説明

脂取り紙

【課題】拭き取る皮脂量が少ない場合であってもユーザが視覚で十分に確認することができ、更に拭き取る皮脂量が多い場合であってもこれを確実に拭き取ることができる脂取り紙を提供する。
【解決手段】シート状基材10と、前記シート状基材10の少なくとも片面上に設けた有色の第1吸脂層11と、前記第1吸脂層11上に設けられ吸脂したときに不透明な状態から透明な状態に変化する第2吸脂層12とを含む脂取り紙1である。本発明によると、第2吸脂層が吸脂したときに不透明な状態から透明な状態に変化するので下側に位置する第1吸脂層の色が発現する。その一方で、第2吸脂層の下側に位置する第1吸脂層が吸脂能力を備えているので、拭き取る皮脂が多い場合でも対処できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂取り紙に関する。更に詳しくは、肌(皮膚)表面に浮き出した皮脂や汗を拭き取るために用いる脂取り紙に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の顔面、特に鼻、額、眉間などは皮脂の分泌が盛んである。皮脂が分泌されると顔面がべたついたり、てかりが生じたりする。顔面に皮脂が付着していると、化粧の乗りが悪くなり、化粧崩れの原因にもなる。皮脂は、洗顔をすることによって落すことができる。しかし、外出先などでは必要に応じて洗顔するというのは現実的に困難である。そこで、浮き出した皮脂を簡易に取り除くことができる脂取り紙が、従来から広く利用されている。特に、近年にあっては、男女を問わず肌を清潔に保つという意識が高まり、脂取り紙が一般に広く利用されるようになっている。
【0003】
上記のような脂取り紙としては、古くは金箔を打ち伸ばすときに用いた箔打ち紙を小さく裁断したものが使用されていた。箔打ち紙は、その繊維が砕かれるほどに叩かれることにより柔軟性、平滑性が付与されるため肌触りがよい。更に、箔打ち紙は皮膚に浮き出た微量の皮脂を吸収することによって透明化するので、皮脂が除去された効果を視覚的に確認できるという特徴(視認性)を有している。
【0004】
上記箔打ち紙の特徴からも理解できるように、一般に脂取り紙に求められる品質としては、柔軟性、肌触りの良さと共に、皮脂を吸収したことをユーザに認識させる視認性を備えていることにある。更に、前述したように近年における脂取り紙の需要の伸びに伴い、ユーザのニーズも多様化している。よって、例えば視認性に改良を加えた脂取り紙について提案がされている。
【0005】
例えば、特許文献1は、白色または着色された着色層と、この着色層と色相を異にし、吸脂(吸油)によって透明化する吸脂層(吸油層)とを積層してなる脂取り紙(油脂拭き取り用紙状体)について開示している。この脂取り紙は、吸脂すると表面の吸脂層が透明化して下に配置した着色層の色が現れることになるので、微量の皮脂を拭き取ったような場合であっても視覚的に確認することができる。
【0006】
【特許文献1】実公昭50−44712号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1で開示する脂取り紙は皮脂が微量付着した場合であっても、ユーザが視覚的に確認できることを意図して提案されたものである。よって、皮脂の吸収量については配慮しておらず、少量の皮脂が付着した場合でも吸油層が透明化して下に位置する着色層の色が発現するようにしている。ところが、肌の皮脂量はユーザよって異なる。また同じユーザであっても季節や環境によって皮脂量が異なる場合がある。よって、特許文献1の脂取り紙のように、吸脂したことを確実に検出できるように少量の皮脂で吸脂層が透明化するように形成してあると、全体としての吸脂量(吸脂能力)が劣ることになる。よって、吸脂層が透明化して着色層が全面に現れても、皮脂量が多いユーザが使用した場合には皮脂を拭き取れないという事態になる。そのために、肌に浮き出た皮脂を何度も拭き取ることが必要となり、脂取り紙の使用枚数が増えてしまうので不経済になってしまう。
【0008】
