説明

脈管障害部位集積性担体

本発明は、損傷組織に集積し、血小板機能制御薬として機能する担体、前記担体を用いた薬物送達方法、及び前記担体を含む医薬組成物を提供する。また本発明は、表面が非カチオン性である担体、前記担体からなる薬物運搬体及び医薬組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、損傷した組織に付着、集積し、障害部位を充填することを特徴とする非カチオン性担体、該担体に薬物を内包又は担持させた医薬組成物、及び薬物送達方法に関する。
【背景技術】
血栓形成は、傷口を塞ぎ、出血を止める作用を有する点で、生体において不可欠な機能である。しかしながら、血栓の形成は、血管径を狭め、血流を妨げる性質を有する点で循環器系疾患の主要因でもある。例えば、血管の外壁が損傷を受けたときは、血栓の形成は、血液循環に必要な灌流圧を維持するための生体防御機能としての役割を担う。一方、過酸化反応などによる血管内皮細胞の傷害によって動脈硬化症が発生し、動脈硬化症が著しく進展すると血栓形成を誘発する。そして血栓による血管狭窄とその結果として生じる虚血は、疾病率及び死亡率の主な原因となる。一方、血栓形成による止血反応は、癌治療薬の使用や白血病などの血液疾患に伴う血小板減少症、あるいは肝臓疾患に伴う血液凝固因子の低下により損なわれ、血管内皮細胞間隙からの漏出性出血を来たし、そのような状況下では脳血管などでの出血は致死性変化をもたらす。
血管狭窄を防止する効果を持つ薬物を臨床上効果的に用いるには、当該薬物を平滑筋細胞の増殖を抑制するのに十分な濃度で、血管内皮傷害部位に到達させる必要がある。しかし、当該薬物を静脈内投与や経口投与によって全身に投与した場合には、当該薬物の全身への副作用を起こすことのない投与量に限定され、その場合は、望ましい効果を得られないこともある。一方、出血傾向の制御のためには、同様の理由で赤血球の漏出しやすい障害血管内皮細胞局所への選択的な薬物の輸送が必要である。
従来より、血管内皮損傷部位に、特異的かつ十分な濃度で薬物を集積させることができる薬物担体、すなわち血管内皮損傷部位への特異的集積度が高く、高い薬物含有力を有する薬物担体の開発が望まれている。血管内皮損傷部位への集積については、リポソームの表面をカチオン化すると、血管内皮の傷害を受けた部分に集積することが知られている(特開平7−89874号公報)。しかし、表面に陽電荷を帯びたリポソームは血液内で凝固し、血小板と一塊となって分布する点で、効果的な薬物送達を実現するための薬物担体として用いることが困難である。
近年、血栓形成における血小板の機能、白血球の接着、血液凝固及び繊維素溶解についての研究が進められており、in vitroではそれらのプロセスが解明されつつある。しかしながら、in vivoの場合は、直接的な観察手段が無いために上記in vitroにおいて見出されたプロセスは得られなかった。そこで、マウス微小循環における血栓形成を、リアルタイムでイメージングするための高スピード共焦点顕微鏡を用いたシステムが開発された(Falati,S.et al.,Nature Med.,8(10),1175−1180(2002)、Celi,A.et al.,J.Thromb.Haemost.,1,60−68(2003))。このシステムは、マルチカラーかつリアルタイムに血管内を観察できるものであり、多数の蛍光プローブとデータのイメージを、明視野のチャネルを経て同時に取得することが可能である。また、上記システムによれば、顕微鏡下でレーザーによる血管損傷を産出することも可能である。従って、血栓形成プロセスにおける血小板凝集、組織因子及びフィブリンの挙動等について、レーザーによる血管内皮損傷モデルを用いて、蛍光及び明視野顕微鏡によるin vivoでの研究が進められている。
【発明の開示】
本発明は、損傷した組織に集積し、血小板制御薬として機能する表面非カチオン性担体、前記担体を用いた薬物送達方法、及び前記担体を含む医薬組成物を提供することを目的とする。
さらに、高スピード共焦点顕微鏡を用いて、マルチカラーかつリアルタイムで担体の生体内挙動を観察し、いわゆるDrug Delivery Systemの生体局所での薬物送達を直接証明する方法を提供する。
本発明者は、上記課題を解決するため誠意研究を行った結果、担体の血管内挙動をリアルタイムで観察することに成功し、担体が血管障害部位特異的に集積することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)表面が非カチオン性であり、組織の障害部位に付着し、集積し及び/又は障害部位を充填することができる担体。
上記担体としては、例えば表面が膜からなるものを挙げることができる。
上記組織としては例えば血管などの脈管を挙げることができる。
上記担体としては、脈管の外部に拡散することができるものが挙げられる。
また上記損傷は、例えば内皮細胞に及ぶものであり、そのような損傷としては、レーザー、炎症(例えば、浮腫(脳浮腫等)、発熱、発赤等)、虚血性疾患(例えば、虚血性脳疾患等)、虚血−再灌流障害(例えば、虚血−再灌流性臓器障害等)、播種性血管内凝固症候群、敗血症、細菌毒素、酸化ストレス、腫瘍若しくは血栓形成、又は出血によるものを挙げることができる。
(2)上記(1)記載の担体からなる薬物運搬体。
(3)上記(2)記載の薬物運搬体に薬物を内包又は担持させてなる医薬組成物。
上記医薬組成物は、血小板の機能制御薬として機能させるためのものであってもよく、血小板の機能制御としては、例えば、止血、抗血栓形成、血栓溶解又は抗動脈硬化作用を挙げることができる。また、上記(1)記載の担体は脈管障害部位充填効果を持つため、止血を目的とする場合には担体自身を医薬として用いることも可能である。
上記担体に内包または担持させる薬物としては、例えば、可視光若しくは紫外光等の光、温度、pHの変化、超音波、炎症担当細胞による取り込み又は酵素による分解などにより活性化する物質、止血剤、抗血栓薬、血栓溶解剤、抗腫瘍剤及び抗動脈硬化剤からなる群から選択される少なくとも1種を挙げることができる。上記炎症担当細胞としては、例えば、リンパ球、白血球、マクロファージ又は血小板である。
(4)上記(3)記載の医薬組成物を組織の障害部位に集積させることを特徴とする薬物送達方法、又は、上記(3)記載の医薬組成物を組織の障害部位に集積させ、当該障害部位に薬物を作用させることを特徴とする薬物制御方法。
上記薬物の作用は、担体の集積、担体の拡散又は担体の活性化により制御されるものであってもよい。
上記組織としては、例えば脈管を挙げることができ、脈管としては例えば血管を挙げることができる。
(5)高スピード共焦点広視野顕微鏡下で担体の組織内挙動を観察することを特徴とする担体の機能評価方法。
組織内挙動の観察が、マルチカラーかつリアルタイムで行われる上記方法も含まれる。
上記担体としては、例えば表面が非カチオン性のものを挙げることができ、さらには、表面が膜からなるものを挙げることができる。
上記組織としては、例えば脈管を挙げることができ、脈管としては例えば血管を挙げることができる。
【図面の簡単な説明】
図1は、グレーレベルの測定部位を示す図である。
図2は、細動脈におけるablation後のRh−lipoの挙動を示す図である。
図3は、細静脈におけるablation後のRh−lipoの挙動を示す図である。
