説明

脱硝装置および脱硝方法

【課題】 被処理ガス中の窒素酸化物の還元を効率的に行うことができると共に、脱硝剤の使用量を低減することができる脱硝装置を提供することを課題とする。
【解決手段】 アンモニアを含有する脱硝剤と、該脱硝剤を拡散させる拡散ガスとを被処理ガス中に供給し、被処理ガスと脱硝剤とを接触させて被処理ガス中の窒素酸化物を除去する脱硝装置であって、前記拡散ガスは、不活性ガスから構成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒素酸化物を含有する被処理ガス中に、アンモニアを含有する脱硝剤を供給し、被処理ガス中の窒素酸化物を除去する際に用いられる脱硝装置、及び、脱硝方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ロータリーキルン等から排出されるガス中には、燃料中や空気中の窒素成分が酸素と反応して発生した窒素酸化物が含有されている。このようなガスが大気中に放散されると、窒素酸化物の影響によって光化学スモッグや酸性雨等が発生し、健康面、及び、環境面で甚大な被害を及ぼす虞がある。このため、大気汚染防止法によって窒素酸化物の排出量が制限されており、斯かる排出量を満たすべく、種々の方法が採られている。
【0003】
例えば、窒素酸化物を還元する成分としてアンモニアを含有する脱硝剤(アンモニアガスやアンモニア水等)を上述のようなガス(被処理ガス)に接触させることで、窒素酸化物を窒素と水とに還元して分解する方法が知られている(特許文献1参照)。被処理ガスと脱硝剤とを接触させる際には、被処理ガス中に脱硝剤を拡散させる拡散ガスが用いられる。該拡散ガスとしては、一般的に空気が用いられており、脱硝剤と共に空気を被処理ガス中に噴出させることで、被処理ガス中に脱硝剤を効果的に拡散させることができ、脱硝剤と被処理ガスとの接触を効果的に行うことが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−281275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のように、拡散ガスとして空気を用いた場合、被処理ガス中に拡散された脱硝剤の周囲には、拡散ガスに起因する酸素が存在することとなる。このため、被処理ガスの熱によって、脱硝剤に含有されるアンモニアが酸素と反応して分解(燃焼)してしまう虞がある。
【0006】
上述のように、脱硝剤に含有されるアンモニアが分解(燃焼)すると、被処理ガスと接触するアンモニアの量が低下するため、脱硝剤が被処理ガスに接触した際の窒素酸化物の還元効率(脱硝効率)が低下してしまう。これに対し、拡散ガスである空気の流量を低下させることで、アンモニアの燃焼を抑制する対策も考えられるが、脱硝剤の拡散を効果的に行うことが困難となり、窒素酸化物の還元効率を低下させてしまう。
【0007】
このため、被処理ガス中の窒素酸化物の含有量に対応した量を越える量の脱硝剤(即ち、アンモニア)を被処理ガス中に供給することが必要となり、窒素酸化物を除去する際のコストが嵩む要因となっている。
【0008】
そこで、本発明は、被処理ガス中の窒素酸化物の還元を効率的に行うことができると共に、脱硝剤の使用量を低減することができる脱硝装置、及び、脱硝方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る脱硝装置は、アンモニアを含有する脱硝剤と、該脱硝剤を拡散させる拡散ガスとを被処理ガス中に供給し、被処理ガスと脱硝剤とを接触させて被処理ガス中の窒素酸化物を除去する脱硝装置であって、前記拡散ガスは、不活性ガスを用いて構成されていることを特徴とする。
【0010】
斯かる構成によれば、不活性ガスを用いて前記拡散ガスが構成されていることで、被処理ガス中に分散された脱硝剤中のアンモニアが酸素と反応して分解(燃焼)してしまうのを抑制することができる。
【0011】
具体的には、拡散ガスによって脱硝剤が被処理ガス中に拡散されるため、被処理ガス中に供給された脱硝剤の近傍には、不活性ガス(即ち、拡散ガス)が存在することとなる。つまり、被処理ガス中に供給された脱硝剤の近傍には、酸素濃度が低い環境が形成される。このため、窒素酸化物を還元する前に、脱硝剤中のアンモニアが酸素と反応して分解(燃焼)してしまうのを抑制することができる。これにより、脱硝剤中のアンモニアの含有量が低下してしまうのを抑制することができるため、脱硝剤が被処理ガスと接触した際に生じる窒素酸化物の還元(除去)を効率的に行うことができる。このため、被処理ガス中への脱硝剤の供給量を低減することができる。
