脂質を含む粉末細胞培養製品およびその製造法
【課題】粉末栄養培地、培地添加物、および培地サブグループ製剤を提供する。
【解決手段】細胞培養液添加物(粉末ウシ胎仔血清(FBS)等の粉末血清を含む)、培地サブグループ製剤、および細胞のインビトロ培養を容易にする脂質成分を含む必須栄養因子のすべてを含有する細胞培養液。乾燥粉末栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、および緩衝液製剤を用いて原核および真核細胞、特に細菌細胞、酵母細胞、植物細胞、および動物細胞(ヒト細胞を含む)を培養する。それに先立ち、無菌的粉末培地、培地添加物(特に、粉末FBS等の粉末血清、粉末トランスフェリン、粉末インスリン、粉末器官抽出物(ウシ脳または下垂体抽出物等)、粉末増殖因子(EGF、FGF等)等)、培地サブグループ、および緩衝液製剤を産生し、γ照射によって滅菌が達成培地、添加物、培地サブグループ、および緩衝液を粉末化する。
【解決手段】細胞培養液添加物(粉末ウシ胎仔血清(FBS)等の粉末血清を含む)、培地サブグループ製剤、および細胞のインビトロ培養を容易にする脂質成分を含む必須栄養因子のすべてを含有する細胞培養液。乾燥粉末栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、および緩衝液製剤を用いて原核および真核細胞、特に細菌細胞、酵母細胞、植物細胞、および動物細胞(ヒト細胞を含む)を培養する。それに先立ち、無菌的粉末培地、培地添加物(特に、粉末FBS等の粉末血清、粉末トランスフェリン、粉末インスリン、粉末器官抽出物(ウシ脳または下垂体抽出物等)、粉末増殖因子(EGF、FGF等)等)、培地サブグループ、および緩衝液製剤を産生し、γ照射によって滅菌が達成培地、添加物、培地サブグループ、および緩衝液を粉末化する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、一般に細胞、栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、および緩衝剤製剤に関する。具体的には本発明は、インビトロでの細胞の培養を容易にする必要なすべての栄養因子を含む乾燥粉末栄養培地製剤、特に細胞培養培地製剤およびこれらの培地製剤の製造法を提供する。本発明は具体的には、無機または水のような極性溶媒に殆ど溶けない脂質や他の成分を混合する方法に関する。本発明はまた、細胞培養を支持するのに有用な脂質または他の成分のような添加物成分を有する乾燥粉末血清(例えば胎児ウシ血清)のような乾燥粉末培地添加物を製造する方法に関する。本発明はまた、再水和によって特別なイオンおよびpHの状態を作る乾燥粉末緩衝剤製剤に関する。本発明はまた、有機または非極性溶媒に溶解する添加剤と共に調製した滅菌乾燥粉末栄養培地、培地添加物(特に乾燥粉末血清)、培地のサブグループおよび緩衝剤製剤の調製法に関する。本発明はまた、乾燥粉末栄養培地、培地添加物、培地のサブグループ、緩衝剤製剤および本発明の方法で調製した細胞に関する。本発明はまた、これらの乾燥粉末栄養培地、培地添加物、培地のサブグループ、緩衝剤製剤を用いる、原核細胞および真核細胞の培養キットおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
細胞培養培地
細胞培養培地は管理された、人工のインビトロの環境中で細胞を維持し、および/または増殖させるための栄養を提供する。細胞培養培地の特徴と組成は細胞の特別な要求性と、その細胞が培養される目的である機能に依存して変化する。重要なパラメーターには浸透圧、pHおよび栄養製剤が含まれる。培養における細胞の正常な環境は栄養物および他の培養成分が溶解または懸濁している水性培地である。特に水に難溶性の脂質または他の成分の微量を混合することが有利である。
【0003】
培地製剤は動物、植物および細菌細胞を含む多数の細胞型を培養するために使用されている。培養培地中で培養される細胞は利用できる栄養を異化し、モノクロナール抗体、ホルモン、成長因子、ウイルス、抗原因子、酵素、サイトカインおよび類似物を産生する。そのような製品は産業上および/または治療上の用途があり、組み換えDNA技術の進歩によって細胞はこれらの製品を大量に生産するように処理することができる。従って、インビトロで細胞を培養する能力は細胞生理学の研究に重要であるだけでなく、それ以外の方法では経済性が得られない有用物質の製造に必要である。
【0004】
細胞培養培地は文献に十分に文書化されており、多数の培地が商業的に利用できる。初期の細胞培養の研究では、培地製剤は血液の化学組成と物理化学的性質(例えばpH、その他)に基づき、「生理的溶液」と示された(Ringer,S., J.Physiol., 3:380-393(1880)(非特許文献1);Waymouth, C., In: Cells and Tissues in Culture, Vol. 1, Acadenic Press, LOndon, pp. 99-142 (1964)(非特許文献2); Waymouth, C., In Vitro 6:109-127 (1970)(非特許文献3)).しかし、例えば植物、昆虫を含む無脊椎動物、魚および哺乳動物を含む脊椎動物のような多細胞生物の異なった組織中の細胞は、酸素/二酸化炭素分圧および栄養物、ビタミンおよび微量元素に関して異なった微小環境に暴露されており、従って、異なった細胞型のインビトロの培養の成功には異なった培地の製剤を使用することが必要になることが多い。細胞培養培地の通常の成分はアミノ酸、有機塩および無機塩、ビタミン、微量金属、砂糖、脂質および核酸を含み、その型と量は所与の細胞型または組織型の特別な要求性および細胞が適用される目的に依存して変化してもよい。特に複合培地組成物において、しばしば安定性の問題によって、毒性製品および/または要求される栄養物の低有効濃度化をもたらし、それによって培養培地の機能的な寿命を制限する。例えば、グルタミンは哺乳動物の細胞のインビトロの培養で使用される殆どすべての培地の構成成分である。グルタミンはピロリドンカルボン酸とアンモニアに自然に分解する。分解の速度はpHおよびイオンの条件で影響されるが、細胞培養培地においては、これらの分解製品の形成は避けられないことが多い(Tritshら、Exp. Cell Res. 28:360-364 (1962)(非特許文献4)。
【0005】
Wangら(In Vitro 14 (8):715-722 (1978)(非特許文献5)は細胞に致死的な過酸化水素のような光製品がダルベッコ改変イーグルス培地 (DMEM)中で産生することを示した。リボフラビンおよびトリプトファンまたはチロシンは光暴露中に過酸化水素の形成に必要な成分である。大抵の哺乳動物培養培地はリボフラビン、チロシンおよびトリプトファンを含むので、殆どの細胞培養培地中で毒性の、光製品が産生すると思われる。
【0006】
これらの問題を避けるために、研究者は基本的に「必要に応じて」培地を作り、培養培地の長期保存を避ける。通常乾燥粉末の形で商業的に利用できる培地は、それぞれの栄養物を個別に加える、澱粉から培地を作ることに対して便利な代替法として役立ち、液体培地に付随する幾つかの安定性の問題も回避する。しかし、製造業者によって供給される注文製剤を除いて、商業的に利用できる培地の数は限られている。
【0007】
液体(水性培地)は、例えばInvitrogen Corporation, Carlsbad, CaliforniaのGIBCOから入手できる脂質であるLipid Concentrate (100倍)のような脂質濃縮物で添加物されることが多い。従来の粉末化培地は、再溶解に最も一般的な溶媒である水に容易に溶解しない成分を効率的に含むことができなかった。従って、培地を形成するために粉末を再溶解後、追加の成分がアルコール(例えばメタノール、エタノール、グリコール等)、エーテル(例えばMEK)、ケトン(例えばアセトン)、DMSO等の少量の有機溶媒とともに加えられることが多い。これらの溶媒は、一般に培養されている細胞に望ましくない作用または毒性作用を誘発するので、控えめに使用しなければならない。毒性と溶解性は相互作用して、培養に添加できる所望の成分の量を制限する。
【0008】
乾燥粉末培地製剤はある培地の貯蔵寿命を増すが、特に大規模の応用において、乾燥粉末培地に関して多くの問題がある。培地の大容量の生産には特別な培地の調理場ではなくても、栄養成分を混合し、計量するために必要な乾燥粉末培地の貯蔵設備が必要である。乾燥粉末培地の腐食性のために、混合タンクは定期的に交換しなければならない。
【0009】
通常、細胞培養培地製剤は、胎児ウシ血清(FBS)(例えば、10〜20%、5〜10%、1〜5%、0.1〜1% v/v)または植物、動物胚、臓器または腺からの抽出物または加水分解物(例えば0.5%〜10%)のような不特定成分を含むある範囲の添加物で添加物されている。FBSは動物細胞培地に最も一般的に適用される添加物であるが、新生児ウシ、ウマおよびヒト等の他の血清源もまた日常的に使用される。培養培地の添加物のための抽出物を調製のに用いられる臓器または腺には、顎下腺(Cohen,S., J. Biol. CHem. 237:1555-1565(1961)(非特許文献6)、下垂体(Peehl, D.M. and Ham, R.G., In Vitro 16:516-525(1980; U.S. Patent No. 4,673,649(非特許文献7))、視床下部(Maciag, T.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 76:5674-5678(1979)(非特許文献8); Gilchrest, B.A.ら、J. Cell. Physiol. 120:377-383 (1984)(非特許文献9))、眼の網膜(Barretault, D.ら、Differentiation 18:29-42 (1981)(非特許文献10)、および脳(Maciag, T.ら、Science 211:1452-1454(1981)(非特許文献11)が含まれる。化学的に特定されていないこれらの型の添加物は、細胞培養培地中で複数の有用な機能を果たす(Lambert, K.J.ら、In Animal CEll Biotechnology, Vol. 1, Spier, R.E.ら、Eds., Academic Press New York, pp. 85-122 (1985)(非特許文献12)。例えば、これらの添加物は不安定なまたは水不溶性の栄養物に対して、担体またはキレート剤を提供し、毒性部分を結合しおよび中和し、ホルモンおよび成長因子、プロテアーゼ阻害剤および必須の、特定または定義されていないことが多い低分子栄養物を提供し、細胞を物理的ストレスと障害から保護する。従って、血清または臓器/腺抽出物は動物細胞の培養のための、改善された培養培地を提供する、比較的低コスト添加物として一般的に使用される。
【0010】
特に食品用または治療用には、コストと安全性の関心から、特に動物起源の不特定成分を排除する動きがある。改良された培養培地は、水への溶解度が低い少量の成分を用いて製造することもできる。
【0011】
培養培地の製造方法
培養培地は通常液状または粉状で製造される(例えばGIBO BRL製品2000-2001カタログ参照)。これらの形状には、それぞれ特別な利点と欠点がある。
【0012】
例えば、液状培地は直ぐに使用できる状態で提供され(栄養物または他の成分での添加物が必要でないか、所望されなければ)、製剤が特別な細胞に対して最適化されている利点がある。しかし液状培地には、細胞培養の至適の実施のために、添加物(例えばL-グルタミン、血清、抽出物、サイトカイン、脂質等)の添加を要することが多い欠点がある。更に、液状培地は、多くの成分が熱に不安定(従って、例えばオートクレーブの使用ができない)で、バルク液体はγ線または紫外線のような浸透性の滅菌法に特に適さないので、経済的に滅菌することが困難である。従って、液状培養培地は、大抵濾過で滅菌されることが多いが、これは時間がかかり、高価なプロセスになる。濾過には、例えばリポソーム、ミセル、不溶性粒子等の内、望ましい不溶性成分が培地から除去される欠点がある。更に液状培養培地の大きなバッチサイズ(例えば1000リッターまたはそれ以上)の製造と貯蔵は実際的でなく、液状培養培地の成分は比較的貯蔵期間が短い。
【0013】
これらの欠点のいくつかを克服するために、液状培養培地は濃縮された形で配合できる。これらの培地の成分は、使用前に作業濃度に希釈してもよい。この手法は標準培養培地を用いるよりもより大きな、変化するバッチサイズを作る能力を提供し、濃縮された培地製剤またはその成分は貯蔵期限がより長いことが多い(培養培地濃縮物技術に関する米国特許第5,474,931(特許文献2)参照)。これらの利点にもかかわらず、濃縮液状培地には添加物(例えばFBS、L-グルタミンまたは臓器/腺抽出物)の添加を要する欠点があり、経済的に滅菌することが難しい可能性がある。
【0014】
液状培地の代替物として、粉末培養培地が使われることが多い。粉末化培地は通常培養培地の乾燥成分を、例えばボールミルのような混合プロセスによって、または事前に作られた液状培養培地の凍結乾燥によって製造される。この手法には、より大きなバッチサイズでさえも製造できる可能性があり、粉末化培地は通常液状培地よりも貯蔵期間がより長い、および培地は配合後に照射(例えばγ線または紫外線照射)またはエチレンオキサイドの浸透によって滅菌できると言う利点がある。しかし、従来の粉末化培地には複数の顕著な欠点がある。例えば、粉末化培地のいくつかの成分は凍結乾燥によって、不溶性になるか、または凝集し、再溶解が困難か不可能になる。更に、粉末化培地は通常細かい埃粒子を含み、これはいくらかの物質の損失なしにそれを再溶解することを特に困難にし、GMP/GLP、USPまたはISO 9000の設定下で運転される多くのバイオテクノロジーの生産設備に使用することが実際的でなくなる。加えて、例えばL-グルタミンおよびFBSのような培養培地に使用される多くの添加物は、その不安定性または濃縮時の凝集傾向のために、またはボールミルのようなプロセスによるせん断に敏感であるために、凍結乾燥またはボールミルの前に培養培地に加えることができない。最後に、多くの添加物、特にFBSのような血清添加物は、凍結乾燥のようなプロセスによる粉末化添加物の製造が試みられる場合は、活性の実質的な損失を示すか、完全に不活性化される。
【0015】
従って、各種のバルク量で調製でき、特にイオン化または紫外線照射により滅菌ができる、急速に溶解する栄養的に複合した安定な乾燥粉末栄養培地、培地添加物、培地サブグループおよび緩衝剤についての現下のニーズがある。特に再溶解後に、例えば脂質添加物による添加物の必要がないか、または添加物が実質的に低減される完全な乾燥粉末栄養培地のニーズがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】国際公開第98/36051号パンフレット
【特許文献2】米国特許第5,474,931
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Ringer,S., J.Physiol., 3:380-393(1880)
【非特許文献2】Waymouth, C., In: Cells and Tissues in Culture, Vol. 1, Acadenic Press, LOndon, pp. 99-142 (1964)
【非特許文献3】Waymouth, C., In Vitro 6:109-127 (1970)
【非特許文献4】Tritshら、Exp. Cell Res. 28:360-364 (1962)
【非特許文献5】Wangら(In Vitro 14 (8):715-722 (1978)
【非特許文献6】Cohen,S., J. Biol. CHem. 237:1555-1565(1961)
【非特許文献7】Peehl, D.M. and Ham, R.G., In Vitro 16:516-525(1980; U.S. Patent No. 4,673,649
【非特許文献8】Maciag, T.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 76:5674-5678(1979)
【非特許文献9】Gilchrest, B.A.ら、J. Cell. Physiol. 120:377-383 (1984)
【非特許文献10】Barretault, D.ら、Differentiation 18:29-42 (1981)
【非特許文献11】Maciag, T.ら、Science 211:1452-1454(1981)
【非特許文献12】Lambert, K.J.ら、In Animal CEll Biotechnology, Vol. 1, Spier, R.E.ら、Eds., Academic Press New York, pp. 85-122 (1985)
【発明の概要】
【0018】
本発明は乾燥粉末栄養培地、培地添加物、培地サブグループおよび緩衝剤を溶媒または複数の溶媒で凝集することを含む栄養培地、培地添加物、培地サブグループおよび緩衝剤粉末の製造方法を提供する。本発明はまた、液体栄養培地、培地添加物、培地サブグループまたは緩衝剤を、それらの乾燥粉末対象を製造するのに十分な条件下で噴霧乾燥することを含む粉末化栄養培地、培地添加物、培地サブグループおよび緩衝剤の製造法に関する。そのような条件は、例えば粉末化培地、培地添加物、培地サブグループまたは緩衝剤が形成されるまで、熱および溶媒の分圧を管理することを含む。粉末は1つの段階でまたは複数の段階で形成されてもよい。1つ以上の溶媒が使用される場合は、溶媒は同じポートまたはノズルを通して導入しもよく、または離れたノズルを通して導入してもよい。例えば相互に溶解する溶媒または十分混合しうる相溶性の溶媒は、出入口またはノズルを共有してもよいが、最初の溶媒に相溶性がない1つまたはそれ以上の溶媒には、離れたノズルを用いてもよい。
【0019】
本発明によれば、本方法は更に栄養培地、培地添加物、培地サブグループまたは緩衝剤粉末を滅菌することを含み、それは粉末を包装する前または後に達成することができる。特に好ましい方法において、滅菌は包装した粉末のγ線照射によって、粉末の包装後に滅菌が達成される。
【0020】
本発明によって製造される特に好ましい栄養培地粉末は、細菌培養培地粉末、酵母培養培地粉末、植物培養培地粉末および動物培養培地粉末からなる群から選ばれた培養培地粉末を含む。
【0021】
本発明の方法によって製造される特に好ましい培地添加物は、例えばウシ血清(胎児ウシ、新生児ウシまたは正常ウシ血清)、ヒト血清、ウシ血清、ブタ血清、サル血清、尾なしサル血清、ラット血清、ネズミ血清、ウサギ血清、ヒツジ血清および類似血清のような粉末化動物血清、サイトカイン(例えばEGF,aFGF,bFGF,HGF,IGF-1,IGF-2,NGFおよび類似物のような成長因子を含む)、インターロイキン、コロニー刺激因子およびインターフェロン)、接着因子または細胞外マトリックス成分(例えばコラーゲン、ラミニン、プロテオグリカン、グリコサミノグリカン、フィブロネクチン、ビトロネクチンおよび類似物)、脂質(例えばりん脂質、コレステロール、ウシコレステロール濃縮物、脂肪酸、スフィンゴリピッドおよび類似物)、グリカンおよび動物組織、臓器および腺抽出物(例えば、ウシ下垂体抽出物、ウシ脳抽出物、ニワトリ胚抽出物、ウシ胚抽出物、ニワトリ肉抽出物、アキレス腱およびその抽出物)および類似物である。本方法によって製造できる他の培地添加物物には各種タンパク質(例えば、血清アルブミン、特にウシまたはヒト血清アルブミン、免疫グロブリンおよびその断片または複合体、アプロチニン、ヘモグロビン、ヘミンまたはヘマチン、天然または組み換え酵素(例えば、トリプシン、コラーゲナーゼ、パンクレアチニンまたはディスパーゼ);リポプロテイン、フェリティン等);ビタミン、アミノ酸およびその変化体(L-グルタミンおよびシスティンを含むが、これに限定されない)、酵素コファクターおよび当業者に知られているインビトロでの細胞培養に有用な他の成分が含まれる。
【0022】
本発明によって調製される栄養培地および培地添加物は、血清(好ましくは上記のもの)、L-グルタミン、インスリン、トランスフェリン、1つまたはそれ以上の脂質(好ましくは1つまたはそれ以上のホスホリピッド、スフィンゴリピッド。脂肪酸またはコレステロール)、1つまたはそれ以上のサイトカイン(好ましくは上記のもの)、1つまたはそれ以上の神経伝達物質、1つまたはそれ以上の動物組織、臓器または腺(好ましくは上記のもの)の抽出物、1つまたはそれ以上のタンパク質(好ましくは上記のもの)または1つまたはそれ以上の緩衝剤(好ましくは重炭酸塩またはリン酸塩)またはその任意の組み合わせのようなサブグループを含んでもよい。
【0023】
本発明の方法による製剤に特に適した緩衝剤粉末は緩衝食塩粉末、より具体的にはリン酸塩緩衝食塩粉末またはTris緩衝食塩粉末である。
【0024】
本発明はまた、栄養培地粉末、栄養添加物粉末(上記の添加物の粉末を含む)およびこれらの方法によって調製した緩衝剤粉末を提供する。
【0025】
本発明はまた、原核細胞(例えば細菌細胞)および真核細胞(例えば真菌(特に酵母)、動物細胞(特にヒトを含む哺乳動物)および植物細胞)を含む乾燥細胞の調整法にも関し、その調整法は乾燥する細胞を得ること、その細胞を1つまたはそれ以上の安定剤(例えば、トレハローズのような多糖類)と接触させること、細胞を含む水性懸濁液を作ること、および乾燥粉末の製造に好ましい条件下で細胞懸濁液を噴霧乾燥することを含む。オプションで、脂質成分を乾燥細胞粉末を安定化するために加えてもよい。本発明はまた、これらの方法で製造された乾燥細胞粉末にも関する。
【0026】
本発明は、更に滅菌粉末培養培地、培地添加物、培地サブグループおよび緩衝剤の調製方法に関する。そのような1つの方法は、粉末中で生育する細菌、真菌、胞子およびウイルスの複製を不可能にするために、上記の粉末培養培地、培地添加物、培地サブグループおよび緩衝剤を照射に暴露することを含む。そのような好ましい方法では、粉末化培地、培地添加物、培地サブグループおよび緩衝剤は総線量約10〜100 kGy、好ましくは総線量約15〜75 kGy、15〜50 kGy、15〜40 kGyまたは20〜40 kGy、より好ましくは総線量約20〜30 kGy、最も好ましくは総線量約25 kGyで、約1時間から約7日間、好ましくは約1時間から約5日間、より好ましくは約1時間から約3日間、約1時間から約24時間または約1時間から約5時間、最も好ましくは約1時間から約3時間照射される。より強力な線源に対する適切な遮蔽を用いて、短時間により高い照射を行ってもよい。本発明はまた、これらの方法で製造された滅菌粉末培養培地、培地添加物、培地サブグループおよび緩衝剤に関する。
【0027】
本発明は更に、本発明の栄養培地、培地添加物、培地サブグループまたは緩衝剤を、好ましくは血清または水を含む溶媒で再溶解すること、およびその細胞を細胞の培養に好ましい条件下で、再溶解した栄養培地、培地添加物、培地サブグループまたは緩衝剤と接触させることを含む細胞の培養法を提供する。任意の細胞、特に細菌細胞、酵母細胞。植物細胞または動物細胞が本発明の方法で培養できる。本法による培養に好ましい動物細胞には、昆虫細胞(最も好ましくはDrosophila細胞、Spodoptera細胞およびTRichoplusa細胞)、線虫細胞(最も好ましくはC.elegans細胞)および哺乳動物細胞(最も好ましくはCHO細胞、COS細胞、VERO細胞、BHK細胞、AE-1細胞、SP2/0細胞、L5.1細胞、PerC6、ハイブリドーマ細胞または他のヒトの細胞)が含まれる。本発明のこの態様によって培養される細胞は、正常細胞、疾患細胞、形質転換細胞、変異細胞、体細胞、発芽細胞、幹細胞、前駆細胞または胚細胞であり、これらはいずれも確立された細胞系または天然源から得られたものであってよい。細胞は実験の目的にまたは有用な成分の生産の目的に使用してもよい。
【0028】
本発明は更に細胞の培養に用いられるキットにも向けられる。本発明によるキットは本発明の1つまたはそれ以上の栄養培地粉末、培地添加物粉末、培地サブグループ粉末または緩衝剤粉末、単一溶媒(または複数溶媒)およびその任意の組み合わせを含んでもよい。キットは本発明の乾燥細胞粉末を含む、1つまたはそれ以上の細胞または細胞型を含んでもよい。
【0029】
当業者には、本発明の他の好ましい実施形態は、次の図面および発明および特許請求の範囲の記載に照らして明白である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の方法(図1A)および従来の液体FBS(図1B)によって、粉末の形に調製した胎児ウシ血清(FBS)の試料の、SDS-PAGEのデンシトメトリースキャンのヒストグラムである。
【図2】本発明の凝集法によって粉末の形に調製した、FBSの2%(w/v)で添加物したダルベッコ改変イーグルス培地(DMEM)中の、SP2/0細胞の増殖(図2A)と継代成功(図2B)の線グラフの複合である。
【図3A】本発明の方法(図3A)による噴霧乾燥によって調製した、粉末胎児ウシ血清(FBS)のスペクトロフォトメータースキャンのヒストグラムの複合である。
【図3B】標準的な液体FBS(図3B)の方法による噴霧乾燥によって調製した、粉末胎児ウシ血清(FBS)のスペクトロフォトメータースキャンのヒストグラムの複合である。
【図4】重炭酸塩の添加または無添加で本発明の方法またはボールミルによって調製した、各種乾燥粉末化培地の2つの異なった日付でのpH滴定を示す線グラフの複合である。
【図5】Opti-MEM I(商標)(図5A)またはDMEM(図5B)の溶出速度(水中)への凝集の影響を示す棒グラフの複合である。培地は水またはFBSを用いて指示したように凝集した。
【図6】いずれも2%のFBSを含む凝集したOpti-MEM I(商標)(図6A)またはDMEM(図6B)中の、SP2/0細胞の7日間に亘る増殖を示す線グラフの複合である。
【図7】10%FBSを含む凝集したDMEM中のSP2/0細胞(図7A)、AE-1細胞(図7B)およびL5.1細胞(図7C)の7日間に亘る増殖を示す線グラフの複合である。
【図8】2%のFBSで添加物した水またはFBSのいづれかで凝集した、Opti-MEM I(商標)(図8A)またはDMEM(図8B)中のSP2/0細胞の継代成功を示す線グラフの複合である。
【図9】FBSと重炭酸塩で凝集し、10%FBSを含むDMEM中のSP2/0細胞(図9A)、AE-1細胞(図9B)およびL5.1細胞(図9C)の継代成功を示す線グラフの複合である。
【図10】標準的な水で再溶解した粉末培養培地(対照培地)中、または本発明の方法によって大規模の量で調製した凝集粉末培養培地中における4継代に亘るSP2/0細胞の増殖を示す線グラフである。対照培地(□)、本発明の水で凝集した粉末培養培地(◆)および本発明の(重炭酸ナトリウムを含む)水で凝集した自動pH粉末培養培地(■)の結果を示す。
【図11A】2%(▲)または10%(◆)液体胎児ウシ血清(FBS)または本発明の噴霧乾燥法によって調製した2%(×)または10%(■)の粉末化FBSを含む培地中で6日または7日に亘って培養したたAE-1細胞の線グラフである。2回繰り返した実験を図11Aと11Bに示す。
【図11B】2%(▲)または10%(◆)液体胎児ウシ血清(FBS)または本発明の噴霧乾燥法によって調製した2%(×)または10%(■)の粉末化FBSを含む培地中で6日または7日に亘って培養したたAE-1細胞の線グラフである。2回繰り返した実験を図11Aと11Bに示す。
【図12A】2%(▲)または10%(◆)液体FBSまたは本発明の噴霧乾燥法によって調製した2%(×)または10%(■)の粉末FBSを含む培地中で7日に亘って培養したたSP2/0細胞の線グラフである。2回の繰り返し実験を図12Aと12Bに示す。
【図12B】2%(▲)または10%(◆)液体FBSまたは本発明の噴霧乾燥法によって調製した2%(×)または10%(■)の粉末FBSを含む培地中で7日に亘って培養したたSP2/0細胞の線グラフである。2回の繰り返し実験を図12Aと12Bに示す。
【図13】5%の液体FBS(◆)または本発明の噴霧乾燥法によって調製した5%の粉末化FBS(■)を含む培地中における4回の継代に亘るAE-1細胞の増殖の線グラフである。
【図14】5日間にわたるSP2/0細胞の増殖に対するγ線照射および凝集の影響を示す線グラフである。
【図15】凝集した培養培地中におけるVERO細胞の増殖に対するγ線照射の影響を示す棒グラフである。
【図16A】4回の継代に亘る293細胞の増殖を支持するトランスフェリンの能力に対するγ線照射の影響を示す一連の線グラフである。それぞれのグラフで、細胞は標準血清を含まない293培地(◆)、トランスフェリンを含まない培地(■)、-70℃(▲)または室温(*)でγ線照射した粉末化トランスフェリンを含む培地、γ線照射されずに、-70℃(×)または室温(●)で保存されたトランスフェリンを含む培地中で培養したた。各データ点の結果は2回繰り返したフラスコの平均である。図16A: 1継代細胞
【図16B】4回の継代に亘る293細胞の増殖を支持するトランスフェリンの能力に対するγ線照射の影響を示す一連の線グラフである。それぞれのグラフで、細胞は標準血清を含まない293培地(◆)、トランスフェリンを含まない培地(■)、-70℃(▲)または室温(*)でγ線照射した粉末化トランスフェリンを含む培地、γ線照射されずに、-70℃(×)または室温(●)で保存されたトランスフェリンを含む培地中で培養したた。各データ点の結果は2回繰り返したフラスコの平均である。図16B: 2継代細胞
【図16C】4回の継代に亘る293細胞の増殖を支持するトランスフェリンの能力に対するγ線照射の影響を示す一連の線グラフである。それぞれのグラフで、細胞は標準血清を含まない293培地(◆)、トランスフェリンを含まない培地(■)、-70℃(▲)または室温(*)でγ線照射した粉末化トランスフェリンを含む培地、γ線照射されずに、-70℃(×)または室温(●)で保存されたトランスフェリンを含む培地中で培養したた。各データ点の結果は2回繰り返したフラスコの平均である。図16C: 3継代細胞
【図16D】4回の継代に亘る293細胞の増殖を支持するトランスフェリンの能力に対するγ線照射の影響を示す一連の線グラフである。それぞれのグラフで、細胞は標準血清を含まない293培地(◆)、トランスフェリンを含まない培地(■)、-70℃(▲)または室温(*)でγ線照射した粉末化トランスフェリンを含む培地、γ線照射されずに、-70℃(×)または室温(●)で保存されたトランスフェリンを含む培地中で培養したた。各データ点の結果は2回繰り返したフラスコの平均である。図16D: 4継代細胞
【図17A】1回目(Px1)、2回目(Px2)および3回目(Px3)の継代における接着非依存性細胞(図17Aおよび17B)の増殖を支持するFBSの能力に対する異なる照射条件下での照射の影響を示す一連の棒グラフである。図17A:SP/0細胞
【図17B】1回目(Px1)、2回目(Px2)および3回目(Px3)の継代における接着非依存性細胞(図17Aおよび17B)の増殖を支持するFBSの能力に対する異なる照射条件下での照射の影響を示す一連の棒グラフである。図17B:AE-1細胞
【図17C】1回目(Px1)、2回目(Px2)および3回目(Px3)の継代における接着依存性細胞(図17Cおよび17D)の増殖を支持するFBSの能力に対する異なる照射条件下での照射の影響を示す一連の棒グラフである。図17C:VERO細胞
【図17D】1回目(Px1)、2回目(Px2)および3回目(Px3)の継代における接着依存性細胞(図17Cおよび17D)の増殖を支持するFBSの能力に対する異なる照射条件下での照射の影響を示す一連の棒グラフである。図17D:BHK細胞
【発明を実施するための形態】
【0031】
発明の詳細な説明
定義
以下の記述では、細胞培養液の分野において従来用いられている多くの用語を広く利用する。明細書および特許請求の範囲、ならびにそのような用語に与えられる範囲の明白でありかつ一貫した理解を提供するため、以下の定義を提供する。
【0032】
本明細書で用いる「粉末」という用語は顆粒形態で存在する組成物を指し、水または血清等の溶媒と複合化または凝集化している場合といない場合がある。「乾燥粉末」という用語は「粉末」という用語と互換的に用いられ得るが、本明細書で用いる「乾燥粉末」は単に顆粒状物質の全体の見かけを指し、特記しない限り、その物質が複合化または凝集化した溶媒を完全に含まないことを意味するように意図するものではない。
【0033】
「成分」という用語は、化学物質由来か生物由来かにかかわらず、細胞の増殖を維持または促進するために細胞培養液において用いられ得る任意の化合物を指す。「成分」および「栄養分」という語は相互的に用いることができ、どちらもそのような化合物を指すことを意図している。細胞培養液に用いられる典型的な成分には、アミノ酸、塩類、金属、糖、脂質、核酸、ホルモン、ビタミン、脂肪酸、タンパク質等が含まれる。エクスビボで細胞の培養を促進または維持する他の成分は、特定の必要性に従って当業者によって選択され得る。
【0034】
「サイトカイン」という用語は、増殖、分化、老化、アポトーシス、細胞障害性、合成もしくは輸送、免疫応答、または抗体分泌等の、細胞において生理反応を誘導する化合物を指す。「サイトカイン」のこの定義には、増殖因子、インターロイキン、コロニー刺激因子、インターフェロン、トロンボキサン、プロスタグランジン、ホルモン、およびリンホカインが含まれる。
【0035】
「細胞培養」または「培養」とは、例えばインビトロ環境といった人工的環境における細胞の維持を意味する。しかし、「細胞培養」という用語は総称であり、個々の原核(例えば細菌)細胞または真核(例えば、動物、植物、および真菌)細胞ばかりでなく、組織、器官、器官系、または全生物体の培養を包含するために用いられる場合もあり、これらに対して「組織培養」、「器官培養」、「器官系培養」、または「器官型培養」という用語が「細胞培養」という用語と互換的に用いられる場合もあることを理解されたい。
【0036】
「培養」とは、細胞の活動または静止状態での、増殖、分化、生物産生、または生存継続に好ましい条件下での人工的環境における細胞の維持を意味する。したがって、「培養」は「細胞培養」または上記した任意のその同義語と互換的に用いられる場合がある。
【0037】
「培養容器」とは、細胞を培養するための無菌的環境を提供し得る、ガラス、プラスチック、または金属の容器を意味する。
【0038】
「細胞培養液」、「培地」、および「培地製剤」という語句は、細胞の培養および/または増殖を支持する栄養溶液を指す;これらの語句は、互換的に用いられ得る。
【0039】
「抽出物」とは、典型的に機械的(例えば、圧力処理による)または化学的(例えば、蒸留、可溶化、沈殿、酵素作用、または高塩処理よる)に物質を処理することによって形成される、物質のサブグループの精製された、部分的に精製された、または濃縮された調製品を含む組成物を意味する。
【0040】
「酵素消化物」とは、特殊化した種類の抽出物、すなわち、物質の成分をより単純な形に(例えば、単糖類もしくは二糖類、および/またはモノペプチド、ジペプチド、もしくはトリペプチドを含む調製品に)分解し得る少なくとも1つの酵素を用いて、抽出すべき物質(例えば植物成分または酵母細胞)を処理することによって調製される抽出物を含む組成物を意味する。このような状況において、および本発明の目的で、「加水分解産物」という用語は「酵素消化物」という用語と互換的に用いられる場合がある。
【0041】
「脂質」は、生化学において一般に理解されるような意味を有する。「脂質」はまた、非極性溶媒または非水溶媒に可溶性である細胞の一部または培地の成分を意味する。脂質は、他の培地成分の存在下または非存在下において、水に低密度に可溶性または不溶性である可能性がある。脂質は、水および1つまたは複数の有機溶媒を含む溶媒混合液中で可溶性である可能性がある。脂質は、脂肪酸、ホルモン、代謝産物、サイトカイン、ビタミン、指示薬、促進剤、または阻害剤を含んでよい。いくつかの状況における「脂質」は、通常は水に不溶性または低密度に可溶性であるが、例えばけん化、水酸化等により水溶性である化合物またはイオンを形成するように変換された成分を指す場合がある。したがって、例えば、脂肪酸は脂質であるが、脂肪酸塩もこの定義に含まれることになる。さらに、「脂質」は、有機溶媒または非極性溶媒を用いて有利に導入される、または通常は水または水媒体中で可溶性ではない任意の成分を一般的に意味するために、総称的に用いられる。脂質は、溶解した分子として、またはミセルもしくは他の分子の緩い会合等の他の形態で、存在してよい。脂質は遊離の分子として用いられてもよいし、または1つまたは複数の他の分子に結合されてもよい。例えば、安定性のためおよび/または凝集化粉末への送達を助けるために、タンパク質またはペプチドを1つまたは複数の他の脂質と結合させてよい。脂質はまた、細胞または細胞成分の1つまたは複数の機能を阻害または活性化するための薬剤として作用する成分を指す場合がある。
【0042】
「接触させる」という用語は、培養する細胞を、細胞を培養すべき培地と共に培養容器中に設置することを指す。「接触させる」という用語は、とりわけ、細胞を培地と混合すること、細胞を培地で灌流すること、培養容器内の細胞に培地をピペットで移すこと、および細胞を培地中に浸すことを包含する。
【0043】
「混合する」という用語は、細胞培養液製剤中の成分の混合を指す。混合は、液体もしくは粉末形態で、または1つもしくは複数の粉末および1つもしくは複数の液体と共に起こり得る。
【0044】
細胞培養液は、多くの成分、および培地によって変わるこれらの成分からなる。「1X製剤」は、細胞培養液中に作用濃度で見出されるいくつかまたはすべての成分を含む任意の水溶液を指すことが意図される。例えば「1X製剤」は、細胞培養液またはその培地用成分の任意のサブグループを指し得る。1X溶液中の成分の濃度は、インビトロで細胞を維持または培養するために用いられる細胞培養製剤に見出される成分の濃度とほぼ同じである。細胞のインビトロ培養に用いられる細胞培養液は、定義により1X製剤である。多くの成分が存在する場合、1X製剤中の各成分は細胞培養液中のそれらの成分の濃度とほぼ同じ濃度を有する。例えば、RPMI-1640培地は、他にも成分を含むが、とりわけ0.2 g/L L-アルギニン、0.05 g/L L-アスパラギン、および0.02 g/L L-アスパラギン酸を含む。これらのアミノ酸の「1X製剤」は、溶液中にほぼ同じ濃度のこれらの成分を含む。したがって、「1X製剤」を引用する場合、溶液中の各成分が、記載の細胞培養液中に見出される濃度と同じ濃度またはほぼ同じ濃度をを有することが意図される。1X製剤の細胞培養液中の成分の濃度は、当業者には周知である。その全体が参照として本明細書に組み入れられる、Methods For Preparation of Media, Supplements and Substrate For Serum-Free Animal Cell Culture Allen R. Liss, N.Y. (1984)を参照されたい。しかし、重量モル浸透圧濃度および/またはpHは、特に1X製剤中に成分がそれほど含まれていない場合、培地と比較して1X製剤では異なる場合がある。任意の成分の1X製剤は、様々な培地製剤にわたって必ずしも一定であるとは限らない。したがって1Xは、別の培地を参照する場合、単一成分の異なる濃度を示す場合がある。しかし、一般に用いられる場合、1Xは参照される培地の種類に一般に見出される濃度を示すことになる。1X量とは、該当する容量の培地に対して1X濃度を生じる成分の量である。
【0045】
「10X製剤」は、その溶液中の各成分が細胞培養液中の同じ成分と比較して約10倍濃縮された溶液を指すことが意図される。例えば、10X製剤のRPMI-1640培地は、他にも成分を含むが、とりわけ2.0 g/L L-アルギニン、0.5 g/L L-アスパラギン、および0.2 g/L L-アスパラギン酸を含んでよい(上記の1X製剤と比較されたい)。「10X製剤」は、1X培地に見出される濃度の約10倍の濃度で多くのさらなる成分を含んでよい。容易に明白であるように、「20X製剤」、「25X製剤」、「50X製剤」、および「100X製剤」は、1X細胞培養液と比較してそれぞれ約20倍、25倍、50倍、または100倍濃度で成分を含む溶液を表す。この場合もやはり、培地製剤および濃縮溶液の重量モル浸透圧濃度およびpHは、異なる可能性がある。培地濃縮技術を対象にした、米国特許第5,474,931号を参照されたい。
【0046】
「生物活性および生化学的活性の有意な損失なしに」とは、同じ製剤の新たに作製した栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液と比較した場合の、栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液の生物活性または生化学的活性の約30%未満、好ましくは約25%未満、より好ましくは約20%未満、さらにより好ましくは約15%未満、および最も好ましくは約10%未満の減少を意味する。
【0047】