図4は、細動脈における傷害部位でのリポソーム集積の解析例を示す図である。
図5は、細動脈における傷害部位でのリポソーム集積の解析結果を示す図である。
図6は、細動脈および細静脈におけるヒスタミンによる傷害部位でのリポソームの挙動を示す図である。左上パネル:リポソーム投与後、ヒスタミン表面灌流前(A:細動脈、V:細静脈)、右上パネル:リポソーム投与後、ヒスタミン表面灌流開始2分後。細静脈を中心に竹の節状にlarge poreが開き、ローダミン標識したリポソームが充填される、中央下パネル:ヒスタミン投与後で白血球浸潤が起こるが、リポソーム投与後にはローリングと接着で終わり、白血球は血管内に留まる。
図7は、脳浮腫モデル等における血漿の相対漏出量を示す図である。
図8は、脳浮腫モデル等における血漿の漏出量を示す図である。
図9は、脳浮腫モデルにおける血漿の漏出量を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
1.概要
本発明は、限局性レーザービーム照射を用いて血管内皮を損傷させることで血栓を形成させたモデルを、高スピード共焦点顕微鏡を用いてマルチカラーでリアルタイムに観察する技術によって完成されたものである。これによって、血小板などの血栓形成に関わる構成物や、担体の血管障害部位での挙動を調べることができるようになった。
従来は、担体の血管内動態を制御することは非常に困難であると考えられていたが、上記技術を、表面が非カチオン性である(好ましくは当該表面が膜からなる)担体(本明細書においては「表面非カチオン性担体」と言う)に適用することで、担体の血管内動態についての新たな知見を得ることができた。すなわち、表面非カチオン性担体は血管非障害部位には集積せず、血管障害部位に特異的に集積する点で血小板と同様の挙動を示すことが分かった。また、表面非カチオン性担体は、血小板と境界を設けて集積する点で血小板とは独立して障害部位に集積、充填される挙動を示すことも明らかとなった。その結果、表面非カチオン性担体を血小板機能制御薬として利用することが可能となり、止血を目的とした血小板代用品として用いることができる。また、担体に薬物を導入することによって、抗血小板薬、抗腫瘍薬等の運搬体として用いることも可能となる。さらに、温度、pH等によって活性化される薬物を担体に導入し、薬物標的部位をレーザーによって損傷させると、標的部位に担体が集積し、その段階で温度、pH等を変化させるとその部位で薬物が活性化されることになり、より特異的に薬物を標的部位に運搬することが可能となる。
血小板は、血管障害部位の外側には拡散しないのに対し、本発明の担体は、障害部位に集積した担体の一部が血管の外側に拡散する。従って、本発明の担体は、薬物運搬体として薬物を脈管障害部位の外側へ到達させることができる。
2.担体
本発明において、担体とは、リポソーム、エマルジョン、脂質小胞体等を意味する。以下、特にリポソームを例に用いて説明する。
(1)担体の作製
表面非カチオン性リポソームとは、表面が非カチオン性の膜からなるリポソームであって、脂質を水性媒体に単独で、あるいはコレステロールやその他の両親媒性分子と混合させて分散させることにより得られる安定な分子集合体を意味し、(i)疎水部間の疎水性相互作用により形成された膜を持つ、(ii)分子充填状態が高い、などの性質を有する。安定なリポソームを形成すると、例えば内水相に水溶性薬物を内包させることができ、あるいは膜表面に認識部位を担持させることができるため、本発明のリポソームは薬物送達システムに利用することができる。
上記の通り、本発明においてリポソームの膜は非カチオン性である。この場合、本発明におけるリポソームの膜構成脂質は、リポソームの表面がカチオン性を帯びない限り、リン脂質単独、あるいはリン脂質とコレステロール又は脂肪酸との混合脂質を用いることができる。リポソームを調製する方法は、一般的な手法、例えば、ボルテックス法、超音波照射法、高圧吐出法、高圧押出法、強制撹拌(ホモジナイザー)法、凍結融解法、有機溶媒注入法、界面活性剤除去法、逆相蒸発法、マイクロフルイダイザー法などを採用することができる。
非カチオン性の膜からなるリポソームの構成成分は、リポソームの表面がカチオン性を帯びない限り、飽和リン脂質、不飽和リン脂質のいずれでも良い(第2936109号特許)。例えば、水添卵黄レシチン、水添大豆レシチンなどの天然リン脂質やその誘導体、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリン、ジリノレオイルホスファチジルコリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトールなどを例示することができる。これらのリン脂質は、重合性基を有する重合性リン脂質から選ばれる。このような重合性リン脂質として、1,2−ジ(オクタデカ−trans−2,trans−4−ジエノイル)ホスファチジルコリン、1,2−ジ(オクタデカ−2,4−ジエノイル)ホスファチジン酸、1,2−ビスエレオステアロイルホスファチジルコリンなどが挙げられる。このとき、重合性リン脂質は、非重合性の長鎖を有していてもよく、非重合性の長鎖としては、炭素数2〜24の直鎖あるいは分岐鎖のアルキル基、アシル基、非重合性アルケニル基、非重合性アルケノイル基などが挙げられる。脂肪酸としては、炭素数12〜20の飽和又は不飽和脂肪酸が用いられる。例えば、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、オクタデカ−2,4−ジエン酸などである。
また、リポソームの膜構成脂質として負電荷脂質を有していてもよく、例えば、ジアシルホスファチジルグリセロール、ジアシルホスファチジン酸、ジアシルホスファチジルイノシトール、ジアシルホスファチジルセリン、脂肪酸等を好ましく使用することができる。このとき、負電荷脂質の含有量は特に限定されないが、1〜50モル%であることが好ましく、より好ましくは5〜20モル%である。
さらに、リポソームの膜構成脂質として用いられるその他の成分として、安定化剤を添加しても良い。このような安定化剤としてはステロールが好ましく、具体的には、エルゴステロール、コレステロール等が挙げられるが、好ましくは、コレステロールである。コレステロールの含有量は特に限定されないが、リポソーム膜を効果的に安定化するためには、10〜50モル%とすることが好ましい。
また、安定化剤としては、通常用いられるジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)やパルミチン酸(PA)といった安定化剤を使用することもできる。DPPG及びPAの化学式を以下に示す。

さらに、安定化剤としては、リン酸基を持たないカルボン酸型脂質を使用することもできる。このようなカルボン酸型脂質を含む安定化剤は、リポソームに含有させた時に、(i)リポソームが生体内で血小板活性化作用を有しないこと、(ii)リポソームの生体内への投与が循環血液中の血小板数を減少させないこと、(iii)リポソームが生体内で血小板の一過性接着反応を引き起こさないこと、及び(iv)リポソームが生体内で白血球接着活性化作用を有しないことのうちの少なくとも一つの特徴を有する。本発明はこのような安定化剤を含むものである。上記カルボン酸型脂質としては、例えば、次の一般式(1)で表される脂質を好ましく挙げることができる。

(式(1)中、
