説明

脱穀機の穀稈掻込み装置

【課題】入口側板の前側にユニット構造の穀稈掻込み装置をコンパクトに纏めて取付固定することができると共に、穀稈ガイドを安定よく支持し穀稈の掻込み供給を穂先側の浮き上がりを防止してスムーズに行う脱穀機の穀稈掻込み装置を提供する。
【解決手段】フィードチェン7によって挟持搬送される穀稈の穂先側を、入口案内板9から扱室3内に掻込み供給するパッカー11を有する穀稈掻込み装置5を、扱胴2を回転可能に軸支する扱室3の入口側板4の前側に設ける脱穀機1で、前記穀稈掻込み装置5のパッカー伝動ケース22を、取付フレーム25によって扱室3の入口側板4に着脱可能に支持し、且つ取付フレーム25に入口案内板9との間で穀稈掻込路Kを形成する穀稈ガイド26を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱穀機の穀稈掻込み装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、扱室の入口側板の前側に、フィードチェンによって挟持搬送される穀稈の穂先側をパッカーによって扱室内に掻込み供給する穀稈掻込み装置を設けた脱穀機は特許文献1に示されるように既に公知である。
この穀稈掻込み装置は、エンジン側から扱胴の扱胴軸を駆動する扱胴駆動軸を内装した扱胴伝動ケースに支持され、該扱胴駆動軸の端部に設けたリンク機構によってパッカーを駆動可能に支持する構成となっている。
【特許文献1】実開昭55−37369号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1で示される穀稈掻込み装置は、入口側板に沿ってエンジン側から横方向に延長された扱胴駆動軸の端部に設けた駆動リンクからパッカーを回転駆動するので、穂先側用のパッカーを設ける場合に扱胴駆動軸を内装する扱胴伝動ケースが邪魔になり、株元側パッカーから二股状に形成された不安定構造のパッカー構造になる。また扱室の穀稈入口から延設される入口案内板と扱胴伝動ケースで形成される空間部も狭くなり、パッカーの穀稈掻込軌跡が制約され、例えば屈折したり長い穀稈の穂先を引っ掛け易くなって適切な掻込み供給することができない等の欠点がある。
【0004】
また穀稈穂先側の浮き上がりを規制する穀稈ガイドを設けず、パッカーの往復運動だけで穀稈穂先側を掻込むので、ボリュウムの大きい穀稈穂先側や上方に浮き上がった穂先側を掻込むとき、パッカーは復動するときに穂先側を引っ掛けて逆方向に戻し搬送乱れを生じ易い等の問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明の脱穀機の穀稈掻込み装置は、第1に、フィードチェン7によって挟持搬送される穀稈の穂先側を、入口案内板9から扱室3内に掻込み供給するパッカー11を有する穀稈掻込み装置5を、扱胴2を回転可能に軸支する扱室3の入口側板4の前側に設ける脱穀機1において、前記穀稈掻込み装置5のパッカー伝動ケース22を、取付フレーム25によって扱室3の入口側板4に着脱可能に支持し、且つ取付フレーム25に入口案内板9との間で穀稈掻込路Kを形成する穀稈ガイド26を設けたことを特徴としている。
【0006】
第2に、扱胴伝動ケース16に軸支される扱胴入力軸19を前方に突出させ、該扱胴入力軸19からパッカー伝動ケース22を介してパッカー11を駆動することを特徴としている。
【0007】
第3に、扱胴入力軸19を扱胴軸15の上方に位置させて扱胴伝動ケース16に軸支することを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
以上のように本発明による脱穀機の穀稈掻込み装置は、パッカー伝動ケースに延設した取付フレームを扱室の入口側板に着脱可能に支持することにより、入口側板の前側にユニット構造の穀稈掻込み装置を安定よく簡単に取付固定することができる。
またパッカー伝動ケースを取付固定する取付フレームは、穀稈ガイドの取付部材に兼用することができ、穀稈ガイドの上方を高い位置から安定よく支持し入口案内板との間に穀稈掻込路を形成して、穀稈穂先側の浮き上がりを防止しスムーズな掻込み供給を行うことができる。
【0009】
また扱胴伝動ケースから前側に突出させた扱胴入力軸から、パッカー伝動ケースを介しパッカーを駆動する構成としたことにより、入口側板の前側にパッカー伝動ケースをコンパクトに纏めて設置し穀稈穂先側の空間部を広く形成するので、該空間部にパッカーを設け穀稈穂先側の掻込み供給を行うことができる。
【0010】
