説明

脱着式ホイッスル

【課題】内部まで洗浄可能な、容易に側板を脱着できるホイッスルを提供することを目的とする。
【解決手段】内部に共鳴室21及び送気管26を有し、放音口22及び送気口25を開口させたホイッスル1において、一方の側面が開口した硬質樹脂からなるボディ11と、この側面開口部を閉じる硬質樹脂からなる側板12とから構成する。そして、ボディ11の共鳴室21を構成する共鳴室壁21aの一部が切り欠かれた共鳴室壁開放部21bを有し、また、側板12の共鳴室21対応箇所に円弧状の第1フランジ31を設け、第1フランジ31に凹部32、第1フランジ受け27に凸部28を設ける。側板12装着の際に共鳴室壁開放部21bによって共鳴室21を拡大又は縮小させて第1フランジ31を圧入させる。そして、凸部28と凹部32を係止させて側板12の脱落を防ぐ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、嵌め合い機構を用いて側板を脱着できる脱着式ホイッスルに関する。
【背景技術】
【0002】
ホイッスルはヒトの呼気を移用して吹鳴させる簡便な道具である反面、その構造はほとんどの部分が密閉されていることから内部まで容易に洗浄することができず衛生上の問題がある。マウスピースに付着した唾液あるいは、ホイッスル内部に滞留した唾液により衛生上は好ましくない状況であることは周知の通りである。具体的には、滞留した唾液中で繁殖した雑菌による異臭の問題や滞留唾液によるホイッスル材料の溶出の問題、或いは病原菌による経口感染症の心配である。特に経口感染症についてはO157事件以来近年脚光を浴びている。経口感染症を引き起こす病原菌としては、O157に止まらず、病原ビブリオ、サルモネラ菌、病原大腸菌などがあり、嘔吐、発熱、腹痛、下痢を引き起こす。これら感染性胃腸炎の他にも、A型肝炎、腸チフス、赤痢、コレラがある。他に、エイズは経口感染症ではないが、心理的に他人が使用したホイッスルを使用することの嫌悪感の冗長に大きく影響を及ぼしている。
【0003】
このような問題に対して、通常水による洗浄が行われている。図8に従来の一般的なホイッスル2を示しているが、従来のホイッスル2では各部材が接着等により一体的に形成されているため、これを分解することはできない。従って、ホイッスルの外側は洗浄できるものの、内部は通水するのみで十分に洗浄できないため、現状として不快感が払拭できないでいる。この問題に対する提案として、従来使用されている連続多孔性のコルク玉振動子に代わって、微小孔を有しないプラスチック玉振動子を使用するもの、或いは振動子としてプラスチック製のパイプを使用し、このパイプに抗菌剤を混入したもの(特許文献1)がある。
【特許文献1】特開平9−212171号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、唾液等水分を吸収しない振動子、更に、この振動子を抗菌剤から形成しているが、衛生に保てるのは振動子のみに留まるため、送気管や共鳴室内に滞留する唾液からの雑菌の繁殖を抑えることができず、依然としてホイッスル内部を衛生に保つことができないという課題を有する。
【0005】
また、複数の部品を脱着自在で結合する、所謂はめ合い機構としてはねじ式と凹凸を利用するものに大別され、用途に応じて使い分けられており、これをホイッスルに適用することも考えられる。
【0006】
この中で、ねじ方式では確実な嵌め合いが実現できるが、ホイッスルは単純な円筒体ではないのでねじ式の利用は難しい。小ネジを多用すると、脱着には工具等が必要になり簡単に脱着できず、実情に沿わないという問題が生じる。
【0007】
また、凹凸を利用する嵌め合い機構は、最終的な凹凸による嵌め合い固定に至る前過程で嵌め合いに関与する両部材間に、ある一定以上の互いに押し合う力(以後、嵌め合い圧力と称する)が有るものと、無いものとに分類される。
【0008】
前者は嵌め合い機構で最も多く見られる方法で、嵌め合い部に嵌め合い圧力が存在しないか、あっても微小なものでボックスの蓋など、小さな力で開閉できるものなどに用いられている。このようなものでは隙間が大きいことから衝撃で外れやすいとともに、ホイッスルにそのまま適用しても不要に空気が漏れて、音量の低下や音質の変化が生じてしまう。従って、ホイッスルそのものに求められる機能が損なわれるので、これをホイッスルに応用することはできない。
