説明

脱着自在の主車輪を有するリフトアップ車椅子

【解決課題】大径の主車輪を有する車椅子の該主車輪を脱着可能として、飛行機や列車等の座席と座席の間の狭い通路も走行できる車椅子を提供するものである。
【解決手段】 前部に回動自在のキャスターと後部に両立スタンドを着設したキャスターを有し、上部フレームに座部と前記座部の両サイドにアームレストを有する車椅子に、大径の主車輪が着脱自在に着設された車椅子の前記アームレストを折り畳み可能とし、左右の前記後部キャスターの両立スタンドがリフトアップレバーで接続し、該リフトアップレバーで後部キャスターを両立スタンドで固定すると、前記大径の左右の車輪が取り外し可能である車椅子とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、飛行機、列車等の狭隘な通路を走行できる車椅子に関する。より詳しくは、飛行機、列車等の座席の間の狭い通路を走行できるように、車椅子の大径の主車輪を着脱自在とし、狭い通路では主車輪を外し、アームレストを折り畳んで車椅子の幅を狭くし、狭い通路でも走行できるようにした車椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献の請求項1には「車輪着脱機構を介してフレームに着脱自在に軸支されるとともに常には走行面に接地する後輪と、前記フレーム下部に設けられ前記後輪を走行面から離隔した位置へ上昇可能なリフトアップ装置と、を備え、
前記リフトアップ装置は、前端部が車椅子のフレーム下部に枢着されて揺動可能に設けられた支持アームと、前記支持アームの自由端部の下部に設けられたリフトアップ車輪と、ペダル部を有し上端部が前記フレーム下部に枢着された第1リンクバーと、下端部が前記支持アームの自由端部に枢着され上端部が前記第1リンクバー下端部に枢着された第2リンクバーと、前記支持アームを前記フレーム下部方向へ回動付勢するばねと、を備え、前記リフトアップ車輪が、前記フレーム下部に接近した非接地位置と走行面に接地した接地位置との間を昇降可能に形成され、該接地位置において前記フレームの高さ位置を上昇可能に形成されてなることを特徴とする車椅子。」が開示されている。
【0003】
特許文献2の段落[0005]の課題を解決するための手段には、「本発明は、座部、背も垂れ、アームレスト、フットレストを装着した台座及び台座に装着した小径車輪を設けた車椅子において、前記小径車輪より径が大きく、着脱自在の大径車輪とより構成する、車椅子装置である。また本発明は、前述した車椅子装置において、大径車輪の着脱を行うため、上面形状を傾斜部と水平部とで構成する二本のレールからなるスロープレールを備えたことを特徴とする、車椅子装置である。また本発明は、前述した車椅子装置において、リクライニング機構を有する背も垂れと、前記背も垂れの両側部に設けたレールをスライドする座部とを備えたことを特徴とする、車椅子装置である。さらに本発明は、前述したいずれかの車椅子装置において、台座に対して座部は、少なくとも90度の平面回転を許容するよう構成したことを特徴とする、車椅子装置である。本発明は、前述したいずれかの車椅子装置の利用方法であって、大径車輪を着脱する場合、スロープレールに小径車輪を乗せ、大径車輪が床面に接触しない位置まで車椅子装置を登らせて大径車輪の着脱を行うことを特徴とする、車椅子装置の利用方法である。」と開示されている。
【0004】
特許文献3の段落[0007]の課題を解決するための手段には、「前記の課題を解決するため、請求項1の発明では、シート(座体)と、バックレスト(背もたれ)と、これらを支持する本体枠とを備えた車椅子において、本体枠の左右側部に、屋外用後輪(主輪)及びこれよりも小径の屋内用後輪の対と、屋外用後輪よりも小径の屋外用前輪及び屋内用前輪との対を、それら屋外用前後輪の群と屋内用前後輪の群とを選択的に使用できるように取り付けるという構成にした。」と記載され、
さらに段落[0008]に、「請求項2の発明はより好適な態様であり、この発明は、請求項1において、前記屋外用後輪は本体枠に対して着脱自在である一方、前記屋外用前輪と屋内用前輪とは、左右横長の軸心回りに回動させ得る支持部材に取り付けられており、支持部材の姿勢を変えることによって屋外用前輪と屋内用前輪とを選択的に接地できるようになっている。」と開示されている。
【0005】
