説明

脱窒、脱硫、含酸素化合物の製造のための炭化水素基質の選択酸化方法

【課題】従来の除去し難い(refractory)硫黄化合物を革新的に除去してほぼ硫黄のない超深度脱硫を達成し、これと同時に脱窒までも除去する効果を示す、炭化水素基質の選択酸化方法を提供すること。
【解決手段】MC型均一触媒および酸化剤の存在の下で炭化水素基質を選択酸化処理することにより、硫黄または窒素含有化合物を、脱硫および脱窒が容易な硫黄または窒素含有前駆体に転換させると同時に、ベンジリックまたはアリリック化合物を含酸素化合物に転換させる段階を含む、炭化水素基質の選択酸化方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素基質の選択酸化方法に関するものであり、より具体的には、MC型均一触媒および酸化剤の存在の下で炭化水素基質を酸化処理することにより、揮発油または軽油などの輸送燃料油を含む炭化水素基質内でセタン価またはオクタン価増進剤として作用する有用な含酸素化合物を多量または所望の量に調節して生産するうえ、脱窒と脱硫を同時に直接行う或いは少なくとも除去が容易な硫黄または窒素含有前駆体に変換させることが可能な、炭化水素基質の選択酸化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石油などの炭化水素基質には、例えばチオール、スルフィド、ジスルフィドのように、一般に不安定であり且つ熱処理方法または従来の水素処理工程によって容易に除去される硫黄元素および脂肪族有機硫黄などの硫黄化合物が存在する。
【0003】
このような硫黄化合物を除去するために通常用いられている従来の技術は、水素化脱硫工程または水素添加脱硫工程(hydrodesulfurization、以下「HDS」という)であるが、このようなHDS工程の技術は、全世界の精油会社間の熾烈な競争または学文的研究によって著しく発展されており、石油精油会社にとっては、ヨーロッパ、米国および日本で施行する厳しい大気汚染防止法規に符合するように硫黄を除去するために最も重要な工程になっている。
【0004】
特に、EU国家によって主導されるように、既に幾つかのヨーロッパ国家では自動車燃料、特にガソリンにおいて硫黄をほぼゼロ水準(10ppm S)に低める技術を目標としている。この目標を達成するには非常に高度の脱硫技術が要求される。下記表1に示すように、韓国においても自動車燃料内の硫黄含有量を低める方向に法規の強化が加速化しつつある。
【0005】
【表1】

【0006】
ところが、石油に存在する硫黄成分の化合物には、除去の容易な化合物だけでなく、除去が非常に困難または不可能な化合物、例えば一連のチオフェン系化合物およびそれらの縮合チオフェン誘導体なども含まれる。
【0007】
具体的に、縮合チオフェン誘導体のうち、ベンゾチオフェンやジベンゾチオフェン、4−メチルジベンゾチオフェン、および特に4,6−ジメチルベンゾチオフェンといったより縮合した硫黄化合物などが、ガソリン、ディーゼル燃料(diesel fuel) 、HDS中間留分(middle distillates)、重留分(heavier fractions)、および石油原油(petroleum crudes)の残渣物(residual bottoms)に存在する。このようなジベンゾチオフェンまたはそのアルキル誘導体はいわゆる分離し難い(refractory)硫黄化合物と呼ばれている。これは、高温(650℃)でも熱的に安定し、水素化脱硫工程または水素添加脱硫工程などの通常の精製工程によっても非常に除去され難いためである。
【0008】
このような理由により、硫黄含量をほぼゼロに低める目標は、現在最も発展した形態のHDS触媒技術によっても達成することが殆ど不可能である。これは、現在のHDS工程に含まれた根本的な化学原理では前述したように本質的に克服することが難しい問題があるためである。
【0009】
かかる問題を解決するために、多くのHDS触媒が実験的に報告されてきたが、このような技術さえもあまり過酷なHDS工程を要求しているから、オレフィン、パラフィンおよび多環(multi-ring)化合物を含んだ芳香族化合物などの必須的な炭化水素成分が過度に水素添加され、高価の水素を夥しく多量消費するという別の問題点がある。
【0010】
値段の高い水素が多量消費されるという経済的な問題点の他にも、その結果として、気体生成物と過度に水素添加された生成物が多量生成され、HDS生成物の量は相当減少するが、これは、ガソリンの場合は相当な量のオクタン価損失、ディーゼルの場合は相当な量のセタン価損失を誘発する結果を生む。よって、所望の物理的および化学的性質を充足させるためには(例えばガソリンの場合にオクタン価を回復し、改質ガソリンおよび未来の酸素処理されたディーゼルによってそれぞれ要求される酸素含量を充足させるためには)、クラッキング反応および特殊な含酸素化合物との混合過程などの追加工程が別途に行わなければならず、結局これ以上実用的な自動車燃料にはなれないという別の深刻な問題点を誘発している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
かかる従来のHDS技術の問題点を克服するために、本発明は、従来の除去し難い(refractory)硫黄化合物を革新的に除去してほぼ硫黄のない超深度脱硫を達成し、これと同時に脱窒までも除去する効果を示す選択酸化方法を提示している。ひいては、オクタン価またはセタン価の損失を誘発する従来のHDS技術とは異なり、本発明に係る選択酸化方法は、アリリックまたはベンジリック炭化水素基質を選択的に酸化させてオクタン価またはセタン価を却って増進させる相乗的効果を同時に示すということに大きい意義がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明は、MC型均一触媒および酸化剤の存在の下で炭化水素基質を酸化処理することにより、硫黄または窒素含有化合物を、脱硫および脱窒が容易な硫黄または窒素含有前駆体に転換させると同時に、ベンジリックまたはアリリック化合物を含酸素化合物に転換させる段階を含む、炭化水素基質の選択酸化方法であって、前記MC型均一触媒はCo/HBr、Mn/HBr、Co/Mn/HBr、およびCo/Mn/M’/HBrの中から選択され、前記M’はK、Rb、Mo、Fe、Zr、Hf、Mn、Ti、Ni、Ru、Cs、Nb、Mo、W、Ta、Sb、Re、Rh、Pr、Sm、およびCeの中から選択され、前記酸化剤はO2/CO2混合気体であることを特徴とする、炭化水素基質の選択酸化方法を提供する。
【0013】
また、本発明の他の観点によれば、(a)MC型均一触媒および酸化剤の存在の下で炭化水素基質を酸化処理することにより、硫黄または窒素含有化合物を、脱硫および脱窒が容易な硫黄または窒素含有前駆体に転換させると同時に、ベンジリックまたはアリリック化合物を含酸素化合物に転換させる選択酸化段階と、(b)前記硫黄または窒素含有前駆体を除去することにより、炭化水素基質の脱硫および脱窒を行う段階とを含む、炭化水素基質の選択酸化方法であって、前記MC型均一触媒はCo/HBr、Mn/HBr、Co/Mn/HBr、およびCo/Mn/M’/HBrの中から選択され、前記M’はK、Rb、Mo、Fe、Zr、Hf、Mn、Ti、Ni、Ru、Cs、Nb、Mo、W、Ta、Sb、Re、Rh、Pr、Sm、およびCeの中から選択され、前記酸化剤はO2/CO2混合気体であることを特徴とする、炭化水素基質の選択酸化方法を提供する。
【0014】
また、本発明の別の観点によれば、MC型均一触媒および酸化剤の存在の下で二相反応系で炭化水素基質を酸化処理することにより、炭化水素基質の脱硫および脱窒を行うと同時に、ベンジリックまたはアリリック化合物を含酸素化合物に転換させる段階を含む炭化水素基質の選択酸化方法であって、前記MC型均一触媒はCo/HBr、Mn/HBr、Co/Mn/HBr、およびCo/Mn/M’/HBrの中から選択され、前記M’はK、Rb、Mo、Fe、Zr、Hf、Mn、Ti、Ni、Ru、Cs、Nb、Mo、W、Ta、Sb、Re、Rh、Pr、Sm、およびCeの中から選択され、前記酸化剤はO2/CO2混合気体であることを特徴とする、炭化水素基質の選択酸化方法を提供する。
【発明の効果】
【0015】
上述したように、本発明は、一つの反応器内で第1段階の液相選択酸化を行い、様々な炭化水素基質から硫黄および窒素含有化合物を除去し且つ有用な含酸素化合物を合成することができる作用効果を示している。本発明の工程は、特に深度または超深度脱硫、脱窒を行い、兼ねて今後の輸送油に要請される酸素含有量とオクタン価およびセタン価の規制を同時に充足させる工程である。
【0016】
本発明が適用可能な炭素水素基質としては、石油から誘導されたFCC産品、輸送燃料(揮発油および軽油)、中間留分(middle distillates)、重質油、および残渣油を含む。そして、石炭、石炭から派生した全ての産品、黒鉛、シェール油(shale oil)、オイルサンド(tar sand)などの固体化石燃料の清浄にも適用することができる。
【0017】
本発明によれば、MC型触媒を用いて留分、ナフサにおいて揮発油、軽油、重質油、残渣油などの多様な石油製品に含まれている硫黄成分、特に酸化し難いチオフェン誘導体、ベンゾチオフェン(BT)、ジベンゾチオフェン(DBT)、4,6−ジメチルジベンゾフェンチオフェン(4,6−DMDBT)、N−化合物(アミン、ピロール系、ピリジン系)、ベンジル酸、およびアリリック炭化水素を選択酸化反応させることにより、それぞれ該当するスルホキシド/スルホン、N−オキサイド/インディゴ/オキシム、および軽油のセタン価、揮発油のオクタン価の増進剤である有用な酸化物(ケトン、アルコール、アルデヒド、エーテル)を一つの反応器内で第1段階の反応によって合成することができる。
【0018】
このように選択酸化過程で産出されたスルホキシド/スルホンおよびN−オキサイド/インディゴ/オキシムなどは、二相(極性/非極性の溶媒)の酸化反応器内で極性溶媒相に分離/除去し、或いは第2段階で単純な熱分解(水素供与性溶媒あり、触媒なし)、従来の触媒および新塩基触媒を用いた接触脱硫/脱窒を行い、或いは従来の公知の簡単な分離方法(溶媒選択抽出、選択吸着剤、分留、酸化または非酸化二相分離法)を用いて脱硫と脱窒を行うことにより、硫黄または窒素成分が超深度(ultra-low)で存在するまたは全く存在しない(S−freeおよびN−free)留分を製造し、兼ねて有用な含酸素化合物(oxygenates)を合成して、今後の酸素含量に関する環境規制の強化に対応することが可能な石油留分清浄工程である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0020】
本発明のある観点によれば、MC型均一触媒および酸化剤の存在の下で炭化水素基質を選択酸化処理することにより、硫黄または窒素含有化合物を、脱硫および脱窒が容易な硫黄または窒素含有前駆体に転換させると同時に、ベンジリックまたはアリリック化合物を含酸素化合物に転換させる段階を含む、炭化水素基質の選択酸化方法を提供する。
【0021】
このような選択酸化段階によって揮発油オクタン価または軽油のセタン価を増進させる作用をする含酸素化合物を多量または所望の量に調節して生成させるうえ、除去が相対的に容易な硫黄または窒素含有前駆体への転換が起こるので、前記選択酸化工程の後に脱硫と脱窒のための後処理段階を順次行うことにより、超深度脱硫および脱窒を容易に達成することもできる。
【0022】
硫黄含有化合物が効果的に除去されるためには、酸化を妨害する立体影響を迂回するために脱アルキル化および/または異性化反応、すなわち4−および6−位置から他の位置へメチル基を移動させる反応が先行されなければならない。ところが、4,6−ジメチルジベンゾチアフェンのように従来のHDS技術において問題となる硫黄化合物は、構造的に硫黄原子を取り囲む4−および6−位置の2つのメチル基によって大きい立体影響を受けているから、脱硫が最も難しい化合物であるしかなく、従来のHDS技術の根本的な問題がこのような根本的な化学原理に起因するものと言える。要するに、従来のHDS技術によっては最も発展した形態のHDS触媒を使用しても硫黄含有量をほぼゼロに低めることが可能な実用的な工程を得ることができないという点から、従来のHDS技術は経済的にも技術的にも致命的な限界を持っているといえる。
【0023】
これに対し、HDS工程において4,6−ジメチルジベンゾチオフェンの構造による立体影響とは異なり、基質分子の4−および6−位置にある2つのメチル基の電子提供機能は、下記表2に示すように、硫黄原子に電子密度を増加させる。よって、硫黄原子は親電子性攻撃、例えば酸化反応を受ける可能性が一層さらに多くなる。
【0024】
【表2】