よって、本発明の目的は、拭き取る皮脂量が少ない場合であってもユーザが視覚で十分に確認することができ、更に拭き取る皮脂量が多い場合であってもこれを確実に拭き取ることができる脂取り紙を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は、シート状基材と、前記シート状基材の少なくとも片面上に設けた有色の第1吸脂層と、前記第1吸脂層上に設けられ吸脂したときに不透明な状態から透明な状態に変化する第2吸脂層とを含むことを特徴とする脂取り紙によって達成できる。
【0010】
本発明によると、第2吸脂層が吸脂したときに不透明な状態から透明な状態に変化するので下側に位置する第1吸脂層の色が発現する。よって、第2吸脂層の吸脂能力を調整して少量の皮脂を吸収したときに透明化するように設定しておけばユーザが視覚的に確認できる。その一方で、第2吸脂層の下側に位置する第1吸脂層が吸脂能力を備えているので、拭き取る皮脂が多い場合にも対処できる。
【0011】
さらに、前記シート状基材が吸脂性を備えている構造としてもよい。このようにシート状基材も吸脂性を備えていれば更に確実に多量の皮脂を吸収できる脂取り紙とすることができる。なお、シート状基材はそれ自体が吸脂性を備えたものでもよいし、吸脂性の填料を添加することによりシート状基材に吸脂性を付与したり、吸脂性を高めるようにしてもよい。
【0012】
また、前記第1吸脂層は、濃色の着色剤を含むことが好ましい。このような濃色の着色剤は、例えば黒、青、赤、緑から選択するのが好ましい。第1吸脂層が濃色であれば、第2吸脂層が透明化したときにユーザがより確実に視認できるようになる。
【0013】
また、前記第2吸脂層は、光に対し低屈折率である填料を含むものとすることができる。このような填料として、例えばクレー、タルク、カオリン、炭酸カルシウム、無定形シリカなどの無機填料、プラスチックピグメントなどの有機顔料の微粉粒体を採用することができる。これらの填料は単独で、或いは適宜に組み合せて使用することができる。
【0014】
また、前記第1吸脂層と前記第2吸脂層との色相が異なることが好ましい。第2吸脂層の色相が、濃色の第1吸脂層の色相と異なれば、第2吸脂層が透明化したときにユーザがより確実に視認できるようになる。
【0015】
そして、前記第1吸脂層は、前記第2吸脂層よりも吸脂能力が大きく設定してあってもよい。このように構成すれば、拭き取る皮脂量が多いときに、第1吸脂層で確実に皮脂を吸収できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、拭き取る皮脂量が少ない場合であってもユーザが視覚で十分に確認することができ、更に拭き取る皮脂量が多い場合であってもこれを確実に拭き取ることができる脂取り紙を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態に係る脂取り紙について説明する。図1は、第1の実施形態に係る脂取り紙1の構成を拡大して示した図である。脂取り紙1は、シート状基材10と、このシート状基材10上に設けた第1吸脂層11と、この第1吸脂層11上に更に設けた第2吸脂層12とを含んでいる。
【0018】
シート状基材10は、薄くて柔軟なシート状材であり、吸脂性を備えていることがより好ましい。このようなシート状基材10は、例えば木材パルプ及びマニラ麻、亜麻などの非木材パルプを単独で、或いはこれらを適宜に組合せたパルプ原料を用いて形成することができる。より具体的には、パルプ原料を円網、長網抄紙機などを用いて抄紙して、坪量12g/m〜25g/mのシート状とすれば好適なシート状基材10を形成することができる。この様に形成したシート状基材10は、第1吸脂層11及び第2吸脂層12を設ける際の加工適正が良好である。また、シート状基材10上に吸脂層11、12を形成して脂取り紙とした後にあっては破れや損傷を生ずることなく、また適度なしなやかさを有している。よって、使用感に優れた脂取り紙とすることができる。
【0019】
