説明

脂取り紙

【課題】 優れた視認性を有するとともに、脂取り紙を使用した際の硬い肌触りを解消し、柔らかくクッション性の良い脂取り紙を提供する。
【解決手段】 シート状基材と、シート状基材の少なくとも片面に設けられた中空マイクロカプセルを含む皮脂吸収層からなる脂取り紙によって課題を達成することができる。また、皮脂吸収層に含まれる中空マイクロカプセルを熱膨張性マイクロカプセルとして、皮脂吸収層形成時の乾燥工程において膨張させることによって更に優れた効果が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂取り紙に関する。更に詳しくは、肌(皮膚)表面に浮き出した皮脂や汗を拭き取るために用いる脂取り紙に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の顔面、特に鼻、額、眉間などは皮脂の分泌が盛んである。皮脂が分泌されると顔面がべたついたり、てかりが生じたりする。顔面に皮脂が付着していると、化粧の乗りが悪くなり、化粧崩れの原因にもなる。皮脂は、洗顔をすることによって落すことができる。しかし、外出先などでは必要に応じて洗顔するというのは現実的に困難である。そこで、浮き出した皮脂を簡易に取り除くことができる脂取り紙が、従来から広く利用されている。特に、近年にあっては、男女を問わず肌を清潔に保つという意識が高まり、脂取り紙が一般に広く利用されるようになっている。
【0003】
上記のような脂取り紙としては、古くは金箔を打ち伸ばすときに用いた箔打ち紙を小さく裁断したものが使用されていた。箔打ち紙は、皮膚に浮き出た微量の皮脂を吸収することによって透明化するので、皮脂が除去された効果を視覚的に確認できるという特徴(視認性)を有している。また、箔打ち紙は、その繊維が砕かれるほどに叩かれることにより平滑でしなやかになるため肌触りが滑らかである。
【0004】
箔打ち紙のような脂取り紙を工業的に大量生産するため、あるいは箔打ち紙とは異なる特徴を有する脂取り紙を得るために、様々な提案がされている。
【0005】
特許文献1は、針葉樹パルプと広葉樹パルプに無機充填剤を混合して抄紙し、スーパーカレンダー処理を施すことにより、密度を0.7〜1.1g/cmとした脂取り紙を開示している。この脂取り紙は、高価な麻繊維を使わずに、箔打ち紙と同等の視認性や肌触りを得ている。
【0006】
特許文献2は、白色または着色された着色層と、この着色層と色相を異にし、皮脂の吸収(吸油)によって透明化する皮脂吸収層(吸油層)とを積層してなる脂取り紙(油脂拭き取り用紙状体)について開示している。この脂取り紙は、皮脂を吸収すると表面の皮脂吸収層が透明化して下に配置した着色層の色が現れることになるので、微量の皮脂を拭き取ったような場合であっても視覚的に確認することができる。
【0007】
【特許文献1】 特開平8−56866号公報
【特許文献2】 実公昭50−44712号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1で開示する脂取り紙は、安価であること以外に箔打ち紙と比較して特徴がなく、また、密度が0.7〜1.1g/cmと高いため、クッション性がなく硬い肌触りとなる。特許文献2で開示する脂取り紙は、皮脂吸収層に低屈折率の填料を配合することによって、皮脂が微量付着した場合であっても、使用者が視覚的に確認できることを意図して提案されたものである。この脂取り紙は、従来の脂取り紙よりも視認性が高いという特徴を有している。しかしながら、低屈折率の填料を多く含む皮脂吸収層は密度が高く、特許文献1の脂取り紙と同様にクッション性がなく硬い肌触りとなるため、より肌触りの良い脂取り紙が要望されている。
【0009】
よって、本発明の目的は、箔打ち紙のような従来の脂取り紙よりも優れた視認性を有するとともに、脂取り紙を使用した際の硬い肌触りを解消し、肌触りが柔らかくクッション性の良い脂取り紙を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、シート状基材と、シート状基材の少なくとも片面に設けた中空マイクロカプセルを含む皮脂吸収層からなる脂取り紙によって達成することができる。また、皮脂吸収層に含まれる中空マイクロカプセルを熱膨張性マイクロカプセルとして、皮脂吸収層形成時の乾燥工程において膨張させることによって更に優れた効果が得られる。
【0011】
