説明

脱穀装置におけるささり粒防止体

【課題】 扱口に供給される穀稈の層厚が薄い場合でもささり粒を確実に防止することができる脱穀装置におけるささり粒防止体を提供することを課題としている。
【解決手段】 扱胴9に穀稈を供給するための開口した扱口18を形成する上下の扱口板19,21の間に、扱口18に供給される穀稈に対応して上下移動可能に支持され、且つ下方に向かって付勢され、最下降時に先端が下方側の扱口板21の扱胴回転軌跡の近傍位置に当接又は近接し、穀稈の間に入り込むささり粒を除去するささり粒防止体27を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱穀装置におけるささり粒防止体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来自脱型コンバイン等に搭載される脱穀装置は、開口した扱口を介して扱胴に供給された刈取穀稈の脱穀作業を行なうように構成されている。そして扱胴に供給される穀稈の間に入り込むささり粒を除去する板状のささり粒防止体を、扱口を形成する上下の扱口板の間に、扱口に供給される穀稈に対応して上下移動可能に支持して下方に向かって付勢して設けた脱穀装置が公知となっている(例えば特許文献1及び2及び3参照)。
【特許文献1】実開昭56−8132号公報
【特許文献2】実開平4−28038号公報
【特許文献3】特開2001−8537号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし上記脱穀装置は、ささり粒防止体の下限位置においてもささり粒防止体と下側の扱口板との間にスペースが存在する。このため供給される穀稈がない場合、つまり扱胴が空回りする場合、扱室内に残る穀粒が回転飛散するが、このケースにおいては回転飛散する穀粒が上記スペースから機外に排出され、下方側の扱口板の近傍に穀粒が溜まり、ささり粒となることがあった。
【0004】
また近年脱穀の高能率化により扱胴を長くしてフィードチェーン速度を早くする傾向があるが、この場合扱口に供給される穀稈の層厚はできる限り薄いことが望ましい。しかし穀稈の層厚をできる限り薄くすると、上記スペースによってささり粒防止体が穀稈に作用せず、ささり粒を防止することができないという問題点もあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための本発明の脱穀装置におけるささり粒防止体は、扱胴9と、該扱胴9に穀稈を供給するための開口した扱口18とを備え、扱胴9の外側に設けられ、扱口18を形成する上下の扱口板19,21と、両扱口板19,21の間に、扱口18に供給される穀稈に対応して上下移動可能に支持され、且つ下方に向かって付勢され、上記穀稈の間に入り込むささり粒を除去するささり粒防止体27とを設けた脱穀装置おいて、ささり粒防止体27を、最下降時に先端が下方側の扱口板21の扱胴回転軌跡の近傍位置に当接又は近接するように設けたことを第1の特徴としている。
【0006】
また上下の扱口板19,21の扱胴側端部を、扱口板21上の穀粒を扱胴9側に滑り落とすように、扱胴9側に向かって所定角度傾斜させ、ささり粒防止体27を板状とし、ささり粒防止体27の先端側を、上方側の扱口板19の扱胴側端部に対して略平行に扱胴19側に湾曲又は屈曲させたことを第2の特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
以上のように構成される本発明の構造によると、ささり粒防止体が扱口に供給される穀稈に上方側から付勢的に接するため、ささり粒防止体が穀稈をガードして扱室内を回転飛散して穀稈の上に降りかかる穀粒を除去し、ささり粒を防止するという効果がある。近年脱穀の高能率化により扱胴を長くしてフィードチェーン速度を早くする傾向があるが、この場合扱口に供給される穀稈の層厚はできる限り薄いことが望ましい。
【0008】
本脱穀装置におけるささり粒防止体は、最下降時に先端が下方側の扱口板の扱胴回転軌跡の近傍位置に当接又は近接するため、上記のように穀稈の層厚をできる限り薄くした場合であってもささり粒防止体が穀稈に上方側から付勢的に接し、ささり粒の防止を確実に行うことができる。
【0009】
そして供給される穀稈がない場合、つまり扱胴が空回りする場合は、扱室内に残る穀粒が回転飛散するが、このケースにおいてはささり粒防止体の先端が下方側の扱口板の扱胴回転軌跡の近傍位置に当接又は近接するため、ささり粒防止体がシャッタのように機能し、上記回転飛散する穀粒が下方側の扱口板の近傍に溜まることが防止される。これにより下方側の扱口板の近傍に溜まる穀粒によるささり粒も防止される。
