説明

脱穀装置

【課題】前後に送塵ガイドを並設する場合、扱室の前後において必要とする処理物からの負荷に対応するスプリング付勢力が相違する。
【解決手段】扱室の前後方向に前送塵ガイド操作部46と後送塵ガイド操作部46を並設する。それぞれ、ノブ57の位置を調節することにより、スプリング55の付勢力を調節する。各送塵ガイド40は、回転支軸49を介してアーム52と一体となって、スプリング52の付勢力が作用し、各送塵ガイドに作用する処理物からの負荷と平衡する。前後のスプリング55,55は、同じ形状で異なる荷重のものが用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバイン,ハーベスタ等に用いられる脱穀装置に係り、詳しくは扱室内面側に設けられ、扱室内に流動する処理物をガイドして処理物の送りを調節する送塵ガイドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、扱室内面側に、扱胴の軸線方向に沿って複数の送塵ガイドを配設した脱穀装置が知られている(特許文献1〜4参照)。これら送塵ガイドは、回動支軸により回動自在にかつリンクにより連動するように構成され、前記各送塵ガイドは、傾斜角度を調節されて、扱室内の処理物の移送速度を調節し得る。
【0003】
特許文献1〜3のものは、リンクと位置決め部材との間に1個のスプリングが介在して、各送塵ガイドが、扱胴の回転に伴いスパイラル状に移送される処理物に接触し、該処理物からの押圧力(負荷)と上記スプリングによる付勢力が平衡するようにその向き(傾斜角)が調節され、処理物の量に応じてその送り速度を自動的に調節する。
【0004】
また、特許文献4のものは、各送塵ガイドを連結するリンクの間にスプリングを介在して、処理物が塊状になって送塵ガイドに衝突する衝撃を吸収するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−222124号公報
【特許文献2】特開平6−237634号公報
【特許文献3】特許第3393000号公報
【特許文献4】実開平5−76237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記位置決め部材は、特許文献1及び2のものは手動操作部材からなり、特許文献3のものは、搬送穀稈の量により変化する挟持レールからなるが、いずれのものも1個のスプリングの付勢力に基づき、複数の送塵ガイドは、上記スプリングに抗してすべて同角度で傾斜角が調節される。
【0007】
特許文献4のものは、1個のシリンダ装置により各送塵ガイドが同角度で調節されるものにおいて、塊状の処理物が送塵ガイドに衝当する際、その衝当力を緩和するようにスプリングが作用するが、各送塵ガイドに作用する付勢力をそれぞれ調節し得るものでない。
【0008】
一般に、扱室の前側及び後側にあっては、処理物から送塵ガイドに作用する負荷が異なるが、上述した前後方向に並設された複数の送塵ガイドは、すべて同一傾斜角にて調節されるため、例えば扱室の後部分は前部分に比して脱穀処理能力を必要としないにも拘らず、前部分と同一角度からなる送塵ガイドが処理物の移送抵抗となって、脱穀負荷が大きくなる可能性がある。
【0009】
また、前後の並設された各送塵ガイドを各別に調節することも考えられるが、この場合、前後の送塵ガイドに対して同じ荷重(縦弾性係数、ヤング率)のスプリングが用いられるので、同様に、後側の送塵ガイドは、前側の送塵ガイドに比して処理物からの押圧力(負荷)が小さいにも拘らず、前側と同じ付勢力が作用すると、処理物の移送抵抗となって脱穀負荷が増大する可能性がある。
【0010】
即ち、上記特許文献1〜4は、複数の送塵ガイドが同じ付勢力で保持されるものであるが、付勢力が強いと、例えば扱室の後部分は前部分に比して脱穀処理能力を必要としないにも拘わらず、前部分と同じ付勢力で保持される後側の送塵ガイドが処理物の移送抵抗となって、脱穀負荷が大きくなる可能性がある。一方、付勢力が弱いと、穀粒が扱室終端の排稈口等から後方に排出され易く、刺さり粒や3番飛散が増大する可能性もある。
