説明

脱硫方法

本発明は、ガス混合物が、酸性のガス成分を分離するために二酸化炭素及び硫黄化合物、特に硫化水素を含有する酸性ガスが形成される分離工程に供され、その際、該酸性ガスは、単体硫黄を分離するためにクラウス装置に供給され、そしてその際、該クラウス装置を出る残留ガスは、クラウスプロセス中に形成された水が少なくとも部分的に除去される更なる分離に供される、脱硫方法に関する。本発明によれば、酸素含有反応ガスとして、工業純度の酸素だけが該クラウス装置に供給され、その際、該クラウス装置の下流で二酸化炭素が、直接的な隔離又は工業的使用を可能にする純度で取り出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス混合物が、酸性のガス成分を分離するために、二酸化炭素及び硫黄化合物、特に硫化水素含有の酸性ガスが形成される分離工程に供される脱硫方法に関する。上記の方法の場合、最初に酸性のガス成分が適当な吸収剤によってガス流から除去され、そしてそれでもって有用ガス成分から分離される。循環される吸収剤の再生時に、含まれる酸性ガス成分は放出され、そして後続のクラウス装置に導入される。
【0002】
通常、クラウス法は、空気でもって酸性ガスが燃焼され、その際、硫化水素(HS)が、燃焼空気中に含まれる酸素(O)でもって、単体硫黄及び水(HO)に転換され、そしてその際、凝縮器中における後続の冷却によって該単体硫黄(S)が単離されるように遂行される(Ullmanns Enzyklopaedie der technischen Chemie, Band 10, 4. Auflage 1975, Seite 594(非特許文献1))。公知のクラウス法を用いることにより、通常、98%までの収率が達成できる。残留ガスを追加的に浄化するために、これを残留ガス浄化法に供することができる。クラウス法において形成された単体硫黄は取り出され、そして商業的に使用することができるが、浄化された残留ガスは慣習的に使われずに環境に放出されている。
【0003】
二酸化炭素は、いわゆる気候ガスとして地球規模の温室効果に寄与することから、追加的な二酸化炭素の発生を避ける必要がある。更に、多量の二酸化炭素をプロセスガスとして必要とする方法も現在知られている。二酸化炭素は、例えば、石油採掘時の収量を高めるために使用することができ、その際、二酸化炭素は油層中へ注入される(“Enhanced Oil Recovery”(EOR、石油増進回収))。放出を避けるための二酸化炭素の隔離のためにも、また、工業的な利用のためにも、二酸化炭素は、通常、かなりの手間をかけて、他の成分、例えば窒素から分離しなければならない。
【0004】
欧州特許出願公開第0059412A2号明細書は、燃焼プロセス時、特に、クラウス装置の運転時のバラストガス量を調節する方法に関するものであり、その際、形成された残留ガスは常法で環境に放出されている。最適な燃焼を達成するために、空気及び工業純度の酸素を供給することが企図されていて、その際、空気及び工業純度の酸素の比率は、それぞれの場合に存在する燃焼ガス中の不活性ガスの割合に合わされる。工業純度の酸素とは、大部分が酸素からなり、そして慣用的な大規模生産方法において形成されるガスのことである。その純度は、通常、深冷分離法(kryogenen Zerlegungsverfahren)の場合に90%超であり、典型的には少なくとも98%である。
【0005】
Chemie−Ing.−Techn. 39 (1967), 515〜520頁(非特許文献2)におけるH. Fischerの論文からは、更に、十分高い燃焼温度を得るために、硫化水素の割合が20〜約5体積%時に、酸性ガスを転換するために工業純度の酸素をクラウス装置に供給することが知られている。その場合にも、残留ガスは排ガスとして常法で放出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0059412A2号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Ullmanns Enzyklopaedie der technischen Chemie, Band 10, 4. Auflage 1975, Seite 594
【非特許文献2】H. Fischer in Chemie−Ing.−Techn. 39 (1967), Seite 515 bis 520
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、酸性ガス中に含有されている二酸化炭素の利用をわずかな手間で可能にするという、冒頭に記載の特徴を有する方法を提供する、という課題に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0009】