本発明によると、シート状基材の少なくとも片面上に設けた皮脂吸収層に含まれる中空マイクロカプセルが皮脂吸収層を低密度にし、また、中空マイクロカプセルが皮脂吸収層内でクッションの役割を果たすことによって、皮脂吸収層のクッション性を高めて肌触りを改善する。
【0012】
また、皮脂吸収層に含まれる中空マイクロカプセルを熱膨張性マイクロカプセルとし、皮脂吸収層形成時の乾燥工程において膨張開始温度以上まで加熱して膨張させることによって、皮脂吸収層のクッション性が高くなる。このため、熱膨張性でない中空マイクロカプセルを用いた脂取り紙よりも皮脂吸収層に含まれる無機填料の割合を高くすることができ、肌触りと視認性が更に優れた脂取り紙を得ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、拭き取る皮脂量が微量であっても、脂取り紙によって皮脂が除去できたことを使用者が視覚で十分に確認でき、更に直接肌に触れる部分である皮脂吸収層がクッション性を有し肌触りの良い脂取り紙を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態に係る脂取り紙について説明する。図1は、第1の実施形態に係る脂取り紙1の構成を拡大して示した図である。脂取り紙1は、シート状基材10と、このシート状基材10上に設けた皮脂吸収層11と、この第1皮脂吸収層11の内部に中空マイクロカプセル12と光に対して低屈折率である填料13を含んでいる。
【0015】
シート状基材10は、薄くて柔軟なシート状材であり、吸脂性を備えていることがより好ましい。このようなシート状基材10は、例えば木材パルプ及びマニラ麻、亜麻などの非木材パルプを単独で、或いはこれらを適宜に組合せたパルプ原料を用いて形成することができる。より具体的には、パルプ原料を円網、長網抄紙機などを用いて抄紙して、坪量12g/m〜25g/mのシート状とすれば好適なシート状基材10を形成することができる。この様に形成したシート状基材10は、皮脂吸収層11を設ける際の加工適性が良好である。また、シート状基材10上に皮脂吸収層11を形成して脂取り紙とした後にあっては破れや損傷を生ずることなく、また適度なしなやかさを有している。よって、使用感に優れた脂取り紙とすることができる。
【0016】
なお、上記シート状基材10の坪量が12g/m未満では強度が低過ぎるため、皮脂吸収層11を形成する際の加工適性が劣ることになる。そして、製造された脂取り紙は、使用した時に破れや損傷が生じ易くなってしまう。一方、シート状基材10の坪量が25g/mを超えた場合には、シートのしなやかさが失われてしまうので使用感が低下してしまう。上記シート状基材10に、必要に応じてタルク、カオリン、炭酸カルシウム、酸化チタン等の無機填料を加えてもよい。このような填料を加えることにより、シート状基材10のしなやかさと吸脂能力を高めることができる。また、スーパーカレンダーによる処理を行うことによってシート状基材10の平滑性やしなやかさ、光沢、皮脂を吸収した際の視認性を高めることができる。
【0017】
脂取り紙1は、上記シート状基材10上に、皮脂吸収層11が設けられている。例えば、皮脂吸収層11を形成するための塗工液を予め準備し、これをシート状基材10上に塗布することにより脂取り紙1を製造することができる。
【0018】
また、皮脂吸収層11は、皮脂を吸収する能力(吸脂性)に優れ、かつ、光に対し低屈折率である填料13を含むものとすることができる。このような填料として、例えばクレー、タルク、カオリン、炭酸カルシウム、無定形シリカなどの無機填料、プラスチックピグメントなどの有機顔料の微粉粒体を採用することができる。これらの填料は単独で、或いは適宜に組み合せて使用することができる。これらの填料は吸脂性を備えており、光に対する屈折率が1.4〜1.7と低屈折率である。例えば、カオリンは屈折率1.55〜1.6、炭酸カルシウムは屈折率1.48〜1.66、無定形シリカは屈折率約1.45である。これらの填料の粒子間や粒子表面に皮脂が浸透すると、粒子表面等において散乱光が減少して填料が透明化する。したがって、皮脂吸収層11が皮脂を吸収すると、皮脂吸収層に含まれる填料が透明化し、それによって皮脂吸収層が透明化し、あるいは皮脂吸収層が着色されている場合は濃色化するため、僅かな吸脂量であっても皮脂が除去できたことが視覚的に認識可能となる。
【0019】