【0011】
そこで、本発明は、前後方向に複数個並設した送塵ガイドの各スプリングの荷重を異なるように設定し、もって上述した課題を解決した脱穀装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、扱室(12)内に、回転支軸(49)を中心にかつスプリング(55)により一方向に付勢して送塵ガイド(40)を設け、該送塵ガイド(40)が、前記扱室(12)内の処理物から受ける負荷により前記スプリング(55)の付勢力に抗して退避回動してなる脱穀装置において、
前記送塵ガイド(40)は、少なくとも前記扱室の前側に配置された前送塵ガイド(46)と後側に配置された後送塵ガイド(46)を備え、
これら前及び後送塵ガイドは、それぞれ前記スプリング(55)が配設されると共に、前記スプリングの付勢力により設定される初期開度を調節する手段(57)を備え、
前記前及び後送塵ガイドの前記スプリングは、縦弾性係数の異なるものが用いられてなる。
【0013】
なお、本明細書及び特許請求の範囲において、スプリングとは、ねじりコイルスプリングに限らず、圧縮又は引張りスプリング、トーションバーでもよく、更に金属製のスプリングに限らず、ゴム又は空気を用いるものでもよく、要は、処理物からの負荷に対応する付勢力を備えるものは、すべてスプリングと定義する。
【0014】
前記後送塵ガイド(46)のスプリング(55)の縦弾性係数が、前記前送塵ガイド(46)のスプリング(55)の縦弾性係数より小さい。
【0015】
また、前送塵ガイド及び後送塵ガイドは、前後2個に限るものではなく、3個以上の複数個のものも含み、相対的に後側の送塵ガイドのスプリングが、前側のものに比して縦弾性係数が小さいものはすべて含まれ、例えば前から後に向けて縦弾性係数の順次小さくなるもの、又は複数のブロックに分けて、例えば3個の場合、前側の2個と後側の1個に分けて、前側の2個の送塵ガイドは、同じ縦弾性係数のものを用い、後側の送塵ガイドのスプリングが、それより小さい縦弾性係数のものを用いてもよい。
【0016】
前記初期開度を調節する手段(57)が、前記前送塵ガイド(46)及び前記後送塵ガイド(46)にそれぞれ個別に配設され、
前記前送塵ガイド及び前記後送塵ガイドの前記スプリング(55)は、同じ形状からなりかつ縦弾性係数が異なるものを用いてなる。
【0017】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これにより特許請求の範囲の記載に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に係る本発明によると、前及び後送塵ガイドは、異なる縦弾性係数のスプリングを用いるので、扱室内の処理物に流れに応じた適正な負荷に対応した付勢力により開度が自動調節される。
【0019】
請求項2に係る本発明によると、後送塵ガイドのスプリングは、前送塵ガイドのスプリングに比して縦弾性係数の小さいものが用いられるので、一般に、扱室の後側は前側に比して送塵ガイドの抵抗が少なくて足りるのに合せて、後送塵ガイドの付勢力が小さくなり、脱穀負荷を少なくして、所要動力を低減して、省エネ効果を向上することができる。
【0020】
請求項3に係る本発明によると、前送塵ガイド及び後送塵ガイドは、それぞれ別個の調節手段により送塵ガイドの開度が調節されて、それぞれ適正な処理物の移送速度を調節して、効率的な処理物の処理を行うことができると共に、同じ形状のスプリングを用いるので、スプリングの付け替えを容易にして、前後の送塵ガイドに、それぞれ適正な縦弾性係数のスプリングを採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明を適用した脱穀装置を搭載したコンバインを示す平面図。
【図2】その脱穀装置部分を示す平面図。
【図3】その脱穀装置の扱室部分を示す断面図。
