説明

脱水装置及びその制御方法

【課題】 固形物の目詰まりを容易に解消する。
【解決手段】 円板状のろ片を回転軸に多数組み付けたろ体を吐出口に向けて上下2列に複数個連続的に設け、各ろ体を正転させることにより懸濁液中の固形物を上下2列のろ体間で吐出口に向けて順次移送しつつ濾過・脱水する脱水装置において、各ろ体を正転に加えて逆転駆動する駆動手段と、該駆動手段を制御する制御手段とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱水装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特開平1−104313号公報には、円板状のろ片を回転軸に多数組み付けたろ体を吐出口に向けて上下2列に複数個連続的に設け、各ろ体を所定方向に回転させることにより懸濁液中の固形物を上下2列のろ体間で吐出口に向けて順次移送しつつろ過・脱水する回転ろ過装置において、上下2列の途中部位にろ体が連続しない減圧部を設け、該減圧部から固形物の一部を逃がすことによりろ過・分離された固形物(ケーク)の吐出口における過度の脱水硬化を防止し、以ってろ体の破損やろ過不良を防止するものが開示されている。また、この他に、上記上下2列のろ体をろ過手段とする技術が、特開昭54−29167号公報、特公昭60−18443号公報あるいは特開2001−79314号公報にも開示されている。
【特許文献1】特開平1−104313号公報
【特許文献2】特開昭54−29167号公報
【特許文献3】特公昭60−18443号公報
【特許文献4】特開2001−79314号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記特開平1−104313号公報に開示された技術は、ケークの吐出口における過度の脱水硬化を防止するものであり、ケークが吐出口に実際に目詰まりしたときのろ体の過負荷に対して有効なものではない。また、上記特開平1−104313号公報に開示された技術の場合、減圧部から逃げた固形物は、ろ液とともに外部に排出されるので、ろ液に固形物が混在することになり、濾過・脱水という本来の機能を損なうものである。このような特開平1−104313号公報も含めて、上記特開昭54−29167号公報、特公昭60−18443号公報及び特開2001−79314号公報は、固形物が吐出口に実際に目詰まりした場合に対して効果的な対策を与えるものではない。
【0004】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、吐出口における固形物の目詰まりを容易に解消することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明では、脱水装置に係る第1の解決手段として、円板状のろ片を回転軸に多数組み付けたろ体を吐出口に向けて上下2列に複数個連続的に設け、前記各ろ体を正転させることにより懸濁液中の固形物を上下2列のろ体間で吐出口に向けて順次移送しつつ濾過・脱水する脱水装置において、前記各ろ体を正転に加えて逆転駆動する駆動手段と、該駆動手段を制御する制御手段とを具備する、という手段を採用する。
また、脱水装置に係る第2の解決手段として、上記第1の手段において、各ろ体の回転負荷を検出する負荷検出手段を備え、制御手段は、前記負荷検出手段が異常負荷を検出すると、各ろ体を正転から逆転に切り換えるように駆動手段を制御する、という手段を採用する。
脱水装置に係る第3の解決手段として、上記第1または第2の手段において、駆動手段は、動力源の回転軸に固定されたスプロケットに噛み合うチェーンを介して各ろ体を回転駆動する、という手段を採用する。
脱水装置に係る第4の解決手段として、上記第3の手段において、スプロケットは、当該スプロケットの前後のチェーンが対向するように設けられ、かつ、スプロケットの前後におけるチェーンの撓みを解消する一対のテンションローラが設けられる、という手段を採用する。
脱水装置に係る第5の解決手段として、上記第4の手段において、一対のテンションローラは、スプロケットの前後におけるチェーンの対向方向に摺動自在に支持された棒状部材の両端近傍に設けられる、という手段を採用する。