【0009】
後者は、嵌め合い部に適度の嵌め合い圧力が存在し、開閉には嵌め合い圧力以上の力を必要とするもので、内容物が漏れないなどシールド機構を併せ持っているものが多い。ここで存在する嵌め合い圧力は、両部材が互いに押し合う嵌め合い公差が−0.1〜−1.0mmの両部材が互いに押し合う嵌め合いで、しかも材料が柔らかい素材によって作られている。これらは、調味料が入った容器の蓋や食物用プラスチックボックス等、気密性が求められるものに使用されている。例えば、調味料の場合、蓋が容器本体に押し込まれた場合、蓋と容器本体のお互いの嵌め合い部が弾性変形して、蓋の侵入を可能にし、最終的に凸部が凹部におさまって固定される。これを実現するには嵌め合い部品が指先で押す力で柔軟に変形する必要があるので、軟質ポリエチレン、軟質ポリプロピレン等の軟質樹脂を用いなければならない。ホイッスルは口に咥え、また歯でかむことが使用上必然的に起こるため、このような軟質樹脂による嵌め合い機構をホイッスルに応用することはできないという問題がある。また、軟質樹脂では柔らかくするために可塑剤を混合するが、その多くは人にとって有害であり、唾液による溶出が懸念される。
【0010】
本発明は、上記事項に鑑みてなされたものであり、容易に側板を脱着でき、ホイッスルの内部まで洗浄でき且つ振動子をも取り出して洗浄できる実用的なホイッスルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の第1の観点に係る脱着式ホイッスルは、内部に共鳴室及び送気管を有し、放音口及び送気口を開口させたホイッスルにおいて、一方の側面が開口した硬質樹脂からなるボディと、この側面開口部を閉じる硬質樹脂からなる側板とから構成され、前記ボディの共鳴室を構成する共鳴室壁の一部が切り欠かれた共鳴室壁開放部を有し、前記側板の前記共鳴室部分に第1フランジを設け、前記第1フランジに凸部又は凹部、前記共鳴室壁に凹部又は凸部を設け、前記側板の装着時に前記共鳴室壁開放部によって前記共鳴室を拡大又は縮小させて前記第1フランジを前記共鳴室に圧入させ、前記凸部と前記凹部を係止させて側板の脱落を抑制する、ことを特徴とする。
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の第2の観点に係る脱着式ホイッスルは、内部に共鳴室及び送気管を有し、放音口及び送気口を開口させたホイッスルにおいて、一方の側面が開口した硬質樹脂からなるボディと、この側面開口部を閉じる硬質樹脂からなる側板とから構成され、前記側板の前記共鳴室部分に一部が切り欠かれたフランジ開放部を有する第1フランジを設け、前記第1フランジに凸部又は凹部、前記ボディの共鳴室を構成する共鳴室壁に凹部又は凸部を設け、側板の装着時に前記フランジ開放部によって前記第1フランジを拡大又は縮小させて前記第1フランジを前記共鳴室に圧入させ、前記凸部と前記凹部を係止させて側板の脱落を抑制する、ことを特徴とする。
【0013】
好ましくは、前記側板の装着に際して前記共鳴室壁或いは前記第1フランジの復元力によって前記第1フランジと前記共鳴室壁を契合させて側板の脱落を抑制する、ことを特徴とする。
【0014】
好ましくは、前記共鳴室壁の側面開口端を薄肉にして第1フランジ受けを形成し、前記第1フランジ受けに凹部又は凸部を設けた、ことを特徴とする。
【0015】
好ましくは、前記側板の前記送気管部分に第2フランジを設け、前記第2フランジに凸部又は凹部、前記送気管を構成するマウスピース上下板の少なくとも一方に凹部又は凸部を設け、前記側板の装着時に前記マウスピース上下板或いは第2フランジを上下に変位させて前記第2フランジを圧入させ、前記凸部と前記凹部を係止させて側板の脱落を抑制する、ことを特徴とする。
【0016】
好ましくは、前記マウスピース上下板或いは第2フランジの復元力によって前記第2フランジとマウスピース上下板を契合させて側板の脱落を抑制する、ことを特徴とする。
【0017】
好ましくは、前記第2フランジが前記マウスピース上下板の間に嵌るように形成され、前記第2フランジの少なくとも一部は前記マウスピース上下板を咥えた際に唇或いは歯が押さえ付ける部位に位置する、ことを特徴とする。
【0018】