【図4】その送塵ガイドユニットを示す平面図。
【図5】そのマークを付した平面図。
【図6】その側面断面図。
【図7】その正面図。
【図8】(A)は、その断面図、(B)は、回転支軸の断面図。
【図9】送塵ガイドの作用を示す平面図。
【図10】(A)は、送塵ガイドユニットを取付けた状態を示す正面図、(B)は、送塵ガイドユニットを取外した状態を示す正面図。
【図11】(A)は、他の実施の形態による送塵ガイドユニットを示す平面図、(B)は、そのB−B断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面に沿って、本発明の実施の形態について説明する。コンバイン1は、図1に示すように、クローラにより支持される走行機体3を有しており、該走行機体3の前方には前処理部5が昇降自在に配置されている。走行機体3は、その一側に運転操作部6及びエンジンが配置され、その後方にグレンタンク7及び該グレンタンク内の穀粒を排出する排出オーガ9が配置されており、他側に脱穀装置10が配置されている。
【0023】
脱穀装置10は、図2及び図3に示すように、上部に扱胴11を内蔵した扱室12を有しており、該扱室12は、受網13により選別部と区画されている。扱室12の外側にはフィードチェーン15が配設されており、挟持レール16との間に穀稈を挟持して搬送し得る。扱室12の上方は、脱穀カバー19で覆われており、該脱穀カバー19は、機体内側の枢支軸20に回動自在に支持され、扱胴11と共に扱室12の上方を開放し得る。上記脱穀カバー19の外側は、前記挟持レール16がスプリング21に付勢されて配置されていると共に、レールカバー22が配置されている。
【0024】
前記脱穀カバー19の上部外側角部は、本発明に係る送塵ガイドユニット25を収納するための凹部26が形成されており、該凹部26の上方はカバー体27が固定ボルト29及びノブ30により取外し自在に取付けられている。該カバー体27は、ヒンジ構造となっており、ノブ30を外すことにより外側を開放し得る(図10(A)参照)。
【0025】
扱室12は、図2に示すように、その前側に扱室入口板31が設けられており、扱室前側板32と扱室後側板33にて扱胴11が支持されている。脱穀カバー19の扱室12内側には、第1固定ガイド35、第2固定ガイド36、第3固定ガイド37及び第4固定ガイド38が設けられており、また前記凹部26には、送塵ガイドユニット25が取付けられている。扱胴11は、多数の扱歯11aを有しており、図3の矢印A方向に回転して、上記扱歯11aにより穀稈から脱穀された穀粒及びワラ屑等からなる処理物が、扱室12内にて上記扱胴11に連れ回りされつつ前方から後方に向けてスパイラル状に移送される。該処理物の移送に際して、前記第1〜4固定ガイド35〜38並びに送塵ガイドユニット25の前後の送塵ガイド40,40が上記処理物の流れを制御する。
【0026】
ついで、本発明の要部である上記送塵ガイドユニット25について、図4ないし図9に沿って説明する。送塵ガイドユニット25は、上プレート42を下プレート43にボルト45で固定したボックス内に収納された前後の操作部46,46を有しており、上記下プレート43の底部は、上記凹部26の底面である脱穀カバー19にボルトにより固定される。前後の送塵ガイド操作部46,46は、ねじりコイルスプリングが相違するだけで、同じ構造からなるため、一方のみを説明して他方の説明を省略する。
【0027】
送塵ガイド40は、平板状のプレートからなり、その長手方向の一方(扱胴の回転方向上流側)に偏倚した位置に回転支軸49が固定されており、該回転支軸49は、下プレート43に配置されたベアリング50を貫通して延びており、扱室12内において上記送塵ガイド40が固定され、下プレート43の上方のボックス内では、図8(B)に示すように2面取り部49aとなっている。該2面取り部49aにはボス51が回転不能に嵌合されており、ボス51にはアーム52が一体に固定されて、該アームの先端にピン53が植設されている。上記ボス51にはねじりコイルスプリング55のコイル部55aが嵌挿されて、上記回転支軸49に螺着されたボルト56及びワッシャによりボス51及びスプリング55が抜止めされている。
