説明

脱穀機

【課題】脱穀部の上部枠体がロック解除状態にあるときのみに、上部枠体を昇降できる駆動回路の提供。
【解決手段】上部枠体19を昇降するアクチュエータ25の駆動回路は、メインユニット40と、操作系ユニット50と、パワーサプライユニット60とを直列に介して油圧ポンプ25aにまで繋がれており、いずれか一つのユニットがOFFである場合にはアクチュエータ25を駆動することができない。また、操作系ユニット50は、上部枠体19をロックするロック手段に連動しており、ロック解除により操作系ユニット50がONとなる。上部枠体19は、ロック解除状態でのみ昇降動作できるので、脱穀部8の作業が安全となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
コンバインに搭載される脱穀機に係り、詳しくは、扱室をロックするロック操作に連動して、上部枠体を開閉駆動できる脱穀機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンバインの大型化に伴い搭載される脱穀機も大型化しているが、脱穀機のメンテナンス等の際には、扱胴を含む上部枠体を昇降する必要があり、重量物である上部枠体を昇降するには多大な労力を要している。そのため、上部枠体を油圧シリンダ等の駆動装置を用いて機械的に昇降自在としている脱穀機がある。
【0003】
特許文献1には、上部枠体を昇降する油圧シリンダを取り付けた脱穀機が示されており、運転席の操作パネルに配置した昇降操作スイッチに操作により油圧シリンダを駆動し、上部枠体を昇降(開閉)している。
【0004】
【特許文献1】特開2001−190137号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載される油圧シリンダ(アクチュエータ)は、上部枠体を昇降操作する毎にコンバインの運転席に搭乗して昇降操作スイッチを操作する必要があり、上部枠体を昇降する頻度によっては作業の効率低下を招いている。同様に、メンテナンス作業に伴い上部枠体を細かく昇降する場合にも、何度も運転席に乗降りする必要があるので、作業者の負担が多くなっている。
【0006】
そこで、本発明は、上部枠体を固定するロック操作に連動して、アクチュエータを駆動することができ、上部枠体のロック解除後に扱室近傍に設けた昇降スイッチを操作して上部枠体の昇降操作することで、上記課題を解決した脱穀機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る本発明は、扱胴(18)を内装する扱室(17)を有し、該扱室の少なくとも上方を覆う上部枠体(19)が、電力供給に基づき駆動されるアクチュエータ(25)により開閉駆動されてなる脱穀機(8)において、
前記上部枠体(19)を閉じ位置でロックするロック操作手段(28、29、31)と、
前記ロック操作手段のロック解除状態を検出するロック検出手段(32)と、
前記アクチュエータ(25)を開方向及び閉方向に操作する昇降操作手段(52a、52b)と、
前記昇降操作手段に前記電力を供給又は遮断する電源手段(60)と、を備え、
前記ロック検出手段(32)に基づきロック解除状態を検出することにより、前記電源手段(60)が電力供給状態に保持されてなる、
ことを特徴とする脱穀機(8)にある。
【0008】
請求項2に係る本発明は、報知手段(53)を備え、
前記ロック検出手段(32)に基づくロック解除状態の検出により、前記報知手段(53)を作動してなる、
請求項1記載の脱穀機(8)にある。
【0009】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これにより特許請求の範囲の記載に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る本発明によると、上部枠体を昇降するアクチュエータは、ロック検出手段により上部枠体のロック解除状態が検出されたことにより、昇降操作手段に電力を供給して駆動するので、運転席に搭乗して昇降操作スイッチを操作する必要がなくなる。また、上部枠体がロックされた状態ではアクチュエータを操作することができないので、不注意等により上部枠体を昇降することを防止できると共に、アクチュエータはロックが解除された状態でのみ動作するので、上部枠体がロックした状態でアクチュエータが動作することはなく、アクチュエータなどの過負荷を防ぐことができる。