、R及びRのうち、何れか一つは次の一般式(1’)

(式(1’)中、Mは水素原子又は一価の陽イオンであり、mはメチレン鎖長を示す1〜5の整数である。)
で示される基であり、他の二つは炭化水素基(例えば鎖状炭化水素基)であり、
、A及びAは独立して、同一又は異なって、C(O)O、CONH又はNHCOから選択される基であり、
nはメチレン鎖長を示す1〜3の整数である。)
上記鎖状炭化水素基としては、例えば炭素数2〜20の、直鎖状又は分枝状の非環式飽和炭化水素基又は非環式不飽和炭化水素基(非環式テルペンも含む)であればよく、特に限定はされないが、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルカジエニル基、アルキリデン基、アルキリジン基等に分類される各種炭化水素基が挙げられる。
なお、一般式(1)においては、R、R及びRの結合部位は、リジン、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、セリン、スレオニン、チロシン等の三官能性アミノ酸であることが好ましい。なかでも特に、一つの反応性官能基と二つの等しい反応性官能基とを有する三官能性アミノ酸、即ち、一つの末端アミノ基と二つの末端カルボキシル基とを有するアスパラギン酸やグルタミン酸など、あるいは一つの末端カルボキシル基と二つの末端アミノ基とを有するリジン、アスパラギン、グルタミンなどが好ましい。特にアスパラギン酸やグルタミン酸が好ましく、また、ホモシステインやグルタチオンなどでもよい。
一般式(1)で表されるカルボン酸型脂質としては、例えば、下記式で表されるDPEA(ジパルミトイルLグルタミン酸Nコハク酸;1,5−dipalmitoyl−L−glutamate−N−succinic acid(又はDHSG(1,5−o−ジヘキサデシル−N−スクシニル−L−グルタメート)とも言う))が好ましく挙げられる。

水性媒体としては、純水、水溶液、緩衝溶液などが挙げられる。水性媒体はリポソームの用途に応じて適宜選択できるが、注射用水や生理食塩水が生体において安全性が高い点で好ましい。水性媒体のpHは、生理的pHを有し、特に安定性の低下や集合形態の変化などに支障がない限り制限されるものではない。生理的pH範囲とは、生体内、血液内等のpH範囲であり、例えばpH4〜11、好ましくはpH6〜9である。
本発明のリポソームは、粒径が0.02〜250μmであり、特に、0.1〜1.0μmの大きさが好ましい。リポソームの粒子径は、例えば混合脂質粉末に水溶性物質と水性媒体を加えて水和、膨潤させ、静置水和法、ボルテックスミキサー、強制攪拌機、超音波照射器、ホモジナイザー、マイクロフルイダイザー、高圧押出機(エクストルーダー)、凍結融解などにより制御することができる。特に、凍結融解と高圧押出機を組み合わせることにより、フィルターの透過性が著しく向上するため、処理時間が短縮、収率が向上する。内包されなかった水溶性物質はゲル濾過や超遠心分離や限界膜処理により内包リポソームと分離できる。本発明に用いる水溶性物質としては、ヘモグロビン及びアルブミン等の水溶性タンパク質、ペプチド、核酸、水溶性の薬物等を挙げることができる。
(2)表面修飾
本発明において、上記リポソームの膜に適当な修飾物質を添加してその膜を修飾することもできる。膜を修飾するための物質としては、例えば、シアル酸や多糖が結合した脂肪酸及び脂肪、並びに、ポリオキシエチレンが結合したリン脂質、脂肪酸及びコレステロールなどが挙げられ、ポリオキシエチレン(ポリエチレングリコール)で修飾することが好ましい。ポリエチレングリコールで表面修飾することにより、血中での血流動態が改善されることも確認されている(Sakai et al.,Bioconjugate Chemistry,Vo.8,23−20,1997)。ポリエチレングリコール鎖は、乾燥リポソームを水性溶液に分散させる後の工程においてリポソームの粒子径変化を抑制する効果が高く、また、凝集を抑制するため、最終工程で押出法を行う際に、リポソームの凝集によるフィルター透過性の低下や目詰まりを防止できる点で好ましい。ポリエチレングリコール型脂質の含有量としては、混合脂質の0.01〜1モル%が好ましく、0.1〜0.3モル%がさらに好ましい。さらに、ポリエチレングリコールの分子量は2,000〜12,000であり、好ましくは4,000〜10,000程度である。
3.組織の障害
(1)障害とは
本発明における組織の障害は、その要因に限定されるものではなく、外因性の損傷及び内因性の損傷が考えられる。また、当該損傷は、内皮細胞を傷害する全ての損傷が考えられ、このような障害部位は炎症を引き起こしている。当該炎症には、物理的刺激によるもの、化学的刺激によるものが含まれる。物理的刺激としては、レーザー、放射線、刃物等によるものが挙げられ、化学的刺激としては、ヒスタミン、ロイコトリエン、トロンビン、キニン、活性酸素、酸化ストレス、重金属、細菌毒素、サイトカインなどが挙げられる。これらの炎症には、浮腫(例えば脳浮腫)、発熱、発痛、発赤なども含まれる。外因性の損傷には、例えば、怪我による血管の損傷、疾患予防や治療の目的で用いられるレーザーによる損傷等を挙げることができる。内因性の損傷には、虚血性疾患(例えば、虚血性脳疾患等)、虚血−再灌流障害(例えば、虚血−再灌流性臓器障害等)、播種性血管内凝固症候群、敗血症、腫瘍、血栓形成等を挙げることができる。また、高血圧、高脂血症、肥満、糖尿病、喫煙といった動脈硬化の危険因子から誘導される種々の血管悪玉因子が引き起こす過酸化反応などによる内皮細胞の傷害、及びその結果形成する動脈硬化巣も、内因性の損傷に含まれる。
(2)組織への集積
本発明の担体を集積させる組織は、内皮細胞を有する組織であれば特に限定されない。内皮細胞をもつ脈管は、一層の内皮細胞を有する管腔構造を有しており、そのような組織としては、血管やリンパ管を挙げることができるが、担体を血液中に注入することが容易な点で血管であることが好ましい。血管は動脈、静脈であると毛細血管であるとを問わない。以下、便宜上血管を例に説明する。
本発明の担体は、損傷を負っていない血管には集積せずに、上記損傷による内皮細胞障害部位に特異的に集積する特徴を有する。損傷部分への担体の集積挙動は、血小板の動態とほぼ同様の挙動を示し、損傷部分を覆うように単層又は重層で集積し、血管内皮細胞障害部位から内皮下腔に侵入し、これを部位特異的に充填する。一方、本発明の担体は、集積部分で血液中に本来流れている血小板と相互作用することはなく、血小板の集積領域と境界を設けて、独立して集積する特徴を有する。
(3)一部拡散
内皮細胞損傷に血管基底膜の損傷を伴う場合、担体は血管内から障害部位に集積するだけでなく、その一部は、障害部位から血管外部へも拡散する。従って、薬物を内包又は担持する担体は、損傷の程度が大きい場合、血管壁内部に止まらず、血管外にも拡散して到達することができる。その結果、薬物を効率よく障害部位に運搬することが可能となり、より高い治療効果を期待することができる。薬物を含まない担体であっても、血管外部から血管壁貫通部位を塞ぐために、高い止血効果を期待することが可能である。
4.薬物送達
(1)薬物
本発明においては、担体に薬物を内包又は担持させることにより、医薬組成物として使用することができる。薬物は、血管障害部位の診断及び/又は治療の目的に応じて、診断用物質又は薬理的活性物質を用いることができる。