上記のように、特許文献1では狭い場所でも走行できるように、大径の後輪を着脱自在にしたのに対し、特許文献2、及び3ではそれぞれ室内では屋外用の後輪を外して、屋外においては屋外用の後輪を着設して走行できるように、後輪を着脱自在にした車椅子が開示されている。しかし、狭い通路を走行するためには、上記の車椅子でも十分ではなく、狭い通路を問題なく走行できる車椅子の出現が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3818699号公報
【特許文献2】特開平11−197190号公報
【特許文献3】特開2004−073509号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願発明は、通常は幅の広い車椅子として使用可能であって、しかも、飛行機や列車等の座席と座席の間の狭い通路も走行できる車椅子を提供するものである。より詳しくは、通常の車椅子の主車輪を着脱自在にするとともに、さらに、アームレストを折り畳んで車椅子の車幅を狭くして、飛行機、列車等の座席の間の狭い通路を走行できる車椅子を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明は上記事実に鑑み、飛行機、列車等の座席と座席の間の狭い通路も走行できるように、通常の車椅子の両側の大径の主車輪を着脱自在にするとともに、座部の両側に突設されたアームレストを折り畳んで飛行機や列車等の座席と座席の間の狭い通路でも走行できる車椅子とした。
【0009】
本発明の特徴は、前部に回動自在のキャスターと後部に両立スタンドを着設したキャスターを有し、上部フレームに座部と座部の後部に背もたれフレームに着設された背もたれと、前記座部の両サイドにアームレストを有する車椅子に、大径の主車輪が着脱自在に着設された車椅子であって、前記座部の両サイドに着設されたアームレストが折り畳み可能であり、前記両立スタンドが着設された後部キャスターの左右の両立スタンドがリフトアップレバーで接続され、該リフトアップレバーで後部キャスターを両立スタンドで固定すると、前記大径の左右の車輪が取り外し可能であることを特徴とする車椅子である。大径の主車輪を取り外すと、座部の両側に着設されたアームレストのフレームが回動可能となり、アームレストを回動させることにより、車椅子の幅がさらに狭くなって、新幹線、航空機等の座席の間の通路を介助者により容易に走行することができる。
【0010】
本発明の別の特徴は、前記大径の主車輪が着脱自在に着設された車椅子の、前記大径の主車輪が取り外されると共に、前記座部の両サイドに着設されたアームレストが車椅子の背もたれの後方に折り畳み可能であることを特徴とする車椅子である。大径の主車輪を取り外すと、座部の両側に着設されたアームレストのフレームが回動可能となり、アームレストを背もたれの後方に回動させることにより、車椅子の幅がさらに狭くなって、新幹線、航空機の通路を介助者により容易に走行することができる。
【0011】
本発明の別の特徴は前記大径の主車輪が着脱自在に着設された車椅子の、前記大径の主車輪が取り外されると共に、前記座部の両サイドに着設されたアームレストが車椅子の座部の下側に折り畳み可能であることを特徴とする車椅子である。大径の主車輪を取り外すと、座部の両側に着設されたアームレストのフレームが座部の下側に回動可能となる。アームレストを座部の下に回動させることにより、車椅子の幅がさらに狭くなって、新幹線、航空機等の座席の間の通路を介助者により容易に走行することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の脱着自在の主車輪を有するリフトアップ車椅子は、大径の主車輪を取り外すと、座部の両側に着設されたアームレストのフレームが回動可能となり、アームレストを回動させることにより、車椅子の幅がさらに狭くなって、新幹線、航空機等の座席の間の通路を介助者により容易に走行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1の(A)は、本願発明のリフトアップ車椅子の上面図を示す。図1の(B)は、本願発明のリフトアップ車椅子の側面図を示す。
【図2】図2の(A)は、本願発明の車椅子の背面図を示す。図2の(B)は、本願発明の車椅子から取り外した大径の車輪を示す。
【図3】図3(A)は、本願発明の車椅子の正面図を示す。図3(B)は、本願発明の車椅子から取り外した大径の車輪を示す。
【図4】図4は、本願発明の車椅子の大径の主車輪を取り外した骨格を示す。
【図5】図5の(A)は、大径の主車輪を外したリフトアップ車椅子のアームレストを背もたれの後方に折り畳んだ上面図を示す。図5の(B)は、大径の主車輪を外した車椅子のアームレストを背もたれの後方に折り畳んだ側面図を示す。