【0028】
上記スプリング55の一端アーム部55bは、上記ピン53に引っ掛けられて係止されており、他端アーム部55cは、開度設定用ノブ57のシャフト57aに差込まれて係止されている。
【0029】
上プレート42の前記回転支軸49を挟んだ前後位置(扱胴の軸方向前後位置、上下プレート42,43によるボックスの左右位置)には上記回転支軸49を中央とする円弧からなる長孔60,61が形成される。前側の長孔60には開度設定用ノブ57のシャフト57aのネジ部が案内されており、該ノブを回転することにより、ノブ57を長孔60の任意の位置に調節、固定自在になっている。後側の長孔61には上記ピン53が突出して案内されており、該ピンの位置を上プレート42の上方から目視し得る。該後側の長孔61に臨んで、上プレート42の上面には、図5に示すように、処理物の移送量を示す「多い」、「標準」、「少ない」等のマーク63が貼付されている。
【0030】
そして、前後の送塵ガイド操作部46,46の上記ねじりコイルスプリング55は、同じ外郭形状からなるが、後側のスプリングが前側のものに比して、その縦弾性係数(ヤング率、荷重)が小さいものが用いられている。例えば、後送塵ガイド操作部46のスプリング55が、前送塵ガイド操作部46のスプリング55に比して、小さな線径のものが用いられ、かつ両スプリングは、同じコイル部の径からなるものが用いられる。また、後送塵ガイド操作部46のスプリング55のコイル部55aの巻数が、前送塵ガイド操作部46のそれに比して少ないものが用いられる。
【0031】
本実施の形態は、以上のような構成からなるので、挟持レール16との間に穀稈を挟んだ状態でフィードチェーン15が前側から後側に搬送することにより、扱胴11の回転により穀稈は脱穀される。脱穀された穀粒、ワラ屑等の処理物は、各固定ガイド35〜38及び送塵ガイド40,40に案内されつつ、前側から後側に移送される。
【0032】
送塵ガイドユニット25は、前操作部46及び後操作部46をそれぞれ別個に送塵ガイド40の初期開度位置を調節操作し得る。例えば図9に示すように、前操作部46のノブ57の位置を長孔60の中央部に位置決めし、後操作部46のノブ47を長孔60の外側端に近い位置に位置決めする。ねじりコイルスプリング55の他端アーム部55cの位置が上記各ノブ57により調節され、該スプリング55の自然長(自由長)状態により、他端アーム部55b及びそれと一体のピン53の位置が決まり、前操作部46では「標準」位置となり、後操作部46は「多い」位置となる。なお、通常は、図5に示すように、前操作部46及び後操作部46は、同じ位置にそれぞれ調節される。
【0033】
前記扱室12内で前側から後側にスパイラル状に移送される処理物は、送塵ガイド40,40に接触して案内されると共に、処理物は、送塵ガイド40を押圧して、該処理部からの負荷と上記ねじりコイルスプリング55との付勢力と平衡する位置に送塵ガイド40が自律的に回動する。これにより、扱室12内の処理物の量及び濡れ材等による処理物の状況に基づく処理物から負荷に応じて、送塵ガイド40,40の開度(傾斜角、向き)は自動調節されて、所要動力を低減して、省エネ効果を向上し得る。
【0034】
上述したように、ノブ57を調節することにより、アーム52及びそれと一体の送塵ガイド40の位置、即ち送塵ガイド40の初期開度位置が調節される。上述した図9に示す位置にあっては、前操作部46は、送塵ガイド40が標準位置にあるが、後操作部46は、送塵ガイド40の開度を開いた(傾斜角の大きい)位置となり、処理物の移送速度を速く、即ち処理物の移送量が多い状態に初期設定される。各送塵ガイド40は、該初期開度設定位置を基準として、上記処理物からの負荷に応じて退避回動(図9の前操作部46の鎖線で示す送塵ガイド参照)する。即ち、各送塵ガイド40の初期設定開度位置は、穀稈材料及び脱穀条件等に応じてオペレータにより設定され、脱穀装置での脱穀負荷が大となった場合、各スプリング55に抗して送塵ガイド40は自律的に後退し、脱穀負荷を低減して省エネが図られる。