本発明において、担体に内包又は担持させる薬物として、どのようなものでも使用することができ、担体の形態を損ねない限り特に限定されるものではない。具体的には、止血剤、血液凝固促進剤、抗血栓剤、血栓溶解剤、抗腫瘍剤、抗凝固剤、プロテアーゼ阻害剤、プロスタグランジン製剤、血管平滑筋細胞増殖阻害剤、抗生物質、抗炎症剤、抗動脈硬化剤、脂質取り込み阻害剤、血管内皮細胞増殖抑制剤、ビタミン(例えばビタミンC、E、K)、抗感染剤、皮膚用薬剤、感覚器用薬剤、内分泌系用薬剤、消化器用薬剤、循環器用薬剤、排出器用薬剤、生殖器用薬剤、呼吸器用薬剤、神経系用薬剤、診断用補助剤、栄養剤、アミノ酸、タンパク質等を挙げることができ、単独で、又はこれらを適宜組み合わせて使用される。対象疾患は、上記薬物の適応症である。また、担体中に、人工赤血球用のヘモグロビンや、癌に対する化学療法剤等の様々な医薬品を含めること、あるいは、遺伝子治療を目的として、担体中に遺伝子(核酸(DNA,RNA))を含めることもできる。
また、例えば、可視光や紫外光等の光、超音波で活性化する薬物を担体に内包又は担持させることも、温度やpHの変化で活性化する薬物を担体に内包又は担持させることもできる。さらに、炎症担当細胞による取り込み又は酵素による分解により活性化する薬物を担体に内包又は担持させても良い。炎症には浮腫および白血球浸潤(膨疹、血管性浮腫、脳浮腫、脳虚血)が含まれる。前記の炎症担当細胞には、リンパ球、白血球、マクロファージ、血小板等が挙げられる。
「担体に薬物を内包させる」とは、担体の内部の水性媒体中に薬物を含めることを意味する。
担体に薬物を内包させる方法は、担体がリポソームである場合は、上述の通り担体を作製する際に、薬物と原料脂質を水性媒体に混合すればよい。
「担体に薬物を担持させる」とは、担体の表面に薬物を物理的に付着させるか、あるいは化学的に結合させることを意味し、具体的には、膜自体の両親媒性部位に薬物を結合させ、薬物が脂質二分子膜内に突き刺ささり膜を未貫通な状態に、若しくは突き抜けて膜を貫通した状態にすること、又は薬物を脂質二分子膜の疎水部間にサンドイッチ状に挟まった(結合した)状態にすることを意味する。
担体に薬物を担持させる方法は、リポソーム内腔に薬物を封入するか、脂質二重膜内部あるいは表層に薬物を保持させるものでもよい。
可視光、紫外光等の光、温度、pHの変化、超音波、炎症担当細胞(リンパ球、白血球、マクロファージ、血小板)による取り込み、酵素による分解により活性化する薬物を担体に内包又は担持させても良い。前記の薬物の活性化は、薬剤活性の発現上昇、担体からの薬物遊離、及び/又は不活性型薬物の活性化の意味を含む。診断又は治療しようとする部位にレーザー照射を施し、血管の局所を損傷させると、当該箇所に担体が集積する。内皮細胞損傷が血管基底膜にまで及んだ場合には、担体は一部が拡散し血管外側にも集積する。血管障害部位に集積した担体に内包又は担持した薬物は可視光、紫外光等の光、温度、pHの変化、超音波、炎症担当細胞(リンパ球、白血球、マクロファージ、血小板)による取り込み、酵素による分解により活性化し、診断用物質又は薬理的活性物質を効果的に放出することができる。
本発明の担体に内包又は担持させる薬物の量は、治療目的に応じて当業者であれば適宜設定することができる。本発明の医薬組成物の投与量は、年齢、性別、症状、投与経路、投与回数によって異なるため、適宜選択して設定することができる。例えば、抗腫瘍剤の場合は、その1〜5mgを、直径100〜300nmのリポソーム懸濁液1mL中に、内包型として存在させることができる。
本発明の医薬組成物の投与形態としては、通常の静脈内、動脈内等の全身投与のほか、筋肉、皮下、皮内等に局所投与することができる。さらに、カテーテルを用いた投与形態を採用することも可能である。
(2)機能制御
血管内皮細胞が損傷すると、血小板はその障害部位に集積して止血するための血栓を形成する。また、血管内皮障害により生じた内皮細胞間隙からは初期にはアルブミンをはじめとする血漿膠質浸透圧物質が漏出して浮腫を起こし、最終的には当該間隙は炎症担当細胞の組織への侵入門戸となる。これらの反応により、いわゆる炎症反応が惹起され、浮腫や発熱、発痛、発赤を引き起こす。これらの反応は、癌の血管内播種や敗血症によりおこる多臓器不全の血管系でも普遍的に起きていることが知られている(Katayama T,Ikeda Y,Handa M,Tamatani T,Sakamoto S,Ito M,Ishimura Y,Suematsu M.Immunoneutralization of glycoprotein Ibα attenuates endotoxin−induced interactions of platelets and leukocytes with rat venular endothelium in vivo.Circulation Research 2000,86,1031−1037.)。すなわち、血小板や白血球は、内皮細胞傷害部位を認識して集積する性質を有する。
レーザーなどによる外因性の障害部位では、血管壁を補うように血小板が集積し、出血を止め、生体循環系の閉鎖性を保つように機能する。また、血管内皮細胞が剥離したり、過酸化反応により血管内皮細胞が傷害を受けると、血小板はその傷害部位に集積し、血栓を形成する。腫瘍による血管障害部位では、血小板が粘着し、活性化し、あるいは血小板内の物質を放出し、その部位に血栓を形成するという性質を持っている。また、上記の血管内皮が損傷を受けた部位は、白血球によって炎症反応が惹起されている。つまり、血管内皮障害部位には、血小板のみならず、白血球も集積する。
そこで、内皮傷害部位を認識して集積する本発明の担体を応用した血管機能制御の例を、それぞれの細胞の担う生理機能に対応させて以下に説明する。
(2−1)血小板
血小板と同様の接着挙動を示す本発明の担体は、血小板の機能制御薬として機能することができる。機能制御とは、診断又は治療の目的に応じた薬物を内包又は担持させた担体を血小板の代わりに用いることにより、血小板としての機能を抑制又は促進することを意味する。血小板の機能制御作用は、具体的には、止血、抗血栓形成、血栓溶解、又は抗動脈硬化作用等である。
例えば、怪我による外因性の障害部位に集積する担体は、障害部位を塞ぎ、止血効果を示す。また、担体に止血効果、血液凝固促進効果を有する薬物を内包又は担持させる場合には、該担体は、より高い止血効果を示すことができる。従って、本発明の担体は、血小板の止血機能を増大するように機能する。
内因性の障害部位に集積する担体は、担体に内包又は担持する薬物の作用により、集積した血小板に由来する血栓を予防したり、溶解したりすることができる。従って、本発明の担体は、血小板の集積機能を抑制するように機能することができる。
(2−2)白血球
前述の通り、血管内皮障害部位には、血小板だけでなく、白血球も集積する。本発明の担体は、血小板と同様の血管内皮障害部位への集積性を示すことから、当該担体は白血球と同様の接着挙動を示すことが推定され、白血球の機能制御薬としても機能することができる。白血球の機能制御とは、白血球の生理作用を抑制又は促進する薬物を内包又は担持する担体が、白血球として機能することを意味する。白血球は大きくリンパ球、単球、顆粒球の3つに大別することができ、免疫機能の中心的な役割を担う。このような白血球の機能制御作用は、微生物貪食・殺菌・消化作用、生体防御作用、感染防御作用、炎症作用、寄生虫破壊作用、即時型アレルギー反応促進作用等である。