【0011】
請求項2に係る本発明によると、ロック検出手段がロック解除状態を検出すると報知手段を作動するので、例えば、報知手段として警報器などを用いれば、周囲で作業をする作業者に上部枠体がロック解除状態であることを報知できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面に沿って本発明の好ましい実施の形態について説明する。図1は本発明の実施形態である脱穀機8を搭載したコンバイン1の側面図である。コンバイン1は圃場や路上を走行する左右一対のクローラ走行装置2、2を備え、該クローラ走行装置2、2に支持された機体3の前部には、稲を刈取る刈取部5が昇降自在に架設すると共に、その後方一側には刈取り後の稲が導かれて脱穀処理する脱穀機8を搭載している。また、脱穀機8の他側にはコンバイン1を操作する運転部6が配置しており、その後方には穀粒を外部へ移送するオーガ7aを備えたグレンタンク7を搭載している。運転部6の四方はキャビン10により覆われており、キャビン10の内部には運転席や脱穀機などの操作スイッチが配置されて、運転者が搭乗してコンバイン1を操作できる。更にコンバイン1の最後尾には排藁処理装置9を搭載しており、脱穀後の排藁を細断或いは長藁のまま機外に排出できる。
【0013】
本コンバイン1では、運転部6の下部に動力源となるエンジンを搭載しており、脱穀機8、刈取部5やクローラ走行装置2などに動力を供給している。
【0014】
図2は、脱穀機8をコンバイン1の進行方向右側上方から見た斜視図であるが、脱穀機8は、脱穀部12と選別部14とを有しており、刈取部5にて刈取られた茎稈を、脱穀部12から前方に延出する脱穀フィードチェーン13を介して脱穀機8まで搬送し、脱穀部12によって脱穀粒と排藁とに分離している。
【0015】
図3及び図4は脱穀機8を前方から見た図であり、図5は脱穀機8の平面図であるが、脱穀機8は、機体3に固着した主構造体15を有し、主構造体15の上部に配置した受け網16によって区画された上方空間が扱室17となっている。扱室17には、回動して脱穀をする扱胴18を内装しており、その上方が上部枠体19により覆われている。また、扱室17の下流側には穀粒と排藁とを分離する処理室20が隣接しており、処理室20には、主構造体15に回動自在に支持された処理胴21が収納している。
【0016】
上部枠体19は、扱胴18を回動自在に支持すると共に、主構造体15の左方上部から水平方向に延出する回動支軸22によって軸支されており、上部枠体19を主構造体15に対して上方へ持ち上げて扱室17を開放することができる(図4参照)。
【0017】
上部枠体19の回動支軸22側には、駆動アーム23の一方の端部が固着しており、駆動アーム23の他方の端部23aにはアクチュエータ(駆動機構)25が伸縮自在に枢支している。本アクチュエータ25は伸縮動作して、上部枠体19を回動支軸22を支点として開閉できるが、上記のとおり、上部枠体19には大型の扱胴18が垂下しているので、上部枠体19の開閉動作時には、アクチュエータ25に大きな負荷が掛かる。
【0018】
また、主構造体15の断面中央部には、扱室17と処理室20とを分離して鉛直上方に向かう区画フレーム27が設けられており、区画フレーム27の中段には、上部枠体19を固定するために用いるロックピン28が水平方向に向かって突設している。該ロックピン28には、上部枠体19の前後面を覆う上部枠体カバー19aに軸支したフック29のフック爪29aが係合して、上部枠体19を主構造体15にロックすることができる(図3参照)。
【0019】
フック29の上端部では、リンク30aの一方の端部が枢支しており、リンク30aの他方の端部はリンク30bを介して、上部枠体19に設けられたロック操作レバー31と連結している。本実施例ではフック29、リンク30a、30b、及びロック操作レバー31とによりロック操作手段が形成されており、ロック操作レバー31を操作すると、リンク30b、リンク30aを介してフック29を回動して、ロックピン28との係合を解除して上部枠体19を開閉(昇降)することができる(図4参照)。また、ロック操作レバー31の上部にはロック検出器32が取付てあり、ロック操作レバー31の操作によるフック29とロックピン28との係合及び解除状態を検出できる。さらに、ロック検出器32は、後述する操作系ユニット及び報知手段と電気的に連結しており、フック29とロックピン28との係合/解除の信号を送出している。なお、本実施の形態では、ロック検出器32をロック検出手段としている。