好ましくは、前記第2フランジに突出部が形成され、前記第2フランジの凸部又は凹部が前記突出部に設けられるとともに前記マウスピース上下板を咥えた際に唇或いは歯が押さえ付ける部位に位置する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明に依れば、共鳴室壁の一部は、共鳴室壁開放部として切り欠いており、側板に設けた第1フランジを圧入させる際に、共鳴室壁が弾性変形して共鳴室が拡大又は縮小する。これにより、第1フランジを容易に圧入させることができる。側板を簡単に脱着することができるので、ホイッスルの共鳴室や送気管等、内部及び振動子まで完全に洗浄でき、滞留した唾液による雑菌の繁殖を抑え、衛生に保てる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1及び図2を参照して、実施形態1に係る脱着式ホイッスル1について説明する。図1はホイッスル1の外観を示し、図2はホイッスル1の側板12を外した状態を示している。
【0021】
ホイッスル1は、図1に示すように、通常の振動子型ホイッスルとほぼ同様の形状をしている。振動子型ホイッスルであるので、内部に円筒状の共鳴室21と、送気管26を有し、共鳴室21にはコルク等からなる振動子41が挿入されている。そして、音を発する放音口22及び空気を吹き込む送気口25が開口している。また、左右の両側板には円盤状に窪んだグリップ43を設け、使用時に指で摘み易くしている。そして、貫通孔を有するホルダー42を設けており、紐を通し首から下げられるようにしている。
【0022】
ホイッスル1は、一般的な振動子型ホイッスルと同様、共鳴室21部分の外形は約19mm(円筒の肉厚2mm)で円筒部の外形長さは約20mmであり、マウスピース24の長さ約24mm、高さ約7mm、幅約16mm、マウスピース上下板24a、24bの肉厚は約2mmである。共鳴室21の内径は約15mm、深さ約16mmである。振動子型ホイッスルでは、約4KHzの共鳴周波数が最適であり、殆どの同型ホイッスルがこの共鳴周波数を採用しており、この共鳴周波数を実現するには音響工学理論より円筒状の共鳴室の直径は約15mmとなる。それより大きい場合、音色が低くなり注意を喚起する音としては、不適当である。また15mmより小さい場合は甲高い音となって不快感が増し適さない。
【0023】
そして、ホイッスル1は、ボディ11と側板12とから構成され、後述する嵌め合い機構により側板12を脱着自在にしている。
【0024】
ボディ11及び側板12は、それぞれ射出成形等、金型による樹脂成型により得られる。成型材料として硬質樹脂を用いる。ホイッスルは口に咥え、また歯で噛むことが使用上必然的に起こるため、軟質樹脂は使うことはできず、傷、衝撃及び変形に強い高強度の硬質樹脂を用いる必要があるためである。硬質樹脂としてABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)樹脂を用いることが好ましい。更にABS樹脂の中で人体に悪影響を及ぼす成分溶出(ビスフェノールA、ホルムアルデヒド等)の無い食器用品種を用いることが望ましい。
【0025】
図2に示すように、ボディ11は一方の側面が開口しており、内部には共鳴室壁21aで構成された円筒状の共鳴室21を有する。共鳴室壁21aの一部は、波線で示すように共鳴室21の円筒軸方向に約5mmのスリット状に切り欠かれた共鳴室壁開放部21bとしている。共鳴室壁開放部21bは、放音口22に対応して切り欠いている。口に咥える部分として、送気管26を上下に挟んで構成するマウスピース上板24a、マウスピース下板24b及び開口部の逆側の側板をつなぎ、三側面が開放した細長いコの字形状をしたマウスピース24を有する。
【0026】
ボディ11の共鳴室部分の側面開口端、即ち共鳴室壁21a端部の内側には、嵌め合い機構として幅約5mmの開口端を薄肉にした第1フランジ受け27が円弧状に形成されている。この第1フランジ受け27には円周上に幅1.5mm、高さ約0.3mm、長さ約15mmの係止用の凸部28が3つないし4つ程形成されている。
【0027】
なお、必ずしも共鳴室壁21aの側面開口端を薄肉にして第1フランジ受け27を設ける必要はないが、図2に示すように第1フランジ受け27を薄肉にして段差を設けることにより、側板12をボディ11に装着した際、共鳴室21が段差のない円柱形状を形成することが可能となり、複雑な共鳴が生じることがないとともに、振動子41の動きが妨げられることがない。そして、段差が一つ増加することにより空気抵抗が大きくなるので、密着性が高く空気の漏れがなくなることから吹鳴時に音量が低下しない利点がある。