例えば、外因性の障害部位に集積する担体は、外部からのウイルス、微生物の侵入、感染を防ぐ作用を有する。担体に抗微生物、抗菌作用を有する薬物等を内包又は担持させる場合には、当該担体はより高い白血球様機能を示すことができる。また、担体中に各種サイトカイン(例えば、IL−1、IL−2、IL−4等)を内包させて、単球やリンパ球を活性化させることも可能である。また、内因性の障害部位に集積する担体は、血管から組織への白血球の浸潤、体液の漏出を防ぐ作用を有する。血管からの白血球の浸潤はサイトカインの遊離を介して組織の炎症を引き起こし、また、体液の漏出は全身又は局所(例えば、脚部、脳浮腫など)の浮腫を引き起こすことが知られている。本発明の担体はこのような炎症の原因となる白血球の浸潤、体液の漏出を防ぐ機能を示す。
従って、本発明の担体は、白血球の機能をも制御するように機能することができる。
(3)薬物の作用
本発明の担体は、一部が血管の外部に拡散するものであるため、血栓、血管障害部位の治療において、血管の外壁からもその効果を奏することが可能である。
また、レーザーによって励起される蛍光物質を薬物に添加しておくと、レーザーを用いた診断または治療において、診断部位又は治療部位を特定するのが容易になり、部位特異的な薬物の活性化が容易になる。なお、この場合のレーザーは、本発明において血管に損傷を加えるためのレーザーとは別の用途として使用される。
また、本発明の担体に、可視光や紫外光等の光、温度、pH等により活性化する薬物を内包又は担持させた場合には、望ましい時期、望ましい作用部位、望ましい作用量を選択して、薬物の効果を発揮させることが可能となる。
薬物は、血管障害部位に集積する担体に内包又は担持させる形態で送達され、障害部位特異的に作用することが可能となる。また、薬物は、担体の集積、拡散又は担体の活性化によって、その活性が制御させる。本発明は、このような薬物送達方法及び薬物制御方法を提供する。
5.高スピード共焦点広視野顕微鏡を用いた血管内観察
本発明により、高スピード共焦点広視野顕微鏡下で担体の生体内挙動を観察する方法が提供される。この方法は、マルチカラーで、且つリアルタイムに、担体の組織(血管)内挙動を観察することができる。担体に加えて、生体由来の血小板や白血球(以下、「血小板等」とも言う)を、あるいは標的部位を蛍光標識することで、両者の生体内での挙動を、同時に観察することができる。従って、本発明の方法は、担体の生体内選択性、凝集性及び動態を研究する上で極めて有効である。
(1)観察対象動物の準備
被験動物は、共焦点広視野顕微鏡下で観察することのできる血管を有する動物であれば、特に限定されるものではないが、薬物担体動態の研究に汎用される動物が好ましい。好ましくは、ラット、モルモット、マウス、ハムスター、スンクス、ウサギ、イヌ、ブタ、ネコ、及びサルである。より好ましくは、ラット、モルモット、マウス、及びハムスターである。
被験動物の麻酔は、一般的な動物実験で用いられる方法で行う。例えば、ペントバルビタールナトリウム塩、ケタミン、抱水クロラール、ウレタン、ジエチルエーテル等、及びそれらの組み合わせを挙げることができる。好ましくは、血管拡張などの血管への作用を示さない麻酔方法が好ましい。被験動物への投与は、それぞれの催眠薬、麻酔薬に適した用法、用量で行うことができる。
麻酔下の被験動物の静脈にカテーテルを挿入し、血小板等を蛍光標識するための化合物をカテーテルを通して静脈内投与する。カテーテルの挿入位置は特に限定されるものではないが、カテーテルの安定性、被験動物への安全性、及び観察部位への損傷の可能性を考慮すると、大腿静脈が好ましい。
(2)血小板等の標識
血管障害部位での血小板の挙動を顕微鏡で観察するためには、血小板等を蛍光色素で標識する。血小板等を標識する化合物は、分子内にエステル結合を持つもの、例えばカルボキシルフルオレセインジアセテートサクシニミジルエステル(carboxylfluorescein diacetate succinimidyl ester:CFDA−SE(CFSE))を挙げることができる。
標識化合物は、膜透過性を有するために細胞に取り込まれるが、この段階では蛍光を発しない。CFDA−SEが血小板等に取り込まれると、細胞内のエステラーゼによってエステル結合が切断され、これによって、化合物はフルオロフォアとなり、強い蛍光を発するようになる。化合物が一度細胞に取り込まれると、そのまま細胞内にとどまるために、長時間のアッセイ中も細胞標識が消失することはない。
(3)担体の標識
担体の蛍光標識剤は、前記血小板等の蛍光標識に用いた化合物と異なる呈色をする色素であれば、特に限定されるものではなく、例えばローダミン、テキサスレッド、フルオレセイン等を挙げることができる。CFDA−SEは緑色に発色するため、血小板をCFDA−SEで標識したときの担体の標識は、赤色に発色するローダミンが好ましい。注入する担体のラット100gあたり、担体(リポソーム)体積35%を含む溶液として換算した場合10〜2000μL、好ましくは50〜400μL、より好ましくは250μLである。
担体の投与方法は、目的に応じ、静脈内投与のほか、腹腔内投与、筋肉内投与、皮下投与、経鼻投与、経肺投与、経口投与、塗布など、様々な形態が可能である。また、投与方法に応じて、薬理学的に許容された賦形剤又は基剤を含んだ形で担体を投与してもよい。
(4)血管観察
蛍光標識化合物を上記カテーテルから注入後、開腹し、生体内観察するために血管観察部位をガラス−カバースリップ上に配置する。観察部位として、腸間膜の回盲部位が好ましいが、特に限定されるものではなく、脳、肝臓、消化管などの臓器循環も含む。
観察部位は、生体試料に通常用いられるバッファー(例えばKrebsバッファー)を用いて灌流する。その際、バッファーは95%N/5%COで飽和させたものを用いるのが好ましい。灌流の条件は、試料に負荷を与えないようにするために、37℃で保温する。
(5)レーザーによる血管内皮細胞の損傷
次に、前記カテーテルから蛍光標識した担体を注入する。その後1時間以内に、損傷させる血管を選択する。損傷を引き起こす対象となる血管としては、例えば動脈、静脈、毛細血管、リンパ管などが挙げられる。損傷作製に用いるレーザー光は、窒素ダイレーザーのパルス光を用いる。顕微鏡対物レンズ下に、標的部位に例えば直径1μmの光束を有するレーザーを照射することで、血管内皮細胞に部位特異的に損傷を引き起こす。
(6)血栓形成及び担体動態の生体内イメージング
血管障害部位のイメージングに必要なシステムは、Falatiらの方法を改変して用いることができる(Falati S.et al.,Nature Medicine,8(10),1175−1180(2002))。この改変システムは、3眼鏡筒を有する落射型顕微鏡を改良したものである。また、生体内顕微鏡による検査を実施するには、一定の開口数を持つ水浸レンズ又は油浸レンズが必要である。具体的には、1.1の開口数を持つ60×水浸レンズ(LUMFL)が好ましい。
本発明において、共焦点顕微鏡としてニポウディスク(Nipkow disk)技術に基づくスキャナーを用いると、顕微鏡は理論的に1秒間に720フレームの画像まで映すことができる。蛍光を励起するためのレーザーとしては、例えばアルゴン−クリプトン2ラインレーザーを挙げることができる。このレーザーを用いると、励起波長として488nm、568nmを有する共焦点顕微鏡において蛍光が得られる。