脱水装置に係る第6の解決手段として、上記第5の手段において、棒状部材は、チェーンの対向中心に位置する軸回りに回動自在に支持される、という手段を採用する。
脱水装置に係る第7の解決手段として、上記第5の手段において、一対のテンションローラは棒状部材に摺動自在に設けられ、かつ、テンションローラ間には引っ張りバネが係止される、という手段を採用する。
脱水装置に係る第8の解決手段として、上記第5の手段において、一対のテンションローラは棒状部材に摺動自在に設けられ、かつ、各々のテンションローラをチェーンの対向中心方向に押圧する圧縮バネが設けられる、という手段を採用する。
一方、本発明では、脱水装置の制御方法に係る解決手段として、円板状のろ片を回転軸に多数組み付けたろ体を吐出口に向けて上下2列に複数個連続的に設け、前記各ろ体を正転させることにより懸濁液中の固形物を上下2列のろ体間で吐出口に向けて順次移送しつつろ過・脱水する脱水装置の制御方法において、各ろ体の回転負荷を検出し、前記回転負荷が過負荷になると、各ろ体を正転から逆転に切り換える、という手段を採用する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、各ろ体を正転させることにより懸濁液中の固形物を上下2列のろ体間で吐出口に向けて順次移送しつつろ過・脱水する脱水装置において、各ろ体を正転に加えて逆転駆動するので、例えば吐出口で固形物が目詰まりした場合に、各ろ体を正転から逆転に切り換えることにより目詰まり状態を容易に解消することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る脱水装置の概要を示す正面図、また図2は当該正面図におけるA−A矢視図である。これら図1,2に示すように、本脱水装置は、脱水槽1内に上下2列に連続的に配置された合計17個のろ体2A〜2Qを矢印で示す方向に回転(正転)させることにより汚泥X(懸濁液)中の固形物Yを上下2列のろ体2A〜2Q間で吐出口3に向けて順次移送しつつ濾過・脱水するものである。
【0008】
すなわち、各ろ体2A〜2Qは、図2に示すように、円板状のろ片4を回転軸5に所定間隔を設けて多数組み付けたものであり、上下2列の各々において互いに隣接するろ体2A〜2Qのろ片4同士が互いに噛み合うようにように配置されている。このような各ろ体2A〜2Qを正転させることにより、汚泥Xは濾過されて固形物Yのみが上下2列のろ体2A〜2Q間を吐出口3に向けて順次移送され、最終的にケーキZ(脱水物)として吐出口3から外部に排出される。また、各ろ体2A〜2Qによって汚泥Xから分離されたろ液は、ろ片4に複数形成されたろ液排出穴(図示略)及び下部ろ体群の下側(脱水槽1の底部)を介して脱水槽1外に排水される。
【0009】
続いて、図3は本脱水装置の駆動機構の構成を示す正面図、また図4はその左側面図、図5はその右側面図、また図6は当該駆動機構における一部拡大図である。これら図において、符号6a〜6jはろ体スプロケット、7A,7Bは電動機、8A,8Bは電動機スプロケット、9A,9Bはチェーン、10〜12はガイドスプロケット、13A,13B,14A,14Bはテンションローラ、15,16は支持棒、17,18は支持具、19A,19Bはリミットスイッチ(負荷検出手段)、また20は制御盤(制御手段)である。なお、図3において、A〜Sは上述した各ろ体2A〜2Qの回転軸に設けられたギヤを示している。
【0010】
合計9個のろ体スプロケット6a〜6jは、上記脱水槽1の側方にそれぞれ設けられておいる。これらろ体スプロケット6a〜6jのうち、ろ体スプロケット6aは、合計17個のろ体2A〜2Q中の2つ、つまりろ体2A,2Bの各ギヤA,Bに結合するように配置され、またろ体スプロケット6bはろ体2C,2Dの各ギヤC,Dに、ろ体スプロケット6cはろ体2E,2Fの各ギヤE,Fに、ろ体スプロケット6dはろ体2GのギヤGに、ろ体スプロケット6eはろ体2H,2Jの各ギヤH,Jに、ろ体スプロケット6fはろ体2K,2Lの各ギヤK,Lに、ろ体スプロケット6gはろ体2M,2Nの各ギヤM,Nに、ろ体スプロケット6hはろ体2P,2Qの各ギヤP,Qに、ろ体スプロケット6iはろ体2R,2Qの各ギヤR,Sに、それぞれ結合するように配置されている。