【0012】
前記脱硝剤、及び、拡散ガスを被処理ガス中に供給可能に構成された供給ノズルを備え、該供給ノズルは、脱硝剤が流通する脱硝剤流通管と、拡散ガスが流通する拡散ガス流通管とから構成されていることが好ましい。
【0013】
斯かる構成によれば、前記脱硝剤、及び、拡散ガスを被処理ガス中に供給可能に構成された供給ノズルを備え、該供給ノズルは、脱硝剤が流通する脱硝剤流通管と、拡散ガスが流通する拡散ガス流通管とから構成されていることで、脱硝剤の供給量と拡散ガス(即ち、不活性ガス)の供給量とを別々に管理することができる。具体的には、被処理ガス中の窒素酸化物の含有量に応じて脱硝剤の供給量を管理することができるため、脱硝剤の供給が過剰、又は、過少に行われるのを防止することができる。
【0014】
更に、脱硝剤の供給量の変動に応じて不活性ガスの供給量を変動させることができるため、被処理ガス中への脱硝剤の拡散度合を最適に維持することができる。これにより、脱硝剤の供給量の変動に応じて脱硝剤の拡散度合が変動し、窒素酸化物の還元効率が低下してしまうのを抑制することができる。
【0015】
本発明に係る脱硝方法は、アンモニアを含有する脱硝剤と、該脱硝剤を拡散させる拡散ガスとを被処理ガス中に供給し、被処理ガスと脱硝剤とを接触させて被処理ガス中の窒素酸化物を除去する脱硝方法であって、前記拡散ガスは、不活性ガスを用いて構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、被処理ガス中の窒素酸化物の還元を効率的に行うことができると共に、脱硝剤の使用量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態に係る脱硝装置の構成を示した概略図。
【図2】同実施形態における供給ノズルの断面図であって、該供給ノズルが配管設備に挿入された状態を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図1及び2を参照しながら説明する。
【0019】
本実施形態に係る脱硝装置1は、窒素酸化物を含有するガス(以下、被処理ガスとも記す)から窒素酸化物を除去する際に用いられるものである。例えば、セメント材料を製造する際に用いられるロータリーキルン等から排出されるガス(被処理ガス)中から窒素酸化物を除去する際に用いられるものである。
【0020】
脱硝装置1は、アンモニアを含有する脱硝剤を被処理ガスに接触させることで、被処理ガス中の窒素酸化物をアンモニアによって還元して分解し、除去するように構成されている。また、脱硝装置1は、脱硝剤と、該脱硝剤を被処理ガス中に拡散させる拡散ガスとを被処理ガス中に供給可能に構成されている。具体的には、脱硝装置1は、図1に示すように、脱硝剤を拡散ガスと共に被処理ガス中(具体的には、被処理ガスが流通する脱硝空間R内)に供給する供給ノズル2と、該供給ノズル2に脱硝剤を供給する脱硝剤供給設備3と、供給ノズル2に拡散ガスを供給する拡散ガス供給設備4とから構成されている。
【0021】
なお、本実施形態では、脱硝空間Rは、配管設備Aの内側に形成されている。また、脱硝空間Rにおける脱硝剤を供給する位置の被処理ガスの温度としては、アンモニアガスによる窒素酸化物の還元が効果的に生じる温度、具体的には、800℃以上1000℃以下であることが好ましい。
【0022】
脱硝剤供給設備3は、脱硝剤としてアンモニアガスを供給可能に構成されている。具体的には、脱硝剤供給設備3は、液体アンモニアを貯蔵する脱硝剤貯蔵設備3aと、液体アンモニアを加熱して気化することでアンモニアガスを発生させる脱硝剤加熱設備3bと、供給ノズル2へ送るアンモニアガスの流量を均一化するサージタンク3cとを備えている。そして、各設備が配管を介して連結されると共に、サージタンク3cが配管を介して供給ノズル2に連結されている。
【0023】
