説明

脱芒機及びそれを備えた穀物処理設備

【課題】電動機の負荷変動が短時間に頻繁に発生した場合にも、開閉圧力弁に作用する閉弁方向の押圧力を処理胴内の穀圧の変化に適切に即応させることができるようにすること。
【解決手段】撹拌兼移送手段を内蔵した処理胴の一側部から穀粒を供給して、処理胴の他側部に形成した放出口側に撹拌兼移送手段により穀粒を撹拌しながら移送させて、放出口を開閉自在に閉弁している開閉圧力弁を穀圧により開放することで処理胴内の穀粒を放出口から放出可能となした脱芒機において、前記撹拌兼移送手段に作用する負荷として、撹拌兼移送手段を駆動する電動機の電流値を検出し、この検出電流値が予め設定した目標負荷電流値を維持するように開閉圧力弁をアクチュエータにより閉弁方向に押圧する圧力を制御するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枝梗粒(枝梗付き穀粒)を多く含む穀粒を処理胴内で撹拌しながら移送させて、処理胴内の移送側空間に穀圧を発生させることで穀粒同士の相互干渉を促進させて、枝梗の除去率を向上させるようにした脱芒機であって、穀圧を自動制御する機構を有する脱芒機と、それを備えた穀物処理設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、脱芒機の一形態として、特許文献1に開示されたものがある。かかる特許文献1に開示された脱芒機は、横長筒状に形成した処理胴内に回動支軸を横架し、回動支軸にその半径方向に伸延する多数の撹拌兼移送体を同軸的に突設している。そして、回動支軸は連動機構を介して電動機に連動連結している。また、処理胴の一側部に形成した供給口から穀粒を供給する一方、処理胴の他側部に形成した放出口から処理胴で処理した穀粒を放出させるようにしている。しかも、放出口には上端部を枢支した開閉圧力弁を開閉自在に取り付け、開閉圧力弁の下部には処理胴の軸線方向に伸延する棒状アームの基端部を連設している。棒状アームの先端部にはウエイトを棒状アームの軸線方向に摺動位置調節自在に取り付けている。
【0003】
ここで、ウエイトは、棒状アームの軸線方向に摺動位置調節することで、開閉圧力弁をその枢支部を中心に閉塞方向に作用させるモーメント荷重を調節することができるようにしている。
【0004】
このようにして、処理胴の供給口から供給した穀粒を、回動支軸を中心に回転する撹拌兼移送体により撹拌することで、穀粒を処理胴内で撹拌しながら放出口側に移送させるようにしている。そして、処理胴内の放出口側の空間に穀圧を発生させることで、穀粒同士の相互干渉を促進させて、枝梗粒の枝梗を除去するようにしている。
【0005】
この際、穀圧が、ウエイトによる開閉圧力弁の閉塞荷重よりも大きい一定圧以上になると、開閉圧力弁が開放作動して放出口が開放され、放出口から処理胴で処理された穀粒が放出されるようにしている。そして、回動支軸に負荷が作用すると、回動支軸を駆動する電動機に負荷が作用して、電動機の消費電流値が増大することから、電動機負荷を電動機に供給される電流値の変化から回動支軸に作用している負荷を確認することができる。そこで、電流値の変化を確認しながらウエイトを手動で摺動位置調節することで、穀圧に適応するようにしている。すなわち、穀粒の良否等により電動機負荷としての電流値が設定値(目標負荷電流値)よりも大きくなった場合には、ウエイトによるモーメント荷重が小さくなる方向にウエイトを一時的に位置調節する。また、電流値が設定値(目標負荷電流値)よりも小さくなった場合には、ウエイトによるモーメント荷重が大きくなる方向にウエイトを一時的に位置調節する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−216087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、前記した脱芒機では、電動機の負荷変動が短時間に頻繁に発生した場合、電流値の変化を確認しながらウエイトを手動で摺動位置調節する作業が、作業者にとって非常に煩雑になっている。
【0008】
