説明

脱穀機

【課題】排藁搬送装置を安定して強固に位置保持できる支持構造を具現する。
【解決手段】排藁搬送装置(15)を、扱室(3)の後壁を形成する扱室後側枠(9)から排藁搬送経路に沿わせて斜め後方に延出して脱穀機の横側端部に備える脱穀機側壁枠(32)に連結したメインフレーム(30a)と、該メインフレーム(30a)の長手方向途中部から前方に延出して扱室後側枠(9)に連結したフロントフレーム(30b)と、メインフレーム(30a)の長手方向途中部から後方に延出して脱穀機の後端部に備える脱穀機後部枠(33)に連結したリヤフレーム(30c)とからなる平面視で略X字型の排藁支持フレーム(30)によって支持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、脱穀機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1には、扱室の後部に脱穀処理後の排藁を引き継いで斜め後方に搬出処理する排藁搬送装置を設け、扱胴軸からベルト伝動機構、入力ギヤケース、入力軸を経て排藁搬送装置を回転駆動すべく構成した脱穀機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−125060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記構成の排藁搬送装置は、扱室後側枠と脱穀機後部枠との間にわたって連結した側面視つの字型の支持フレームによって支持する構成であり、構造的に弱く安定した支持が得られない問題がある。
【0005】
本発明の課題は、排藁搬送装置の支持構造として、強固で安定した支持が得られる排藁支持フレームを具現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1記載の発明は、扱胴(5)を回転自在に内装した扱室(3)の後側に、脱穀処理後の排藁を引き継いで斜め後方に向けて搬出する排藁搬送装置(15)を配置し、該排藁搬送装置(15)を、扱胴(5)を軸支する扱胴軸(5)からベルト伝動機構(18)と入力ギヤケース(19)と排藁入力軸(21)を介して連動する構成とし、該排藁搬送装置(15)を、扱室(3)の後壁を形成する扱室後側枠(9)から排藁搬送経路に沿わせて斜め後方に延出して脱穀機の横側端部に備える脱穀機側壁枠(32)に連結したメインフレーム(30a)と、該メインフレーム(30a)の長手方向途中部から前方に延出して前記扱室後側枠(9)に連結したフロントフレーム(30b)と、前記メインフレーム(30a)の長手方向途中部から後方に延出して脱穀機の後端部に備える脱穀機後部枠(33)に連結したリヤフレーム(30c)とからなる平面視で略X字型の排藁支持フレーム(30)によって支持したことを特徴とする脱穀機とする。
【0007】
排藁搬送装置(15)は、扱胴軸(5)からベルト伝動機構(18)、入力ギヤケース(19)内のギヤ伝動機構(20)、排藁入力軸(21)を経て回転駆動される。
脱穀処理後の排藁は、脱穀フィードチェン(2)から排藁搬送装置(15)の始端部に引き継がれて左側より斜め右側後方に向けて搬出され、排藁搬送装置の終端に至ってドロッパー又は排藁カッターなどで処理される。
【0008】
排藁搬送装置(15)は、平面視でX字型の排藁支持フレーム(30)によって支持されるため、安定良く強固に保持される。
また、排藁支持フレーム(30)はX字型構造であるため、細めのフレームであっても充分な強度を保持し得て安価に実施することができる。
【0009】
請求項2記載の発明は、前記排藁搬送装置(15)は、排藁の株元側を挟持搬送する株元側搬送チェン(16)と穂先側を係止搬送する穂先側搬送チェン(17)とからなり、前記排藁入力軸(21)から排藁搬送装置(15)の搬送方向中間部位に駆動力を入力して株元側搬送チェン(16)と穂先側搬送チェン(17)を駆動する構成とし、該株元側搬送チェン(16)と穂先側搬送チェン(17)との間の部位で排藁搬送装置(15)をリヤフレーム(30c)に支持させたことを特徴とする請求項1記載の脱穀機とする。
【0010】
上記構成によると、株元側と穂先側の左右両搬送チェン(16,17)間で、搬送方向中間部を支持するので、排藁搬送装置(15)をバランス良く位置保持することができる。
【0011】
請求項3記載の発明は、前記メインフレーム(30a)を挟んで左右に排藁搬送装置(15)と入力ギヤケース(19)を配設すると共に、該入力ギヤケース(19)はメインフレーム(30a)とフロントフレーム(30b)の間に配置して該メインフレーム(30a)とフロントフレーム(30b)の双方に支持したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の脱穀機とする。