【0011】
一方、電動機7A,7Bは、上記脱水槽1の下方に設けられており、各々の回転軸にはチェーン9A,9Bに各々噛み合う電動機スプロケット8A,8Bが固定されている。すなわち、電動機7Aの回転軸にはチェーン9Aに噛み合う電動機スプロケット8Aが、電動機7Bの回転軸にはチェーン9Bに噛み合う電動機スプロケット8Bがそれぞれ固定されている。このような電動機7A,7Bは、上述したようにろ体2A〜2Qを図1の矢印で示す方向に正転させるように、あるいはろ体2A〜2Qをこれに対して逆回転(逆転)させるように制御盤20によって制御される。
【0012】
これら電動機スプロケット8A,8Bと上記各ろ体スプロケット6a〜6jとの間にはチェーン9A,9Bが掛け回されている。すなわち、チェーン9Aは、電動機スプロケット8A及び2つのろ体スプロケット6a,6eに掛け回され、一方、チェーン9Bは、残りのろ体スプロケット6b〜d,6f〜6iに掛け回されている。電動機7Aの駆動力はチェーン9Aによってろ体スプロケット6a,6eに伝達され、一方、電動機7Bの駆動力は、チェーン9Bによってろ体スプロケット6b〜d,6f〜6iに伝達される。
【0013】
ここで、脱水槽1の側方には、上記9個のろ体スプロケット6a〜6jに加えて、ガイドスプロケット10,11が設けられている。これらガイドスプロケット10,11は、電動機スプロケット8A,8Bに対するチェーン9A,9Bの巻付角を十分に確保するようにチェーン9A,9Bの経路を設定するために補助的に設けられたものであり、ろ体2A〜2Qの回転駆動に直接関係するものではない。脱水槽1の下方に設けられたガイドスプロケット12は、上記ガイドスプロケット11と同様にチェーン9Bの経路を設定するために補助的に設けられたものである。
【0014】
このようなガイドスプロケット10〜12を設けることにより、電動機スプロケット8A,8Bに対するチェーン9A,9Bの巻付角は、電動機スプロケット8A側では多少小さくなっているものの略180°となるように、つまり電動機スプロケット8A,8Bの前後におけるチェーン9A,9Bが電動機スプロケット8A側では多少角度をもって対向しているものの略平行に対向するように設定されている。このように電動機スプロケット8A,8Bに対するチェーン9A,9Bの巻付角を略180°とすることにより、2つのろ体スプロケット6a,6eに駆動力を伝達するチェーン9Aと7つのろ体スプロケット6b〜d,6f〜6iに駆動力を伝達するチェーン9Bとに電動機7A,7Bの回転駆動力を効率良く伝達することができる。
【0015】
また、図3には、チェーン9Aが上述した2つのろ体スプロケット6a,6eに加えてろ体スプロケット6fにも掛け回されているように描かれているが、当該ろ体スプロケット6fはギヤK,Lと結合するもの(駆動スプロケット)とフリーに回転するもの(フリースプロケット)との2重構成になっており、チェーン9Aは、所望の経路を設定するためにフリースプロケットに掛け回されている。このような事情は、ろ体スプロケット6eにも掛け回されているチェーン9Bについても同様である。
【0016】
電動機スプロケット8A,8B前後のチェーン9A,9Bには、各々に一対のテンションローラ13A,13B及びテンションローラ14A,14Bが外側から当接されている。すなわち、電動機スプロケット8A前後のチェーン9Aには一対のテンションローラ13A,13Bが外側から当接され、一方、電動機スプロケット8B前後のチェーン9Bには一対のテンションローラ14A,14Bが同じく外側から当接されている。これら各テンションローラ13A,13B,14A,14Bは、電動機スプロケット8A,8B前後におけるチェーン9A,9Bの撓み、つまり上述した電動機スプロケット8A,8Bに対するチェーン9A,9Bの巻付角の減少を防止するためのものである。
【0017】