【0025】
従って、酸化し難い硫黄化合物、DBTおよびそのアルキル誘導体は、選択的なスルホキシデーション工程に対して伝統的なHDS反応で観察されるのと正確に反対となる反応性傾向を示す。すなわち、4,6−ジメチルジベンゾチオフェンのように高温(460℃)でも安定し、従来のHDS技術によっては過酷条件ですら除去が最も難しかった硫黄化合物は、酸化性脱硫(oxidative desulfurization、以下「ODS」という)工程では脱硫が最も容易な基質になり、これを下記に図式的に示した。
【0026】
【化1】

【0027】
これをさらに具体的に考察すると、ビチオフェン系硫黄化合物系の場合は、硫黄化合物の電子密度がジフェニルスルフィド<チオフェノール<メチルフェニルスルフィドの順で増加し、結果として選択的な酸化反応のような親電子性攻撃は同一の傾向で進む。遷移金属イオンを含む類似の均一触媒システムにおいて一連のチオフェン系誘導体、特に酸化し難いジベンゾチオフェン(DBT)、4−アルキルジベンゾチオフェン(4−MDBT)、および4,6−ジアルキルジベンゾチオフェン(4,6−DMDBT)の選択的酸化にも下記の如く同一の化学原理が適用できる。
【0028】
また、酸素原子とは異なり、S原子は一般にその酸化状態を容易に拡張していろいろの酸化物を生成する。例えば、DBT誘導体は、下記反応式1に示すように、まず部分的に酸化してスルホキシドに転換された後、連続してスルホンに転換される。このような酸化程度によって沸点、分子極性、溶媒に対する溶解度などの物理、化学的性質が大きく異なるが、このような点を考慮し、簡単な物理的処理方法、分留、熱分解、溶媒選択抽出、吸着などの方法を用いて、酸化した生成物を容易に分離・除去することができる。一方、塩基などの触媒を用いて化学的分解を起して脱硫を行うことができる。これを下記に図式的に示す。
【0029】
【化2】

【0030】
このように転換された硫黄または窒素含有前駆体は、本発明で提示したいろいろの方法を順次行わせることにより、容易に脱硫または脱窒させることができる。よって、脱硫、脱窒、含酸素化合物の生成によるセタン価またはオクタン価の向上という目的または効果を一挙に達成することができるという点に本発明の意義がある。
【0031】
すなわち、本発明の選択酸化工程は、高い水素を多量使用しなければならないという従来のHDS工程の問題点を解決するために、非水素(non-hydrogen)工程であって、酸化的脱硫(oxidative desulfurization、ODS)工程の性格を帯びているが、親環境規制によって揮発油に2.0〜2.7%の酸素含量が既に規定されており、軽油の酸素含量規制も近いうちに施行される緊迫な現時点を勘案するとき、炭化水素の無差別酸化の概念を代替して、却って制限された酸化を選択的に調節しながら揮発油のオクタン価と軽油のセタン価を増進させることが可能な含酸素化合物を生成させると同時に、超深度脱硫および脱窒を共に併行することができるという点に、本発明の最も大きい意義があると言える。
【0032】
また、前述したように、脱硫と脱窒の段階は、順次行われてもよく、炭化水素基質の酸化処理と同時に行われてもよい。よって、本発明の他の観点によれば、MC型均一触媒および酸化剤の存在の下で二相(biphasic)の反応系で炭化水素基質を選択酸化処理することにより、炭化水素基質の脱硫および脱窒を行うと同時に、ベンジリックまたはアリリック化合物を含酸素化合物に転換させる段階を含む、炭化水素基質の選択酸化方法を提供する。
【0033】
硫黄含有炭化水素、窒素含有炭化水素、アリリックまたはベンジリック炭化水素の代表的な模型化合物としてそれぞれDBT、4,6−DMDBT、インドール(indole)、テトラリン(tetralin)を選択して二相(非極性/極性)選択酸化反応を行うことにより、生成されるSまたはN含有前駆体および含酸素生成物が水溶液または食酢酸−水のような極性溶媒層に移動して比較的容易に分離または除去することができ、このような工程の反応メカニズムを下記に図式的に示した。
【0034】
【化3】