【0012】
上記構成によると、排藁入力伝達部を含む排藁搬送装置(15)全体をバランス良く支持することができ、入力ギヤケース(19)の支持構成も安定よく強固に保持することができる。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の発明によれば、排藁搬送装置(15)は、X字型フレーム構造の排藁支持フレーム(30)によって支持するので、安定良く強固に位置保持することができる。
また、排藁支持フレーム(30)はX字型構造であるため、細めのフレームであっても充分な強度を保持することができ、安価に実施することができる。
【0014】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、株元側搬送チェン(16)と穂先側搬送チェン(17)との間の部位で排藁搬送装置(15)をリヤフレーム(30c)に支持するので、排藁搬送装置(15)をバランス良く位置保持することができる。
【0015】
請求項3記載の発明によれば、請求項1又は請求項2の発明効果を奏するものでありながら、排藁搬送装置(15)全体をバランス良く支持することができ、入力ギヤケース(19)の支持も安定し強固に位置保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】脱穀機の側断面図
【図2】同上要部の側断面図
【図3】同上要部の背面図
【図4】脱穀機の要部の平面図
【図5】同上要部の平面図
【図6】株元側排藁搬送装置の側面図
【図7】別実施例の排藁搬送装置を備えた脱穀機の平面図
【図8】同上要部の背面図
【図9】別例排藁搬送装置を備えた脱穀機の平面図
【図10】同上要部の背面図
【図11】排藁入力伝達経路の要部の平断面図
【図12】同上軸芯方向から見た要部の側面図
【図13】穂先側排藁搬送装置の側面図
【図14】脱穀機の要部の側断面図
【図15】脱穀機の要部の平面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
この発明の実施例を図面に基づき説明する。
図1及び図2は、脱穀機を示すものであり、次のような構成になっている。
すなわち、脱穀機(脱穀部)1は、脱穀フィードチェン2により株元を挟持しながら搬送される穀稈の穂先部を扱室3内で駆動回転する扱胴5により脱穀処理するよう構成している。扱室3の下半周部には受網6が張設され、扱胴5の上部を覆う扱胴カバー7は、扱室の一側を支点として揺動開閉する構成である。扱室3の終端側には多量の藁屑や未処理物を含む排塵処理物を下方に落下させる排塵口8が設けられている。
【0018】
前記扱室3のフィードチェン2側とは反対側一側には2番処理胴11を内装軸架した2番処理室12を並設している。また、前記2番処理胴11の後方にはこれと同一軸芯上において排塵処理胴13を内装軸架した排塵処理室14を構成して設けている。
【0019】
扱室3の後方部には、脱穀処理後の排藁を脱穀フィードチェン2より引き継いで斜め後方に向けて搬出処理する排藁搬送装置15を配備している。排藁搬送装置15は、排藁の株元側を挟持搬送する株元側搬送チェン16と穂先側を係止搬送する穂先側搬送チェン17からなり、扱胴軸5からベルト伝動機構18、入力ギヤケース19内のギヤ伝動機構20、排藁入力軸21を介して穂先側搬送チェン17の中間部に設けられた駆動スプロケット17a及び株元側搬送チェン16の中間部に設けられた駆動スプロケット16aを回転駆動すべく連動構成している。また、穂先側搬送チェン17は、株元側搬送チェン16終端側の従動スプロケット16bより伝動軸38を介して、穂先側搬送チェン17終端側の穂先側駆動スプロケット17aにより駆動され、この穂先側駆動スプロケット17aと始端側の穂先側従動輪17bとに穂先側搬送チェン17を掛回している。
【0020】
また、前記排藁搬送装置15は、穂先側搬送チェン17の穂先側に沿わせて延設すると共に扱室後側枠(左側)9と脱穀機側壁枠32とに連結部材34,34を介して装着したメインフレーム30aと、メインフレーム30aの途中部から前方に延出して扱室後側枠(右側)9に装着したフロントフレーム30bと、メインフレームの途中部から後方に延出して後部の脱穀機後部枠33から上方に立設する縦フレーム35に装着したリヤフレーム30cとからなる平面視で略X字型の排藁支持フレーム30によって支持するように構成している。なお、メインフレーム30aは、この後端部を更に外側右方に延出してグレンタンクGに連結する構成としている。また、リヤフレーム30cにおいても後端部を更に後方へ長く延出させて脱穀機後部枠33に連結したL型フレーム36によって連結支持する構成としている。