【図6】図6の(A)は大径の主車輪を外した車椅子のアームレストを座部の下側に折り畳んだ正面図を示す。図6の(B)は、大径の主車輪を取り外した車椅子のアームレストを座部の下側に折り畳んだ側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に図面を用いて本発明の実施の態様についていくつかの好ましい形態を例示するが、特許請求の範囲に記載された発明の範囲を限定することは意図するものではない。
【実施例1】
【0015】
図1の(A)の上面図に示すように、本願発明のリフトアップ車椅子は、前部補助フレーム18にフットレスト27と、上部フレーム20に座部15と座部の後部に背もたれフレーム19に着設された背もたれ16と、前記座部15の両サイドにアームレスト26を有する車椅子に、ハンドリム14が着設された大径の主車輪13が着脱自在に軸着され、背もたれ16の後方にハンドルレバー23が着設されている。車椅子の後部内側にリフトアップレバー25が着設されている。通常は、後部キャスター12は浮き上がった状態にあり、車椅子は前部キャスター11と大径の主車輪13で走行する。
【0016】
図1(B)の側面図に示すように、本願発明のリフトアップ車椅子は、前部に回動自在のキャスター11と後部に両立スタンド24を着設した後部キャスター12を有し、上部フレーム20に座部15と座部の後部に背もたれフレーム19に着設された背もたれ16と、前記座部15の両サイドにタックルブレーキ29が着設されたアームレスト26を有する車椅子に、ハンドリム14が着設された大径の主車輪13が着脱自在に軸着され、座部15の後方の背もたれフレーム19の上端部にハンドルレバー23が着設されている。
【0017】
本願発明のリフトアップ車椅子の前記両立スタンド24を着設した後部キャスター12は、該後部キャスター12の左右の両立スタンド24はリフトアップレバー25で接続され、該リフトアップレバー25を踏むと後部キャスター12が両立スタンド25で固定されて、前記大径の左右の主車輪13が取り外し可能となる。
【0018】
図2(A)は、前部補助フレーム17に着設された回動自在の前部キャスター11と後部に両立スタンド24を着設した後部キャスター12が後部フレーム21の下部に着設され、上部フレームと下部フレーム21の間にクロスバー32が着設された車椅子の一部分を示している。図2(A)においては、両立スタンド24を上げた状態を示している。
【0019】
図2(B)は、前部補助フレーム17に着設された回動自在の前部キャスター11と両立スタンド24を着設した後部キャスター12が後部フレーム21の下部に着設され、上部フレームと下部フレーム21の間にクロスバー32が着設された車椅子の一部分を示している。後部キャスター12に着設された左右の両立スタンド24はリフトアップレバー25で接続されており、図2(B)はこのリフトアップレバー25を踏んで両立スタンド24を下げ、車椅子の後部が浮いた状態を示している。車椅子を前方に押していくと両立スタンド24は後方に跳ね上がり、後部キャスター12が着地して、車椅子は前部キャスター11と後部キャスター12で走行可能となる。
【0020】
図3(A)は、本願発明のリフトアップ車椅子の正面図で、車椅子の両側にハンドリム14が着設された脱着可能な大径の主車輪13と、前方に前部補助フレーム18に着設されたフットレスト27と、折り畳み可能な中央部にクロスバー32と、クロスバー32の上部に座部15が着設されている。座部15の後方に背もたれ16が着設されている。後部キャスターに着設された両立スタンドのリフトアップレバー25を踏んで両立スタンド24を下げると、車椅子の後部が浮いて大径の主車輪が脱着可能となる。
【0021】
図3(B)は、後部の両立スタンド24をリフトアップして取り外した両側の大径の主車輪13を示している。大径の主車輪13の脱着は大径の車輪13の中心部に着設したボタン13aを押すと、車軸に着設されたバネが付勢された突出したピン13bが引き込まれて大径の車輪13が脱着が可能となる。
【実施例2】
【0022】
図4は、本願発明のリフトアップ車椅子の大径の主車輪13を取り外し、アームレスト26を背もたれ16の後方に折り畳んだ車椅子の骨格を示している。アームレスト26は上部フレーム21の下に着設されたアームレスト固定部26aに固定されている。図1(B)の26aに示すように、固定部のレバーを下げてアームレスト26を持ち上げながら、後方に回転させると26bの軸着部から回転して、背もたれ16の後方に折り畳むことができる。さらに、後部キャスターに着設された両立スタンドのリフトアップレバー25の一方端にはロック機構25aが着設され、他方端にはヒンジ部25bが設けられており、ロック機構25aを解除すると、リフトアップレバー25はヒンジ部25bより持ち上げられて、車椅子は折り畳み可能となる。