なお、上記シート状基材10の坪量が12g/m未満では強度が低過ぎるため、吸脂層11、12を形成する際の加工適性が劣ることになる。そして、製造された脂取り紙は、使用した時に破れや損傷が生じ易くなってしまう。一方、シート状基材10の坪量が25g/mを超えた場合には、シートのしなやかさが失われてしまうので使用感が低下してしまう。上記シート状基材10に、必要に応じてタルク、カオリン、炭酸カルシウム、酸化チタン等の無機填料を加えてもよい。このような填料を加えることにより、シート状基材10の吸脂能力を高めることができる。
【0020】
上記シート状基材10上に、第1吸脂層11、第2吸脂層が順に積層されている。例えば、第1吸脂層11、第2吸脂層12を形成するための塗工液を予め準備し、これを順にシート状基材10上に塗布することにより脂取り紙1を製造することができる。第1吸脂層11は有色の吸脂層であり、この第1吸脂層11上に不透明であると共に吸脂すると透明化する第2吸脂層12が形成されている。
【0021】
第1吸脂層11は、着色剤及び吸脂材を含んで形成されている。ここで採用する着色剤は、第2吸脂層12が透明化したときにユーザが視覚により、その色を明瞭に確認できるように黒、青、赤、緑などの濃色のものを採用することが望ましい。これら濃色の着色剤は、従来から用紙に添加されていたものと同様のものを採用することができる。第1吸脂層11を着色する方法は特に限定されず、市販の着色染料、着色顔料を塗工液に含有させておけばよい。また、第1吸脂層11には、皮脂を吸収する能力(吸脂性)に優れた填料が添加されている。このような吸脂性の填料として、例えば、クレー、タルク、カオリン、炭酸カルシウム、二酸化チタン、無定形シリカなどの無機填料、プラスチックピグメントなどの有機顔料の微粉粒体を好適に用いることができる。これらの填料をシート状基材10の表面に設けることで、脂取り紙1の皮脂の吸収量と吸収速度を高めることができる。
【0022】
第1吸脂層11を形成するための塗工液は、上記の着色剤、填料及びこれらをシート状基材10に固定するバインダによって形成されている。バインダは上記着色剤及び吸脂性の填料をシート状基材10に固定することができるものであればよい。この機能を有するバインダとしては、例えばNBR、SBRなどのラテックス、酢酸ビニル、EVA、アクリル、ウレタンなどのエマルジョン、カルボキシメチルセルロースなどの水溶性高分子を採用できる。第1吸脂層11に含まれるバインダ成分の量は、填料に対して固形分で5〜40%の範囲が好ましい。バインダ成分の量が5%未満では填料がシート状基材10から脱落する可能性があり、その一方で40%を超えると填料による皮脂の吸収量と吸収速度を高める効果が阻害されてしまう。そのために脂取り紙として十分な吸脂性が得られなくなるおそれが生じる。なお、前記した着色剤、填料及びバインダを含む塗工液をシート状基材10上に塗布してもよいし、印刷技術を用いて第1吸脂層11をシート状基材10上に印刷してもよい。
【0023】
シート状基材10上への第1吸脂層11の塗布量は、皮脂の吸脂性及び加工適正の点から3〜20g/mの範囲とするのが望ましい。第1吸脂層11の塗布量が3g/m未満となると皮脂の吸脂性が低下してしまう。また、塗布量が20g/mを超えてしまうとシート状基材10上に安定的に塗布することが困難となってしまう。
【0024】
更に、第1吸脂層11上に形成する第2吸脂層12について説明する。第2吸脂層12は、少なくとも第1吸脂層11が有する色を隠蔽できる程度の不透明性を有している。また、第1吸脂層11とは異なる色相に設定されていることが望ましい。例えば、この第2吸脂層12は白色(無着色)または第1吸脂層11とは異なる色相の薄い色とするのが好ましい。この第2吸脂層12は、皮脂を吸収することによって透明化し、それによって濃色に着色されている第1吸脂層11の色が発現するように構成されている。さらに、第1吸脂層11と第2吸脂層12とを異なる色相に設定しておくことで、コントラストをより高めてユーザに対して視覚効果を与えることができる。
【0025】