【0035】
【化4】

【0036】
一方、もし炭化水素基質に一定量以上の窒素含有化合物が存在するとき、場合によっては選択酸化反応を妨害する要素としても作用する可能性がある。よって、本発明に係る選択酸化処理を行う前に、窒素含有前駆体を部分的に除去する前処理段階を行うこともある。このような前処理段階は、吸着剤を用いて行うことができる。また、吸着剤として別途に採用する代わりに、本発明に係るMC型均一触媒の一部が前記窒素含有前駆体を吸着させる吸着剤として作用するようにし、残りが選択酸化に触媒として作用するようにすることもできる。
【0037】
本発明において、「MC型均一触媒」とは、「Co/HBr」または「Mn/HBr」または「Co/Mn/HBr」または「Co/Mn/M’/HBr」触媒を意味し、前記M’は、K、Rb、Mo、Fe、Zr、Hf、Mn、Ti、Ni、Ru、Cs、Nb、Mo、W、Ta、Sb、Re、Rh、Pr、Sm、およびCeの中から選択され、その中でもNiまたはZrであることが最も望ましい。
【0038】
特に、本発明のMC型均一触媒において、Mn成分は、特に後述するO2/CO2酸化剤を使用する場合にCO2気体またはO2/CO2酸化気体を促進する作用をするが、このような促進によってペルオキシカーボネート中間体の活性種を形成するので、本発明で使用可能なMC型均一触媒としては、Mn成分が含有された「Co/Mn/HBr」または「Co/Mn/M’/HBr」触媒が相対的に好ましい場合が多い。
【0039】
従来の炭化水素基質の選択酸化のために広く知られている酸化剤の例には、t−ブチルヒドロペルオキシド(TBHP)、H22/HCOOH、H22/CF3COOH、エチルベンゼンヒドロペルオキシド、クミルヒドロペルオキシド、シクロヘキシルペルオキソジカーボネート((C611226)、ペルオキソホスホタングステート、ペルオキソホスホモリブデート、有機ペルオキシド、過レニウム酸塩(NaReO4)、ペルオキシジスルフェート(Na228)、Na22などの金属過酸化物、TBHP、H22、HCOOOH、CH3COOOHなどのペルオキシ有機酸、エチルベンゼンヒドロペルオキシド、クミルヒドロペルオキシド、シクロヘキシルペルオキソジカーボネート((C611226)などが含まれる。
【0040】
ところが、本発明において、「MC型均一触媒−酸化剤の選択酸化システム」またはこの際に使用される「酸化剤」は、炭化水素基質を過度にならないよう選択的に部分酸化させる作用を行うことが可能な酸化剤であって、O2/CO2の混合気体を意味する。特に、O2/CO2酸化剤は、O2/CO2の混合体積比が20〜50%/80〜50%が好ましく、さらに好ましくは30〜40%/70〜60%、最も好ましくは35〜40%/65〜60%の混合割合を持つことが有利である。
【0041】
また、O2/CO2の酸化剤には5〜30体積%のヘリウムまたはアルゴンが含まれ得る。これに対し、窒素は、含有量が多い場合、不利な方向に酸化反応が進むおそれがあるので、O2/CO2体積を基準として20体積%未満で含まれることが好ましく、さらに好ましくは10体積%未満、最も好ましくは5体積%未満で含まれる。
【0042】
2/CO2またはO2/CO2/Ar(N2)酸化気体を本発明に係るMC型均一触媒と共に使用すると、液相酸化反応器内でペルオキシド、ヒドロペルオキシドおよびペルオキソカーボネートなどの酸化活性中間体をその場で作り出すが、このような選択酸化反応を行うことにより、既存の高い酸化剤を代替することができる。このような反応メカニズムを下記に示す。
【0043】
【化5】