「溶媒」とは、培地の別の成分を溶解するまたは溶解した液体のことである。溶媒は、培地の調製、培地粉末の調製、サブグループもしくは添加物もしくは特に本発明の粉末といった他の製剤の調製、および細胞を培養するための調製における粉末の再構成または濃縮物の希釈に用いられ得る。溶媒は、例えば水性溶媒といった極性であっても、例えば有機溶媒といった非極性であってもよい。溶媒は、複合物である、すなわち成分を可溶化するために2つ以上の成分を必要とする場合がある。複合溶媒は、アルコールおよび水等の2つの液体の単純な混合物であっても、または液体中の塩または他の固体の混合物であってもよい。可溶性混合物を形成するいくつかの場合においては、2つ、3つ、4つ、5つ、もしくは6つ、またはそれ以上の成分が必要である場合がある。エタノールまたはメタノールと水の混合液等の単純な溶媒は、その調製および取り扱いが容易なことから好ましい。環境、毒性、および/または火気への懸念から、有機溶媒の量が混合物中で、関連する成分を十分に溶解するための最小限の量である水性混合物を用いることが好ましい。
【0048】
「長期間」とは、栄養培地、添加物、サブグループ、または緩衝液がボールミル等の従来法により調製される場合に保存される期間よりも長い期間を意味する。したがって本明細書で用いる「長期間」とは、所与の保存条件下での約1〜36ヶ月間、約2〜30ヶ月間、約3〜24ヶ月間、約6〜24ヶ月間、約9〜18ヶ月間、または約4〜12ヶ月間を意味し、その保存条件には、約-70℃〜約25℃、約-20℃〜約25℃、約0℃〜約25℃、約4℃〜約25℃、約10℃〜約25℃、または約20℃〜約25℃での保存が含まれ得る。栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液の生物活性または生化学的活性を測定するアッセイ法は、当技術分野において周知であり、当業者によく知られている。
【0049】
概説
本発明は、一般に、栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液を産生する方法、およびそれにより産生される培地を対象にしている。本方法により産生される栄養培地、培地添加物、および培地サブグループは、細胞の増殖を支持するために用いられ得る任意の培地、培地添加物、または培地サブグループ(無血清または血清含有)であり、細胞は、細菌細胞、真菌細胞(特に酵母細胞)、植物細胞、または動物細胞(特に、昆虫細胞、線虫細胞、または哺乳動物細胞、最も好ましくはヒト細胞)であってよく、それらはどれも体細胞、生殖細胞、正常細胞、異常細胞、形質転換細胞、突然変異細胞、幹細胞、前駆細胞、または胚細胞であってよい。好ましいそのような栄養培地には、細胞培養液、最も好ましくは細菌細胞培地、植物細胞培地、または動物細胞培地が含まれるが、これらに限定されない。好ましい培地添加物には、細菌、動物、または植物細胞、腺、組織、または器官の抽出物(特に、ウシ下垂体抽出物、ウシ脳抽出物、およびニワトリ胚抽出物)等の未知組成添加物、ならびに生体液(特に動物血清、および最も好ましくはウシ血清(特に、ウシ胎仔血清、新生仔ウシ血清、または通常仔ウシ血清)、ウマ血清、ブタ血清、ラット血清、マウス血清、ウサギ血清、サル血清、またはヒト血清であり、それらはどれも胎児血清であってよい)およびそれらの抽出物(より好ましくは血清アルブミンであり、最も好ましくはウシ血清アルブミンまたはヒト血清アルブミンである)が含まれるが、これらに限定されない。培地添加物にはまた、上記の未知組成培地添加物の代わりとして用いられ得る、LipoMAX(登録商標)、OptiMAb(登録商標)、Knock-Out(商標)SR(それぞれInvitrogen Corporation、カリフォルニア州カールズバッドから入手可能)等の既知組成代替物が含まれ得る。そのような添加物はまた、ホルモン、サイトカイン、神経伝達物質、脂質、付着因子、タンパク質糖を含むがこれらに限定されない既知組成成分を含んでもよい。
【0050】
栄養培地はまた、本発明の方法によって調製され得る、および本発明の方法に従って用いられ得る様々なサブグループに分割することができる(米国特許第5,474,931号を参照のこと)。そのようなサブグループは、本発明の栄養培地を産生するために混合され得る。
【0051】
本発明の方法により、任意の栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液を作製し、生物活性および生化学的活性の有意な損失なく長期間保存することが可能である。本発明の方法により、脂質および/または水中での可溶性が低い成分の取り込みにおいて、顕著な改良が達成される。脂質成分はサブグループ、添加物等に取り込まれ得るが、好ましくは再構成する他の成分と同様に脂質成分も単一の混合物/組成物中に含まれる。培地を再構成するために複数の組成物が用いられる場合、好ましくは例えば2つ、3つ、4つ、または5つといった少数の異なる粉末が必要とされる。
【0052】
培地、培地添加物、培地サブグループ、および緩衝液の処方
いかなる栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液も、本発明の方法により調製され得る。本発明に従って調製され得る特に好ましい栄養培地、培地添加物、および培地サブグループには、動物細胞、植物細胞、細菌細胞、または酵母細胞の増殖を支持する細胞培養液、培地添加物、および培地サブグループが含まれる。本発明に従って調製され得る特に好ましい緩衝液には、動物細胞、植物細胞、細菌細胞、または酵母細胞に対して等張である平衡塩類溶液が含まれる。
【0053】
本発明に従って調製され得る動物細胞培地の例には、DMEM、RPMI-1640、MCDB 131、MCDB 153、MDEM、IMDM、MEM、M199、マッコイ5A、ウィリアムズE培地、リーボビッツL-15培地、グレース昆虫培地、IPL-41昆虫培地、TC-100昆虫培地、シュナイダー・ショウジョウバエ培地、ウルフおよびクインビー両生類培地、ケラチノサイト、内皮細胞、肝細胞、メラニン形成細胞等の培養を支持するように設計された培地等の細胞特異的無血清培地(SFM)、F10栄養混合物、およびF12栄養混合物が含まれるが、これらに限定されない。本発明による調製に適した他の培地、培地添加物、および培地サブグループは市販されている(例えば、Invitrogen Corporation、カリフォルニア州カールズバッド、およびSigma、ミズーリ州セントルイスによる)。多くの他の一般的に用いられる動物細胞培地、培地添加物、および培地サブグループと同様に、これらの培地、培地添加物、および培地サブグループの製剤も当技術分野において周知であり、例えば、GIBCOカタログおよび参考手引書(Invitrogen Corporation、カリフォルニア州カールズバッド)に、ならびにSigma動物細胞カタログ(Sigma、ミズーリ州セントルイス)に見出され得る。
【0054】
本発明に従って調製され得る植物細胞培地の例には、アンダーソン植物培地、CLC基礎培地、ガンボーグ培地、ギラード海洋植物培地、プロバゾーリ海洋培地、KaoおよびMichayluk培地、ムラシゲおよびスクーグ培地、マッカウン木本培地、クヌドソン・ラン培地、リンデマン・ラン培地、およびVacinおよびWent培地が含まれるが、これらに限定されない。多くの他の一般的に用いられる植物細胞培地と同様に、市販されているこれらの培地の製剤は当技術分野において周知であり、例えば、Sigma植物細胞培養カタログ(Sigma、ミズーリ州セントルイス)に見出され得る。
【0055】
本発明に従って調製され得る細菌細胞培地の例には、トリプチケース・ソイ培地、脳・心臓滲出物培地、酵母エキス培地、ペプトン-酵母エキス培地、牛肉浸出液培地、チオグリコレート培地、インドール-硝酸塩培地、MR-VP培地、シモンズ・クエン酸培地、CTA培地、胆汁エスクリン培地、ボルデ-ジャング培地、チャコール酵母エキス(CYE)培地、マンニトール-塩培地、マッコンキー培地、エオシン-メチレンブルー(EMB)培地、サイヤー-マーチン培地、サルモネラ-赤痢菌培地、およびウレアーゼ培地が含まれるが、これらに限定されない。多くの他の一般的に用いられる細菌細胞培地と同様に、市販されているこれらの培地の製剤は当技術分野において周知であり、例えば、DIFCOマニュアル(DIFCO、マサチューセッツ州ノーウッド)および臨床微生物学のマニュアル(アメリカ微生物学会、ワシントンDC)に見出され得る。
【0056】
本発明に従って調製され得る真菌細胞培地、特に酵母細胞培地の例には、Sabouraud培地および酵母形態培地(YMA)が含まれるが、これらに限定されない。多くの他の一般的に用いられる酵母細胞培地と同様に、市販されているこれらの培地の製剤は当技術分野において周知であり、例えば、DIFCOマニュアル(DIFCO、マサチューセッツ州ノーウッド)および臨床微生物学のマニュアル(アメリカ微生物学会、ワシントンDC)に見出され得る。
【0057】
当業者が理解するように、本発明に従って調製され得る任意の上記培地または他の培地はまた、指示剤または選択剤(例えば、色素、抗生物質、アミノ酸、酵素、基質等)、フィルター(例えば、チャコール)、塩類、多糖類、イオン、界面活性剤、安定剤等の1つまたは複数のさらなる成分を含んでもよい。本発明は、現在製剤される培地への適用に限定されず、細胞を培養するための任意の製剤に広く適用可能である。
【0058】
本発明の特に好ましい態様において、上記の培地は、培地に最適な緩衝能力を十分に提供する濃度の1つまたは複数の緩衝塩、好ましくは炭酸水素ナトリウムを含んでよい。本発明の1つの局面に従って、炭酸水素ナトリウム等の緩衝塩は、培地の凝集化の前に、その間に、またはその後に粉末形態で粉末培地に添加され得る。本発明のこの局面の1つの例において、炭酸水素ナトリウムは、凝集化した培地の再構成時に培地が様々な細胞種の培養に対して最適なまたは実質的に最適なpHになるように、適切な溶媒(水、血清、または酸(例えば、0.1 M〜5 M、好ましくは1M濃度のHCl)もしくは塩基(例えば、0.1 M〜5 M、好ましくは1M濃度のNaOH)等のpH調整剤等)と共に、凝集化の前に、その間に、またはその後に培地に添加され得る。例えば、本方法によって調製される細菌細胞培地は、再構成時に、好ましくは約4〜10、より好ましくは約5〜9または約6〜8.5のpHを有し、本方法によって調製される真菌(例えば酵母)細胞培地は、再構成時に、好ましくは約3〜8、より好ましくは約4〜8または約4〜7.5のpHを有し、本方法によって調製される動物細胞培地は、再構成時に、好ましくは約6〜8または約7〜8、より好ましくは約7〜7.5または約7.2〜7.4のpHを有し、本方法によって調製される植物細胞培地は、再構成時に、好ましくは約4〜8、好ましくは約4.5〜7、5〜6、または5.5〜6のpHを有する。当然のことながら、特定の細胞種に用いられるべき所与の培地の最適pHはまた、周知技術の方法を用いて当業者により実験的に決定され得る。例えば、胃細胞は、例えば1〜3といった他の細胞よりもはるかに低いpHで培養され得る。当業者は、厳しい環境に適応した他の細胞は、一般に培養される細胞の培養条件を満たす通常の範囲外にある特別な許容度または要求を有する可能性があることを理解する。
【0059】
他の例においては、1つまたは複数の緩衝塩、例えば炭酸水素ナトリウムは、流動床装置を用いて培地中に緩衝液を凝集化させることにより、または乾燥または凝集化粉末培地上に緩衝液を噴霧乾燥することにより(以下に記載するような噴霧乾燥装置を用いて)、粉末栄養培地に直接添加され得る。関連する局面において、酸(例えばHCl)または塩基(例えばNaOH)等のpH調整剤は、流動床装置において粉末栄養培地中にpH調製剤を凝集化させることにより、粉末または凝集化栄養培地上にpH調整剤を噴霧乾燥することにより、またはそれらの組み合わせにより、1つまたは複数の緩衝塩(炭酸水素ナトリウム等)を含み得る粉末栄養培地に添加され得る。この方法により、その後の粉末培地の再構成後のpH調整剤の添加が省略される。したがって、本発明は、溶媒(例えば、水または血清)での再構成時に、液体培地のpHを調整する必要なしに細胞の培養または増殖を支持するのに最適なpHを有する、インビトロでの細胞の培養または増殖に有用な粉末栄養培地を提供する。したがって、本明細書で「自動pH調整培地」と定義するこの種類の培地は、再構成後に培地に緩衝液を添加する、および緩衝液の溶解後に培地のpHを調整するという時間を要し誤りがちな段階を省いてくれる。例えば、これらの方法に従って調製される哺乳動物細胞培地は、再構成時に、約7.1〜約7.5、より好ましくは約7.1〜約7.4、および最も好ましくは約7.2〜約7.4または約7.2〜約7.3のpHを有する。そのような自動pH調整培地の一例の調製を、以下の実施例3および6においてより詳細に示す。
【0060】
本方法により粉末として調製され得る培地添加物の例には、限定されることなく、動物血清(ウシ血清(例えば、ウシ胎仔血清、新生仔ウシ血清、または仔ウシ血清)、ヒト血清、ウマ血清、ブタ血清、サル血清、ラット血清、マウス血清、ウサギ血清、ヒツジ血清等)、LipoMAX(登録商標)、OptiMab(登録商標)、Knock-Out(商標)SR(それぞれInvitrogen Corporation、カリフォルニア州カールズバッドから入手可能)等の既知組成代替品、ホルモン(副腎皮質ステロイド等のステロイドホルモン、エストロゲン、アンドロゲン(例えばテストステロン)、およびインスリン等のペプチドホルモンを含む)、サイトカイン(増殖因子(例えば、EGF、aFGF、bFGF、HGF、IGF-1、IGF-2、NGF等)、インターロイキン、コロニー刺激因子、インターフェロン等を含む)、神経伝達物質、脂質(リン脂質、スフィンゴ脂質、脂肪酸、コレステロール等を含む)、付着因子(フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、コラーゲン、プロテオグリカン、グリコサミノグリカン等の細胞外マトリックスを含む)、および動物組織、器官、または腺の抽出物(ウシ下垂体抽出物、ウシ脳抽出物、ニワトリ胚抽出物、ウシ胚抽出物、ニワトリ組織または肉抽出物、アキレス腱およびその抽出物等)等が含まれる。本方法により作製され得る他の培地添加物には、様々なタンパク質(血清アルブミン、特にウシもしくはヒト血清アルブミン;免疫グロブリンおよびその断片もしくは複合体;アプロチニン;ヘモグロビン;ヘミンもしくはヘマチン;酵素(トリプシン、コラゲナーゼ、パンクレアチニン、またはディスパーゼ等)、リポタンパク質;フェチュイン;フェリチン等)、これらは天然または組換え型であってよい;ビタミン;アミノ酸およびその変種(L-グルタミンおよびシスチンを含むが、これらに限定されない);酵素補因子;多糖類;塩類またはイオン(モリブデン、バナジウム、コバルト、マンガン、セレンの塩またはイオン等の微量元素を含む);および当業者によく知られていると考えられる、インビトロで細胞を培養するのに有用な他の添加物および組成物が含まれる。これらの血清および他の培養添加物は市販されている(例えば、Invitrogen Corporation、カリフォルニア州カールズバッド、およびSigma Cell Culture、ミズーリ州セントルイスによる);または、上記の血清および他の培養添加物は、その天然源から単離されるか、または当業者に日常的であると考えられる周知技術の方法により、組換え技術で産生され得る(Freshney, R.I.、Culture of Animal Cells、New York:Alan R. Liss, Inc.、74〜78ページ (1983)、およびその中で引用されている参考文献を参照のこと;また、Harlow, E.およびLane, D.、Antibodies: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor, New York:Cold Spring Harbor Laboratory、116〜120ページ (1988)も参照のこと)。
【0061】
本発明に従って調製され得る緩衝液の例には、リン酸緩衝食塩水(PBS)製剤、トリス緩衝食塩水(TBS)製剤、HEPES緩衝食塩水(HBS)製剤、ハンクス平衡塩類溶液(HBSS)、ダルベッコPBS(DPBS)、アール平衡塩類溶液、パック塩類溶液、ムラシゲおよびスクーグ植物基礎塩類溶液、ケラー海洋植物基礎塩類溶液、プロバゾーリ海洋植物基礎塩類溶液、およびKaoおよびMichayluk基礎塩類溶液が含まれるが、これらに限定されない。多くの他の一般的に用いられる緩衝液と同様に、市販されているこれらの培地の製剤は当技術分野において周知であり、例えば、GIBCOカタログおよび参考手引書(Invitrogen Corporation、カリフォルニア州カールズバッド)、DIFCOマニュアル(DIFCO、マサチューセッツ州ノーウッド)、および動物および植物細胞培養用のSigma細胞培養カタログ(Sigma、ミズーリ州セントルイス)に見出され得る。
【0062】
粉末培地、培地添加物、培地サブグループ、および緩衝液の調製
本発明の方法は、上記の粉末栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、および緩衝液の調製を提供する。これらの粉末培地、添加物、サブグループ、および緩衝液は、好ましくは凝集化により(例えば、流動床技術)および/または噴霧乾燥により調製される。
【0063】
本発明の1つの局面において、粉末栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、および緩衝液は、培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液の溶液を凝集化し、それにより乾燥粉末形態を産生するために、流動床技術を用いて調製する。流動床技術は、出発材料とは変化した特徴(特に、例えば溶解度)を有する凝集化粉末を産生する過程である。この技術の一般的な適用では、上方に移動する空気柱中に粉末を浮遊させ、それと同時に制御されかつ明確な量の液体を粉末の流れに吹き込み、吸った状態の粉末を作製する;次に穏やかな熱を用いて物質を乾燥するエネルギーを提供し、それによって凝集化粉末を産生する。
【0064】
流動床技術により特定の物質を産生および/または加工するための装置は市販されており(例えば、Niro, Inc./Aeromatic-Fielder;メリーランド州コロンビア)、例えば、米国特許第3,771,237号;4,885,848号;5,133,137号;5,357,688号;および5,392,531号;ならびに国際公開公報第95/13867号に記載されている;外国特許および出願のすべての開示は、完全に参照として本明細書に組み入れられる。凝集化にはまた、Processallミックスミル(Mixmill)撹拌機、Extrud-O-Mix撹拌機/押出機、Turbulizer撹拌機/塗布機、およびBextruder押出機/造粒機等の従来の流動床技術の変化形または従来の流動床技術への追加が含まれる。例えば、Hosokawa Bepex Corporation, 333 NE Taft St., Minneapolis, MN 55413-2810、およびその競合他社を参照されたい。そのような装置を用いて、乳清(米国特許第5,006,204号)、酸味を帯びた肉エマルジョン(米国特許第4,511,592号)、プロテアーゼ(米国特許第4,689,297号)、および他のタンパク質(DK 167090 B1)、ならびに炭酸水素ナトリウム(米国特許第5,325,606号)を含む様々な物質の凝集化粉末が調製されている。
【0065】
本発明のこの局面に従って、流動床技術により、大量の凝集化栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、および緩衝液が調製され得る。本発明のこの局面の実施においては、乾燥粉末栄養培地、培地添加物、または緩衝液を凝集化機械、例えば流動床装置にセットし、その中で凝集化に供す。粉末栄養培地(特に粉末細胞培養液)、粉末培地添加物(特に粉末動物血清)、および粉末緩衝液(特に粉末緩衝食塩水)は、市販の供給源(例えば、Invitrogen Corporation、カリフォルニア州カールズバッド)からあらかじめ作製された物が入手可能である。または、粉末栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液は、個々の成分または成分のセットを上記の製剤に従って混合することによっても作製され得る。そのような製剤には、血清、L-グルタミン、シスチン、インスリン、トランスフェリン、脂質(特に、リン脂質、スフィンゴ脂質、脂肪酸、およびコレステロール)、サイトカイン(特に、増殖因子、インターロイキン、コロニー刺激因子、およびインターフェロン)、神経伝達物質、および緩衝液(特に炭酸水素ナトリウム)等の、不安定なために、粉末栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、および緩衝液製剤には典型的には存在しない成分が含まれ得る。L-グルタミンが製剤に添加される場合、それはカルシウムまたはマグネシウム等の二価陽イオンとの複合体の形態であってよい(米国特許第5,474,931号を参照のこと)。他の例では、2つまたはそれ以上の粉末成分を混合し、その後凝集化して複合培地、培地添加物、培地サブグループ、またはバッファーを産生し得る。例えば、粉末栄養培地を、FBS等の粉末血清(例えば、以下に記載するように噴霧乾燥によって産生される)と、約0.1%、0.2%、0.5%、1%、2%、2.5%、5%、7.5%、10%、15%、20%、25%、50%、またはそれ以上の血清濃度(粉末培地の割合としてのw/w)で混合することが可能である;次に、生じた粉末培地-血清混合物を凝集化して、再構成溶媒に容易に溶解し、よってさらなる補充を行わずに使える状態となる凝集化培地-血清複合体を産生することができる。
【0066】
粉末栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液(またはそれらの混合物)を流動床装置にセットしたら、気体、好ましくは空気または窒素等の不活性ガスが上方に移動する柱において浮遊に供し、1枚または複数枚の粒子フィルターに通す。ほとんどの乾燥粉末非凝集化栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、および緩衝液は、比較的粒子の大きさが小さいため、本発明で用いるフィルターは、例えば、約1〜100メッシュ、好ましくは約2〜50メッシュ、より好ましくは約2.5〜35メッシュ、さらにより好ましくは約3〜20メッシュまたは約3.5〜15メッシュ、および最も好ましくは約4〜6メッシュのフィルターといったような、空気は通すが粉末は保持するメッシュスクリーンであるべきである。
【0067】
流動床チャンバー内にセットした後、好ましくは流動床装置上の噴霧ノズルを用いて、明確でありかつ制御された量の溶媒を粉末に吹き込むことにより、乾燥粉末栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液(またはそれらの混合物)を凝集化に供して、湿った粉末を産生する。本発明に使用する好ましい溶媒には、栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液の製剤に適合する任意の溶媒が含まれる。「適合する」とは、その溶媒が、栄養培地の栄養成分の分解または緩衝液のイオン特性における変化のような、栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液の、物理的特徴または性能特性に不可逆的有害変化を誘導しない溶媒であることを意味する。本発明での使用に特に適した溶媒は、水(とりわけ蒸留水および/または脱イオン水)、血清(特にウシまたはヒト血清、とりわけウシ胎仔血清または仔ウシ血清)、有機溶媒(特に、ジメチルスルホキシド、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、グリコール等)、エーテル(例えばMEK)、ケトン(例えばアセトン)等、およびその任意の組み合わせまたはひと続きであり、それらはどれも1つまたは複数のさらなる成分(例えば、塩類、多糖類、イオン、界面活性剤、安定剤等)を含んでよい。
【0068】
本発明のいくつかの局面では、ボールミル等の他の方法によっては最終産物に必要とされるはずの濃度の成分が産物に最適に取り込まれ得ない1つまたは複数の成分を、溶媒中に含むことが望ましいまたは有利である場合がある。1つのそのような局面においては、本発明の粉末培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液の凝集化において溶媒を使用する以前に、溶媒中に所望の濃度で成分を溶解、懸濁、コロイド化、またはさもなくば導入することができる。本発明のこの局面に従って溶媒に有利に取り込まれ得る成分には、1つまたは複数の上記の血清、ホルモン、サイトカイン、神経伝達物質、脂質、付着因子、タンパク質、アミノ酸、ビタミン、酵素補因子、多糖類、塩類、イオン、緩衝液等が含まれるが、これらに限定されない。
【0069】
溶媒は、凝集化する粉末培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液の質量に依存した容量で、乾燥粉末に導入すべきである。500グラムの栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液当たりの好ましい溶媒の容量は、約5〜100 ml、より好ましくは約10〜50ml、さらにより好ましくは約25〜50 ml、および最も好ましくは約35 mlである。当然のことながら当業者は、規模を考慮することにより、溶媒送達の容量および速度が影響を受けることを理解する。500グラムの栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液当たりの好ましい溶媒導入速度は、約1〜10 ml/分、好ましくは約2〜8 ml/分、より好ましくは約4〜8 ml/分、および最も好ましくは約6 ml/分の速度である。場合によっては、凝集化中に粉末が塊になるのをを防ぐため、約1分間の溶媒の添加と次の約1分間の溶媒の無添加(装置チャンバー内で粉末の乾燥を可能にする)の間を循環させることが望ましい場合がある。場合によっては、溶媒を添加しない期間があるまたはない、第1溶媒および第2溶媒または第3溶媒の添加の間を循環させることが望ましい場合がある。場合によっては、装置内の別の出入口から同時に複数の溶媒を添加することが望ましい場合がある。
【0070】
粒子の大きさが元の非凝集化粉末よりも大きいこと、および凝集化粉末中に細塵粒子が存在しないことから明らかなように、粉末の凝集化が完了したら、装置内で粉末を完全に乾燥させる。場合によっては、第2または第3溶媒と共にさらなる成分を添加する前に、粉末を部分的にまたは完全に乾燥させることが望ましい場合がある。場合によっては、例えば第1溶媒といった以前の溶媒を、例えば第3溶媒といった後の溶媒として用いることが望ましい場合がある。場合によっては、例えば第1溶媒として単純な溶媒および例えば第2溶媒として複雑な溶媒を用いることが望ましい場合がある。当業者は、多くの順番および順序が可能であり、当技術分野で周知の単純な手順によって最適な条件が決定できることを理解すると考えられる。凝集化粉末の乾燥に好ましい装置の温度は約50〜80℃、より好ましくは約55〜75℃、および最も好ましくは約60〜65℃である;粉末は、500グラムの粉末当たり好ましくは約3〜10分間、および最も好ましくは約5〜7分間、装置中で乾燥する。温度は、成分の不可逆的な変性等の悪影響を回避するように選択する。揮発性の低い溶媒または揮発性の高い溶媒を用いる場合、それぞれ例えば80〜150℃またはそれ以上といったより高い温度、または例えば20〜40℃といったより低い温度が特に有利になる場合がある。
【0071】
空気流は、床内の流動条件を維持するように選択する。温度は、十分な凝集化を可能にする期間、装置に導入される液体を保持するように設定し得る。粒子が凝集化すべき粒子の大きさよりも大きい時点で、および溶媒と共に導入される成分がより大きい粒子に吸収された時点で、凝集化は一般に十分である。例えば、揮発性の高い溶媒を用いる場合、例えば-10℃、0℃、5℃、10℃、20℃、25℃、35℃、または40℃といったより低い温度を用いることができる。当業者は、溶媒が揮発する際に、凝集している混合物を冷却する傾向があるエネルギーが必要とされることを理解すると考えられる。したがって、溶媒送達の種類および速度ならびに混合物を加熱する速度を制御することにより、温度を制御することができる。溶解した成分の凝集化は、好ましくは、例えば表面力によって、液体がより小さな粉末、溶解した成分、または懸濁されたもしくはコロイド化した成分を床内の凝集化混合物に結合させる作用薬の機能を果たし得る時に達成される。したがって、凝集化温度は、用いる溶媒、流動床を維持する流速、溶媒の送達速度、溶媒の揮発速度、および加熱速度によって変化することになる。温度は、例えば揮発性溶媒を使用する場合または凝集化を生じる液体の滞留時間がより長い場合の、例えば-20℃、-10℃、0℃、5℃、10℃、20℃、25℃、35℃、40℃、または50℃といった低い範囲から、例えば揮発性の低い溶媒の場合、より迅速に揮発させる場合、および凝集化時間がほとんど必要ない場合の、例えば40℃、50℃、60℃、65℃、75℃、85℃、90℃、95℃、100℃、110℃、120℃、125℃、140℃、150℃、175℃、200℃、220℃、240℃、250℃、275℃、300℃、またはそれ以上といった高い範囲まで変動し得る。例えば、同時にまたは順次に多数の溶媒を用いる場合、揮発性の低い溶媒が、より揮発性の高い溶媒のより迅速な揮発を可能にし、凝集化には十分である可能性がある。
【0072】
凝集化をもたらすのに十分な時間、液体が装置中に滞留するように、溶媒の混合液を用いて揮発時間を制御する場合がある。例えば、例えばアルコール、特にエタノール等の有機溶媒といった揮発性の高い溶媒と、例えば水等の極性溶媒といった揮発性の低い溶媒との混合液を用いる場合がある。例えば、極性溶媒中で不溶性または可溶性の低い成分は、有機溶媒中で可溶性である場合がある。成分は、極性溶媒と有機溶媒との混合液中で可溶性である場合がある。したがって、本発明の1つの局面では、有機溶媒と極性溶媒の混合液を使用して、1つまたは複数の成分を送達する。溶液の混合液、すなわち有機溶媒に対する極性溶媒の比率は、床内に取り入れられる成分によって変わることになる。混合液の選択において用いられるパラメータには、可溶性、例えば、凝集化するための所望の量の成分を送達する最低限の有機溶媒を含むように、比率を設定し得る;揮発性、例えば、十分な凝集化をもたらす揮発性のより低い溶媒を含むように、比率を設定し得る;安全上または規制上の懸念、例えば、床での溶媒和および凝集化に十分であり職場または環境に過度の危険を与えない最低限の有機溶媒を含むように、比率を設定し得る、または規則に従うために特別な溶媒を選択もしくは回避する場合がある;床の条件、例えば所望の温度および/または流速が十分な凝集化が達成されるように、混合液を選択し得る;培地粉末の特殊用途、例えばある用途では、製造手順に好ましくは1つまたは複数の溶媒が含まれるが、その一方で好ましくは他の溶媒が排除または禁止される;および装置との適合性、例えば、出入口またはノズルを介した容易な導入を可能にし、かつ装置の成分に容認されない損傷を与えない溶媒または溶媒混合液、が含まれる。混合液は、数多くの方法によって導入され得る。例えば、溶媒混合液は、状況に応じて1つまたは複数の可溶性、コロイド化、または懸濁化成分と共に調製し、出入口またはノズルを介して混合物として送達することができる。混合液が完成され得る別の方法は、別の経路を介する個々の溶媒または溶媒混合液の導入である。例えば、分別は空間的であってよく、複数の出入口またはノズルが使用され得る;分別は時間的であってよく、溶媒または混合液は、単一のまたは別の出入口またはノズルを介して順次に導入され得る;分別は異なる相を含んでもよく、溶媒は、液相での溶媒の導入の前に、その間に、および/またはその後に蒸気として導入されてよく、または溶媒は固体成分として床に送達され、床の操作時に揮発させてもよい等。導入の手段はどれも、溶媒または溶媒混合液の送達に同等に適用される。
【0073】
本発明の別の局面では、粉末栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、および緩衝液は、噴霧乾燥により調製され得る。本発明のこの局面では、液体形態の栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、および緩衝液を噴霧乾燥装置にセットする;次に、制御された温度および湿度等の粉末を産生するのに適した条件下で装置のチャンバー内に溶液を噴霧することにより、これらの液体をその対応する粉末に変換し、粉末が形成される。場合によっては、2つまたはそれ以上の上記の培地、培地添加物、培地サブグループ、および/または緩衝液の複合混合物を噴霧乾燥することが望ましいまたは有利である場合がある。例えば、所望の濃度の動物血清を含む液体栄養培地、または所望の濃度の栄養培地成分を含む液体動物血清を混合し、次に本発明の方法に従って噴霧乾燥粉末として調製してよい。噴霧乾燥または粉末を取得する他の方法は、凝集化のための粉末成分を提供し得る。
【0074】
典型的な噴霧乾燥方法では、液体栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、および緩衝液を装置内に吸引し、回転式またはノズル式噴霧器で微粒化してスプレーにする。次に、生じた微粒化液体スプレーに気体(例えば窒素、またはより好ましくは空気)を混合し、粉末産物の産生を促進するのに十分な条件下で乾燥チャンバー内に噴霧する。本発明の好ましい局面において、これらの条件は、産物の最終乾燥が促進されるような、チャンバー内の温度および湿度の電子制御を含み得る。これらの条件下で、液体中の溶媒は制御された様式で蒸発し、それにより本発明の栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液の自由に流動する粒子(すなわち粉末)が形成される。次に乾燥チャンバーから粉末を取り出し、1枚または複数枚のフィルター(流動床調製について上記したメッシュスクリーン等)に通し、さらなる加工(例えば、包装、滅菌等)のために収集する。場合によっては、特に熱に弱い栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、および緩衝液の製剤から粉末を産生する場合には、噴霧乾燥装置は乾燥チャンバー内に統合した流動床装置と組み合わせてよく、それにより、上記のような凝集化溶媒の噴霧乾燥粉末への導入が可能となり、凝集化噴霧乾燥粉末栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、および緩衝液が産生される。
【0075】
噴霧乾燥により液体物質から粒子状物質を産生するための装置(流動床技術の統合を伴うまたは伴わない)は市販され(例えば、Niro, Imc./Aeromatic-Fielder;メリーランド州コロンビア)、例えばNiro, Imc./Aeromatic-Fielderの「噴霧乾燥(Spray Drying)」、「噴霧乾燥による粉末医薬品(Powdered Pharmaceuticals by Spray Drying)」、および「乾燥における新たな選択(Fresh Option in Drying)」技術パンフレットに記載されており、その開示は完全に参照として本明細書に組み入れられる。この製造業者によると、そのような装置を用いて、乳製品、鎮痛剤、抗生物質、ワクチン、ビタミン、酵母、植物性タンパク質、卵、化学薬品、食品香味料等を含む様々な粉末が調製されている。本発明において、噴霧乾燥は、血清、特に上記の血清、とりわけヒトおよびウシ血清(ウシ胎仔血清および仔ウシ血清)等の粉末培地添加物の調製に特に有用であることが見出された。
【0076】
本発明のこの局面に実施において、液体栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、緩衝液、またはpH調整剤は、約25〜100 g/分の噴霧速度で、好ましくは約30〜90 g/分、35〜85 g/分、40〜80 g/分、45〜75 g/分、50〜75 g/分、55〜70 g/分、または60〜65 g/分の噴霧速度で、およびより好ましくは約65 g/分の噴霧速度で、噴霧器を通してチャンバー内に噴霧され得る。約50〜100℃、より好ましくは約60〜80℃、および最も好ましくは約70℃の出口温度で、噴霧器の吸気温度を好ましくは約100〜300℃、より好ましくは約150〜250℃、および最も好ましくは約200℃に設定する。約1.5バール、より好ましくは約2〜3バール、および最も好ましくは約2バールのノズル圧で、噴霧器内の気流を、好ましくは約50〜100 kg/時間、より好ましくは約75〜90 kg/時間、および最も好ましくは約80 kg/時間に設定する。これらの条件および設定は、噴霧乾燥による様々な栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、および緩衝液粉末の産生、特に上記の粉末血清の産生に好ましいことが、本発明において見出された。乾燥した後、好ましくは流動床技術について上記したフィルター等の1枚または複数枚のフィルターを通して、噴霧乾燥粉末栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液を乾燥チャンバー内に収集し得る。
【0077】
この調製後、上記の流動床法または噴霧乾燥法により調製した本発明の粉末は、出発粉末、または対応する液体を凍結乾燥することにより調製される粉末培地、添加物、サブグループ、および緩衝液とは変わった物理的性質を有する。例えば、未加工または凍結乾燥粉末は使用時に顕著な粉塵を生じ、様々な溶媒にそれほど溶解せずまたはゆっくりと溶解するのに対し、凝集化したものは実質的に粉塵を起こさずおよび/または速やかに溶解する。典型的に、本発明の粉末培地、培地添加物、培地サブグループ、および緩衝液は、ボールミル等の標準的な技法によって調製されたその粉末対応物よりも少ない粉塵および速やかな溶解を示すことになる。実質的に粉塵を起こさないが溶解の増加を示し得ないいくつかの粉末においては、粉末は、例えば機械的インペラーを用いる、または噴霧溶媒和によるなど最初に粉末に溶媒ミストを提供する等の粉末の迅速な機械的溶媒和により、迅速に溶解され得る。
【0078】
本発明の1つの局面においては、上記の噴霧乾燥方法および凝集化方法を混合し、凝集化噴霧乾燥栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、および緩衝液粉末を産生してもよい。この局面では、噴霧乾燥により調製された粉末培地、添加物、サブグループ、または緩衝液を、噴霧乾燥の後に溶媒(上記の溶媒等)を用いて凝集化し、生じる培地、添加物、サブグループ、または緩衝液の性能および物理的特徴をさらに改善してもよい。例えば、上記のように液体動物血清を噴霧乾燥することにより動物血清粉末を調製し、次にこの噴霧乾燥血清粉末を乾燥粉末栄養培地(噴霧乾燥によってまたはボールミル等の標準的技法によって調製された)に混合してもよい;その後、この混合粉末を上記のように凝集化することができる。または、噴霧乾燥栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液粉末を上記のように凝集化し、粉末の溶解特性を改善してもよい。この方法は、液体動物血清のように噴霧乾燥する液体が低い(約1〜10%)固形含有量を有する場合に、特に有利である可能性がある。当業者が理解するように、これらの方法により、上記の凝集化の利点も得ながら、粉末培地、添加物、サブグループ、または緩衝液に所望の濃度で添加する保存液として用いられる大量の1つまたは複数の成分の調製が促進されることになる。さらに、この方法により、ある種の培地添加物(特に動物血清)で問題となり得るロット間のばらつきが減少される可能性がある。
【0079】
続いて、上記のように調製した凝集化または噴霧乾燥した粉末栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液を、以下に記載するような滅菌の前または後に、例えば、バイアル、試験管、ビン、袋、ポーチ、箱、段ボール箱、ドラム缶等の容器に包装し得る。本発明の1つのそのような局面において、粉末培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液は、空気を抜きながら密封される可塑性容器(袋またはポーチ等)に粉末が包装される、当技術分野において「ブリックパック」として知られるもの等の、小型の真空パック形態に包装し得る。そのようなパッケージは、粉末の迅速な溶解を容易にするために、パッケージに溶媒(例えば、水、血清、培地、または他の水性もしくは有機物の溶媒もしくは溶液等)を直接導入することを可能にする1つまたは複数の出入口(バルブ、ルアーロック出入口等)を有利に含んでもよい。関連する局面において、パッケージは2つまたはそれ以上の隣接する区画を含んでよく、そのうちの1つまたは複数は本発明の乾燥粉末培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液の1つまたは複数を含み、別の1つまたは複数は無菌であり得る1つまたは複数の水性溶媒または有機溶媒を含んでもよい。この局面では、次に、単に区画間の仕切りをはずすかまたは壊すことにより、理想的には無菌性を失うことなく乾燥粉末が溶解され得て、粉末と溶媒の混合を可能にし、その結果粉末が溶解し、所望の濃度の無菌的栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液が産生される。