【0028】
マウスピース上下板24a、24bには、それぞれ係止用の凸部29を対向させて設けている。この凸部29は、幅1.5mm、長さ5mm、高さ0.3mm程度とし、マウスピース上下板24a、24bそれぞれに1或いは2箇所形成するとよい。
【0029】
側板12は、ボディ11の開口部を覆うように形成されている。そして、嵌め合い機構として、ボディ11の共鳴室21対応箇所に第1フランジ31を設け、また、ボディ11の送気管26対応箇所に第2フランジ33を設けている。
【0030】
第1フランジ31は、第1フランジ受け27の形状に合わせて円環状に形成されている。第1フランジ31は、図2に示すように、放音口22対応部をフランジ開放部31aとして切り欠き、円弧状とすることが好ましい。このフランジ開放部31aは必ずしも放音口22対応部である必要は無く、他の部位であってもよい。第1フランジ31の内径は共鳴室21の内径(15mm)に等しく、外径は第1フランジ受け27の内径に対して嵌め合い公差(第1フランジ31外径−第1フランジ受け27内径)が−0.1〜+0.3mmとなるように設定し、その先端を曲面にして挿入し易くしている。第1フランジ31は幅5mm、肉厚1mmとし、第1フランジ31の中間には、幅1.6mm、深さ0.5mmの溝状に形成した係止用の凹部32を全円周上に設けている。
【0031】
第2フランジ33は、送気管26の形状に合わせ、マウスピース上下板24a、24bの間に嵌り込むように形成されている。好ましくは、送気管26の高さに対し、嵌め合い公差(送気管26高さ−第2フランジ33の厚さ)が−0.1〜+0.3mmとなる厚さに形成する。そして、第2フランジ33の一部に突出部34を形成しており、この突出部34にはマウスピース上下板24a、24bの凸部29に対応する位置に、幅1.6mm、長さ5.5mm、深さ0.5mmの係止用の凹部35を設けている。そして、凸部29及び凹部35はマウスピース24を咥える際に、唇或いは歯が押さえ付ける位置に対応させて設けている。
【0032】
また、側板11の共鳴室21対応部と送気管26対応部の連結部は、ボディ11よりも若干はみ出すように形成されている。ボディ11は図2に示す破線で示された大きさであり、側板12の装着持にはこの破線部以下がボディ11から突出した状態となる。この突出した部分がつまみ36となり、このつまみ36に指を引っかけて、側方に力を加えることで側板12を取り外し易くしている。
【0033】
このつまみ36は、意匠の観点からもボディ11の反対側面にも同じものを設けるとよい。かくなすことにより、送気口25側から見て左右の側板が自動車の両輪のように下に飛び出した形状となる。更に、ホイッスル1を口に咥えた場合、この突出部分の配置は新たな利点がある。マウスピース24をくわえた際に、ホイッスル1の両サイドの飛び出した側板(つまみ部36)は唇に沿うように湾曲していることから、下唇に適度にフィットし、左右への滑り移動及び滑落防止となり、ホイッスル1の固定に役立つ。従ってスポーツ審判等動きの激しい用途に非常に有効となる。
【0034】
続いて、図3及び図4を参照し、ボディ11と側板12の嵌め合い機構による側板12の脱着について説明する。図3(A)は、ボディ11の開口部側から見た側面図、(B)は、側板11の側面図である。また、図4は、第1フランジ受け27の凸部28と第1フランジ31の凹部32の係止状態を示す断面図である。
【0035】
まず、共鳴室21部分の嵌め合い機構について説明する。側板12をボディ11に装着する際には、ボディ11開口部に側板12を合わせ、そのまま側板12をボディ11側に押し込む。第1フランジ31が凸部28に当接しても、図3(A)の矢印にて示すように共鳴室21は放射状に拡大する。各構成部の肉厚が薄く(1〜3mm)、また、共鳴室壁開放部21bによって、共鳴室壁21aが弾性変形機能を有するため、硬質樹脂からなる共鳴室壁21aが弾性変形し、放射状に拡大する。そして凸部28の高さは0.3mmと微小であるから、共鳴室壁開放部21bによる共鳴室壁21aの変位は、第1フランジ31の進入を助けるに十分であるので、第1フランジ31は凸部28に当接後もそのまま第1フランジ受け27に進入していく。
【0036】