【0044】
本発明は、硫黄または窒素を除去すると同時に、セタン価またはオクタン価を向上させることが可能な含酸素化合物も共に生成させることを目的としているので、このような目的に鑑みたとき、内部に含まれている硫黄または窒素を除去する必要性、および含酸素化合物を生成する必要性がある炭化水素基質であれば、本発明に適用することができる。このような炭化水素基質の例には、
(1)揮発油、軽サイクルナフサ(LCN)、重サイクルナフサ(HCN)、重留分(middle distillate)、軽サイクル油(LCO)、重サイクル油(HCO)、およびクラリファイド油(CLO)の中から選択されたFCC(流動相接触クラッキング)の原料油およびその産品、
(2)水添工程(HDSおよびHDN)を経た前記(1)の炭化水素基質、
(3)重油、バンカーC油、または常圧または真空蒸留工程で生じた残渣油、
(4)原油から分離されたアスパルチン、
(5)精油工程を経ていない全体原油、
(6)オイルサンド(Tar sands)、サンド油(oil sands)または泥炭、
(7)水添工程を経た液化石炭およびH石炭(H-coal)、
(8)化学的に脱灰分/脱硫/脱窒過程を経た清浄な石炭、並びに
(9)コックスまたは黒鉛を含むが、これに限定されない。
【0045】
このような炭化水素基質の中でも、(1)水添工程を経た脱硫、脱窒処理をし、選択酸化によって含酸素化合物を含むように改質された揮発油と、(2)水添工程を経た軽サイクル油、重サイクル油、重留分およびこれらの混合物、(3)水添工程によって脱硫、脱窒処理をし、選択酸化によって含酸素物を含むように改質されたディーゼルなどが、本発明を適用することが可能な好ましい炭化水素基質の例である。
【0046】
その中でも、特に改質された揮発油または酸素処理されたディーゼルの中から選択された輸送油に適用することもできる。この際、改質された揮発油は、水添工程によって超深度脱硫、脱窒処理を行い、ベンジリックまたはアリリック炭化水素基質の調整された選択酸化によって2.0〜2.7重量%の酸素(酸素含量環境規制)に該当する含酸素硫黄化合物を含むことができるように改質されたものである。前記酸素処理されたディーゼルは、水添工程によって超深度脱硫、脱窒処理をし、前記数値以上の酸素に該当する含酸素化合物を含むことができるように改質されたものに対しても本発明の選択酸化反応を適用することができる。
【0047】
本発明において、「ベンジリックまたはアリリック化合物」は、炭化水素基質において、セタン価またはオクタン価を向上させることが可能な含酸素物質を生成させ得る出発物質として作用可能な化合物であればいずれも含む概念であり、その代表的な例には、テトラリン;アルキルテトラリン誘導体;部分的に水素化されたナフタレンおよびナフテン;例えばキシレン、クメン、イソプロピルベンゼン、メシチレン(mesitylene)、シュードクメン(pseudocumene)、デュレンなどのアルキルベンゼン誘導体、およびこれらの混合物が含まれるが、これに限定されない。
【0048】
本発明において、「含酸素化合物」は、炭化水素基質においてセタン価またはオクタン価を向上させる作用をする酸素含有化合物であればいずれも含む概念であり、その代表的な例には、α−テトラオールおよび1−(2−ナフチル)エタノールなどのアルコール類;α−テトラオン、1,4−ナフトキノンおよびフルオレノンなどのケトン類;α−テトラレンアルデヒドなどのアルデヒド類;オレイン酸メチル、リノール酸プロピル、ステアリン酸ブチルおよび大豆メチルなどの有機酸エステル類;マレイン酸ジブチル、テレフタル酸、2,6−ナフタリンジカルボン酸およびステアリン酸などの芳香族または脂肪族有機酸類;グライム(glyme)、ジグライム(diglyme)、トリグライム(triglyme)、およびトリプロピレングリコールメチルエーテルなどのエーテル類;およびこれらの混合物が含まれるが、これに限定されない。
【0049】
本発明において、「硫黄含有化合物」の例には、ジアルキルジベンゾチオフェン(4,6−DMDBT、2,5−DMDBT)、4−アルキルジベンゾチオフェン(4−MDBT)、ジベンゾチオフェン(DBT)、アルキルベンゾチオフェン、ベンゾチオフェン(BT)、ジアルキルチオフェン、チオフェン、ジフェニルスルフィド、チオフェノール、メチルフェニルスルフィド、アルキルジスルフィド、およびこれらの混合物が含まれるが、これに限定されない。また、本発明において、「硫黄含有前駆体」とは、このような硫黄含有化合物のスルホキシドまたはスルホンタイプの含酸素硫黄化合物を意味する。
【0050】
本発明において、「窒素含有化合物」の例には、ピリジン、キノリン、ピロール、インドール、カルバゾール、およびこれらのアルキル誘導体、芳香族および脂肪族アミン類、およびこれらの混合物が含まれるが、これに限定されない。また、本発明において、「窒素含有前駆体」とは、このような窒素含有化合物のN−オキサイド、オキシム、ニトロン、ニトロソベンゼン、ニトロベンゼン、またはインディゴタイプの含酸素窒素化合物を意味する。
【0051】
本発明において、「二相(biphasic)反応系」は非極性/極性反応系を意味し、このような二相反応系の例にはオイル/アセトニトリル、オイル/DMF、オイル/酢酸、オイル/ピロリドン、オイル/NaOH水溶液、オイル/NaHCO3水溶液、オイル/Na2CO3水溶液、オイル/酢酸−水混合物、オイル/t−BuOH、およびオイル/MeOHが含まれるが、これに限定されない。
【0052】
このような二相反応系で使用可能な「酸化剤」または「均一触媒−酸化剤の酸化システム」としては、O2(10〜15%)−CO2/ヘテロポリ酸、O2(10〜50%)−CO2/Mo6+(青いオキシラン触媒溶液)、O2(10〜50%)−CO2/Mo6+−Mn+触媒溶液(M=Fe、Co、Ru、Cu、Zr、Hf、Ni、Zn)、ヒドロペルオキシド/ヘテロポリ酸、ヒドロタルサイトおよびヒドロタルサイト類似物質の中から選択された酸化剤または酸化システムを使用することが実用的な側面で好ましい。
【0053】
前記酸化剤のうち、MC型触媒の二相反応系に使用できる酸化剤としては、O2/CO2混合気体、TBHP、H22、HCOOOH、CH3COOOHなどのペルオキシ有機酸、エチルベンゼンヒドロペルオキシド、クミルヒドロペルオキシド、シクロヘキシルペルオキソジカーボネート(C611226)などが好ましいが、これらの中でもO2/CO2の混合気体、H22、TBHP、HCOOOH、CH3COOOHがさらに好ましく、O2/CO2の混合気体が最も好ましい。
【0054】
本発明において、前記選択酸化は、1〜30気圧で処理することが好ましく、さらに好ましくは5〜20気圧、最も好ましくは10〜15気圧で処理することが有利であり、前記圧力範囲の下限と上限から外れる場合にはそれぞれ不振な酸化反応をもたらす問題点、および過度な圧力により反応遂行と安定性に関する問題点が発生するおそれがある。また、前記選択酸化の温度条件は80〜210℃であることが好ましく、さらに好ましくは130〜190℃、最も好ましくは140〜180℃であることが有利であり、前記温度範囲の下限と上限から外れる場合にはそれぞれ所期の酸化反応が不振であり或いは過度に行われるという問題点が発生するおそれがある。
【0055】
本発明において、脱硫および脱窒段階は、濾過分離法、分液法(fractionation)、選択吸着法(selective adsorption)、溶媒抽出法(solvent extraction)、触媒除去法(catalytic destruction)、選択的酸化法(selective oxidation)、および熱分解法(pyrolysis)の中から選ばれた一つまたは一つ以上の方法によって行われ得る。
【0056】
この中でも、濾過分離法は、選択酸化段階で生成されて極性溶媒層に沈殿した前記硫黄または窒素含有前駆体を濾過装置または遠心分離機で分離する。
【0057】
また、選択吸着法は、活性炭繊維(active carbon fiber)、炭素ナノ管(carbonnano tube)、炭素分子篩(carbon molecular sieve);M/活性炭繊維、M/ナノ炭素管、M/炭素分子篩(M=Pd、Zn、Cu、Ni、Fe、Mn、Ti、Mg、Sr、Ba、Na、K);メソ多孔性アルミナ、シリカゲル、ゼオライト;金属処理で活性化されたメソ多孔性アルミナ、金属処理で活性化されたシリカゲル、金属処理で活性化されたゼオライト;M/Al23、SiO2、MCM−41(M=Y、La、Ni、Mo、Cr、W、V、Co、Cu)、ペロブスカイト(Perovskite)、Y3+添加によって安定させた金属酸化物;ZrO2、CeO2−ZrO2、およびPrO2−ZrO2;MgO−MgAl24、MgAl24・xMgO、およびMgAl24・yAl23などの固溶体;Cs/ZSM−5、Cs/SiO2、Ba/MCM−41、Zn−Al二重層状ヒドロキシド(DLH)、ヒドロタルサイト(hydrotalcite)、AlGaPON、ZrGaPON、Mg0.819Ga0.181(OH)2(CO3)の中から選ばれた一つ以上の吸着剤を用いて行われる。
【0058】
溶媒抽出法は、N,N’ジメチルホルムアミド(DMF)、CH3CN、DMF、DMSO、MeOH、t−BuOH、メチルエチルケトン(MEK)、CH3COOHおよびCH3COOH、ジメチルピロリドン、ジオキサン、スルホラン(sulfolane)、アルカリ金属、および炭酸ソーダ(NaHCO3、Na2CO3)水溶液の中から選ばれた溶媒を用いて行われる。
【0059】
また、触媒除去法は、t−BuONa、NaOH、NaOH−KOH、CH3CO2Na、Li2CO3−NaCO3−K2CO3の共融混合物(eutectic mixture)、ラネーニッケル(Raney Ni)、ラネー鉄(Raney Fe)、Na/K、Na/Al23、K/Al23、Li/MgO、Cs/SiO2、MgFe24、[Ni(COD)2Bipy]、商業用HDS触媒、商業用HDN触媒、ヒドロタルサイト、Ce/V/MgO・MgAl24、MgO・MgAl24(固溶体)、およびZn−Al二重層状ヒドロキシド(double layer hydroxides)の中から選ばれた一つまたは一つ以上の塩基触媒の存在下で行われる。
【0060】
前記熱分解法は、ジヒドロナフタレン、テトラリン、デカリン、水添処理されたLCN、LCOおよびHCO、並びにこれらの中で水素供与性(H-doner)溶媒および/またはMgO・MgAl24、xAl23・yMgAl24(固溶体)、Cs/ZSM−5、Ba/MCM−41、Cs/SiO2、Zn−Al二重層状ヒドロキシド、ヒドロタルサイト、およびヒドロタルサイト類似物質、Li/MgO、Li/MgO−CaO、Na/Al23、K/Al23、AlGaPON、ZrGaPON、Mg1-xGax(OH)2CO3などの塩基触媒の存在下で行われる。
【0061】
この場合、前記MgO・MgAl24、前記xAl23・yMgAl24(固溶体)、前記Ce/V/MgO・MgAl24、商業用DeSOx触媒、前記Cs/ZSM−5、前記Na/Al23、前記K/Al23、前記Cs/SiO2、前記Ba/MCM−41、NaOH−KOH、NaOH、CVD Fe/Mo/DBH、FCC触媒、廃FCC触媒、廃RFCC廃触媒、ゼオライト(ZSM−5、MCM−41など)、商業用HDS触媒(始触媒または廃触媒)、商業用HDN触媒(始触媒または廃触媒)、およびこの他の各種廃固体酸触媒をリサイクルして使用することができる。
【0062】
本発明において、脱硫および脱窒は、それぞれ20ppm未満および10ppm未満で硫黄含有化合物および窒素含有化合物を除去するように行われることが実用的な面で好ましく、さらに好ましくは10ppm未満および5ppm未満、最も好ましくは5ppm未満および2.5ppm未満、究極的には0ppmにそれぞれ脱硫および脱窒させることが有利である。
【0063】
また、前記含酸素化合物は、改質揮発油の酸素含量規制値を充足させるために、酸素を基準として2.0〜5.0重量%で生成されることが好ましく、さらに好ましくは2.2〜3.0重量%、最も好ましくは2.2〜2.7重量%で含酸素化合物を生成させるオクタン価またはセタン価の増進、PM低減、NOxおよびSOx低減の側面で有利である。軽油の場合は、未だ酸素含有量の規制値が設定されていないが、今後規定される数値に順応すればよい。
<実施例>
以下、本発明の内容を実施例によって具体的に説明する。但し、下記の実施例は本発明の内容を説明するためのもので、本発明の権利範囲を限定するものではない。
【0064】
[実施例1:インドール(N−化合物)の選択酸化]
石油に存在する代表的なN−化合物は、大きく(1)脂肪族および芳香族アミン、(2)ピロール型酸性N−化合物、および(3)ピリジン型塩基性N−化合物の3つの類型に分けられる。この中でも、代表的な化合物であるインドールに対して選択酸化を行い、具体的に、窒素モデル化合物としてはインドール(99%、Aldrich)、溶媒としては酢酸(氷酢酸、99.8%、Aldrich)、触媒としてはCo(OAc)2・4H2O(98%、Aldrich)、Mn(OAc)2・4H2O(99%、Aldrich)、HBr(48%、Aldrich)を用いて製造したCo/Mn/HBr触媒を使用して、Ti−オートクレーブでO2/CO2(30%/70%)酸化ガスを流しながら10気圧、150℃、350rpmの条件で2時間行った。酸化反応後の最終物質はGC−MS(Agilent 5973I)とGC−FID(Agilent 6890N)で分析した。
【0065】
その結果、実験が始まって1時間以内に既に窒素含有基質が完全に酸化・転換され、GC分析によっても全く検出することができないことを確認した。
【0066】
[実施例2:テトラリン(ベンジリック化合物)の選択酸化]
石油留分、特に水素処理された留分に存在するベンジリック炭化水素は、ベンゼンおよびナフタレンのアルキル誘導体(n−、iso、tertiary)、部分的に水素化された縮合多環化合物、テトラリン、ナフテン類(naphthaenes)、オクタリン(octalin)、ジヒドロナフタレン、ジヒドロインドール、シクロヘキシルベンゼン、およびこれらのアルキル誘導体(n−、iso−、tertiary)、そしてナフトシクロパラフィンおよびそのアルキル誘導体(n−、iso、tertiar)などを挙げることができる。
【0067】
卓越したセタン価またはオクタン価の増進剤として知られている含酸素炭化水素を下記に記載した。その中でも、この実験で容易に合成することが可能な1,4−ナフトキノンは、酸素の含量がα−テトラロンに比べて酸素原子数が2倍に増加するため、セタン価またはオクタン価の増進性能が非常に優れるうえ、燃焼の際にその放出気体に粒子物質(particular matter、PM)、NOxおよびSOxの生成を著しく低減させる作用も優れている。
【0068】
一般に、軽油または揮発油に含まれる酸素含量が1重量%増加すると、約5〜10%のPMが低減してNOxおよびSOxの放出量も相当減少する効果を示すので、現在および今後輸送油の添加剤としてその有望性が大きく期待されており、このような含酸素化合物を多量算出することが可能な本発明に係る選択酸化方法の見込みも非常に明るいと言える。
【0069】
【化6】

