微鏡で全ての細胞が破壊されていることを確認した。溶解産物を、確実に均質な溶液にするためによく混合し、別々の0.2mlの用量に分けた。これら用量のものを、使用する前に−80℃で保存した。新鮮なBCL1細胞に20Gyで放射線照射し、処置して1時間以内に使用した。
【0038】
モノクローナル抗体−−次のモノクローナル抗体(mAb)を表面表現型分析(phenotyping)に使用した:抗mCD4−PerCP−Cy5(IgG2a);アイソタイプの対照であるラットIgG2a−PerCP−Cy5.5;抗mCD62L−APC(IgG2a);アイソタイプの対照であるラットIgG2a−APC;抗mCD45RB−PE(IgG2a);アイソタイプの対照であるラットIgG2a−PE;抗mCD8a−FITC(IgG2a);アイソタイプの対照であるラットIgG2a−FITC;抗mCD44−FITC(IgG2b);アイソタイプの対照であるラットIgG2b−FITC;抗mCD154(CD40L)−PE(IgG);アイソタイプの対照であるラットIgG−PE;抗mCD25−APC(IgG1);アイソタイプの対照であるラットIgG1−APC;抗mCD3e−PerCP−Cy5.5(IgG);アイソタイプの対照であるアルメニアンハムスターIgG−PERCP−Cy5.5(すべてeBioscience,Inc.(San Diego,USA)からのものである)。
【0039】
ELISPOTアッセイ−−免疫したマウスからの脾臓細胞の単個細胞懸濁液を調製した。2×106個の生きた細胞が24ウェルプレートのウェルの中の2mlの完全媒体で培養されるように、これらの細胞を分けた。それぞれのウェルの脾臓細胞に検査抗原をパルス適用した(pulsed)。完全媒体の中に懸濁した、凍結融解された溶解産物として、この検査抗原を調製した。未処置の同質遺伝子的なマウスからの、BCL1、同種異系のTh1細胞、または脾臓細胞のいずれかの1×107個の細胞からの溶解産物を、それぞれのウェルにパルス適用した。加湿したCO2インキュベーターの中で、37℃で24時間、パルス適用したウェルを培養した。24時間後、非接着性細胞を採取し、洗浄し、数を数えた。その次に、抗IFN−γおよび抗IL−4プレコーティングを施したプレート(eBioScience,San Diego,CA)上で、1ウェルにつき100,000個の生きた細胞の割合で、これらの細胞を3つ組で培養し、20IU/mlのrmIL−2(Peprotech)を補充した完全媒体の中で、さらに20時間、インキュベートした。PHAで活性化した、同質遺伝子的なマウスからの新鮮な脾臓細胞をそれぞれのプレートに対する陽性の対照として使用した(データは示さない)。これらのプレートを、製品の使用説明書に従って顕色し、自動化した画像解析システム上で読み取った。
【0040】
低温免疫療法(cryoimmunotherapy)の腫瘍モデル−−両側固形腫瘍モデル、および全身性疾患を伴う固形腫瘍モデルの、2つの腫瘍モデルを低温免疫療法プロトコールに使用した。この両側固形腫瘍モデルは、0日目に1×104個のBCL1腫瘍細胞を毛をそった脇腹の両側に皮下注射したマウスからなっていた。この全身性疾患を伴う固形腫瘍モデルについては、マウスに、0日目に1×104個のBCL1の、左脇腹への単一の皮下接種を行い、その上2000個のBCL1を静脈内注入した。
【0041】
クライオアブレーション−−(液体窒素中に維持して)凍結したピンセットを10秒間腫瘍に軽く押し付けることで、麻酔をかけたマウス(塩酸ケタミン、100mg/kg、腹膜内)にクライオアブレーション処置を施した。腫瘍は処置時には16−25mm2であった。完全な腫瘍塊が氷状の球体に覆われた。ワクチン接種の前に、処置した領域の完全な融解を確実に行うために、1時間後に腫瘍内処置を行った。
【0042】
統計学−−二元配置(two−way)ANOVAを使用して、サイトカインレベル、ELISPOT応答頻度、および腫瘍体積の変化における有意差を決めた。0.05未満のP値を有意であるとみなした。ログランクおよびハザード比分析を使用して、Kaplan−Meier生存曲線を比較した(Graphpad Software;San Diego,CA)。60日より長く生存した動物をこの分析から除いた。
【0043】
アジュバントあり、またはなしでのBCL1ワクチン接種に対する免疫応答。(図1Aおよび図1B)アジュバントなしの(図1A)、または1×103個のCD3/CD28架橋した同種異系のTh1細胞(allo Th1)をアジュバントとして混合した(図1B)、凍結融解したBCL1腫瘍溶解産物(f/t BCL1)もしくは放射線照射したBCL1(irrad BCL1)の、皮内へのワクチン接種を、Balb/cマウス(n=3)に、1週間おきに4回行った。最初の接種に続いて5週目に、動物を屠殺し、脾臓を採取し、脾臓細胞の単個細胞懸濁培養物に、f/t BCL1、もしくは対照としてナイーブBalb/cマウスからのf/t脾臓細胞を、パルス適用した。24時間後、非接着性T細胞を取り出して、3つ組みで、抗IFN−γおよび抗IL−4コーティングを施したELISPOTプレートのウェル1つ当たり1×105個の細胞の割合で、培養した。20時間の培養の後、IFN−γおよびIL−4スポットを顕色し、コンピューター支援ビデオ画像分析により、数を数えた。それぞれの棒は、105個のT細胞中の、3つ組みの平均スポット数±SEを表す。図1Aおよび図1B上のアステリスク(*)は、対照と比較して、および括弧(])を付けた値の間で、有意差があること(p<0.05)を示し、n.s.は有意でない(p>0.05)ことを示す(ANOVA両側検定)。