供給ノズル2内に供給されるアンモニアガスの温度としては、アンモニアの臨界温度(132.4℃)以上であることが好ましく、アンモニアの熱分解が生じる温度未満であることが好ましい。具体的には、アンモニアガスの温度としては、132.4℃以上400℃以下であることが好ましく、150℃以上250℃以下であることがより好ましい。アンモニアガスの温度をこのような温度に調節することで、供給ノズル2内でアンモニアが液化してしまうのを防止することができる。
【0024】
また、脱硝剤供給設備3は、被処理ガス中の窒素酸化物の濃度に応じて、アンモニアガスの供給量を調節可能に構成されている。例えば、被処理ガス中の窒素酸化物の濃度が変動する場合には、その変動量に応じてアンモニアガスの供給量を調節可能に構成されている。これにより、窒素酸化物の濃度に対してアンモニアガスの供給量が過剰、又は、過少になってしまうのを防止することができる。
【0025】
拡散ガス供給設備4は、実質的に酸素を含有しない不活性ガスを拡散ガスとして供給可能に構成されている。具体的には、拡散ガス供給設備4は、不活性ガスを貯蔵する不活性ガス貯蔵設備4aと、不活性ガスを供給ノズル2に送るコンプレッサ4bとから構成されている。そして、各設備が配管を介して連結されると共に、コンプレッサ4bが配管を介して供給ノズル2に連結されている。供給ノズル2へ送られる不活性ガスの温度としては、50℃以上400℃以下であることが好ましく、100℃以上200℃以下であることがより好ましい。
【0026】
不活性ガスとしては、酸素の含有量が好ましくは4.0wt%以下、より好ましくは1wt%以下であるものを用いることができる。また、不活性ガスの酸素分圧としては、不活性ガス投入圧力が0.4MPaの場合、0.02MPa以下であることが好ましく、0.005MPa以下であることがより好ましい。不活性ガスの成分としては、水蒸気、窒素、アルゴン等を用いることができる。
【0027】
また、拡散ガス供給設備4は、脱硝剤(アンモニアガス)の供給量に応じて拡散ガス(不活性ガス)の供給量を調節可能に構成されている。例えば、アンモニアガスの供給量が変動する場合には、その変動量に応じて不活性ガスの供給量を調節可能に構成されている。これにより、アンモニアガスの供給量が変動した際にも、脱硝空間R(即ち、被処理ガス)に供給される混合ガスの供給量を一定に維持することができる。
【0028】
供給ノズル2は、配管設備A内を流れる被処理ガス中に、脱硝剤(具体的には、アンモニアガス)及び拡散ガス(具体的には、不活性ガス)を供給可能に構成されている。具体的には、供給ノズル2は、図2に示すように、配管設備Aの壁部を貫通した状態で配管設備A内(即ち、脱硝空間R内)に挿入されている。そして、供給ノズル2は、配管設備Aに挿入された状態で、脱硝空間R内に位置する先端部からアンモニアガスと不活性ガスとの混合ガスを噴出可能に構成されている。また、供給ノズル2は、被処理ガスの流通方向に対して交差する方向(本実施形態では、略直交する方向)に混合ガスを噴出するように配置されている。
【0029】
また、供給ノズル2は、脱硝空間Rの外側(具体的には、配管設備Aの外側)に位置する基端部に脱硝剤供給設備3(具体的には、サージタンク3c)と、拡散ガス供給設備4(具体的には、コンプレッサ4b)とが連結されている。
【0030】
供給ノズル2は、アンモニアガス(即ち、脱硝剤)が流通する脱硝剤流通管2aと、不活性ガス(即ち、拡散ガス)が流通する拡散ガス流通管2bとから構成されている。具体的には、供給ノズル2は、拡散ガス流通管2bの内側に脱硝剤流通管2aが配置された二重管構造となっている。
【0031】
脱硝剤流通管2aは、一方向に沿って直線状に形成されており、脱硝空間R内に位置する先端部からアンモニアガスを噴出可能に構成されている。そして、脱硝剤流通管2aの基端部(脱硝空間Rの外側に位置する端部)に脱硝剤供給設備3(具体的には、サージタンク3c)が連結されている。つまり、脱硝剤流通管2aは、基端部から先端部に向かってアンモニアガスが流通するように構成されている。
【0032】
また、脱硝剤流通管2aは、拡散ガス流通管2bの軸方向に沿って拡散ガス流通管2bの内側に配置されている。また、脱硝剤流通管2aは、拡散ガス流通管2bとの間に間隔が形成されるように、拡散ガス流通管2bの内側に配置されている。また、脱硝剤流通管2aが拡散ガス流通管2bの内側に配置された状態で、脱硝剤流通管2a及び拡散ガス流通管2bの軸方向に直行する断面形状が同心円状となっている。