【0070】
前記の様々なベンジリック炭化水素の中で代表的なモデル化合物としてテトラリンを選択してCo/HBr、Mn/HBr、Co/Mn/HBr、Ni/Co/Mn/HBr、Zr/Co/Mn/HBrなどの各種タイプのMC型触媒、およびO2/CO2を基本として用いて触媒の組成および酸化剤の種類などの酸化条件を変化させながらテトラリンの液相酸化反応をTi−オートクレーブで行い、生成された含酸素化合物および副産物を分析した。
【0071】
その結果、下記に示すように、有用な含酸素化合物、特に軽油の卓越したセタン価増進剤、および揮発油オクタン価増進剤として知られているα−テトラロン、1,4−ナフトキノンおよびフタル酸無水物を相当量の収率で算出した。
【0072】
特に、1,4−ナフトキノンは、この実験で合成することに最初に成功し、その酸素の含量が20重量%と著しく高いうえ、そのセタン価が約60と推定される最も有望な含酸素化合物であって、軽油のセタン価増進剤だけでなく、揮発油のオクタン価増進剤としても今後の応用が期待される。
【0073】
【化7】

【0074】
<選択酸化の実験条件>
この実験では、ベンジリック炭化水素モデル化合物としてテトラリン(99%、Aldrich)に対して選択酸化を表3のように行い、具体的に、溶媒としては酢酸(氷酢酸、99.8%、Aldrich)、触媒としてはCo(OAc)2・4H2O(98%、Aldrich)、Mn(OAc)2・4H2O(99%、Aldrich)、HBr(48%、Aldrich)、Ni(OAc)2・4H2O(98%、Aldrich)、Zr酢酸塩溶液(〜15% Zr、Aldrich)を用いて、Ti−オートクレーブでO2/CO2(26〜40%/60〜74%)酸化ガスを流しながら10気圧、150℃、350rpmの基本条件で酸化反応を行った。酸化反応後の最終物質はGC−MS(Agilent 5973I)とGC−FID(Agilent 6890N)で分析した。
【0075】
【表3】

【0076】
<選択酸化の実験結果>
選択酸化を行い、下記表4のような実験結果を得た。具体的に考察すると、α−テトラロンが主生成物として生成され、α−アセトキシテトラリンは酸化反応条件を調節して容易にα−テトラロンに転換できることを確認し、1,4−ナフトキノンとフタル酸無水物は酸化反応条件を調節して収率を高めることができることを確認した。そして、Co/Mn/HBrに比べてCo/Mn/HBr/Ni(Zr)触媒相では転換率および選択性が高くなるということを確認することができた。副産物として生成されるナフタレンとジヒドロナフタレンは反応条件と触媒組成を調節することにより、その生成量の最小化を調節することができることを確認することができた。
【0077】
一方、Mn成分が落とされたCo/HBr触媒相ではCO2の促進作用を観察することができなかったが、これはO2/CO2酸化ガスがMnサイトで活性化させ、いわゆるペルオキソカーボネート中間体の活性種を形成するという事実を確認させてくれるものと言える。
【0078】
【表4】

【0079】
[実施例3:疑似留分の選択酸化]
(1)疑似留分の製造
この実験に適した炭化水素基質の例として、FCC生産物(products)であるLCN(41−129℃)、HCN(129〜204℃)、留分(204〜338℃)、LCO(329〜385℃)、HCO(UOP分留)、CLO(精製オイル)(360〜650℃)、特に揮発油や軽油などの輸送油を挙げることができる。このような輸送油と類似するよう下記に記載の組成で硫黄成分、窒素成分およびベンジリック炭化水素などを含ませて疑似留分を製造した。
【0080】
具体的に、疑似オイルとしてはn−デカン(99%、Aldrich)、n−ヘキサデカン(99%、Aldrich)、モデル化合物としてはDBT(ジベンゾチオフェン、98%、Aldrich)、4,6−DMDBT(4,6−ジメチルジベンゾチオフェン、97%、Aldrich)、テトラリン(99%、Aldrich)、インドール(99%、Aldrich)などを用いて表5の通りに疑似留分を製造した。
【0081】
【表5】

【0082】
(2)Co/Mn/HBrまたはNi−Co/Mn/HBr触媒を用いた選択酸化反応の遂行
前記疑似留分およびCo/Mn/HBrまたはNi−Co/Mn/HBr触媒を用いて200mLのTi−オートクレーブで液相酸化反応を表6のような条件で行った。具体的に、溶媒としては酢酸(氷酢酸、99.8%、Aldrich)、触媒としてはCo(OAc)2・4H2O(98%、Aldrich)、Mn(OAc)2・4H2O(99%、Aldrich)、HBr(48%、Aldrich)、Ni(OAc)2・4H2O(98%、Aldrich)を用いて製造したCo/Mn/HBrまたはNi−Co/Mn/HBrを使用して、Ti−オートクレーブでO2/CO2(26〜40%/60〜74%)またはO2/(CO2、Ar、N2またはプレミックス)酸化ガスを流しながら10気圧、150℃、反応時間3時間、350rpmの条件で酸化反応を行った。
【0083】
酸化反応後の最終物質はGC−MS(Agilent 5973I)、GC−FID,およびPFPD(Agilent 6890N)で分析した。
【0084】
【表6】

【0085】
(3)選択酸化実験結果
選択酸化を行った結果物中のオイル部分のみを分析した結果を表7に示す。表7より、硫黄化合物およびベンジリック炭化水素、窒素化合物の酸化物は、多くの部分が溶媒層として抽出または沈殿されたことを確認し、具体的には反応式6、7のような結果を確認した。
【0086】
【化8】

【0087】
【化9】

【0088】
また、表7に示すように酸化の含量が35〜40%(CO2の下で)のとき、転換率および選択度の側面で卓越した結果を確認した。
【0089】
このような結果は、S成分、N成分、およびアリリックまたはベンジリック炭化水素を一つの反応器内で第1段階の酸化反応によって酸化させて超深度脱硫、脱窒を行い、硫黄または窒素が除去された(S-freeまたはN-free)輸送燃料を製造すると同時に、オクタン価およびセタン価を増進させる有用な含酸素化合物も生産することが可能な工程を導出する契機を設けたものと評価することができる。
【0090】
特に、このような結果は、水素処理された(hydrotreated)石油留分で超深度脱硫と脱窒を同時に実行するとともに、アリリックまたはベンジリック炭化水素成分を選択的に酸化させ、有用な含酸素化合物を一緒に提供する未来の親環境精油清浄工程を提供する基礎を設けたものと評価することができる。
【0091】
【表7】

【0092】
[実施例4:処理(treated)CLGOの選択酸化]
(1)選択酸化処理
硫黄含量820ppmを含んでいる処理CLGO(coker light gas oil)を、Co/Mn/HBr触媒を用いて、200mLのTi−オートクレーブで表8のような条件で液相酸化反応させた。具体的に、処理CLGOの組成は表9の通りであり、溶媒としては酢酸(氷酢酸、99.8%、Aldrich)、触媒としてはCo(OAc)2・4H2O(98%、Aldrich)、Mn(OAc)2・4H2O(99%、Aldrich)、HBr(48%、Aldrich)を用いて、Ti−オートクレーブでO2/CO2(35%/65%)酸化ガスを流しながら10気圧、150℃、反応時間3時間、酸化剤添加速度400cc/min、350rpmの条件で酸化反応を行った。
【0093】
【表8】