レーザーによって血栓を形成する場合は、窒素色素レーザーを使用する。そして、落射蛍光(epi−illumination port)の光路にレーザー光を導入して、対物レンズを通して腸間膜の小血管の内皮細胞上にレーザー光を照射する。レーザーは、血管の直径が約0.5μmの血管表面においては、4−nsec energyパルスを3〜10Hzの頻度で産出する。パルスのエネルギーは適宜デジタルコントローラーで定量的に制御される。
3眼顕微鏡の台の中央部分には、カラーCCDカメラを接続するため、空間的及び時間的に高い解像能をもつカラーイメージを録画することができる。
(7)イメージ解析
蛍光イメージを、血小板標識色素の励起波長、担体標識色素励起波長、及び両励起波長の励起光を用いた3通りの方法で収集することにより、それぞれ、血小板のみの挙動、担体のみの挙動、並びに血小板と担体の両者の挙動を画像として得ることができる。励起光は、各色素に即して設定されたフィルターセットを介したレーザー光である。
蛍光イメージは、まずコンピューターに接続された8ビットのデジタイザーで加工され、ピクセルに基づいたデータは、グレーレベルに変換される。そして、目的の部位のグレーレベルをデジタルイメージングソフトウェアで数値化する。
レーザーによる傷害を施した血管周辺における蛍光標識担体の空間的な分布は、グレーレベルを測定することによって評価する。具体的には、ラインスキャンを、血管壁の傷害部位を中心とし、血管の長軸方向あるいはこれに垂直な断面方向の双方で行うものとする。ラインスキャンにより、血管外に漏れた担体量とその分布の空間特異性を知ることができる。
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。但し、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
リポソームの調製
混合脂質粉末(DPPC(ジパルミトイルホスファチジルコリン)/cholesterol/DPEA/PEG−DSP(N−(モノメトキシポリエチレングリコール−カルバミル)ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン)=5/5/10/0.033(モル比))1gを25mLの生理食塩水に分散させて室温で10時間攪拌した。これをエクストルーダーにて孔径0.22μmフィルターに2回透過させて平均粒子径263±43nmのリポソーム分散液を得た。生理食塩水にて脂質濃度を3g/dLとした。この分散液20mlに対して、別に調製したOctadecyl Rhodamine B(Molecular Probe社製)のエタノール溶液(1mg/1mL)を600μL撹拌しながら滴下し、更に遮光下2時間撹拌した。超遠心分離(10万g,60分+15万g,30分)によりリポソームを沈降させ、上澄みに残存する微量の未導入色素、およびエタノールを除去した。生理食塩水を添加しvesiclesを再分散させ、最後にフィルタ透過(孔径0.45μm)した。
得られたリポソームの膜の電荷を測定した結果、ゼーター電位は−2.6Vであった。
【実施例2】
画像解析法によるリポソームの挙動解析
1.生体顕微鏡システムと微小循環観察記録システム
ラットは、慶應義塾大学医学部実験動物センターの管理下によって飼育した。Suematsuらの方法に従い(Suematsu M,et al.Lab Invest 1994)、Wistar系雄性ラット(200−250g;日本クレア、東京)をペントバルビタールナトリウム50mg/kg筋肉注射で麻酔し、大腿静脈にカテーテルを挿入し、carboxyfluorescein diacetate succinimidyl ester(CFDA−SE)を1mg/kg投与し、体内の血小板を生体染色した。
回盲部腸間膜を腹腔外に展開し、微小循環系を正立型レーザー共焦点顕微鏡で観察した。
対物レンズは60倍を使用した。顕微鏡光路にはCFSE蛍光を画像化する488nmのアルゴンレーザー、およびRhodamine Bを画像化する568nmのレーザー出力が可能であり、前者の緑色蛍光のみ、あるいは後者の赤色蛍光のみ、さらには両者を同時に撮像し、mergeを画像化するフィルターを実装し、自由に切り替えを行った。フィルターなしの状態で透過光線像の取得も可能とした。また、出力を自由に定量的に制御できる窒素色素レーザー(Micropoint laser ablation)が実装され、微小血管の任意の場所を顕微鏡画面中央に設置することにより、1ミクロンの光束で細胞障害を起こすことを可能にした。出力エネルギーを可変することにより、破綻出血を伴う(すなわち基底膜損傷を伴う)出血の作製から、数個の赤血球漏出のみで、血小板の一次凝集塊形成を伴わない、junctional leakageのみの血管内皮細胞障害までを作製することができた。
すなわち、本システムでは、(1)基底膜傷害による破綻出血の有無、(2)傷害点を基点とする血小板凝集塊の有無、(3)透過光線画像で認識できる内皮下腔への赤血球漏出の有無、の3つを指標にして、異なる程度の血管内皮細胞傷害を作製することができた。これら3つの変化を伴わない実験については窒素色素レーザーによる傷害なしと判定した。
血小板の画像およびRhodamine Bをコートしたリポソームの画像を取得するために顕微鏡光路に高感度CCDカメラ(C5810 浜松ホトニクス製)を装着し、画像はすべてDVD画像として8−bitのカラーデジタル保存を行った。リポソームは既報の方法で作製された平均径263nmのものを用い、コントロールの微小循環像を記録したのち、ラット100gあたり250μlのリポソーム分散液(分散液中リポソームの体積割合は35%(サンプル中の推定リポソーム数が4.8×1012個/mlであることによる))を注入し、micropoint laser ablation施行前、および施行後30分にわたり解析した。
2.画像解析法
記録した蛍光画像をもとに血管から漏出したRhodamine B標識リポソーム(以下、Rh−lipoともいう)の分布と量の半定量的解析を行った。血管壁上の窒素レーザー照射部位(point of injury、傷害部位)を中心とし、血管の長軸方向あるいは法線方向に軸を設定し、内皮下腔に漏出した蛍光の強度を8−bit gray level(0−255)で測定した。測定には画像解析ソフト(MetaMorph 6.1,Universal Imaging Corporation)を用い、図1に示すように血管の長軸に沿って2ミクロンごと、あるいは法線に沿って5ミクロンごとにグレーレベルを測定した。グレーレベルの測定は各単位ミクロン内で10箇所程度の測定値の平均値を代表値とし、4匹の異なる動物、異なる細動脈、細静脈において測定した平均値(標準誤差)でデータを表現した。
3.結果
(1)正常微小循環におけるリポソーム挙動
本実施例で用いたCFSE標識プロトコールにより、循環血液中の約80%の血小板を染色した。これらの血小板は画面上で緑色の破線状に撮像された。Rh−lipoを注入すると一過性に蛍光が観察視野を通過し、その一部はわずかに細静脈内皮細胞のjunctionと思われる部位を染色するものの、大部分は血液空間に分布した。この際、CFSEで染色された血小板の色調に変化はなく、緑色に認識できるため、投与したRh−lipoは血小板内に取り込まれたりする可能性は低いものと考えられた。またRh−lipo投与後に血小板の血管内皮細胞への一過性接着反応に大きな変化は認めなかった。これらの成績は、リポソームの投与が血小板の挙動に影響を与えないことを示す証左となった。