【0044】
CD3/CD28架橋Th1細胞の特徴付け。(図2A、図2B、および図2C)ポジティブセレクションしたC57BL/6由来CD4+ T細胞を0日目に、rmIL−12、rmIL−7、rmIL−2および中和抗IL−4 mAbを補充したcRPMIの中で培養状態に置いて、3:1のビーズ:細胞比で、CD3/CD28結合T細胞Expanderビーズ(Dynal/Invitrogen)で活性化した。この細胞を3日目から6日目まで毎日分け、追加のT細胞Expanderビーズ、rmIL−7、rmIL−2、および抗IL−4 mAbを補充した。6日目に、この細胞を採取し、CD3/CD28結合ナノビーズで活性化した。0日目から6日目までの、CD45RB、CD62L、およびCD44における表現型シフトを図2Aに示す。黒色で埋めた領域はアイソタイプ対照を表す。黒色の線は0日目のCD4+細胞の表現型である。灰色で埋めた領域は、CD3/CD28ナノビーズ活性化前の、6日目の細胞の表現型であり、灰色の線はCD3/CD28ナノビーズ活性化後の表現型を表す。図2Bは、6日目に採取したCD3/CD28ナノビーズ活性化前後の細胞と比較した、0日目に培養状態に置いたCD4+細胞中のCD40Lエフェクター分子の発現における、表現型の変化を示す。活性化した細胞だけが、顕著な量のこのエフェクター分子を発現した。図2Cは、CD3/CD28ナノビーズ活性化の前および後の6日目の細胞と比較した、0日目のCD4+細胞中のCD25発現における、表現型の変化を表す。活性化した6日目の細胞の表現型は、CD4+,CD62Llo,CD45RBhi,CD44hi,CD40L+,CD25+であった。
【0045】
CD3/CD28架橋Th1記憶細胞の、サイトカイン産生(図3A)および免疫原性(図3B)。6時間目の細胞培養物からの上清中の、IFN−γおよびIL−4サイトカイン産生をELISAで分析した。IL−12(1日目から3日目のみ)、IL−7およびIL−2の存在下で、6日間培養したC57BL/6からポジティブセレクションしたCD4細胞は、60から100倍に拡張し、CD45RBhi、CD44hiエフェクター/記憶細胞に分化した。これらの細胞を6日目に採取し、洗浄し、そしてCD3/CD28ナノビーズで再活性化し、6時間培養し、そしてELISAでの分析(図3A:新鮮な活性化Th1)のために上清を集めた。これらの結果と、最初に液体窒素中で凍結し、それから後で融解して、CD3/CD28ナノビーズで活性化した、同じ6日目に採取した細胞の、6時間目の培養物からの上清とを比較した(図3A:融解した活性化Th1)。比較のために、ポジティブセレクションしたCD4細胞(0日目に培養状態に置いたのと同じもの)のサンプルからの上清を、3:1のビーズ:細胞比で、CD3/CD28T細胞Expanderビーズで活性化し、6時間培養した(図3A:CD4ナイーブ)。6日目に採取した細胞からの上清はまた、6時間、CD3/CD28活性化なしで培養した(図3A:新鮮な非活性化Th1)。
【0046】
これらの細胞組成物の免疫原性をELISPOTで検査した(図3B)。C57BL/6マウスに由来する、1×104個の、新鮮な活性化Th1細胞、新鮮な非活性化Th1細胞、もしくはポジティブセレクションしたCD4細胞(対照)を、同種異系のBalb/cマウスに、4週間にわたり、1週間に1回皮下接種した。5週目の間に、これらのマウス(n=3)を屠殺し、脾臓を取り出し、そして脾臓細胞の単個細胞培養物を立ち上げた(establish)。この培養物に、凍結/融解したCD57BL/6脾臓細胞の溶解産物をパルス適用し、24時間培養した。その次に非接着性T細胞画分を採取し、洗浄し、そして1×105個の細胞を、3つ組みで、抗IFN−γもしくは抗IL−4コーティングを施したELISPOTプレートに移して、さらに20時間、20IUのrmIL−2の存在下で培養した。それぞれの棒は、3つ組みの平均スポット数±SEを表す。
【0047】
保護ワクチン接種および腫瘍チャレンジ。BCL1腫瘍に対してワクチン接種されたBalb/cマウスのKaplan−Meier生存曲線(それぞれのグループにつきn=8)。(図4)0日目に、全てのマウスに2000個のBCL1細胞を静脈内注入した。腫瘍チャレンジに先立って、−22日目、−15日目、−8日目、および−1日目に、媒体のみ(対照)、1×104個の同種異系のCD3/CD28架橋Th1細胞(Th1のみ)、放射線照射したBCL1を混合した1×104個の同種異系のCD3/CD28架橋Th1細胞(irrad BCL1+Th1)、もしくは凍結/融解したBCL1腫瘍溶解産物を混合した1×104個の同種異系のCD3/CD28架橋Th1細胞(f/t BCL1+Th1)のいずれかを、マウスに皮内接種した。対照マウスの生存期間(survival)の中央値は21日であった。irrad BCL1のみ(生存期間の中央値=20.5日)もしくはf/t BCL1のみ(生存期間の中央値=20.0日)のワクチン接種は、対照と比較して生存期間に有意に影響しなかった。Th1のみの前処置は、平均24日へと有意に生存期間を延長した(ハザード比=3.14)。アジュバントとしてTh1を用いてirrad BCL1をワクチン接種することは、生存期間に有意な効果がなかった(平均生存期間=22日)。f/t BCL1とTh1との混合は、50%のマウスが致死腫瘍チャレンジにおいて生存する結果となり、生存期間の中央値は46日であった(ハザード比=6.08)。