【0080】
本発明の包装した培地、培地添加物、培地サブグループ、および緩衝液は、使用時まで、好ましくは長期間および上記の温度で、典型的には30℃未満の温度で約1〜24ヶ月間、より好ましくは約20〜25℃未満の温度で保存される。従来の粉末培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液とは異なり、本方法によって調製した培地、培地添加物、培地サブグループ、および緩衝液の性能特性の維持には、低い温度(例えば0〜4℃)での保存は必要ではない。当然のことながら、パッケージが1つまたは複数の溶媒を含む別々の区画を含む、本発明のそれらの局面には、他の保存温度が必要である場合がある;これらの場合、最適な保存条件は、当業者に周知であると考えられる溶媒の保存の必要条件によって決定されることになる。
【0081】
脂質または非水性溶質の凝集化
本発明の際立った利点は、脂質および通常の水性溶媒調製品中で十分に可溶性ではない成分の、乾燥粉末培地への凝集化を達成する方法である。従来、そのような成分は、最適には満たない手順で、例えば有機溶媒に溶解した濃縮物として添加されてきた。本発明の方法により、所望の非水性媒質を含む乾燥粉末培地が達成可能となる。
【0082】
そのような非水性溶質の例は;脂肪酸、中性脂肪、蝋、ステロイドおよびステロイド化合物、ホスファチド、糖脂質(例えば、スフィンゴシン、セレブロシド、セラミド、ガングリオシド)、リポタンパク質、リン脂質、ホスホグリセリド(例えば、ホスファチジルエタノールアミンまたはエタノールアミンホスホグリセリド等のエタノールアミン、ホスファチジルコリンまたはコリンホスホグリセリド等のコリン)、リポアミノ酸、カルジオリピンおよび関連化合物、プラスマロゲン、ステロール(例えば、コレステロール、ラノステロール)、テルペン、脂溶性ビタミン(例えば、ビタミンAおよびそのビタマー、ビタミンEおよびそのビタマー、ビタミンKおよびそのビタマー、ビタミンDおよびそのビタマー)である。脂溶性タンパク質もまた、本発明の局面において培地に用いられる脂質の例である。
【0083】
本発明の1つの局面は、1つまたは複数の脂質を乾燥粉末に取り込む方法を含む。脂質は、脂質を含む溶媒を凝集化床に送達することによって導入され得る。例えば、脂質を含む有機溶媒を凝集化装置に導入してよい。好ましくは、毒性の低い溶媒を用いる。培地を調製する細胞種にもよるが、例えばメタノールまたはエタノールといったアルコール等の溶媒が好ましい場合がある。溶媒は脂質成分をきれいに溶解するか、または他の溶媒または溶質の存在下で成分を溶解し得る。溶解した後に、例えば別の脂質または溶媒といった別の成分を添加してもよい。
【0084】
装置に導入する溶媒混合液は、別の溶媒または混合液の送達の前に、後に、および/またはその間に導入してよい。別の溶媒または混合液は、溶媒混合液として同じ溶媒または成分のいくつかを含んでよい。したがって、溶媒混合液は任意の比率の溶媒を含み得る。例えば、溶媒混合液に用いられる溶媒の好ましい混合液は水およびアルコールを含み、例えばほとんどの哺乳動物細胞に対してより好ましくは水およびエタノールを含み得る。比率は上記のパラメータによって選択されることになり、例えば約1、5、7、10、15、20、25、30、33、40、50、60、67、70、75%エタノール(v/v)程度または80、85、90、95、98、または99%エタノール(v/v)程度で、残りは主に水であってよい。時には、脂質がそれ自体で部分的に溶媒として機能を果たす場合もある。先に例証したような他の有機溶媒を、同様の比率で用いてもよい。当業者は、凝集化過程には、異なる脂質は異なる溶媒、溶媒混合液、および溶媒混合液の比率が必要である可能性があることを理解すると考えられる。複数の有機溶媒が用いられる場合、それらを順次に使用しても、または液体形態で一緒に混合してもよい。それぞれの濃度は、先に例証した割合と同様であってよい。
【0085】
予想外に、本発明者らは、脂質を乾燥粉末凝集化に送達するためには、水とエタノールそれぞれ単独よりもそれらの混合液の方が有効であることを見出した。例えば溶解温度および乾燥時間に関するような上記のパラメータは、この予期しない発見に劣ると考えられる。エタノールと水の例により、本発明者らは、当業者が溶媒および溶質の他の混合物によって課せられる利点および妥協を理解するものと考える。
【0086】
本発明はまた、水中での溶解度を増す改変を行った後に、脂質を乾燥粉末に凝集化する局面も含む。例えば、塩に変換することにより脂質をイオン性にしてもよく、例えば脂肪酸をけん化してもよい。当業者は、水中での溶解度を改善する水酸化またはエステル化等の他の手段を理解すると考えられる。溶解度を改善した脂質を水性溶媒に添加してもよいし、または溶媒の混合液に添加してもよい。例えば、溶解度を改善することにより、用いる有機溶媒の量をより少なく減らせる場合がある。
【0087】
本発明の別の局面は、脂質構造と結合または錯体化し、水性環境において脂質の溶解を起こし得る化学物質の使用を含む。そのような相互作用はミセル形成によると考えられ、ミセルの形成を起こす分子の疎水性部分が脂質成分を含み、かつミセルの形成を起こす分子の親水性部分が水性環境において溶解し、その結果水性環境において脂質が可溶化されることになる(例:プルロニックF-68または他の界面活性剤)。他の同様の相互作用はシクロデキストリン等の化合物に起因してよく、この化合物はシクロデキストリン構造に脂質を可溶化し(分配、物理的錯化)、水性環境への添加に際して物理的錯化を維持することができ、従って水性環境において脂質の溶解をもたらす(例:B-メチルシクロデキストリン)。
【0088】
滅菌および包装
本発明はまた、本発明の栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、および緩衝液を滅菌する方法と同時に、ボールミルまたは凍結乾燥等の標準的な方法で調製された粉末栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、および緩衝液を滅菌する方法を提供する。栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、および緩衝液は、通常大量の溶液で調製され、熱に不安定な成分を含む場合が多いため、照射または加熱による滅菌に耐えられない。したがって、栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、および緩衝液は、一般にろ過等の汚染物質除去法により滅菌するが、それによりそのような培地、培地添加物、培地サブグループ、および緩衝液を製造するために必要な費用および時間が顕著に増加する。
【0089】
しかし、本発明の方法に従って(例えば、液体培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液を噴霧乾燥することによる、または粉末培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液を凝集化することによる)、または(粉末成分の)ボールミルまたは(培地、添加物、サブグループ、または緩衝液の液体形態の)凍結乾燥等の標準的な方法により調製した粉末栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、および緩衝液を、安価でかつより効果的な方法によって滅菌することができる。例えば、粉末栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液(液体形態の噴霧乾燥もしくは凍結乾燥により、または培地、添加物、サブグループ、または緩衝液の粉末形態の凝集化により上記のように調製した)を、これらの粉末の滅菌に好ましい条件下で照射してよい。好ましくはこの照射は大量に達成され(すなわち、栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液を包装した後に)、最も好ましくは、粉末培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液中に存在するかもしれない細菌、菌類、胞子、またはウイルスを不活化するような条件下で(すなわち、複製を妨げる)、本発明の大量包装した培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液をγ線源に曝すことにより、この照射を達成する。または、包装する以前に、粉末培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液をγ線源または紫外線源に曝すことにより、照射を達成してもよい。または熱処理により(もし栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液が熱安定性であるならば)、例えば瞬間低温殺菌または加圧滅菌により、本発明の培地、培地添加物、培地サブグループ、および緩衝液を滅菌してもよい。当業者が理解するように、滅菌に必要な照射線量または熱量、および曝露の時間は、滅菌する物質の量に依存する。
【0090】
本発明の特に好ましい局面では、大量の粉末栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液を、約10〜100キログレイ(kGy)の総線量、好ましくは約15〜75 kGy、15〜50 kGy、15〜40 kGy、または20〜40 kGyの総線量、より好ましくは約20〜30 kGyの総線量、および最も好ましくは約25 kGyの総線量の照射源に、約1時間〜7日間、より好ましくは1時間〜5日間、1時間〜3日間、約1〜24時間、または約1〜5時間、および最も好ましくは約1〜3時間(「通常の線量率」)曝す。または、本発明の大量の粉末を、1〜5日間にわたって約25〜100 kGyの総線量である「低線量率」で滅菌してもよい。照射中は、粉末栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液を、好ましくは約-70℃〜約室温(約20〜25℃)の温度、最も好ましくは約-70℃に保存する。当業者は、当然のことながら、線量および曝露時間は照射する物質の容積および/または質量により調整され得ることを理解すると考えられる;照射または加熱処理により大量の粉末物質を滅菌するのに必要とされる、典型的な最適照射線量、曝露時間、および保存温度は、当技術分野において周知である。
【0091】
滅菌した後、例えば培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液を、無菌的試験管、バイアル、ビン、袋、ポーチ、箱、段ボール箱、ドラム缶等の容器に、または真空包装もしくは上記の一体化粉末/溶媒包装に包装することにより、未包装の栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、および緩衝液を無菌状態で包装し得る。その後、無菌包装培地、培地添加物、培地サブグループ、および緩衝液は、上記のように長期間保存され得る。
【0092】
栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、および緩衝液の使用
したがって本発明は、再水和溶媒に易溶性でありかつ実質的に粉塵のない粉末栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、および緩衝液を提供する。使用するには、溶媒和した培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液の特定の用途に必要とされる所望の栄養分、電解質、イオン、およびpH条件を産生するのに十分な量の溶媒中に、凝集化または噴霧乾燥した培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液を水和(または「再構成」)し得る。凍結乾燥したまたはボールミルした栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液とは異なり、本培地、培地添加物、培地サブグループ、および緩衝液は速やかに溶液となり、ほとんど粉塵または不溶性物質を産生しないため、この再構成は本発明において特に容易になる。
【0093】
本発明の粉末栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、および緩衝液の再構成に用いる好ましい溶媒には、水(とりわけ蒸留水および/または脱イオン水)、血清(特にウシまたはヒト血清、とりわけウシ胎仔血清または仔ウシ血清)、有機溶媒(特に、ジメチルスルホキシド、アセトン、エタノール等)、またはそれらの任意の組み合わせが含まれるが、これらに限定されず、それらはどれも1つまたは複数のさらなる成分(例えば、塩類、多糖類、イオン、界面活性剤、安定剤等)を含んでよい。例えば、粉末培養添加物(動物血清等)および緩衝液は、好ましくは水中で1X最終濃度に、または保存溶液の調製または保存のため任意により高い濃度に(例えば、2X、2.5X、5X、10X、20X、25X、50X、100X、500X、1000X等)再構成する。または、粉末培地は、培地添加物が水中に例えば0.5%、1%、2%、2.5%、5%、7.5%、10%、15%、20%、25%、50%、またはそれ以上の容量/容量の濃度で存在する溶液のような、水中の培地添加物(例えばFBS等の血清)の溶液中に再構成してもよい。
【0094】
粉末栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液の再構成は、好ましくは無菌条件下で達成し、再構成した培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液の無菌性を維持するが、または再構成した培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液を、再水和の後に好ましくはろ過または当技術分野で周知の他の滅菌方法により滅菌してもよい。再構成の後、培地、培地添加物、培地サブグループ、および緩衝液は、使用時まで約10℃未満の温度、好ましくは約0〜4℃の温度で保存すべきである。
【0095】
再構成した栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、および緩衝液を用いて、当業者に周知の標準的な細胞培養技法に従って細胞を培養することができる。そのような技法では、細胞の培養に好ましい条件下で(制御された温度、湿度、照明、および大気条件等)、培養する細胞を本発明の再構成した培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液と接触させる。そのような方法による培養に特に受け入れられる細胞には、細菌細胞、酵母細胞、植物細胞、および動物細胞が含まれるが、これらに限定されない。そのような細菌細胞、酵母細胞、植物細胞、および動物細胞は、例えばアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(バージニア州マナッサス)、Invitrogen(カリフォルニア州カールズバッド)、および当業者によく知られていると思われる他の業者といった周知の培養保管業者から市販されている。これらの方法によって培養する好ましい動物細胞には、昆虫細胞(最も好ましくは、ショウジョウバエ細胞、Spodoptera細胞、およびTrichoplusa細胞)、線虫細胞(最も好ましくはシー・エレガンス細胞)、および哺乳動物細胞(CHO細胞、COS細胞、VERO細胞、BHK細胞、AE-1細胞、SP2/0細胞、L5.1細胞、ハイブリドーマ細胞、および最も好ましくは293細胞、PER-C6細胞、およびHeLa細胞等のヒト細胞が含まれるが、これらに限定されない)が含まれるが、これらに限定されず、それらはどれも体細胞、生殖細胞、正常細胞、異常細胞、形質転換細胞、突然変異細胞、幹細胞、前駆細胞、または胚細胞であってよく、かつそれらはどれも足場依存性細胞であっても足場非依存性(すなわち「浮遊」)細胞であってもよい。
【0096】
細胞
別の局面において、本発明は、1つまたは複数の細胞を含む乾燥細胞粉末組成物を産生する方法、およびこれらの方法により産生される乾燥細胞粉末に関する。したがって、これらの方法は、細胞が保存され、使用時まで長期間保存され得る細胞を含む組成物を産生する。このようにして、本発明の方法は、凍結保存設備の必要性および細胞に毒性があるかもしれないある種の凍結保存剤の使用等の、従来の細胞保存法(例えば凍結)のいくつかの欠点を克服する。
【0097】
本発明のこの局面による方法は、1つまたは複数の段階を含み得る。例えば、1つのそのような方法は、乾燥する1つまたは複数の細胞を取得する段階、水性溶液中に1つまたは複数の細胞を懸濁することにより水性細胞懸濁液を形成する段階、および粉末乾燥を産生するのに好ましい条件下において細胞懸濁液を噴霧乾燥する段階を含んでよい。これらの方法は、さらに、1つまたは複数の細胞を1つまたは複数の安定化化合物または保存化合物(例えば、トレハロースを含むがこれに限定されない多糖)と接触させる段階を含んでもよい。細胞懸濁液を形成するために用いる水性溶液は、好ましくは1つまたは複数の上記の栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、塩類、または緩衝液等の1つまたは複数の成分を含む。好ましくは、細胞懸濁液を形成するために用いる水性溶液を、乾燥する細胞種の最適なまたは実質的に最適な浸透張力および重量モル浸透圧濃度に調整する。水性溶液は、状況に応じて、1つまたは複数の多糖類、イオン、界面活性剤、安定化化合物、または保存化合物(トレハロースを含む)等の1つまたは複数のさらなる成分を含んでもよい。1つまたは複数の細胞を1つまたは複数の安定化化合物または保存化合物と接触させる本発明の局面においては、安定化化合物または保存化合物を、水性細胞懸濁液を形成するために用いる水性溶液に組み入れてよい。または、安定化化合物または保存化合物は、粉末の形成後に乾燥細胞粉末上に噴霧または凝集化してもよい。
【0098】
上記の方法により乾燥細胞粉末が形成されたならば、状況に応じて、乾燥粉末の凝集化について上記した方法に従って、溶媒を用いて粉末を凝集化し得る。水、栄養培地溶液、栄養培地添加物溶液(血清、特にウシ血清(最も好ましくは、ウシ胎仔血清および仔ウシ血清)およびヒト血清を含む)、緩衝液、塩類溶液、およびそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない、乾燥する細胞種と適合性のある任意の溶媒を用いて、乾燥細胞粉末を凝集化し得る。
【0099】
本発明の方法により、原核細胞(例えば細菌細胞)および真核細胞(例えば真菌細胞(特に酵母細胞)、動物細胞(特にヒトを含む哺乳動物細胞)、および植物細胞)、特に上記のような細胞、組織、器官、器官系、および生物体を含む、様々な細胞が乾燥され得る。乾燥細胞が産生されたならば、それらを無菌的に包装し、使用時まで、好ましくは約0〜30℃、4〜25℃、10〜25℃、または20〜25℃(すなわち「室温」)の温度で長期間保存してよい。生細胞の培養物の調製に使用するには、水性溶液(例えば滅菌水、緩衝液、培地添加物、培地、またはそれらの組み合わせ)を用いて乾燥細胞粉末を1つまたは複数の生細胞を含む細胞懸濁液に無菌的に再構成し、標準的な周知技術の手順に従って培養し得る。または、例えば動物の免疫に使用する免疫原を調製するため等には、乾燥細胞粉末を細胞の生存が必須ではない細胞懸濁液中に再構成してもよい。そのような場合、乾燥細胞粉末は、1つまたは複数の界面活性剤、アジュバント等を含み得る水性溶媒または有機溶媒等の、標準的な免疫化手順と適合性がある任意の溶媒に再構成され得る。
【0100】
キット
本発明によって提供される乾燥粉末培地、培地添加物、培地サブグループ、緩衝液、および細胞は、理想的にはキットの調製に適している。そのようなキットは、バイアル、試験管、ビン、パッケージ、ポーチ、ドラム缶等の1つまたは複数の容器を含んでよい。それぞれの容器は、1つまたは複数の本発明の上記の栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、もしくは緩衝液、またはそれらの組み合わせを含み得る。そのような栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液は水和されてもまたは脱水されていてもよいが、典型的には本発明の方法により産生される脱水調製品である。そのような調製品は、本発明に従い無菌であってよい。
【0101】
例えば1つめの容器は、例えば、本発明の栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、もしくは緩衝液、または上記したような本発明の栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液のいずれかのようなそれらの任意の成分もしくはサブグループを含んでよい。さらなる栄養培地緩衝液、緩衝液、抽出物、添加物、成分、またはサブグループは、本キットのさらなる容器に含まれ得る。キットはまた、1つまたは複数のさらなる容器内に、上記の細菌細胞、酵母細胞、植物細胞、または動物細胞等の1つまたは複数の細胞を含んでもよい。そのような細胞は凍結乾燥、乾燥、凍結、もしくはさもなくば保存され得るか、または本発明の方法に従って噴霧乾燥され得る。さらに、本発明のキットは、例えば状況に応じて1つまたは複数の二価陽イオンと複合化したL-グルタミンを含む、1つまたは複数のさらなる容器を含んでもよい(米国特許第5,474,931号)。キットはさらに、乾燥粉末栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、および/または緩衝液の再構成に使用する溶媒を含む1つまたは複数のさらなる容器を含んでもよい;そのような溶媒は、水性(緩衝液、塩類溶液、栄養培地溶液、栄養培地添加物溶液(ウシ血清(特にウシ胎仔血清または仔ウシ血清)またはヒト血清等の血清を含む)、またはそれらの組み合わせ)または有機的であってよい。本発明の栄養培地、緩衝液、抽出物、添加物、成分、またはサブグループとの混合に適合しない他の成分は、不適合性成分との混合を避けるために、1つまたは複数のさらなる容器に含まれ得る。例示的なキットは、任意に再構成溶媒を含むのに十分な容量の、再構成する乾燥粉末を含む容器、再構成の説明書、および再構成溶液を導入するための開封帯または出入口等の粉末乾燥への接近手段を含み得る。
【0102】
栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液を作製するための所与のキットに含まれる容器の数および種類は、調製する培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液の種類によって変わり得る。典型的には、キットは、特定の培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液を作製するために必要な成分または添加物を含むそれぞれの容器を含むことになる。しかし、異なる量の様々な成分、添加物、サブグループ、緩衝液、溶液等を混合することによって異なる培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液を調製し、異なる培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液製剤が作製できるように、本発明のキットにさらなる容器を含んでもよい。
【0103】
利点
予想外に、本発明は、経費が削減されかつ不便さが低減した、脂質を含む栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、緩衝液、および細胞の調製を提供する。経費の削減はいくつかの要因による。例えば、1X製剤に必要とされる大きな撹拌槽を必要としないため、はるかに小さな製造設備で本発明の培地、培地添加物、培地サブグループ、および緩衝液製剤が作製され得る。さらに、本発明の培地、培地添加物、培地サブグループ、および緩衝液製剤は、在庫費用、保存費用、および人件費が削減される「看板方式」製造技法によって必要に応じて調製され得る。培地、培地添加物、培地サブグループ、および緩衝液製剤の調製および輸送に必要な時間は、6〜8週間から1日程度にまで短縮され得る。また本発明の自動pH調製培地により、顕著な経費削減および時間節約が提供され、かつ従来の乾燥粉末または大量液体培地を用いての標準的な方法によるpH調整過程中に起こり得る、再構成培地中への汚染物質の混入の傾向が減少する。また本発明により、他の通常用いられる技法によって作製される多数のバッチでは何回もの品質管理試験が必要とされるのに対して1回のみの品質管理試験が必要とされる、非常に大量の1X培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液(例えば、1000,000リットルまたはそれ以上)を調製するために用いられ得る、栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液の成分の調製が可能になる。重要なことには、個々の成分がより安定的であるため、本発明の培地、培地添加物、培地サブグループ、および緩衝液製剤はバッチ間でより一貫性がある。実験室で典型的に利用できる以上の特別な設備の必要性がほとんどなく、細胞が少量で長期間保存され得るため、本発明の乾燥細胞粉末はまた、技術的にも経済的にも有利である。さらに、本発明により調製される細胞は、細胞への毒性があるかもしれない凍結保存剤への曝露なしに保存される。改善された利便性により、培養中の細胞に脂質を供給する負担が減少することになる。乾燥培地製剤中に脂質を提供する改善法は、培養中の細胞が生理的課題または所望の課題を実施する上での性能向上をもたらすはずである。
【0104】
要約すれば、本発明は:その中に溶解した少なくとも1つの脂質を含む溶媒を用いて栄養培地粉末、培地添加物粉末、栄養培地サブグループ粉末、または緩衝液粉末を凝集化する段階を含み、溶媒が少なくとも1つの脂質を栄養培地粉末、培地添加物粉末、栄養培地サブグループ粉末、または緩衝液粉末への取り込みに送達する、凝集化栄養培地粉末、凝集化培地添加物粉末、凝集化栄養培地サブグループ粉末、または凝集化緩衝液粉末を産生する方法、に向けられている。
【0105】
本発明のある態様において、凝集化する段階は流動床凝集化を含む。
【0106】
本発明のある態様において、溶媒は液相である。他の態様においては、溶媒は固相である。
【0107】
本発明のある態様において、脂質は、改変されない場合と比較して溶媒中での溶解度が増加するように改変された脂質である。脂質は塩の形でよく、1つまたは複数の水酸基を有し得り、およびシクロデキストリンと錯体を形成し得る。
【0108】
本発明のある態様において、溶媒は混合液である。混合液は液体の混合物であってよい。混合液はまた、少なくとも1つの極性溶媒および/または少なくとも1つの非極性溶媒および/または少なくとも1つの有機溶媒を含んでよい。例えば、混合液は20%〜95%の有機溶媒、例えば20%、40%、50%、60%、80%、90%、または95%の有機溶媒を含み得る。
【0109】
溶媒が混合液の場合、混合液は例えば、(a)少なくとも1つの極性溶媒および(b)少なくとも1つの有機溶媒または少なくとも1つの非極性溶媒が1%〜99%の割合の溶媒を含んでよい。混合液は、(a)少なくとも1つの極性溶媒および(b)少なくとも1つの有機溶媒または少なくとも1つの非極性溶媒が例えば1、5、7、10、15、20、25、30、33、40、50、60、67、70、75、80、85、90、95、98、または99%の割合の溶媒を含んでよい。
【0110】
溶媒が混合液の場合、混合液は、少なくとも1つの有機溶媒または少なくとも1つの非極性溶媒を40%〜60%含んでよい。ある態様では、混合液は、(a)少なくとも1つの極性溶媒を50%および(b)少なくとも1つの有機溶媒または少なくとも1つの非極性溶媒を50%含む。
【0111】
溶媒が混合液の場合、混合液は、例えば水、およびジメチルスルホキシド、アルコール、エーテル、およびケトンからなる群より選択される少なくとも1つの溶媒を含んでよい。混合液は、例えば、ジメチルスルホキシド、アルコール、エーテル、およびケトンからなる群より選択される少なくとも1つの溶媒を含んでよい。混合液は、約40%〜60%のエタノールを含んでよい。1つの態様において、混合液は約50%のエタノールを含む。溶媒は、非極性溶媒および有機溶媒からなる群より選択される少なくとも2つの溶媒の混合液を含んでよい。
【0112】
本発明のある態様において、送達は、制御された温度、制御された湿度、および溶媒の制御された分圧の少なくとも1つを含む条件下で行われる。
【0113】
本発明のある態様において、脂質は、リノール酸、リポ酸、アラキドン酸、パルミチン酸、オレイン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、リノレン酸、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、スフィンゴミエリン、カルジオリピン、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンK、プロスタグランジン、およびステロールからなる群より選択される。ステロールは、例えば植物または動物ステロールであってよい。ある態様においては、ステロールはコレステロールである。
【0114】
本発明はまた、本発明の方法のいずれかによって調製される凝集化栄養培地粉末、凝集化培地添加物粉末、凝集化栄養培地サブグループ粉末、および凝集化緩衝液粉末に向けられている。ある態様において、本発明の粉末は、非凝集化栄養培地粉末と比較して粉塵が減少し、非凝集化栄養培地粉末と比較してより完全な溶解度を有し、非凝集化栄養培地粉末と比較して不溶性物質が少なく、および/または非凝集化栄養培地粉末と比較してより早く溶解する。
【0115】
ある態様において、本発明の粉末は血清を含まず、哺乳動物成分を含まず、および/または動物成分を含まない。
【0116】
本発明はまた、(a)溶媒を用いて本発明の凝集化粉末を再構成し、溶液を形成する段階、および(b)細胞の培養に好ましい条件下で、細胞を溶液に接触させる段階を含む、細胞を培養する方法を提供する。細胞は、例えば、細菌細胞、昆虫細胞、酵母細胞、線虫細胞、鳥類細胞、両生類細胞、爬虫類細胞、および哺乳動物細胞からなる群より選択される細胞であってよい。細胞が哺乳動物細胞である場合、細胞は、例えばCHO細胞、COS細胞、VERO細胞、BHK細胞、AE-1細胞、SP2/0細胞、L5.1細胞、PerC6細胞、293細胞、ハイブリドーマ細胞、またはヒト細胞であってよい。本発明のある局面によれば、3、4、7、10、14、28、30、60、または90日目における細胞の増殖は、脂質を添加した液体培地における同一時点の細胞の増殖と比較して50%〜120%である。例えば、3、4、7、10、14、28、30、60、または90日目における細胞の増殖は、脂質を添加した液体培地における同一時点の細胞の増殖と比較して、例えば50%、60%、75%、80%、90%、100%、105%、110%、または120%であってよい。
【0117】
本明細書に記載した方法および適用に対する他の適切な変更および適合化は明白であり、本発明またはそのいかなる態様の範囲からも逸脱することなく行われ得ることは、当業者には自明であると考えられる。本発明を詳細に説明したが、以下の実施例を参照することによってより明確に理解されると考えられる。以下の実施例は説明の目的のためのみに本明細書に含むものであり、本発明を制限することを意図するものではない。
【実施例】
【0118】
実施例1
典型的な乾燥粉末培地(DPM)の凝集
1.ベンチトップ実験室流動床装置(Stera-1;Niro, Inc./Aeromatic-Fielder; Columbia, Maryland)を使用。100〜500 gのDPMをチャンバー内に置く。装置の上に置き、ユニットをシールするためにレバーを使う。
【0119】
2.DPMを流動化(浮かばせる)するために、空気流を始動する。従来のDPMは比較的細かい粒子サイズであるので、4〜6の設定が必要となる。真空装置にスイッチを入れ、上部フィルターを通過する細かいDPMを捕獲する。流動化粉末が下部のメッシュスクリーンと上部フィルターに関して、チャンバーの略中央であることを確認する。
【0120】
3.まず圧縮空気ラインを閉じ、次いで水源に連結しているポンプを始動して、注入装置(噴霧ユニット)を始動する。目標は1分あたり6 mlまでの水を入れることである(任意のポンプのRPMと管の直径に基づく流速を知る必要がある)。DPMの凝集を防ぐために、交互に1分間水を加え、1分間水を停止し、チャンバー内で乾燥が生じるようにする。
【0121】
4.もしもフィルターが運転中にDPMで被覆されて、ブローバックによって、粉末が除去されなければ、すべてのフィルターがブロークレアするまで、設定2〜3にファンの速度を落とす。ついで運転中のファンの速度を以前のレベルまで上げる。
【0122】
5.DPM各500 gに35 mlまでの水を加えた時、凝集は完了する。この容量はDPMの配合によって変化する。運転の終わりに向けて、比較的大きな凝集顆粒がチャンバー内(底)に見られるようになる。目に見える大きな粒子と、細かい埃がないことがプロセスの完了を示す。
【0123】
6.凝集したDMPを5〜7分間乾燥させる。
【0124】
7.運転の終わりに、フィルターを4回ブローオフする。
【0125】
8.ユニットの電源を切り、水チューブの連結を解き、凝集したDMPを気密容器に集める。
【0126】
これらの手法は、プロセススケールまたは生産スケールの流動床装置を使用する場合は調整しなければならない。例えば、MP-1(Niro, Inc./Aeromatic-Fielder; Columbia, Maryland)を使用する時は、次のプロトコールによって満足な結果が得られる。
1.ユニットをシールする(ガスケットを膨らます)。
2.予熱のためにファンを始動する。
3.入り口の空気温度が設定点に等しい時にファンを停止する。
4.ガスケットを萎め、物質を装填し、ガスケットを膨らます。
段階5〜8は1分以内に遂行しなければならない。
5.バッチを始動する。
6.ファンを始動し、フィルタークリーニングの電源を入れる。
7.ノズルの噴霧空気圧を%出力に設定する(排気に対してノズルをチェックする)。
8.液体フィードラインを接続する。
9.スクリーン上およびポンプにおいてポンプを始動する。
10バッチ時間を再設定する。
11.すべての液体を設定速度(26/分)で噴霧する。2kgの粉末に250mlまでの水を使う。
12.すべての液体が加えられた時に、ポンプにおいてまたスクリーン上でポンプを停止する。
13.空気流を乾燥値に低減する(例えば100から60に)
14.製品が所望の温度に達したならば(-40℃)、「最初の設定」スクリーンに行き、現在の「バッチ時間」よりも2-3分大きい値に「バッチの継続」を設定する。
15.バッチを停止する。
16.ガスケットを萎める。
通常の装置の設定(ベンチ、プロセスおよび製造スケール装置)
乾燥温度:60〜65℃
出口空気温度:33℃まで
ブロアウト圧:5バール
噴霧圧:1.5〜2.0バール
ブローバック ドウェル:噴霧後1、噴霧中2
ファンの容量:運転の開始時5、凝集が明らかになった後6
マグナヘリックス(Magnahelics):フィルター抵抗 150〜250、有孔制御板抵抗 50まで、空気容量:50未満
【0127】
実施例2
DPMの不可欠の部分としての重炭酸ナトリウムの添加
上記のように、粉末化培地の貯蔵において、脱ガスおよび緩衝剤能力の問題が生じる可能性があるために、通常、ボールミルまたは凍結乾燥による製造中にDPMに重炭酸ナトリウムは添加しない。この標準的な製造プロセスは、従って再溶解の際に、重炭酸ナトリウムの添加とpHの調整を必要とする。この方法では、これらの付加的段階は製造中に粉末化培地に直接重炭酸ナトリウム(または任意の緩衝剤塩)を添加することによって回避してもよい。
【0128】
DPM内に重炭酸ナトリウム重炭酸ナトリウム(または任意の緩衝剤塩)を含める2つの仕方がある:(a)注入装置を介する(b)DPMの一部として
【0129】
(a)注入装置
重炭酸ナトリウムの溶解度および通常の哺乳動物細胞培養培地に一般的に添加する必要量の点から、粉末には、かなり大容量の液体を注入する必要がある(上記の35 mlの水よりも著しく多い)。これはまだ可能であり、事実、例えば血清の場合のように、もしもDPMに添加されるために同様に比較的大容量の液体を要する他の成分を添加するならば好ましい。この場合、DPMが装置の中で固まらないことを確実にするために、連続して液体を添加すること、および乾燥させること等に何回も注意を払わなければならない。1分間、1分あたり6 mlを使用すること、ついで2分間乾燥させることがほぼ正しい。
【0130】
添加する液体の量は、次のように決められる。75 g/Lの重炭酸ナトリウムの水溶液を調製する。例:チャンバー内の凝集されるDPM250 g。1X液体培地の1Lに10 gのDPMが必要であると仮定。従って、250 gは25Lの1X液体培地を示す。液体の各Lに対して、2 gの重炭酸ナトリウムが必要と仮定(例えば)。これは50 gの重炭酸ナトリウムが必要であることを意味する。重炭酸ナトリウム溶液は75 g/Lであるので、250 gのDPMに0.67 Lの重炭酸ナトリウム溶液を添加しなければならない。
【0131】
重炭酸ナトリウム溶液のpHは〜8.00で、これは培地成分を分解するため、サイクルの間の乾燥時間を長くする必要があることを除き、上と同様に、「通常のDPMの凝集」のプロセスと同様に重炭酸ナトリウムを添加する。サイクル間の重炭酸ナトリウム粉末の完全な乾燥のための十分な時間を与えないで、あまりに早く重炭酸ナトリウム溶液を加えることによって、粉末が決して「浸され」ないことが重要である。また、水分は、緩衝剤容量の損失と、粉末がフォイルパケット(foilpacket)中にあるならば、「枕」の形成の原因になる二酸化炭素の放出をもたらすので、できるだけ低い最終の水分含量であることが重要であり、従って長い液体乾燥時間が必要である。
【0132】
(b)DPMの一部として
流動床処理に先立って、他の培地成分と同様な仕方で重炭酸ナトリウムをDPM中に粉砕できる。しかし、粉砕の過程で、重炭酸塩は最後の成分として添加されねばならない。すべての他の培地成分は、通常通り粉砕されるべきで、ついで粉砕を停止し、最後に重炭酸塩を加え、適切な粒子サイズまでさらに粉砕する。すべての粉砕後処理は、操作上可能な限り低く(〜20から40%)設定された湿度が管理された環境で行うべきである。ついで、粉砕後、できるだけ早く流動床処理を行うべきである(もしも同日に処理しないならば、DPMは二重にラップし、水分吸着剤を入れた密閉容器内に入れる)。
【0133】
流動床プロセス自身は、水の注入(〜6 ml/分)後の乾燥時間が再度延長(水の注入1分で2分の乾燥サイクル)すべきことを除いて、上記の例と同様(DPM 500 g当たり35 mlを使用)に行われる。フェノールレッドが存在するために、DPMの色は深紅-明るい紫になることに注意すること。DPMは本質的に水分を含まないので、これは、分解状態を示すものではなく、また流動床処理が必須である理由を示す。
【0134】
実施例3
緩衝塩(例えば重炭酸ナトリウム)を含み、使用者の努力なしに、再溶解した(IX)培地のpHが自動的に所望のpHになるように配合されるDPM
上記のように、商業的に利用できるすべての哺乳動物細胞培養粉末培地は、溶液が適切なpHになるようIX液を調製する時に、1つまたはそれ以上の緩衝塩(例えば重炭酸ナトリウム)を加え、pHを調整する必要がある。しかし本法は、重炭酸ナトリウムの添加(上記実施例2に示したように)およびpHの調整の必要を省く。本発明のこの態様において、1つまたはそれ以上の緩衝塩を含む乾燥粉末培地に、酸または塩基を導入する(必要に応じて)ために流動床技術が用いられる。本発明のこの態様に従って、最終的に再溶解される細胞培養培地中の所望のpHと緩衝能力によって、任意の緩衝塩またはその組み合わせ、および任意の酸または塩基を使用してもよい。
【0135】
もしも、重炭酸ナトリウムがDPMに粉末として直接加えられるならば、末端の使用者は単に水を加え、混合するだけで、既に重炭酸(上記参照)を含み、適切なpHの溶液を作ることができる。先ず、どれほどのpH調整が必要かを測定する必要がある。(1)ビーカーに1Lの水を入れる。DPMを液体に加え、混合する。1L当たり加える量は、その粉末の仕様によって与えられている。例えば、10 g/L、13 g/L)。この場合、重炭酸ナトリウムの重量は1L当たりいくら加えるかの決定において考慮しなければならない。(2)粉末を溶解後、5NのHCLを加え、溶液を所望のpHに調整する。その量を記録する。(3)この数を1NのHCLの量に換算する。凝集すべき全体の粉末の調整に必要な1NのHCLの量を計算する(例:IX培地の1Lを、未調整のpH7.9からpH 7.2に調整するために、1NのHCLが5 ml必要である。これは1X培地の1Lは、例えばDPM13.0gであることを示す)。従って、DPM各13.0gに対して、5 mlの1NのHCLが必要である。もしも、250 gのDPMのpHを調整を望むならば、pHを自動的に調整するために、250÷13=19.2×5 ml、即ち96 mlの1NのHCLを粉末に加える必要がある。