第2吸脂層12は、吸脂前は不透明であり、吸脂によって透明化するように構成されている。そのため第2吸脂層12は、例えば、クレー、タルク、カオリン、炭酸カルシウム、無定形シリカなどの無機填料、プラスチックピグメントなどの有機顔料の微粉粒体を含んでいる。これらの填料は吸脂性を備えている。さらに、これらの填料は光に対し屈折率が1.4〜1.7と低屈折率である。例えばカオリンは、屈折率1.55〜1.6、炭酸カルシウムは屈折率1.48〜1.66、無定形シリカは屈折率約1.45である。これら填料の粒子表面や粒子間に皮脂が浸透すると粒子表面等において散乱光が減少して填料が透明化する。すなわち、第2吸脂層12は吸脂したときに透明化することになる。これにより第1吸脂層11の濃色が発現することになるので、吸脂した部分について高い視覚効果が発揮されることになる。
【0026】
さらに、上記クレー、タルク、カオリン、炭酸カルシウム等の填料は一般に白色或いは灰白色である。よって、このような填料を一定量含むことにより第2吸脂層12を不透明な白色とすることができるので、濃色の黒、青、赤、緑などに着色されている第1吸脂層11とは異なる色相に簡単に設定できる。第2吸脂層12は、このように白色に設定してもよいが、第1吸脂層11で採用した色と異なる色相の着色剤を少量用いて薄く着色してもよい。また、上記クレー、タルク、カオリン、炭酸カルシウムなどは、化粧料などにも添加される填料であり、これらを脂取り紙表面に設けることで皮脂の吸収量と吸収速度を高めるだけでなく、表面を平滑にして肌触りを改善できるという効果も合わせて得ることができる。
【0027】
上記第2吸脂層12を形成するための塗工液についても、バインダとしてNBR、SBRなどのラテックス、酢酸ビニル、EVA、アクリル、ウレタンなどのエマルジョン、カルボキシメチルセルロースなどの水溶性高分子を用いることができる。バインダは填料に対して固形分で5〜40%の範囲が好ましい。この点については、第1吸脂層11用の塗工液と同様である。第2吸脂層の塗布量は、皮脂の吸脂性及び吸脂時の視認性を確保するという点から5〜15g/mの範囲とするのが好ましい。第2吸脂層の塗布量が5g/m未満となると第1吸脂層11の隠蔽性が低くなり視認性が悪化する。また、第2吸脂層12の塗布量が15g/mを越えると吸脂量が少ないときは、無機填料等の透明化が不十分となり、第1吸脂層11の色相とのコントラスト等による視覚効果が減衰する。より好ましい第2吸脂層の塗布量は8〜12g/mである。
【0028】
図1で示す以上の構成を有する脂取り紙1は、吸脂前にあっては表面に位置している第2吸脂層12により光LTがその表面で乱反射して、反射光RE−1となる。よって、有色の第1吸脂層11の色が第2吸脂層12により隠蔽されることになる。このとき、ユーザは第2吸脂層12の白色などを見ている状態である。一方、脂取り紙1が吸脂すると第2吸脂層12が透明化するので、光LTは有色の第1吸脂層11の表面で反射した反射光RE−2となる。このときには、ユーザは第1吸脂層11の濃色の黒、青、赤、緑などを見る状態に変化する。このようにして、ユーザは脂取り紙1の色変化により肌の皮脂が拭き取られたことを視覚的に確認できることになる。
【0029】
ここで、第2吸脂層12の填料含有量や塗布量を前述した範囲で適宜に調整して、比較的少ない皮脂量で不透明状態から透明化させるようにできる。よって、この脂取り紙1は拭き取る皮脂量が少ない場合でも十分な視覚効果を得ることができる。さらに、脂取り紙1は第2吸脂層12の下に位置する第1吸脂層11及びシート状基材10が吸脂能力を備えている。すなわち、図1で図示するように吸脂領域20が第1吸脂層11及びシート状基材10にまで拡大されている。脂取り紙1はこのように吸脂層が多層であるので、皮脂量が多い場合には第2吸脂層12の下に位置する吸脂層によってこれを確実に吸収できる。よって、この脂取り紙1は皮脂量が多い場合でも一度の拭き取りで皮脂を十分に拭き取ることができる。
【0030】
