説明

脱水装置

【課題】構造が複雑でなく、装置全体の小型化や高圧濾過が可能で製造コストを低減できる脱水装置を提供する。
【解決手段】上部中央にスラリー投入口4を開設すると共に、前後端が開口された筒型のケーシング1と、該ケーシング1の前端口1aを開放及び水密状に閉塞する様に前端口1aに対し前後往復動自在に設置した蓋体2と、ケーシング長より長い円柱状に形成され、ケーシング1内部を水密状に摺動自在に成すと共に、先端がスラリー投入口4の後方位置と前端口1aの前方位置との間を往復動可能と成す様にケーシング1の後端口1bから挿嵌されたピストン3とから成り、蓋体2及びピストン3には、肉厚方向に貫通した濾水排出路6、10を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、泥砂等のスラリーを脱水する脱水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上記スラリーを脱水するには、一般に特許文献1に開示される様なフィルタプレスが用いられている。
このフィルタプレスは、前後に離間配置した固定フレーム間に、両面に濾布を被着した多数の濾板を並列配置すると共に、隣接する濾板同士を接離自在に懸架し、前記濾板群を前方の固定フレーム側へ押圧して隣接する濾板同士を圧接することにより、該隣接濾板間に濾過室を形成する様にしたプレス装置を後方の固定フレームに設置して成り、プレス装置による濾板群の圧接状態で濾過室内にスラリーをポンプで圧入して濾布にて濾過することにより脱水し、脱水後にプレス装置による前記圧接を解除して濾板を相互に離間させて濾布に付着している濾滓を落下排出する。
【特許文献1】特公昭50−3227号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記様な構成のフィルタプレスでは、含水率を低下させた濾滓を得るための高圧濾過には、能力の大きいポンプを使用せねばならなず、これに伴って隣接濾板間のシール性やプレス装置の押圧力を向上させねばならないので、フィルタプレス全体が大型化し、製造コストも高騰する課題を有している。
そこで本発明では、構造が複雑でなく、装置全体の小型化や高圧濾過が可能で製造コストを低減できる脱水装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題に鑑み、本発明の脱水装置は、上部中央にスラリー投入口を開設すると共に、前後端が開口された筒型のケーシングと、該ケーシングの前端口を開放及び水密状に閉塞する様に前端口に対し前後往復動自在に設置した蓋体と、ケーシング長より長い円柱状に形成され、ケーシング内部を水密状に摺動自在と成すと共に、先端がスラリー投入口の後方位置と前端口の前方位置との間を往復動可能と成す様にケーシングの後端口から挿嵌されたピストンとから成り、蓋体及びピストンには、肉厚方向に貫通した濾水排出路を設けたことを特徴とする。
又、蓋体とピストンの夫々は本体がケーシングの外側方に固定された個別の油圧シリンダにて動作する様に連繋され、蓋体作動用の油圧シリンダはそのロッドの収縮にて前端口を閉塞し、ピストン作動用の油圧シリンダはそのロッドの収縮にてケーシング内部を前進する様に設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
要するに請求項1に係る発明によれば、蓋体で前端口を水密状に閉塞したケーシングにおいて、上部のスラリー投入口から内部に投入されたスラリーをピストンで圧縮することにより、スラリーは蓋体とピストン間で圧搾され、その含有水分が蓋体とピストンに設けた濾水排出路から外部へ排水されることで脱水される。
この様に、本発明のものは、従来のフィルタプレスの様にポンプによる加圧脱水方式ではないため、高圧濾過が容易であり、しかも蓋体とピストンの押圧力による圧搾圧力を低圧から高圧まで自由に設定できるので、所望の含水率を有する濾滓を確実に得ることができる。
又、ピストンはケーシングよりも長い円柱状に形成され、ピストンロッドを有しないため、ケーシングが非常に長くても、圧縮時に座屈を起こすことがなく、常に安定した動作でスラリーを圧搾できる。
更に上記脱水処理後、蓋体をケーシング前端口から離脱させてこれを開放し、濾滓をピストンで押し出すことにより濾滓をケーシング外部へ容易にして確実に排出できる。
又、本発明のものは、従来のフィルタプレスの様に構造が複雑でなくシンプルであるから製造コストを飛躍的に低減できる。
【0006】
請求項2に係る発明では、蓋体とピストンの夫々は本体がケーシングの外側方に固定された個別の油圧シリンダにて動作する様に連繋され、蓋体作動用の油圧シリンダはそのロッドの収縮にて前端口を閉塞し、ピストン作動用の油圧シリンダはそのロッドの収縮にてケーシング内部を前進する様に設定したので、夫々の油圧シリンダを蓋体の前方やピストンの後方に単純に配置した場合に比し、装置全体を比較的コンパクトに構成できる。
従って、装置全体の小型化が可能であり、その設置スペースを大きく取る必要がなく便利である等その実用的効果甚だ大である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下本発明の実施の一形態例を図面に基づいて説明する。
図1は本発明に係る脱水装置の側面図、図2は脱水装置の平面図、図3〜7は脱水装置におけるスラリーの脱水過程を示す断面図、図8は図5の要部拡大図である。
この脱水装置は、前後端が開口された筒型のケーシング1と、該ケーシング1の前端口1aを閉塞する蓋体2と、ケーシング1の後端口1bから挿嵌されたピストン3とから主に構成されている。
【0008】
ケーシング1は、所定の大きさを有する円筒形状に形成され、その上部中央に内部に連通するスラリー投入口4を開設し、該スラリー投入口4にホッパー5を取付けている。