【0094】
【表9】

【0095】
(2)抽出による後処理
前記(1)で生成された酸化物を酢酸を用いて抽出処理した。処理後に得た生成物に残っている硫黄化合物をPFPD(Agilent 6890N)で分析し、図1の結果と同様に硫黄化合物が殆ど除去(除去率98.9%)されることを確認した。
【0096】
DBTなどの硫黄化合物は酸化物であるスルホンとスルホキシドなどの極性化合物に転換され、二相系の形で極性溶媒としての酢酸に抽出分離されて非常に高い脱硫率を成し遂げることができ、抽出処理後に得た生成物に少量残っている酢酸(沸点:117〜118℃)も蒸留によって容易に除去されることを確認した。
【0097】
(3)吸着剤による後処理
前記(1)で生成された酸化物を商業用活性炭素吸着剤を用いて常圧、室温で吸着処理した。処理後に得た生成物に対して、「KS M 2027−2005」方法でS成分を分析した結果、13ppmと検出され、元素分析器で酸素含量を分析した結果、1.1%と検出されることを確認した。
【0098】
下記の比較例でのように酸化反応を経ず吸着剤処理を行う場合に比べて、酸化反応を経た後で吸着剤処理を行う場合が非常に高い脱硫率を示すことを確認した。
(4)酸化処理なしで吸着処理した結果と比較
選択酸化処理を経ていない処理CLGOを前記(3)で同一の条件で吸着処理した。処理後に得た生成物に対して「KS M 2007−2005」方法でS成分を分析した結果、208ppmと検出されることを確認した。
【0099】
[実施例5:HCNの選択酸化]
(1)選択酸化処理
0.12%のS成分および45ppmのN成分が含まれたHCN(heavy cyclic naphtha)に対して、Co/Mn/HBr触媒およびO2/CO2(26%/74%)酸化ガスのシステムを用いて80℃で2時間液相酸化を行った。
(2)濾過後処理
前記(1)で生成された酸化物をガラスフィルター(glass filter)と吸込み器(aspirator)を用いて減圧の下で濾過した。濾液に残っているS成分およびN成分を分析した結果、S成分は25ppm未満と検出され、N成分は全く検出されないことを確認した。
【0100】
DBTの酸化物であるスルホンとN−化合物中の一つであるインドールの酸化物のインディゴなどは沈殿して酸化反応系に固体相で存在するため、濾過によって分離し易くて非常に高い脱硫率を成し遂げることができ、N成分も検出することができない程度にほぼ完全に除去されることを確認することができた。
(3)HDS後処理
前記(1)で生成された酸化物に対して、従来の商業用HDS触媒であるNi(6%)−Mo(18%)/γ−Al23(M=Ti、Zr、B、P)上で水添処理した。処理後に得た生成物を分析した結果、S成分は20ppm未満と検出され、N成分は全く検出されないことを確認した。
【0101】
留分基質をまず選択酸化し、留分に存在した主要S成分である、酸化し難い縮合チオフェンをスルホンに転換することにより、酸化反応を受けていない縮合チオフェンに比べて一層容易に除去して超深度で硫黄化合物が除去されることを確認した。
(4)FCC廃触媒クラッキング後処理
前記(1)で生成された酸化物に対して、Ni、V、Feが積載されたFCC廃触媒を用いてハイドロクラッキング(hydro-cracking)および正常的なクラッキングを行った。処理後に得た生成物を分析した結果、S成分は10ppm未満と検出され、N成分は全く検出されないことを確認した。
【0102】
この結果より、FCCおよびRFCC(reside fluid catalytic cracking)で既に使用されて廃棄された触媒として、V、NiおよびFeなどが多量含まれた廃触媒を用いて、卓越した脱硫(<10ppm)性能を発揮することができることを確認した。
[実施例6:CLGOの選択酸化]
CLGO(coker light gas oil)に対して脱硫および脱窒を行った。使用されたCLGOは沸点162〜375℃の範囲にある留分であって、2.07%の硫黄成分および825ppmの窒素成分が含まれている。硫黄成分としてはBT(96ppm)、4−MDBT(520ppm)、4,6−DMDBT(387ppm)、2,3−DP−4−MT(457ppm)、2,3−DMDBT(291ppm)、1,2−DMDBT(624ppm)などが含まれている。
【0103】
選択酸化は、Ti−反応器を用いて二相(オイル/酢酸−H2O)システムで行われた。MC型酸化系では、基質であるオイル相とCo/Mn/HBr触媒の酢酸−H2Oの水溶液相に分離された二相酸化系を成した。
【0104】
具体的に、MC型酸化系においてO2(25%)/CO2(75%)酸化ガスを流しながら140℃および15気圧条件の下でCo/Mn/HBrおよびM/Co/Mn/HBr(M=Ni、Fe、To、Zr、Jf、Ru、Re、Ce)触媒で二相選択酸化を行った。その結果、非常に高い収率(>94%)でスルホンが生成され、ほぼ100%に近い収率でN−酸化物が生成されただけでなく、相当量の含酸素化合物が酢酸−H2O水溶液層に移動・抽出されることを確認した。
【0105】
[実施例7:LCOの選択酸化]
(1)「MC型触媒」および「O2/CO2酸化剤」を用いたLCOの選択酸化
前記と同一の条件で反応を行わせるが、但し、触媒としてMC型均一触媒を用い、酸化剤としてはO2(30%)/CO2(70%)酸化気体を用いて、酸化条件の下で1Lのオートクレーブ(15気圧)で選択酸化反応を行った。
(2)選択酸化によるS−またはN−成分前駆体および含酸素化合物の生成確認
前記実験で得られた酸化生成物をIR分析した結果、ほぼ100%に近い割合でS成分がスルホンに転換され、N−成分も除去が容易な前駆体に転換されたうえ、相当量の「カルボニル」生成物が生成されたことを確認した。
(3)熱分解による後処理
前記で得られた酸化物の一部分量(an aliquot portion、40mL)に対して、水素供与性(H-donor)溶媒と共に450℃で3時間熱分解ユニット(pyrolysis unit)を用いて熱分解を行った。その結果、表10に示すように、約92〜97%の脱硫率を達成し、N成分は全く検出することができなかった。これに対し、水素供与性でないナフタレンが共存する場合にはその脱硫率が83%であった。
【0106】
【表10】

【0107】
(4)塩基触媒存在の下における熱分解後処理
前記で得られた酸化物の別の一部分量(40mL)に対して、ヒドロタルサイト、Na/Al23、Na/K/活性炭素、Cs/ZSM−5、Ba/MCM−41などの塩基触媒5gを投入してから、450℃で1時間熱処理ユニットを用いて熱処理した。
その結果、脱硫率(>98%)および脱窒率(〜100%)を達成し、これと同時に触媒として用いたMoを含み殆ど全ての金属が非常に高い水準(>95%)で除去される優れた効果を確認した。
(5)吸着剤を用いた後処理
前記で得られた酸化物の別の一部分量(40mL)を予め濾過した後、活性炭素繊維、シリカゲルおよび炭素分子篩(10mL/吸着剤)を用いて、硫黄または窒素含有前駆体を分離・除去した。吸着剤で1回または2回程度処理することによっても、最終濾液からSとN成分は全く検出することができない程度に除去されたことを確認した。
前記従来の吸着剤の他にも、Pd/Al23、Pt/Al23、Pd/活性炭素、Pt/活性炭素、PdBaTiO3、Pt/BaTiO3、Pt/Mg2Al25、Pd/MgAl24、V/Ce/MgAl24、V/Ce/MAl24(M=Fe、Cr、Co、Ni、Cu、Cd、Hg、Zn、Zr)、V/Ce/MgAl24・xAl23、M/MgAl24(M=Fe、V、Cr、Ta、Nb、Ti、Mo、Zr、Mn)、M/ゼオライト、M/活性炭素、M/活性炭素繊維、M/炭素分子篩、M/炭素ナノチューブ(M=Fe、V、Cr、Ta、Nb、Ti、Mo、Zr、Mn)などの新しい吸着剤を用いて後処理を行った結果、優れた脱硫、脱窒効果を示すことを確認した。
(6)極性溶媒の選択抽出による後処理
前記で得られた酸化物の別の一部分量(40mL)を予め濾過して、もしかして存在し得る固体沈殿物を除去した後、その濾液に対してDMF(ジメチルホルムアミド)、MeCN、有機酸などの極性溶媒を用いて選択抽出を行った。
【0108】
選択抽出後に残存する硫黄、窒素成分を測定し、これを元々の基質内に存在した含量と比較して見ると、表11に示すように、優れた脱硫および脱窒が行われていることを確認することができる。
【0109】
【表11】

【0110】
(7)分別蒸留(fractionation)による後処理
前記で得られた酸化物の別の一部分量(200mL)に対して、予め濾過した後に分別蒸留を行った。その結果、酸化反応を経ていない留分の最高沸点で蒸留して得られた留分において、90%以上の脱硫とほぼ完全たる脱窒を実現することができたことを確認した。
[実施例8:石油残渣油を水添処理したLCOと配合して選択酸化]
(1)MC型触媒を用いた残渣油に対する選択酸化
後述するように、石油残渣油を水添処理したLCOと配合して基質試料とし、MC型触媒を用いて選択酸化を行ってから、酸化した生成物に対して塩基触媒で脱硫を行った。
【0111】
具体的に考察すると、まず、世界で産出される4種の原油のうち480℃以上に該当する残渣油を水添処理したLCO(0.07%S)と25:75の重量比で配合し、Co/Mn/HBr触媒の下でO2/CO2(35%/65%)酸化ガスを用いて標準酸化条件の下で選択酸化を行った。その結果、4種の残渣油(480℃以上)に含まれている硫黄成分は殆ど選択的に酸化して当該スルホンに転換され(85〜95%選択度)、カルボニル基は10〜30%程度観察された。このようなカルボニル基の殆ど全てベンジリックおよびアリリック炭化水素の酸化に起因するものと推定することができる。
【0112】
(2)熱分解後処理による脱硫
前記で選択酸化した残渣油は、1Lのシェーカーバム(shaker bomb)反応器で熱分解によって脱硫を行った。その結果は、表12に示す通りである。
【0113】
【表12】