そこで、本発明は、電動機に供給する電流値が設定値(目標負荷電流値)に維持されるように、開閉圧力弁に作用する閉弁方向の押圧力をフィードバック制御することで、処理胴内の穀圧の変化に適切に即応させて枝梗除去処理能率を高めることができる脱芒機及びそれを備えた穀物処理設備を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、次の構成を特徴とする。
【0010】
請求項1記載の発明に係る脱芒機は、撹拌兼移送手段を内蔵した処理胴の一側部から穀粒を供給して、処理胴の他側部に形成した放出口側に撹拌兼移送手段により穀粒を撹拌しながら移送させて、放出口を開閉自在に閉弁している開閉圧力弁を穀圧により開放することで処理胴内の穀粒を放出口から放出可能となした脱芒機において、前記撹拌兼移送手段に作用する負荷として、撹拌兼移送手段を駆動する電動機の電流値を検出し、この検出電流値が予め設定した目標負荷電流値を維持するように開閉圧力弁をアクチュエータにより閉弁方向に押圧する圧力を制御するようにしたことを特徴とする。
【0011】
かかる脱芒機では、開閉圧力弁への閉弁方向の押圧が自動的に制御されるため、電動機の負荷変動が短時間に頻繁に発生した場合にも、適切に即応することができる。その結果、処理胴内の穀圧の変化に適切に即応させることができて、枝梗除去処理能率(脱芒率)を高能率状態に安定させることができる。
【0012】
請求項2記載の発明に係る脱芒機は、請求項1記載の発明に係る脱芒機であって、前記開閉圧力弁を開閉作動させる前記アクチュエータとしてのエアシリンダに電空レギュレータを接続し、電空レギュレータに電動機の電流値検出手段を接続して、前記目標負荷電流値を維持するように電空レギュレータがエアシリンダにより開閉圧力弁を閉弁方向に押圧する圧力をフィードバック制御するようにしたことを特徴とする。
【0013】
かかる脱芒機では、電空レギュレータがエアシリンダにより開閉圧力弁を閉弁方向に押圧する圧力をフィードバック制御するようにしているため、構造簡易にして堅実に目標負荷電流値を維持することができる。その結果、開閉圧力弁への閉弁方向の押圧力を制御することで、処理胴内の穀圧の変化に適切に即応させることができて、枝梗除去処理能率(脱芒率)を高能率状態に安定させることができる。
【0014】
請求項3記載の発明に係る脱芒機を備えた穀物処理設備は、請求項1又は2記載の脱芒機を、穀物処理設備の精選装置に設けたことを特徴とする。
【0015】
かかる脱芒機を備えた穀物処理設備では、枝梗除去処理能率(脱芒率)を高能率状態に安定させることができる脱芒処理を行う脱芒機を、穀物処理設備の精選装置に設けることで、脱芒処理に先行する処理と後続の処理との引き継ぎ作業が円滑になされて、全体的な穀物処理処理作業能率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、次のような効果を奏する。すなわち、電動機に供給する電流値が設定値(目標負荷電流値)に維持されるように、開閉圧力弁に作用する閉弁方向の押圧力をフィードバック制御することで、処理胴内の穀圧の変化に適切に即応させることができる。そのため、電動機の負荷変動が短時間に頻繁に発生した場合にも、適切に即応することができる。その結果、枝梗除去処理能率(脱芒率)を高能率状態に安定させることができる。したがって、かかる効果を奏する脱芒機を穀物処理設備の精選装置に設けた場合には、脱芒機による脱芒処理に先行する処理と後続の処理との引き継ぎ作業が円滑になされて、全体的な穀物処理作業能率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】穀物処理設備の処理工程説明図。
【図2】精選装置の概念説明図(フロー図)。
【図3】脱芒機の正面説明図。
【図4】フィードバック制御のフローチャート(1)。
【図5】フィードバック制御のフローチャート(2)。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0019】
図1に示すように、穀物処理設備(カントリーエレベータ;図示せず)の処理工程10は、荷受工程11→粗選別工程12→第1計量工程13→乾燥工程14→一時貯留工程15→精選別工程16→第2計量工程17→貯蔵工程18→籾摺工程19→袋詰め・出荷工程20とからなる。