【0009】
蓋体2は、ケーシング1より大径で厚肉な円板状に形成され、前端口1aを開放及び水密状に閉塞する様に前端口1aに対し前後往復動自在に設置されている。
又、蓋体2の下部には、その肉厚方向に貫通した濾水排出路6を所定数(図示例では1本)設けると共に、蓋体2においてピストン3との内向面には水切りネット7と濾布8を配設している。
【0010】
そして、蓋体2は、本体9aがケーシング1外側方の左右に夫々固定された油圧シリンダ9にて動作する様に連繋されており、この蓋体作動用の油圧シリンダ9はそのロッド9bの収縮にて前端口1aを閉塞する様に設定している。
尚、ケーシング1前端面、又は蓋体2のケーシング1前端面との当接対応箇所には、図示しないシールリングを設け、蓋体2による前端口1aの閉塞状態における水密性を保持している。
【0011】
ピストン3は、ケーシング長(全長)より長い円柱状に形成され、ケーシング1内部を水密状に摺動自在と成しており、ケーシング1内部におけるスラリー投入口4の後方位置Xと、ケーシング1外部となる前端口1aの前方位置Yとの間を、ピストン3の先端が往復動可能と成す様に設定している。
又、ピストン3の下部には、その肉厚(軸線)方向に貫通した濾水排出路10を所定数(図示例では1本)設けると共に、ピストン3の先端面には水切りネット11と濾布12を配設している。
【0012】
そして、ピストン3は、本体13aがケーシング1外側方の左右に夫々固定された油圧シリンダ13にて動作する様に連繋されており、このピストン作動用の油圧シリンダ13はそのロッド13bの収縮にてケーシング1内部を前進する様に設定している。
尚、ピストン3の周面適所には、図示しない所定数のシールリングを装着している。
【0013】
上記の様に構成された脱水装置の動作について主に図3〜8に基づき説明する。
先ず、油圧シリンダ9の作動にてそのロッド9bを収縮させることにより、蓋体2で前端口1aを水密状に閉塞し、油圧シリンダ13の作動にてロッド13bを伸長させ、ピストン3をその先端の後退限であるケーシング1内の後方位置Xまで後退させ、ケーシング1内において、ピストン3と蓋体2間の空間を拡張する。
かかる状態にてスラリーWをホッパー5へ投入することで、スラリーWはスラリー投入口4を介してケーシング1内部に投下される(図3参照)。
【0014】
次いで、油圧シリンダ13のロッド13bを収縮させることにより、ケーシング1内部のスラリーWをピストン3で圧縮し、これによりスラリーWはピストン3と蓋体2間で圧搾されると共に、蓋体2とピストン3との内向面の夫々に配設した水切りネット7、11及び濾布8、12にて濾過され、かかる圧搾濾過によりスラリーWに含まれる水分は濾水配設路6、10を通じて外部へ排出される(図4、8参照)。
当然ながら、かかる状態において、油圧シリンダ9による蓋体2の押圧力は、油圧シリンダ13によるピストン3の押圧力よりも大きく設定され、そのピストン力に対抗できる様に成している。
【0015】
ピストン3によるスラリーWへの押圧は、これが所望の含水率に到達した濾滓W1となることで完了する(図5参照)。
この後、油圧シリンダ9のロッド9bを伸長させて蓋体2を前端口1aから所定間隔を以て離脱させて前端口1aを開放する(図6参照)。
そして、油圧シリンダ13のロッド13bを上記より更に収縮させ、ピストン3をその先端の前進限であるケーシング1外の前方位置Yまで前進させることで濾滓W1をケーシング1外部へ押し出す。
これにより、濾滓W1はその自重とピストン3の押し出しによる衝撃によりピストン3先端の濾布12から簡単に剥がれて自然落下する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】脱水装置の側面図である。
【図2】脱水装置の平面図である。
【図3】スラリー投入状態を示す脱水装置の断面図である。
【図4】スラリー圧搾過程を示す脱水装置の断面図である。
【図5】スラリー圧搾完了状態を示す脱水装置の断面図である。
【図6】蓋体の開放状態を示す脱水装置の断面図である。
【図7】濾滓排出状態を示す脱水装置の断面図である。
【図8】図5の要部拡大図である。
【符号の説明】
【0017】
1 ケーシング
1a 前端口
1b 後端口
2 蓋体
3 ピストン
4 スラリー投入口
6 濾水排出路
9 油圧シリンダ
9a 本体
9b ロッド
10 濾水排出路
13 油圧シリンダ
13a 本体
13b ロッド
X 後方位置
Y 前方位置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部中央にスラリー投入口を開設すると共に、前後端が開口された筒型のケーシングと、該ケーシングの前端口を開放及び水密状に閉塞する様に前端口に対し前後往復動自在に設置した蓋体と、ケーシング長より長い円柱状に形成され、ケーシング内部を水密状に摺動自在と成すと共に、先端がスラリー投入口の後方位置と前端口の前方位置との間を往復動可能と成す様にケーシングの後端口から挿嵌されたピストンとから成り、蓋体及びピストンには、肉厚方向に貫通した濾水排出路を設けたことを特徴とする脱水装置。
【請求項2】
蓋体とピストンの夫々は本体がケーシングの外側方に固定された個別の油圧シリンダにて動作する様に連繋され、蓋体作動用の油圧シリンダはそのロッドの収縮にて前端口を閉塞し、ピストン作動用の油圧シリンダはそのロッドの収縮にてケーシング内部を前進する様に設定したことを特徴とする請求項1記載の脱水装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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