もし、共鳴室壁21aに共鳴室壁開放部21bの切り欠きが無く、完全に閉じた円環から構成されている場合、第1フランジ受け27とほぼ同寸法の第1フランジ31を圧入させようとしても、第1フランジ受け27には凸部28が形成されているので、第1フランジ31が凸部28に突っ掛かってしまう。硬質樹脂からなる閉じた円環では、共鳴室が放射状に広がることがなく、第1フランジ31が凸部28に当接した後はそれ以上進入することはない。このため、側板12をボディ11に装着することができない。もし無理矢理圧入すると硬質樹脂それ自身には柔軟性が無い為、凸部28が損傷して係止不能となる。
【0037】
本発明では、上述のように切り欠きを巧みに利用して、硬質樹脂であっても弾性変形可能にして、側板12の脱着を実現している。
【0038】
更に、第1フランジ31も一部を切り欠いてフランジ開放部31aを構成し、第1フランジ31自身にも弾性変形機能を持たせている。このフランジ開放部31aによって、第1フランジ31が凸部28に当接した際、図3(B)の矢印にて示すように、第1フランジ31が弾性変形して内側に収縮する。これにより、第1フランジ受け27への第1フランジ31の圧入を更に容易にすることができる。
【0039】
そして、図4に示すように、凸部28と凹部32が係止されるまで、第1フランジ31が第1フランジ受け27に圧入する。なお、脱着の際、第1フランジ31の先端部や第1フランジ受け27の凸部28が角張っていると、第1フランジ31の圧入が阻害されるので、図4に示すように、角部分には面取りを施すとよい。
【0040】
ここで、前記した嵌め合い公差に付いて詳述する。第1フランジ31の外形が第1フランジ受け27の内径に対して嵌め合い公差が−0.1〜0.0mmに設定された場合、凹部32と凸部28のみで係止する。この場合共鳴室壁21a或いは第1フランジ31の復元力は存在しないが、ホイッスル1は軽量である(8〜12g)こと、及び硬質樹脂を用いていることにより、通常の使用状態或いは落下等の衝撃で契合部を開く力は発生せず、実用上問題ない。一方、嵌め合い公差が0.0〜0.3mmに設定された場合、凹部32と凸部28による係止に加えて、共鳴室壁21a或いは第1フランジ31の復元力が残存する為、第1フランジ31と第1フランジ受け27の接触面が押圧され、より密着性が高まり、強固な契合と高い気密性が実現できより優れた構造となる。尚、嵌め合い公差が−0.1mm以下の場合、第1フランジ31と第1フランジ受け27との隙間が大き過ぎ、側板12の装着状態において側板12が外れやすくなってしまう。また、嵌め合い公差が0.3mm以上の場合、側板12を装着或いは取り外す際に強い力を要するので、側板12の容易な脱着が困難になる。
【0041】
続いて、マウスピース24部分の側板12の嵌め合い機構について説明する。側板12をボディ11開口部に合わせ、そのまま側板12をボディ11側に押し込むと、第2フランジ33が送気管26の開口部に進入し、更に凸部29が凹部35に嵌って係止される。
【0042】
マウスピース24は三側面が開放した細長いコの字形状としており、マウスピース24の開放部にこれより若干大きい(0.1乃至1.0mm)部材が侵入した場合、図3(A)の矢印に示すように、弾性変形してマウスピース上板24aは上方向に変位し、一方のマウスピース下板24bは下方向に変位する。また、凸部29の高さは0.3mmと微小であるからマウスピース上下板24a、24bの変位は凸部の進入を許容でき、これにより、第2フランジ33が凸部29にぶつかったとしても、凸部29が凹部35に入り込むまで送気管26内に圧入できる。このように、マウスピース24はバネに適するコの字型形状をしており、嵌め合い機構に最適なバネとして働く。前述したABS樹脂はそれ自身優れたバネ材であり、また優れた強度、耐瑕性、健康面での安全性と併せて、本発明の材料として最適である。
【0043】
第2フランジ33とマウスピース24の嵌め合いについても、嵌め合い公差に関し、前述した共鳴室壁21aと第1フランジ31と同様のことが言える。即ち、嵌め合い公差が−0.1〜0.0mmの場合、凹部35と凸部29の係止のみで契合し、同公差が0.0〜0.3mmの場合、凹凸部35、29の係止に加えて、マウスピース24または第2フランジ33の残存する復元力が作用する。前者においては、硬質樹脂からなるコの字型をした細長いマウスピース24は凹凸部35、29の係止のみで、実用的に十分な側板12の脱落抑止力を有し、更に後者は、マウスピース24と第2フランジ33が大きな嵌め合い圧力で互いに押圧して契合して、十分な脱落抑止力と気密性を実現するのである。