【0048】
治療ワクチン接種。0日目に2000個のBCL1が静脈内に注入されたBalb/cマウス(1グループにつきn=6)のKaplan−Meier生存曲線。(図5)1日目、8日目、および15日目に、1×104個の同種異系CD3/CD28架橋Th1記憶細胞のみ(Th1)、もしくはTh1を混合した、1×106個のBCL1のf/t溶解産物(f/tBCL1+Th1)の、いずれかの、皮内注射をマウスに行った。対照マウスは平均19.5日生存した。Th1のみをワクチン接種されたマウスは、対照より有意に長く生存し、平均26日生存した(ログランク:p=0.001;ハザード比:3.981)。f/tBCL1+Th1をワクチン接種されたマウスもまた、対照マウスより有意に長く生存し、平均生存期間は34日であり(ログランク:p=0.001;ハザード比:3.981)、そしてそれはTh1のみのグループに比べて有意に異ならなかった。
【0049】
治療ブースターを用いたプライミング。BCL1腫瘍に対してワクチン接種されたBalb/cマウスの、Kaplan−Meier生存曲線(それぞれのグループにつきn=8)。(図6)0日目に全てのマウスに2000細胞のBCL1を静脈内注入した。腫瘍チャレンジに先立って、−22日目、−15日目、−8日目、および−1日目に、媒体のみ(対照)、1×104個の同種異系のCD3/CD28架橋Th1細胞(Th1)、または凍結/融解したBCL1腫瘍溶解産物を混合した、1×104個のTh1(Th1+f/t BCL1プライミング)の、いずれかを皮内接種することで、マウスをプライミングした。7日目に、Th1のみ、もしくはf/t BCL1を混合したTh1の、いずれかを用いて、いくつかのマウスに治療ブースターの皮内接種を施した。対照マウスは中央値20日生存した。Th1のみのワクチン接種は、中央値23日へと、有意に生存期間を延長する結果となった(ログランク:p=0.011;ハザード比:2.478)。Th1のみのワクチン接種に続いてTh1ブースターを施すことで、対照と比較して、有意な生存の利益(生存期間の中央値=25日)(ログランク:p<0.0001;ハザード比=3.915)が生じ、Th1のみと比較して有意な生存(ログランク:p=0.03、ハザード比=2.337)が生じた。アジュバントとしてTh1を用いた、f/t BCL1のワクチン接種(Th1+f/t BCL1プライミング)によりプライミングされたマウスは、生存期間の中央値が57.5日であり、50%のマウスが致死チャレンジにおいて生存した。Th1+f/t BCL1でプライミングされ、Th1ブースターを施されたマウスは、75%が致死チャレンジにおいて生存した。Th1細胞のみでプライミングされ、f/t BCL1+Th1を用いた治療ブースター注射を施されたマウスは、対照と比較して有意な生存の利益を有し、生存期間の中央値は46日であり(ログランク:p<0.0001;ハザード比=5.633)、37.5%のマウスが致死チャレンジにおいて生存した。
【0050】
低温免疫療法への固形腫瘍および全身性腫瘍の応答。固形腫瘍モデルにおいて、0日目に、Balb/cマウスに、両側の毛をそった脇腹への、1×104個のBCL1腫瘍細胞の皮下接種を施した。全身性腫瘍モデルにおいて、0日目に、Balb/cマウスに、1×104個のBCL1腫瘍細胞の左脇腹への接種、および尾静脈を介した2000個のBCL1の静脈への接種を施した。14日目に、左側の腫瘍塊の全ての観察できた腫瘍のクライオアブレーションを単独で(cryoのみ)、もしくは腫瘍内を同種異系のCD3/CD28架橋Th1記憶細胞(Th1)とともに(cryo+Th1)、またはクライオアブレーションなしで、腫瘍内をTh1細胞のみで(Th1のみ)、処置された全身性腫瘍モデル(図7A)および固形腫瘍モデル(図7B)マウス(それぞれのグループにつきn=8)のKaplan−Meier生存曲線。対照マウスは、全身性モデルにおいては中央値21日、固形腫瘍モデルにおいては28.5日、生存した。cryo+Th1処置は、全身性モデルにおいて、有意な生存の利益を生じた(ログランク:p=0.0059;ハザード比=3.194)。固形腫瘍モデルにおける生存の利益は有意ではなかった(n.s.)。全てのマウスに対して、7日目に、1×105個のTh1の静脈内注入を加えて、同じ実験を繰り返した。図7Cは、このプロトコールを用いて処置されたマウスについて、反対側にある未処置の腫瘍塊の腫瘍増殖曲線を示す。cryo+Th1で処置されたマウスの40%は疾患が治癒した。結局疾患で死んだ、もう一方の60%のマウスにおいて、反対側の腫瘍の増殖は有意に抑制された(p<0.01)。全身性腫瘍モデル(図7D)における、Kaplan−Meier生存曲線を示す。腫瘍内をTh1細胞のみで処置されたマウスは、平均28日生存し、そしてそれは、平均19日生存した対照マウスより有意に長かった(ログランク:p<0.0001;ハザード比=4.291)。cryo+Th1で処置されたマウスの40%は90日より長く生存した。
【0051】
結果
BCL1免疫原性−−Balb/cマウスにおける、BCL1ワクチン接種に対するネイティブの免疫応答を特徴付けし、アジュバントを加えることの生物学的効果を分析するためのベースライン(baseline)として役立たせた。BCL1は長年にわたりインビボで連続して継代されているので、現行のBCL1クローンは、同質遺伝子的なBalb/cマウスにアジュバントなしで投与される場合、「イミュノエディティング(immunoediting)」に起因して、非免疫原性であると証明されることになる。