また、テンションローラ13A,13Bは支持具17によって支持された支持棒15の両端近傍に固定されており、一方、テンションローラ14A,14Bは支持具18によって支持された支持棒16の両端近傍に固定されている。支持具17は、支持棒15を電動機スプロケット8A前後におけるチェーン9Aの対向方向に摺動自在に支持するものである。また、支持具18は、支持棒16を電動機スプロケット8B前後におけるチェーン9Bの対向方向に摺動自在に支持するものである。
【0018】
リミットスイッチ19A,19Bは、上記各ろ体2A〜2Qの回転負荷を検出するためのものである。すなわち、各電動機7A,7Bの回転時にには平行ピン(シャーピン)が連結されており、リミットスイッチ19Aは、チェーン9Aを介して伝達される各ろ体2A,2B、2H,2Iの過負荷によるシャーピンの破損を検出することにより、当該各ろ体2A,2B、2H,2Iの異常負荷を検出し検出信号として制御盤20に出力する。一方、リミットスイッチ19Bは、チェーン9Bを介して伝達される各ろ体2C〜2G,2K〜2Qの異常負荷によるシャーピンの破損を検出することにより、当該各ろ体2C〜2G,2K〜2Qの異常負荷を検出し検出信号として制御盤20に出力する。
【0019】
制御盤20は、上記各電動機7A,7Bを駆動するための駆動回路や各種操作スイッチ等から構成されている。制御盤20は、通常運転においては、運転開始を指示する運転開始スイッチが「ON」に設定されると、各ろ体2A〜2Qを正転させるように各電動機7A,7Bを駆動する。一方、制御盤20は、リミットスイッチ19A,19Bが異常負荷を検出すると、各ろ体2A〜2Qを逆転させるように電動機7A,7Bを制御する。
【0020】
次に、このように構成された本脱水装置の動作について詳しく説明する。
運転開始スイッチが「ON」に設定されると、制御盤20は、各ろ体2A〜2Qを図1の矢印で示すように正転させるように、つまりチェーン9A,9Bが矢印で示す正転方向に順次送られるように各電動機7A,7Bを駆動する。なお、図示していないが、脱水槽1内には水位センサが設けられており、該水位センサの検出水位に基づいて脱水槽1への汚泥Xの供給が制御されるので、脱水槽1内における汚泥Xの量(水位)は常に一定に保たれる。
【0021】
この場合、電動機スプロケット8Aにおけるチェーン9Aの出口側はテンションローラ13B側であり、一方、電動機スプロケット8Bにおけるチェーン9Bの出口側はテンションローラ14B側である。したがって、これら出口側ではチェーン9A,9Bが撓み易いが、本脱水装置では、テンションローラ13B,14Bによってこのような撓みは確実に防止され、電動機スプロケット8A,8Bにおけるチェーン9A,9Bの巻付角の減少による電動機スプロケット8A,8Bに対するチェーン9A,9Bの歯飛びは確実に防止され、各ろ体2A〜2Qは確実に正転駆動する。
【0022】
ここで、制御盤20は、各電動機7A,7Bの駆動に際し、電動機7Aの回転速度が電動機7Bのそれよりも若干遅くなるように制御する。すなわち、合計17個のろ体2A〜2Qのうち、吐出口3により近い上下4つのろ体2A,2B,2H,2Jの回転数は、他のろ体2C〜2G,2K〜2Qの回転数よりも多少小さく設定されている。これによって、上記4つのろ体2A,2B,2H,2Jの回転による固形物Yの移送速度は、他のろ体2C〜2G,2K〜2Qの回転による移送速度よりも小さくなり、よって固形物Yは、吐出口3近傍において確実に脱水される。
【0023】
このように各ろ体2A〜2Qが確実に正転することにより、汚泥Xは、各ろ体2A〜2Qによって順次脱水されつつ固形物Yのみが上下2列のろ体2A〜2Q間を吐出口3に向けて確実に順次移送される。そして、この固形物Yは、十分に脱水された状態でケーキZとして吐出口3から外部に排出される。
【0024】
このような通常運転において、固形物Yが過剰に硬化し吐出口3近傍に目詰まりする場合がある。このような場合、2列に配置された各ろ体2A〜2Qの回転負荷は異常負荷まで上昇し、この結果上述したシャーピンが破壊して2つのリミットスイッチ19A,19Bのいずれかあるいは両方が作動する。そして、制御盤20は、このようなリミットスイッチ19A,19Bの作動によって各ろ体2A〜2Qの異常負荷を判定すると、各電動機7A,7Bの駆動を停止する。
【0025】