【0044】
また、マウスピース上下板24a、24bの凸部29、及び第2フランジ33の凹部35は、くわえた際に上下の唇或いは歯で押さえる箇所に設けてある。これにより、唇或いは歯によってくわえる力が直接凸部29と凹部35の係止状態を強固にするので、使用中に側板12が脱落することを完全に防止できる。また、第2フランジ33には突出部34を形成し、ここに凹部35を設けているが、使用時に強い力で噛んでも、この突出部34がマウスピース24の潰れ等を防ぐように支持するので、嵌め合い機構及びマウスピース24が十分に保護され、壊れることはない。
【0045】
洗浄等のため側板を取り外すには、つまみ36(図2参照)に指をかけて、反対方向に引っ張れば良い。つまみ36はボディ11から3〜5mmはみ出ているので、容易に指をひっかけることができる。上述のように、共鳴室壁21aの一部は共鳴室壁開放部21bとして開口しているため、共鳴室21が放射状に拡大するとともに、第1フランジ31が内側に圧縮されて弾性変形するので、凸部28と凹部32の係止が容易に外れる。また、マウスピース上板24aが上方向に変位し、また、マウスピース下板24bが下方向に変位するので、凸部29と凹部35の係止が外れ、側板12を取り外すことができる。このように、容易に側板12を取り外し、内部を完全に露出させ得るので、ホイッスル1内部を洗浄でき、内部に滞留する唾液等を完全に除去できる。更に多孔質で雑菌が最も繁殖し易い振動子を取り出すことができるので、洗浄により衛生に保つことができる。従って、ホイッスル1内部に雑菌が繁殖することなく、衛生に保つことができ、異臭を発生することが無く不快感が払拭できる。また、他人が使用したものであっても内部まで洗浄できるから、不快感を軽減できる。
【0046】
本発明の脱着自在のホイッスル1は、超音波溶着或いは接着剤で接合された従来のホイッスルと遜色無く吹鳴できる。ホイッスル1は閉じた管ではなく、音を放出する放音口22があり、送気口から流入した空気のほとんどは、放音口に比べ、0.05〜0.1mmと微小で、且つ折れ曲がって空気抵抗の大きい嵌め合い機構の隙間を通らず、放音口22に流れるからである。
【0047】
また、第1フランジ31の内径は共鳴室21の直径と同じであるから、共鳴室21の容積は従来の脱着不可能なホイッスルと同様である。従って、吹鳴音も従来のホイッスルに対して劣ることはない。なお、突出部34は送気管26を塞ぐことになるが、送気管26の全長ではなく、その一部であるので、吹きづらいといったことはなく従来と変わらず使用できる。
【0048】
上記説明では、係止用の凸部28、29をボディ11、凹部32、35を側板12に設けた場合について説明したが、その逆にしても良いことは明白である。また、嵌め合いに使用される凹部、凸部の形状及び大きさは、さまざまな形態にして用いることが可能であることは言うまでもない。例えば、断面形状が円形或いはV字型であっても良い。
【0049】
また、上記説明では、振動子型のホイッスルを例にとり説明したが、これに限定されるものではなく、非振動子型ホイッスルについても適用することができる。本発明の嵌め合い機構による脱着は、上述したように一部に切り欠きを有する点に大きな特徴がある。切り欠きを有する限り、素材である硬質樹脂は弾性変形可能となり、ボディと側板の嵌め合い機構として有効に機能するからである。
【0050】
図5は、他の実施形態のホイッスルにおける共鳴室部の係止状態を示す断面図である。前述の構造とは逆に、側板12の第1フランジ31がホイッスルの外形をなし、第1フランジ31の内側にボディ11のフランジ受け27が嵌り込む構造である。他の構造については前述と同様である。
【0051】
なお、ここでフランジとは側板12から突出させた箇所をいい、また、ボディ11開放端のフランジに対応する箇所をフランジ受けという。
【0052】
側板12を装着する際、前述の場合とは逆に、第1フランジ31先端がフランジ受け27に設けた凸部32に当接した後、共鳴室壁開放部21b(図示せず)によって共鳴室壁21aが弾性変形し、共鳴室21が縮小する。一方、第1フランジ31はフランジ開放部31a(図示せず)によって弾性変形し、放射状に拡大する。これにより、第1フランジ31が第1フランジ受け27へ進入する。他の点については前述と同様であるので説明を省略する。