【0136】
この1NのHCLをDPMに加えなければならない。その最良の方法は、水の代わりに1NのHCLを加える注入装置を使うことである。一般的に次の点を除いて、プロトコールは上記と同じである:(1)1NのHCLは重炭酸ナトリウムを含む培地にゆっくりと加えなければならない。あまり速く加えると、二酸化炭素が外れ(drive off)、緩衝能力が至適以下になる。一般に必要な1NのHCLの容量のために、数回1分間オン(on)し、2分オフ(off)するサイクルが必要である。DPMは液体プロセスの性質を有するが、実際には乾燥粉末であるような動的なシステムが存在するように、各サイクルの終わりに粉末状態が得られなければならない(粉末はいつも本質的に乾燥しているが、システム内の連続的な蒸発のために、HCLが粉末に加えられるに従って、バルクの色が暗赤紫から明るい黄オレンジ色に変化する)。HCLの総量は本質的に中性のpHになるように計算されているので、流動床が適切に調整されている限り(上記を参照;運転中のチャンバー内の粉末粒子に位置)、粉末は「酸」の状態に実際に曝露されることは決してない。すべての粉末をがシステムを通って動き(即ち、連続的に揚がり、凝集し、沈む)、チャンバー内に「死んだ」領域がないことを確認することが重要である。
【0137】
運転後、粉末が集められると、それが適切な「乾燥」した包装および場所に保存されている限り、水に加えることができる。pHの調整は必要ない。従って、本発明は自動的なpH調整粉末培地を提供し、乾燥粉末培地を再溶解して作られる液体培地のpH調整の必要はない。
【0138】
実施例4
DPMそれ自身内に血清、アルブミン、Hy-Soy等の大きな分子量の添加物を含める
これまで、血清を含んだ乾燥粉末培地は商業的に利用されていない。発明者等は本法を用いて(流動床および噴霧乾燥技術により)、機能性(細胞培養)が維持された仕方で粉末に血清を加えることに成功した。
【0139】
流動床装置の注入装置は血清および濃縮アルブミンの霧を作ることができる。このような仕方でDPMに加えられ、乾燥された血清が機能性であるか否かを検討した。
【0140】
血清添加の手順:(1)凝集させる標準DPMの量を測定する。(2)これから、特別な粉末に対するg/Lに基づいて、1gの粉末を作る1X培地の容量を計算する。(3)所与の添加物率レベルで必要な血清の量を計算する(例えば、10 g/Lに使用される100 gの粉末は10Lと等量の粉末を与える)。5%の血清の添加物率において、注入装置によって500 mlの血清の添加が必要である。
【0141】
血清の添加のプロトコール:血清とアルブミンは非常に粘度が高い。ノズルの噴霧パターンを液滴サイズとパターンに関してチェックしなければならない。粉末に添加する溶液中の試料チューブを用いて、ボール紙または他のバックドロップ(backdrop)に対して噴霧を試験する。均一性と小さな液滴サイズをチェックする。もしも「霧」でなければ、噴霧圧を0.5バールだけ上げて、再度試験する。十分な圧力になって細かい霧のパターンが得られるまでこれを行う。
【0142】
細胞培養適用に使用するために、1X培地1L当たりに使用すべき血清DPMの1 ml当たりの重量を知る必要がある。このために、乾燥中に血清を保持するバイアルまたはチューブを正確に秤量する。このバイアルのそれぞれに、(知られた)一定量の血清を入れる。ついで、バイアルをスピードバック(Speed Vac)または凍結乾燥器に入れ、乾燥するまで水分を除く。ついで、今度は凍結乾燥された血清を含んだバイアルを再度秤量する。血清の重量を計算し、元の容量のml当たりとして表す。1L当たり使用するための、血清を含む凝集したDPMの重量は、従って、標準DPM「使用」重量と所与のレベルでの血清の重量の和である。
【0143】
例えば、培地A(DPM)が10 g/lで使用されると仮定する。血清の添加物は5%v/vであるべきである。これは標準DPMの重量に加えて、血清の重量は5%に等しく、これは培地の1L当たりの加える50 mlに等しい。血清粉末が0.06 g/mlであると仮定する。従って、粉末化血清の重量は50 x 0.06 g/L=3 gである。従って、1Lの水に加えるべき血清を含むDPMの重量は血清粉末の重量(3 g)と標準DPMの重量(10 g)の和=13 g/lである。
【0144】
実施例5
DPM製造時の粉砕技術(成分をミクロンサイズの粒子に壊す高エネルギーインプットシステム)の低減または排除
上記のように、通常乾燥粉末培地は粉砕工程で生産されるが、これには労力を要し、また多くの問題がある。本発明の方法は、これらの労力および技術上の制約を克服する流動床技術を用いる乾燥粉末培地の製造を提供する。
【0145】
A. 先ず外部装置中で混合後、流動床で処理
通常、粉砕されたGPMは、重炭酸ナトリウム(追加のボールミルは必要なく、供給者から受け取ったまま直接)と混合される(重炭酸ナトリウム2g/Lで、RPM 1640)。この混合物を20分間混合する。粉末を流動床チャンバー内に置き、上記のように自動pH制御で、重炭酸ナトリウムを含む培地に対して流動化される。
【0146】
B.流動床チャンバー内に直接混合後、凝集する
重炭酸ナトリウムを粉砕GPMと共に直接チャンバー内に置き、短時間混合し、ついで凝集する。これによって別のユニットでの混合が省略できる。
【0147】
C.ボールミル工程全体の排除
DPM化学品のすべてを直接流動床チャンバーに加え、予備的に混合後、凝集するか、いくつかのより粗い「粘着物」等を回転粉砕機で短時間粉砕処理後、混合と最終の凝集のために流動床内に置く。
【0148】
実施例6
同じDPM内に上記のすべての特性を有する方法
本発明者らは、「貯蔵寿命期限切れ」の重炭酸ナトリウムの粉砕したDPMへの添加と自動pH制御を組み合わせた。
【0149】
自動pH制御を用いて、血清を重炭酸ナトリウムを含むDPMと組み合わせるための1つのプロトコールは:
1. DPM(粉砕された)に炭酸ナトリウム(供給者からの粉末)を加える。
2.成分を混合する(外部ユニットまたは流動床のいずれかで混合)
3.別の容器中で、1LのDPM(重炭酸ナトリウムを含む)を水(IX)で再溶解し、溶液のpHを7.5に調整するのに必要な1N HCLまたは1N NaOHの量を決定する。リットル基準で、凝集される粉末の量を知ることによって(つまりL等量)、上記の計算量で凝集される全部の粉末についての1N HCLまたは1N NaOHの量を計算する。この量を流動床装置を介して加える(注入ノズル)。(DPMは「液体」でないが、水分が工程に含まれているので、血清を加えた時に、重炭酸塩が遊離するような酸性のpHではなく、できるだけ中性に近い粉末であることが重要である。pH7.6またはそれ以上では、重炭酸ナトリウムの濃厚溶液はCO2を発生しないが、より低いpHでは、CO2ガスを発生する。)
4.添加物の割合と凝集されるgに基づく、血清の添加。
5.上記(3)からの同じ1Xの1Lを用いて、所望のpHにpHを調整するのに必要な1N HCLまたは1N NaOHの量を決定する(例えば7.2)。この情報を使って、血清で凝集した粉末の重量に使用される量を計算する(g/Lの仕様を知って)。この量を流動床装置を介して加える(注入ノズル)
6.粉末培地を滅菌するためにγ線照射が用いられる。
【0150】
類似した方法で、DPMの特別な量を粉末化血清の特別な量と組み合わせ、混合物を凝集して血清含有DPMを製造してもよい(下記の実施例8に記載したように、例えば噴霧乾燥を用いて調製される)。例えば10%の粉末化FBSを含む培地の調製には、55.5 gの粉末化FBSを500 gの粉末培養培地に加え、粉末を攪拌によってよく混合する。ついで、この混合物はついで、上記のように水で凝集され、再溶解によって、自動pH調整の可能性がある10%のFBSを含む培養培地が得られる。
【0151】
実施例7
流動床処理による100%血清粉末の製造(噴霧乾燥を刺激するための)
方法
1)ベンチトップ実験室流動床装置(Strea-1)を使用した。粉末化血清の製造には、チャンバー内には何も置かない。ユニットを遮蔽するためにレバーを用いる。
【0152】
2)注入装置によって、血清を加えた(噴霧ユニット)。血清がチャンバーに加えられるに従って、空気流を十分に増した。血清の流れは、水の蒸発が起き、チャンバー中で瞬間的に粉末が形成されるように血清が十分乾燥したことを示した。水分または液体のコーティングはチャンバー内になかった。
【0153】
3)ポンプの速度はチャンバー内に1 ml/分まで許容するように設定した。
【0154】
4)空気流は〜8から9に設定した。
【0155】
5)間欠的にフィルターを清浄するために、ファンの速度を〜2から3に低減した。これを5〜10分毎に定期的に行った(8〜9の空気流の設定は高すぎて、フィルターは粉末をブローオフ(blow off)せず、清浄しない)。
【0156】
6)1回のフィルターのブローオフ後、ファンの速度を以前のレベルに増し、ポンプを始動した。一度、これらのパラメーターを設定すると、フィルターの清浄が指示された時以外はポンプを連続的に運転した。
【0157】
7)凝集器に血清液の全てを加えた後、5分間最後の乾燥を行った。
【0158】
8)ついで、フィルターをブローオフして、できるだけ多くの粉末を集め、機械を停止し、製品を取り除いた。粉末化血清を気密容器に入れ、光から遮断した。
通常の装置の設定
乾燥温度:60〜65℃
出口空気温度:33℃まで
ブローアウト圧:5バール
噴霧圧:2.0〜2.5バール
ブローバックドウェル(Blow back dwell):噴霧間、2
ファンの能力:運転中8〜9
マグナヘリックス(Magnahelics):フィルター抵抗150〜250、有孔制御板抵抗〜50、空気容量50未満
【0159】
FBSの凝集がタンパク質の構造または分布に影響したか否かを決めるために、凝集したFBSと液体FBSの試料をSDS-PAGEに架け、タンパク質を染色し、光学密度法でスキャンした。図1に示すように、本法(図1A)によって調製した凝集FBSは、液体FBS(図1B)で観察されたのと略同じタンパク質のプロフィルを示した。これらの結果は、本法による乾燥FBSの制御された製造が、血清の主要成分の構造または分布に顕著に影響をしないことを示す。
【0160】
FBSの凝集が細胞の増殖と継代を支持する能力に影響したか否かを決定するために、SP2/0細胞を2%の凝集した(乾燥)FBSまたは2%の液体FBSのいづれかを含むDMEM中に平面培養し、増殖速度と継代回復を検討した。図2Aに示したように、凝集したFBSを含む培地に平面培養した細胞は、液体FBSを含む培地に平面培養した細胞と類似した増殖の動態を示した。同様に、凝集したFBSを含む培地中の細胞は、液体FBS(図2B)を含む培地中の細胞の増殖と実際上同じ増殖速度で継代から回復した。これらの結果は共に、本発明の凝集FBSは培養細胞の増殖と継代を支持することにおいて、液体FBSと略等価な性能を有することを示す。
【0161】
実施例8
噴霧乾燥による100%血清粉末の製造
流動床処理の代替法として、噴霧乾燥技術による乾燥粉末化血清の製造の可能性を検討した。乾燥粉末化血清を調製するために、直径3フィートの実験室噴霧乾燥器(Mobile Monitor Spray Drier;NIRO,Columbia,Maryland)を用いた。液体FBSを噴霧乾燥器に吸引し、空気ディスペンサー(air dispenser)の中央に位置するSchlick 940ノズルを通して噴霧し、乾燥空気を装置の最上部の空気ディスペンサーを通して噴霧器に導入した。噴霧乾燥は、次の条件下で行った:入口空気温度=200℃; 出口空気温度=70℃;、ノズルの噴霧空気圧=2.0バール、空気流=80.0kg/時間、噴霧速度=65 g/分。これらの方法を開発中に、最初60℃の出口温度を用いた;しかしこの温度はあまりに低いことが判ったため、噴霧速度を、至適な出口温度であることが判った約70℃を達成するためのレベルに、調製し直した。噴霧乾燥後、粉末化血清を装置のサイクロンで集め、プロセス空気を装置内で再循環する前に、排気フィルターを通して濾過した。
【0162】
製造後、粉末血清を物理的性質に関して特性化し、同じロット源(AとB)の液体FBSと比較した。製造ロットの異なる段階から採った試料(試料Aと試料B)をエンドトキシンを含まない蒸留水(Invitron Corporation)中で60.44 g/Lに再溶解し,Limulus Amoebocyte Lysate test(Invitrogen Corporation)を用いてエンドトキシンレベル、ヘモグロビンレベル(525 nmの吸収を測定する分光光度法およびUV/Vis分光光度法により)を検討した。結果を表1および図3Aおよび3Bに示す。
【0163】
(表1) 粉末血清の物理的性質
【0164】
表1に示すように、粉末FBSは、粉末FBSの製造の原料として用いられた、液体FBSと類似したエンドトキシンレベルとヘモグロビンレベルを示した。更に、製造工程の異なった段階から採った試料は、略同じエンドトキシンレベルとヘモグロビンレベルを示し、これは本法が製造ロットを通して、略均一な物理的一貫性のある物質の製造をもたらすことを示している。粉末および液体のFBSの試料をUV/可視光分光光度法で検討し(図3)、粉末FBS(図3A)に観察された微量成分は源の液体FBS(図3B)で得られたものと区別できなかった。これらの結果はともに、本噴霧乾燥法によって調製した血清粉末は、粉末がそれから調製された液体血清と、略同様な物理特性を有することを示している。上記の実施例7(例えば図1参照)の結果と併せ、これらの結果は、本発明が提供する方法が、源の液体FBSから変化していない物理特性を有する、粉末血清の製造をもたらすことを示す。
【0165】
実施例9
自動的にpH調整された培養培地の製造
粉末培地に重炭酸ナトリウムを決して含めない1つの理由は、空気中の水分でさえ、CO2が遊離する原因となるパウチ(pouch)の酸性条件をもたらす可能性があるからである。パウチは膨張し「枕」と呼ばれるものを作る。流動床処理では、装置内の水分は、工程の終了に先立って、本質的に無視できるレベルに低減される。発明者らは、重炭酸ナトリウムを含むRPMI-1640を作ったが、「枕」の形成の証拠は見られなかった。
【0166】
pHが調整された粉末培地を作るために、水に加えた際のpHが、約7.0〜7.4になるように、粉末にpH調整化学物質(通常HCLまたはNaOH)を加える必要がある。一度、重炭酸ナトリウムが粉末に加えられると、多くの粉末培地は水の中で中性の塩基側で再溶解し、HCLの添加を要する。重炭酸ナトリウムを含む粉末にHCLを添加することに問題があることが予想される。しかし、添加した液体(この場合、5 N HCL)は流動床装置内部で水分を含んだ状態または「液体」状態をもたらさないので、重炭酸ナトリウムはCO2ガスを放出せず、その緩衝能力を完全に維持する。これについて、本試験でpH滴定実験によって検討した。2つの独立した試験で(図4Aおよび図4B)、等量の酸は、再溶解時に、液体に加えられる重炭酸ナトリウムを含む標準培地と同じ量で、凝集培地および自動的にpH調整された凝集培地のpHを低下することを見出した。これらの結果は、その後のpHの調節による凝集、および凝集工程中のpHの調整による凝集は、顕著な緩衝能力を有する粉末培養培地の製造に同等に機能することを示す。
【0167】
実施例10
培養培地の溶出速度に対する凝集の影響
培養培地の凝集の培地の溶出速度に対する影響を検討するために、Opti-MEM I(商標)はたはDMEMを水またはFBS(Opti-MEM I は2%だけ、DMEMは2%または10%)で凝集した。凝集培地の水の中での再溶解時に、凝集Opti-MEM Iの溶出時間は、標準粉末Opti-MEM I(図5A)の溶出よりもより速く起きた;結果は水およびFBSで凝集したOpti-MEM Iで同じであった。水で凝集したDMEMは、標準粉末DMEMよりもより速く水に溶出したが、FBSで凝集したDMEMはそうでなかった(図5B)。
【0168】
凝集粉末培地の開放構造のために(従来の粉末培地と反対に)、毛細管作用がすべての粉末粒子の極く近くに水を運ぶ。これが、溶出時間を長くする、最も標準的な粉末培地の再溶解で観察される厄介な問題である粉末の「球」の出現を防止する。より速い溶出に加えて、凝集培地はまた埃の発生も低減した。これらの結果は、水で凝集した培養培地およびFBSで凝集した培養培地のいくつかは、はるかに速く溶出し、従来の粉末培養培地よりも埃の発生が少ないことを示している。
【0169】
実施例11
再溶解した凝集培養培地中での細胞増殖および継代培養
培養培地の使用の多くで、血清またはアルブミンのような高分子の添加が必要である。これらの分子は溶液の形であってよく、またはアルブミンの場合は粉末であってもよい。しかし、粉末培地の均質性を確保するために、これらのタンパク質は通常粉末としてではなく、バルク粉末培地の再溶解後に、液体培地に液体として加えられる。これには、例えば性能を長期に亘って維持するために、血清を冷蔵庫に貯蔵しなければならないような、幾つかの不便がある。これは、汚染の機会を増し、血清が無菌で加えられなければならないために、経費と不便が増す。血清の添加後に濾過を行うと、他の処理段階が必要になる。従って、血清を粉末培地の必要不可欠な部分として提供することができるという利点がある。
【0170】
従って、培養培地を水または各種の濃度のFBSで凝集した。上に一般的な概要を示したように、高い蒸発率で、空気で懸濁した乾燥粉末培地にFBSを注入することによって、FBSを粉末培地に加えた。血清の添加物率はOpti-MEM I 培地では2%、DMEM培地では2%または10%であった。これらの培地中の各種の細胞系の増殖と継代成功をその後評価した。
【0171】
図6に示したように、SP2/0細胞は、従来の培養条件下(水で再溶解した粉末培地に添加された液体血清)で生育した細胞と比べて、水またはFBS(図6A)のいずれかで凝集したOpti-MEM I 培地で生育した時、類似した増殖率を示した。2%のFBS(図6)で添加物し、水またはFBSで凝集したDMEM中で培養したSP2/0細胞で、また10%のFBSで添加物し、水およびFBSで凝集したDMEM中で培養したSP2/0細胞(図7A)、AE-1細胞(図7B)およびL5.1細胞(図7C)で同様な結果が観察された。更に、SP2/0細胞は、10%のFBS(それぞれ図9A、9B、および9C)で添加物し、水およびFBSで凝集したDMEM中で培養したSP2/0細胞、AE-1細胞およびL5.1細胞および5%のFBS(図10)で添加物し、水で凝集したDMEM培地中で培養したSP2/0細胞と同様、2%のFBS(それぞれ図8Aおよび8B)で添加物し、水で凝集したOpti-MEMおよびDMEM中で培養した時、略同様の継代からの回復率を示した。更に、SP2/0細胞は、5%のFBS(図10)で添加物し、標準DMEM中と同様、大規模バッチで、且つ重炭酸ナトリウムを含む自動pH調整粉末DMEM中で作られた、水で凝集した培地中で同一の継代特性を示した。
【0172】
これらの結果は共に、動物血清(例えばFBS)のような培養培地添加物は直接培養培地中に凝集されてもよく、このような仕方の凝集過程中の培養培地の添加物は各種の培養細胞の増殖と継代の至適な支持を提供する培養培地を作る。更に、これらの結果は、本培養培地粉末が大規模のバッチで、重炭酸ナトリウムを含む本発明の自動pH調整培地を含んで、成功裏に製造できる可能性がある。
【0173】
実施例12
噴霧乾燥血清粉末で添加物した培養培地中の細胞の増殖
実施例7に示した実験の結果として、実施例8に記載したように調製した2%または10%の噴霧乾燥FBS、または2%または10%の液体FBSを含むDMEMに平面培養し、細胞の増殖速度と継代回復を検討した。細胞は培地10 ml中に1 x 105の密度で3重の25cm2のフラスコに接種した。生きた細胞密度を3日目から7日目に測定し、各細胞系を2回試験した。結果を図11〜13に示した。
【0174】
図11に示したように、粉末FBSを含む培地中で培養したAE-1細胞は標準液体FBSを含む培地中で培養した細胞と類似した増殖動態を示した。予想したように、10%のFBSを含む培養培地中では、2%のFBSを含む培地中よりも高い密度により速い増殖を示し、約4日目までに増殖のピークを示した。2つの独立した実験(図11Aと11B)に対して同様の動態が観察され、これはこれらの結果が再現性があったことを示している。類似した結果が粉末FBSまたは液体FBS(図12Aと12B)を含む培地中でSP2/0細胞の増殖速度が測定された2つの実験で得られた。更に5%の粉末FBSを含む培地中で培養したAE-1細胞は液体FBS(図13)を含む培地中の細胞と同じ増殖速度で継代から回復した。
【0175】
これらの結果は本発明の噴霧乾燥法で調製した粉末FBSは培養細胞の増殖と継代を液体FBSと略等価に支持することを示す。実施例7と8の結果と共に、これらの結果は本発明の方法を、液体FBSと略同一の物理的特性と性能特性を示す粉末FBSを流動床または噴霧乾燥技術で製造するのに用いることができることを示している。
【0176】
実施例13
凝集培地の性能に対する照射の影響
最近、特にバイオテクノロジー産業において、バイオ生産に使用する培地および培地成分(添加物を含む)の生物学的純度についての関心が挙がっている。γ線照射は通常熱または毒性ガス曝露に馴染まない一定の液体および粉末によく作用することが知られている。従って、水またはFBSで凝集した培養培地をコバルト線源で25 kGyで数日間γ線照射し、各種の細胞型の増殖速度を検討した。
【0177】
1つの実験の組では、SP2/0細胞を1 x 105細胞/mlで各種培地に接種し、37℃で培養した。各種の間隔で、試料を無菌的に取り、細胞数をCouler計測で、増殖力をトリプタン青の排除で測定した。1X溶液を作るために十分な粉末培地を水1Lに溶解し、攪拌し、0.22μmのフィルターを通して濾過して培地を調製した。結果を図14のグラフに示す。グラフ上に「粉末FBS」と表示したそのような条件は粉末FBS(上記の実施例7または8のように調製した)を標準粉末培地または凝集した培地(照射または非照射)のいずれかから調製した再溶解された1Xに加えることを意味する。グラフ上の「照射、凝集DMEM+FBS」と表した条件はFBS凝集培地を作るためにFBSを粉末培地(標準または凝集)中に噴霧することによって、凝集培地を作るために流動床を用いることを意味する。
【0178】
図14に示したように、標準粉末基礎培地および凝集基礎培地のγ線照射はSP2/0細胞の増殖を支持するこれらの培地の能力に悪影響を及ぼさなかった。更に、照射は粉末FBSを含む粉末培地および粉末FBS自体への悪影響もなかったが、この作用は血清濃度の増加とともに減少した。
【0179】
これらのγ線照射の作用をより広範に検討するために、VERO細胞の試料を上記のように従来通り再溶解または凝集したVP-SFM(商標)に接種した。凝集チャンバー中の粉末培地に、これらの培地の伝統的な添加物である上皮成長因子(EGF)およびクエン酸鉄キレートを凝集中に噴霧ノズルを介して加えた。ついで培地を直接使用し、または上記のようにγ線照射した。細胞を3 x 105細胞/フラスコでT-25フラスコに接種し、37℃で培養した。上記のように細胞数および増殖率を測定し、結果を図15に示した。
【0180】
図15に示すように、VERO細胞はγ線照射した凝集培地中で培養した時、γ線照射されていない凝集培地とほぼ同等の増殖を示した。更に、培地の照射は培地中に存在する低濃度の添加物EGFおよびクエン酸鉄キレートに影響しなかった。
【0181】
これらの結果から、γ線照射を、血清, EGFまたは他の添加物を含む本法による多くのバルク凝集培養培地の調製における滅菌技術して用いてもよいことを示す。
【0182】
実施例14
粉末培地添加物の性能に対する照射の影響
滅菌培地添加物の製造における本法の有効性を示すために、凍結乾燥ヒトholo-トランスフェリンを-70℃または室温でコバルトγ線源に25 kGyで約3日間曝露することで照射した。ついで293の細胞を照射したトランスフェリンまたは照射されない対照のトランスフェリン(-70℃または室温で貯蔵された)で添加物した培地中で培養し、細胞の増殖を、標準のトランスフェリンを含む培養培地またはトランスフェリンを含まない培地の増殖と比較した。
【0183】
血清を含まない293培地(293 SFM)中で増殖しているmid-log相の293細胞を収穫し、200 x gで5分間1回洗浄し、計測と増殖率測定のためにトランスフェリンを含まない293 SFM中に再懸濁した。細胞を293SFM(陽性対照)、トランスフェリンを含まない293SFM(陰性対照)、-70℃または室温で貯蔵した非照射トランスフェリンまたは上記のように調製した照射トランスフェリンを含む293 SFM中で、20 mlの容量中3 x 105の密度で、三重の125 mlのエーレンマイヤーフラスコ中に平面培養した。フラスコを8% CO2/92%空気の雰囲気で平衡した37℃の培養器中で約125rpmに設定した回転振蕩器に入れた。毎日の細胞数の計測はCoulter粒子計測器を使用して測定し、増殖率は標準手順に従って、トリプタン青排除法によって測定した。細胞がフラスコ当たり、約1.2から1.7 x 106の密度に達した時、各試料の1つのフラスコのそれぞれの内容を収穫し、遠心し、新鮮な培地に再懸濁し、3個の新しいフラスコに継代した。ついで。前継代および次継代の細胞数および増殖率の測定を上記のように行った。上記の条件下で培養した細胞の4つの連続的継代を試験した。
【0184】
図16A〜16Dに示したように、-70℃または室温でγ線照射したトランスフェリンを含む培地中で培養した細胞は、標準293SFMまたはγ線照射していないトランスフェリンを含む293 SFM中で培養した細胞と同様、第一継代(図16A),第二継代(図16B)、第三継代(図16C)および第四継代(図16D)において、略同じ増殖動態と生存を示した。トランスフェリンを含まない培地中で培養した細胞は、第一継代(図16A)中はよく生存したが、継代培養(図16B)で増殖を停止し、増殖率の顕著な損失を示した。
【0185】
これらの結果は、γ線照射を本発明の方法において、トランスフェリンのようなバルクの粉末培養培地添加物の調製における滅菌技術として用いても良いことを示す。更に、これらのデータは、トランスフェリンのような培養培地添加物を活性の顕著な損失なく室温でγ線照射できることを示す。
【0186】
実施例15
粉末化血清の生化学的特性に対する照射の影響
血清への照射の影響をさらに測定するために、噴霧乾燥粉末FBSを-70℃または室温で25 kGyで照射し、血清中の各種の生化学構成物の濃度を商業的に分析した。対照として、非照射噴霧乾燥FBSおよび液体FBSも分析した。結果を表2に示す。
【0187】
(表2) 噴霧乾燥FBSの化学解析
構成物;乾燥FBS;-70℃にて照射、乾燥FBS; 室温にて照射、非照射乾燥FBS;液体FBS;単位;参考範囲
【0188】
これらの結果は、γ線照射工程は、FBSの殆どの生化学成分の濃度に顕著に影響しないことを示している。これらの結果はまた、噴霧乾燥時に、FBSのいくつかの成分(アルカリホスファターゼ、ASTとLD、および多分グルコース)は出発物質の液体FBS中のそれらの濃度と比べて顕著な低減を受けることも示している。
【0189】
実施例16
粉末化血清の性能に対する照射の影響
乾燥粉末血清の細胞の増殖を支持する能力に対するγ線照射の影響を検討するために、種々の条件下で照射された粉末乾燥FBSを培養培地の試料に用い、培養培地を添加物し、付着細胞および懸濁細胞を、これらの培地中で3継代まで増殖させた。モデル懸濁細胞として、SP2/0およびAE-1のハイブリドーマ系を用い、典型的な付着細胞としてVEROおよびBHK培養を用いた。細胞を試験血清または対照血清(噴霧乾燥されたが、照射されていない)を含む培地中で、上記の実施例14で概説した一般手順に従って、3継代まで培養した。各継代点で、細胞を収穫し、継代培養し、アリコートのmL当たりの生存細胞数を上記のように計測した。各点での結果を、液体FBSで添加物した培地中で得られた生存細胞数の割合として表し、図17A、17B、17Cおよび17Dに示した。
【0190】
これらの試験結果から、いくつかの結論が得られる。第一に、FBSのγ線照射は、懸濁細胞および付着細胞の増殖を支持する噴霧乾燥FBSの能力を低下しないと思われる(各図で照射データセットを非照射データセットと比較のこと)。事実、BHK細胞(図17D)は、-70℃で照射された粉末FBSを含む培地中で、非照射血清中よりも実際によりよく増殖した。第二に、-70℃で照射された血清は、おそらくVERO細胞(図17C)を除き、細胞の増殖を支持する能力において、室温で照射された血清よりも良好であると思われる。最後に、これらの試験の結果は、細胞型に非常に特異的であった: 懸濁細胞(図17Aおよび17B)は付着細胞(図17Cおよび17D)よりも、照射または非照射の噴霧乾燥FBS中でよりよく増殖した: 付着細胞の中では、噴霧乾燥FBS中でBHK細胞(図17D)はVERO細胞(図17C)よりもよりよく増殖した。
【0191】
これらの結果は、本発明の方法において、FBSのようなバルク粉末化血清の調製での、滅菌技術として使用できることを示す。更に、上記実施例14でのトランスフェリンについての報告と異なり、これらのデータは、細胞の増殖を支持する血清の能力を維持するための、血清の照射の至適温度は室温未満であるらしいことを示唆している。
【0192】
実施例17および18
脂質(特にステロールと脂肪酸)は真核細胞の高密度培養に重要な栄養物である。乾燥形培地に脂質成分を含めることが技術的に挑戦されている。脂質の添加物は通常、粉末の再溶解と濾過後に、別に添加供給され、バイオ医薬製造設備中での、操作と誤りの機会を増す。Advanced Granulation Technology(AGT(商標))は顕著な利点のある新規な乾燥形培地形式である。単一の顆粒化培地内で、緩衝剤、成長因子および微量元素を含めるために、複合製剤のすべての成分が組み入れられている。得られた埃が少ない、自動pH製剤は単に水に加えるだけで、完全な再溶解されたIX培地が得られる。乾燥培地形式で使用可能な脂質をデリバーするために、AGT工程と共に、サイクロデキストリン技術およびナトリウム塩および脂質の水-アルコール溶液を使用をしてもよい。
【0193】
試験された脂質は、液体培地への無菌添加物として、または完全なAGT製剤の一部のとしていづれかとして供給されたコレステロールおよびいくつかの脂肪酸であった。対照は脂質を含まない培地を含んだ。使用した細胞系はコレステロール栄養要求性のECACC#85110503であった。細胞は、化学的に定義され、動物由来の成分を含まないCDハイブリドーマ培地中で培養された。GC分析結果は、AGT工程にサイクロデキストリン複合脂質形を組み入れると、濾過後の優れた脂質の利用性を示した。細胞の成長と増殖率は、AGT起源の完全な培地または脂質を添加物した対照の液体培地のいづれにおいても、同程度であった。両培地形式の最高細胞密度はバッチ細胞培養で3.5 x106細胞/mlに達した。例えばAGTのリポ酸のナトリウム塩のような塩の使用は、培養中の細胞に脂質をデリバーするのに有効であることが明らかになった。
【0194】
調製に関して、サイクロデキストリンを62.5%(水100 ml中に62.5 g)の濃度で水に溶解した。これはやや低く目に変え得るが、室温の水で、サイクロデキストリンの溶出は略最大に近づく。サイクロデキストリンが、脂質の分配(脂質との物理的複合化)を維持し、水の中で希釈してそれを溶液中に保つ能力は、サイクロデキストリン濃度に依存(IX培地中で0.125%またはそれ以上のサイクロデキストリン溶液が有利である)するので、脂質に対するサイクロデキストリンの比率をできるだけ高く維持するのが好ましい。ついで、水性細胞培養培地中に希釈した時に、所望の濃度になるような濃度で、脂質を直接サイクロデキストリン溶液に加えた。脂質は攪拌によって溶解させた。サイクロデキストリンへの脂質の直接の添加に加えて、サイクロデキストリンへの添加に先立って、脂質をアルコールに加えることも可能である(これは添加する脂質の量があまりに少なくて、それ自体の添加が物理的に問題である場合に望ましい)。得られたサイクロデキストリン・脂質溶液は極めて粘性であるので、上記サイクロデキストリン・脂質溶液を、使用の便宜上、例えば水で希釈するのが好ましい。そのような希釈によって、例えば500倍または250倍の濃縮物が得られる(当業者は、サイクロデキストリン・脂質溶液が希釈されるので、所望の脂質濃度を得るために、細胞培養培地により多量の容量を加える必要があることを評価するであろう)。
【0195】
細胞培養に重要な脂質の型:コレステロール(動物および植物関連)、リノレイン酸、リポ酸、アラキドン酸、パルミチン酸、オレイン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、リノレン酸、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、スフィンゴミエリン、カルジオリピン、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンK、プロスタグランジン、その他。
【0196】
サイクロデキストリン・脂質複合体を用いた細胞培養実験
(3日または4日毎に継代培養した細胞)
1=凝集工程(の一部として)中にサイクロデキストリン・脂質複合体の噴霧によって加えられた脂質を含むCDハイブリドーマ顆粒化(凝集)培地
2= 再構成後サイクロデキストリン・脂質補給添加物として加えられた脂質を含むCDハイブリドーマ培地
3=脂質が添加されていないCDハイブリドーマ培地
結論:サイクロデキストリン・脂質噴霧を使用する顆粒化技術によって供給された脂質は1X再構成培地に添加物として加えられたサイクロデキストリン・脂質を用いて加えられた脂質に匹敵する。
【0197】
理解を明確にする目的で、説明と実施例によって、本発明をやや詳細に、完全に記載したが、当業者には、本発明の範囲またはその態様に影響を及ぼすことなく、条件、配合および他のパラメーターの広範、且つ等価な範囲内で、本発明を修飾しまたは変更することによって、同じように実施できること、およびそのような修飾または変更は添付した特許請求の範囲内に包含されることは明らかである。
【0198】
本明細書に挙げたすべての出版物、特許および特許出願は、本発明が関係する技術における当業者の技術レベルを示し、あたかも、それぞれの個々の出版物、特許および特許出願が参考文献として組み入れるべく、特別に、且つ個別に指示されたかのように、同じ程度参考文献として、本明細書に組み入れられる。
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、一般に細胞、栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、および緩衝剤製剤に関する。具体的には本発明は、インビトロでの細胞の培養を容易にする必要なすべての栄養因子を含む乾燥粉末栄養培地製剤、特に細胞培養培地製剤およびこれらの培地製剤の製造法を提供する。本発明は具体的には、無機または水のような極性溶媒に殆ど溶けない脂質や他の成分を混合する方法に関する。本発明はまた、細胞培養を支持するのに有用な脂質または他の成分のような添加物成分を有する乾燥粉末血清(例えば胎児ウシ血清)のような乾燥粉末培地添加物を製造する方法に関する。本発明はまた、再水和によって特別なイオンおよびpHの状態を作る乾燥粉末緩衝剤製剤に関する。本発明はまた、有機または非極性溶媒に溶解する添加剤と共に調製した滅菌乾燥粉末栄養培地、培地添加物(特に乾燥粉末血清)、培地のサブグループおよび緩衝剤製剤の調製法に関する。本発明はまた、乾燥粉末栄養培地、培地添加物、培地のサブグループ、緩衝剤製剤および本発明の方法で調製した細胞に関する。本発明はまた、これらの乾燥粉末栄養培地、培地添加物、培地のサブグループ、緩衝剤製剤を用いる、原核細胞および真核細胞の培養キットおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
細胞培養培地
細胞培養培地は管理された、人工のインビトロの環境中で細胞を維持し、および/または増殖させるための栄養を提供する。細胞培養培地の特徴と組成は細胞の特別な要求性と、その細胞が培養される目的である機能に依存して変化する。重要なパラメーターには浸透圧、pHおよび栄養製剤が含まれる。培養における細胞の正常な環境は栄養物および他の培養成分が溶解または懸濁している水性培地である。特に水に難溶性の脂質または他の成分の微量を混合することが有利である。
【0003】
培地製剤は動物、植物および細菌細胞を含む多数の細胞型を培養するために使用されている。培養培地中で培養される細胞は利用できる栄養を異化し、モノクロナール抗体、ホルモン、成長因子、ウイルス、抗原因子、酵素、サイトカインおよび類似物を産生する。そのような製品は産業上および/または治療上の用途があり、組み換えDNA技術の進歩によって細胞はこれらの製品を大量に生産するように処理することができる。従って、インビトロで細胞を培養する能力は細胞生理学の研究に重要であるだけでなく、それ以外の方法では経済性が得られない有用物質の製造に必要である。
【0004】
細胞培養培地は文献に十分に文書化されており、多数の培地が商業的に利用できる。初期の細胞培養の研究では、培地製剤は血液の化学組成と物理化学的性質(例えばpH、その他)に基づき、「生理的溶液」と示された(Ringer,S., J.Physiol., 3:380-393(1880)(非特許文献1);Waymouth, C., In: Cells and Tissues in Culture, Vol. 1, Acadenic Press, LOndon, pp. 99-142 (1964)(非特許文献2); Waymouth, C., In Vitro 6:109-127 (1970)(非特許文献3)).しかし、例えば植物、昆虫を含む無脊椎動物、魚および哺乳動物を含む脊椎動物のような多細胞生物の異なった組織中の細胞は、酸素/二酸化炭素分圧および栄養物、ビタミンおよび微量元素に関して異なった微小環境に暴露されており、従って、異なった細胞型のインビトロの培養の成功には異なった培地の製剤を使用することが必要になることが多い。細胞培養培地の通常の成分はアミノ酸、有機塩および無機塩、ビタミン、微量金属、砂糖、脂質および核酸を含み、その型と量は所与の細胞型または組織型の特別な要求性および細胞が適用される目的に依存して変化してもよい。特に複合培地組成物において、しばしば安定性の問題によって、毒性製品および/または要求される栄養物の低有効濃度化をもたらし、それによって培養培地の機能的な寿命を制限する。例えば、グルタミンは哺乳動物の細胞のインビトロの培養で使用される殆どすべての培地の構成成分である。グルタミンはピロリドンカルボン酸とアンモニアに自然に分解する。分解の速度はpHおよびイオンの条件で影響されるが、細胞培養培地においては、これらの分解製品の形成は避けられないことが多い(Tritshら、Exp. Cell Res. 28:360-364 (1962)(非特許文献4)。
【0005】
Wangら(In Vitro 14 (8):715-722 (1978)(非特許文献5)は細胞に致死的な過酸化水素のような光製品がダルベッコ改変イーグルス培地 (DMEM)中で産生することを示した。リボフラビンおよびトリプトファンまたはチロシンは光暴露中に過酸化水素の形成に必要な成分である。大抵の哺乳動物培養培地はリボフラビン、チロシンおよびトリプトファンを含むので、殆どの細胞培養培地中で毒性の、光製品が産生すると思われる。
【0006】
これらの問題を避けるために、研究者は基本的に「必要に応じて」培地を作り、培養培地の長期保存を避ける。通常乾燥粉末の形で商業的に利用できる培地は、それぞれの栄養物を個別に加える、澱粉から培地を作ることに対して便利な代替法として役立ち、液体培地に付随する幾つかの安定性の問題も回避する。しかし、製造業者によって供給される注文製剤を除いて、商業的に利用できる培地の数は限られている。
【0007】
液体(水性培地)は、例えばInvitrogen Corporation, Carlsbad, CaliforniaのGIBCOから入手できる脂質であるLipid Concentrate (100倍)のような脂質濃縮物で添加物されることが多い。従来の粉末化培地は、再溶解に最も一般的な溶媒である水に容易に溶解しない成分を効率的に含むことができなかった。従って、培地を形成するために粉末を再溶解後、追加の成分がアルコール(例えばメタノール、エタノール、グリコール等)、エーテル(例えばMEK)、ケトン(例えばアセトン)、DMSO等の少量の有機溶媒とともに加えられることが多い。これらの溶媒は、一般に培養されている細胞に望ましくない作用または毒性作用を誘発するので、控えめに使用しなければならない。毒性と溶解性は相互作用して、培養に添加できる所望の成分の量を制限する。
【0008】