(2)Micropoint laser ablationに伴うリポソームの挙動
上記(1)の条件下で一定のレーザーエネルギー(4−nsec energy pulseのレーザーを5Hzで約5秒間照射、laser発信機出口の出力は300μJ)によりmicropoint laser ablationを細動脈、細静脈血管(径20−40ミクロン)において施行した。
図2は細動脈におけるablation後のRh−lipoの挙動を示す。図中、矢印は傷害部位を示し、またAは細動脈を、Vは細静脈を示す。左上パネルはRh−lipoの挙動を、右上パネルはCFSE標識血小板の挙動を、左下パネルはRh−lipoとCFSE標識血小板のマルチカラーによる挙動の重ね合わせ像を、右下パネルは透過光による像を示す。Ablation後数秒のうちにリポソームの血管内からの漏出が確認され、同時に数個の血小板集塊が形成された。赤で示されるRhodamine標識蛍光像で明らかに示されるように(図2左上パネル)、リポソームは傷害近傍の血管内皮のjunctionから漏出し、拡散せずに基底膜と内皮細胞の境界(内皮下腔)にとどまり、しかも血管長軸方向に拡散せずに局所に充満し、限局性の蓄積を見せた。これらの所見は本実施例で用いたリポソームが血管内皮細胞障害部位において特異的に集積し、内皮下腔を充填することを証明している。
一方、血小板は傷害点を基点として小凝集塊を形成したが、merge像に示すようにリポソームとのオーバーラップは認めず、双方の蛍光の重なりはわずかであった(図2左下パネル)。これは本実施例で用いた陰性荷電リポソームが血小板との相互作用に依存せずに傷害局所に集積したことを示している。同様のRh−lipoの挙動は、図3に示すように、細静脈における血管内皮細胞を傷害した場合にも同様であった。ただし、細静脈では血管壁近傍をローリングする白血球に血小板が接着している場合、あるいはリポソームが白血球を巻き込んだ血小板凝集塊のなかに一部取り込まれるなどの所見を散見した。なお、図3中、矢印は傷害部位を、Vは細静脈を示す。また、左上パネルはRh−lipoの挙動を、右上パネルはCFSE標識血小板の挙動を、左下パネルはRh−lipoとCFSE標識血小板のマルチカラーによる挙動の重ね合わせ像を、右下パネルは透過光による像を示す。
(3)Rh−lipoの血管内皮下腔への集積
図4に細動脈における傷害部位でのリポソーム集積の解析結果を示す。矢印は傷害部位を示す。図4の右側のパネルは、上から順に径が22.4、21.7、23.0及び26.0μmの細動脈における傷害部位でのRh−lipoの集積像を示し、左側のパネルはそれぞれの細動脈におけるリポソーム漏出をグラフ化したものである。解析はリポソームの漏出と集積が定常状態に達するablation後5分後以降に行った。これらのデータの平均値をグラフ化したものが図5であり、傷害部位を中心として約30ミクロン内外に集中してリポソームが集積することが確認された。また法線方向での解析でも傷害部位を中心として限局した集積を示し、傷害部位反対側への粒子の移行はわずかであった。一方、細静脈においては傷害部位を中心として約40ミクロンの幅をもって集積が起こった。法線方向の分布も細動脈の際とほぼ同様であったが、時に傷害部位と反対側の血管壁へのリポソームの移行が見られる場合があった。
細動脈及び細静脈のいずれの血管種においても、本実施例で使用したリポソームには血管内皮細胞傷害部位へ集積、漏出する作用があり、血管内皮下腔に集積し傷害部位を充填する作用があること、その作用は血小板との相互作用に依存していないことが示された。
【実施例3】
炎症刺激下でのリポソームの挙動
本実施例は、腸間膜上を機械刺激でなく、一般的な炎症物質で刺激したときのリポソームの挙動を明らかにすることを目的とする。炎症刺激物質としてヒスタミンを用いた。実施例2の方法と同様に、Wistar系雄性ラット(200〜250g)をペントバルビタールナトリウム50mg/kg筋肉注射で麻酔し、大腿動脈にカテーテルを挿入した。回盲部腸間膜を腹腔外に展開し、微小循環系を正立型レーザー共焦点顕微鏡で観察した。対物レンズは60倍を使用した。
実施例1の方法で作製したリポソーム分散液を、ラット100gあたり250μl(250μl/100g rat、分散液中リポソームの体積割合は35%(サンプル中の推定リポソーム数が4.8×1012個/mlであることによる))で大腿静脈にカテーテルより注入した。
リポソーム注入の10分後に、ヒスタミン(30μM)のsuperfusion(表面灌流)(流速:2ml/min)を開始し、リポソームの挙動を10分間にわたり撮像した。ヒスタミンの灌流開始0分、2分後の細動脈(A)及び細静脈(V)におけるリポソームのローダミン標識蛍光像を図6の左上及び右上パネルに示す。中央下パネルはヒスタミン灌流開始2分後における透過光による像を示す。
ヒスタミンの2分間の表面灌流により、細静脈の血管内皮細胞のlarge poreが開き、開口したlarge poreを目指して白血球(WBC)がローリングして集積する様子が確認できる(図6中央下パネル)。ヒスタミンの灌流の結果、周囲に浸潤した白血球は、サイトカインを遊離して組織の炎症を引き起こすと考えられる。図6右上パネルは、リポソームが開口したlarge poreに集積し、充填することを示している。つまり、リポソームは白血球の組織への侵入の門戸であるlarge poreを充填することで、白血球の組織侵入(集積)を抑制することが明らかになった。
ヒスタミンなどによる炎症反応では、内皮細胞間のlarge poreの開口が炎症反応の程度を決める重要な因子である。特に浮腫は、ヒスタミンによる急性の炎症では、large poreからまずタンパク質成分の少ない体液が血管内から組織中へ漏出し、次第に血漿タンパク質を含む体液が血管内から組織中へと漏出するといわれている。このような炎症は通常細静脈で起きることが知られている。図6から分かるとおり、本発明のリポソームの集積、充填は細静脈のみに観察され、細動脈には存在しない。
従って、本実施例により、本発明のリポソームは、炎症部位に集積して炎症を抑制する作用を有していることが示された。
【実施例4】
マウスの各組織における血漿漏出量の評価
本実施例においては、エヴァンスブルー(Evans blue)トレーサーを用いて、マウス(C57BL/6)の各組織(脳、肝臓、腎臟および肺)の微小血管における血漿漏出の試験・評価を行った。
(1)リポソームの調製
リポソームは、実施例1と同様にして調製し、平均粒子径247±129nm、分散液中の体積率35%、粒子濃度約4.5×10個/μlのリポソーム分散液を得た。
(2)試験方法
ウレタン(600mg/kg)/α−クロラロース(60mg/kg)でマウス(C57BL/6)を麻酔し、気管挿管(自発的換気)した後、大腿部の静脈にカニューレを挿入した。
大腿部の静脈から、リポソームの分散液をマウスの体重に対し5μl/gとなるよう注入した。
次いで、脳虚血モデルを作製するため、左右の頚動脈(BCCA)の閉塞を1時間行った後、再灌流を行った。