【0053】
このように、第1フランジ31がフランジ受け27を抱き込む形態としても、共鳴室壁開放部21b或いはフランジ開放部31aにより弾性変形が生じるので無理なく適用できる。また、マウスピース側についても、第2フランジがマウスピース外形をなすように側板に形成し、マウスピース上下板を抱き込む構成にしても同様に適用できる。
【実施例】
【0054】
音量の低下や音質の変化がないことを検証するため、本発明の実施形態1に係るホイッスルと、参考例として同形、同寸法で側板を完全に接着したもの、即ち脱着機構を持たないホイッスル(以下、参考例)を準備し、検証を行った。なお、下記測定に先立って、本発明のホイッスルは1000回ほど側板の脱着を繰り返し、嵌め合い部の耐久性を確認し、それを用いた。1000回は毎日使用して、脱着洗浄した場合、約3年に相当する回数である。
【0055】
無音響室内で、それぞれのホイッスルの送気口からコンプレッサーで圧縮した空気を、レギュレーター(定圧装置)を介して供給して吹鳴させ、その音波を1m隔てた場所に設置した騒音計で計測し、音量の違いについて検証した。
【0056】
その結果、本発明のホイッスルでは101dB、一方の参考例では103dBであった。その差は2dBであり、周囲雑音の多い場所では、人間が認識できない差である。従って、本発明によるホイッスルにおいて、側板を脱着自在にしたとしても送気口から流入した空気はほとんど漏れることなく放音口から排出されていることがわかる。特に、本発明のホイッスルは1000回もの側板の脱着を行ったものであるが、耐久性が高く性能が低下しないことも立証できた。このように、実質的な音量の低下は見られないことから、音を被聴者に認識させるというホイッスルの機能を何ら損なうものではないことを確認した。
【0057】
また、上記で得られた騒音計出力をスペクトラムアナライザーに入力、分析し、周波数特性について検証した。
【0058】
その結果を図6及び図7に示す。図6は、本発明のホイッスルの測定図で、(A)が周波数成分のパワースペクトル、(B)が時間軸波形である。また、図7は、参考例の測定図で、(A)は、周波数成分のパワースペクトル、(B)は、時間軸波形である。
【0059】
図6及び図7から判るように、両者間の周波数成分及び時間軸波形に差異は見られない。このことから、両者には音響的差異は無く、本発明のように側板を脱着できる構成としても、音質が悪化しないことがわかる。
【0060】
続いて、この本発明ホイッスルの落下衝撃試験を行った。コンクリートの落下面に対し、1.7mの高さからホイッスルを落下した。ホイッスルのX,Y,Zの3方向について、各20回、計60回の落下に対し、一度も側板が外れることはなかった。
【0061】
更に、投てき衝撃試験を行った。投てき衝撃試験は、1m隔てた木製の壁に強い力でホイッスルを20回投げつけることにより行った。この結果、一度も側板が外れることがなく、衝撃にも強いことを実証した。
【0062】
以上より、本発明の嵌め合い機構は、ホイッスルに求められる音量及び音質を損なうことなく吹鳴でき、且つ容易に側板を脱着して内部を完全に洗浄でき、常に衛生に保つことができることを確認した。更に当該嵌め合い機構は耐久性に優れ繰り返し使用しても機能が損なわれることがないとともに、衝撃を加えても側板が外れることがないことも確認した。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明によるホイッスルの外観を示す斜視図である。
【図2】本発明によるホイッスルの側板を外した状態の斜視図である。
【図3】(A)は本発明によるホイッスルの脱着持における変形状態を示すボディの側面図、(B)は側板の側面図である。
【図4】本発明によるホイッスルの共鳴室部の係止状態を示す断面図である。
【図5】本発明による他の実施形態のホイッスルの共鳴室部の係止状態を示す断面図である。
【図6】(A)は本発明によるホイッスルの周波数成分のパワースペクトル、(B)が時間軸波形を示す測定図である。
【図7】(A)は、脱着機構を持たないホイッスルの周波数成分のパワースペクトル、(B)が時間軸波形を示す測定図である。
【図8】従来のホイッスルの外観を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0064】