乾燥粉末培地製剤はある培地の貯蔵寿命を増すが、特に大規模の応用において、乾燥粉末培地に関して多くの問題がある。培地の大容量の生産には特別な培地の調理場ではなくても、栄養成分を混合し、計量するために必要な乾燥粉末培地の貯蔵設備が必要である。乾燥粉末培地の腐食性のために、混合タンクは定期的に交換しなければならない。
【0009】
通常、細胞培養培地製剤は、胎児ウシ血清(FBS)(例えば、10〜20%、5〜10%、1〜5%、0.1〜1% v/v)または植物、動物胚、臓器または腺からの抽出物または加水分解物(例えば0.5%〜10%)のような不特定成分を含むある範囲の添加物で添加物されている。FBSは動物細胞培地に最も一般的に適用される添加物であるが、新生児ウシ、ウマおよびヒト等の他の血清源もまた日常的に使用される。培養培地の添加物のための抽出物を調製のに用いられる臓器または腺には、顎下腺(Cohen,S., J. Biol. CHem. 237:1555-1565(1961)(非特許文献6)、下垂体(Peehl, D.M. and Ham, R.G., In Vitro 16:516-525(1980; U.S. Patent No. 4,673,649(非特許文献7))、視床下部(Maciag, T.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 76:5674-5678(1979)(非特許文献8); Gilchrest, B.A.ら、J. Cell. Physiol. 120:377-383 (1984)(非特許文献9))、眼の網膜(Barretault, D.ら、Differentiation 18:29-42 (1981)(非特許文献10)、および脳(Maciag, T.ら、Science 211:1452-1454(1981)(非特許文献11)が含まれる。化学的に特定されていないこれらの型の添加物は、細胞培養培地中で複数の有用な機能を果たす(Lambert, K.J.ら、In Animal CEll Biotechnology, Vol. 1, Spier, R.E.ら、Eds., Academic Press New York, pp. 85-122 (1985)(非特許文献12)。例えば、これらの添加物は不安定なまたは水不溶性の栄養物に対して、担体またはキレート剤を提供し、毒性部分を結合しおよび中和し、ホルモンおよび成長因子、プロテアーゼ阻害剤および必須の、特定または定義されていないことが多い低分子栄養物を提供し、細胞を物理的ストレスと障害から保護する。従って、血清または臓器/腺抽出物は動物細胞の培養のための、改善された培養培地を提供する、比較的低コスト添加物として一般的に使用される。
【0010】
特に食品用または治療用には、コストと安全性の関心から、特に動物起源の不特定成分を排除する動きがある。改良された培養培地は、水への溶解度が低い少量の成分を用いて製造することもできる。
【0011】
培養培地の製造方法
培養培地は通常液状または粉状で製造される(例えばGIBO BRL製品2000-2001カタログ参照)。これらの形状には、それぞれ特別な利点と欠点がある。
【0012】
例えば、液状培地は直ぐに使用できる状態で提供され(栄養物または他の成分での添加物が必要でないか、所望されなければ)、製剤が特別な細胞に対して最適化されている利点がある。しかし液状培地には、細胞培養の至適の実施のために、添加物(例えばL-グルタミン、血清、抽出物、サイトカイン、脂質等)の添加を要することが多い欠点がある。更に、液状培地は、多くの成分が熱に不安定(従って、例えばオートクレーブの使用ができない)で、バルク液体はγ線または紫外線のような浸透性の滅菌法に特に適さないので、経済的に滅菌することが困難である。従って、液状培養培地は、大抵濾過で滅菌されることが多いが、これは時間がかかり、高価なプロセスになる。濾過には、例えばリポソーム、ミセル、不溶性粒子等の内、望ましい不溶性成分が培地から除去される欠点がある。更に液状培養培地の大きなバッチサイズ(例えば1000リッターまたはそれ以上)の製造と貯蔵は実際的でなく、液状培養培地の成分は比較的貯蔵期間が短い。
【0013】
これらの欠点のいくつかを克服するために、液状培養培地は濃縮された形で配合できる。これらの培地の成分は、使用前に作業濃度に希釈してもよい。この手法は標準培養培地を用いるよりもより大きな、変化するバッチサイズを作る能力を提供し、濃縮された培地製剤またはその成分は貯蔵期限がより長いことが多い(培養培地濃縮物技術に関する米国特許第5,474,931(特許文献2)参照)。これらの利点にもかかわらず、濃縮液状培地には添加物(例えばFBS、L-グルタミンまたは臓器/腺抽出物)の添加を要する欠点があり、経済的に滅菌することが難しい可能性がある。
【0014】
液状培地の代替物として、粉末培養培地が使われることが多い。粉末化培地は通常培養培地の乾燥成分を、例えばボールミルのような混合プロセスによって、または事前に作られた液状培養培地の凍結乾燥によって製造される。この手法には、より大きなバッチサイズでさえも製造できる可能性があり、粉末化培地は通常液状培地よりも貯蔵期間がより長い、および培地は配合後に照射(例えばγ線または紫外線照射)またはエチレンオキサイドの浸透によって滅菌できると言う利点がある。しかし、従来の粉末化培地には複数の顕著な欠点がある。例えば、粉末化培地のいくつかの成分は凍結乾燥によって、不溶性になるか、または凝集し、再溶解が困難か不可能になる。更に、粉末化培地は通常細かい埃粒子を含み、これはいくらかの物質の損失なしにそれを再溶解することを特に困難にし、GMP/GLP、USPまたはISO 9000の設定下で運転される多くのバイオテクノロジーの生産設備に使用することが実際的でなくなる。加えて、例えばL-グルタミンおよびFBSのような培養培地に使用される多くの添加物は、その不安定性または濃縮時の凝集傾向のために、またはボールミルのようなプロセスによるせん断に敏感であるために、凍結乾燥またはボールミルの前に培養培地に加えることができない。最後に、多くの添加物、特にFBSのような血清添加物は、凍結乾燥のようなプロセスによる粉末化添加物の製造が試みられる場合は、活性の実質的な損失を示すか、完全に不活性化される。
【0015】
従って、各種のバルク量で調製でき、特にイオン化または紫外線照射により滅菌ができる、急速に溶解する栄養的に複合した安定な乾燥粉末栄養培地、培地添加物、培地サブグループおよび緩衝剤についての現下のニーズがある。特に再溶解後に、例えば脂質添加物による添加物の必要がないか、または添加物が実質的に低減される完全な乾燥粉末栄養培地のニーズがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】国際公開第98/36051号パンフレット
【特許文献2】米国特許第5,474,931
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Ringer,S., J.Physiol., 3:380-393(1880)
【非特許文献2】Waymouth, C., In: Cells and Tissues in Culture, Vol. 1, Acadenic Press, LOndon, pp. 99-142 (1964)
【非特許文献3】Waymouth, C., In Vitro 6:109-127 (1970)
【非特許文献4】Tritshら、Exp. Cell Res. 28:360-364 (1962)
【非特許文献5】Wangら(In Vitro 14 (8):715-722 (1978)
【非特許文献6】Cohen,S., J. Biol. CHem. 237:1555-1565(1961)
【非特許文献7】Peehl, D.M. and Ham, R.G., In Vitro 16:516-525(1980; U.S. Patent No. 4,673,649
【非特許文献8】Maciag, T.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 76:5674-5678(1979)
【非特許文献9】Gilchrest, B.A.ら、J. Cell. Physiol. 120:377-383 (1984)
【非特許文献10】Barretault, D.ら、Differentiation 18:29-42 (1981)
【非特許文献11】Maciag, T.ら、Science 211:1452-1454(1981)
【非特許文献12】Lambert, K.J.ら、In Animal CEll Biotechnology, Vol. 1, Spier, R.E.ら、Eds., Academic Press New York, pp. 85-122 (1985)
【発明の概要】
【0018】
本発明は乾燥粉末栄養培地、培地添加物、培地サブグループおよび緩衝剤を溶媒または複数の溶媒で凝集することを含む栄養培地、培地添加物、培地サブグループおよび緩衝剤粉末の製造方法を提供する。本発明はまた、液体栄養培地、培地添加物、培地サブグループまたは緩衝剤を、それらの乾燥粉末対象を製造するのに十分な条件下で噴霧乾燥することを含む粉末化栄養培地、培地添加物、培地サブグループおよび緩衝剤の製造法に関する。そのような条件は、例えば粉末化培地、培地添加物、培地サブグループまたは緩衝剤が形成されるまで、熱および溶媒の分圧を管理することを含む。粉末は1つの段階でまたは複数の段階で形成されてもよい。1つ以上の溶媒が使用される場合は、溶媒は同じポートまたはノズルを通して導入しもよく、または離れたノズルを通して導入してもよい。例えば相互に溶解する溶媒または十分混合しうる相溶性の溶媒は、出入口またはノズルを共有してもよいが、最初の溶媒に相溶性がない1つまたはそれ以上の溶媒には、離れたノズルを用いてもよい。
【0019】
本発明によれば、本方法は更に栄養培地、培地添加物、培地サブグループまたは緩衝剤粉末を滅菌することを含み、それは粉末を包装する前または後に達成することができる。特に好ましい方法において、滅菌は包装した粉末のγ線照射によって、粉末の包装後に滅菌が達成される。
【0020】
本発明によって製造される特に好ましい栄養培地粉末は、細菌培養培地粉末、酵母培養培地粉末、植物培養培地粉末および動物培養培地粉末からなる群から選ばれた培養培地粉末を含む。
【0021】
本発明の方法によって製造される特に好ましい培地添加物は、例えばウシ血清(胎児ウシ、新生児ウシまたは正常ウシ血清)、ヒト血清、ウシ血清、ブタ血清、サル血清、尾なしサル血清、ラット血清、ネズミ血清、ウサギ血清、ヒツジ血清および類似血清のような粉末化動物血清、サイトカイン(例えばEGF,aFGF,bFGF,HGF,IGF-1,IGF-2,NGFおよび類似物のような成長因子を含む)、インターロイキン、コロニー刺激因子およびインターフェロン)、接着因子または細胞外マトリックス成分(例えばコラーゲン、ラミニン、プロテオグリカン、グリコサミノグリカン、フィブロネクチン、ビトロネクチンおよび類似物)、脂質(例えばりん脂質、コレステロール、ウシコレステロール濃縮物、脂肪酸、スフィンゴリピッドおよび類似物)、グリカンおよび動物組織、臓器および腺抽出物(例えば、ウシ下垂体抽出物、ウシ脳抽出物、ニワトリ胚抽出物、ウシ胚抽出物、ニワトリ肉抽出物、アキレス腱およびその抽出物)および類似物である。本方法によって製造できる他の培地添加物物には各種タンパク質(例えば、血清アルブミン、特にウシまたはヒト血清アルブミン、免疫グロブリンおよびその断片または複合体、アプロチニン、ヘモグロビン、ヘミンまたはヘマチン、天然または組み換え酵素(例えば、トリプシン、コラーゲナーゼ、パンクレアチニンまたはディスパーゼ);リポプロテイン、フェリティン等);ビタミン、アミノ酸およびその変化体(L-グルタミンおよびシスティンを含むが、これに限定されない)、酵素コファクターおよび当業者に知られているインビトロでの細胞培養に有用な他の成分が含まれる。
【0022】
本発明によって調製される栄養培地および培地添加物は、血清(好ましくは上記のもの)、L-グルタミン、インスリン、トランスフェリン、1つまたはそれ以上の脂質(好ましくは1つまたはそれ以上のホスホリピッド、スフィンゴリピッド。脂肪酸またはコレステロール)、1つまたはそれ以上のサイトカイン(好ましくは上記のもの)、1つまたはそれ以上の神経伝達物質、1つまたはそれ以上の動物組織、臓器または腺(好ましくは上記のもの)の抽出物、1つまたはそれ以上のタンパク質(好ましくは上記のもの)または1つまたはそれ以上の緩衝剤(好ましくは重炭酸塩またはリン酸塩)またはその任意の組み合わせのようなサブグループを含んでもよい。
【0023】
本発明の方法による製剤に特に適した緩衝剤粉末は緩衝食塩粉末、より具体的にはリン酸塩緩衝食塩粉末またはTris緩衝食塩粉末である。
【0024】
本発明はまた、栄養培地粉末、栄養添加物粉末(上記の添加物の粉末を含む)およびこれらの方法によって調製した緩衝剤粉末を提供する。
【0025】
本発明はまた、原核細胞(例えば細菌細胞)および真核細胞(例えば真菌(特に酵母)、動物細胞(特にヒトを含む哺乳動物)および植物細胞)を含む乾燥細胞の調整法にも関し、その調整法は乾燥する細胞を得ること、その細胞を1つまたはそれ以上の安定剤(例えば、トレハローズのような多糖類)と接触させること、細胞を含む水性懸濁液を作ること、および乾燥粉末の製造に好ましい条件下で細胞懸濁液を噴霧乾燥することを含む。オプションで、脂質成分を乾燥細胞粉末を安定化するために加えてもよい。本発明はまた、これらの方法で製造された乾燥細胞粉末にも関する。
【0026】
本発明は、更に滅菌粉末培養培地、培地添加物、培地サブグループおよび緩衝剤の調製方法に関する。そのような1つの方法は、粉末中で生育する細菌、真菌、胞子およびウイルスの複製を不可能にするために、上記の粉末培養培地、培地添加物、培地サブグループおよび緩衝剤を照射に暴露することを含む。そのような好ましい方法では、粉末化培地、培地添加物、培地サブグループおよび緩衝剤は総線量約10〜100 kGy、好ましくは総線量約15〜75 kGy、15〜50 kGy、15〜40 kGyまたは20〜40 kGy、より好ましくは総線量約20〜30 kGy、最も好ましくは総線量約25 kGyで、約1時間から約7日間、好ましくは約1時間から約5日間、より好ましくは約1時間から約3日間、約1時間から約24時間または約1時間から約5時間、最も好ましくは約1時間から約3時間照射される。より強力な線源に対する適切な遮蔽を用いて、短時間により高い照射を行ってもよい。本発明はまた、これらの方法で製造された滅菌粉末培養培地、培地添加物、培地サブグループおよび緩衝剤に関する。
【0027】
本発明は更に、本発明の栄養培地、培地添加物、培地サブグループまたは緩衝剤を、好ましくは血清または水を含む溶媒で再溶解すること、およびその細胞を細胞の培養に好ましい条件下で、再溶解した栄養培地、培地添加物、培地サブグループまたは緩衝剤と接触させることを含む細胞の培養法を提供する。任意の細胞、特に細菌細胞、酵母細胞。植物細胞または動物細胞が本発明の方法で培養できる。本法による培養に好ましい動物細胞には、昆虫細胞(最も好ましくはDrosophila細胞、Spodoptera細胞およびTRichoplusa細胞)、線虫細胞(最も好ましくはC.elegans細胞)および哺乳動物細胞(最も好ましくはCHO細胞、COS細胞、VERO細胞、BHK細胞、AE-1細胞、SP2/0細胞、L5.1細胞、PerC6、ハイブリドーマ細胞または他のヒトの細胞)が含まれる。本発明のこの態様によって培養される細胞は、正常細胞、疾患細胞、形質転換細胞、変異細胞、体細胞、発芽細胞、幹細胞、前駆細胞または胚細胞であり、これらはいずれも確立された細胞系または天然源から得られたものであってよい。細胞は実験の目的にまたは有用な成分の生産の目的に使用してもよい。
【0028】
本発明は更に細胞の培養に用いられるキットにも向けられる。本発明によるキットは本発明の1つまたはそれ以上の栄養培地粉末、培地添加物粉末、培地サブグループ粉末または緩衝剤粉末、単一溶媒(または複数溶媒)およびその任意の組み合わせを含んでもよい。キットは本発明の乾燥細胞粉末を含む、1つまたはそれ以上の細胞または細胞型を含んでもよい。
【0029】
当業者には、本発明の他の好ましい実施形態は、次の図面および発明および特許請求の範囲の記載に照らして明白である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の方法(図1A)および従来の液体FBS(図1B)によって、粉末の形に調製した胎児ウシ血清(FBS)の試料の、SDS-PAGEのデンシトメトリースキャンのヒストグラムである。
【図2】本発明の凝集法によって粉末の形に調製した、FBSの2%(w/v)で添加物したダルベッコ改変イーグルス培地(DMEM)中の、SP2/0細胞の増殖(図2A)と継代成功(図2B)の線グラフの複合である。
【図3A】本発明の方法(図3A)による噴霧乾燥によって調製した、粉末胎児ウシ血清(FBS)のスペクトロフォトメータースキャンのヒストグラムの複合である。
【図3B】標準的な液体FBS(図3B)の方法による噴霧乾燥によって調製した、粉末胎児ウシ血清(FBS)のスペクトロフォトメータースキャンのヒストグラムの複合である。
【図4】重炭酸塩の添加または無添加で本発明の方法またはボールミルによって調製した、各種乾燥粉末化培地の2つの異なった日付でのpH滴定を示す線グラフの複合である。
【図5】Opti-MEM I(商標)(図5A)またはDMEM(図5B)の溶出速度(水中)への凝集の影響を示す棒グラフの複合である。培地は水またはFBSを用いて指示したように凝集した。
【図6】いずれも2%のFBSを含む凝集したOpti-MEM I(商標)(図6A)またはDMEM(図6B)中の、SP2/0細胞の7日間に亘る増殖を示す線グラフの複合である。
【図7】10%FBSを含む凝集したDMEM中のSP2/0細胞(図7A)、AE-1細胞(図7B)およびL5.1細胞(図7C)の7日間に亘る増殖を示す線グラフの複合である。
【図8】2%のFBSで添加物した水またはFBSのいづれかで凝集した、Opti-MEM I(商標)(図8A)またはDMEM(図8B)中のSP2/0細胞の継代成功を示す線グラフの複合である。
【図9】FBSと重炭酸塩で凝集し、10%FBSを含むDMEM中のSP2/0細胞(図9A)、AE-1細胞(図9B)およびL5.1細胞(図9C)の継代成功を示す線グラフの複合である。
【図10】標準的な水で再溶解した粉末培養培地(対照培地)中、または本発明の方法によって大規模の量で調製した凝集粉末培養培地中における4継代に亘るSP2/0細胞の増殖を示す線グラフである。対照培地(□)、本発明の水で凝集した粉末培養培地(◆)および本発明の(重炭酸ナトリウムを含む)水で凝集した自動pH粉末培養培地(■)の結果を示す。
【図11A】2%(▲)または10%(◆)液体胎児ウシ血清(FBS)または本発明の噴霧乾燥法によって調製した2%(×)または10%(■)の粉末化FBSを含む培地中で6日または7日に亘って培養したたAE-1細胞の線グラフである。2回繰り返した実験を図11Aと11Bに示す。
【図11B】2%(▲)または10%(◆)液体胎児ウシ血清(FBS)または本発明の噴霧乾燥法によって調製した2%(×)または10%(■)の粉末化FBSを含む培地中で6日または7日に亘って培養したたAE-1細胞の線グラフである。2回繰り返した実験を図11Aと11Bに示す。
【図12A】2%(▲)または10%(◆)液体FBSまたは本発明の噴霧乾燥法によって調製した2%(×)または10%(■)の粉末FBSを含む培地中で7日に亘って培養したたSP2/0細胞の線グラフである。2回の繰り返し実験を図12Aと12Bに示す。
【図12B】2%(▲)または10%(◆)液体FBSまたは本発明の噴霧乾燥法によって調製した2%(×)または10%(■)の粉末FBSを含む培地中で7日に亘って培養したたSP2/0細胞の線グラフである。2回の繰り返し実験を図12Aと12Bに示す。
【図13】5%の液体FBS(◆)または本発明の噴霧乾燥法によって調製した5%の粉末化FBS(■)を含む培地中における4回の継代に亘るAE-1細胞の増殖の線グラフである。
【図14】5日間にわたるSP2/0細胞の増殖に対するγ線照射および凝集の影響を示す線グラフである。
【図15】凝集した培養培地中におけるVERO細胞の増殖に対するγ線照射の影響を示す棒グラフである。
【図16A】4回の継代に亘る293細胞の増殖を支持するトランスフェリンの能力に対するγ線照射の影響を示す一連の線グラフである。それぞれのグラフで、細胞は標準血清を含まない293培地(◆)、トランスフェリンを含まない培地(■)、-70℃(▲)または室温(*)でγ線照射した粉末化トランスフェリンを含む培地、γ線照射されずに、-70℃(×)または室温(●)で保存されたトランスフェリンを含む培地中で培養したた。各データ点の結果は2回繰り返したフラスコの平均である。図16A: 1継代細胞
【図16B】4回の継代に亘る293細胞の増殖を支持するトランスフェリンの能力に対するγ線照射の影響を示す一連の線グラフである。それぞれのグラフで、細胞は標準血清を含まない293培地(◆)、トランスフェリンを含まない培地(■)、-70℃(▲)または室温(*)でγ線照射した粉末化トランスフェリンを含む培地、γ線照射されずに、-70℃(×)または室温(●)で保存されたトランスフェリンを含む培地中で培養したた。各データ点の結果は2回繰り返したフラスコの平均である。図16B: 2継代細胞
【図16C】4回の継代に亘る293細胞の増殖を支持するトランスフェリンの能力に対するγ線照射の影響を示す一連の線グラフである。それぞれのグラフで、細胞は標準血清を含まない293培地(◆)、トランスフェリンを含まない培地(■)、-70℃(▲)または室温(*)でγ線照射した粉末化トランスフェリンを含む培地、γ線照射されずに、-70℃(×)または室温(●)で保存されたトランスフェリンを含む培地中で培養したた。各データ点の結果は2回繰り返したフラスコの平均である。図16C: 3継代細胞
【図16D】4回の継代に亘る293細胞の増殖を支持するトランスフェリンの能力に対するγ線照射の影響を示す一連の線グラフである。それぞれのグラフで、細胞は標準血清を含まない293培地(◆)、トランスフェリンを含まない培地(■)、-70℃(▲)または室温(*)でγ線照射した粉末化トランスフェリンを含む培地、γ線照射されずに、-70℃(×)または室温(●)で保存されたトランスフェリンを含む培地中で培養したた。各データ点の結果は2回繰り返したフラスコの平均である。図16D: 4継代細胞
【図17A】1回目(Px1)、2回目(Px2)および3回目(Px3)の継代における接着非依存性細胞(図17Aおよび17B)の増殖を支持するFBSの能力に対する異なる照射条件下での照射の影響を示す一連の棒グラフである。図17A:SP/0細胞
【図17B】1回目(Px1)、2回目(Px2)および3回目(Px3)の継代における接着非依存性細胞(図17Aおよび17B)の増殖を支持するFBSの能力に対する異なる照射条件下での照射の影響を示す一連の棒グラフである。図17B:AE-1細胞
【図17C】1回目(Px1)、2回目(Px2)および3回目(Px3)の継代における接着依存性細胞(図17Cおよび17D)の増殖を支持するFBSの能力に対する異なる照射条件下での照射の影響を示す一連の棒グラフである。図17C:VERO細胞
【図17D】1回目(Px1)、2回目(Px2)および3回目(Px3)の継代における接着依存性細胞(図17Cおよび17D)の増殖を支持するFBSの能力に対する異なる照射条件下での照射の影響を示す一連の棒グラフである。図17D:BHK細胞
【発明を実施するための形態】
【0031】
発明の詳細な説明
定義
以下の記述では、細胞培養液の分野において従来用いられている多くの用語を広く利用する。明細書および特許請求の範囲、ならびにそのような用語に与えられる範囲の明白でありかつ一貫した理解を提供するため、以下の定義を提供する。
【0032】
本明細書で用いる「粉末」という用語は顆粒形態で存在する組成物を指し、水または血清等の溶媒と複合化または凝集化している場合といない場合がある。「乾燥粉末」という用語は「粉末」という用語と互換的に用いられ得るが、本明細書で用いる「乾燥粉末」は単に顆粒状物質の全体の見かけを指し、特記しない限り、その物質が複合化または凝集化した溶媒を完全に含まないことを意味するように意図するものではない。
【0033】
「成分」という用語は、化学物質由来か生物由来かにかかわらず、細胞の増殖を維持または促進するために細胞培養液において用いられ得る任意の化合物を指す。「成分」および「栄養分」という語は相互的に用いることができ、どちらもそのような化合物を指すことを意図している。細胞培養液に用いられる典型的な成分には、アミノ酸、塩類、金属、糖、脂質、核酸、ホルモン、ビタミン、脂肪酸、タンパク質等が含まれる。エクスビボで細胞の培養を促進または維持する他の成分は、特定の必要性に従って当業者によって選択され得る。
【0034】
「サイトカイン」という用語は、増殖、分化、老化、アポトーシス、細胞障害性、合成もしくは輸送、免疫応答、または抗体分泌等の、細胞において生理反応を誘導する化合物を指す。「サイトカイン」のこの定義には、増殖因子、インターロイキン、コロニー刺激因子、インターフェロン、トロンボキサン、プロスタグランジン、ホルモン、およびリンホカインが含まれる。
【0035】
「細胞培養」または「培養」とは、例えばインビトロ環境といった人工的環境における細胞の維持を意味する。しかし、「細胞培養」という用語は総称であり、個々の原核(例えば細菌)細胞または真核(例えば、動物、植物、および真菌)細胞ばかりでなく、組織、器官、器官系、または全生物体の培養を包含するために用いられる場合もあり、これらに対して「組織培養」、「器官培養」、「器官系培養」、または「器官型培養」という用語が「細胞培養」という用語と互換的に用いられる場合もあることを理解されたい。
【0036】
「培養」とは、細胞の活動または静止状態での、増殖、分化、生物産生、または生存継続に好ましい条件下での人工的環境における細胞の維持を意味する。したがって、「培養」は「細胞培養」または上記した任意のその同義語と互換的に用いられる場合がある。
【0037】
「培養容器」とは、細胞を培養するための無菌的環境を提供し得る、ガラス、プラスチック、または金属の容器を意味する。
【0038】
「細胞培養液」、「培地」、および「培地製剤」という語句は、細胞の培養および/または増殖を支持する栄養溶液を指す;これらの語句は、互換的に用いられ得る。
【0039】
「抽出物」とは、典型的に機械的(例えば、圧力処理による)または化学的(例えば、蒸留、可溶化、沈殿、酵素作用、または高塩処理よる)に物質を処理することによって形成される、物質のサブグループの精製された、部分的に精製された、または濃縮された調製品を含む組成物を意味する。
【0040】
「酵素消化物」とは、特殊化した種類の抽出物、すなわち、物質の成分をより単純な形に(例えば、単糖類もしくは二糖類、および/またはモノペプチド、ジペプチド、もしくはトリペプチドを含む調製品に)分解し得る少なくとも1つの酵素を用いて、抽出すべき物質(例えば植物成分または酵母細胞)を処理することによって調製される抽出物を含む組成物を意味する。このような状況において、および本発明の目的で、「加水分解産物」という用語は「酵素消化物」という用語と互換的に用いられる場合がある。
【0041】
「脂質」は、生化学において一般に理解されるような意味を有する。「脂質」はまた、非極性溶媒または非水溶媒に可溶性である細胞の一部または培地の成分を意味する。脂質は、他の培地成分の存在下または非存在下において、水に低密度に可溶性または不溶性である可能性がある。脂質は、水および1つまたは複数の有機溶媒を含む溶媒混合液中で可溶性である可能性がある。脂質は、脂肪酸、ホルモン、代謝産物、サイトカイン、ビタミン、指示薬、促進剤、または阻害剤を含んでよい。いくつかの状況における「脂質」は、通常は水に不溶性または低密度に可溶性であるが、例えばけん化、水酸化等により水溶性である化合物またはイオンを形成するように変換された成分を指す場合がある。したがって、例えば、脂肪酸は脂質であるが、脂肪酸塩もこの定義に含まれることになる。さらに、「脂質」は、有機溶媒または非極性溶媒を用いて有利に導入される、または通常は水または水媒体中で可溶性ではない任意の成分を一般的に意味するために、総称的に用いられる。脂質は、溶解した分子として、またはミセルもしくは他の分子の緩い会合等の他の形態で、存在してよい。脂質は遊離の分子として用いられてもよいし、または1つまたは複数の他の分子に結合されてもよい。例えば、安定性のためおよび/または凝集化粉末への送達を助けるために、タンパク質またはペプチドを1つまたは複数の他の脂質と結合させてよい。脂質はまた、細胞または細胞成分の1つまたは複数の機能を阻害または活性化するための薬剤として作用する成分を指す場合がある。
【0042】
「接触させる」という用語は、培養する細胞を、細胞を培養すべき培地と共に培養容器中に設置することを指す。「接触させる」という用語は、とりわけ、細胞を培地と混合すること、細胞を培地で灌流すること、培養容器内の細胞に培地をピペットで移すこと、および細胞を培地中に浸すことを包含する。
【0043】
「混合する」という用語は、細胞培養液製剤中の成分の混合を指す。混合は、液体もしくは粉末形態で、または1つもしくは複数の粉末および1つもしくは複数の液体と共に起こり得る。
【0044】
細胞培養液は、多くの成分、および培地によって変わるこれらの成分からなる。「1X製剤」は、細胞培養液中に作用濃度で見出されるいくつかまたはすべての成分を含む任意の水溶液を指すことが意図される。例えば「1X製剤」は、細胞培養液またはその培地用成分の任意のサブグループを指し得る。1X溶液中の成分の濃度は、インビトロで細胞を維持または培養するために用いられる細胞培養製剤に見出される成分の濃度とほぼ同じである。細胞のインビトロ培養に用いられる細胞培養液は、定義により1X製剤である。多くの成分が存在する場合、1X製剤中の各成分は細胞培養液中のそれらの成分の濃度とほぼ同じ濃度を有する。例えば、RPMI-1640培地は、他にも成分を含むが、とりわけ0.2 g/L L-アルギニン、0.05 g/L L-アスパラギン、および0.02 g/L L-アスパラギン酸を含む。これらのアミノ酸の「1X製剤」は、溶液中にほぼ同じ濃度のこれらの成分を含む。したがって、「1X製剤」を引用する場合、溶液中の各成分が、記載の細胞培養液中に見出される濃度と同じ濃度またはほぼ同じ濃度をを有することが意図される。1X製剤の細胞培養液中の成分の濃度は、当業者には周知である。その全体が参照として本明細書に組み入れられる、Methods For Preparation of Media, Supplements and Substrate For Serum-Free Animal Cell Culture Allen R. Liss, N.Y. (1984)を参照されたい。しかし、重量モル浸透圧濃度および/またはpHは、特に1X製剤中に成分がそれほど含まれていない場合、培地と比較して1X製剤では異なる場合がある。任意の成分の1X製剤は、様々な培地製剤にわたって必ずしも一定であるとは限らない。したがって1Xは、別の培地を参照する場合、単一成分の異なる濃度を示す場合がある。しかし、一般に用いられる場合、1Xは参照される培地の種類に一般に見出される濃度を示すことになる。1X量とは、該当する容量の培地に対して1X濃度を生じる成分の量である。
【0045】
「10X製剤」は、その溶液中の各成分が細胞培養液中の同じ成分と比較して約10倍濃縮された溶液を指すことが意図される。例えば、10X製剤のRPMI-1640培地は、他にも成分を含むが、とりわけ2.0 g/L L-アルギニン、0.5 g/L L-アスパラギン、および0.2 g/L L-アスパラギン酸を含んでよい(上記の1X製剤と比較されたい)。「10X製剤」は、1X培地に見出される濃度の約10倍の濃度で多くのさらなる成分を含んでよい。容易に明白であるように、「20X製剤」、「25X製剤」、「50X製剤」、および「100X製剤」は、1X細胞培養液と比較してそれぞれ約20倍、25倍、50倍、または100倍濃度で成分を含む溶液を表す。この場合もやはり、培地製剤および濃縮溶液の重量モル浸透圧濃度およびpHは、異なる可能性がある。培地濃縮技術を対象にした、米国特許第5,474,931号を参照されたい。
【0046】
「生物活性および生化学的活性の有意な損失なしに」とは、同じ製剤の新たに作製した栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液と比較した場合の、栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液の生物活性または生化学的活性の約30%未満、好ましくは約25%未満、より好ましくは約20%未満、さらにより好ましくは約15%未満、および最も好ましくは約10%未満の減少を意味する。
【0047】
「溶媒」とは、培地の別の成分を溶解するまたは溶解した液体のことである。溶媒は、培地の調製、培地粉末の調製、サブグループもしくは添加物もしくは特に本発明の粉末といった他の製剤の調製、および細胞を培養するための調製における粉末の再構成または濃縮物の希釈に用いられ得る。溶媒は、例えば水性溶媒といった極性であっても、例えば有機溶媒といった非極性であってもよい。溶媒は、複合物である、すなわち成分を可溶化するために2つ以上の成分を必要とする場合がある。複合溶媒は、アルコールおよび水等の2つの液体の単純な混合物であっても、または液体中の塩または他の固体の混合物であってもよい。可溶性混合物を形成するいくつかの場合においては、2つ、3つ、4つ、5つ、もしくは6つ、またはそれ以上の成分が必要である場合がある。エタノールまたはメタノールと水の混合液等の単純な溶媒は、その調製および取り扱いが容易なことから好ましい。環境、毒性、および/または火気への懸念から、有機溶媒の量が混合物中で、関連する成分を十分に溶解するための最小限の量である水性混合物を用いることが好ましい。
【0048】
「長期間」とは、栄養培地、添加物、サブグループ、または緩衝液がボールミル等の従来法により調製される場合に保存される期間よりも長い期間を意味する。したがって本明細書で用いる「長期間」とは、所与の保存条件下での約1〜36ヶ月間、約2〜30ヶ月間、約3〜24ヶ月間、約6〜24ヶ月間、約9〜18ヶ月間、または約4〜12ヶ月間を意味し、その保存条件には、約-70℃〜約25℃、約-20℃〜約25℃、約0℃〜約25℃、約4℃〜約25℃、約10℃〜約25℃、または約20℃〜約25℃での保存が含まれ得る。栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液の生物活性または生化学的活性を測定するアッセイ法は、当技術分野において周知であり、当業者によく知られている。
【0049】
概説
本発明は、一般に、栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液を産生する方法、およびそれにより産生される培地を対象にしている。本方法により産生される栄養培地、培地添加物、および培地サブグループは、細胞の増殖を支持するために用いられ得る任意の培地、培地添加物、または培地サブグループ(無血清または血清含有)であり、細胞は、細菌細胞、真菌細胞(特に酵母細胞)、植物細胞、または動物細胞(特に、昆虫細胞、線虫細胞、または哺乳動物細胞、最も好ましくはヒト細胞)であってよく、それらはどれも体細胞、生殖細胞、正常細胞、異常細胞、形質転換細胞、突然変異細胞、幹細胞、前駆細胞、または胚細胞であってよい。好ましいそのような栄養培地には、細胞培養液、最も好ましくは細菌細胞培地、植物細胞培地、または動物細胞培地が含まれるが、これらに限定されない。好ましい培地添加物には、細菌、動物、または植物細胞、腺、組織、または器官の抽出物(特に、ウシ下垂体抽出物、ウシ脳抽出物、およびニワトリ胚抽出物)等の未知組成添加物、ならびに生体液(特に動物血清、および最も好ましくはウシ血清(特に、ウシ胎仔血清、新生仔ウシ血清、または通常仔ウシ血清)、ウマ血清、ブタ血清、ラット血清、マウス血清、ウサギ血清、サル血清、またはヒト血清であり、それらはどれも胎児血清であってよい)およびそれらの抽出物(より好ましくは血清アルブミンであり、最も好ましくはウシ血清アルブミンまたはヒト血清アルブミンである)が含まれるが、これらに限定されない。培地添加物にはまた、上記の未知組成培地添加物の代わりとして用いられ得る、LipoMAX(登録商標)、OptiMAb(登録商標)、Knock-Out(商標)SR(それぞれInvitrogen Corporation、カリフォルニア州カールズバッドから入手可能)等の既知組成代替物が含まれ得る。そのような添加物はまた、ホルモン、サイトカイン、神経伝達物質、脂質、付着因子、タンパク質糖を含むがこれらに限定されない既知組成成分を含んでもよい。
【0050】
栄養培地はまた、本発明の方法によって調製され得る、および本発明の方法に従って用いられ得る様々なサブグループに分割することができる(米国特許第5,474,931号を参照のこと)。そのようなサブグループは、本発明の栄養培地を産生するために混合され得る。
【0051】
本発明の方法により、任意の栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液を作製し、生物活性および生化学的活性の有意な損失なく長期間保存することが可能である。本発明の方法により、脂質および/または水中での可溶性が低い成分の取り込みにおいて、顕著な改良が達成される。脂質成分はサブグループ、添加物等に取り込まれ得るが、好ましくは再構成する他の成分と同様に脂質成分も単一の混合物/組成物中に含まれる。培地を再構成するために複数の組成物が用いられる場合、好ましくは例えば2つ、3つ、4つ、または5つといった少数の異なる粉末が必要とされる。
【0052】
培地、培地添加物、培地サブグループ、および緩衝液の処方
いかなる栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液も、本発明の方法により調製され得る。本発明に従って調製され得る特に好ましい栄養培地、培地添加物、および培地サブグループには、動物細胞、植物細胞、細菌細胞、または酵母細胞の増殖を支持する細胞培養液、培地添加物、および培地サブグループが含まれる。本発明に従って調製され得る特に好ましい緩衝液には、動物細胞、植物細胞、細菌細胞、または酵母細胞に対して等張である平衡塩類溶液が含まれる。
【0053】
本発明に従って調製され得る動物細胞培地の例には、DMEM、RPMI-1640、MCDB 131、MCDB 153、MDEM、IMDM、MEM、M199、マッコイ5A、ウィリアムズE培地、リーボビッツL-15培地、グレース昆虫培地、IPL-41昆虫培地、TC-100昆虫培地、シュナイダー・ショウジョウバエ培地、ウルフおよびクインビー両生類培地、ケラチノサイト、内皮細胞、肝細胞、メラニン形成細胞等の培養を支持するように設計された培地等の細胞特異的無血清培地(SFM)、F10栄養混合物、およびF12栄養混合物が含まれるが、これらに限定されない。本発明による調製に適した他の培地、培地添加物、および培地サブグループは市販されている(例えば、Invitrogen Corporation、カリフォルニア州カールズバッド、およびSigma、ミズーリ州セントルイスによる)。多くの他の一般的に用いられる動物細胞培地、培地添加物、および培地サブグループと同様に、これらの培地、培地添加物、および培地サブグループの製剤も当技術分野において周知であり、例えば、GIBCOカタログおよび参考手引書(Invitrogen Corporation、カリフォルニア州カールズバッド)に、ならびにSigma動物細胞カタログ(Sigma、ミズーリ州セントルイス)に見出され得る。
【0054】
本発明に従って調製され得る植物細胞培地の例には、アンダーソン植物培地、CLC基礎培地、ガンボーグ培地、ギラード海洋植物培地、プロバゾーリ海洋培地、KaoおよびMichayluk培地、ムラシゲおよびスクーグ培地、マッカウン木本培地、クヌドソン・ラン培地、リンデマン・ラン培地、およびVacinおよびWent培地が含まれるが、これらに限定されない。多くの他の一般的に用いられる植物細胞培地と同様に、市販されているこれらの培地の製剤は当技術分野において周知であり、例えば、Sigma植物細胞培養カタログ(Sigma、ミズーリ州セントルイス)に見出され得る。
【0055】
本発明に従って調製され得る細菌細胞培地の例には、トリプチケース・ソイ培地、脳・心臓滲出物培地、酵母エキス培地、ペプトン-酵母エキス培地、牛肉浸出液培地、チオグリコレート培地、インドール-硝酸塩培地、MR-VP培地、シモンズ・クエン酸培地、CTA培地、胆汁エスクリン培地、ボルデ-ジャング培地、チャコール酵母エキス(CYE)培地、マンニトール-塩培地、マッコンキー培地、エオシン-メチレンブルー(EMB)培地、サイヤー-マーチン培地、サルモネラ-赤痢菌培地、およびウレアーゼ培地が含まれるが、これらに限定されない。多くの他の一般的に用いられる細菌細胞培地と同様に、市販されているこれらの培地の製剤は当技術分野において周知であり、例えば、DIFCOマニュアル(DIFCO、マサチューセッツ州ノーウッド)および臨床微生物学のマニュアル(アメリカ微生物学会、ワシントンDC)に見出され得る。
【0056】