その課題は、本発明に従い、請求項1に記載の方法によって解決される。本発明によれば、酸性ガス中に含まれる硫黄成分画分及び二酸化炭素画分は、できる限り純粋な形で別々に回収されるべきである。従来技術から知られている方法を用いた場合、公知の吸収プロセスでは、一方の硫黄成分及び他方の二酸化炭素は、ガス混合物から高い選択率で別々に分離できないため、そのような非常に純粋な分離は、多大な手間のもとでしか可能ではない。それと比べて、二酸化炭素及び硫黄成分を一つの一緒の酸性ガス画分にまとめて分離することは比較的簡単であり、その酸性ガス画分は更に加工するべくクラウス装置に供給され、そしてそれから本発明の方法の範囲内で、単体硫黄及び二酸化炭素へ費用効果的に転換される。二酸化炭素及び硫黄成分を一緒に分離するためには、例えば、化学的及び物理的に作用する洗浄方法を使用できる。本発明によれば、酸素含有の反応ガスとして、工業純度の酸素だけが、クラウス装置に供給される。それにより、酸性ガスの浄化時に、後で、大きな手間をかけて二酸化炭素から分離しなければならない不活性ガス分が供給されることがない、というとりわけ有利な方法で達成される。
【0010】
本発明による方法の好ましい形態の範囲内で、クラウス装置の燃焼室中で最大限に許容し得る燃焼温度を超える場合に、プロセス特有の残留ガスの一部が、排出側で(abstroemseitig)取り出され、そして冷却のために、工業純度の酸素と一緒に上記の燃焼室に供給されることが企図される。記載した方策により、二酸化炭素の濃縮化を損なうことなく、燃焼過程の正確な制御が可能となる。
【0011】
二酸化炭素及び硫黄成分、特にHS、COS及びメルカプタンから本質的になる酸性ガスの場合、そのようにほぼ完全な分離(Separation)が達成できる。クラウスプロセスにおいて、硫黄成分と酸素との反応によって形成される単体硫黄及び水は、残留ガスから凝縮され(auskondensiert)、その結果、多量の二酸化炭素の濃縮化が起きる。なお残っている硫黄化合物の残滓を、少なくとも大幅に除去するために、クラウス装置を出る残留ガスを、下流に配置したガス浄化法に供することができる。それで、例えば、残留ガス中に含まれるHS以外の硫黄成分をHSへ水素化するような水素化を設けることができる。残留ガスは、それから急冷され、そして好ましくは化学的吸収剤による選択的洗浄に供され、その際に、残留ガス中になお存在しているHSは大幅に除去される。硫黄成分を追加的に除去した後、残留ガスは、本質的に二酸化炭素、水及び少量の一酸化炭素及び水素からなる。残留ガス浄化法として、例えば、SCOT(登録商標)法(Shell Claus Off gas Treatment)が適している。
【0012】
水素分及び/又は一酸化炭素分を、水及び/又は二酸化炭素に転換するために、残留ガスを、工業純度の酸素で、好ましくは触媒的に行われる後燃焼させることができる。元々クラウス装置に供給された酸性ガスが、本質的に硫黄化合物及び/又は二酸化炭素からなる限り、残留ガス浄化法の実行後および水素及び/又は一酸化炭素を除去するための後燃焼後には、残留ガスはほとんど純粋な二酸化炭素及び水蒸気だけを含み、該水蒸気は、残留ガスの更なる処理時に凝縮される。更には、水の含有量をさらに低減するために、ガスを乾燥するための公知の方法も使用できる。水の除去後に本質的に二酸化炭素からなる残留ガスは、隔離するために、つまり、とりわけ石油鉱床、天然ガス鉱床、帯水層(Aequiferen)、炭層のような地層で、又は深海中で貯蔵するために、あるいは工業的に利用するために、慣習的に圧縮されるか又は液化され、その際、特に、二酸化炭素の一時貯蔵又は輸送もまた企図できる。二酸化炭素の意図される更なる使用に応じて、その純度は、ガス状の状態で、有利には80体積%、好ましくは90体積%、特に好ましくは95体積%である。
【0013】
水素及び/又は一酸化炭素の工業純度の酸素での後燃焼に追加的にまたはそれの代わりに、残留ガスの圧力及び/又は温度を変えることによって、上述の成分を除去することもできる。そのようにして、例えば、残留ガス浄化法の実施後に、ガス冷却器又は急冷塔を使って残留ガスから多量の水蒸気を取り除き、そしてその後、二酸化炭素の液化のために凝縮させることを企図できる。一酸化炭素及び水素は、それから、適した分離装置中で、液化された二酸化炭素から取り除ける。
【0014】
クラウス装置に供給される酸性ガスが、二酸化炭素及び硫黄成分以外に不活性ガス分をなお含んでいる場合、本発明の脱硫方法では、追加の不活性ガス成分が全く供給されないため、少なくともあとからの分離の手間を低く保つことができる。
【0015】
本発明より意図される工業純度の酸素の使用により、所与の量の酸性ガスにおいて、クラウス装置の並びに任意に設けられる残留ガスを浄化するための装置の縮尺化が有利に可能であり、その結果、工業純度の酸素の供給に必要な追加費用を相殺することができる。