【0114】
選択酸化反応の前処理を経ずに単に熱分解のみでは脱硫率が10〜15%に過ぎないが、選択酸化前処理によって脱硫が著しく改善されたことを確認することができる。但し、高いスルホン転換率にも拘らず、脱硫率が47〜61%の水準と低い理由は、脱硫により生成されたSOxとH2Sが反応器内で残渣油炭化水素基質と再び接触して硫黄含有化合物が生成されたためである。
【0115】
(3)熱分解後処理による脱硫(塩基触媒と選択的に水素供与性溶媒が存在する条件)
かかる問題点を防止するために、選択酸化を経た残渣油を水素供与性溶媒および/または塩基触媒の共存の下で熱分解を行ったところ、次のような改善された脱硫結果を観察することができた。
【0116】
別のアラビアン原油を新しい基質留分として使用し、これをIBP〜288℃、288〜343℃、および343℃以上の残渣油に分留し、前記標準酸化条件の下でそれぞれ選択酸化を行った。酸化した各留分はKOHおよびNa2O/Al23で処理し、次の結果を得た。
【0117】
【表13】

【0118】
【化10】

【0119】
また、最近知られた強い塩基物質を用いて脱硫過程を行った結果、窒素成分は全く検出することができず、脱硫はさらに改善された結果(98〜100%)を確認できた。
【0120】
【表14】