【0035】
例えば、ピン53が「標準」位置(図9の前操作部46参照)にある場合、開度は中間位置となり、送塵ガイド40は扱胴回転方向と平行な状態となる。ピン53が「少ない」位置となる場合、送塵ガイド40は閉じ位置(送塵ガイド40の扱胴回転方向下手側が前側となる傾斜)となり、送塵ガイド40を閉じ側にする程、処理物の後方への送りが悪くなり、処理物が扱室内に停滞して、扱胴による脱穀処理を多く作用し、枝硬の多い場合に適する。ピン53が「多い」位置(図9の後操作部46参照)にある場合、送塵ガイド40は開き位置となり、送塵ガイド40に当接した処理物が扱室後側に案内され、送塵ガイド40を開き側にする程、処理物が後方へ送られ易くなる。例えば、濡れ材等で穂切れが発生し易く、通常よりわら屑が発生し易い場合、送塵ガイドが閉じ過ぎると処理物が停滞して詰ったり穀粒が漏下し難いことがあるので、送塵ガイドを開き側に設定して、わら屑の捌けを良くする。上述したように、材料等に応じて送塵ガイドの開度を設定するが、設定が合わなかったり、何らかの理由で脱穀負荷が増大した場合、上記スプリング55により送塵ガイドが後退して脱穀負荷が低減される。
【0036】
この際、前操作部46のスプリング55は、標準サイズ(処理物からの負荷に対して脱穀装置の処理量に対応したバランスのよいもの)のものが用いられるが、後操作部46のスプリング55は、それよりも荷重(弾性係数)の小さいものが採用されている。扱胴11の前側に位置する前側の送塵ガイド40には、処理物の塊が大きくかつスパイラル方向における径方向回転に比して軸方向に移送量が大きい比較的大きな角度で処理物が当接するため、該処理物から送塵ガイドに作用する負荷(押圧力)は、比較的大きいが、扱胴11の後側に位置する後側の送塵ガイドは、処理物が解かれて塊が小さくなっていると共に、前側の送塵ガイド等により整流されて比較的小さな角度で処理物が当接して、該処理物から受ける送塵ガイドの負荷は、比較的小さい。従って、本送塵ガイドユニット25は、後操作部46のスプリング荷重が、上記負荷に対応して小さいものが用いられ、後側の送塵ガイドは、処理物から受ける抵抗を低減して、脱穀負荷を安定し、所要動力を低減して、省エネ効果を一層確実なものとすることができる。
【0037】
図10は、送塵ガイドユニット25の取付けを示す図である。送塵ガイドユニット25は、脱穀カバー19の上外側の角部に形成された凹部26内に配設されている。送塵ガイドユニット25は、前後方向(機体外側から見て左右方向)に長くなっており、前後の操作部46,46が機体前後(扱胴の軸方向)に配置され、かつ各操作部46()は、ノブ57及びピン53が回転支軸49を挟んで前後方向に位置するように横長に配置されている。従って、操作部であるノブ57及びピン53の位置は、脱穀カバー19の角部に位置する送塵ガイドユニット25の比較的上側(高い位置)に配置され、オペレータは、ノブ及びピンの位置が見易く、かつノブ57が、凹部26のエッヂ26a(図10(A)参照)に邪魔されることなく、容易に操作することができる。
【0038】
この際、カバー27は、その内側上部27bが固定ボルト29により脱穀カバー19に固定され、ノブ30を回転することにより、開放部27aがヒンジFを中心に上方に開放した位置にあり、マーク63を見ながら容易にノブ57を操作して、適正な初期開度設定位置に調節することができる。
【0039】
カバー体27は、図10(B)に示すように、固定ボルト29を外すことにより容易に取外すことができる。この状態で、送塵ガイドユニット25は、下カバー43を、固定用ボルト65を凹部底面19aから外すことにより、送塵ガイド40を孔19bから抜いて取外すことができる。該孔19bは、送塵ガイドユニット25を取付けた状態では、下プレート43により塞がれる。上記送塵ガイドユニット25を取外した状態で、前操作部46、後操作部46のスプリング55を適切な荷重のものに交換することができる。この際、ねじりコイルスプリング55は、線径又は巻数で荷重が異なるが、同形状のものが用いられるので、容易に他のものに付け換えることができる。