【0052】
放射線照射されたBCL1全体(irrad BCL1)もしくはBCL1の凍結融解された溶解産物(f/t BCL1)のいずれかである、BCL1の2つのワクチン調製物の免疫原性を、アジュバントなし(図1A)、またはアジュバントとして1×103個のCD3/CD28架橋同種異系のTh1細胞(allo Th1)を混合して(図1B)、検査した。「危険仮説」は、f/t BCL1溶解産物の調製物は、irrad BCL1調製物より免疫原性があることを予想している。f/t BCL1およびirrad BCL1調製物の免疫原性を検査するために、4週間にわたり、1週間につき1回、Balb/cマウスに、0.2mlのHBSS中でこれらを皮内(i.d.)へ投与した。
【0053】
アジュバントなしの、irrad BCL1およびf/t BCL1の両方のワクチン接種は、有意な腫瘍特異的な免疫応答を誘発し得た(図1A参照)。irrad BCL1のワクチン接種後の、腫瘍特異的なT細胞の平均頻度(IL−4+IFN−γスポット)は、1/64であり、そしてそれはf/t BCL1ワクチン接種後の平均頻度である1/227より、有意に高かった(3.5倍)。両方のワクチン接種のプロトコールは、対照の平均頻度である1/3333と比較して、応答するT細胞を有意に高い頻度で生じた(p<0.001)。
【0054】
両方のワクチン調製物は、Th2(IL−4)に偏った、腫瘍特異的なT細胞の応答を引き起こした。irrad BCL1ワクチン接種に対して応答した、T細胞IL−4の平均頻度は、1/93であり、そしてIFN−γ応答は有意に低く(p<0.001)、1/208であった。f/t BCL1ワクチン接種されたマウス中の、IL−4応答物の平均頻度は、IFN−γ応答の平均頻度である1/769より、有意に高く(p<0.01)、1/322であった。irrad BCL1ワクチン接種されたマウス中のIFN−γ応答物の平均頻度は、f/t BCL1ワクチン接種されたマウスと比べて、有意に異ならなかった。
【0055】
irrad BCL1もしくはf/t BCL1がワクチン接種されたマウスのいずれも、2000個のBCL1細胞が尾静脈を介して静脈内に投与された、致死チャレンジにおいて生存し得ず(図4参照)、このことは、両方のBCL1ワクチン接種プロトコールに対する有意な免疫応答は、保護的ではなかったことを示している。
【0056】
CD3/CD28架橋Th1記憶細胞の特徴付け−−最初に、表面表現型(図2A−C)、サイトカイン産生プロファイル(図3A)、および同種異系のBalb/cマウスに週1回の皮内注射を4回行った後の免疫応答(図3B)について、C57BL/6由来CD3/CD28架橋Th1記憶細胞を特徴付けした。
【0057】
CD62L、CD45RB、CD44、CD25、およびCD40Lの表面発現を分析し、0日目のCD4+源の細胞のFACS分析(FACS)により、6日間の培養の間の細胞の分化を特徴付けし、そしてこの染色パターンを、CD3/CD28架橋による活性化の前および後、6日間培養した後採取された同じ細胞と、比較した。結果は図2Aに示す。
【0058】
脾臓細胞から、0日目にポジティブセレクションされたCD4+細胞は、CD62Lhi、CD44hiと染色されたが、CD62Lhi表現型からCD62Llo表現型に変わった。従って、6日目のCD3/CD28架橋細胞は、CD4+、CD62Llo、CD45RBhi、CD44hiの表現型を発現した。
【0059】
表現型の上で、マウス記憶細胞は通常はCD62Llo、CD45RBlo、CD44hiである。本発明者らの培養方法により産生された細胞の、CD62Llo,CD45RBlo,CD44hi表現型は、以前から、自己免疫疾患および同種異系移植拒絶と結び付けて考えられている、記憶/エフェクター細胞と同じ表現型を発現する。
【0060】
6日目の細胞をCD3/CD28架橋により4時間活性化することは、9.27%から67.65%へとCD40Lを発現する細胞の数の有意な増加(図2B)を引き起こし、そしてこのことは、63.09%から91.52%へとCD25を発現する細胞が増加したこと(図2C)と相互に関連した。
【0061】
これらのCD3/CD28活性化されたCD4+,CD62Llo,CD45RBhi,CD44hi,CD40L+,CD40L+,CD25+記憶/エフェクター細胞(n=6バッチ)の検査を、新鮮なままの6日目に採取された細胞、もしくは液体窒素中で凍結され、融解され、そして活性化された、6日目に採取された細胞が、CD3/CD28架橋により活性化された後のサイトカイン産生について、行った。活性化された0日目のCD4+細胞、および活性化されなかった新鮮なままの6日目に採取された細胞を、比較のために含めた(図3参照)。
【0062】