【0010】
一方上下の扱口板の扱胴側端部を、扱口板上の穀粒を扱胴側に滑り落とすように、扱胴側に向かって所定角度傾斜させ、ささり粒防止体を板状とし、ささり粒防止体の先端側を、上方側の扱口板の先端側に対して略平行に扱胴側に湾曲又は屈曲させることによって、ささり粒防止体の傾斜により、ささり粒防止体の先端側から扱胴側に滑り落ち、ささり粒防止体の先端側に穀粒が溜まることが防止され、ささり粒の防止作業が円滑に行なわれるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は本発明のささり粒防止体を備えた脱穀装置を有するコンバインの側面図である。機体1が左右のクローラ式走行装置2に支持されている。機体1の前方には前処理部3が上下昇降自在に設けられている。前処理部3の後方右側の機体1上には運転席のキャビン4が搭載されている。
【0012】
キャビン4の後方左側の機体上には、脱穀装置6が搭載されている。キャビン4の左側方には前処理部3から搬送される刈り取り穀稈を脱穀装置6に中継して搬送する搬送機構7が設けられている。脱穀装置6には搬送機構7から搬送された穀稈を受け継ぎ、下流(後方)に向かって搬送するフィードチェンユニット8が設けられている。
【0013】
図2は脱穀装置6の要部側面図である。脱穀装置6の内部の扱室5内には、扱胴9が前後方向に回転自在に軸支されている。扱胴9は円筒形のドラムの外周に扱歯11が突設された従来公知の構造となっている。扱胴9の下方側外周を覆うように受網12が設けられている。扱胴9は略水平に軸支されている。
【0014】
扱胴9の外側方にフィードチェンユニット8が設けられている。扱胴9の外側方におけるフィードチェンユニット8の上方側はカバーによって覆われている。フィードチェンユニット8は扱胴9の前後にわたって延びている。前述のように刈り取り穀稈は、フィードチェンユニット8に受け継がれる。フィードチェンユニット8は扱胴9に対して穀稈の穂先を供給しながら穀稈を脱穀装置6の後方に搬送する。
【0015】
扱胴9に供給された穀稈は扱胴9(扱歯11)によって脱穀され、脱穀後の穀粒を含む処理物が受網12を介して濾過されて落下させられ、受網12の下方の選別室において選別処理される。ただしフィードチェンユニット8は後方側が上昇するように傾斜して設けられている。このため穀稈は徐々に上方に移動しながら後方(下流)に向かって進み、脱穀される。
【0016】
フィードチェンユニットは、回転駆動されるチェン(フィードチェン)13と、扱胴9の側方で且つフィードチェン13の上方に位置する挟持レール14と、フィードチェン13をガイドするフィードチェンフレーム16とから構成されている。図3に示されるように、挟持レール14は、正面視でゲート状の断面を持ち、機体フレーム側のレール支持フレーム17に支持されている。
【0017】
挟持レール14とレール支持フレーム17側との間には、レールスプリング15が設けられており、挟持レール14はレールスプリング15によってフィードチェン13に対して上方から付勢されている。
【0018】
フィードチェンユニット8と扱胴9との間には、穀稈を扱胴9に供給するための連続して開口したスペース(扱口18)が形成されている。扱口18は、図3に示されるように、上下の扱口板19,21によって形成されている。下方側の下扱口板21は、扱歯11の回転軌跡Sに沿い、フィードチェン13の近傍において先端(上端)側が外側(フィードチェーン13側)に向かって屈曲している。これにより扱胴9側に向かう傾斜面21aが形成されている。
【0019】
上方側の上扱口板19は、先端(下端)側が内側(扱胴9側)に向かって屈曲している。これにより扱胴9側に向かう傾斜面19aが形成されている。上記上扱口板19の傾斜面19aが、下扱口板21の傾斜面21aの上方に所定距離介して設けられ、両傾斜面19a,21aの間に扱口18が形成されている。両傾斜面19a,21aは略平行であり、両傾斜面19a,21aの角度は、傾斜面21a上の穀粒を扱胴9側に滑り落とす程度に設定されている。
【0020】
両傾斜面19a,21aはフィードチェン13に略平行に沿って後方側が上昇するように傾斜している。これにより扱口18がフィードチェン13に略平行に沿って後方側が上昇するように傾斜して形成されている。