【0020】
荷受工程11は、搬入される原料である生籾を荷受けする工程であり、荷受ホッパー(図示せず)に生籾を荷受けするようにしている。
【0021】
粗選別工程12は、荷受ホッパーと揚穀機で接続した粗選機(これらは図示せず)を備えて、粗選機により生籾から夾雑物を選別して除去する工程である。
【0022】
第1計量工程13は、生籾の重量を測定する重量測定器と、生籾の水分を測定する水分測定器(これらは図示せず)を備えて、生籾の重量や水分を計量する工程である。第1計量工程13では、自主検査装置で生籾の歩留まりや品位を自主的に検査する自主検査工程21に移送することもある。
【0023】
乾燥工程14は、乾燥機(図示せず)を備えて、籾粒を揚穀機により循環させながら熱風を籾粒に接触させて乾燥させる工程である。
【0024】
一時貯留工程15は、複数の一時貯留サイロ(タンク)を備えて、乾燥工程14で乾燥処理された籾粒を一時的に貯留する工程である。
【0025】
精選別工程16は、精選装置30(図2参照)を備えて、籾粒(穀粒ともいう)からしいな(粃)や脱ぷ米(玄米)や枝梗粒(枝梗籾ともいう)を選別し、枝梗粒から枝梗を除去する工程である。
【0026】
第2計量工程17は、先の精選別工程16で選別された籾粒の重量を測定する重量測定器を備えて、精選別処理後の籾粒の重量を計量する工程である。
【0027】
貯蔵工程18は、複数の貯蔵サイロ(タンク)を備えて、第2計量工程17で計量処理された籾粒を貯蔵する工程である。貯蔵タンクに貯蔵されている籾粒は精籾として搬出することもできる。
【0028】
籾摺工程19は、籾摺装置(図示せず)を備えて、必要に応じてその都度籾粒を籾摺り処理して玄米にする工程である。
【0029】
袋詰め・出荷工程20は、先の籾摺工程19で籾摺り処理された玄米を袋詰めして出荷する工程である。
【0030】
精選装置30は、図2に示すように、籾粒からしいな(粃)を風選別する風選機40と、しいなを選別した籾粒から脱ぷ米や枝梗籾を選別する選別機50と、枝梗籾から枝梗を除去する脱芒機80を備えている。
【0031】
風選機40は、ホッパー41に供給された籾粒に、吸引排塵ファン42により生起させた選別風(吸引風)を作用させて、籾粒からしいなを吸引して選別するとともに、しいなを排出口43から排出させるようにしている。44はしいなが選別された籾粒を選別機50の一次選別部51に搬送する第1搬送流路である。
【0032】
選別機50は、一次選別部51と脱ぷ米選別部52と枝梗籾選別部53とを具備している。一次選別部51は、横長筒状に形成された一次選別胴54をその軸線廻りに回転させるようにしている。一次選別胴54の周面には多数のくぼみ部(図示せず)を設けている。一次選別胴54内には一次選別受け樋55を配設し、一次選別受け樋55内には一次選別搬出コンベア56を配設している。57は第2搬送流路、58は第3搬送流路である。
【0033】
このようにして、まず、第1搬送流路44を通して一次選別胴54内に籾粒を搬入する。そして、一次選別胴54を回転方向31(図2において反時計廻り)に回転させると、その回転に伴ってくぼみ部が籾粒を持ち上げる。その持ち上げ作用により持ち上げられた各籾粒は放物線を描いて飛翔するが、その飛翔する距離は籾粒の重量の相違により異なる。つまり、比較的軽量物である小粒籾及び脱ぷ米は大きく持ち上げられて一次選別受け樋55内に落下するが、比較的重量物である大粒籾及び枝梗籾は一次選別胴54内に留まる。その結果、小粒籾及び脱ぷ米と大粒籾及び枝梗籾とに選別することができる。そして、小粒籾及び脱ぷ米は第2搬送流路57を介して後述する脱ぷ米選別部52に搬送する。一方、大粒籾及び枝梗籾は第3搬送流路58を介して後述する枝梗籾選別部53に搬送する。
【0034】
脱ぷ米選別部52は、基本的に一次選別部51と同様に構成しており、横長筒状に形成された脱ぷ米選別胴60をその軸線廻りに回転させるようにしている。脱ぷ米選別胴60の周面には多数のくぼみ部(図示せず)を設けている。脱ぷ米選別胴60内には脱ぷ米選別受け樋61を配設し、脱ぷ米選別受け樋61内には脱ぷ米選別搬出コンベア62を配設している。63は第4搬送流路、64は第5搬送流路である。