【0121】
前述したように、KOHおよびNa2O/Al23などの塩基で処理すると(場合によっては水素供与性溶媒が共存する条件の下で)、単純な熱分解処理に比べて一層向上した脱硫結果を得た。
【0122】
一方、このような脱硫後処理は、脱窒のみならず、炭化水素基質内に存在する金属成分も除去する効果を示すことを確認した。今後、改質(reformulated)揮発油および軽油などは酸素含量が規定されることが明らかであるから、硫黄成分および窒素成分の除去だけでなく、ベンジリックまたはアリリック成分の選択酸化までもできるように行われなければならないが、これは酸化剤/Sの割合を調節することにより可能であることを確認した。これにより、改質揮発油と今後の含酸素軽油の酸素含量、硫黄含有量、窒素含有量に対する規制値および揮発油のオクタン価と軽油のセタン価を充足させることができるという点を確認した。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】実施例4で行ったCLGOの選択酸化後抽出処理の結果を示すGC−PFPDグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
MC型均一触媒および酸化剤の存在の下で炭化水素基質を酸化処理することにより、硫黄または窒素含有化合物を、脱硫および脱窒が容易な硫黄または窒素含有前駆体に転換させると同時に、ベンジリックまたはアリリック化合物を含酸素化合物に転換させる段階を含む、炭化水素基質の選択酸化方法であって、
前記MC型均一触媒はCo/HBr、Mn/HBr、Co/Mn/HBr、およびCo/Mn/M’/HBrの中から選択され、前記M’はK、Rb、Mo、Fe、Zr、Hf、Mn、Ti、Ni、Ru、Cs、Nb、Mo、W、Ta、Sb、Re、Rh、Pr、Sm、およびCeの中から選択され、
前記酸化剤はO2/CO2混合気体であることを特徴とする、炭化水素基質の選択酸化方法。
【請求項2】
(a)MC型均一触媒および酸化剤の存在の下で炭化水素基質を酸化処理することにより、硫黄または窒素含有化合物を、脱硫および脱窒が容易な硫黄または窒素含有前駆体に転換させると同時に、ベンジリックまたはアリリック化合物を含酸素化合物に転換させる選択酸化段階と、
(b)前記硫黄または窒素含有前駆体を除去することにより、炭化水素基質の脱硫および脱窒を行う段階とを含む、炭化水素基質の選択酸化方法であって、
前記MC型均一触媒はCo/HBr、Mn/HBr、Co/Mn/HBr、およびCo/Mn/M’/HBrの中から選択され、前記M’はK、Rb、Mo、Fe、Zr、Hf、Mn、Ti、Ni、Ru、Cs、Nb、Mo、W、Ta、Sb、Re、Rh、Pr、Sm、およびCeの中から選択され、
前記酸化剤はO2/CO2混合気体であることを特徴とする、炭化水素基質の選択酸化方法。
【請求項3】
MC型均一触媒および酸化剤の存在の下で二相反応系で炭化水素基質を酸化処理することにより、炭化水素基質の脱硫および脱窒を行うと同時に、ベンジリックまたはアリリック化合物を含酸素化合物に転換させる段階を含む炭化水素基質の選択酸化方法であって、
前記MC型均一触媒はCo/HBr、Mn/HBr、Co/Mn/HBr、およびCo/Mn/M’/HBrの中から選択され、前記M’はK、Rb、Mo、Fe、Zr、Hf、Mn、Ti、Ni、Ru、Cs、Nb、Mo、W、Ta、Sb、Re、Rh、Pr、Sm、およびCeの中から選択され、
前記酸化剤はO2/CO2混合気体であることを特徴とする、炭化水素基質の選択酸化方法。
【請求項4】
前記窒素含有前駆体を部分的に除去する前処理段階をさらに含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の炭化水素基質の選択酸化方法。
【請求項5】
前記前処理段階は、吸着剤を用いて行われることを特徴とする、請求項4に記載の炭化水素基質の選択酸化方法。
【請求項6】
前記MC型均一触媒の一部は前記窒素含有前駆体を吸着させる吸着剤として作用し、前記MC型均一触媒の残りは選択酸化に触媒として作用することを特徴とする、請求項4に記載の炭化水素基質の選択酸化方法。
【請求項7】
前記MC型均一触媒は、Co/HBr、Mn/HBr、Co/Mn/HBr、Ni−Co/Mn/HBr、およびZr−Co/Mn/HBrの中から選択されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の炭化水素基質の選択酸化方法。
【請求項8】
前記MC型均一触媒は、Co/Mn/HBr、Ni−Co/Mn/HBr、およびZr−Co/Mn/HBrの中から選択されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の炭化水素基質の選択酸化方法。
【請求項9】
前記酸化剤はO2/CO2の混合気体であり、前記O2/CO2の混合体積比は20〜50%/80〜50%であることを特徴とする、請求項8に記載の炭化水素基質の選択酸化方法。
【請求項10】
前記O2/CO2の混合体積比が30〜40%/70〜60%であることを特徴とする、請求項9に記載の炭化水素基質の選択酸化方法。
【請求項11】
前記O2/CO2の混合体積比が35〜40%/65〜60%であることを特徴とする、請求項10に記載の炭化水素基質の選択酸化方法。
【請求項12】
前記O2/CO2の混合気体は50〜30体積%のヘリウムまたはアルゴンを含むことができることを特徴とする、請求項8に記載の炭化水素基質の選択酸化方法。
【請求項13】
前記O2/CO2の混合気体は窒素を20体積%以下で含むことを特徴とする、請求項8に記載の炭化水素基質の選択酸化方法。
【請求項14】
前記炭化水素基質は、
(1)揮発油、軽サイクルナフサ(LCN)、重サイクルナフサ(HCN)、重留分(middle distillate)、軽サイクル油(LCO)、重サイクル油(HCO)、およびクラリファイド油(CLO)の中から選択されたFCC(流動相接触クラッキング)の原料油およびその産品、
(2)水添工程(HDSおよびHDN)を経た前記(1)の炭化水素基質、
(3)重油、バンカーC油、または常圧または真空蒸留工程で生じた残渣油、
(4)原油から分離されたアスパルチン、
(5)精油工程を経ていない全体原油、
(6)オイルサンド(Tar sands)、サンド油(oil sands)または泥炭、
(7)水添工程を経た液化石炭およびH石炭(H-coal)、
(8)化学的に脱灰分/脱硫/脱窒過程を経た清浄な石炭、並びに
(9)コックスまたは黒鉛の中から選ばれる一つ以上の炭化水素基質であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の炭化水素基質の選択酸化方法。
【請求項15】
前記炭化水素基質は、(1)水添工程によって脱硫、脱窒処理を行い、選択酸化によって含酸素化合物を含むように改質された揮発油、(2)水添工程を経た軽サイクル油、重サイクル油、重留分およびこれらの混合物、並びに(3)水添工程によって脱硫、脱窒処理を行い、選択酸化によって含酸素物を含むように改質されたディーゼルの中から選ばれた輸送油であることを特徴とする、請求項14に記載の炭化水素基質の選択酸化方法。
【請求項16】
前記炭化水素基質は、改質された揮発油または酸素処理されたディーゼルの中から選択された輸送油であり、前記改質された揮発油は水添工程によって超深度脱硫、脱窒処理をして、2〜2.7重量%の酸素(酸素含量環境規制)に該当する含酸素化合物を含むように改質されたものであり、前記酸素処理されたディーゼルは水添工程によって超深度脱硫、脱窒処理を行い、2〜5重量%の酸素に該当する含酸素化合物を含むように改質されたことを特徴とする、請求項15に記載の炭化水素基質の選択酸化方法。
【請求項17】
前記ベンジリックまたはアリリック化合物は、テトラリン;アルキルテトラリン誘導体;部分的に水素化されたナフタレンおよびナフテン;キシレン、キュメン、イソプロピルベンゼン、メシチレン、シュードクメン、デュレンの中から選択されたアルキルベンゼン誘導体;およびこれらの混合物の中から選択され、
前記含酸素化合物は、アルコール類、ケトン類、アルデヒド類、有機酸エステル類、芳香族または脂肪族有機酸類、エーテル類、およびこれらの混合物の中から選択されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の炭化水素基質の選択酸化方法。
【請求項18】
前記アルコール類はα−テトラオール、1−(2−ナフチル)エタノールおよびこれらの混合物の中から選択され、前記ケトン類はα−テトラオン、1,4−ナフトキノン、フルオレノンおよびこれらの混合物の中から選択され、
前記アルデヒド類はα−テトラレンアルデヒドを含み、前記有機酸エステル類はオレイン酸メチル、リノール酸プロピル、ステアリン酸ブチル、大豆メチルおよびこれらの混合物の中から選択され、
前記芳香族または脂肪族有機酸類はマレイン酸ジブチル、テレフタル酸、2,6−ナフタリンジカルボン酸、ステアリン酸およびこれらの混合物の中から選択され、前記エーテル類はグライム、ジグライム、トリグライム、トリプロピレングリコールメチルエーテルおよびこれらの混合物の中から選択されることを特徴とする、請求項17に記載の炭化水素基質の選択酸化方法。
【請求項19】
前記硫黄含有化合物は、ジアルキルジベンゾチオフェン(4,6−DMDBT、2,5−DMDBT)、4−アルキルジベンゾチオフェン(4−MDBT)、ジベンゾチオフェン(DBT)、アルキルベンゾチオフェン、ベンゾチオフェン(BT)、ジアルキルチオフェン、チオフェン、ジフェニルスルフィド、チオフェノール、メチルフェニルスルフィド、アルキルジスルフィド、およびこれらの混合物の中から選択され、前記硫黄含有前駆体は、前記硫黄含有化合物のスルホキシドまたはスルホンタイプの含酸素硫黄化合物であることを特徴とする、請求項1または2に記載の炭化水素基質の選択酸化方法。
【請求項20】
前記窒素含有化合物は、ピリジン、キノリン、ピロール、インドール、カルバゾール、およびこれらのアルキル誘導体、芳香族および脂肪族アミン類、並びにこれらの混合物の中から選択され、前記窒素含有前駆体は、前記窒素含有化合物のN−オキサイド、オキシム、ニトロン、ニトロソベンゼン、ニトロベンゼン、またはインジゴタイプの含酸素窒素化合物であることを特徴とする、請求項1または2に記載の炭化水素基質の選択酸化方法。
【請求項21】
前記二相(biphasic)反応系は、オイル/アセトニトリル、オイル/DMF、オイル/酢酸、オイル/ピロリドン、オイル/NaOH水溶液、オイル/NaHCO3水溶液、オイル/Na2CO3水溶液、オイル/酢酸−水混合物、オイル/t−BuOH、およびオイル/MeOHの中から選ばれた非極性/極性反応系であることを特徴とする、請求項3に記載の炭化水素基質の選択酸化方法。
【請求項22】
前記酸化処理は10〜15気圧の圧力条件および140〜190℃の温度条件の下で行われることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の炭化水素基質の選択酸化方法。
【請求項23】
前記(b)脱硫および脱窒段階は、濾過分離法、分液法(fractionation)、選択吸着法(selective adsorption)、溶媒抽出法(solvent extraction)、触媒除去法(catalytic destruction)、選択的酸化法(selective oxidation)、および熱分解法(pyrolysis)よりなる群から選ばれた一つ以上の方法によって行われることを特徴とする、請求項2に記載の炭化水素基質の選択酸化方法。
【請求項24】
前記濾過分離法は、前記(a)選択酸化段階で生成されて極性溶媒層に沈殿した前記硫黄または窒素含有前駆体を濾過装置または遠心分離機で分離することにより行われ、
前記選択吸着法は、活性炭繊維(active carbon fiber)、炭素ナノ管(carbonnano tube)、炭素分子篩(carbon molecular sieve);M/活性炭繊維、M/ナノ炭素管、M/炭素分子篩(M=Pd、Zn、Cu、Ni、Fe、Mn、Ti、Mg、Sr、Ba、Na、K);メソ多孔性アルミナ、シリカゲル、ゼオライト;金属処理で活性化されたメソ多孔性アルミナ、金属処理で活性化されたシリカゲル、金属処理で活性化されたゼオライト;M/Al23、SiO2、MCM−41(M=Y、La、Ni、Mo、Cr、W、V、Co、Cu)、ペロブスカイト(perovskite)、Y3+添加によって安定させた金属酸化物;ZrO2、CeO2−ZrO2、およびPrO2−ZrO2、MgO−MgAl24、MgAl24・xMgO、MgAl24・yAl23、Cs/ZSM−5、Ba/MCM−41、Zn−Al二重層状ヒドロキシド(DLH)、ヒドロタルサイト、AlGaPON、ZrGAPON、Mg0.819Ga0.181(OH)2(CO3)の中から選ばれた一つ以上の吸着剤を用いて行われ、
前記溶媒抽出法は、N,N’ジメチルホルムアミド(DMF)、CH3CN、DMF、DMSO、MeOH、t−BuOH、メチルエチルケトン(MEK)、CH3COOH、ジメチルピロリドン、ジオキサン、スルホラン(sulfolane)、アルカリ金属、および炭酸ソーダ(NaHCO3、Na2CO3)水溶液の中から選ばれた溶媒を用いて行われ、
前記触媒除去法は、t−BuONa、NaOH、NaOH−KOH、CH3CO2Na、Li2CO3−NaCO3−K2CO3の共融混合物、ラネーニッケル(Raney Ni)、ラネー鉄(Raney Fe)、Na/K、Na/Al23、K/Al23、Li/MgO、Cs/SiO2、MgFe24、[Ni(COD)2Bipy]、商業用HDS触媒、商業用HDN触媒、ヒドロタルサイト、Ce/V/MgO・MgAl24、MgO・MgAl24(固溶体)、およびZn−Al二重層状ヒドロキシド(double layer hydroxides)の中から選ばれた一つまたは一つ以上の塩基触媒の存在下で行われ、
前記熱分解法は、ジヒドロナフタレン、テトラリン、デカリン、水添処理されたLCN、LCOおよびHCO、並びにこれらの中で水素供与性(H-doner)溶媒および/またはMgO・MgAl24、xAl23・yMgAl24(固溶体)、Cs/ZCM−5、Ba/MCM−41、Cs/SiO2、Zn−Al二重層状ヒドロキシド、ヒドロタルサイトおよびヒドロタルサイト類似物質、Li/MgO、Li/MgO−CaO、Na/Al23、K/Al23、AlGaPON、ZrGaPON、Mg1-xGax(OH)2CO3などの塩基触媒の存在下で行われることを特徴とする、請求項23に記載の炭化水素基質の選択酸化方法。
【請求項25】
前記MgO・MgAl24、前記xAl23・yMgAl24(固溶体)、前記Ce/V/MgO・MgAl24、前記Cs/ZSM−5、前記Na/Al23、前記K/Al23、前記Cs/SiO2、前記Ba/MCM−41、NaOH−KOH、NaOH、CVD Fe/Mo/DBH、FCC触媒、Spent FCC触媒、廃FCC廃触媒、ゼオライト(ZSM−5、MCM−41など)、商業用HDS触媒(始触媒または廃触媒)、商業用HDN触媒(始触媒または廃触媒)、およびこの他の各種廃固体酸触媒をリサイクルして使用することを特徴とする、請求項24に記載の炭化水素基質の選択酸化方法。
【請求項26】
前記脱硫および脱窒はそれぞれ10ppm未満および5ppm未満で硫黄含有化合物および窒素含有化合物を除去するように行われ、
前記含酸素化合物は酸素を基準として2.2〜2.7重量%以上生成されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の炭化水素基質の選択酸化方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−95095(P2008−95095A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−244523(P2007−244523)
【出願日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(506061439)コキャット インコーポレイテッド (6)