1 ホイッスル
2 ホイッスル
11 ボディ
12 側板
21 共鳴室
21a 共鳴室壁
21b 共鳴室壁開放部
22 放音口
24 マウスピース
24a マウスピース上板
24b マウスピース下板
25 送気口
26 送気管
27 第1フランジ受け
28 凸部
29 凸部
31 第1フランジ
31a フランジ開放部
32 凹部
33 第2フランジ
34 突出部
35 凹部
36 つまみ
41 振動子
42 ホルダー
43 グリップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に共鳴室及び送気管を有し、放音口及び送気口を開口させたホイッスルにおいて、
一方の側面が開口した硬質樹脂からなるボディと、この側面開口部を閉じる硬質樹脂からなる側板とから構成され、
前記ボディの共鳴室を構成する共鳴室壁の一部が切り欠かれた共鳴室壁開放部を有し、
前記側板の前記共鳴室部分に第1フランジを設け、
前記第1フランジに凸部又は凹部、前記共鳴室壁に凹部又は凸部を設け、
前記側板の装着時に前記共鳴室壁開放部によって前記共鳴室を拡大又は縮小させて前記第1フランジを前記共鳴室に圧入させ、前記凸部と前記凹部を係止させて側板の脱落を抑制する、
ことを特徴とする脱着式ホイッスル。
【請求項2】
内部に共鳴室及び送気管を有し、放音口及び送気口を開口させたホイッスルにおいて、
一方の側面が開口した硬質樹脂からなるボディと、この側面開口部を閉じる硬質樹脂からなる側板とから構成され、
前記側板の前記共鳴室部分に一部が切り欠かれたフランジ開放部を有する第1フランジを設け、
前記第1フランジに凸部又は凹部、前記ボディの共鳴室を構成する共鳴室壁に凹部又は凸部を設け、
側板の装着時に前記フランジ開放部によって前記第1フランジを拡大又は縮小させて前記第1フランジを前記共鳴室に圧入させ、前記凸部と前記凹部を係止させて側板の脱落を抑制する、
ことを特徴とする脱着式ホイッスル。
【請求項3】
前記側板の装着に際して前記共鳴室壁或いは前記第1フランジの復元力によって前記第1フランジと前記共鳴室壁を契合させて側板の脱落を抑制する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の脱着式ホイッスル。
【請求項4】
前記共鳴室壁の側面開口端を薄肉にして第1フランジ受けを形成し、前記第1フランジ受けに凹部又は凸部を設けた、ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の脱着式ホイッスル。
【請求項5】
前記側板の前記送気管部分に第2フランジを設け、
前記第2フランジに凸部又は凹部、前記送気管を構成するマウスピース上下板の少なくとも一方に凹部又は凸部を設け、
前記側板の装着時に前記マウスピース上下板或いは第2フランジを上下に変位させて前記第2フランジを圧入させ、前記凸部と前記凹部を係止させて側板の脱落を抑制する、ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の脱着式ホイッスル。
【請求項6】
前記マウスピース上下板或いは第2フランジの復元力によって前記第2フランジとマウスピース上下板を契合させて側板の脱落を抑制する、ことを特徴とする請求項5に記載の脱着式ホイッスル。
【請求項7】
前記第2フランジが前記マウスピース上下板の間に嵌るように形成され、前記第2フランジの少なくとも一部は前記マウスピース上下板を咥えた際に唇或いは歯が押さえ付ける部位に位置する、ことを特徴とする請求項5又は6に記載の脱着式ホイッスル。
【請求項8】
前記第2フランジに突出部が形成され、前記第2フランジの凸部又は凹部が前記突出部に設けられるとともに前記マウスピース上下板を咥えた際に唇或いは歯が押さえ付ける部位に位置する、ことを特徴とする請求項7に記載の脱着式ホイッスル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−271215(P2009−271215A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−119973(P2008−119973)
【出願日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【出願人】(307009300)