本発明に従って調製され得る真菌細胞培地、特に酵母細胞培地の例には、Sabouraud培地および酵母形態培地(YMA)が含まれるが、これらに限定されない。多くの他の一般的に用いられる酵母細胞培地と同様に、市販されているこれらの培地の製剤は当技術分野において周知であり、例えば、DIFCOマニュアル(DIFCO、マサチューセッツ州ノーウッド)および臨床微生物学のマニュアル(アメリカ微生物学会、ワシントンDC)に見出され得る。
【0057】
当業者が理解するように、本発明に従って調製され得る任意の上記培地または他の培地はまた、指示剤または選択剤(例えば、色素、抗生物質、アミノ酸、酵素、基質等)、フィルター(例えば、チャコール)、塩類、多糖類、イオン、界面活性剤、安定剤等の1つまたは複数のさらなる成分を含んでもよい。本発明は、現在製剤される培地への適用に限定されず、細胞を培養するための任意の製剤に広く適用可能である。
【0058】
本発明の特に好ましい態様において、上記の培地は、培地に最適な緩衝能力を十分に提供する濃度の1つまたは複数の緩衝塩、好ましくは炭酸水素ナトリウムを含んでよい。本発明の1つの局面に従って、炭酸水素ナトリウム等の緩衝塩は、培地の凝集化の前に、その間に、またはその後に粉末形態で粉末培地に添加され得る。本発明のこの局面の1つの例において、炭酸水素ナトリウムは、凝集化した培地の再構成時に培地が様々な細胞種の培養に対して最適なまたは実質的に最適なpHになるように、適切な溶媒(水、血清、または酸(例えば、0.1 M〜5 M、好ましくは1M濃度のHCl)もしくは塩基(例えば、0.1 M〜5 M、好ましくは1M濃度のNaOH)等のpH調整剤等)と共に、凝集化の前に、その間に、またはその後に培地に添加され得る。例えば、本方法によって調製される細菌細胞培地は、再構成時に、好ましくは約4〜10、より好ましくは約5〜9または約6〜8.5のpHを有し、本方法によって調製される真菌(例えば酵母)細胞培地は、再構成時に、好ましくは約3〜8、より好ましくは約4〜8または約4〜7.5のpHを有し、本方法によって調製される動物細胞培地は、再構成時に、好ましくは約6〜8または約7〜8、より好ましくは約7〜7.5または約7.2〜7.4のpHを有し、本方法によって調製される植物細胞培地は、再構成時に、好ましくは約4〜8、好ましくは約4.5〜7、5〜6、または5.5〜6のpHを有する。当然のことながら、特定の細胞種に用いられるべき所与の培地の最適pHはまた、周知技術の方法を用いて当業者により実験的に決定され得る。例えば、胃細胞は、例えば1〜3といった他の細胞よりもはるかに低いpHで培養され得る。当業者は、厳しい環境に適応した他の細胞は、一般に培養される細胞の培養条件を満たす通常の範囲外にある特別な許容度または要求を有する可能性があることを理解する。
【0059】
他の例においては、1つまたは複数の緩衝塩、例えば炭酸水素ナトリウムは、流動床装置を用いて培地中に緩衝液を凝集化させることにより、または乾燥または凝集化粉末培地上に緩衝液を噴霧乾燥することにより(以下に記載するような噴霧乾燥装置を用いて)、粉末栄養培地に直接添加され得る。関連する局面において、酸(例えばHCl)または塩基(例えばNaOH)等のpH調整剤は、流動床装置において粉末栄養培地中にpH調製剤を凝集化させることにより、粉末または凝集化栄養培地上にpH調整剤を噴霧乾燥することにより、またはそれらの組み合わせにより、1つまたは複数の緩衝塩(炭酸水素ナトリウム等)を含み得る粉末栄養培地に添加され得る。この方法により、その後の粉末培地の再構成後のpH調整剤の添加が省略される。したがって、本発明は、溶媒(例えば、水または血清)での再構成時に、液体培地のpHを調整する必要なしに細胞の培養または増殖を支持するのに最適なpHを有する、インビトロでの細胞の培養または増殖に有用な粉末栄養培地を提供する。したがって、本明細書で「自動pH調整培地」と定義するこの種類の培地は、再構成後に培地に緩衝液を添加する、および緩衝液の溶解後に培地のpHを調整するという時間を要し誤りがちな段階を省いてくれる。例えば、これらの方法に従って調製される哺乳動物細胞培地は、再構成時に、約7.1〜約7.5、より好ましくは約7.1〜約7.4、および最も好ましくは約7.2〜約7.4または約7.2〜約7.3のpHを有する。そのような自動pH調整培地の一例の調製を、以下の実施例3および6においてより詳細に示す。
【0060】
本方法により粉末として調製され得る培地添加物の例には、限定されることなく、動物血清(ウシ血清(例えば、ウシ胎仔血清、新生仔ウシ血清、または仔ウシ血清)、ヒト血清、ウマ血清、ブタ血清、サル血清、ラット血清、マウス血清、ウサギ血清、ヒツジ血清等)、LipoMAX(登録商標)、OptiMab(登録商標)、Knock-Out(商標)SR(それぞれInvitrogen Corporation、カリフォルニア州カールズバッドから入手可能)等の既知組成代替品、ホルモン(副腎皮質ステロイド等のステロイドホルモン、エストロゲン、アンドロゲン(例えばテストステロン)、およびインスリン等のペプチドホルモンを含む)、サイトカイン(増殖因子(例えば、EGF、aFGF、bFGF、HGF、IGF-1、IGF-2、NGF等)、インターロイキン、コロニー刺激因子、インターフェロン等を含む)、神経伝達物質、脂質(リン脂質、スフィンゴ脂質、脂肪酸、コレステロール等を含む)、付着因子(フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、コラーゲン、プロテオグリカン、グリコサミノグリカン等の細胞外マトリックスを含む)、および動物組織、器官、または腺の抽出物(ウシ下垂体抽出物、ウシ脳抽出物、ニワトリ胚抽出物、ウシ胚抽出物、ニワトリ組織または肉抽出物、アキレス腱およびその抽出物等)等が含まれる。本方法により作製され得る他の培地添加物には、様々なタンパク質(血清アルブミン、特にウシもしくはヒト血清アルブミン;免疫グロブリンおよびその断片もしくは複合体;アプロチニン;ヘモグロビン;ヘミンもしくはヘマチン;酵素(トリプシン、コラゲナーゼ、パンクレアチニン、またはディスパーゼ等)、リポタンパク質;フェチュイン;フェリチン等)、これらは天然または組換え型であってよい;ビタミン;アミノ酸およびその変種(L-グルタミンおよびシスチンを含むが、これらに限定されない);酵素補因子;多糖類;塩類またはイオン(モリブデン、バナジウム、コバルト、マンガン、セレンの塩またはイオン等の微量元素を含む);および当業者によく知られていると考えられる、インビトロで細胞を培養するのに有用な他の添加物および組成物が含まれる。これらの血清および他の培養添加物は市販されている(例えば、Invitrogen Corporation、カリフォルニア州カールズバッド、およびSigma Cell Culture、ミズーリ州セントルイスによる);または、上記の血清および他の培養添加物は、その天然源から単離されるか、または当業者に日常的であると考えられる周知技術の方法により、組換え技術で産生され得る(Freshney, R.I.、Culture of Animal Cells、New York:Alan R. Liss, Inc.、74〜78ページ (1983)、およびその中で引用されている参考文献を参照のこと;また、Harlow, E.およびLane, D.、Antibodies: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor, New York:Cold Spring Harbor Laboratory、116〜120ページ (1988)も参照のこと)。
【0061】
本発明に従って調製され得る緩衝液の例には、リン酸緩衝食塩水(PBS)製剤、トリス緩衝食塩水(TBS)製剤、HEPES緩衝食塩水(HBS)製剤、ハンクス平衡塩類溶液(HBSS)、ダルベッコPBS(DPBS)、アール平衡塩類溶液、パック塩類溶液、ムラシゲおよびスクーグ植物基礎塩類溶液、ケラー海洋植物基礎塩類溶液、プロバゾーリ海洋植物基礎塩類溶液、およびKaoおよびMichayluk基礎塩類溶液が含まれるが、これらに限定されない。多くの他の一般的に用いられる緩衝液と同様に、市販されているこれらの培地の製剤は当技術分野において周知であり、例えば、GIBCOカタログおよび参考手引書(Invitrogen Corporation、カリフォルニア州カールズバッド)、DIFCOマニュアル(DIFCO、マサチューセッツ州ノーウッド)、および動物および植物細胞培養用のSigma細胞培養カタログ(Sigma、ミズーリ州セントルイス)に見出され得る。
【0062】
粉末培地、培地添加物、培地サブグループ、および緩衝液の調製
本発明の方法は、上記の粉末栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、および緩衝液の調製を提供する。これらの粉末培地、添加物、サブグループ、および緩衝液は、好ましくは凝集化により(例えば、流動床技術)および/または噴霧乾燥により調製される。
【0063】
本発明の1つの局面において、粉末栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、および緩衝液は、培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液の溶液を凝集化し、それにより乾燥粉末形態を産生するために、流動床技術を用いて調製する。流動床技術は、出発材料とは変化した特徴(特に、例えば溶解度)を有する凝集化粉末を産生する過程である。この技術の一般的な適用では、上方に移動する空気柱中に粉末を浮遊させ、それと同時に制御されかつ明確な量の液体を粉末の流れに吹き込み、吸った状態の粉末を作製する;次に穏やかな熱を用いて物質を乾燥するエネルギーを提供し、それによって凝集化粉末を産生する。
【0064】
流動床技術により特定の物質を産生および/または加工するための装置は市販されており(例えば、Niro, Inc./Aeromatic-Fielder;メリーランド州コロンビア)、例えば、米国特許第3,771,237号;4,885,848号;5,133,137号;5,357,688号;および5,392,531号;ならびに国際公開公報第95/13867号に記載されている;外国特許および出願のすべての開示は、完全に参照として本明細書に組み入れられる。凝集化にはまた、Processallミックスミル(Mixmill)撹拌機、Extrud-O-Mix撹拌機/押出機、Turbulizer撹拌機/塗布機、およびBextruder押出機/造粒機等の従来の流動床技術の変化形または従来の流動床技術への追加が含まれる。例えば、Hosokawa Bepex Corporation, 333 NE Taft St., Minneapolis, MN 55413-2810、およびその競合他社を参照されたい。そのような装置を用いて、乳清(米国特許第5,006,204号)、酸味を帯びた肉エマルジョン(米国特許第4,511,592号)、プロテアーゼ(米国特許第4,689,297号)、および他のタンパク質(DK 167090 B1)、ならびに炭酸水素ナトリウム(米国特許第5,325,606号)を含む様々な物質の凝集化粉末が調製されている。
【0065】
本発明のこの局面に従って、流動床技術により、大量の凝集化栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、および緩衝液が調製され得る。本発明のこの局面の実施においては、乾燥粉末栄養培地、培地添加物、または緩衝液を凝集化機械、例えば流動床装置にセットし、その中で凝集化に供す。粉末栄養培地(特に粉末細胞培養液)、粉末培地添加物(特に粉末動物血清)、および粉末緩衝液(特に粉末緩衝食塩水)は、市販の供給源(例えば、Invitrogen Corporation、カリフォルニア州カールズバッド)からあらかじめ作製された物が入手可能である。または、粉末栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液は、個々の成分または成分のセットを上記の製剤に従って混合することによっても作製され得る。そのような製剤には、血清、L-グルタミン、シスチン、インスリン、トランスフェリン、脂質(特に、リン脂質、スフィンゴ脂質、脂肪酸、およびコレステロール)、サイトカイン(特に、増殖因子、インターロイキン、コロニー刺激因子、およびインターフェロン)、神経伝達物質、および緩衝液(特に炭酸水素ナトリウム)等の、不安定なために、粉末栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、および緩衝液製剤には典型的には存在しない成分が含まれ得る。L-グルタミンが製剤に添加される場合、それはカルシウムまたはマグネシウム等の二価陽イオンとの複合体の形態であってよい(米国特許第5,474,931号を参照のこと)。他の例では、2つまたはそれ以上の粉末成分を混合し、その後凝集化して複合培地、培地添加物、培地サブグループ、またはバッファーを産生し得る。例えば、粉末栄養培地を、FBS等の粉末血清(例えば、以下に記載するように噴霧乾燥によって産生される)と、約0.1%、0.2%、0.5%、1%、2%、2.5%、5%、7.5%、10%、15%、20%、25%、50%、またはそれ以上の血清濃度(粉末培地の割合としてのw/w)で混合することが可能である;次に、生じた粉末培地-血清混合物を凝集化して、再構成溶媒に容易に溶解し、よってさらなる補充を行わずに使える状態となる凝集化培地-血清複合体を産生することができる。
【0066】
粉末栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液(またはそれらの混合物)を流動床装置にセットしたら、気体、好ましくは空気または窒素等の不活性ガスが上方に移動する柱において浮遊に供し、1枚または複数枚の粒子フィルターに通す。ほとんどの乾燥粉末非凝集化栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、および緩衝液は、比較的粒子の大きさが小さいため、本発明で用いるフィルターは、例えば、約1〜100メッシュ、好ましくは約2〜50メッシュ、より好ましくは約2.5〜35メッシュ、さらにより好ましくは約3〜20メッシュまたは約3.5〜15メッシュ、および最も好ましくは約4〜6メッシュのフィルターといったような、空気は通すが粉末は保持するメッシュスクリーンであるべきである。
【0067】
流動床チャンバー内にセットした後、好ましくは流動床装置上の噴霧ノズルを用いて、明確でありかつ制御された量の溶媒を粉末に吹き込むことにより、乾燥粉末栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液(またはそれらの混合物)を凝集化に供して、湿った粉末を産生する。本発明に使用する好ましい溶媒には、栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液の製剤に適合する任意の溶媒が含まれる。「適合する」とは、その溶媒が、栄養培地の栄養成分の分解または緩衝液のイオン特性における変化のような、栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液の、物理的特徴または性能特性に不可逆的有害変化を誘導しない溶媒であることを意味する。本発明での使用に特に適した溶媒は、水(とりわけ蒸留水および/または脱イオン水)、血清(特にウシまたはヒト血清、とりわけウシ胎仔血清または仔ウシ血清)、有機溶媒(特に、ジメチルスルホキシド、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、グリコール等)、エーテル(例えばMEK)、ケトン(例えばアセトン)等、およびその任意の組み合わせまたはひと続きであり、それらはどれも1つまたは複数のさらなる成分(例えば、塩類、多糖類、イオン、界面活性剤、安定剤等)を含んでよい。
【0068】
本発明のいくつかの局面では、ボールミル等の他の方法によっては最終産物に必要とされるはずの濃度の成分が産物に最適に取り込まれ得ない1つまたは複数の成分を、溶媒中に含むことが望ましいまたは有利である場合がある。1つのそのような局面においては、本発明の粉末培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液の凝集化において溶媒を使用する以前に、溶媒中に所望の濃度で成分を溶解、懸濁、コロイド化、またはさもなくば導入することができる。本発明のこの局面に従って溶媒に有利に取り込まれ得る成分には、1つまたは複数の上記の血清、ホルモン、サイトカイン、神経伝達物質、脂質、付着因子、タンパク質、アミノ酸、ビタミン、酵素補因子、多糖類、塩類、イオン、緩衝液等が含まれるが、これらに限定されない。
【0069】
溶媒は、凝集化する粉末培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液の質量に依存した容量で、乾燥粉末に導入すべきである。500グラムの栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液当たりの好ましい溶媒の容量は、約5〜100 ml、より好ましくは約10〜50ml、さらにより好ましくは約25〜50 ml、および最も好ましくは約35 mlである。当然のことながら当業者は、規模を考慮することにより、溶媒送達の容量および速度が影響を受けることを理解する。500グラムの栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液当たりの好ましい溶媒導入速度は、約1〜10 ml/分、好ましくは約2〜8 ml/分、より好ましくは約4〜8 ml/分、および最も好ましくは約6 ml/分の速度である。場合によっては、凝集化中に粉末が塊になるのをを防ぐため、約1分間の溶媒の添加と次の約1分間の溶媒の無添加(装置チャンバー内で粉末の乾燥を可能にする)の間を循環させることが望ましい場合がある。場合によっては、溶媒を添加しない期間があるまたはない、第1溶媒および第2溶媒または第3溶媒の添加の間を循環させることが望ましい場合がある。場合によっては、装置内の別の出入口から同時に複数の溶媒を添加することが望ましい場合がある。
【0070】
粒子の大きさが元の非凝集化粉末よりも大きいこと、および凝集化粉末中に細塵粒子が存在しないことから明らかなように、粉末の凝集化が完了したら、装置内で粉末を完全に乾燥させる。場合によっては、第2または第3溶媒と共にさらなる成分を添加する前に、粉末を部分的にまたは完全に乾燥させることが望ましい場合がある。場合によっては、例えば第1溶媒といった以前の溶媒を、例えば第3溶媒といった後の溶媒として用いることが望ましい場合がある。場合によっては、例えば第1溶媒として単純な溶媒および例えば第2溶媒として複雑な溶媒を用いることが望ましい場合がある。当業者は、多くの順番および順序が可能であり、当技術分野で周知の単純な手順によって最適な条件が決定できることを理解すると考えられる。凝集化粉末の乾燥に好ましい装置の温度は約50〜80℃、より好ましくは約55〜75℃、および最も好ましくは約60〜65℃である;粉末は、500グラムの粉末当たり好ましくは約3〜10分間、および最も好ましくは約5〜7分間、装置中で乾燥する。温度は、成分の不可逆的な変性等の悪影響を回避するように選択する。揮発性の低い溶媒または揮発性の高い溶媒を用いる場合、それぞれ例えば80〜150℃またはそれ以上といったより高い温度、または例えば20〜40℃といったより低い温度が特に有利になる場合がある。
【0071】
空気流は、床内の流動条件を維持するように選択する。温度は、十分な凝集化を可能にする期間、装置に導入される液体を保持するように設定し得る。粒子が凝集化すべき粒子の大きさよりも大きい時点で、および溶媒と共に導入される成分がより大きい粒子に吸収された時点で、凝集化は一般に十分である。例えば、揮発性の高い溶媒を用いる場合、例えば-10℃、0℃、5℃、10℃、20℃、25℃、35℃、または40℃といったより低い温度を用いることができる。当業者は、溶媒が揮発する際に、凝集している混合物を冷却する傾向があるエネルギーが必要とされることを理解すると考えられる。したがって、溶媒送達の種類および速度ならびに混合物を加熱する速度を制御することにより、温度を制御することができる。溶解した成分の凝集化は、好ましくは、例えば表面力によって、液体がより小さな粉末、溶解した成分、または懸濁されたもしくはコロイド化した成分を床内の凝集化混合物に結合させる作用薬の機能を果たし得る時に達成される。したがって、凝集化温度は、用いる溶媒、流動床を維持する流速、溶媒の送達速度、溶媒の揮発速度、および加熱速度によって変化することになる。温度は、例えば揮発性溶媒を使用する場合または凝集化を生じる液体の滞留時間がより長い場合の、例えば-20℃、-10℃、0℃、5℃、10℃、20℃、25℃、35℃、40℃、または50℃といった低い範囲から、例えば揮発性の低い溶媒の場合、より迅速に揮発させる場合、および凝集化時間がほとんど必要ない場合の、例えば40℃、50℃、60℃、65℃、75℃、85℃、90℃、95℃、100℃、110℃、120℃、125℃、140℃、150℃、175℃、200℃、220℃、240℃、250℃、275℃、300℃、またはそれ以上といった高い範囲まで変動し得る。例えば、同時にまたは順次に多数の溶媒を用いる場合、揮発性の低い溶媒が、より揮発性の高い溶媒のより迅速な揮発を可能にし、凝集化には十分である可能性がある。
【0072】
凝集化をもたらすのに十分な時間、液体が装置中に滞留するように、溶媒の混合液を用いて揮発時間を制御する場合がある。例えば、例えばアルコール、特にエタノール等の有機溶媒といった揮発性の高い溶媒と、例えば水等の極性溶媒といった揮発性の低い溶媒との混合液を用いる場合がある。例えば、極性溶媒中で不溶性または可溶性の低い成分は、有機溶媒中で可溶性である場合がある。成分は、極性溶媒と有機溶媒との混合液中で可溶性である場合がある。したがって、本発明の1つの局面では、有機溶媒と極性溶媒の混合液を使用して、1つまたは複数の成分を送達する。溶液の混合液、すなわち有機溶媒に対する極性溶媒の比率は、床内に取り入れられる成分によって変わることになる。混合液の選択において用いられるパラメータには、可溶性、例えば、凝集化するための所望の量の成分を送達する最低限の有機溶媒を含むように、比率を設定し得る;揮発性、例えば、十分な凝集化をもたらす揮発性のより低い溶媒を含むように、比率を設定し得る;安全上または規制上の懸念、例えば、床での溶媒和および凝集化に十分であり職場または環境に過度の危険を与えない最低限の有機溶媒を含むように、比率を設定し得る、または規則に従うために特別な溶媒を選択もしくは回避する場合がある;床の条件、例えば所望の温度および/または流速が十分な凝集化が達成されるように、混合液を選択し得る;培地粉末の特殊用途、例えばある用途では、製造手順に好ましくは1つまたは複数の溶媒が含まれるが、その一方で好ましくは他の溶媒が排除または禁止される;および装置との適合性、例えば、出入口またはノズルを介した容易な導入を可能にし、かつ装置の成分に容認されない損傷を与えない溶媒または溶媒混合液、が含まれる。混合液は、数多くの方法によって導入され得る。例えば、溶媒混合液は、状況に応じて1つまたは複数の可溶性、コロイド化、または懸濁化成分と共に調製し、出入口またはノズルを介して混合物として送達することができる。混合液が完成され得る別の方法は、別の経路を介する個々の溶媒または溶媒混合液の導入である。例えば、分別は空間的であってよく、複数の出入口またはノズルが使用され得る;分別は時間的であってよく、溶媒または混合液は、単一のまたは別の出入口またはノズルを介して順次に導入され得る;分別は異なる相を含んでもよく、溶媒は、液相での溶媒の導入の前に、その間に、および/またはその後に蒸気として導入されてよく、または溶媒は固体成分として床に送達され、床の操作時に揮発させてもよい等。導入の手段はどれも、溶媒または溶媒混合液の送達に同等に適用される。
【0073】
本発明の別の局面では、粉末栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、および緩衝液は、噴霧乾燥により調製され得る。本発明のこの局面では、液体形態の栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、および緩衝液を噴霧乾燥装置にセットする;次に、制御された温度および湿度等の粉末を産生するのに適した条件下で装置のチャンバー内に溶液を噴霧することにより、これらの液体をその対応する粉末に変換し、粉末が形成される。場合によっては、2つまたはそれ以上の上記の培地、培地添加物、培地サブグループ、および/または緩衝液の複合混合物を噴霧乾燥することが望ましいまたは有利である場合がある。例えば、所望の濃度の動物血清を含む液体栄養培地、または所望の濃度の栄養培地成分を含む液体動物血清を混合し、次に本発明の方法に従って噴霧乾燥粉末として調製してよい。噴霧乾燥または粉末を取得する他の方法は、凝集化のための粉末成分を提供し得る。
【0074】
典型的な噴霧乾燥方法では、液体栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、および緩衝液を装置内に吸引し、回転式またはノズル式噴霧器で微粒化してスプレーにする。次に、生じた微粒化液体スプレーに気体(例えば窒素、またはより好ましくは空気)を混合し、粉末産物の産生を促進するのに十分な条件下で乾燥チャンバー内に噴霧する。本発明の好ましい局面において、これらの条件は、産物の最終乾燥が促進されるような、チャンバー内の温度および湿度の電子制御を含み得る。これらの条件下で、液体中の溶媒は制御された様式で蒸発し、それにより本発明の栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液の自由に流動する粒子(すなわち粉末)が形成される。次に乾燥チャンバーから粉末を取り出し、1枚または複数枚のフィルター(流動床調製について上記したメッシュスクリーン等)に通し、さらなる加工(例えば、包装、滅菌等)のために収集する。場合によっては、特に熱に弱い栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、および緩衝液の製剤から粉末を産生する場合には、噴霧乾燥装置は乾燥チャンバー内に統合した流動床装置と組み合わせてよく、それにより、上記のような凝集化溶媒の噴霧乾燥粉末への導入が可能となり、凝集化噴霧乾燥粉末栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、および緩衝液が産生される。
【0075】
噴霧乾燥により液体物質から粒子状物質を産生するための装置(流動床技術の統合を伴うまたは伴わない)は市販され(例えば、Niro, Imc./Aeromatic-Fielder;メリーランド州コロンビア)、例えばNiro, Imc./Aeromatic-Fielderの「噴霧乾燥(Spray Drying)」、「噴霧乾燥による粉末医薬品(Powdered Pharmaceuticals by Spray Drying)」、および「乾燥における新たな選択(Fresh Option in Drying)」技術パンフレットに記載されており、その開示は完全に参照として本明細書に組み入れられる。この製造業者によると、そのような装置を用いて、乳製品、鎮痛剤、抗生物質、ワクチン、ビタミン、酵母、植物性タンパク質、卵、化学薬品、食品香味料等を含む様々な粉末が調製されている。本発明において、噴霧乾燥は、血清、特に上記の血清、とりわけヒトおよびウシ血清(ウシ胎仔血清および仔ウシ血清)等の粉末培地添加物の調製に特に有用であることが見出された。
【0076】
本発明のこの局面に実施において、液体栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、緩衝液、またはpH調整剤は、約25〜100 g/分の噴霧速度で、好ましくは約30〜90 g/分、35〜85 g/分、40〜80 g/分、45〜75 g/分、50〜75 g/分、55〜70 g/分、または60〜65 g/分の噴霧速度で、およびより好ましくは約65 g/分の噴霧速度で、噴霧器を通してチャンバー内に噴霧され得る。約50〜100℃、より好ましくは約60〜80℃、および最も好ましくは約70℃の出口温度で、噴霧器の吸気温度を好ましくは約100〜300℃、より好ましくは約150〜250℃、および最も好ましくは約200℃に設定する。約1.5バール、より好ましくは約2〜3バール、および最も好ましくは約2バールのノズル圧で、噴霧器内の気流を、好ましくは約50〜100 kg/時間、より好ましくは約75〜90 kg/時間、および最も好ましくは約80 kg/時間に設定する。これらの条件および設定は、噴霧乾燥による様々な栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、および緩衝液粉末の産生、特に上記の粉末血清の産生に好ましいことが、本発明において見出された。乾燥した後、好ましくは流動床技術について上記したフィルター等の1枚または複数枚のフィルターを通して、噴霧乾燥粉末栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液を乾燥チャンバー内に収集し得る。
【0077】
この調製後、上記の流動床法または噴霧乾燥法により調製した本発明の粉末は、出発粉末、または対応する液体を凍結乾燥することにより調製される粉末培地、添加物、サブグループ、および緩衝液とは変わった物理的性質を有する。例えば、未加工または凍結乾燥粉末は使用時に顕著な粉塵を生じ、様々な溶媒にそれほど溶解せずまたはゆっくりと溶解するのに対し、凝集化したものは実質的に粉塵を起こさずおよび/または速やかに溶解する。典型的に、本発明の粉末培地、培地添加物、培地サブグループ、および緩衝液は、ボールミル等の標準的な技法によって調製されたその粉末対応物よりも少ない粉塵および速やかな溶解を示すことになる。実質的に粉塵を起こさないが溶解の増加を示し得ないいくつかの粉末においては、粉末は、例えば機械的インペラーを用いる、または噴霧溶媒和によるなど最初に粉末に溶媒ミストを提供する等の粉末の迅速な機械的溶媒和により、迅速に溶解され得る。
【0078】
本発明の1つの局面においては、上記の噴霧乾燥方法および凝集化方法を混合し、凝集化噴霧乾燥栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、および緩衝液粉末を産生してもよい。この局面では、噴霧乾燥により調製された粉末培地、添加物、サブグループ、または緩衝液を、噴霧乾燥の後に溶媒(上記の溶媒等)を用いて凝集化し、生じる培地、添加物、サブグループ、または緩衝液の性能および物理的特徴をさらに改善してもよい。例えば、上記のように液体動物血清を噴霧乾燥することにより動物血清粉末を調製し、次にこの噴霧乾燥血清粉末を乾燥粉末栄養培地(噴霧乾燥によってまたはボールミル等の標準的技法によって調製された)に混合してもよい;その後、この混合粉末を上記のように凝集化することができる。または、噴霧乾燥栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液粉末を上記のように凝集化し、粉末の溶解特性を改善してもよい。この方法は、液体動物血清のように噴霧乾燥する液体が低い(約1〜10%)固形含有量を有する場合に、特に有利である可能性がある。当業者が理解するように、これらの方法により、上記の凝集化の利点も得ながら、粉末培地、添加物、サブグループ、または緩衝液に所望の濃度で添加する保存液として用いられる大量の1つまたは複数の成分の調製が促進されることになる。さらに、この方法により、ある種の培地添加物(特に動物血清)で問題となり得るロット間のばらつきが減少される可能性がある。
【0079】
続いて、上記のように調製した凝集化または噴霧乾燥した粉末栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液を、以下に記載するような滅菌の前または後に、例えば、バイアル、試験管、ビン、袋、ポーチ、箱、段ボール箱、ドラム缶等の容器に包装し得る。本発明の1つのそのような局面において、粉末培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液は、空気を抜きながら密封される可塑性容器(袋またはポーチ等)に粉末が包装される、当技術分野において「ブリックパック」として知られるもの等の、小型の真空パック形態に包装し得る。そのようなパッケージは、粉末の迅速な溶解を容易にするために、パッケージに溶媒(例えば、水、血清、培地、または他の水性もしくは有機物の溶媒もしくは溶液等)を直接導入することを可能にする1つまたは複数の出入口(バルブ、ルアーロック出入口等)を有利に含んでもよい。関連する局面において、パッケージは2つまたはそれ以上の隣接する区画を含んでよく、そのうちの1つまたは複数は本発明の乾燥粉末培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液の1つまたは複数を含み、別の1つまたは複数は無菌であり得る1つまたは複数の水性溶媒または有機溶媒を含んでもよい。この局面では、次に、単に区画間の仕切りをはずすかまたは壊すことにより、理想的には無菌性を失うことなく乾燥粉末が溶解され得て、粉末と溶媒の混合を可能にし、その結果粉末が溶解し、所望の濃度の無菌的栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液が産生される。
【0080】
本発明の包装した培地、培地添加物、培地サブグループ、および緩衝液は、使用時まで、好ましくは長期間および上記の温度で、典型的には30℃未満の温度で約1〜24ヶ月間、より好ましくは約20〜25℃未満の温度で保存される。従来の粉末培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液とは異なり、本方法によって調製した培地、培地添加物、培地サブグループ、および緩衝液の性能特性の維持には、低い温度(例えば0〜4℃)での保存は必要ではない。当然のことながら、パッケージが1つまたは複数の溶媒を含む別々の区画を含む、本発明のそれらの局面には、他の保存温度が必要である場合がある;これらの場合、最適な保存条件は、当業者に周知であると考えられる溶媒の保存の必要条件によって決定されることになる。
【0081】
脂質または非水性溶質の凝集化
本発明の際立った利点は、脂質および通常の水性溶媒調製品中で十分に可溶性ではない成分の、乾燥粉末培地への凝集化を達成する方法である。従来、そのような成分は、最適には満たない手順で、例えば有機溶媒に溶解した濃縮物として添加されてきた。本発明の方法により、所望の非水性媒質を含む乾燥粉末培地が達成可能となる。
【0082】
そのような非水性溶質の例は;脂肪酸、中性脂肪、蝋、ステロイドおよびステロイド化合物、ホスファチド、糖脂質(例えば、スフィンゴシン、セレブロシド、セラミド、ガングリオシド)、リポタンパク質、リン脂質、ホスホグリセリド(例えば、ホスファチジルエタノールアミンまたはエタノールアミンホスホグリセリド等のエタノールアミン、ホスファチジルコリンまたはコリンホスホグリセリド等のコリン)、リポアミノ酸、カルジオリピンおよび関連化合物、プラスマロゲン、ステロール(例えば、コレステロール、ラノステロール)、テルペン、脂溶性ビタミン(例えば、ビタミンAおよびそのビタマー、ビタミンEおよびそのビタマー、ビタミンKおよびそのビタマー、ビタミンDおよびそのビタマー)である。脂溶性タンパク質もまた、本発明の局面において培地に用いられる脂質の例である。
【0083】
本発明の1つの局面は、1つまたは複数の脂質を乾燥粉末に取り込む方法を含む。脂質は、脂質を含む溶媒を凝集化床に送達することによって導入され得る。例えば、脂質を含む有機溶媒を凝集化装置に導入してよい。好ましくは、毒性の低い溶媒を用いる。培地を調製する細胞種にもよるが、例えばメタノールまたはエタノールといったアルコール等の溶媒が好ましい場合がある。溶媒は脂質成分をきれいに溶解するか、または他の溶媒または溶質の存在下で成分を溶解し得る。溶解した後に、例えば別の脂質または溶媒といった別の成分を添加してもよい。
【0084】
装置に導入する溶媒混合液は、別の溶媒または混合液の送達の前に、後に、および/またはその間に導入してよい。別の溶媒または混合液は、溶媒混合液として同じ溶媒または成分のいくつかを含んでよい。したがって、溶媒混合液は任意の比率の溶媒を含み得る。例えば、溶媒混合液に用いられる溶媒の好ましい混合液は水およびアルコールを含み、例えばほとんどの哺乳動物細胞に対してより好ましくは水およびエタノールを含み得る。比率は上記のパラメータによって選択されることになり、例えば約1、5、7、10、15、20、25、30、33、40、50、60、67、70、75%エタノール(v/v)程度または80、85、90、95、98、または99%エタノール(v/v)程度で、残りは主に水であってよい。時には、脂質がそれ自体で部分的に溶媒として機能を果たす場合もある。先に例証したような他の有機溶媒を、同様の比率で用いてもよい。当業者は、凝集化過程には、異なる脂質は異なる溶媒、溶媒混合液、および溶媒混合液の比率が必要である可能性があることを理解すると考えられる。複数の有機溶媒が用いられる場合、それらを順次に使用しても、または液体形態で一緒に混合してもよい。それぞれの濃度は、先に例証した割合と同様であってよい。
【0085】
予想外に、本発明者らは、脂質を乾燥粉末凝集化に送達するためには、水とエタノールそれぞれ単独よりもそれらの混合液の方が有効であることを見出した。例えば溶解温度および乾燥時間に関するような上記のパラメータは、この予期しない発見に劣ると考えられる。エタノールと水の例により、本発明者らは、当業者が溶媒および溶質の他の混合物によって課せられる利点および妥協を理解するものと考える。
【0086】
本発明はまた、水中での溶解度を増す改変を行った後に、脂質を乾燥粉末に凝集化する局面も含む。例えば、塩に変換することにより脂質をイオン性にしてもよく、例えば脂肪酸をけん化してもよい。当業者は、水中での溶解度を改善する水酸化またはエステル化等の他の手段を理解すると考えられる。溶解度を改善した脂質を水性溶媒に添加してもよいし、または溶媒の混合液に添加してもよい。例えば、溶解度を改善することにより、用いる有機溶媒の量をより少なく減らせる場合がある。
【0087】
本発明の別の局面は、脂質構造と結合または錯体化し、水性環境において脂質の溶解を起こし得る化学物質の使用を含む。そのような相互作用はミセル形成によると考えられ、ミセルの形成を起こす分子の疎水性部分が脂質成分を含み、かつミセルの形成を起こす分子の親水性部分が水性環境において溶解し、その結果水性環境において脂質が可溶化されることになる(例:プルロニックF-68または他の界面活性剤)。他の同様の相互作用はシクロデキストリン等の化合物に起因してよく、この化合物はシクロデキストリン構造に脂質を可溶化し(分配、物理的錯化)、水性環境への添加に際して物理的錯化を維持することができ、従って水性環境において脂質の溶解をもたらす(例:B-メチルシクロデキストリン)。
【0088】
滅菌および包装
本発明はまた、本発明の栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、および緩衝液を滅菌する方法と同時に、ボールミルまたは凍結乾燥等の標準的な方法で調製された粉末栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、および緩衝液を滅菌する方法を提供する。栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、および緩衝液は、通常大量の溶液で調製され、熱に不安定な成分を含む場合が多いため、照射または加熱による滅菌に耐えられない。したがって、栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、および緩衝液は、一般にろ過等の汚染物質除去法により滅菌するが、それによりそのような培地、培地添加物、培地サブグループ、および緩衝液を製造するために必要な費用および時間が顕著に増加する。
【0089】