【0021】
前述のレール支持フレーム17は、上記上扱口板19より外側に設けられている。図3,図4,図5に示されるように、レール支持フレーム17から内側(上扱口板19側)に向かってプレート22が突設されている。該プレート22には上下方向のロッド23が、上下スライド自在に挿入されている。ロッド23の下端側には、正面視で逆L字状をなす支持プレート24が設けられている。支持プレート24とプレート22の下面との間には、上記ロッド23に外嵌して圧縮バネ26が設けられている。
【0022】
一方上記脱穀装置6においては、穀稈がフィードチェン13によって搬送されて脱穀処理される際に、扱室5内を回転飛散する穀粒が搬送穀稈の間に入り込んでささり粒として機外に排出されてしまうものがある。
【0023】
上記ささり粒を防止するために、上記支持プレート24には、下方に向かってプレート状のささり粒防止体27が固定されている。ささり粒防止体27には、挟持レールに相対する位置に、上下方向のスライド孔28が設けられている。該スライド孔28には、挟持レール14に設けられたピン29が挿入されており、ささり粒防止体が挟持レール14に上下スライド可能に支持されている。
【0024】
上記構造によりささり防止体27は圧縮バネ26によってピン29がスライド孔28をスライドする範囲で、挟持レールとは独立して下方に付勢されている。ささり粒防止体27は、先端側(下端側)が上扱口板19の傾斜面19aと略平行となるように屈曲している。またささり粒防止体27の先端は後方側が上昇するように傾斜している。ただしこの後方上昇の傾斜角度は、下扱口板21の傾斜面21a(扱口18)の後方上昇の傾斜角度より小さいものとなっている。
【0025】
ささり粒防止体27の先端は、ささり粒防止体27がスライドの最下端に位置した場合に、下扱口板21の傾斜面21aに近接又は当接するように位置する。傾斜面21aにおけるささり粒防止体27の近接又は当接位置は、扱胴9の扱歯11の回転軌跡の近傍位置となっており、本実施形態においては下扱口板21の屈曲部分となっている。
【0026】
このときささり粒防止体27の先端の後方上昇の傾斜角度は、下扱口板21の傾斜面21aの後方上昇の傾斜角度より小さいため、図3,図6,図7に示されるように、下扱口板21の傾斜面21aとささり粒防止体27の先端との間の距離は、後方にいくに従って小さくなり、後方位置において当接する。
【0027】
ささり粒防止体27は、上記構造によって、図8に示されるように、扱口18に穀稈が供給されると、供給される穀稈Xの量に応じて上昇し、扱口18に供給される穀稈Xに上方側から付勢的に接する。これによりささり粒防止体27が穀稈Xをガードして扱室5内を回転飛散して穀稈Xの上に降りかかる穀粒を除去し、ささり粒を防止する。この際ささり粒防止体27は、先端が下扱口板21の傾斜面21aに近接又は接するため、扱口18に供給される穀稈の層厚が薄い場合であってもささり粒防止体27が穀稈に上方側から付勢的に接し、ささり粒の防止が確実に行われる。
【0028】
そして図3,図6,図7に示されるように、扱口18に供給される穀稈がない場合、つまり扱胴9が空回りする場合は、扱室5内に残る穀粒が回転飛散するが、このケースにおいてはささり粒防止体27がシャッタのように機能し、上記回転飛散する穀粒が下方側の扱口板21の近傍に溜まることが防止され、且つささり粒防止体27の傾斜面により、穀粒はささり粒防止体27の先端側から扱胴9側に滑り落ちるため、ささり粒防止体27の先端側に穀粒が溜まることも防止され、ささり粒の防止作業が円滑に行なわれる。
【0029】
上記のようにささり粒防止体27の先端側の傾斜角度が上扱口板19の傾斜面19aと略同じであるため、ささり粒防止体27の上下昇降は、上扱口板19が上下に昇降する場合と同じ状態となり、概ね扱口18の上下幅が穀稈の流通量に応じて拡縮する場合と同じ状態であるといえる。
【0030】
このため本ささり粒防止体27は、脱穀の高能率化により扱胴を長くしてフィードチェーン速度を早くする場合の薄い層厚の穀稈に対応し、この薄い層厚の穀稈に接してささり粒の防止を行うことができる。すなわち本ささり粒防止体27を採用することによって脱穀の効率化を向上させることができる。
【0031】
なお扱口18に供給される穀稈は、扱胴9による脱穀によって下流に行くに従って層厚が薄くなる。ただし下扱口板21の傾斜面21aとささり粒防止体27の先端との間の距離は、後方にいくに従って小さくなる(最終的には接する)。このため搬送の下流に行くに従って穀稈の層厚が薄くなっても、ささり粒防止体27が穀稈に接し、上記ささり粒を防止する。