【0023】
図5の(A)は、大径の主車輪13を外した本願発明のリフトアップ車椅子のアームレスト26を背もたれ16の後方に折り畳んだ上面図を示す。図5の(B)は、大径の主車輪13を取り外した車椅子のアームレスト26を背もたれの後方に折り畳んだ側面図を示している。大径の主車輪の着設した状態で車椅子の横幅は640mmである。この大径の主車輪13を取り外すと、座部15の両側に着設されたアームレスト26のフレームが回動可能となり、アームレスト26を背もたれ16の後方に回動させることにより、車椅子の幅は400mmとなる。大径の主車輪を取り外して、アームレストを折り畳んだ時の横幅は、新幹線、航空機の通路を走行できるように、350〜450mmの間が望ましい。
【実施例3】
【0024】
図6の(A)は大径の主車輪13を取り外した車椅子のアームレスト26を座部15の下側に折り畳んだ正面図を示している。大径の主車輪を取り外して、アームレスト26を座部15の下に折り畳むと車椅子の横幅は、左右の前部キャスター11の幅と略同じ幅(400mm)になり、新幹線、航空機等の通路を介助者により容易に走行することができる。図6の(B)は、大径の主車輪13を取り外した車椅子のアームレスト26を座部15の下側に折り畳んだ側面図を示している。アームレスト26は上部フレーム20に回動自在に軸着されており、軸着部26dから下に折り畳み可能となっている。大径の主車輪が着設された状態で横幅は640mmであったのが、主車輪13を取り外し、アームレスト26を座席の下に収納した状態で、車椅子の横幅は400mmとなり、新幹線、航空機等の通路を介助者により容易に走行することができる。
【符号の説明】
【0025】
100:脱着可能な大径の主車輪を有する車椅子のアームレストを背もたれの後方に折り畳み可能な車椅子。
200:脱着可能な大径の主車輪を有する車椅子のアームレストを座部の下側に折り畳み可能な車椅子。
11:回動可能な前部キャスター
12:後部キャスター
13:大径の主車輪
14:ハンドリム
15:座部
16:背もたれ
17:前部フレーム
18:前部補助フレーム
19:背もたれフレーム
20:上部フレーム
21:下部フレーム
22:後部フレーム
23:ハンドルレバー
24:両立スタンド
25:リフトアップレバー
26:アームレスト
27:フットレスト
28:後部キャスター用ブレーキレバー
29:主車輪用ブレーキ
30:車軸
31:車軸保持部
32:クロスバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前部に回動自在のキャスターと後部に両立スタンドを着設したキャスターを有し、上部フレームに座部と座部の後部に背もたれフレームに着設された背もたれと、前記座部の両サイドにアームレストを有する車椅子に、大径の主車輪が着脱自在に着設された車椅子であって、前記座部の両サイドに着設されたアームレストが折り畳み可能であり、前記両立スタンドが着設された後部キャスターの左右の両立スタンドがリフトアップレバーで接続され、該リフトアップレバーで後部キャスターを両立スタンドで固定すると、前記大径の左右の車輪が取り外し可能であることを特徴とする車椅子。
【請求項2】
前記大径の主車輪が着脱自在に着設された車椅子の、前記大径の主車輪が取り外されると共に、前記座部の両サイドに着設されたアームレストが車椅子の背もたれの後方に折り畳み可能であることを特徴とする請求項1に記載の車椅子。
【請求項3】
前記大径の主車輪が着脱自在に着設された車椅子の、前記大径の主車輪が取り外されると共に、前記座部の両サイドに着設されたアームレストが車椅子の座部の下側に折り畳み可能であることを特徴とする請求項1に記載の車椅子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−161457(P2012−161457A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23794(P2011−23794)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(000146113)株式会社松永製作所 (59)