【0020】
主構造体15の区画フレーム27の下方位置と、上部枠体19のフック29を軸支する軸29bとは、ガススプリング33により連結して上部枠体19を支持している。該ガススプリング33は伸長方向に付勢力を与えるもので、上部枠体19に上昇する方向の力を付与して上部枠体19の自重を軽減し、昇降する際の操作を容易にしている。
【0021】
アクチュエータ25の側方には、油圧ポンプ25aが油圧ホースを介して取り付けられており、後述する電源手段により電力を供給することで、アクチュエータ25を伸縮することができ、ガススプリング33と共に上部枠体19を昇降できる。なお、アクチュエータ25を駆動するには油圧ポンプの他に機械式装置を用いることもできる。
【0022】
また、主構造体15の側面には、昇降操作スイッチ52a、52bが設けてあり(図1参照)、昇降操作スイッチを操作することによりアクチュエータ25を伸縮して、図4に示すように、扱室17を開放して、扱胴18の下で必要な作業ができる。
【0023】
つづいて、アクチュエータ25を駆動する駆動回路について説明する。図6はロック検出器32に連動してアクチュエータ25を駆動する回路図であり、図7は同回路を模式的に示す図である。本駆動回路では、コンバイン1を統括して制御するコントローラユニット(メインユニット)40から独立して、操作系ユニット50とパワーサプライユニット60とを設けてある。
【0024】
駆動回路の概略は、図7に示すとおり、コンバイン1に搭載するバッテリーなどの電源41からの電力が、メインユニット40と、操作系ユニット50と、パワーサプライユニット60とを直列に介して油圧ポンプ25aにまで繋がれており、油圧ポンプ25aがアクチュエータ25を駆動している。本駆動回路では、各ユニット40、50、60がそれぞれ直列に配しているので、いずれか一つのユニットが開いている場合には油圧ポンプ25aにまで電力を供給しない、いわゆるアンド回路を構成している。ここで、操作系ユニット50はロック検出手段及び昇降操作手段に相当し、パワーサプライユニット60は電源手段に相当する。
【0025】
図6に示す駆動回路では、電源41からの電力は、操作系ユニット50とパワーサプライユニット60とに分岐しており、操作系ユニット50は、メインユニット40に繋がる保護リレー51と、ロック検出器32と昇降操作スイッチ52a、52bとに繋がるロックリレー52とを有している。
【0026】
コンバイン1では、エンジンが動いていて扱胴が回っている際には、制御的にアクチュエータの電源が入ることを規制しており、保護リレー51は、メインユニット40からの信号を受けて回路全体の電流を遮断している。一方、エンジンが停止して扱胴が止まっている際には、保護リレー51の端子51a側が閉じられて、本駆動回路に電力を供給することができる。以下、本実施例の回路では端子51a側が閉じた状態として説明する。
【0027】
端子51aには、ロックリレー52のコイル52cとロック検出器32とが直列に繋がれており、ロック検出器32の閉(ON)によりコイル52cに通電して、ロックリレー52を端子52d側にターンすることができる。
【0028】
一方、パワーサプライユニット60は、油圧ポンプ25aに繋がる上昇側リレー61と下降側リレー62とを有しており、それぞれのリレーコイルは端子52dと連結している。本上昇側リレー61と下降側リレー62とは端子52dから並列に配列しており、それぞれ上昇側リレー61には昇降操作スイッチの上昇スイッチ52aが、下降側リレー62には昇降操作スイッチの下降スイッチ52bが直列に配置して接地側と繋がっている。
【0029】
また、端子52dからは報知手段である警知器53が分岐しており、端子52d側への通電により警知器53を駆動できる。
【0030】
つづいて、以上の構成による脱穀機8の作用について説明する。
【0031】
刈取部5を稼動しながら圃場内を自走するコンバイン1では、刈取られた茎稈が脱穀フィードチェーン13に搬送されて脱穀機8まで到達する。すると茎稈は脱穀部12の扱胴18と接触して脱穀粒と排藁とに分離されて、脱穀粒はグレンタンク7に貯留され、排藁は排藁処理装置9に導かれて束ねる等の処理を経て機外に排出される。以上の作業を繰り返しながら脱穀作業が進行してゆくが、脱穀機8等は機械装置であることから、定期メンテナンスや異物混入時の対応のため内部を開放して保守する必要がある。