【0033】
また、脱硝剤流通管2aの先端部は、拡散ガス流通管2bの内側に位置している。具体的には、脱硝剤流通管2aの先端部は、拡散ガス流通管2bの先端部よりも基端部側に位置している。つまり、脱硝剤流通管2aの先端部と拡散ガス流通管2bの先端部との間には、供給ノズル2の軸方向に沿って間隔が形成されている。これにより、脱硝剤流通管2aの先端部から噴出されたアンモニアガスが拡散ガス流通管2bの内側で拡散ガスと混合されるため、供給ノズル2の先端部からは混合ガスが噴出される。
【0034】
拡散ガス流通管2bは、一方向に沿って直線状に形成されており、脱硝空間R内に位置する先端部から前記混合ガスを噴出可能に構成されている。そして、拡散ガス流通管2bの基端部(脱硝空間Rの外側に位置する端部)に拡散ガス供給設備4(具体的には、コンプレッサ4b)が連結されている。つまり、拡散ガス流通管2bは、基端部から先端部に向かって拡散ガスが流通するように構成されている。
【0035】
また、拡散ガス流通管2bは、自身の軸方向に沿って内側に脱硝剤流通管2aが配置されており、拡散ガス流通管2bと脱硝剤流通管2aとの間には間隔が形成されている。これにより、脱硝剤流通管2aの外周面と拡散ガス流通管2bの内周面との間を拡散ガスが流通可能となっている。
【0036】
また、拡散ガス流通管2bの先端部は、脱硝剤流通管2aの先端部よりも脱硝空間Rの内側に位置している。つまり、拡散ガス流通管2bの先端部と脱硝剤流通管2aの先端部との間には、供給ノズル2の軸方向に沿って間隔が形成されている。これにより、拡散ガス流通管2b内を流通する拡散ガスの一部は、拡散ガス流通管2bの先端部と脱硝剤流通管2aの先端部との間の領域で、拡散ガス流通管2bの内部空間の中心に向かって流れ込むこととなる。これにより、脱硝剤流通管2aの先端部から噴出されたアンモニアガスが拡散ガス流通管2bの内側で拡散ガスと混合されて混合ガスが形成される。
【0037】
拡散ガス流通管2bは、脱硝剤流通管2aと重なり合う領域の断面形状よりも先端部の断面形状が小さくなるように形成されている。これにより、アンモニアガスと拡散ガスとの混合を効果的に行うことができると共に、混合ガスの噴出速度(噴出圧)を高めることができる。混合ガスの噴出速度としては、特に限定されるものではなく、被処理ガスの流速よりも10m/sを越える速度であることが好ましい。また、拡散ガス流通管2bは、基端部が脱硝剤流通管2aの外周面に連結されて密閉されている。
【0038】
供給ノズル2は、脱硝空間Rへの挿入量Xを調節可能に構成されている。具体的には、供給ノズル2は、挿入量Xを調節する挿入量調節手段2cを備えている。該挿入量調節手段2cは、拡散ガス流通管2bの外周面から突出するように(具体的には、フランジ状に)形成されており、配管設備Aの外側から配管設備Aに当接するように構成されている。また、挿入量調節手段2cは、脱硝剤流通管2aの軸方向(即ち、拡散ガス流通管2bの軸方向)に沿って、供給ノズル2(具体的には、拡散ガス流通管2b)の先端部に対して相対移動可能となるように構成されている。
【0039】
挿入量調節手段2cが上述のように構成されることで、供給ノズル2(具体的には、拡散ガス流通管2b)の先端部と挿入量調節手段2cとの間の距離を任意に変更することができる。これにより、脱硝空間Rにおける供給ノズル2の先端部の位置を所望する位置に固定することができる。具体的には、供給ノズル2を配管設備Aに挿入した際に、挿入量調節手段2cが配管設備Aに当接するため、供給ノズル2の先端部と挿入量調節手段2cとの間の距離を調節することで、供給ノズル2の挿入量Xを調節することができる。これにより、脱硝空間Rにおける供給ノズル2の先端部の位置を所望する位置に固定することができる。
【0040】
挿入量Xは、供給ノズル2から噴出される混合ガスと被処理ガスとの接触が効果的に行われるように設定される。例えば、配管設備Aにおける供給ノズル2の挿入位置の内面と、該挿入位置の内面に対向する位置の内面との間の距離(例えば、脱硝空間Rの直径)に応じて、挿入量Xを設定することができる。なお、挿入量Xは、配管設備Aにおける供給ノズル2の挿入位置の内面から供給ノズル2の先端部(即ち、拡散ガス流通管2bの先端部)までの供給ノズル2の軸方向に沿った直線距離をいう。