また、例えば第1吸脂層11の吸脂能力を第2吸脂層12の吸脂能力より大きく設定した構成を採用してもよい。この場合、第2吸脂層12の不透明性を確保して填料含有量や塗布量を抑制する。その一方で、下側に位置する第1吸脂層11の填料含有量や塗布量を増して吸脂能力を向上させる。このようにすれば、少量の皮脂で第2吸脂層12を速やか透明化させることができる。そして、第1吸脂層11によって皮脂を確実に吸収できる脂取り紙を形成できる。
【0031】
以上の説明から明らかなように、脂取り紙1は拭き取った皮脂が少量であった場合であっても第2吸脂層12が透明化するので、ユーザは色の変化により吸脂されていることを確認できる。また、この脂取り紙1は吸脂能力を大きく設定できるので、皮脂量が多い場合でも確実に吸収できる。したがって、従来のように使用枚数が増加するということを抑制できるので経済的である。よって、本実施形態の脂取り紙1は、視認性及び吸脂能力に優れ、また経済的な脂取り紙として提供することができる。
【0032】
図2は、第2の実施形態に係る脂取り紙2の構成を拡大して示した図である。図1で示した第1の実施形態の脂取り紙1はシート状基材10の片面にだけ、第1吸脂層11、第2吸脂層12を設けた構造であったが、この図2で示す脂取り紙2はシート状基材10の両面に第1吸脂層11、第2吸脂層12を設けてある。なお、表面側に第1吸脂層11−1、第2吸脂層12−1が設けられ、裏面側に第1吸脂層11−2、第2吸脂層12−2が設けられている。
【0033】
この脂取り紙2は両面構成であるので、脂取り紙1よりも経済的である。なお、表裏の第1吸脂層11、第2吸脂層12は同じ構成で形成してもよいし、異なる構成で形成してもよい。異なる構成とする場合、例えば表面側の第1吸脂層11−1の着色を赤色、裏面側の第1吸脂層11−2の着色を青色とするなどに変更しておくとユーザの目を楽しませることできる。また、例えばユーザに対して最初に表面を使用し、次に裏面を使用するように促すと、ユーザが拭き取った皮脂量の変化を確認できることになる。
【0034】
さらに、図3(A)、(B)は脂取り紙1の変形例について示した図である。図3(A)は第1の変形例となる脂取り紙3について示している。この脂取り紙3は、裏面側に着色された第1吸脂層11−2が露出している。この場合には裏面側が当初から有色となるが、皮脂の拭き取りに使用できるので図1の脂取り紙1より経済的な脂取り紙となる。また、図3(B)は第2の変形例となる脂取り紙4について示している。この脂取り紙4は、裏面側に吸脂したときに不透明状態から透明に変化する第2吸脂層12−2が形成されている。この場合には裏面側が変化したときにシート状基材10を色が現れることになる。第2吸脂層12−2とシート状基材10との色相が異なれば表面側の場合と同様に色変化があるので、ユーザは皮脂の吸収を確認できる。この脂取り紙4も裏面側を皮脂の拭き取りに使用できるので図1の脂取り紙1より経済的な脂取り紙となる。
【0035】
以下において、更に本発明に係る実施例として製造した化粧用の脂取り紙について説明する。なお、以下で示す原材料について配合は全て重量部で示している。
【実施例1】
【0036】
シート状基材10として基紙の抄造
NBKP80部、亜麻パルプ重量20部を水に分散させ叩解した後、長網多筒抄紙機を用いて坪量20g/mの基紙を得た。
【0037】
第1吸脂層11の塗布
次いで、カオリン20部、炭酸カルシウム10部、アクリルエマルジョン(昭和高分株式会社製 ポリゾールM−19)4部、黒色顔料(東亜化成株式会社製 TOA black AM1000)2部を水に分散させて塗工液を調製した。この塗工液を基紙にマイヤーバーを用いて固形分塗布量が6g/mになるように塗工し、更に乾燥させた。
【0038】
第2吸脂層12の塗布
更に、カオリン20部、炭酸カルシウム10部、アクリルエマルジョン(昭和高分子株式会社製 ポリゾールM−19)4部を水に分散させて塗工液を調製した。この塗工液を、基紙にマイヤーバーを用いて固形分塗布量が11g/mになるようにして、第1吸脂層11の場合と同様に塗工及び乾燥をして実施例1の化粧用の脂取り紙を得た。