新鮮な活性化CD4+記憶/エフェクター細胞は、多大な量のIFN−γ(4210±169.7pg/ml/6h)およびごくわずかのIL−4(52.33±6.8pg/ml/6h)を発現したことから、これらの細胞はTh1記憶細胞に属するものとされる。これらのTh1記憶細胞を活性化に先立って液体窒素中で凍結し、そしてその後融解し、活性化するとき、これらは、Th1表現型を維持するが、新鮮な細胞より約29%少ないIFN−γおよびIL−4を発現する(2985±173.5pg/ml/6hのIFN−γ、および37.2±6.95pg/ml/6hのIL−4)。非活性化Th1記憶細胞は、ごくわずかの量のサイトカインを産生した(13±6.7pg/ml/6hのIFN−γ;8.8±3.6pg/ml/6hのIL−4)。通常のC57BL/6脾臓細胞の単個細胞懸濁物からポジティブセレクションにより単離された、源のCD4+細胞は、CD3/CD28結合マイクロビーズ(microbeads)を用いた活性化の際に、Th2に偏ってサイトカインを産生した(254±50.2pg/ml/6h IL−4;53.5±11.4pg/ml/6h IFN−γ)。
【0063】
これらのデータは、この培養条件によって、Th2に偏ったCD4+ナイーブ細胞が生じ、強く極性化した(polarized)Th1記憶/エフェクター細胞に分化することを実証する。そしてこの細胞は、CD3/CD28架橋の際にCD40Lを発現し、そして通常と異なる(unusual)CD62Llo、CD45RBhi、CD44hi記憶表現型を発現する。
【0064】
同種異系のCD3/CD28架橋Th1記憶細胞に対する免疫応答−−同種異系のCD3/CD28架橋Th1記憶細胞が、1型免疫(Type 1 immunity)の促進のためのアジュバント活性を与える能力を特徴付けるために、研究を行い、C57BL/6由来Th1記憶細胞は、それ自身の同種異系抗原に対する1型免疫を同種異系のBalb/c宿主(hosts)において、誘発し得るかどうかを決めた。マウスに、1×104個のCD3/CD28架橋Th1記憶細胞、または1×104個のCD3/CD28架橋のないTh1記憶細胞を、0.1mlのcRPMI中で、皮内投与した。cRPMIのみ(along)の接種を対照として用いた。マウス(n=6)に、4週間にわたり、1週間につき1回、接種した。
【0065】
最初のワクチン接種の後、5週目の間に、マウスを屠殺し、そして脾臓を取り出し、そして以前のように、ELISPOT分析のために単個細胞懸濁物を調製した。結果を図3Bに示す。
【0066】
同種異系のCD4細胞(0日目)のみのワクチン接種は、1/348のT細胞という、ベースラインである同種異系の免疫応答平均頻度(IFN−γ+IL−4)を生じた。CD3/CD28架橋のない同種異系のTh1細胞(6日目)は、1/268のT細胞という応答平均頻度を生じた。そしてこの頻度は、CD4細胞のみと比べて有意に異ならなかった。しかしながら、同種異系のTh1細胞のCD3/CD28架橋は、1/34という同種異系抗原特異的なT細胞の平均頻度を生じた。そしてこの頻度は、同種異系のCD4細胞および非活性化同種異系のTh1細胞の応答頻度より、有意に高かった(p<0.0001)。
【0067】
同種異系のCD4細胞および非活性化同種異系のTh1記憶細胞に対する免疫応答は、歪んで(skewed)Th2免疫を生じ、他方、CD3/CD28架橋同種異系のTh1記憶細胞は、強く極性化したTh1応答を誘発した。CD4細胞ワクチン接種は、1/181というIL−4産生するT細胞の平均頻度を生じ、そしてこの頻度は、1/4167というIFN−γ産生するT細胞の平均頻度より、有意に高かった(p<0.0001)。非活性化同種異系のTh1記憶細胞は、1/147というIL−4応答するT細胞の平均頻度を誘発し、そしてこの頻度は、1/1587というIFN−γ応答するT細胞の平均頻度より、有意に高かった(p<0.0001)。同質遺伝子的な脾臓細胞対照は、検出することができる、適応免疫応答(adaptive immune response)を誘発しなかった(結果は示さない)。
【0068】
保護ワクチン接種およびチャレンジ−−同種異系のTh1細胞が、アジュバントとして役立ち得て、BCL1腫瘍の致死チャレンジからマウスを保護するかどうかを決めるために、凍結/融解したBCL1溶解産物(f/t BCL1)または放射線照射されたBCL1細胞(irrad BCL1)のいずれかのワクチン混合物を調製し、単独(対照)または1×104個の同種異系のTh1細胞と混合して、使用した。腫瘍抗原源のない同種異系のTh1細胞のみを対照として用いた。マウス(それぞれのグループにおいてn=8)に、−22日目、−15日目、−8日目、および−1日目に、1週間おきに、4回のワクチン調製物の皮内接種を受けさせた。媒体のみの注射を対照として用いた。0日目に、全てのワクチン接種されたマウスに、2000個のBCL1細胞の、致死静脈内チャレンジを受けさせた。
【0069】
マウスを生存について追跡した(図4参照)。媒体のみの対照マウスの生存期間の中央値は、21日であった。irrad BCL1、f/t BCL1、または同種異系のTh1のみのいずれかのワクチン接種は、腫瘍チャレンジからの保護を生じなかった。興味深いことに、同種異系のTh1のみのワクチン接種は、保護的ではなかったが、チャレンジされたマウスの生存期間を平均24日へと有意に延長した(ハザード比=3.14)。irrad BCL1+TH1細胞の組成物のワクチン接種は、生存期間に影響せず(生存期間の中央値=22日)、保護を与えなかった。f/t BCL1+Th1細胞のワクチン接種によって、46日という生存期間の中央値が生じ(ハザード比=6.08)、50%のマウスが致死腫瘍チャレンジにおいて生存した。
【0070】
治療ワクチンプロトコール−−上記のデータは、腫瘍のなかった(tumor free)時にワクチン接種され、その次に致死用量の腫瘍でチャレンジされた動物における、f/t BCL1およびアジュバントとして用いられた同種異系のCD3/CD28架橋Th1記憶細胞のワクチン接種の保護的な効果を実証した。この保護的な効果はまた、治療効果を与え得るかどうかを決めるために、前もって存在する(pre−existing)腫瘍を有したマウスにおける、ワクチン接種プロトコールを調べた。