このようにして、本脱水装置が異常停止すると、作業員が破壊したシャーピンを交換して本脱水装置を動作可能状態に復旧させる。そして、作業者が各ろ体2A〜2Qの逆転による運転開始を操作スイッチを操作することにより指示すると、制御盤20は、各ろ体2A〜2Qを逆転するように各電動機7A,7Bを駆動する。
【0026】
この結果、吐出口3近傍に目詰まりした固形物Yは、吐出口3とは反対側に逆送され、脱水槽1内のろ水が浸入することにより軟化する。また、硬化した固形物Yが脱水槽1の汚泥投入口側に移動するので、この硬化した固形物Yを脱水槽1の上部に設けられた点検口から脱水槽1の外部に排出することができる。さらには、各ろ体2A〜2Qにおいて、隣り合うろ片4間の間隙に噛み込まれた固形物Yが当該間隙から排出される。そして、この状態において、通常運転を再開することが可能になる。
【0027】
このような本実施形態によれば、各ろ体2A〜2Qを逆転することができるので、固形物の目詰まりを容易に解消することができる。
また、各対のテンションローラ13A,13B,14A,14Bによって、各ろ体2A〜2Qの正転時及び逆転時におけるチェーン9A,9Bの撓みが確実に防止されるので、電動機スプロケット8A,8Bに対するチェーン9A,9Bの歯飛びが確実に防止され、よって各ろ体2A〜2Qは確実に回転駆動することが可能である。
【0028】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。
(1)上記実施形態では、支持具17,18は支持棒15,16をチェーン9A,9Bの対向方向に摺動自在に指示するのみであるが、支持具17については、チェーン9A,9Bの対向方向の中間点(対向中心)における軸回りに支持棒15を回動自在に支持するようにしても良い。電動機スプロケット8Aの前後におけるチェーン9Aは平衡状態に対して角度を有しているので、支持棒15には支持具17を支点とする回転モーメントが作用する。上述したように対向中心の軸回りに支持棒15を回動自在とすることにより、上記回転モーメントによる支持棒15及び支持具17に作用する応力を大幅に緩和することが可能であり、よって脱水装置の耐久性能を向上させることができる。
【0029】
(2)また、上記実施形態では、各対のテンションローラ13A,13B,14A,14Bは各々に支持棒15,16の両端近傍に固定されているが、各対のテンションローラ13A,13B,14A,14Bを支持棒15,16に対して摺動自在に設け、かつ、各対のテンションローラ13A,13B,14A,14B間には引っ張りバネを係止するようにしても良い。すなわち、テンションローラ13A,13Bについては、支持棒15に対してその軸方向に摺動自在に取り付け、またテンションローラ13A,13B間に引っ張りバネを装着する。一方、テンションローラ14A,14Bについては、支持棒16に対してその軸方向に摺動自在に取り付け、またテンションローラ14A,14B間に引っ張りバネを装着する。
【0030】
このような構成を採用することにより、各対のテンションローラ13A,13B,14A,14Bは、各々に電動機スプロケット8A,8Bの前後チェーン9A,9Bを外側から引っ張りバネの張力を持って挟み込む状態となる。したがって、上記実施形態の場合よりも、電動機スプロケット8A,8Bに対するチェーン9A,9Bの歯飛びをより確実に防止することができる。
【0031】
なお、上記引っ張りバネに代えて、各対のテンションローラ13A,13B,14A,14Bを電動機スプロケット8A,8Bの前後チェーン9A,9Bの対向中心方向に押圧する圧縮バネを設けるようにしても良い。

(3)また、上記実施形態では、各対のテンションローラ13A,13B,14A,14Bはチェーン9A,9Bの外側に設けれているが、各対のテンションローラ13A,13B,14A,14Bをチェーン9A,9Bの内側に設けても良い。
【0032】