【実施例2】
【0039】
実施例1における第1吸脂層11の黒色顔料を赤色顔料(大日精化工業株式会社製 TB720Red2B)に変更し、また第2吸脂層12の塗布量を8g/mに変更した以外は、実施例1と同様にして実施例2の化粧用の脂取り紙を得た。
【実施例3】
【0040】
第2吸脂層12に赤色顔料1部を加え、塗布量を12g/mに変更した以外は、実施例1と同様にして実施例3の化粧用の脂取り紙を得た。
【実施例4】
【0041】
第1吸脂層11の塗布量を3g/mにすると共に、第2吸脂層12の塗布量を5g/mに変更した以外は、実施例1と同様にして実施例4の化粧用の脂取り紙を得た。
【0042】
さらに、上記実施例1〜実施例4の脂取り紙の視認性及び吸脂能力を確認するため、以下の比較例1、2の脂取り紙を製造した。
(比較例1)
第1吸脂層11の代わりにRI印刷試験機を用いて黒色インキを塗布量が3g/mになるように塗布した以外は、実施例1と同様にして比較例1の化粧用の脂取り紙を得た。この比較例1は、第1吸脂層に相当する中層が黒インキであり吸脂性を備えていない。
【0043】
(比較例2)
第2吸脂層12の塗布量を18g/mに変更した以外は、比較例1と同様にして比較例2の脂取り紙を得た。すなわち、この比較例2は、比較例1の脂取り紙よりも表面の第2吸脂層12を厚めに形成したものである。
【0044】
(比較例3)
カオリン20部、炭酸カルシウム10部、アクリルエマルジョン(昭和高分子株式会社製 ポリゾールM−19)4部、赤色顔料(大日精化工業株式会社製 TB720レッド2b)0.1部を水に分散させて塗工液を調製した。この塗工液を、実施例1と同様の基紙にマイヤーバーを用いて固形分塗布量が18g/mになるように塗工し、更に乾燥させて比較例3の化粧用の脂取り紙を得た。この比較例3は、基紙上に有色の吸脂層を一層設けた構成であり、従来品と同様の構成である。
【0045】
上記各脂取り紙の評価は、以下の試験方法および皮脂量の異なる3名の試験者A、B、Cによる官能評価により行った。なお、坪量の測定はJIS P8124に従った。また、第1吸脂層11および第2吸脂層12の塗布量の測定は、塗布前後の坪量差から算出した。明度LはSMカラーコンピューターSM−4(スガ試験機械株式会社製)を用いて測定した。明度の変化△Lは、擬似皮脂転写前後の明度差から算出した。
【0046】
擬似皮脂の転写試験は、RI−3型印刷適性試験機(石川島産業機械株式会社製)を用い、ひまし油:ベンジルアルコール=80:20の混合油を擬似皮脂として、紙への転写量が所定量となるよう印刷ロールに擬似皮脂を塗布し転写した。
【0047】
図4は、実施例1〜4の脂取り紙、及び比較例1、2の評価結果をまとめた図である。この図4を参照して説明する。なお、図4で◎は優、○は良、△は可、×は不可の評価を表わしている。また、図4中における表層は第2吸脂層12、中層は第1吸脂層11、基材はシート状基材10に相当する。実施例1〜3の脂取り紙は、皮脂量の少ない試験者が使用した場合でも従来品以上の視覚効果があり、皮脂量の多い試験者が使用しても一度の拭き取りで十分に皮脂を取り除くことが可能であるとの評価を得た。また、顔のべたつき、てかりも防ぐことが可能であった。なお、実施例4の脂取り紙は他の実施例の脂取り紙より吸脂層の塗布量を抑制したものであるが、皮脂量が標準以下の試験者A、Bの評価においては良好な結果が得られた。皮脂量が多い試験者Cが使用した場合、僅かに顔にべたつき感が残るとの評価であったが、一度の拭き取りで皮脂を十分に取り除くことができることが確認された。
【0048】