しかし、本発明の方法に従って(例えば、液体培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液を噴霧乾燥することによる、または粉末培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液を凝集化することによる)、または(粉末成分の)ボールミルまたは(培地、添加物、サブグループ、または緩衝液の液体形態の)凍結乾燥等の標準的な方法により調製した粉末栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、および緩衝液を、安価でかつより効果的な方法によって滅菌することができる。例えば、粉末栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液(液体形態の噴霧乾燥もしくは凍結乾燥により、または培地、添加物、サブグループ、または緩衝液の粉末形態の凝集化により上記のように調製した)を、これらの粉末の滅菌に好ましい条件下で照射してよい。好ましくはこの照射は大量に達成され(すなわち、栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液を包装した後に)、最も好ましくは、粉末培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液中に存在するかもしれない細菌、菌類、胞子、またはウイルスを不活化するような条件下で(すなわち、複製を妨げる)、本発明の大量包装した培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液をγ線源に曝すことにより、この照射を達成する。または、包装する以前に、粉末培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液をγ線源または紫外線源に曝すことにより、照射を達成してもよい。または熱処理により(もし栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液が熱安定性であるならば)、例えば瞬間低温殺菌または加圧滅菌により、本発明の培地、培地添加物、培地サブグループ、および緩衝液を滅菌してもよい。当業者が理解するように、滅菌に必要な照射線量または熱量、および曝露の時間は、滅菌する物質の量に依存する。
【0090】
本発明の特に好ましい局面では、大量の粉末栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液を、約10〜100キログレイ(kGy)の総線量、好ましくは約15〜75 kGy、15〜50 kGy、15〜40 kGy、または20〜40 kGyの総線量、より好ましくは約20〜30 kGyの総線量、および最も好ましくは約25 kGyの総線量の照射源に、約1時間〜7日間、より好ましくは1時間〜5日間、1時間〜3日間、約1〜24時間、または約1〜5時間、および最も好ましくは約1〜3時間(「通常の線量率」)曝す。または、本発明の大量の粉末を、1〜5日間にわたって約25〜100 kGyの総線量である「低線量率」で滅菌してもよい。照射中は、粉末栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液を、好ましくは約-70℃〜約室温(約20〜25℃)の温度、最も好ましくは約-70℃に保存する。当業者は、当然のことながら、線量および曝露時間は照射する物質の容積および/または質量により調整され得ることを理解すると考えられる;照射または加熱処理により大量の粉末物質を滅菌するのに必要とされる、典型的な最適照射線量、曝露時間、および保存温度は、当技術分野において周知である。
【0091】
滅菌した後、例えば培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液を、無菌的試験管、バイアル、ビン、袋、ポーチ、箱、段ボール箱、ドラム缶等の容器に、または真空包装もしくは上記の一体化粉末/溶媒包装に包装することにより、未包装の栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、および緩衝液を無菌状態で包装し得る。その後、無菌包装培地、培地添加物、培地サブグループ、および緩衝液は、上記のように長期間保存され得る。
【0092】
栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、および緩衝液の使用
したがって本発明は、再水和溶媒に易溶性でありかつ実質的に粉塵のない粉末栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、および緩衝液を提供する。使用するには、溶媒和した培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液の特定の用途に必要とされる所望の栄養分、電解質、イオン、およびpH条件を産生するのに十分な量の溶媒中に、凝集化または噴霧乾燥した培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液を水和(または「再構成」)し得る。凍結乾燥したまたはボールミルした栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液とは異なり、本培地、培地添加物、培地サブグループ、および緩衝液は速やかに溶液となり、ほとんど粉塵または不溶性物質を産生しないため、この再構成は本発明において特に容易になる。
【0093】
本発明の粉末栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、および緩衝液の再構成に用いる好ましい溶媒には、水(とりわけ蒸留水および/または脱イオン水)、血清(特にウシまたはヒト血清、とりわけウシ胎仔血清または仔ウシ血清)、有機溶媒(特に、ジメチルスルホキシド、アセトン、エタノール等)、またはそれらの任意の組み合わせが含まれるが、これらに限定されず、それらはどれも1つまたは複数のさらなる成分(例えば、塩類、多糖類、イオン、界面活性剤、安定剤等)を含んでよい。例えば、粉末培養添加物(動物血清等)および緩衝液は、好ましくは水中で1X最終濃度に、または保存溶液の調製または保存のため任意により高い濃度に(例えば、2X、2.5X、5X、10X、20X、25X、50X、100X、500X、1000X等)再構成する。または、粉末培地は、培地添加物が水中に例えば0.5%、1%、2%、2.5%、5%、7.5%、10%、15%、20%、25%、50%、またはそれ以上の容量/容量の濃度で存在する溶液のような、水中の培地添加物(例えばFBS等の血清)の溶液中に再構成してもよい。
【0094】
粉末栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液の再構成は、好ましくは無菌条件下で達成し、再構成した培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液の無菌性を維持するが、または再構成した培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液を、再水和の後に好ましくはろ過または当技術分野で周知の他の滅菌方法により滅菌してもよい。再構成の後、培地、培地添加物、培地サブグループ、および緩衝液は、使用時まで約10℃未満の温度、好ましくは約0〜4℃の温度で保存すべきである。
【0095】
再構成した栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、および緩衝液を用いて、当業者に周知の標準的な細胞培養技法に従って細胞を培養することができる。そのような技法では、細胞の培養に好ましい条件下で(制御された温度、湿度、照明、および大気条件等)、培養する細胞を本発明の再構成した培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液と接触させる。そのような方法による培養に特に受け入れられる細胞には、細菌細胞、酵母細胞、植物細胞、および動物細胞が含まれるが、これらに限定されない。そのような細菌細胞、酵母細胞、植物細胞、および動物細胞は、例えばアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(バージニア州マナッサス)、Invitrogen(カリフォルニア州カールズバッド)、および当業者によく知られていると思われる他の業者といった周知の培養保管業者から市販されている。これらの方法によって培養する好ましい動物細胞には、昆虫細胞(最も好ましくは、ショウジョウバエ細胞、Spodoptera細胞、およびTrichoplusa細胞)、線虫細胞(最も好ましくはシー・エレガンス細胞)、および哺乳動物細胞(CHO細胞、COS細胞、VERO細胞、BHK細胞、AE-1細胞、SP2/0細胞、L5.1細胞、ハイブリドーマ細胞、および最も好ましくは293細胞、PER-C6細胞、およびHeLa細胞等のヒト細胞が含まれるが、これらに限定されない)が含まれるが、これらに限定されず、それらはどれも体細胞、生殖細胞、正常細胞、異常細胞、形質転換細胞、突然変異細胞、幹細胞、前駆細胞、または胚細胞であってよく、かつそれらはどれも足場依存性細胞であっても足場非依存性(すなわち「浮遊」)細胞であってもよい。
【0096】
細胞
別の局面において、本発明は、1つまたは複数の細胞を含む乾燥細胞粉末組成物を産生する方法、およびこれらの方法により産生される乾燥細胞粉末に関する。したがって、これらの方法は、細胞が保存され、使用時まで長期間保存され得る細胞を含む組成物を産生する。このようにして、本発明の方法は、凍結保存設備の必要性および細胞に毒性があるかもしれないある種の凍結保存剤の使用等の、従来の細胞保存法(例えば凍結)のいくつかの欠点を克服する。
【0097】
本発明のこの局面による方法は、1つまたは複数の段階を含み得る。例えば、1つのそのような方法は、乾燥する1つまたは複数の細胞を取得する段階、水性溶液中に1つまたは複数の細胞を懸濁することにより水性細胞懸濁液を形成する段階、および粉末乾燥を産生するのに好ましい条件下において細胞懸濁液を噴霧乾燥する段階を含んでよい。これらの方法は、さらに、1つまたは複数の細胞を1つまたは複数の安定化化合物または保存化合物(例えば、トレハロースを含むがこれに限定されない多糖)と接触させる段階を含んでもよい。細胞懸濁液を形成するために用いる水性溶液は、好ましくは1つまたは複数の上記の栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、塩類、または緩衝液等の1つまたは複数の成分を含む。好ましくは、細胞懸濁液を形成するために用いる水性溶液を、乾燥する細胞種の最適なまたは実質的に最適な浸透張力および重量モル浸透圧濃度に調整する。水性溶液は、状況に応じて、1つまたは複数の多糖類、イオン、界面活性剤、安定化化合物、または保存化合物(トレハロースを含む)等の1つまたは複数のさらなる成分を含んでもよい。1つまたは複数の細胞を1つまたは複数の安定化化合物または保存化合物と接触させる本発明の局面においては、安定化化合物または保存化合物を、水性細胞懸濁液を形成するために用いる水性溶液に組み入れてよい。または、安定化化合物または保存化合物は、粉末の形成後に乾燥細胞粉末上に噴霧または凝集化してもよい。
【0098】
上記の方法により乾燥細胞粉末が形成されたならば、状況に応じて、乾燥粉末の凝集化について上記した方法に従って、溶媒を用いて粉末を凝集化し得る。水、栄養培地溶液、栄養培地添加物溶液(血清、特にウシ血清(最も好ましくは、ウシ胎仔血清および仔ウシ血清)およびヒト血清を含む)、緩衝液、塩類溶液、およびそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない、乾燥する細胞種と適合性のある任意の溶媒を用いて、乾燥細胞粉末を凝集化し得る。
【0099】
本発明の方法により、原核細胞(例えば細菌細胞)および真核細胞(例えば真菌細胞(特に酵母細胞)、動物細胞(特にヒトを含む哺乳動物細胞)、および植物細胞)、特に上記のような細胞、組織、器官、器官系、および生物体を含む、様々な細胞が乾燥され得る。乾燥細胞が産生されたならば、それらを無菌的に包装し、使用時まで、好ましくは約0〜30℃、4〜25℃、10〜25℃、または20〜25℃(すなわち「室温」)の温度で長期間保存してよい。生細胞の培養物の調製に使用するには、水性溶液(例えば滅菌水、緩衝液、培地添加物、培地、またはそれらの組み合わせ)を用いて乾燥細胞粉末を1つまたは複数の生細胞を含む細胞懸濁液に無菌的に再構成し、標準的な周知技術の手順に従って培養し得る。または、例えば動物の免疫に使用する免疫原を調製するため等には、乾燥細胞粉末を細胞の生存が必須ではない細胞懸濁液中に再構成してもよい。そのような場合、乾燥細胞粉末は、1つまたは複数の界面活性剤、アジュバント等を含み得る水性溶媒または有機溶媒等の、標準的な免疫化手順と適合性がある任意の溶媒に再構成され得る。
【0100】
キット
本発明によって提供される乾燥粉末培地、培地添加物、培地サブグループ、緩衝液、および細胞は、理想的にはキットの調製に適している。そのようなキットは、バイアル、試験管、ビン、パッケージ、ポーチ、ドラム缶等の1つまたは複数の容器を含んでよい。それぞれの容器は、1つまたは複数の本発明の上記の栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、もしくは緩衝液、またはそれらの組み合わせを含み得る。そのような栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液は水和されてもまたは脱水されていてもよいが、典型的には本発明の方法により産生される脱水調製品である。そのような調製品は、本発明に従い無菌であってよい。
【0101】
例えば1つめの容器は、例えば、本発明の栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、もしくは緩衝液、または上記したような本発明の栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液のいずれかのようなそれらの任意の成分もしくはサブグループを含んでよい。さらなる栄養培地緩衝液、緩衝液、抽出物、添加物、成分、またはサブグループは、本キットのさらなる容器に含まれ得る。キットはまた、1つまたは複数のさらなる容器内に、上記の細菌細胞、酵母細胞、植物細胞、または動物細胞等の1つまたは複数の細胞を含んでもよい。そのような細胞は凍結乾燥、乾燥、凍結、もしくはさもなくば保存され得るか、または本発明の方法に従って噴霧乾燥され得る。さらに、本発明のキットは、例えば状況に応じて1つまたは複数の二価陽イオンと複合化したL-グルタミンを含む、1つまたは複数のさらなる容器を含んでもよい(米国特許第5,474,931号)。キットはさらに、乾燥粉末栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、および/または緩衝液の再構成に使用する溶媒を含む1つまたは複数のさらなる容器を含んでもよい;そのような溶媒は、水性(緩衝液、塩類溶液、栄養培地溶液、栄養培地添加物溶液(ウシ血清(特にウシ胎仔血清または仔ウシ血清)またはヒト血清等の血清を含む)、またはそれらの組み合わせ)または有機的であってよい。本発明の栄養培地、緩衝液、抽出物、添加物、成分、またはサブグループとの混合に適合しない他の成分は、不適合性成分との混合を避けるために、1つまたは複数のさらなる容器に含まれ得る。例示的なキットは、任意に再構成溶媒を含むのに十分な容量の、再構成する乾燥粉末を含む容器、再構成の説明書、および再構成溶液を導入するための開封帯または出入口等の粉末乾燥への接近手段を含み得る。
【0102】
栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液を作製するための所与のキットに含まれる容器の数および種類は、調製する培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液の種類によって変わり得る。典型的には、キットは、特定の培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液を作製するために必要な成分または添加物を含むそれぞれの容器を含むことになる。しかし、異なる量の様々な成分、添加物、サブグループ、緩衝液、溶液等を混合することによって異なる培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液を調製し、異なる培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液製剤が作製できるように、本発明のキットにさらなる容器を含んでもよい。
【0103】
利点
予想外に、本発明は、経費が削減されかつ不便さが低減した、脂質を含む栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、緩衝液、および細胞の調製を提供する。経費の削減はいくつかの要因による。例えば、1X製剤に必要とされる大きな撹拌槽を必要としないため、はるかに小さな製造設備で本発明の培地、培地添加物、培地サブグループ、および緩衝液製剤が作製され得る。さらに、本発明の培地、培地添加物、培地サブグループ、および緩衝液製剤は、在庫費用、保存費用、および人件費が削減される「看板方式」製造技法によって必要に応じて調製され得る。培地、培地添加物、培地サブグループ、および緩衝液製剤の調製および輸送に必要な時間は、6〜8週間から1日程度にまで短縮され得る。また本発明の自動pH調製培地により、顕著な経費削減および時間節約が提供され、かつ従来の乾燥粉末または大量液体培地を用いての標準的な方法によるpH調整過程中に起こり得る、再構成培地中への汚染物質の混入の傾向が減少する。また本発明により、他の通常用いられる技法によって作製される多数のバッチでは何回もの品質管理試験が必要とされるのに対して1回のみの品質管理試験が必要とされる、非常に大量の1X培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液(例えば、1000,000リットルまたはそれ以上)を調製するために用いられ得る、栄養培地、培地添加物、培地サブグループ、または緩衝液の成分の調製が可能になる。重要なことには、個々の成分がより安定的であるため、本発明の培地、培地添加物、培地サブグループ、および緩衝液製剤はバッチ間でより一貫性がある。実験室で典型的に利用できる以上の特別な設備の必要性がほとんどなく、細胞が少量で長期間保存され得るため、本発明の乾燥細胞粉末はまた、技術的にも経済的にも有利である。さらに、本発明により調製される細胞は、細胞への毒性があるかもしれない凍結保存剤への曝露なしに保存される。改善された利便性により、培養中の細胞に脂質を供給する負担が減少することになる。乾燥培地製剤中に脂質を提供する改善法は、培養中の細胞が生理的課題または所望の課題を実施する上での性能向上をもたらすはずである。
【0104】
要約すれば、本発明は:その中に溶解した少なくとも1つの脂質を含む溶媒を用いて栄養培地粉末、培地添加物粉末、栄養培地サブグループ粉末、または緩衝液粉末を凝集化する段階を含み、溶媒が少なくとも1つの脂質を栄養培地粉末、培地添加物粉末、栄養培地サブグループ粉末、または緩衝液粉末への取り込みに送達する、凝集化栄養培地粉末、凝集化培地添加物粉末、凝集化栄養培地サブグループ粉末、または凝集化緩衝液粉末を産生する方法、に向けられている。
【0105】
本発明のある態様において、凝集化する段階は流動床凝集化を含む。
【0106】
本発明のある態様において、溶媒は液相である。他の態様においては、溶媒は固相である。
【0107】
本発明のある態様において、脂質は、改変されない場合と比較して溶媒中での溶解度が増加するように改変された脂質である。脂質は塩の形でよく、1つまたは複数の水酸基を有し得り、およびシクロデキストリンと錯体を形成し得る。
【0108】
本発明のある態様において、溶媒は混合液である。混合液は液体の混合物であってよい。混合液はまた、少なくとも1つの極性溶媒および/または少なくとも1つの非極性溶媒および/または少なくとも1つの有機溶媒を含んでよい。例えば、混合液は20%〜95%の有機溶媒、例えば20%、40%、50%、60%、80%、90%、または95%の有機溶媒を含み得る。
【0109】
溶媒が混合液の場合、混合液は例えば、(a)少なくとも1つの極性溶媒および(b)少なくとも1つの有機溶媒または少なくとも1つの非極性溶媒が1%〜99%の割合の溶媒を含んでよい。混合液は、(a)少なくとも1つの極性溶媒および(b)少なくとも1つの有機溶媒または少なくとも1つの非極性溶媒が例えば1、5、7、10、15、20、25、30、33、40、50、60、67、70、75、80、85、90、95、98、または99%の割合の溶媒を含んでよい。
【0110】
溶媒が混合液の場合、混合液は、少なくとも1つの有機溶媒または少なくとも1つの非極性溶媒を40%〜60%含んでよい。ある態様では、混合液は、(a)少なくとも1つの極性溶媒を50%および(b)少なくとも1つの有機溶媒または少なくとも1つの非極性溶媒を50%含む。
【0111】
溶媒が混合液の場合、混合液は、例えば水、およびジメチルスルホキシド、アルコール、エーテル、およびケトンからなる群より選択される少なくとも1つの溶媒を含んでよい。混合液は、例えば、ジメチルスルホキシド、アルコール、エーテル、およびケトンからなる群より選択される少なくとも1つの溶媒を含んでよい。混合液は、約40%〜60%のエタノールを含んでよい。1つの態様において、混合液は約50%のエタノールを含む。溶媒は、非極性溶媒および有機溶媒からなる群より選択される少なくとも2つの溶媒の混合液を含んでよい。
【0112】
本発明のある態様において、送達は、制御された温度、制御された湿度、および溶媒の制御された分圧の少なくとも1つを含む条件下で行われる。
【0113】
本発明のある態様において、脂質は、リノール酸、リポ酸、アラキドン酸、パルミチン酸、オレイン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、リノレン酸、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、スフィンゴミエリン、カルジオリピン、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンK、プロスタグランジン、およびステロールからなる群より選択される。ステロールは、例えば植物または動物ステロールであってよい。ある態様においては、ステロールはコレステロールである。
【0114】
本発明はまた、本発明の方法のいずれかによって調製される凝集化栄養培地粉末、凝集化培地添加物粉末、凝集化栄養培地サブグループ粉末、および凝集化緩衝液粉末に向けられている。ある態様において、本発明の粉末は、非凝集化栄養培地粉末と比較して粉塵が減少し、非凝集化栄養培地粉末と比較してより完全な溶解度を有し、非凝集化栄養培地粉末と比較して不溶性物質が少なく、および/または非凝集化栄養培地粉末と比較してより早く溶解する。
【0115】
ある態様において、本発明の粉末は血清を含まず、哺乳動物成分を含まず、および/または動物成分を含まない。
【0116】
本発明はまた、(a)溶媒を用いて本発明の凝集化粉末を再構成し、溶液を形成する段階、および(b)細胞の培養に好ましい条件下で、細胞を溶液に接触させる段階を含む、細胞を培養する方法を提供する。細胞は、例えば、細菌細胞、昆虫細胞、酵母細胞、線虫細胞、鳥類細胞、両生類細胞、爬虫類細胞、および哺乳動物細胞からなる群より選択される細胞であってよい。細胞が哺乳動物細胞である場合、細胞は、例えばCHO細胞、COS細胞、VERO細胞、BHK細胞、AE-1細胞、SP2/0細胞、L5.1細胞、PerC6細胞、293細胞、ハイブリドーマ細胞、またはヒト細胞であってよい。本発明のある局面によれば、3、4、7、10、14、28、30、60、または90日目における細胞の増殖は、脂質を添加した液体培地における同一時点の細胞の増殖と比較して50%〜120%である。例えば、3、4、7、10、14、28、30、60、または90日目における細胞の増殖は、脂質を添加した液体培地における同一時点の細胞の増殖と比較して、例えば50%、60%、75%、80%、90%、100%、105%、110%、または120%であってよい。
【0117】
本明細書に記載した方法および適用に対する他の適切な変更および適合化は明白であり、本発明またはそのいかなる態様の範囲からも逸脱することなく行われ得ることは、当業者には自明であると考えられる。本発明を詳細に説明したが、以下の実施例を参照することによってより明確に理解されると考えられる。以下の実施例は説明の目的のためのみに本明細書に含むものであり、本発明を制限することを意図するものではない。
【実施例】
【0118】
実施例1
典型的な乾燥粉末培地(DPM)の凝集
1.ベンチトップ実験室流動床装置(Stera-1;Niro, Inc./Aeromatic-Fielder; Columbia, Maryland)を使用。100〜500 gのDPMをチャンバー内に置く。装置の上に置き、ユニットをシールするためにレバーを使う。
【0119】
2.DPMを流動化(浮かばせる)するために、空気流を始動する。従来のDPMは比較的細かい粒子サイズであるので、4〜6の設定が必要となる。真空装置にスイッチを入れ、上部フィルターを通過する細かいDPMを捕獲する。流動化粉末が下部のメッシュスクリーンと上部フィルターに関して、チャンバーの略中央であることを確認する。
【0120】
3.まず圧縮空気ラインを閉じ、次いで水源に連結しているポンプを始動して、注入装置(噴霧ユニット)を始動する。目標は1分あたり6 mlまでの水を入れることである(任意のポンプのRPMと管の直径に基づく流速を知る必要がある)。DPMの凝集を防ぐために、交互に1分間水を加え、1分間水を停止し、チャンバー内で乾燥が生じるようにする。
【0121】
4.もしもフィルターが運転中にDPMで被覆されて、ブローバックによって、粉末が除去されなければ、すべてのフィルターがブロークレアするまで、設定2〜3にファンの速度を落とす。ついで運転中のファンの速度を以前のレベルまで上げる。
【0122】
5.DPM各500 gに35 mlまでの水を加えた時、凝集は完了する。この容量はDPMの配合によって変化する。運転の終わりに向けて、比較的大きな凝集顆粒がチャンバー内(底)に見られるようになる。目に見える大きな粒子と、細かい埃がないことがプロセスの完了を示す。
【0123】
6.凝集したDMPを5〜7分間乾燥させる。
【0124】
7.運転の終わりに、フィルターを4回ブローオフする。
【0125】
8.ユニットの電源を切り、水チューブの連結を解き、凝集したDMPを気密容器に集める。
【0126】
これらの手法は、プロセススケールまたは生産スケールの流動床装置を使用する場合は調整しなければならない。例えば、MP-1(Niro, Inc./Aeromatic-Fielder; Columbia, Maryland)を使用する時は、次のプロトコールによって満足な結果が得られる。
1.ユニットをシールする(ガスケットを膨らます)。
2.予熱のためにファンを始動する。
3.入り口の空気温度が設定点に等しい時にファンを停止する。
4.ガスケットを萎め、物質を装填し、ガスケットを膨らます。
段階5〜8は1分以内に遂行しなければならない。
5.バッチを始動する。
6.ファンを始動し、フィルタークリーニングの電源を入れる。
7.ノズルの噴霧空気圧を%出力に設定する(排気に対してノズルをチェックする)。
8.液体フィードラインを接続する。
9.スクリーン上およびポンプにおいてポンプを始動する。
10バッチ時間を再設定する。
11.すべての液体を設定速度(26/分)で噴霧する。2kgの粉末に250mlまでの水を使う。
12.すべての液体が加えられた時に、ポンプにおいてまたスクリーン上でポンプを停止する。
13.空気流を乾燥値に低減する(例えば100から60に)
14.製品が所望の温度に達したならば(-40℃)、「最初の設定」スクリーンに行き、現在の「バッチ時間」よりも2-3分大きい値に「バッチの継続」を設定する。
15.バッチを停止する。
16.ガスケットを萎める。
通常の装置の設定(ベンチ、プロセスおよび製造スケール装置)
乾燥温度:60〜65℃
出口空気温度:33℃まで
ブロアウト圧:5バール
噴霧圧:1.5〜2.0バール
ブローバック ドウェル:噴霧後1、噴霧中2
ファンの容量:運転の開始時5、凝集が明らかになった後6
マグナヘリックス(Magnahelics):フィルター抵抗 150〜250、有孔制御板抵抗 50まで、空気容量:50未満
【0127】
実施例2
DPMの不可欠の部分としての重炭酸ナトリウムの添加
上記のように、粉末化培地の貯蔵において、脱ガスおよび緩衝剤能力の問題が生じる可能性があるために、通常、ボールミルまたは凍結乾燥による製造中にDPMに重炭酸ナトリウムは添加しない。この標準的な製造プロセスは、従って再溶解の際に、重炭酸ナトリウムの添加とpHの調整を必要とする。この方法では、これらの付加的段階は製造中に粉末化培地に直接重炭酸ナトリウム(または任意の緩衝剤塩)を添加することによって回避してもよい。
【0128】
DPM内に重炭酸ナトリウム重炭酸ナトリウム(または任意の緩衝剤塩)を含める2つの仕方がある:(a)注入装置を介する(b)DPMの一部として
【0129】
(a)注入装置
重炭酸ナトリウムの溶解度および通常の哺乳動物細胞培養培地に一般的に添加する必要量の点から、粉末には、かなり大容量の液体を注入する必要がある(上記の35 mlの水よりも著しく多い)。これはまだ可能であり、事実、例えば血清の場合のように、もしもDPMに添加されるために同様に比較的大容量の液体を要する他の成分を添加するならば好ましい。この場合、DPMが装置の中で固まらないことを確実にするために、連続して液体を添加すること、および乾燥させること等に何回も注意を払わなければならない。1分間、1分あたり6 mlを使用すること、ついで2分間乾燥させることがほぼ正しい。
【0130】
添加する液体の量は、次のように決められる。75 g/Lの重炭酸ナトリウムの水溶液を調製する。例:チャンバー内の凝集されるDPM250 g。1X液体培地の1Lに10 gのDPMが必要であると仮定。従って、250 gは25Lの1X液体培地を示す。液体の各Lに対して、2 gの重炭酸ナトリウムが必要と仮定(例えば)。これは50 gの重炭酸ナトリウムが必要であることを意味する。重炭酸ナトリウム溶液は75 g/Lであるので、250 gのDPMに0.67 Lの重炭酸ナトリウム溶液を添加しなければならない。
【0131】
重炭酸ナトリウム溶液のpHは〜8.00で、これは培地成分を分解するため、サイクルの間の乾燥時間を長くする必要があることを除き、上と同様に、「通常のDPMの凝集」のプロセスと同様に重炭酸ナトリウムを添加する。サイクル間の重炭酸ナトリウム粉末の完全な乾燥のための十分な時間を与えないで、あまりに早く重炭酸ナトリウム溶液を加えることによって、粉末が決して「浸され」ないことが重要である。また、水分は、緩衝剤容量の損失と、粉末がフォイルパケット(foilpacket)中にあるならば、「枕」の形成の原因になる二酸化炭素の放出をもたらすので、できるだけ低い最終の水分含量であることが重要であり、従って長い液体乾燥時間が必要である。
【0132】
(b)DPMの一部として
流動床処理に先立って、他の培地成分と同様な仕方で重炭酸ナトリウムをDPM中に粉砕できる。しかし、粉砕の過程で、重炭酸塩は最後の成分として添加されねばならない。すべての他の培地成分は、通常通り粉砕されるべきで、ついで粉砕を停止し、最後に重炭酸塩を加え、適切な粒子サイズまでさらに粉砕する。すべての粉砕後処理は、操作上可能な限り低く(〜20から40%)設定された湿度が管理された環境で行うべきである。ついで、粉砕後、できるだけ早く流動床処理を行うべきである(もしも同日に処理しないならば、DPMは二重にラップし、水分吸着剤を入れた密閉容器内に入れる)。
【0133】
流動床プロセス自身は、水の注入(〜6 ml/分)後の乾燥時間が再度延長(水の注入1分で2分の乾燥サイクル)すべきことを除いて、上記の例と同様(DPM 500 g当たり35 mlを使用)に行われる。フェノールレッドが存在するために、DPMの色は深紅-明るい紫になることに注意すること。DPMは本質的に水分を含まないので、これは、分解状態を示すものではなく、また流動床処理が必須である理由を示す。
【0134】
実施例3
緩衝塩(例えば重炭酸ナトリウム)を含み、使用者の努力なしに、再溶解した(IX)培地のpHが自動的に所望のpHになるように配合されるDPM
上記のように、商業的に利用できるすべての哺乳動物細胞培養粉末培地は、溶液が適切なpHになるようIX液を調製する時に、1つまたはそれ以上の緩衝塩(例えば重炭酸ナトリウム)を加え、pHを調整する必要がある。しかし本法は、重炭酸ナトリウムの添加(上記実施例2に示したように)およびpHの調整の必要を省く。本発明のこの態様において、1つまたはそれ以上の緩衝塩を含む乾燥粉末培地に、酸または塩基を導入する(必要に応じて)ために流動床技術が用いられる。本発明のこの態様に従って、最終的に再溶解される細胞培養培地中の所望のpHと緩衝能力によって、任意の緩衝塩またはその組み合わせ、および任意の酸または塩基を使用してもよい。
【0135】
もしも、重炭酸ナトリウムがDPMに粉末として直接加えられるならば、末端の使用者は単に水を加え、混合するだけで、既に重炭酸(上記参照)を含み、適切なpHの溶液を作ることができる。先ず、どれほどのpH調整が必要かを測定する必要がある。(1)ビーカーに1Lの水を入れる。DPMを液体に加え、混合する。1L当たり加える量は、その粉末の仕様によって与えられている。例えば、10 g/L、13 g/L)。この場合、重炭酸ナトリウムの重量は1L当たりいくら加えるかの決定において考慮しなければならない。(2)粉末を溶解後、5NのHCLを加え、溶液を所望のpHに調整する。その量を記録する。(3)この数を1NのHCLの量に換算する。凝集すべき全体の粉末の調整に必要な1NのHCLの量を計算する(例:IX培地の1Lを、未調整のpH7.9からpH 7.2に調整するために、1NのHCLが5 ml必要である。これは1X培地の1Lは、例えばDPM13.0gであることを示す)。従って、DPM各13.0gに対して、5 mlの1NのHCLが必要である。もしも、250 gのDPMのpHを調整を望むならば、pHを自動的に調整するために、250÷13=19.2×5 ml、即ち96 mlの1NのHCLを粉末に加える必要がある。
【0136】
この1NのHCLをDPMに加えなければならない。その最良の方法は、水の代わりに1NのHCLを加える注入装置を使うことである。一般的に次の点を除いて、プロトコールは上記と同じである:(1)1NのHCLは重炭酸ナトリウムを含む培地にゆっくりと加えなければならない。あまり速く加えると、二酸化炭素が外れ(drive off)、緩衝能力が至適以下になる。一般に必要な1NのHCLの容量のために、数回1分間オン(on)し、2分オフ(off)するサイクルが必要である。DPMは液体プロセスの性質を有するが、実際には乾燥粉末であるような動的なシステムが存在するように、各サイクルの終わりに粉末状態が得られなければならない(粉末はいつも本質的に乾燥しているが、システム内の連続的な蒸発のために、HCLが粉末に加えられるに従って、バルクの色が暗赤紫から明るい黄オレンジ色に変化する)。HCLの総量は本質的に中性のpHになるように計算されているので、流動床が適切に調整されている限り(上記を参照;運転中のチャンバー内の粉末粒子に位置)、粉末は「酸」の状態に実際に曝露されることは決してない。すべての粉末をがシステムを通って動き(即ち、連続的に揚がり、凝集し、沈む)、チャンバー内に「死んだ」領域がないことを確認することが重要である。
【0137】
運転後、粉末が集められると、それが適切な「乾燥」した包装および場所に保存されている限り、水に加えることができる。pHの調整は必要ない。従って、本発明は自動的なpH調整粉末培地を提供し、乾燥粉末培地を再溶解して作られる液体培地のpH調整の必要はない。
【0138】
実施例4
DPMそれ自身内に血清、アルブミン、Hy-Soy等の大きな分子量の添加物を含める
これまで、血清を含んだ乾燥粉末培地は商業的に利用されていない。発明者等は本法を用いて(流動床および噴霧乾燥技術により)、機能性(細胞培養)が維持された仕方で粉末に血清を加えることに成功した。
【0139】
流動床装置の注入装置は血清および濃縮アルブミンの霧を作ることができる。このような仕方でDPMに加えられ、乾燥された血清が機能性であるか否かを検討した。
【0140】
血清添加の手順:(1)凝集させる標準DPMの量を測定する。(2)これから、特別な粉末に対するg/Lに基づいて、1gの粉末を作る1X培地の容量を計算する。(3)所与の添加物率レベルで必要な血清の量を計算する(例えば、10 g/Lに使用される100 gの粉末は10Lと等量の粉末を与える)。5%の血清の添加物率において、注入装置によって500 mlの血清の添加が必要である。
【0141】
血清の添加のプロトコール:血清とアルブミンは非常に粘度が高い。ノズルの噴霧パターンを液滴サイズとパターンに関してチェックしなければならない。粉末に添加する溶液中の試料チューブを用いて、ボール紙または他のバックドロップ(backdrop)に対して噴霧を試験する。均一性と小さな液滴サイズをチェックする。もしも「霧」でなければ、噴霧圧を0.5バールだけ上げて、再度試験する。十分な圧力になって細かい霧のパターンが得られるまでこれを行う。
【0142】
細胞培養適用に使用するために、1X培地1L当たりに使用すべき血清DPMの1 ml当たりの重量を知る必要がある。このために、乾燥中に血清を保持するバイアルまたはチューブを正確に秤量する。このバイアルのそれぞれに、(知られた)一定量の血清を入れる。ついで、バイアルをスピードバック(Speed Vac)または凍結乾燥器に入れ、乾燥するまで水分を除く。ついで、今度は凍結乾燥された血清を含んだバイアルを再度秤量する。血清の重量を計算し、元の容量のml当たりとして表す。1L当たり使用するための、血清を含む凝集したDPMの重量は、従って、標準DPM「使用」重量と所与のレベルでの血清の重量の和である。
【0143】
例えば、培地A(DPM)が10 g/lで使用されると仮定する。血清の添加物は5%v/vであるべきである。これは標準DPMの重量に加えて、血清の重量は5%に等しく、これは培地の1L当たりの加える50 mlに等しい。血清粉末が0.06 g/mlであると仮定する。従って、粉末化血清の重量は50 x 0.06 g/L=3 gである。従って、1Lの水に加えるべき血清を含むDPMの重量は血清粉末の重量(3 g)と標準DPMの重量(10 g)の和=13 g/lである。
【0144】
実施例5
DPM製造時の粉砕技術(成分をミクロンサイズの粒子に壊す高エネルギーインプットシステム)の低減または排除
上記のように、通常乾燥粉末培地は粉砕工程で生産されるが、これには労力を要し、また多くの問題がある。本発明の方法は、これらの労力および技術上の制約を克服する流動床技術を用いる乾燥粉末培地の製造を提供する。
【0145】
A. 先ず外部装置中で混合後、流動床で処理
通常、粉砕されたGPMは、重炭酸ナトリウム(追加のボールミルは必要なく、供給者から受け取ったまま直接)と混合される(重炭酸ナトリウム2g/Lで、RPM 1640)。この混合物を20分間混合する。粉末を流動床チャンバー内に置き、上記のように自動pH制御で、重炭酸ナトリウムを含む培地に対して流動化される。
【0146】
B.流動床チャンバー内に直接混合後、凝集する
重炭酸ナトリウムを粉砕GPMと共に直接チャンバー内に置き、短時間混合し、ついで凝集する。これによって別のユニットでの混合が省略できる。
【0147】
C.ボールミル工程全体の排除
DPM化学品のすべてを直接流動床チャンバーに加え、予備的に混合後、凝集するか、いくつかのより粗い「粘着物」等を回転粉砕機で短時間粉砕処理後、混合と最終の凝集のために流動床内に置く。
【0148】
実施例6
同じDPM内に上記のすべての特性を有する方法
本発明者らは、「貯蔵寿命期限切れ」の重炭酸ナトリウムの粉砕したDPMへの添加と自動pH制御を組み合わせた。
【0149】
自動pH制御を用いて、血清を重炭酸ナトリウムを含むDPMと組み合わせるための1つのプロトコールは:
1. DPM(粉砕された)に炭酸ナトリウム(供給者からの粉末)を加える。
2.成分を混合する(外部ユニットまたは流動床のいずれかで混合)
3.別の容器中で、1LのDPM(重炭酸ナトリウムを含む)を水(IX)で再溶解し、溶液のpHを7.5に調整するのに必要な1N HCLまたは1N NaOHの量を決定する。リットル基準で、凝集される粉末の量を知ることによって(つまりL等量)、上記の計算量で凝集される全部の粉末についての1N HCLまたは1N NaOHの量を計算する。この量を流動床装置を介して加える(注入ノズル)。(DPMは「液体」でないが、水分が工程に含まれているので、血清を加えた時に、重炭酸塩が遊離するような酸性のpHではなく、できるだけ中性に近い粉末であることが重要である。pH7.6またはそれ以上では、重炭酸ナトリウムの濃厚溶液はCO2を発生しないが、より低いpHでは、CO2ガスを発生する。)
4.添加物の割合と凝集されるgに基づく、血清の添加。
5.上記(3)からの同じ1Xの1Lを用いて、所望のpHにpHを調整するのに必要な1N HCLまたは1N NaOHの量を決定する(例えば7.2)。この情報を使って、血清で凝集した粉末の重量に使用される量を計算する(g/Lの仕様を知って)。この量を流動床装置を介して加える(注入ノズル)
6.粉末培地を滅菌するためにγ線照射が用いられる。
【0150】
類似した方法で、DPMの特別な量を粉末化血清の特別な量と組み合わせ、混合物を凝集して血清含有DPMを製造してもよい(下記の実施例8に記載したように、例えば噴霧乾燥を用いて調製される)。例えば10%の粉末化FBSを含む培地の調製には、55.5 gの粉末化FBSを500 gの粉末培養培地に加え、粉末を攪拌によってよく混合する。ついで、この混合物はついで、上記のように水で凝集され、再溶解によって、自動pH調整の可能性がある10%のFBSを含む培養培地が得られる。
【0151】
実施例7
流動床処理による100%血清粉末の製造(噴霧乾燥を刺激するための)