【0021】
機枠側から突設した懸架フレーム37には、排藁搬送装置15の終端側が軸支されており、株元側搬送チェン16の従動スプロケット16bと穂先側搬送チェン17の駆動スプロケット17aを軸支する伝動軸38を軸受保持している。
【0022】
左右搬送チェン16,17間における排藁入力軸21の軸受部分(軸受ボス体22)は、上方のリヤフレーム30cから下方に突設する支承部材39によって装着支持している。
【0023】
入力ギヤケース19は、メインフレーム30aとフロントフレーム30b間に介在位置させると共に、それぞれのフレームに支持ステー40,40を介して連結支持することにより強固に保持させ、メインフレーム30aとフロントフレーム30bの剛性を高めている。
【0024】
株元側搬送チェン16の始端側は、排藁入力軸21を支点として上下に回動可能なチェンガイドレール41の前端に軸支された従動輪16cが上下動するようになっており、チェンガイドレール41の前端部から上方に突設した支持体42は、扱室後側枠9の左側から突設した支持ブラケット43によって下から支持されるようになっている。そして、前記支持体42は、株元側搬送チェンの始端部を閉鎖時の扱胴カバー7によって上方から押さえるように構成している。
【0025】
図7は、別実施例の排藁搬送装置を示すもので、次のような構成になっている。すなわち、株元側及び穂先側排藁搬送装置15は、株元側支持フレーム31によって支持され、排塵処理胴13側に架設された前後方向の回動軸45を支点として上下に揺動開閉するように構成されている。
【0026】
入力ギヤケース19から排藁搬送装置への排藁入力軸21の途中部には、噛合爪クラッチ23が設けられ、排藁搬送装置15を上方にオープン(持ち上げ)した時には、爪クラッチ「切り」となり、下方に下げた時には爪クラッチ「入り」となるように連動構成されている。なお、爪クラッチ23は、穂先搬送ケース46の上下幅よりも小さくし、ケースのシルエット内に収めることによって排藁の流れを阻害しないように構成している(図13)。
【0027】
爪クラッチ23の下方には、駆動側23aと従動側23bの爪クラッチが同一軸芯となるようにV字型の溝によってガイドするガイドステー24が設けられ、爪クラッチの軸芯ずれを防ぐように構成している。ガイドステー24は、爪クラッチ23を挟むように平面視コの字型に形成され、しかも、この底部を開放することによって藁屑の溜まりや巻き付き防止が行えるようにしている。
【0028】
ガイドステー24には、駆動側クラッチ23aと従動側クラッチ23bの同一軸芯状態を保持するロック装置25が設けられている。このロック装置25は支点軸Qを回動中心として揺動開閉可能なロック爪26によって構成され、ロック状態では従動側入力軸受部27を上側から抱え込むように係止保持する構成としている(図11、図12参照)。
【0029】
排藁搬送装置15を上方にオープン(持ち上げ)する時には、扱胴カバー7を上方に開放し、ロック解除レバー47の操作で操作ワイヤー48を引いてロック爪26を外してロックを解除し、持上ハンドル49でもって排藁搬送装置15を上方に持ち上げオープンすることができる。なお、前記持上ハンドル49は、図7、図8例では、株元側支持フレーム31の前端側に一体的に固着して設けられている。また、ロック解除レバー47は、扱室後側枠9側に揺動操作可能に枢支されている。
【0030】
また、図9、図10例では、前記持上ハンドル49がロック解除レバー47を兼ねるように構成してあり、株元側支持フレーム31に対して上下方向に揺動操作可能に枢支してある。従って、持上ハンドル兼ロック解除レバー49(又は47)を持ち上げると、まず、先にロック装置25のロックが解除され、更に、これをもってなおも上方に持ち上げ操作すると、排藁搬送装置15が回動軸45を支点として上方に持ち上げオープンされることになる。
【0031】
揺動選別棚50は、脱穀処理後の処理物を受け入れて揺動移送しながら篩い選別する構成であり、選別方向上手側から移送棚51、チャフシ−ブ52、ストロ−ラック53の順に配置し、且つ、前記チャフシ−ブ52の下方にグレンシ−ブ54を配置して設けた構成としている。また、揺動選別棚50の下方には選別方向の上手側から順に、唐箕55と、1番移送螺旋樋56、2番移送螺旋樋57と、その上方に排塵フアン58を設けて選別室を構成している。
【0032】