一方、比較例1の脂取り紙は、皮脂量標準量以下である試験者A、Bにおいては、顔のべたつきが少なく、視覚効果があるとの評価を得た。しかし、皮脂量の多い試験者Cにおいては、皮脂を十分に除去することができず、顔にべたつきが残るとの評価を得た。また、比較例2の脂取り紙は、皮脂量が少ない試験者Aにおいては実際に皮脂を拭き取ることができても、視覚効果の評価が低く皮脂を吸収できている場合でも使用時の満足感が得られなかった。この比較例1、2から表面に位置する第2吸脂層12の塗布量を抑えると視覚効果は得られるものの皮脂量の多い場合に対応できないこと、また、第2吸脂層12の塗布量を増すと少量を吸脂したときに確実な視覚効果が得られないことが分かる。さらに、比較例3の脂取り紙は、皮脂量が多い試験者Cにおいて顔のべたつきが少なく、視覚効果があるとの評価を得た。しかしながら、皮脂量が少ない試験者Aにおいては視覚効果が劣るとの評価であった。なお、皮脂量が多い試験者Cにおいて比較例3の脂取り紙と比べ比較例2の脂取り紙は、顔のべたつきの点で劣るとの評価であり、中層を黒インキ層とすることで中層を設けない時よりも皮脂の吸収が阻害されることが確認された。
【0049】
なお、擬似皮脂の転写試験では、実施例1〜4の脂取り紙については擬似皮脂を転写量0.75g/mとした場合における明度の変化△Lが8〜19であり、比較例の場合と比較して明度の変化が大きいことが確認された。これは、比較的少ない皮脂を吸脂したときにも実施例1〜4の脂取り紙によればユーザが視認できることの裏付けデータと理解できる。また、擬似皮脂の転写量を3g/mと多くした場合には明度の変化△Lが大きくなる。これは皮脂を十分に吸脂することにより透明度が増加したことを示している。実施例の脂取り紙が十分な吸脂能力を備えていることを示していると理解できる。図5は本発明に係る実施例の脂取り紙と比較例の脂取り紙との関係をまとめて示している。この図5で示すように、実施例1〜4の脂取り紙は視認性及び吸脂能力に優れているので、ユーザの要求に応えた商品性のある脂取り紙として提供できることが分かる。
【0050】
以上本発明の好ましい一実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】第1の実施形態に係る脂取り紙の構成を拡大して示した図である。
【図2】第2の実施形態に係る脂取り紙の構成を拡大して示した図である。
【図3】第1の実施形態の変形例について示した図であり、(A)は第1の変形例、(B)は第2の変形例について示した図である。
【図4】実施例1〜4の脂取り紙、及び比較例1、2の評価結果をまとめた図である。
【図5】本発明に係る脂取り紙と比較例の脂取り紙との関係を示した図である。
【符号の説明】
【0052】
1〜4 化粧用の脂取り紙
10 シート状基材
11(11−1、11−2) 第1吸脂層
12(12−1、12−2) 第2吸脂層
20 吸脂領域
RE(RE−1,RE−2) 反射光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状基材と、前記シート状基材の少なくとも片面上に設けた有色の第1吸脂層と、前記第1吸脂層上に設けられ吸脂したときに不透明な状態から透明な状態に変化する第2吸脂層とを含む、ことを特徴とする脂取り紙。
【請求項2】
前記シート状基材が吸脂性を備えている、ことを特徴とする請求項1に記載の脂取り紙。
【請求項3】
前記第1吸脂層は、濃色の着色剤を含む、ことを特徴とする請求項1または2に記載の脂取り紙。
【請求項4】
前記第2吸脂層は、光に対し低屈折率である填料を含む、ことを特徴とする請求項1または2に記載の脂取り紙。
【請求項5】
前記第1吸脂層と前記第2吸脂層との色相が異なる、ことを特徴とする請求項1または2に記載の脂取り紙。
【請求項6】
前記第1吸脂層は、前記第2吸脂層よりも吸脂能力が大きく設定してある、ことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の脂取り紙。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−190146(P2007−190146A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−10310(P2006−10310)
【出願日】平成18年1月18日(2006.1.18)
【出願人】(000176637)三島製紙株式会社 (26)