【0041】
上記のように構成された脱硝装置1を用いて、被処理ガスから窒素酸化物を除去する際には、まず始めに、所望する挿入量Xとなるように挿入量調節手段2cを調節する。そして、供給ノズル2を配管設備Aに挿入して固定する。次に、脱硝剤供給設備3からアンモニアガスを供給ノズル2(具体的には、脱硝剤流通管2a)へ流通させると共に、拡散ガス供給設備4から不活性ガスを供給ノズル2(具体的には、拡散ガス流通管2b)へ流通させる。
【0042】
そして、脱硝剤流通管2aからアンモニアガスを噴出させると共に、拡散ガス流通管2b内を流れる不活性ガスと混合させて混合ガスを形成し、該混合ガスを供給ノズル2(具体的には、拡散ガス流通管2b)の先端部から噴出させる。噴出された混合ガス中のアンモニアガスは、不活性ガスと共に脱硝空間R内に拡散され、被処理ガスと接触して窒素酸化物を還元して分解する。これにより、被処理ガスから窒素酸化物を除去することができ、窒素酸化物が除去された処理ガスを得ることができる。
【0043】
以上のように、本発明に係る脱硝装置、及び、脱硝方法によれば、被処理ガス中の窒素酸化物の還元を効率的に行うことができると共に、脱硝剤の使用量を低減することができる。
【0044】
即ち、脱硝装置1は、不活性ガスによって脱硝剤が被処理ガス中に分散されるため、被処理ガス中に供給された脱硝剤の近傍には、不活性ガスが存在することとなる。つまり、被処理ガス中の脱硝剤の近傍には、実質的に酸素が存在しない環境が形成される。このため、脱硝剤中のアンモニアが窒素酸化物を還元する前に酸素と反応して分解(燃焼)してしまうのを防止することができる。これにより、脱硝剤の損失を抑制することができ、窒素酸化物の還元(除去)を効率的に行うことができると共に、被処理ガス中への脱硝剤の供給量を低減することができる。
【0045】
また、供給ノズル2は、脱硝剤が流通する脱硝剤流通管2aと、拡散ガスが流通する拡散ガス流通管2bとから構成されていることで、脱硝剤の供給量と不活性ガスの供給量とを別々に管理することができる。これにより、被処理ガス中の窒素酸化物の含有量に応じて脱硝剤の供給量を管理することができる。このため、脱硝剤の供給が過剰に行われるのを防止することができ、脱硝剤の使用量を低減することができる。
【0046】
更に、脱硝剤の供給量の変動に応じて不活性ガスの供給量を変動させることができるため、被処理ガス中への脱硝剤の拡散度合を最適に維持することができる。これにより、脱硝剤の供給量の変動に応じて脱硝剤の拡散度合が変動し、窒素酸化物の還元効率(脱硝効率)が低下してしまうのを抑制することができる。
【0047】
なお、本発明に係る脱硝装置、及び、脱硝方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。また、上記した複数の実施形態の構成や方法等を任意に採用して組み合わせてもよく(1つの実施形態に係る構成や方法等を他の実施形態に係る構成や方法等に適用してもよく)、さらに、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【0048】
例えば、上記実施形態では、脱硝剤として、アンモニアガスを用いているが、これに限定されるものではなく、アンモニアガス以外の流体を用いることができる。例えば、液体アンモニアやアンモニア水のような液体、又は、アンモニアを含有する粉体等を用いることができる。
【0049】
また、上記実施形態では、脱硝剤としてアンモニアガスのみを含有するものを用いているが、これに限定されるものではなく、アンモニア成分以外の成分を含有する脱硝剤を用いることができる。
【0050】
また、上記実施形態では、脱硝剤流通管2aの先端部と、拡散ガス流通管2bの先端部との間に間隔が形成されているが、これに限定されるものではなく、脱硝剤流通管2aと拡散ガス流通管2bとの先端部同士が面一となるように供給ノズル2を構成してもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、脱硝剤(アンモニアガス)の供給量に応じて拡散ガス(不活性ガス)の供給量が調節されるように構成されているが、これに限定されるものではなく、拡散ガスの供給量を一定に維持した状態で、脱硝剤の供給量が変動するように構成してもよい。