方法
1)ベンチトップ実験室流動床装置(Strea-1)を使用した。粉末化血清の製造には、チャンバー内には何も置かない。ユニットを遮蔽するためにレバーを用いる。
【0152】
2)注入装置によって、血清を加えた(噴霧ユニット)。血清がチャンバーに加えられるに従って、空気流を十分に増した。血清の流れは、水の蒸発が起き、チャンバー中で瞬間的に粉末が形成されるように血清が十分乾燥したことを示した。水分または液体のコーティングはチャンバー内になかった。
【0153】
3)ポンプの速度はチャンバー内に1 ml/分まで許容するように設定した。
【0154】
4)空気流は〜8から9に設定した。
【0155】
5)間欠的にフィルターを清浄するために、ファンの速度を〜2から3に低減した。これを5〜10分毎に定期的に行った(8〜9の空気流の設定は高すぎて、フィルターは粉末をブローオフ(blow off)せず、清浄しない)。
【0156】
6)1回のフィルターのブローオフ後、ファンの速度を以前のレベルに増し、ポンプを始動した。一度、これらのパラメーターを設定すると、フィルターの清浄が指示された時以外はポンプを連続的に運転した。
【0157】
7)凝集器に血清液の全てを加えた後、5分間最後の乾燥を行った。
【0158】
8)ついで、フィルターをブローオフして、できるだけ多くの粉末を集め、機械を停止し、製品を取り除いた。粉末化血清を気密容器に入れ、光から遮断した。
通常の装置の設定
乾燥温度:60〜65℃
出口空気温度:33℃まで
ブローアウト圧:5バール
噴霧圧:2.0〜2.5バール
ブローバックドウェル(Blow back dwell):噴霧間、2
ファンの能力:運転中8〜9
マグナヘリックス(Magnahelics):フィルター抵抗150〜250、有孔制御板抵抗〜50、空気容量50未満
【0159】
FBSの凝集がタンパク質の構造または分布に影響したか否かを決めるために、凝集したFBSと液体FBSの試料をSDS-PAGEに架け、タンパク質を染色し、光学密度法でスキャンした。図1に示すように、本法(図1A)によって調製した凝集FBSは、液体FBS(図1B)で観察されたのと略同じタンパク質のプロフィルを示した。これらの結果は、本法による乾燥FBSの制御された製造が、血清の主要成分の構造または分布に顕著に影響をしないことを示す。
【0160】
FBSの凝集が細胞の増殖と継代を支持する能力に影響したか否かを決定するために、SP2/0細胞を2%の凝集した(乾燥)FBSまたは2%の液体FBSのいづれかを含むDMEM中に平面培養し、増殖速度と継代回復を検討した。図2Aに示したように、凝集したFBSを含む培地に平面培養した細胞は、液体FBSを含む培地に平面培養した細胞と類似した増殖の動態を示した。同様に、凝集したFBSを含む培地中の細胞は、液体FBS(図2B)を含む培地中の細胞の増殖と実際上同じ増殖速度で継代から回復した。これらの結果は共に、本発明の凝集FBSは培養細胞の増殖と継代を支持することにおいて、液体FBSと略等価な性能を有することを示す。
【0161】
実施例8
噴霧乾燥による100%血清粉末の製造
流動床処理の代替法として、噴霧乾燥技術による乾燥粉末化血清の製造の可能性を検討した。乾燥粉末化血清を調製するために、直径3フィートの実験室噴霧乾燥器(Mobile Monitor Spray Drier;NIRO,Columbia,Maryland)を用いた。液体FBSを噴霧乾燥器に吸引し、空気ディスペンサー(air dispenser)の中央に位置するSchlick 940ノズルを通して噴霧し、乾燥空気を装置の最上部の空気ディスペンサーを通して噴霧器に導入した。噴霧乾燥は、次の条件下で行った:入口空気温度=200℃; 出口空気温度=70℃;、ノズルの噴霧空気圧=2.0バール、空気流=80.0kg/時間、噴霧速度=65 g/分。これらの方法を開発中に、最初60℃の出口温度を用いた;しかしこの温度はあまりに低いことが判ったため、噴霧速度を、至適な出口温度であることが判った約70℃を達成するためのレベルに、調製し直した。噴霧乾燥後、粉末化血清を装置のサイクロンで集め、プロセス空気を装置内で再循環する前に、排気フィルターを通して濾過した。
【0162】
製造後、粉末血清を物理的性質に関して特性化し、同じロット源(AとB)の液体FBSと比較した。製造ロットの異なる段階から採った試料(試料Aと試料B)をエンドトキシンを含まない蒸留水(Invitron Corporation)中で60.44 g/Lに再溶解し,Limulus Amoebocyte Lysate test(Invitrogen Corporation)を用いてエンドトキシンレベル、ヘモグロビンレベル(525 nmの吸収を測定する分光光度法およびUV/Vis分光光度法により)を検討した。結果を表1および図3Aおよび3Bに示す。
【0163】
(表1) 粉末血清の物理的性質
【0164】
表1に示すように、粉末FBSは、粉末FBSの製造の原料として用いられた、液体FBSと類似したエンドトキシンレベルとヘモグロビンレベルを示した。更に、製造工程の異なった段階から採った試料は、略同じエンドトキシンレベルとヘモグロビンレベルを示し、これは本法が製造ロットを通して、略均一な物理的一貫性のある物質の製造をもたらすことを示している。粉末および液体のFBSの試料をUV/可視光分光光度法で検討し(図3)、粉末FBS(図3A)に観察された微量成分は源の液体FBS(図3B)で得られたものと区別できなかった。これらの結果はともに、本噴霧乾燥法によって調製した血清粉末は、粉末がそれから調製された液体血清と、略同様な物理特性を有することを示している。上記の実施例7(例えば図1参照)の結果と併せ、これらの結果は、本発明が提供する方法が、源の液体FBSから変化していない物理特性を有する、粉末血清の製造をもたらすことを示す。
【0165】
実施例9
自動的にpH調整された培養培地の製造
粉末培地に重炭酸ナトリウムを決して含めない1つの理由は、空気中の水分でさえ、CO2が遊離する原因となるパウチ(pouch)の酸性条件をもたらす可能性があるからである。パウチは膨張し「枕」と呼ばれるものを作る。流動床処理では、装置内の水分は、工程の終了に先立って、本質的に無視できるレベルに低減される。発明者らは、重炭酸ナトリウムを含むRPMI-1640を作ったが、「枕」の形成の証拠は見られなかった。
【0166】
pHが調整された粉末培地を作るために、水に加えた際のpHが、約7.0〜7.4になるように、粉末にpH調整化学物質(通常HCLまたはNaOH)を加える必要がある。一度、重炭酸ナトリウムが粉末に加えられると、多くの粉末培地は水の中で中性の塩基側で再溶解し、HCLの添加を要する。重炭酸ナトリウムを含む粉末にHCLを添加することに問題があることが予想される。しかし、添加した液体(この場合、5 N HCL)は流動床装置内部で水分を含んだ状態または「液体」状態をもたらさないので、重炭酸ナトリウムはCO2ガスを放出せず、その緩衝能力を完全に維持する。これについて、本試験でpH滴定実験によって検討した。2つの独立した試験で(図4Aおよび図4B)、等量の酸は、再溶解時に、液体に加えられる重炭酸ナトリウムを含む標準培地と同じ量で、凝集培地および自動的にpH調整された凝集培地のpHを低下することを見出した。これらの結果は、その後のpHの調節による凝集、および凝集工程中のpHの調整による凝集は、顕著な緩衝能力を有する粉末培養培地の製造に同等に機能することを示す。
【0167】
実施例10
培養培地の溶出速度に対する凝集の影響
培養培地の凝集の培地の溶出速度に対する影響を検討するために、Opti-MEM I(商標)はたはDMEMを水またはFBS(Opti-MEM I は2%だけ、DMEMは2%または10%)で凝集した。凝集培地の水の中での再溶解時に、凝集Opti-MEM Iの溶出時間は、標準粉末Opti-MEM I(図5A)の溶出よりもより速く起きた;結果は水およびFBSで凝集したOpti-MEM Iで同じであった。水で凝集したDMEMは、標準粉末DMEMよりもより速く水に溶出したが、FBSで凝集したDMEMはそうでなかった(図5B)。
【0168】
凝集粉末培地の開放構造のために(従来の粉末培地と反対に)、毛細管作用がすべての粉末粒子の極く近くに水を運ぶ。これが、溶出時間を長くする、最も標準的な粉末培地の再溶解で観察される厄介な問題である粉末の「球」の出現を防止する。より速い溶出に加えて、凝集培地はまた埃の発生も低減した。これらの結果は、水で凝集した培養培地およびFBSで凝集した培養培地のいくつかは、はるかに速く溶出し、従来の粉末培養培地よりも埃の発生が少ないことを示している。
【0169】
実施例11
再溶解した凝集培養培地中での細胞増殖および継代培養
培養培地の使用の多くで、血清またはアルブミンのような高分子の添加が必要である。これらの分子は溶液の形であってよく、またはアルブミンの場合は粉末であってもよい。しかし、粉末培地の均質性を確保するために、これらのタンパク質は通常粉末としてではなく、バルク粉末培地の再溶解後に、液体培地に液体として加えられる。これには、例えば性能を長期に亘って維持するために、血清を冷蔵庫に貯蔵しなければならないような、幾つかの不便がある。これは、汚染の機会を増し、血清が無菌で加えられなければならないために、経費と不便が増す。血清の添加後に濾過を行うと、他の処理段階が必要になる。従って、血清を粉末培地の必要不可欠な部分として提供することができるという利点がある。
【0170】
従って、培養培地を水または各種の濃度のFBSで凝集した。上に一般的な概要を示したように、高い蒸発率で、空気で懸濁した乾燥粉末培地にFBSを注入することによって、FBSを粉末培地に加えた。血清の添加物率はOpti-MEM I 培地では2%、DMEM培地では2%または10%であった。これらの培地中の各種の細胞系の増殖と継代成功をその後評価した。
【0171】
図6に示したように、SP2/0細胞は、従来の培養条件下(水で再溶解した粉末培地に添加された液体血清)で生育した細胞と比べて、水またはFBS(図6A)のいずれかで凝集したOpti-MEM I 培地で生育した時、類似した増殖率を示した。2%のFBS(図6)で添加物し、水またはFBSで凝集したDMEM中で培養したSP2/0細胞で、また10%のFBSで添加物し、水およびFBSで凝集したDMEM中で培養したSP2/0細胞(図7A)、AE-1細胞(図7B)およびL5.1細胞(図7C)で同様な結果が観察された。更に、SP2/0細胞は、10%のFBS(それぞれ図9A、9B、および9C)で添加物し、水およびFBSで凝集したDMEM中で培養したSP2/0細胞、AE-1細胞およびL5.1細胞および5%のFBS(図10)で添加物し、水で凝集したDMEM培地中で培養したSP2/0細胞と同様、2%のFBS(それぞれ図8Aおよび8B)で添加物し、水で凝集したOpti-MEMおよびDMEM中で培養した時、略同様の継代からの回復率を示した。更に、SP2/0細胞は、5%のFBS(図10)で添加物し、標準DMEM中と同様、大規模バッチで、且つ重炭酸ナトリウムを含む自動pH調整粉末DMEM中で作られた、水で凝集した培地中で同一の継代特性を示した。
【0172】
これらの結果は共に、動物血清(例えばFBS)のような培養培地添加物は直接培養培地中に凝集されてもよく、このような仕方の凝集過程中の培養培地の添加物は各種の培養細胞の増殖と継代の至適な支持を提供する培養培地を作る。更に、これらの結果は、本培養培地粉末が大規模のバッチで、重炭酸ナトリウムを含む本発明の自動pH調整培地を含んで、成功裏に製造できる可能性がある。
【0173】
実施例12
噴霧乾燥血清粉末で添加物した培養培地中の細胞の増殖
実施例7に示した実験の結果として、実施例8に記載したように調製した2%または10%の噴霧乾燥FBS、または2%または10%の液体FBSを含むDMEMに平面培養し、細胞の増殖速度と継代回復を検討した。細胞は培地10 ml中に1 x 105の密度で3重の25cm2のフラスコに接種した。生きた細胞密度を3日目から7日目に測定し、各細胞系を2回試験した。結果を図11〜13に示した。
【0174】
図11に示したように、粉末FBSを含む培地中で培養したAE-1細胞は標準液体FBSを含む培地中で培養した細胞と類似した増殖動態を示した。予想したように、10%のFBSを含む培養培地中では、2%のFBSを含む培地中よりも高い密度により速い増殖を示し、約4日目までに増殖のピークを示した。2つの独立した実験(図11Aと11B)に対して同様の動態が観察され、これはこれらの結果が再現性があったことを示している。類似した結果が粉末FBSまたは液体FBS(図12Aと12B)を含む培地中でSP2/0細胞の増殖速度が測定された2つの実験で得られた。更に5%の粉末FBSを含む培地中で培養したAE-1細胞は液体FBS(図13)を含む培地中の細胞と同じ増殖速度で継代から回復した。
【0175】
これらの結果は本発明の噴霧乾燥法で調製した粉末FBSは培養細胞の増殖と継代を液体FBSと略等価に支持することを示す。実施例7と8の結果と共に、これらの結果は本発明の方法を、液体FBSと略同一の物理的特性と性能特性を示す粉末FBSを流動床または噴霧乾燥技術で製造するのに用いることができることを示している。
【0176】
実施例13
凝集培地の性能に対する照射の影響
最近、特にバイオテクノロジー産業において、バイオ生産に使用する培地および培地成分(添加物を含む)の生物学的純度についての関心が挙がっている。γ線照射は通常熱または毒性ガス曝露に馴染まない一定の液体および粉末によく作用することが知られている。従って、水またはFBSで凝集した培養培地をコバルト線源で25 kGyで数日間γ線照射し、各種の細胞型の増殖速度を検討した。
【0177】
1つの実験の組では、SP2/0細胞を1 x 105細胞/mlで各種培地に接種し、37℃で培養した。各種の間隔で、試料を無菌的に取り、細胞数をCouler計測で、増殖力をトリプタン青の排除で測定した。1X溶液を作るために十分な粉末培地を水1Lに溶解し、攪拌し、0.22μmのフィルターを通して濾過して培地を調製した。結果を図14のグラフに示す。グラフ上に「粉末FBS」と表示したそのような条件は粉末FBS(上記の実施例7または8のように調製した)を標準粉末培地または凝集した培地(照射または非照射)のいずれかから調製した再溶解された1Xに加えることを意味する。グラフ上の「照射、凝集DMEM+FBS」と表した条件はFBS凝集培地を作るためにFBSを粉末培地(標準または凝集)中に噴霧することによって、凝集培地を作るために流動床を用いることを意味する。
【0178】
図14に示したように、標準粉末基礎培地および凝集基礎培地のγ線照射はSP2/0細胞の増殖を支持するこれらの培地の能力に悪影響を及ぼさなかった。更に、照射は粉末FBSを含む粉末培地および粉末FBS自体への悪影響もなかったが、この作用は血清濃度の増加とともに減少した。
【0179】
これらのγ線照射の作用をより広範に検討するために、VERO細胞の試料を上記のように従来通り再溶解または凝集したVP-SFM(商標)に接種した。凝集チャンバー中の粉末培地に、これらの培地の伝統的な添加物である上皮成長因子(EGF)およびクエン酸鉄キレートを凝集中に噴霧ノズルを介して加えた。ついで培地を直接使用し、または上記のようにγ線照射した。細胞を3 x 105細胞/フラスコでT-25フラスコに接種し、37℃で培養した。上記のように細胞数および増殖率を測定し、結果を図15に示した。
【0180】
図15に示すように、VERO細胞はγ線照射した凝集培地中で培養した時、γ線照射されていない凝集培地とほぼ同等の増殖を示した。更に、培地の照射は培地中に存在する低濃度の添加物EGFおよびクエン酸鉄キレートに影響しなかった。
【0181】
これらの結果から、γ線照射を、血清, EGFまたは他の添加物を含む本法による多くのバルク凝集培養培地の調製における滅菌技術して用いてもよいことを示す。
【0182】
実施例14
粉末培地添加物の性能に対する照射の影響
滅菌培地添加物の製造における本法の有効性を示すために、凍結乾燥ヒトholo-トランスフェリンを-70℃または室温でコバルトγ線源に25 kGyで約3日間曝露することで照射した。ついで293の細胞を照射したトランスフェリンまたは照射されない対照のトランスフェリン(-70℃または室温で貯蔵された)で添加物した培地中で培養し、細胞の増殖を、標準のトランスフェリンを含む培養培地またはトランスフェリンを含まない培地の増殖と比較した。
【0183】
血清を含まない293培地(293 SFM)中で増殖しているmid-log相の293細胞を収穫し、200 x gで5分間1回洗浄し、計測と増殖率測定のためにトランスフェリンを含まない293 SFM中に再懸濁した。細胞を293SFM(陽性対照)、トランスフェリンを含まない293SFM(陰性対照)、-70℃または室温で貯蔵した非照射トランスフェリンまたは上記のように調製した照射トランスフェリンを含む293 SFM中で、20 mlの容量中3 x 105の密度で、三重の125 mlのエーレンマイヤーフラスコ中に平面培養した。フラスコを8% CO2/92%空気の雰囲気で平衡した37℃の培養器中で約125rpmに設定した回転振蕩器に入れた。毎日の細胞数の計測はCoulter粒子計測器を使用して測定し、増殖率は標準手順に従って、トリプタン青排除法によって測定した。細胞がフラスコ当たり、約1.2から1.7 x 106の密度に達した時、各試料の1つのフラスコのそれぞれの内容を収穫し、遠心し、新鮮な培地に再懸濁し、3個の新しいフラスコに継代した。ついで。前継代および次継代の細胞数および増殖率の測定を上記のように行った。上記の条件下で培養した細胞の4つの連続的継代を試験した。
【0184】
図16A〜16Dに示したように、-70℃または室温でγ線照射したトランスフェリンを含む培地中で培養した細胞は、標準293SFMまたはγ線照射していないトランスフェリンを含む293 SFM中で培養した細胞と同様、第一継代(図16A),第二継代(図16B)、第三継代(図16C)および第四継代(図16D)において、略同じ増殖動態と生存を示した。トランスフェリンを含まない培地中で培養した細胞は、第一継代(図16A)中はよく生存したが、継代培養(図16B)で増殖を停止し、増殖率の顕著な損失を示した。
【0185】
これらの結果は、γ線照射を本発明の方法において、トランスフェリンのようなバルクの粉末培養培地添加物の調製における滅菌技術として用いても良いことを示す。更に、これらのデータは、トランスフェリンのような培養培地添加物を活性の顕著な損失なく室温でγ線照射できることを示す。
【0186】
実施例15
粉末化血清の生化学的特性に対する照射の影響
血清への照射の影響をさらに測定するために、噴霧乾燥粉末FBSを-70℃または室温で25 kGyで照射し、血清中の各種の生化学構成物の濃度を商業的に分析した。対照として、非照射噴霧乾燥FBSおよび液体FBSも分析した。結果を表2に示す。
【0187】
(表2) 噴霧乾燥FBSの化学解析
構成物;乾燥FBS;-70℃にて照射、乾燥FBS; 室温にて照射、非照射乾燥FBS;液体FBS;単位;参考範囲
【0188】
これらの結果は、γ線照射工程は、FBSの殆どの生化学成分の濃度に顕著に影響しないことを示している。これらの結果はまた、噴霧乾燥時に、FBSのいくつかの成分(アルカリホスファターゼ、ASTとLD、および多分グルコース)は出発物質の液体FBS中のそれらの濃度と比べて顕著な低減を受けることも示している。
【0189】
実施例16
粉末化血清の性能に対する照射の影響
乾燥粉末血清の細胞の増殖を支持する能力に対するγ線照射の影響を検討するために、種々の条件下で照射された粉末乾燥FBSを培養培地の試料に用い、培養培地を添加物し、付着細胞および懸濁細胞を、これらの培地中で3継代まで増殖させた。モデル懸濁細胞として、SP2/0およびAE-1のハイブリドーマ系を用い、典型的な付着細胞としてVEROおよびBHK培養を用いた。細胞を試験血清または対照血清(噴霧乾燥されたが、照射されていない)を含む培地中で、上記の実施例14で概説した一般手順に従って、3継代まで培養した。各継代点で、細胞を収穫し、継代培養し、アリコートのmL当たりの生存細胞数を上記のように計測した。各点での結果を、液体FBSで添加物した培地中で得られた生存細胞数の割合として表し、図17A、17B、17Cおよび17Dに示した。
【0190】
これらの試験結果から、いくつかの結論が得られる。第一に、FBSのγ線照射は、懸濁細胞および付着細胞の増殖を支持する噴霧乾燥FBSの能力を低下しないと思われる(各図で照射データセットを非照射データセットと比較のこと)。事実、BHK細胞(図17D)は、-70℃で照射された粉末FBSを含む培地中で、非照射血清中よりも実際によりよく増殖した。第二に、-70℃で照射された血清は、おそらくVERO細胞(図17C)を除き、細胞の増殖を支持する能力において、室温で照射された血清よりも良好であると思われる。最後に、これらの試験の結果は、細胞型に非常に特異的であった: 懸濁細胞(図17Aおよび17B)は付着細胞(図17Cおよび17D)よりも、照射または非照射の噴霧乾燥FBS中でよりよく増殖した: 付着細胞の中では、噴霧乾燥FBS中でBHK細胞(図17D)はVERO細胞(図17C)よりもよりよく増殖した。
【0191】
これらの結果は、本発明の方法において、FBSのようなバルク粉末化血清の調製での、滅菌技術として使用できることを示す。更に、上記実施例14でのトランスフェリンについての報告と異なり、これらのデータは、細胞の増殖を支持する血清の能力を維持するための、血清の照射の至適温度は室温未満であるらしいことを示唆している。
【0192】
実施例17および18
脂質(特にステロールと脂肪酸)は真核細胞の高密度培養に重要な栄養物である。乾燥形培地に脂質成分を含めることが技術的に挑戦されている。脂質の添加物は通常、粉末の再溶解と濾過後に、別に添加供給され、バイオ医薬製造設備中での、操作と誤りの機会を増す。Advanced Granulation Technology(AGT(商標))は顕著な利点のある新規な乾燥形培地形式である。単一の顆粒化培地内で、緩衝剤、成長因子および微量元素を含めるために、複合製剤のすべての成分が組み入れられている。得られた埃が少ない、自動pH製剤は単に水に加えるだけで、完全な再溶解されたIX培地が得られる。乾燥培地形式で使用可能な脂質をデリバーするために、AGT工程と共に、サイクロデキストリン技術およびナトリウム塩および脂質の水-アルコール溶液を使用をしてもよい。
【0193】
試験された脂質は、液体培地への無菌添加物として、または完全なAGT製剤の一部のとしていづれかとして供給されたコレステロールおよびいくつかの脂肪酸であった。対照は脂質を含まない培地を含んだ。使用した細胞系はコレステロール栄養要求性のECACC#85110503であった。細胞は、化学的に定義され、動物由来の成分を含まないCDハイブリドーマ培地中で培養された。GC分析結果は、AGT工程にサイクロデキストリン複合脂質形を組み入れると、濾過後の優れた脂質の利用性を示した。細胞の成長と増殖率は、AGT起源の完全な培地または脂質を添加物した対照の液体培地のいづれにおいても、同程度であった。両培地形式の最高細胞密度はバッチ細胞培養で3.5 x106細胞/mlに達した。例えばAGTのリポ酸のナトリウム塩のような塩の使用は、培養中の細胞に脂質をデリバーするのに有効であることが明らかになった。
【0194】
調製に関して、サイクロデキストリンを62.5%(水100 ml中に62.5 g)の濃度で水に溶解した。これはやや低く目に変え得るが、室温の水で、サイクロデキストリンの溶出は略最大に近づく。サイクロデキストリンが、脂質の分配(脂質との物理的複合化)を維持し、水の中で希釈してそれを溶液中に保つ能力は、サイクロデキストリン濃度に依存(IX培地中で0.125%またはそれ以上のサイクロデキストリン溶液が有利である)するので、脂質に対するサイクロデキストリンの比率をできるだけ高く維持するのが好ましい。ついで、水性細胞培養培地中に希釈した時に、所望の濃度になるような濃度で、脂質を直接サイクロデキストリン溶液に加えた。脂質は攪拌によって溶解させた。サイクロデキストリンへの脂質の直接の添加に加えて、サイクロデキストリンへの添加に先立って、脂質をアルコールに加えることも可能である(これは添加する脂質の量があまりに少なくて、それ自体の添加が物理的に問題である場合に望ましい)。得られたサイクロデキストリン・脂質溶液は極めて粘性であるので、上記サイクロデキストリン・脂質溶液を、使用の便宜上、例えば水で希釈するのが好ましい。そのような希釈によって、例えば500倍または250倍の濃縮物が得られる(当業者は、サイクロデキストリン・脂質溶液が希釈されるので、所望の脂質濃度を得るために、細胞培養培地により多量の容量を加える必要があることを評価するであろう)。
【0195】
細胞培養に重要な脂質の型:コレステロール(動物および植物関連)、リノレイン酸、リポ酸、アラキドン酸、パルミチン酸、オレイン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、リノレン酸、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、スフィンゴミエリン、カルジオリピン、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンK、プロスタグランジン、その他。
【0196】
サイクロデキストリン・脂質複合体を用いた細胞培養実験
(3日または4日毎に継代培養した細胞)
1=凝集工程(の一部として)中にサイクロデキストリン・脂質複合体の噴霧によって加えられた脂質を含むCDハイブリドーマ顆粒化(凝集)培地
2= 再構成後サイクロデキストリン・脂質補給添加物として加えられた脂質を含むCDハイブリドーマ培地
3=脂質が添加されていないCDハイブリドーマ培地
結論:サイクロデキストリン・脂質噴霧を使用する顆粒化技術によって供給された脂質は1X再構成培地に添加物として加えられたサイクロデキストリン・脂質を用いて加えられた脂質に匹敵する。
【0197】
理解を明確にする目的で、説明と実施例によって、本発明をやや詳細に、完全に記載したが、当業者には、本発明の範囲またはその態様に影響を及ぼすことなく、条件、配合および他のパラメーターの広範、且つ等価な範囲内で、本発明を修飾しまたは変更することによって、同じように実施できること、およびそのような修飾または変更は添付した特許請求の範囲内に包含されることは明らかである。
【0198】
本明細書に挙げたすべての出版物、特許および特許出願は、本発明が関係する技術における当業者の技術レベルを示し、あたかも、それぞれの個々の出版物、特許および特許出願が参考文献として組み入れるべく、特別に、且つ個別に指示されたかのように、同じ程度参考文献として、本明細書に組み入れられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
その中に溶解された少なくとも1つの脂質を含む溶媒を用いて栄養培地粉末、培地添加物粉末、栄養培地サブグループ粉末、または緩衝液粉末を凝集化する段階を含み、該溶媒が少なくとも1つの該脂質が該栄養培地粉末、培地添加物粉末、栄養培地サブグループ粉末、または緩衝液粉末へ取り込まれるよう送達される、凝集化栄養培地粉末、凝集化培地添加物粉末、凝集化栄養培地サブグループ粉末、または凝集化緩衝液粉末を生産する方法。
【請求項2】
凝集化する段階が流動床凝集化を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
溶媒が液相である、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
溶媒が固相である、請求項1または2のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
脂質が、改変されない場合と比較して溶媒中での溶解度が増加するように改変された脂質である、請求項1〜4のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
脂質が塩の形である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
脂質が1つまたは複数の水酸基を有する、請求項5記載の方法。
【請求項8】
脂質がシクロデキストリンと錯体を形成する、請求項1〜4のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
溶媒が混合液である、請求項1〜8のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
混合液が液体の混合物である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
混合液が少なくとも1つの極性溶媒を含む、請求項9記載の方法。
【請求項12】
混合液が少なくとも1つの非極性溶媒を含む、請求項9記載の方法。
【請求項13】
混合液が少なくとも1つの有機溶媒を含む、請求項9記載の方法。
【請求項14】
混合液が20%〜95%の有機溶媒を含む、請求項9記載の方法。
【請求項15】
混合液が、(a)少なくとも1つの極性溶媒および(b)少なくとも1つの有機溶媒または少なくとも1つの非極性溶媒からなる群より選択される少なくとも1つの溶媒を含む、請求項9記載の方法。
【請求項16】
混合液が、(a)少なくとも1つの極性溶媒および(b)少なくとも1つの有機溶媒または少なくとも1つの非極性溶媒が1%〜99%の割合の溶媒を含む、請求項15記載の方法。
【請求項17】
混合液が、少なくとも1つの有機溶媒または少なくとも1つの非極性溶媒を40%〜60%含む、請求項16記載の方法。
【請求項18】
混合液が、(a)少なくとも1つの極性溶媒を50%および(b)少なくとも1つの有機溶媒または少なくとも1つの非極性溶媒を50%含む、請求項16記載の方法。
【請求項19】
混合液が、水、ならびにジメチルスルホキシド、アルコール、エーテル、およびケトンからなる群より選択される少なくとも1つの溶媒を含む、請求項9記載の方法。
【請求項20】
混合液が、ジメチルスルホキシド、アルコール、エーテル、およびケトンからなる群より選択される少なくとも1つの溶媒を含む、請求項9記載の方法。
【請求項21】
混合液が約40%〜60%のエタノールを含む、請求項20記載の方法。
【請求項22】
混合液が約50%のエタノールを含む、請求項20記載の方法。
【請求項23】
溶媒が、非極性溶媒および有機溶媒からなる群より選択される少なくとも2つの溶媒の混合液を含む、請求項9記載の方法。
【請求項24】
送達が、制御された温度、制御された湿度、および溶媒の制御された分圧の少なくとも1つを含む条件下で行われる、請求項1〜23のいずれか一項記載の方法。
【請求項25】
脂質が、リノール酸、リポ酸、アラキドン酸、パルミチン酸、オレイン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、リノレン酸、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、スフィンゴミエリン、カルジオリピン、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンK、プロスタグランジン、およびステロールからなる群より選択される、請求項1〜24のいずれか一項記載の方法。
【請求項26】
ステロールが植物または動物ステロールである、請求項25記載の方法。
【請求項27】
ステロールがコレステロールである、請求項25記載の方法。
【請求項28】
請求項1〜27記載の方法に従って調製される、凝集化栄養培地粉末、凝集化培地添加物粉末、凝集化栄養培地サブグループ粉末、または凝集化緩衝液粉末。
【請求項29】
(a)溶媒を用いて請求項28記載の凝集化粉末を再構成し、溶液を形成する段階、および(b)細胞の培養に好ましい条件下で、細胞を溶液に接触させる段階を含む、細胞を培養する方法。
【請求項30】
細胞が、細菌細胞、昆虫細胞、酵母細胞、線虫細胞、鳥類細胞、両生類細胞、爬虫類細胞、および哺乳動物細胞からなる群より選択される細胞である、請求項29記載の方法。
【請求項31】
細胞が哺乳動物細胞である、請求項29記載の方法。
【請求項32】
細胞が、CHO細胞、COS細胞、VERO細胞、BHK細胞、AE-1細胞、SP2/0細胞、L5.1細胞、PerC6細胞、293細胞、およびハイブリドーマ細胞からなる群より選択される、請求項31記載の方法。
【請求項33】
哺乳動物細胞がヒト細胞である、請求項31記載の方法。
【請求項34】
非凝集化栄養培地粉末と比較して粉塵が減少した、請求項28記載の粉末。
【請求項35】
非凝集化栄養培地粉末と比較してより完全な溶解度を有する、請求項28記載の粉末。
【請求項36】
非凝集化栄養培地粉末と比較して不溶性物質の少ない、請求項28記載の粉末。
【請求項37】
非凝集化栄養培地粉末と比較してより早く溶解する、請求項28記載の粉末。
【請求項38】
栄養培地粉末が血清を含まない、請求項28記載の粉末。
【請求項39】
栄養培地粉末が哺乳動物成分を含まない、請求項28記載の粉末。
【請求項40】
栄養培地粉末が動物成分を含まない、請求項28記載の粉末。
【請求項41】
3、4、7、10、14、28、30、60、または90日目における細胞の増殖が、脂質を添加した液体培地における同一時点の細胞の増殖と比較して50%〜120%である、請求項29記載の方法。
【請求項1】
その中に溶解された少なくとも1つの脂質を含む溶媒を用いて栄養培地粉末、培地添加物粉末、栄養培地サブグループ粉末、または緩衝液粉末を凝集化する段階を含み、該溶媒が少なくとも1つの該脂質が該栄養培地粉末、培地添加物粉末、栄養培地サブグループ粉末、または緩衝液粉末へ取り込まれるよう送達される、凝集化栄養培地粉末、凝集化培地添加物粉末、凝集化栄養培地サブグループ粉末、または凝集化緩衝液粉末を生産する方法。
【請求項2】
凝集化する段階が流動床凝集化を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
溶媒が液相である、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
溶媒が固相である、請求項1または2のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
脂質が、改変されない場合と比較して溶媒中での溶解度が増加するように改変された脂質である、請求項1〜4のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
脂質が塩の形である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
脂質が1つまたは複数の水酸基を有する、請求項5記載の方法。
【請求項8】
脂質がシクロデキストリンと錯体を形成する、請求項1〜4のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
溶媒が混合液である、請求項1〜8のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
混合液が液体の混合物である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
混合液が少なくとも1つの極性溶媒を含む、請求項9記載の方法。
【請求項12】
混合液が少なくとも1つの非極性溶媒を含む、請求項9記載の方法。
【請求項13】
混合液が少なくとも1つの有機溶媒を含む、請求項9記載の方法。
【請求項14】
混合液が20%〜95%の有機溶媒を含む、請求項9記載の方法。
【請求項15】
混合液が、(a)少なくとも1つの極性溶媒および(b)少なくとも1つの有機溶媒または少なくとも1つの非極性溶媒からなる群より選択される少なくとも1つの溶媒を含む、請求項9記載の方法。
【請求項16】
混合液が、(a)少なくとも1つの極性溶媒および(b)少なくとも1つの有機溶媒または少なくとも1つの非極性溶媒が1%〜99%の割合の溶媒を含む、請求項15記載の方法。
【請求項17】
混合液が、少なくとも1つの有機溶媒または少なくとも1つの非極性溶媒を40%〜60%含む、請求項16記載の方法。
【請求項18】
混合液が、(a)少なくとも1つの極性溶媒を50%および(b)少なくとも1つの有機溶媒または少なくとも1つの非極性溶媒を50%含む、請求項16記載の方法。
【請求項19】
混合液が、水、ならびにジメチルスルホキシド、アルコール、エーテル、およびケトンからなる群より選択される少なくとも1つの溶媒を含む、請求項9記載の方法。
【請求項20】
混合液が、ジメチルスルホキシド、アルコール、エーテル、およびケトンからなる群より選択される少なくとも1つの溶媒を含む、請求項9記載の方法。
【請求項21】
混合液が約40%〜60%のエタノールを含む、請求項20記載の方法。
【請求項22】
混合液が約50%のエタノールを含む、請求項20記載の方法。
【請求項23】
溶媒が、非極性溶媒および有機溶媒からなる群より選択される少なくとも2つの溶媒の混合液を含む、請求項9記載の方法。
【請求項24】
送達が、制御された温度、制御された湿度、および溶媒の制御された分圧の少なくとも1つを含む条件下で行われる、請求項1〜23のいずれか一項記載の方法。
【請求項25】
脂質が、リノール酸、リポ酸、アラキドン酸、パルミチン酸、オレイン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、リノレン酸、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、スフィンゴミエリン、カルジオリピン、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンK、プロスタグランジン、およびステロールからなる群より選択される、請求項1〜24のいずれか一項記載の方法。
【請求項26】
ステロールが植物または動物ステロールである、請求項25記載の方法。
【請求項27】
ステロールがコレステロールである、請求項25記載の方法。
【請求項28】
請求項1〜27記載の方法に従って調製される、凝集化栄養培地粉末、凝集化培地添加物粉末、凝集化栄養培地サブグループ粉末、または凝集化緩衝液粉末。
【請求項29】
(a)溶媒を用いて請求項28記載の凝集化粉末を再構成し、溶液を形成する段階、および(b)細胞の培養に好ましい条件下で、細胞を溶液に接触させる段階を含む、細胞を培養する方法。
【請求項30】
細胞が、細菌細胞、昆虫細胞、酵母細胞、線虫細胞、鳥類細胞、両生類細胞、爬虫類細胞、および哺乳動物細胞からなる群より選択される細胞である、請求項29記載の方法。
【請求項31】
細胞が哺乳動物細胞である、請求項29記載の方法。
【請求項32】
細胞が、CHO細胞、COS細胞、VERO細胞、BHK細胞、AE-1細胞、SP2/0細胞、L5.1細胞、PerC6細胞、293細胞、およびハイブリドーマ細胞からなる群より選択される、請求項31記載の方法。
【請求項33】
哺乳動物細胞がヒト細胞である、請求項31記載の方法。
【請求項34】
非凝集化栄養培地粉末と比較して粉塵が減少した、請求項28記載の粉末。
【請求項35】
非凝集化栄養培地粉末と比較してより完全な溶解度を有する、請求項28記載の粉末。
【請求項36】
非凝集化栄養培地粉末と比較して不溶性物質の少ない、請求項28記載の粉末。
【請求項37】
非凝集化栄養培地粉末と比較してより早く溶解する、請求項28記載の粉末。
【請求項38】
栄養培地粉末が血清を含まない、請求項28記載の粉末。
【請求項39】
栄養培地粉末が哺乳動物成分を含まない、請求項28記載の粉末。
【請求項40】
栄養培地粉末が動物成分を含まない、請求項28記載の粉末。
【請求項41】
3、4、7、10、14、28、30、60、または90日目における細胞の増殖が、脂質を添加した液体培地における同一時点の細胞の増殖と比較して50%〜120%である、請求項29記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図16D】
【図17A】
【図17B】
【図17C】
【図17D】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図16D】
【図17A】
【図17B】
【図17C】
【図17D】
【公開番号】特開2011−239794(P2011−239794A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197001(P2011−197001)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【分割の表示】特願2009−191870(P2009−191870)の分割
【原出願日】平成14年12月2日(2002.12.2)
【出願人】(502221282)ライフ テクノロジーズ コーポレーション (113)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【分割の表示】特願2009−191870(P2009−191870)の分割
【原出願日】平成14年12月2日(2002.12.2)
【出願人】(502221282)ライフ テクノロジーズ コーポレーション (113)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]