皮脂吸収層11は、中空マイクロカプセル12を含んで形成されている。本発明に使用される中空マイクロカプセル12は、液体を内包した樹脂製マイクロカプセル内の液体を排除する、あるいは熱を加えて膨張させることによって得られる微粒子である。これらの中空マイクロカプセルとしては、例えば松本油脂製薬株式会社製の「マツモトマイクロスフェアー(松本油脂製薬株式会社の登録商標)F−30E」、「同F−50E」、「同MFL−80CA」、「同MFL−80GCA」等が知られているが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0020】
本発明における脂取り紙では、皮脂吸収層11に含まれる中空マイクロカプセル12を熱膨張性マイクロカプセルとし、皮脂吸収層形成時の乾燥工程における加熱でカプセルを膨張させて、中空マイクロカプセルとすることができる。本発明に使用される熱膨張性マイクロカプセルは、熱可塑性樹脂で低沸点溶剤を包み込んだマイクロカプセルであり、80〜200℃で短時間加熱処理されることにより、直径が3〜10倍に膨張して中空となる微粒子である。熱可塑性樹脂としては、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等の共重合体が用いられ、また、低沸点溶剤としては、イソブタン、ペンタン、石油エーテル、ヘキサン、低沸点ハロゲン化炭化水素、メチルシラン等の揮発性有機溶剤(膨張剤)が使用される。これらのマイクロカプセルは、皮脂吸収層形成時の乾燥工程において、カプセルの外殻に用いられた熱可塑性樹脂の軟化点以上に加熱されて外殻の膜が軟化し始め、同時に内包されている膨張剤の蒸気圧が上昇し、膜が押し広げられてカプセルが膨張する。熱膨張性マイクロカプセルは、比較的低温、短時間で膨張し、独立気泡としてその形状を保ち、また、カプセルが柔軟であるため、本用途に好適に用いられる。また、皮脂吸収層11形成時の乾燥工程では、皮脂吸収層に含まれるバインダーがマイクロカプセル及び填料を完全に固定する前であるため、マイクロカプセルの膨張を妨げることが少なく、また、カプセル及び填料が移動できるために、カプセルの膨張が均一かつ十分に行われるためにより高いクッション性が得られ、また、皮脂吸収層に配合するマイクロカプセルの割合を低くし無機填料の割合を高くすることができるため、取れ感が更に優れた脂取り紙を得ることができる。これら熱膨張性マイクロカプセルとしては、例えば松本油脂製薬株式会社製の「マツモトマイクロスフェアー(松本油脂製薬株式会社の登録商標)F−20」、「同F−30」、「同F−36」、「同F−50」、「同F−100」等が知られているが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0021】
なお、上記マイクロカプセル12は、皮脂吸収層11の塗布量や層の厚さ及び層形成時の乾燥条件に合わせて選択することが可能であるが、皮脂吸収層内部での平均粒子径は1〜80μmが望ましい。平均粒子径が1μm未満ではマイクロカプセルによるクッション性を高める効果が十分に得られず、また、80μmを超えると皮脂吸収層が厚くなりすぎてしまい視認性が低下する。皮脂吸収層に含まれる中空マイクロカプセルの量は、皮脂吸収層に含まれる填料に対して0.5〜50%の範囲が好ましい。0.5%未満では中空マイクロカプセルによる効果が得られず、その一方で50%を超えると、填料による皮脂吸収時の視認性が低下し、吸収した皮脂が微量の場合に皮脂を除去できたことを確認することができなくなる。
【0022】
皮脂吸収層11は、着色剤を含んでいてもよい。ここで採用する着色剤は、脂取り紙1が皮脂を吸収したことをより明瞭に確認できるように加えられるが、色の種類、濃度などは、脂取り紙商品のデザインに合わせて適宜に選択することができる。これら着色剤は、従来から用紙に添加されていたものと同様のものを採用することができる。皮脂吸収層11を着色する方法は特に限定されず、市販の着色染料、着色顔料を塗工液に含有させておけばよい。
【0023】
皮脂吸収層11を形成するための塗工液は、上記の中空マイクロカプセル12、低屈折率の填料13、着色剤及びこれらをシート状基材10に固定するバインダーによって形成されている。バインダーは上記マイクロカプセル、填料及び着色剤をシート状基材に固定することができるものであればよい。この機能を有するバインダーとしては、例えばNBR、SBRなどのラテックス、酢酸ビニル、EVA、アクリル、ウレタンなどのエマルジョン、カルボキシメチルセルロースなどの水溶性高分子を採用できる。皮脂吸収層11に含まれるバインダー成分の量は、マイクロカプセルと填料の合計に対して固形分で5〜40%の範囲が好ましい。バインダー成分の量が5%未満では填料がシート状基材10から脱落する可能性があり、その一方で40%を超えると填料による皮脂の吸収量と吸収速度を高める効果が阻害されてしまう。そのために脂取り紙として十分な吸脂性が得られなくなるおそれが生じる。なお、前記した中空マイクロカプセル、填料、着色剤及びバインダーを含む塗工液を、塗工機を用いてシート状基材上に塗布、乾燥してもよいし、印刷技術を用いて第1皮脂吸収層11をシート状基材10上に印刷、乾燥してもよい。