【0040】
なお、上記送塵ガイドユニット25は、前後2個並設しているが、これは、3個又はそれ以上の複数個でもよい。この際、各操作部のスプリングは、前から後に向って順次その荷重が小さくなるものを用いることが好ましいが、例えば前側2個と後側2個は同じ荷重のものを用いる等、前側が後側のものより大きくない(同じ荷重を含む)荷重のものを用いればよい。
【0041】
また、穀稈供給量が少ないが、倒伏材等で稈切れや屑の発生が多い場合や、濡れ材等で屑の移送が多い場合、送塵ガイドの開度不足で、詰りや損傷の原因となり易い。この場合、操作部46(1、2)のスプリングを荷重の弱いものに付け換えることが好ましい。更に、上述したように、前側の操作部46のスプリング52に比して、後側のスプリング荷重が弱いと、後側の送塵ガイドの退避開度が大きくなり過ぎ、扱室径路の排稈口等から穀粒が排出され易く、刺さり粒や3番飛散が増大する場合もあり、この場合は、後側のスプリングを前側に比して荷重の小さいものを用いることは必ずしも適正ではなく、同じ荷重又は後側のスプリングの荷重をむしろ大きいものにしてもよい。これにより、扱室12全体での処理物の移送量は多くはないが、充分に処理が進行していない状態で処理物が後側に送られても、後側の送塵ガイドの荷重による退避回動を抑制して、後側の送塵ガイドにより処理物の移送を制限して、刺さり粒、3番飛散による穀粒の損失を極力防止することができる。
【0042】
ついで、図11に沿って、他の実施の形態について説明する。排わらチェーン15’との間で穀稈を挟持する挟持レール16’又はフィードチェーン15との間で穀稈を挟持する挟持レール16の動きを、送塵ガイドユニット25’にボーデンワイヤ66により伝達する。挟持レール16’は、スプリング21によりチェーン15’に向けて付勢されており、かつガイドピン67により上下方向に案内されている。
【0043】
送塵ガイド操作部46’(1,2)は、前述同様に前側及び後側が並設されており、それぞれ送塵ガイド40を一体に支持している回転支軸49に2面取り部49aにより回転不能に連結されたアームプレート52Aを有しており、また上記回転支軸49に回転自在に支持されているリンクプレート69を有している。アームプレート52Aの先端にはピン53Aが植設されており、上記回転支軸49のピン53Aの反対側には前記リンクプレート69にピン70が植設されている。また、該リンクプレート69の上記回転支軸49のピン53Aと同じ側にはストッパ75が固定されている。
【0044】
前記回転支軸49には、ねじりコイルスプリング55のコイル部55aが嵌挿されて、ボルト及びワッシャで抜け止めされており、上記スプリングの一端アーム部55bは、上記ピン53Aに係止し、他端アーム55cは、上記ピン70に係止している。上記コイルスプリング55は、所定量巻き締められて付勢状態にあり、アームプレート53Aがリンクプレート69のストッパ75に所定付勢状態で当接している。
【0045】
上述構成は、前後の操作部46’,46’で同一構成からなり、両操作部のリンクプレート69は、連結プレート71で連結されて、各リンクプレートは、平行リンクを構成して同じ運動をする。前操作部46’のリンクプレート69は、長く形成されて、延長部69aに、前記ボーデンワイヤ66の一端が連結されていると共に、該ワイヤの引き作用方向と反対側に付勢されるスプリング72が張設されている。前記ボーデンワイヤ66の他端は、前記挟持レール16’のガイドピン67に連結している。なお、本実施の形態でも、スプリング55は、前及び後操作部46’,46’にそれぞれ個別に配置されており、かつ同様な形状からなるが、その荷重は、それぞれ設定されている。
【0046】