【0071】
4回の、1週間につき1回の皮内接種(28日)に続く、35日目の腫瘍チャレンジを、以前の保護ワクチン接種プロトコールは含んでいた。マウスは、致死BCL1注入の19日から22日後に疾患で死ぬので、このワクチン接種スケジュールを本発明者らのモデルにおける治療設定に移すことはできなかった。従って、マウス(それぞれのグループにつきn=6)に、0日目に、静脈内への致死用量の2000個のBCL1細胞を受けさせ、そして1日目、8日目、および15日目に、1×104個の同種異系のCD3/CD28架橋Th1記憶細胞のみ(Th1)、または同種異系のTh1を混合した1×106個のBCL1のf/t溶解産物(f/t BCL1+Th1)のいずれかの皮内への治療ワクチン接種を受けさせた。同じスケジュールで媒体のみの接種を対照として役立たせた。結果は図5に示す。
【0072】
対照マウスは平均19.5日生存した。興味深いことに、どの腫瘍抗原源もなしで、Th1のみをワクチン接種されたマウスは、対照より有意に長く生存し、平均26日生存した(ログランク:p=0.001;ハザード比:3.981)。f/t BCL1+Th1をワクチン接種されたマウスはまた、対照マウスより有意に長く生存し、平均生存期間は34日であったが(ログランク:p=0.001;ハザード比:3.981)、これは同種異系のTh1のみのグループと比べて有意に異ならなかった。これら治療ワクチン接種プロトコールのいずれを用いても、マウスは治癒しなかった。
【0073】
プライミングおよび治療ブースターワクチン接種−−治療ワクチンプロトコールにおいてどのマウスも治癒しなかったので、BCL1腫瘍が注入されたマウスの、19日から22日の寿命は、速やかに増殖する腫瘍を圧倒し得る適応免疫応答を発揮するのに、十分な時間ではなかった。従って、検査を実施し、腫瘍チャレンジに先立って同種異系のTh1を含むワクチン接種を用いてプライミングされたマウスは、治療ワクチン接種に対してもっとよく応答するかどうかを決めた。これらの実験において、−22日目、−15日目、−8日目、および−1日目に、媒体のみ(対照)、1×104個の同種異系のCD3/CD28架橋Th1細胞(Th1)、または凍結/融解したBCL1腫瘍溶解産物を混合した1×104個のTh1(Th1+f/t BCL1プライミング)のいずれかの皮内接種により、マウスをプライミングした。0日目に全てのマウスに2000個のBCL1を注入した。7日目に、1×104個のTh1のみ、またはf/t BCL1を混合した1×104個のTh1のいずれかの、皮内治療ブースター接種をいくつかのマウスに施した。結果を図6に示す。
【0074】
対照マウスは中央値20日生存した。再びTh1のみでプライミングすることによって、中央値23日へと有意な生存期間の延長が生じた(ログランク:p=0.011;ハザード比:2.478)。Th1のみを用いたプライミングに続くTh1治療ブースターによって、対照と比較して有意な生存の利益(生存期間の中央値=25日)が生じ(ログランク:p<0.0001;ハザード比=3.915)、そしてTh1プライミングのみと比較して有意な生存を生じた(ログランク:p=0.03;ハザード比=2.337)。アジュバントとしてTh1を用いたf/t BCL1のワクチン接種(Th1+f/t BCL1プライミング)によりプライミングされたマウスは、生存期間の中央値が57.5日であり、50%のマウスが致死チャレンジにおいて生存し、本発明者らの以前の実験において同じ結果を得た(図4参照)。Th1+f/t BCL1でプライミングされ、Th1治療ブースターを投与されたマウスは、致死チャレンジ後75%が生存した。Th1細胞のみでプライミングされ、f/t BCL1+Th1を用いた治療ブースター注射を施されたマウスは、対照と比較して有意な生存の利益を有し、生存期間の中央値は46日であり(ログランク:p<0.0001;ハザード比+5.633)、そして37.5%のマウスが致死チャレンジにおいて生存した。
【0075】
Th1プライミング/Th1+f/t BCL1ブースターグループについてのKaplan−Meier生存曲線の形状は、致死BCL1注射後同様にマウスが治癒する結果となった他のグループと比較して、異なる。Th1+f/t BCL1プライミング後生存しなかった、50%のマウス、および致死チャレンジにおいて生存しなかった、Th1+f/t BCL1プライミング/Th1ブースターグループの25%は、直ちに白血病のしるしを示し(触診可能な脾腫および有意な重量増加)、そして非常に早く、平均24日の時にこの疾患で死んだ。対照的に、同様に明らかな白血病を有したが対照マウスより有意に長く生存したマウスサブセット(62.5%)、および外見上は治癒し、そして決して白血病のしるしを示さなかった、別のサブセット(37.5%)を、Th1プライミング+f/t BCL1処置グループは含んでいた。
【0076】