【0032】
脱穀機8の保守等の際に、脱穀機8の上部枠体19に設けられたロック操作レバー31を操作してロックを解除すると、ロック操作レバー31に連動するロック検出器32が閉じられ、電源41からの電流は、端子51a、ロックリレー52のコイル52c、ロック検出器32を介して流入し、コイル52cを磁化する。
【0033】
ロックリレー52の作動により、端子52dに電源41からの分岐電流が流入し、端子52dに繋がる警知器53を駆動する。すなわち、保護リレー51とロックリレー52とが同時に作動した状態で、警知機53が作動を始める。
【0034】
さらに、本状態から、昇降操作スイッチを操作して、例えば上昇スイッチ52aをONとすると、上昇側リレー61のリレーコイル61aに電流が流れて、端子61bと油圧ポンプ25a側の端子がメークし、電源41より分岐する電力が端子61bを介して油圧ポンプ25aまで供給される。同様に、ロック検出器32がON、かつ下降スイッチ52bがONとなった場合には、リレーコイル62aへの通電により端子62bがメークし、電源41より分岐する電力が端子62bを介して油圧ポンプ25aにまで供給される。この場合には、上昇スイッチ52aのONに対して逆向きの電流が流れ、油圧ポンプ25aは逆回転する。
【0035】
本実施の形態によると、運転席からのメインユニット40の操作、及びロック操作レバー31の操作によるロック解除の両条件が満たされた場合にのみ、昇降操作スイッチ52a、52bを操作して上部枠体19を昇降するアクチュエータ25を作動することができるので、不注意による上部枠体の昇降操作を防ぐことができる。
【0036】
最後に、上述したアクチュエータを駆動する回路は、脱穀機8の上部枠体19を昇降するためにのみ用いるのではなく、他の装置との同時稼動を防止する回路として広く用いることができる。例えば、コンバインのグレンタンク扉の開閉操作や、エンジンフードカバーの開閉操作などに転用することができると共に、コンバインのみでなく、耕耘機や耕作機械などにも転用できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】脱穀機を搭載したコンバインの側面図である。
【図2】脱穀機をコンバインの進行方向右側上方から見た図である。
【図3】閉じられた状態にある脱穀機を前方から見た図である。
【図4】開かれた状態にある脱穀機を前方から見た図である。
【図5】脱穀機の平面図である。
【図6】アクチュエータの駆動回路を示す図である。
【図7】アクチュエータの駆動回路を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0038】
1 コンバイン
8 脱穀機
15 主構造体
17 扱室
18 扱胴
19 上部枠体
25 アクチュエータ
25a 油圧ポンプ
31 ロック操作レバー
40 メインユニット
41 電源
50 操作系ユニット
51 保護リレー
52 ロックリレー
53 警知器
60 パワーサプライユニット
61 上昇側リレー
62 下降側リレー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱胴を内装する扱室を有し、該扱室の少なくとも上方を覆う上部枠体が、電力供給に基づき駆動されるアクチュエータにより開閉駆動されてなる脱穀機において、
前記上部枠体を閉じ位置でロックするロック操作手段と、
前記ロック操作手段のロック解除状態を検出するロック検出手段と、
前記アクチュエータを開方向及び閉方向に操作する昇降操作手段と、
前記昇降操作手段に前記電力を供給又は遮断する電源手段と、を備え、
前記ロック検出手段に基づきロック解除状態を検出することにより、前記電源手段が電力供給状態に保持されてなる、
ことを特徴とする脱穀機。
【請求項2】
報知手段を備え、
前記ロック検出手段に基づくロック解除状態の検出により、前記報知手段を作動してなる、
請求項1記載の脱穀機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2007−252225(P2007−252225A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−77834(P2006−77834)
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】