(4)さらに、上記実施形態では、シャーピンが破壊するという各ろ体2A〜2Qの異常負荷時に、作業員の手動によって各ろ体2A〜2Qを逆転させるようにしたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、各ろ体2A〜2Qの回転負荷を細かく検出する負荷検出手段を設け、各ろ体2A〜2Qの回転負荷がある程度の過負荷状態になると、制御盤20が負荷検出手段の出力に基づいて過負荷状態を検知して、各ろ体2A〜2Qを自動的に逆転させるようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施形態に係わる脱水装置の概要を示す正面図である。
【図2】上記正面図におけるA−A矢視図である。
【図3】本発明の一実施形態における駆動機構の構成を示す正面図である。
【図4】本発明の一実施形態における駆動機構の構成を示す左側面図である。
【図5】本発明の一実施形態における駆動機構の構成を示す右側面図である。
【図6】本発明の一実施形態の駆動機構における一部拡大図である。
【符号の説明】
【0034】
1…脱水槽、2A〜2Q…ろ体、3…吐出口、X…汚泥(懸濁液)、Y…固形物、Z…ケーキ、4…ろ片、5…回転軸、6a〜6j…ろ体スプロケット、7A,7B…電動機、8A,8B…電動機スプロケット、9A,9B…チェーン、10〜12…ガイドスプロケット、13A,13B,14A,14B…テンションローラ、15,16…支持棒、17,18…支持具、19A,19B…リミットスイッチ(負荷検出手段)、20…制御盤(制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円板状のろ片を回転軸に多数組み付けたろ体を吐出口に向けて上下2列に複数個連続的に設け、前記各ろ体を正転させることにより懸濁液中の固形物を上下2列のろ体間で吐出口に向けて順次移送しつつろ濾過・脱水する脱水装置であって、
前記各ろ体を正転に加えて逆転駆動する駆動手段と、
該駆動手段を制御する制御手段と
を具備することを特徴とする脱水装置。
【請求項2】
各ろ体の回転負荷を検出する負荷検出手段を備え、
制御手段は、前記負荷検出手段が異常負荷を検出すると、各ろ体を正転から逆転に切り換えるように駆動手段を制御する
ことを特徴とする請求項1記載の脱水装置。
【請求項3】
駆動手段は、動力源の回転軸に固定されたスプロケットに噛み合うチェーンを介して各ろ体を回転駆動する
ことを特徴とする請求項1または2記載の脱水装置。
【請求項4】
スプロケットは、当該スプロケットの前後のチェーンが対向するように設けられ、
かつ、スプロケットの前後におけるチェーンの撓みを解消する一対のテンションローラが設けられる
ことを特徴とする請求項3記載の脱水装置。
【請求項5】
一対のテンションローラは、スプロケットの前後におけるチェーンの対向方向に摺動自在に支持された棒状部材の両端近傍に設けられる
ことを特徴とする請求項4記載の脱水装置。
【請求項6】
棒状部材は、チェーンの対向中心に位置する軸回りに回動自在に支持されることを特徴とする請求項5記載の脱水装置。
【請求項7】
一対のテンションローラは棒状部材に摺動自在に設けられ、かつ、テンションローラ間には引っ張りバネが係止される
ことを特徴とする請求項5記載の脱水装置。
【請求項8】
一対のテンションローラは棒状部材に摺動自在に設けられ、かつ、各々のテンションローラをチェーンの対向中心方向に押圧する圧縮バネが設けられる
ことを特徴とする請求項5記載の脱水装置。
【請求項9】
円板状のろ片を回転軸に多数組み付けたろ体を吐出口に向けて上下2列に複数個連続的に設け、前記各ろ体を正転させることにより懸濁液中の固形物を上下2列のろ体間で吐出口に向けて順次移送しつつろ過・脱水する脱水装置の制御方法であって、
各ろ体の回転負荷を検出し、
前記回転負荷が過負荷になると、各ろ体を正転から逆転に切り換える
ことを特徴とする脱水装置の制御方法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−255640(P2006−255640A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−79058(P2005−79058)
【出願日】平成17年3月18日(2005.3.18)
【出願人】(000000099)石川島播磨重工業株式会社 (5,014)
【Fターム(参考)】