低温免疫療法−−治療ワクチン接種の効能をさらに向上させることを試みるために、壊死によるインサイチューの腫瘍死(tumor death)は、本発明者らの他の凍結融解した溶解産物の調製物より強力な適応免疫応答を与えると、仮定した。壊死により死滅した細胞(Neurotically killed cells)は、DCの供給および成熟の原因である、窮迫(distress)の内因性シグナルを活性化することが知られており、このシグナルは、健康なまたはアポトーシスで(apoptotically)死んだ細胞により生成されず、そして本発明者らの溶解産物の調製物には欠けている可能性がある刺激である。その上、これらの刺激への未熟なDCの暴露は、局所および全身(systematic)のTh1免疫の開始に重要な、成熟シグナルを提供する。
【0077】
壊死によりインサイチューの死を引き起こすために、クライオアブレーションプロトコールを用いた。クライオアブレーション手術は、臨床(clinic)に移すことができる手法であり、そしてこの手術は組織壊死を誘導し得る、十分にねらいが定められ(well−aimed)および制御された方法であることが示されている。クライオアブレーションは、(凍結された組織の自己の抗原に対して特異的な免疫学的応答を生成し得る)抗原刺激を誘発することが知られている。
【0078】
クライオアブレーション(cryoblation)について皮下腫瘍が利用可能であった2つの腫瘍モデルを立ち上げた。固形腫瘍モデルにおいては、Balb/cマウスに0日目に、1×104個のBCL1腫瘍細胞の、毛をそった脇腹の両側への皮下接種を施した。全身性腫瘍モデルにおいては、Balb/cマウスに0日目に、左脇腹へ1×104個のBCL1腫瘍細胞の接種物(inoculous)および尾静脈を介して静脈内へ2000個のBCL1の接種物を投与した。その次に、固形腫瘍が16mm2より広い面積へと増殖した後、14日目に、これらの動物(1グループにつきn=8)の左側の腫瘍を、クライオアブレーション(cryoblation)のみ、腫瘍内への1×103個の同種異系のCD3/Cd28架橋Th1記憶細胞と共にクライオアブレーション(cryoblation)(Th1)、Th1細胞のみ、または対照として腫瘍内への完全媒体のみを用いて処置した。結果を図7Aおよび図7Bに示す。
【0079】
全身性腫瘍モデル(図7A)において、対照マウスの平均生存期間は21日であった。クライオアブレーション(cryoblation)のみおよびTh1のみで処置されたマウスの生存期間は、対照と比べて異ならなかった。しかしながら、クライオアブレーション(cryoblation)の腫瘍内Th1処置との組み合わせによって、平均28.5日へと有意に延長した生存期間を生じた(ログランク:p=0.0057;ハザード比:3.194)。固形腫瘍モデル(図7B)において、対照マウスの平均生存期間は28日であった。このモデルにおいて検査された処置はどれも、有意な生存の利益を提供しなかった。
【0080】
このクライオアブレーション(cryoblation)プロトコールによって、その処置の結果治癒したマウスは生じなかったことから、本発明者らは処置を改変し、全てのマウスについて7日目に1×105個の同種異系のTh1の静脈内注入を含ませた。0日目にBCL1が、致死させるように(lethally)注射されたマウスにおいて、7日目に1×105個の同種異系のTh1細胞を静脈内注入することによって有意な生存の利益が生じることが、以前に示されている。この処置は治癒する能力のある(potentially curative)適応免疫応答を発揮するためのより長い時間を提供し、そして従って、低温免疫療法(cryoummunotherapy)を施されたマウスの生存期間に影響する、と仮定した。その上、この処置は、同種異系抗原免疫についてプライミングし、前に(図6)生存の利益を提供することが示されている。
【0081】
これらの研究の結果を図7C(固形腫瘍モデル)および図7D(全身性腫瘍モデル)に示す。固形腫瘍モデルにおいて、カリパスを用いた腫瘍の最も長い幅および長さの測定により、腫瘍の面積を決めた。クライオアブレーション(cryablation)による左側の腫瘍の完全なアブレーション(ablation)の後、反対側にある未処置の腫瘍塊だけを測定した。反対側のみの腫瘍増殖曲線、ならびにクライオアブレーション(cryoblation)および腫瘍内への同種異系のTh1の組み合わせ(cryo+Th1)で処置されたマウス。組み合わせ治療を用いて処置されたマウスの40%は、腫瘍の証拠なく生存した。反対側にある腫瘍の面積は、生存した40%のマウスおよび結局疾患で死んだ60%の、応答を別々に示すように提示されている。反対側にある腫瘍の増殖は、結局疾患で死んだ、60%のマウスにおいて有意に抑制された(p<0.01)。全身性腫瘍モデル(図7D)において、腫瘍内への同種異系のTh1細胞のみで処置されたマウスは平均28日生存した。この生存は平均19日生存した対照マウスより有意に長かった(ログランク:p<010001;ハザード比=4.291)。cryo+Th1で処置されたマウスの40%は90日より長く生存した。
【0082】
本発明は好ましい実施態様を参照して記載されてきたが、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく形態および詳細において変更が行われ得ることを当業者は認識する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処置後の、循環中のTh1細胞の数を増加させることによって疾患を処置するための医薬の製造における、同種異系のTh1記憶細胞を含有する組成物の使用。
【請求項2】