【実施例】
【0052】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0053】
<実施例及び比較例>
1.脱硝
下記表1に示す流量、温度、及び、窒素酸化物(NOx)の含有量となる被処理ガスを配管設備内に流通させた。そして、上記実施形態に示す供給ノズルを用いて脱硝剤及び拡散ガスを配管設備内に供給(噴出)した。なお、配管設備内の酸素濃度は、下記表1に示す通りである。
【0054】
脱硝剤としては、アンモニアガスを用いた。また、アンモニアガスの供給流量及び供給モル量は、下記表2に示す通りである。また、拡散ガスの成分、及び、供給流量は、下記表2に示す通りである。なお、アンモニアガス及び拡散ガスの混合ガスが供給ノズルから噴出される際の噴出圧力、及び、供給ノズルの温度は、下記表2に示す通りである。
【0055】
【表1】

【0056】
【表2】

【0057】
2.測定及び評価
供給ノズルから脱硝剤及び拡散ガスを配管設備に供給した後、配管設備から排出される処理ガスに対し、JIS K 0104:2011(排ガス中の窒素酸化物分析法)に規定する「8自動計測法−化学発行方式」を用いてNOx濃度(脱硝剤供給後のNOx濃度)の測定を行った。そして、脱硝剤が配管設備内に供給される前の被処理ガスのNOx濃度と脱硝剤供給後のNOx濃度との差からNOx濃度の減少量を算出し、該減少量に対応したNOxのモル量(NOxの減少モル量)を算出した。また、表2に示す脱硝剤の供給モル量に対するNOxの減少モル量の割合を算出し、脱硝効率とした。脱硝剤供給後のNOx濃度、NOx濃度の減少量、NOxの減少モル量、及び、脱硝効率については、下記表3に示す通りである。
【0058】
【表3】

【0059】
3.まとめ
実施例1〜3と比較例1及び2とを比較すると、実施例1〜3の方が脱硝剤の供給流量(供給モル量)が少ないにもかかわらず脱硝効率が高いことが認められる。つまり、実質的に酸素を含有しない不活性ガスを拡散ガスとして用いることで、被処理ガス中の窒素酸化物の還元を効率的に行うことができるため、脱硝剤の供給量を低減することができると認められる。
【0060】
また、実施例1〜3と比較例3とを比較すると、実施例1〜3の方が脱硝剤の供給流量(供給モル量)が少ないにもかかわらず脱硝効率が高いことが認められる。つまり、拡散ガスを用いることで、被処理ガス中に脱硝剤を効果的に拡散させることができるため、被処理ガスと脱硝剤との接触を効率的に行うことができる。このため、被処理ガス中の窒素酸化物の還元を効率的に行うことができ、脱硝剤の供給量を低減することができると認められる。
【符号の説明】
【0061】
1…脱硝装置、2…供給ノズル、2a…脱硝剤流通管、2b…拡散ガス流通管、2c…挿入量調節手段、3…脱硝剤供給設備、3a…脱硝剤貯蔵設備、3b…脱硝剤加熱設備、3c…サージタンク、4…拡散ガス供給設備、4a…不活性ガス貯蔵設備、4b…コンプレッサ、A…配管設備、R…脱硝空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニアを含有する脱硝剤と、該脱硝剤を拡散させる拡散ガスとを被処理ガス中に供給し、被処理ガスと脱硝剤とを接触させて被処理ガス中の窒素酸化物を除去する脱硝装置であって、
前記拡散ガスは、不活性ガスを用いて構成されていることを特徴とする脱硝装置。
【請求項2】
前記脱硝剤、及び、拡散ガスを被処理ガス中に供給可能に構成された供給ノズルを備え、該供給ノズルは、脱硝剤が流通する脱硝剤流通管と、拡散ガスが流通する拡散ガス流通管とから構成されていることを特徴とする請求項1に記載の脱硝装置。
【請求項3】
アンモニアを含有する脱硝剤と、該脱硝剤を拡散させる拡散ガスとを被処理ガス中に供給し、被処理ガスと脱硝剤とを接触させて被処理ガス中の窒素酸化物を除去する脱硝方法であって、
前記拡散ガスは、不活性ガスを用いて構成されていることを特徴とする脱硝方法。

【図1】
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【図2】
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