大腿部の静脈からエヴァンスブルーを注入した。なお、エヴァンスブルー色素のストック溶液は、3% w/v(in PBS)であり、フィルター濾過し、4℃で保存しておいたものである。注入量は、マウスの体重1gに対し、上記ストック溶液をPBS(1%溶液)で4倍希釈したものを、5μl(50mg/kg)とした。
上記灌流(虚血灌流)を4時間継続し、その後、37℃の100mMクエン酸バッファー(pH3.5)で心灌流した。マウスの組織を組織学的に利用する場合は、50mMクエン酸にパラホルムアルデヒドを1%溶解させたもので灌流した。低pHで固定しておくことで、エヴァンスブルーとアルブミンとの結合が保持される。マウスの腹側部をピンでコルクボードに固定し、胸部腔を開き、心臓を露出させた。左心室(ちょうど頂尖部の右側)に21Gのバタフライタイプのニードルを挿入し、その後、灌流した。左心房には小さな切れ目を入れた。このようにして、すべての血液とエヴァンスブルーを脈管から洗い流すことが非常に重要である。
マウスの各組織(脳、肝臓、腎臓および肺)は、クエン酸バッファで簡単に洗浄した後、ペーパータオルでゆっくりふき取った。各組織の重さを量った後、0.5mlのホルムアミドとともに4mlのガラスバイアルに入れた。
各ガラスバイアルを55℃で一晩攪拌し、エヴァンスブルーを抽出した。翌朝、ホルムアミド抽出サンプル100μlずつを、エヴァンスブルー標準液と共にキュベットに移し、各サンプル中のエヴァンスブルーの量を分光光度計(OD620〜OD750)により測定した。
測定したOD値から、標準曲線を用いた換算により、エヴァンスブルーの濃度(ng/mg)を求めた。なお、エヴァンスブルーは、1mlのホルムアミドに添加し、55℃で一晩攪拌したものを用いた。換算値は、マウスの各組織の重さ(mg)に対するエヴァンスブルーの量(ng)となる。
コントロールとして、上述の試験方法において、左右の頚動脈(BCCA)の閉塞及びその後の灌流(虚血灌流)のみ行わなかった場合(Sham)と、リポソームの注入のみ行わなかった場合(Vehicle)について検討した。
(3)試験結果・評価
結果を図7〜9に示す。
図7は、コントロールであるShamのエヴァンスブルーの濃度(ng/mg)を1.0としたときの、Vehicleおよび本実施例の場合の濃度を、各組織(脳、肝臓、腎臓および肺)ごとに相対値で示したものである。図8は、エヴァンスブルーの濃度(ng/mg)を各組織ごとに絶対値で示したものであり、そのうち脳のみについての拡大図を図9に示した。
これらの結果から、各組織の中でも、特に脳においては、Shamに対しVehicleの場合の血漿の漏出量が顕著であり、かつ、Vehicleに対し本実施例の場合の血漿の漏出量が効果的に減少していることが分かった。虚血操作を行わなかった脳、腎臓および肺ではエヴァンスブルーの漏出増加は認められなかった。すなわち、本発明のリポソームは、脳組織中の微小血管において、脳浮腫等の炎症により障害が起こった場合または起こり得る状態となった場合に、そのような障害を効果的に抑制又は阻止し得るものであることが示された。
【産業上の利用可能性】
本発明により、表面が非カチオン性であり、組織の障害部位に付着、集積し、障害部位を特異的に充填することができる担体、当該担体を含む医薬組成物が提供される。本発明の医薬組成物は、止血作用や抗血栓作用等を有する血小板機能制御薬として使用することができる。また、本発明の医薬組成物は、血管損傷部への薬物送達(DDS)のために使用することができる。
さらに、本発明により、高スピード共焦点顕微鏡を用いて、マルチカラーかつリアルタイムで担体の組織内挙動を観察することができる。本発明の方法は、血管における担体の動態を直接的に観察することができるため、新規薬物担体又は高い選択性をもつ薬物担体の研究、開発に使用できる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面が非カチオン性であり、組織の障害部位に集積することができる担体。
【請求項2】
表面が膜からなるものである請求項1記載の担体。
【請求項3】
組織が脈管である請求項1又は2記載の担体。
【請求項4】
脈管の外部に拡散することができるものである請求項3記載の担体。
【請求項5】
脈管が血管である請求項3又は4記載の担体。
【請求項6】
障害が、内皮細胞に及ぶものである請求項1記載の担体。
【請求項7】
障害が、レーザー、炎症、虚血性疾患、虚血−再灌流障害、細菌毒素、酸化ストレス、腫瘍若しくは血栓形成、又は出血によるものである請求項1記載の担体。
【請求項8】
炎症が脳浮腫である請求項7記載の担体。
【請求項9】
虚血性疾患が虚血性脳疾患である請求項7記載の担体。
【請求項10】
虚血−再灌流障害が虚血−再灌流性臓器障害である請求項7記載の担体。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の担体からなる薬物運搬体。
【請求項12】
請求項11記載の薬物運搬体に薬物を内包又は担持させてなる医薬組成物。
【請求項13】
血小板の機能制御薬として機能させるためのものである請求項12記載の医薬組成物。
【請求項14】
血小板の機能制御が、止血、抗血栓形成、血栓溶解又は抗動脈硬化作用である請求項13記載の医薬組成物。
【請求項15】
薬物が、光、温度、pHの変化、超音波、炎症担当細胞による取り込み又は酵素による分解により活性化する物質、止血剤、抗血栓薬、血栓溶解剤、抗腫瘍剤及び抗動脈硬化剤からなる群から選択される少なくとも1種である請求項12記載の医薬組成物。
【請求項16】
炎症担当細胞がリンパ球、白血球、マクロファージ又は血小板である請求項15記載の医薬組成物。
【請求項17】
請求項12〜16のいずれか1項に記載の医薬組成物を組織の障害部位に集積させることを特徴とする薬物送達方法。
【請求項18】
請求項12〜16のいずれか1項に記載の医薬組成物を組織の障害部位に集積させ、当該障害部位に薬物を作用させることを特徴とする薬物制御方法。
【請求項19】
薬物の作用が、担体の集積、担体の拡散又は担体の活性化により制御されるものである請求項18記載の方法。
【請求項20】
組織が脈管である請求項17〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
脈管が血管である請求項20記載の方法。
【請求項22】
高スピード共焦点広視野顕微鏡下で担体の組織内挙動を観察することを特徴とする担体の機能評価方法。
【請求項23】
組織内挙動の観察が、マルチカラーかつリアルタイムで行われるものである請求項22記載の方法。
【請求項24】
担体が、表面が非カチオン性のものである請求項22記載の方法。
【請求項25】
表面が膜からなるものである請求項24記載の方法。
【請求項26】
組織が脈管である請求項22記載の方法。
【請求項27】
脈管が血管である請求項26記載の方法。

【国際公開番号】WO2005/070395
【国際公開日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【発行日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−517335(P2005−517335)
【国際出願番号】PCT/JP2005/001291
【国際出願日】平成17年1月24日(2005.1.24)
【出願人】(899000079)学校法人慶應義塾 (742)
【Fターム(参考)】