【0024】
シート状基材10上への皮脂吸収層11の塗布量は、皮脂の吸脂性及び加工適性の点から3〜30g/mの範囲とするのが望ましい。皮脂吸収層11の塗布量が3g/m未満となると皮脂吸収層のクッション性と視認性が不十分になる。また、塗布量が30g/mを超えてしまうとシート状基材10上に安定的に塗布することが困難となってしまう。
【0025】
図1で示す構成を有する脂取り紙1は、皮脂吸収性に優れ光に対して低屈折率である填料13の効果により、微量の皮脂を吸収した場合でも、皮膚から皮脂が除去できたことを視覚的に確認することができ、かつ、中空マイクロカプセルが皮脂吸収層を低密度化して、またカプセルが皮脂吸収層内でクッションの役割を果たすことで皮脂吸収層のクッション性が高くなり、脂取り紙として使用した際の肌触りが改善される。
【0026】
図2は、第2の実施形態に係る脂取り紙2の構成を拡大して示した図である。図1で示した第1の実施形態の脂取り紙1はシート状基材10の片面にだけ、皮脂吸収層11を設けた構造であったが、この図2で示す脂取り紙2はシート状基材10の両面に皮脂吸収層11を設けてある。なお、表面側に皮脂吸収層11−1が設けられ、裏面側に皮脂吸収層11−2が設けられている。
【0027】
この脂取り紙2は両面構成であるので、脂取り紙1よりも多くの皮脂を除去することができる。また、両面にクッション性が高い皮脂吸収層を有しているため、シート全体がより柔らかく感じられる。なお、表裏の皮脂吸収層11は同じ構成で形成してもよいし、異なる構成で形成してもよい。異なる構成とする場合、例えば表面側の皮脂吸収層11−1の着色を赤色、裏面側の皮脂吸収層11−2の着色を青色とするなどに変更しておくと使用者の目を楽しませることできる。また、例えば使用者に対して最初に表面を使用し、次に裏面を使用するように促すと、使用者が拭き取った皮脂量の変化を確認できることになる。
【実施例】
【0028】
以下において、更に本発明に係る実施例として製造した化粧用の脂取り紙について説明する。なお、以下で示す原材料について配合は全て質量部で示している。
【0029】
実施例1
シート状基材10としての基紙の抄造
NBKP80部、亜麻パルプ重量20部を水に分散させ叩解した後、長網多筒抄紙機を用いて坪量17g/m、厚さ30μmの基紙を得た。
【0030】
皮脂吸収層11の塗布
次いで、カオリン30部、炭酸カルシウム10部、アクリルエマルジョン(固形分濃度45%)14部、赤色顔料1部、平均粒子径が30〜60μmの中空マイクロカプセル(松本油脂製薬株式会社製、商品名「マツモトマイクロスフェアーF−30E」)13部を水に分散させて塗工液を調製した。この塗工液を基紙にマイヤーバーを用いて固形分塗布量が14g/mになるように塗工し、更にシリンダードライヤーを用いて120℃で2分間加熱処理し乾燥させて実施例1の脂取り紙を得た。
【0031】
実施例2
カオリン30部、炭酸カルシウム10部、アクリルエマルジョン(固形分濃度45%)10部、赤色顔料1部、平均粒子径が10〜20μmの熱膨張性マイクロカプセル(松本油脂製薬株式会社製、商品名「マツモトマイクロスフェアーF−30」)3部を水に分散させて調製した塗工液を、実施例1で用いた基紙にマイヤーバーを用いて固形分塗布量が14g/mになるように塗工し、更にシリンダードライヤーを用いて120℃で2分間加熱処理して乾燥させつつ熱膨張性マイクロパウダーを膨張させて実施例2の脂取り紙を得た。
【0032】
比較例1
塗工液に熱膨張性マイクロカプセルを加えなかった以外は実施例2と同様にして脂取り紙を作製し、比較例1の脂取り紙を得た。
【0033】
比較例2
皮脂吸収層が塗布されていない一般的な紙タイプの市販脂取り紙を比較例2として用いた。
【0034】
上記各脂取り紙の評価は、以下の試験方法および試験者による官能評価により行った。
【0035】
坪量の測定はJIS P8124に、厚さ及び密度の測定はJIS P8118に従った。また、皮脂吸収層11の塗布量の測定は、塗布前後の坪量差から算出した。
【0036】