【0016】
本発明の対象は、請求項11に記載の、本発明の方法を実施するための装置でもある。その装置は、通常の構成要素以外に、とりわけ、クラウス装置の燃焼室の入口を、クラウス装置の下流に配置されたガス導管又はクラウス装置の下流に配置された残留ガスの貯蔵タンクと結合させる結合管を含む。更に、その入口において、プロセス特有の残留ガスの混合を必要に応じて制御するために、その結合管には制御装置が設けられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス混合物が、酸性のガス成分を分離するために二酸化炭素及び硫黄化合物、特に硫化水素含有の酸性ガスが形成される分離工程に供され、その際、該酸性ガスは、単体硫黄を分離するためにクラウス装置に供給され、その際、該クラウス装置を出る残留ガスは、クラウスプロセス中に形成された水が少なくとも部分的に除去される更なる分離に供され、その際、酸素含有反応ガスとして、工業純度の酸素だけが該クラウス装置に供給され、そして、その際、該クラウス装置の下流で、二酸化炭素が、直接的な隔離又は工業的使用を可能にする純度で取り出される、脱硫方法。
【請求項2】
燃焼室中で最大限に許容し得る燃焼温度を超える場合に、前記クラウス装置に対して排出側で(abstroemseitig)取り出されたプロセス特有の残留ガスの部分の混合物が、前記クラウス装置に供給されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記分離工程時に、酸性ガス成分が前記ガス混合物から全部一緒に分離され、そして酸性ガスとして一つの一緒の画分で得られることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記分離工程が、物理的及び/又は化学的吸収剤でのガス混合物の洗浄、及び該吸収剤の再生を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
硫黄化合物の残滓を少なくとも大幅に除去するために、前記クラウス装置を出る残留ガスが、残留ガス浄化法、特にSCOT(登録商標)法に供されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
前記クラウス装置を出る残留ガスが、残留ガス浄化法の中で冷却され、その際、水蒸気が凝縮され、そして前記残留ガスから分離されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
前記残留ガスが、水素及び/又は一酸化炭素を除去するために、工業純度の酸素による後燃焼及びより好ましくは触媒的後燃焼に供されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
前記残留ガスが液化されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一つに記載の方法。
【請求項9】
一酸化炭素、水素及び/またはその他の不活性ガスの残留含有分が蒸留によって二酸化炭素から分離されることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記残留ガスが、更なる利用のために圧縮されることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一つに記載の方法。
【請求項11】
吸収塔、該吸収塔に接続された吸収剤循環であり、それを使って該吸収塔に吸収剤を供給できる循環、該吸収剤を処理するための再生装置、該再生装置中で発生した酸性ガスを脱硫するためのクラウス装置を有する、請求項1〜10のいずれか一つに記載の方法を実行するための装置であり、その際、前記クラウス装置の燃焼室の入口を、該クラウス装置の下流に配置されたガス導管又は該クラウス装置の下流に配置された前記残留ガスの貯蔵タンクを結合させる、結合管が設けられ、そしてその際、前記入口において、前記プロセス特有の残留ガスの混合を制御するために、前記結合管に制御装置が設けられる、上記装置。

【公表番号】特表2012−504538(P2012−504538A)
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−529486(P2011−529486)
【出願日】平成21年10月5日(2009.10.5)
【国際出願番号】PCT/EP2009/007119
【国際公開番号】WO2010/040495
【国際公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(597014730)ティッセンクルップ・ウーデ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (20)
【Fターム(参考)】