図14に示す実施例は、揺動選別棚50の左右前後の四隅にガイドローラ59を設け、ガイドローラ59がU型ホルダ60の溝内をスライドして前後方向に揺動する構成の揺動選別棚50において、四隅のU型ホルダ60の開口部を同じ方向に向けて設けると共に、該U型ホルダ60の向い角度を調節可能に構成している。U型ホルダ60の角度調節は、モータ61により駆動軸62回りに角度調節が行えるようにし、脱穀負荷、選別負荷等に連動してホルダ角を自動的に可変制御する構成としている。これによれば、揺動選別棚50は、四隅のガイドローラ59とU型ホルダ60とでガイドするため、揺動駆動機構にかかる負荷が低減し、スムースに揺動作動する。揺動選別棚50の揺動角度を調整できるため、条件適応性が向上する。また、負荷に応じて自動で調整できるため、選別性能が向上する。
【0033】
脱穀負荷検出構成として、例えば、図15に示すように、扱室3内に設置された排塵調節板63を藁屑量に応じて角度調整する調整レバー64のレバー軸65にセンサ66を設け、このセンサ66による藁屑量検出結果に基づき前記モータ61を駆動してホルダ角を可変制御することができる。つまり、扱室内の藁屑量に応じて揺動棚の揺動角を自動制御することができる。
【0034】
脱穀負荷制御とは別の制御手段として、チャフシーブのシーブ開度と連動してホルダ角を可変制御したり、2番還元量(2番還元量検出センサの検出結果に基づく)に応じてホルダ角を可変制御し、唐箕の回転数(風量)と連動してホルダ角の可変制御、また、グレンタンクの底部に重量センサを設けて籾の溜まる速度と連動してホルダ角を可変制御するなど種々の制御が可能である。
【0035】
また、枕地旋回時にはホルダ角を立ち上げて、上下方向の揺動範囲を大きくし、揺動棚上での後方への送り速度を遅くすることによって3番ロスの低減を図ることができる。
U型ホルダの上向き角度を上げにするほど、処理物の送り速度は遅く、ホルダの上向き角度を水平に近い位置まで下げにするほど処理物の送り速度は速くなる。前者ではふるい選別性能が向上し、後者では藁屑の送りが促進され、選別負担が軽減される。
【符号の説明】
【0036】
3 扱室
4 扱胴
5 扱胴軸
9 扱室後側枠
15 排藁搬送装置
16 株元側搬送チェン
17 穂先側搬送チェン
18 ベルト伝動機構
19 入力ギヤケース
21 排藁入力軸
30 排藁支持フレーム
30a メインフレーム
30b フロントフレーム
30c リヤフレーム
32 脱穀機側壁枠
33 脱穀機後部枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱胴(5)を回転自在に内装した扱室(3)の後側に、脱穀処理後の排藁を引き継いで斜め後方に向けて搬出する排藁搬送装置(15)を配置し、該排藁搬送装置(15)を、扱胴(5)を軸支する扱胴軸(5)からベルト伝動機構(18)と入力ギヤケース(19)と排藁入力軸(21)を介して連動する構成とし、該排藁搬送装置(15)を、扱室(3)の後壁を形成する扱室後側枠(9)から排藁搬送経路に沿わせて斜め後方に延出して脱穀機の横側端部に備える脱穀機側壁枠(32)に連結したメインフレーム(30a)と、該メインフレーム(30a)の長手方向途中部から前方に延出して前記扱室後側枠(9)に連結したフロントフレーム(30b)と、前記メインフレーム(30a)の長手方向途中部から後方に延出して脱穀機の後端部に備える脱穀機後部枠(33)に連結したリヤフレーム(30c)とからなる平面視で略X字型の排藁支持フレーム(30)によって支持したことを特徴とする脱穀機。
【請求項2】
前記排藁搬送装置(15)は、排藁の株元側を挟持搬送する株元側搬送チェン(16)と穂先側を係止搬送する穂先側搬送チェン(17)とからなり、前記排藁入力軸(21)から排藁搬送装置(15)の搬送方向中間部位に駆動力を入力して株元側搬送チェン(16)と穂先側搬送チェン(17)を駆動する構成とし、該株元側搬送チェン(16)と穂先側搬送チェン(17)との間の部位で排藁搬送装置(15)をリヤフレーム(30c)に支持させたことを特徴とする請求項1記載の脱穀機。
【請求項3】
前記メインフレーム(30a)を挟んで左右に排藁搬送装置(15)と入力ギヤケース(19)を配設すると共に、該入力ギヤケース(19)はメインフレーム(30a)とフロントフレーム(30b)の間に配置して該メインフレーム(30a)とフロントフレーム(30b)の双方に支持したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の脱穀機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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