脂取り紙を使用した際の視覚効果の指標としてパンチ力を以下の手順で測定した。なお、パンチ力の数値が大きいほど使用前後での色の変化が大きく、視認性が高いことを示し、パンチ力が10以上であれば、脂取り紙として良好な視認性を有していると判断される。
RI−3型印刷適性試験機(石川島産業機械株式会社製)を用い、ひまし油:ベンジルアルコール=80:20(質量比)の混合油を擬似皮脂として、紙への転写量が2g/mとなるよう印刷ロールに擬似皮脂を塗布し転写した。
擬似皮脂転写前後の色相及び色差(L、a、b、ΔE)をSMカラーコンピューターSM−4(スガ試験機械株式会社製)を用いて測定した。
以下の式を用いてパンチ力を算出した。
【数1】

ΔEw:白色板を試料の裏あてに用いて測定したΔE
ΔEb:黒色板を試料の裏あてに用いて測定したΔE
【0037】
官能評価は、以下の項目について行った。
取れ感:脂取り紙使用後の皮膚のべたつき、てかりを評価した。
クッション性:脂取り紙を皮膚に接触した際に感じる柔らかさについて評価した。
なお、官能評価は優、良、可、不可の4段階評価で行った。
【0038】
表1は実施例1、2及び比較例1、2の評価結果をまとめたものである。
【表1】

【0039】
実施例1の脂取り紙は、中空マイクロカプセルを含む皮脂吸収層が低密度でクッション性が高く、中空マイクロカプセルを含まない比較例1の脂取り紙よりも肌触りが良く、また、皮脂吸収層を持たない比較例2の脂取り紙よりも取れ感が優れていた。
【0040】
実施例2の脂取り紙は、パンチ力、取れ感、クッション性が実施例1の脂取り紙より優れていた。このことから、マイクロカプセルが皮脂吸収層形成時の乾燥工程で膨張することで、取れ感、肌触りともにより優れた脂取り紙が得られることが確認された。また、実施例2の脂取り紙は、皮脂吸収層に既膨張のマイクロカプセルを加えた場合と比較して、高価なマイクロカプセルの配合率を減らすことができるため、コスト的にも優れていた。
【0041】
一方、熱膨張性マイクロカプセルを含まない比較例1の脂取り紙は、皮脂吸収層が高密度であり、パンチ力、取れ感は優れるが、皮脂吸収層にクッション性がなくカサカサした感触があり、肌触りが劣っていた。皮脂吸収層を持たない比較例2の脂取り紙は、取れ感、肌触りともに実施例1、2の脂取り紙よりも劣っていた。これらのことから、皮脂吸収層が中空マイクロカプセルを含むことによって、取れ感、肌触りともに優れた脂取り紙が得られ、また、熱膨張性マイクロカプセルが皮脂吸収層形成時の乾燥工程で膨張することで、取れ感、肌触り、更にコスト面でも優れた脂取り紙が得られることが確認された。
【0042】
以上本発明の好ましい一実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】 第1の実施形態に係る脂取り紙の構成を拡大して示した図である。
【図2】 第2の実施形態に係る脂取り紙の構成を拡大して示した図である。
【符号の説明】
【0044】
1、2 化粧用の脂取り紙
10 シート状基材
11(11−1、11−2) 第1皮脂吸収層
12 中空マイクロカプセル
13 低屈折率填料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状基材の少なくとも片面上に皮脂吸収層を設けた脂取り紙において、皮脂吸収層が中空マイクロカプセルを含むことを特徴とする脂取り紙。
【請求項2】
皮脂吸収層が光に対し低屈折率である填料を含むことを特徴とする請求項1の脂取り紙。
【請求項3】
皮脂吸収層に含まれる中空マイクロカプセルの平均粒子径が1〜80μmであることを特徴とする請求項1、2の脂取り紙。
【請求項4】
密度が0.4〜0.7g/cmであることを特徴とする請求項1から3の脂取り紙。
【請求項5】
皮脂吸収層に含まれる中空マイクロカプセルが、熱膨張性マイクロカプセルであることを特徴とする請求項1から4の脂取り紙。
【請求項6】
皮脂吸収層に含まれる熱膨張性マイクロカプセルを、皮脂吸収層形成時の乾燥工程において膨張させることを特徴とする請求項1から5の脂取り紙の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−183384(P2008−183384A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−42896(P2007−42896)
【出願日】平成19年1月26日(2007.1.26)
【出願人】(000176637)日本製紙パピリア株式会社 (26)