前記組成物が1つまたはそれより多い疾患関連抗原を含む、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記抗原が、生きている細胞全体または生物全体である、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
前記抗原が、不活化された細胞全体、生物全体、またはそれらからの溶解産物である、請求項2に記載の使用。
【請求項5】
前記抗原が腫瘍細胞または腫瘍細胞溶解産物である、請求項2に記載の使用。
【請求項6】
前記疾患ががんである、請求項1に記載の使用。
【請求項7】
前記疾患が感染性病原体に起因する、請求項1に記載の使用。
【請求項8】
前記疾患関連抗原が、同時に、別々に、または、前記同種異系の活性化Th1記憶細胞の処置後に投与される、請求項2に記載の使用。
【請求項9】
前記疾患関連抗原が前記同種異系の活性化Th1記憶細胞と組み合わせられる、請求項1に記載の使用。
【請求項10】
同種異系の活性化Th1記憶細胞を含有する、患者の疾患を処置するための治療組成物であって、該治療組成物は、投与すると、患者において循環中のTh1細胞の数を増加させる、組成物。
【請求項11】
1つまたはそれより多い疾患関連抗原をさらに含有する、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記抗原が、生きている細胞全体または生物全体である、請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
前記抗原が、不活化された細胞全体、生物全体、またはそれらからの溶解産物である、請求項10に記載の組成物。
【請求項14】
前記抗原が腫瘍細胞または腫瘍細胞溶解産物である、請求項10に記載の組成物。
【請求項15】
前記疾患ががんである、請求項10に記載の組成物。
【請求項16】
前記疾患が感染性病原体に起因する、請求項10に記載の組成物。
【請求項1】
処置後の、循環中のTh1細胞の数を増加させることによって疾患を処置するための医薬の製造における、同種異系のTh1記憶細胞を含有する組成物の使用。
【請求項2】
前記組成物が1つまたはそれより多い疾患関連抗原を含む、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記抗原が、生きている細胞全体または生物全体である、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
前記抗原が、不活化された細胞全体、生物全体、またはそれらからの溶解産物である、請求項2に記載の使用。
【請求項5】
前記抗原が腫瘍細胞または腫瘍細胞溶解産物である、請求項2に記載の使用。
【請求項6】
前記疾患ががんである、請求項1に記載の使用。
【請求項7】
前記疾患が感染性病原体に起因する、請求項1に記載の使用。
【請求項8】
前記疾患関連抗原が、同時に、別々に、または、前記同種異系の活性化Th1記憶細胞の処置後に投与される、請求項2に記載の使用。
【請求項9】
前記疾患関連抗原が前記同種異系の活性化Th1記憶細胞と組み合わせられる、請求項1に記載の使用。
【請求項10】
同種異系の活性化Th1記憶細胞を含有する、患者の疾患を処置するための治療組成物であって、該治療組成物は、投与すると、患者において循環中のTh1細胞の数を増加させる、組成物。
【請求項11】
1つまたはそれより多い疾患関連抗原をさらに含有する、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記抗原が、生きている細胞全体または生物全体である、請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
前記抗原が、不活化された細胞全体、生物全体、またはそれらからの溶解産物である、請求項10に記載の組成物。
【請求項14】
前記抗原が腫瘍細胞または腫瘍細胞溶解産物である、請求項10に記載の組成物。
【請求項15】
前記疾患ががんである、請求項10に記載の組成物。
【請求項16】
前記疾患が感染性病原体に起因する、請求項10に記載の組成物。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【公表番号】特表2012−504638(P2012−504638A)
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−530213(P2011−530213)
【出願日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際出願番号】PCT/US2009/059177
【国際公開番号】WO2010/039924
【国際公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(510290555)イミュノバティブ セラピーズ, リミテッド (4)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際出願番号】PCT/US2009/059177
【国際公開番号】WO2010/039924
【国際公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(510290555)イミュノバティブ セラピーズ, リミテッド (4)
【Fターム(参考)】
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