本実施の形態は、以上のような構成からなるので、排わら(又はフィード)チェーン15’で搬送される穀稈の搬送量(搬送穀稈の厚さ)により挟持レール16’がスプリング21に抗して又は順じて上下方向に移動する。搬送量が多い場合、ボーデンワイヤ66を引くことになり、リンクプレート69をスプリング72に抗して回転支軸49を中心に矢印C方向に回動する。これにより、ストッパ75を介してアームプレート53A及びそれと一体の送塵ガイド40を同方向に回動する。
【0047】
上記穀稈搬送量による送塵ガイド40の開度(向き)の調節は、連結プレート71により前後の操作部46、46が連動されて同様に行われる。そして、上記穀稈搬送量に基づくリンクプレート69,69の角度により規定される前後の送塵ガイド40,40の開度を基準として、処理物からの負荷とコイルスプリング55の付勢力との平衡により送塵ガイド40,40の開度が自動調節される。即ち、処理物からの負荷が大きい場合、送塵ガイド40は、ねじりコイルスプリング55の付勢力に抗して、アームプレート52Aがストッパ75から離れるように退避回動して、処理物が速く流れるように自動調節される。前後の操作部46、46は、コイルスプリング55,55が個別に配設されており、後側のスプリングの荷重が、前側のスプリングに比して、小さいように、又は場合によっては大きいものが採用される。
【0048】
なお、送塵ガイドユニット25’を排わらチェーンで搬送される搬送穀稈の搬送量で調節したが、これに限らず、前処理部に設けた穀稈量検出センサや車速に応じて上記送塵ガイドユニット25’を調節してもよく、またボーデンワイヤに限らず、電気信号に基づき電動モータにより又は油圧により連動してもよい。
【0049】
また、上述実施の形態では、前送塵ガイドと後送塵ガイドとの初期開度を各別の開度調節手段(ノブ)によって設定したが、単一の開度調節手段により複数の送塵ガイドを調節するものにも同様に適用可能である。なお、複数の送塵ガイドは、それぞれ独立して回動し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0050】
10 脱穀装置
11 扱胴
12 扱室
25,25’ 送塵ガイドユニット
40 送塵ガイド
46,46’ 前送塵ガイド(操作部)
46,46’ 後送塵ガイド(操作部)
49 回転支軸
55 (ねじりコイル)スプリング
57 開度調節手段(ノブ)
66,67 開度調節手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱室内に、回転支軸を中心にかつスプリングにより一方向に付勢して送塵ガイドを設け、該送塵ガイドが、前記扱室内の処理物から受ける負荷により前記スプリングの付勢力に抗して退避回動してなる脱穀装置において、
前記送塵ガイドは、少なくとも前記扱室の前側に配置された前送塵ガイドと後側に配置された後送塵ガイドを備え、
これら前及び後送塵ガイドは、それぞれ前記スプリングが配設されると共に、前記スプリングの付勢力により設定される初期開度を調節する手段を備え、
前記前及び後送塵ガイドの前記スプリングは、縦弾性係数の異なるものが用いられてなる、
ことを特徴とする脱穀装置。
【請求項2】
前記後送塵ガイドのスプリングの縦弾性係数が、前記前送塵ガイドのスプリングの縦弾性係数より小さい、
請求項1記載の脱穀装置。
【請求項3】
前記初期開度を調節する手段が、前記前送塵ガイド及び前記後送塵ガイドにそれぞれ個別に配設され、
前記前送塵ガイド及び前記後送塵ガイドの前記スプリングは、同じ形状からなりかつ縦弾性係数が異なるものを用いてなる、
請求項1又は2記載の脱穀装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−143169(P2012−143169A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−2330(P2011−2330)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】