また扱胴入力軸を扱胴軸の上方に位置させて扱胴伝動ケースに軸支することにより、入口案内板の上方に広い空間部を形成しパッカー伝動ケースを設置することができるので、十分な長さのパッカーによって掻込み作業時に穂先側の乱れを防止し扱室内に供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。符号1はコンバイン等に搭載される脱穀機であり、扱胴2を軸支した扱室3を形成する上部ケース部の入口側板4に本発明に係わる穀稈掻込み装置5を着脱可能に取付固定している。
上記脱穀機1は従来のものと同様に扱室3の扱口6に沿ってフィードチェン7を張設し、該フィードチェン7の始端部に前処理部の穀稈搬送チェン8を接続し、前処理部で刈り取り搬送される穀稈を継送搬送し扱室3に供給することができる。
【0012】
フィードチェン7に継送された穀稈は、扱口6の前側で入口側板4と入口案内板9によって形成される穀稈入口10に供給されるとき、穀稈穂先側を前記穀稈掻込み装置5のパッカー11によって掻込まれ、入口案内板9上で扱室3内への穀稈供給を促進することができる。また入口案内板9上で入口部に堆積しようとする刺さり粒を含む藁屑類も穀稈と共に扱室3内に供給され脱穀処理を行うことができる。
【0013】
図示例の脱穀機1は、エンジン側から伝動される駆動ケース12の駆動プーリー13から扱胴2の扱胴軸15を駆動する扱胴伝動ケース16を、入口側板4の前側に取付固定している。扱胴伝動ケース16は扱胴軸15を軸支しており、その上方に入力プーリー17を有する扱胴軸15を軸支している。これにより駆動プーリー13と入力プーリー17とに巻き掛けた伝動ベルト20による回転動力を、扱胴伝動ケース16内のギヤ伝動機構を介し扱胴軸15に回転伝達することができる。
【0014】
扱胴伝動ケース16に軸支される扱胴入力軸19は、入力プーリー17を支持し前側に延長した先端部にピニオンギヤ21を一体的に形成し、該ピニオンギヤ21を後述する穀稈掻込み装置5のパッカー伝動ケース22内のベベルギヤ23に係脱可能に噛合させる構成となっている。これによりパッカー伝動ケース22は巾狭コンパクト型にすることができ、入力プーリー17の前側に支持した状態で、従来のもののように穀稈穂先側に伝動軸を横設することなく広い穂側入口空間部を形成することができ、またパッカー伝動ケース22を扱胴軸15より上方に位置させて、入口案内板9との間に上下方向に広い入口空間部を形成することができる。
【0015】
次に穀稈掻込み装置5について説明する。この穀稈掻込み装置5は前記扱胴入力軸19に取付支持されるパッカー伝動ケース22と、該パッカー伝動ケース22に取付固定されて、入力プーリー17の前側を迂回し後方に延設される左右の取付フレーム25と、パッカー伝動ケース22によって駆動されるパッカー11と、取付フレーム25から下向きに一体的に支持され、前記入口案内板9との間で穀稈掻込路Kを形成し穀稈穂先側の浮き上
がりを防止し、スムーズな掻込み供給を行う穀稈ガイド26とを、図4で示されるようなユニット構造で構成している。
【0016】
そして、左右の取付フレーム25の端部を取付ブラケット27によって連結し、該取付ブラケット27はその取付孔29に取付ボルト30が挿入され入口側板4の上部に取付固定するようにしている。このときパッカー伝動ケース22はメタル支持部31を介し扱胴軸15の先端部に挿脱可能に挿入支持する。これにより穀稈掻込み装置5は入口側板4の前側で上下が固定され、扱胴伝動ケース16の前方にコンパクトに纏めて安定よく取付支持することができる。
【0017】
図示例のパッカー11は左右に2連で互いに位相を異ならせて交互に掻込み可能とする多連型掻込み方式としている。このためパッカー11,11の上部は、左右の取付フレーム25の上部に設けた横支持軸32に単独回動可能に軸支した支持リンク33,33に軸支連結される。
またパッカー11,11の中途部は、パッカー伝動ケース22に軸支されてベベルギヤ23を有する回転軸35と、該回転軸35と同心で分割され取付フレーム25,25等に個別に軸支される回転軸35aとに設けた、各回転リンク36に軸支連結される。
【0018】
これにより扱胴入力軸19が回転するとき、パッカー11,11はその先端部が図1の点線で示す掻込軌跡を描いて回転し、穀稈の穂先側の掻込みを交互に連続して行い、フィードチェン7で株元側が挟持搬送される穀稈を穂先側の遅れを伴うことなく穀稈入口10から扱室3内にスムーズに供給する。
【0019】
以上のようにパッカー11を駆動させるパッカー伝動ケース22を、扱胴2の扱胴伝動ケース16に着脱可能に支持して駆動させると共に、パッカー伝動ケース22から上方に延設した取付フレーム25を扱室3の入口側板4に着脱可能に支持することにより、入口側板4の前側において、穀稈掻込み装置5を上下方向を支持し安定よく取付固定することができる。