【0032】
一方上記ささり粒防止体27は、1枚のプレートにより構成されている。これに対して図9に示されるように、ささり粒防止体27を複数のプレート31によって分割した構成とすることもできる。この場合ささり防止体27を構成する各プレート31をそれぞれロッド23によって付勢的に支持することによって、それぞれのプレート31が独立して昇降する。
【0033】
これにより搬送各位置の穀稈に対して、各プレート31が独立して昇降して穀稈に接し、扱口18に供給される穀稈の層厚の変化に対してささり粒防止体27が敏感に対応するため、ささり粒の防止効果を高め、扱胴を長くしてフィードチェンの速度を増加させる脱穀の高能率化をさらに促進することができる。
【0034】
またささり粒防止体27を挟持レール14の昇降に連動して昇降するように構成することもできる。さらにささり粒防止体27を弾性部材により形成しても良い。これにより穀稈の流量が規定以上となった場合に、ささり粒防止体27が変形したり破損したりする不都合が防止され、且つささり粒防止体27による穀稈の損傷を避けることもできる。
【0035】
ささり粒防止体27を付勢する各圧縮バネ26を、前方側の圧縮バネ26の付勢力を後方側の圧縮バネ26の付勢力に比べて小さくしてもよい。この場合穀稈は扱胴9への入り口側において、前側の圧縮バネ26によって比較的小さな付勢力によって押圧され、扱胴9からの出口側において、後側の圧縮バネ26によって比較的大きな付勢力によって押圧される。
【0036】
これにより比較的層厚が大きい扱胴9への入口においては、ささり粒防止体27の押圧力が小さく、必要以上に強い押圧力によって穀稈が押圧されて搬送抵抗となったり、ささり粒防止体27が変形したり破損したり、穀稈が損傷したりすることが防止される。また比較的層厚が小さい扱胴9からの出口においては、ささり粒防止体27の押圧力が大きくなり、穀稈を確実に押圧してささり粒を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】コンバインの側面図
【図2】脱穀装置の要部側面図
【図3】扱口からの穀稈の供給がない場合の図2のA−A断面図
【図4】挟持レール部分の側面図である。
【図5】挟持レールを扱胴側から見た場合の斜視図である。
【図6】扱口からの穀稈の供給がない場合の図2のB−B断面図
【図7】扱口からの穀稈の供給がない場合の図2のC−C断面図
【図8】扱口からの穀稈が供給されている場合の図2のA−A断面図
【図9】ささり粒防止体を分割構成した場合に、挟持レールを扱胴側から見た場合の斜視図である。
【符号の説明】
【0038】
9 扱胴
18 扱口
19 扱口板(下扱口板)
21 扱口板(上扱口板)
27 ささり粒防止体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱胴(9)と、該扱胴(9)に穀稈を供給するための開口した扱口(18)とを備え、扱胴(9)の外側に設けられ、扱口(18)を形成する上下の扱口板(19),(21)と、両扱口板(19),(21)の間に、扱口(18)に供給される穀稈に対応して上下移動可能に支持され、且つ下方に向かって付勢され、上記穀稈の間に入り込むささり粒を除去するささり粒防止体(27)とを設けた脱穀装置おいて、ささり粒防止体(27)を、最下降時に先端が下方側の扱口板(21)の扱胴回転軌跡の近傍位置に当接又は近接するように設けた脱穀装置におけるささり粒防止体。
【請求項2】
上下の扱口板(19),(21)の扱胴側端部を、扱口板(21)上の穀粒を扱胴(9)側に滑り落とすように、扱胴(9)側に向かって所定角度傾斜させ、ささり粒防止体(27)を板状とし、ささり粒防止体(27)の先端側を、上方側の扱口板(19)の扱胴側端部に対して略平行に扱胴(19)側に湾曲又は屈曲させた請求項1の脱穀装置におけるささり粒防止体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−14604(P2006−14604A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−192674(P2004−192674)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)