【0020】
また扱胴軸15を駆動する扱胴入力軸19を扱胴伝動ケース16から前側に突出させ、該扱胴入力軸19からパッカー伝動ケース22の回転軸35を回転しパッカー11を駆動することにより、簡潔なベベルギヤ伝動方式によって左右巾を大きくすることなく、パッカー伝動ケース22をコンパクトに纏めた軽量構造にすることができる。従って、パッカー伝動ケース22の穀稈穂先側へのパッカー設置空間部も広くとることができ、該空間部に穂先側用のパッカー11を適切な配置を以て設置することができるので、穀稈穂先側の掻込み供給をスムーズに行うことができる。
【0021】
さらに、上記扱胴入力軸19を扱胴伝動ケース16に対し扱胴軸15の上方に位置させて軸支することにより、穀稈掻込み装置5のパッカー伝動ケース22を入口案内板9の上方で広い空間部を形成することができるので、パッカー11の上下方向の長さ十分にとりながら掻込み軌跡並びにストロークも適切にとることができ、掻込み作業時に穀稈穂先側を乱すことなく穀稈入口10に向けて供給することができる。
【0022】
このときパッカー伝動ケース22を取付固定する取付フレーム25を取付部材に兼用して取付固定される穀稈ガイド26は、その基部を入口案内板9の上方で高い位置から安定よく支持することができる。また穀稈ガイド26の穀稈案内面26aは、穀稈搬送方向の上手側から下向きに滑らかに屈曲形成することができ、掻込み時にパッカー11を突出させ且つ戻り軌跡を覆いながら、入口案内板9との間で穀稈を規制案内し穂先側の浮き上がりを防止する穀稈掻込路Kを簡単に形成することができ、パッカー11による穀稈掻込路K内の穀稈の掻込み送りを整然と行なわせる等の利点がある。
【0023】
また以上のように構成される穀稈掻込み装置5を脱穀機1から取り外したい場合は、取り付け時の逆順の作業を以て簡単に取り外すことができる。また穀稈掻込み装置5を装着しない状態の脱穀機1は、扱胴入力軸19の先端部を予め準備される図示しない入口側板カバーで覆うことができる。
【0024】
尚、扱胴伝動ケース16はピニオンギヤ21を有する扱胴入力軸19とピニオンギヤ21を有しない扱胴入力軸とを抜き差し交換可能に構成することが望ましく、この場合には穀稈掻込み装置5を有しない脱穀機1に対しても、必要により後付け作業によって穀稈掻込み装置5を簡単に装着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係わる穀稈掻込み装置を備えた脱穀機の側面図である。
【図2】図1の要部の構成を示す平断面図である。
【図3】図1の穀稈掻込み装置の構成を示す正面図である。
【図4】穀稈掻込み装置の全体構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0026】
1 脱穀機
2 扱胴
3 扱室
4 入口側板
5 穀稈掻込み装置
7 フィードチェン
9 入口案内板
10 穀稈入口
11 パッカー
15 扱胴軸
16 扱胴伝動ケース
19 扱胴入力軸
22 パッカー伝動ケース
25 取付フレーム
26 穀稈ガイド
26a 穀稈案内面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィードチェン(7)によって挟持搬送される穀稈の穂先側を、入口案内板(9)から扱室(3)内に掻込み供給するパッカー(11)を有する穀稈掻込み装置(5)を、扱胴(2)を回転可能に軸支する扱室(3)の入口側板(4)の前側に設ける脱穀機(1)において、前記穀稈掻込み装置(5)のパッカー伝動ケース(22)を、取付フレーム(25)によって扱室(3)の入口側板4に着脱可能に支持し、且つ取付フレーム(25)に入口案内板(9)との間で穀稈掻込路Kを形成する穀稈ガイド(26)を設けた脱穀機の穀稈掻込み装置。
【請求項2】
扱胴伝動ケース(16)に軸支される扱胴入力軸(19)を前方に突出させ、該扱胴入力軸(19)からパッカー伝動ケース(22)を介してパッカー(11)を駆動する請求項1記載の脱穀機の穀稈掻込み装置。
【請求項3】
扱胴入力軸(19)を扱胴軸(15)の上方に位置させて扱胴伝動ケース(16)に軸支する請求項1又は2記載の脱穀機の穀稈掻込み装置。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−101803(P2006−101803A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−295082(P2004−295082)
【出願日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)