【0035】
このようにして、まず、第2搬送流路57を通して脱ぷ米選別胴60内に籾粒を搬入する。そして、脱ぷ米選別胴60を回転(図2において反時計廻り)させると、その回転に伴ってくぼみ部が籾粒を持ち上げる。その持ち上げ作用により持ち上げられた各籾粒は放物線を描いて飛翔するが、その飛翔する距離は籾粒の重量の相違により異なる。つまり、比較的軽量物である脱ぷ米は大きく持ち上げられて脱ぷ米選別受け樋61内に落下するが、比較的重量物である精選小粒籾は脱ぷ米選別胴60内に留まる。その結果、脱ぷ米と精選小粒籾とに選別することができ。そして、脱ぷ米は第4搬送流路63を介して籾摺工程19に搬送する。一方、精選小粒籾は第5搬送流路64を介して第2計量工程17に搬送する。
【0036】
枝梗籾選別部53も、基本的に一次選別部51と同様に構成しており、横長筒状に形成された枝梗選別胴70をその軸線廻りに回転させるようにしている。枝梗選別胴70の周面には多数のくぼみ部(図示せず)を設けている。枝梗選別胴70内には枝梗選別受け樋71を配設し、枝梗選別受け樋71内には枝梗選別搬出コンベア72を配設している。73は第6搬送流路、74は第7搬送流路である。
【0037】
このようにして、まず、第3搬送流路58を通して枝梗選別胴70内に小粒籾及び脱ぷ米を搬入する。そして、枝梗選別胴70を回転(図2において反時計廻り)させると、その回転に伴ってくぼみ部が籾粒を持ち上げる。その持ち上げ作用により持ち上げられた各籾粒は放物線を描いて飛翔するが、その飛翔する距離は籾粒の重量の相違により異なる。つまり、比較的軽量物である精選大粒籾は大きく持ち上げられて枝梗選別受け樋71内に落下するが、比較的重量物である枝梗籾は枝梗選別胴70内に留まる。その結果、精選大粒籾と枝梗籾とに選別することができて、精選大粒籾は第6搬送流路73を介して第2計量工程17に搬送する一方、枝梗籾は第7搬送流路74を介して脱芒機80に搬送する。
【0038】
脱芒機80は、図2及び図3に示すように、基台81上に左右一対の支持体82を立設し、両支持体81の上部間に横長筒状に形成した処理胴83を横架している。処理胴83内には撹拌兼移送手段84を内蔵させている。処理胴83の左右側端にはそれぞれ左右側壁体85,86を設け、処理胴83の右側上部にはタンク状の枝梗籾供給部87を連通連設している。枝梗籾供給部87には、第7搬送流路74を介して枝梗籾を供給するようにしている。処理胴83の左側壁体85には放出口89を開口して、放出口89を開閉圧力弁88により開閉自在に閉弁している。101は開閉圧力弁88の上端部を枢支する枢支部である。102は放出口89を覆うフードである。103は枝梗籾供給部87の上部に設けた籾検出センサであり、籾検出センサ103は枝梗籾供給部87内に収容されている籾の有無を検出するようにしている。具体的にはタンクである枝梗籾供給部87内の設定上限に籾が有るか無いかを検出する。
【0039】
撹拌兼移送手段84は、処理胴83の軸芯部にその軸芯線に沿って(軸線方向に)伸延する回動支軸91を左右側壁体85,86間に横架し、回動支軸91にその半径方向に伸延する多数の撹拌兼移送体92を同軸的に突設している。回動支軸91の右側端部93は右側壁体86より外方に突出させて、右側端部93に入力プーリ94を取り付けている。一方、基台1上に電動機としての電動モータ95を搭載し、電動モータ95の出力軸96に出力プーリ97を取り付けている。そして、出力プーリ97と入力プーリ94に伝動ベルト98を巻回して連動機構99を形成している。電動モータ95には電流値検出手段としての電流値検出センサ100を設けて、電流値検出センサ100により電動モータ95の消費電流値を検出するようにしている。図2に示す104は脱芒処理籾搬送路であり、脱芒処理籾搬送路104は放出口89とホッパー41との間に介設している。
【0040】
このようにして、処理胴83に連通連設した枝梗籾供給部87から供給した枝梗籾を、回動支軸91を中心に回転する撹拌兼移送体92により撹拌することで、枝梗籾を処理胴83内で撹拌しながら放出口89側に移送させるようにしている。そして、処理胴83内の放出口89側の空間に穀圧を発生させることで、枝梗籾同士の相互干渉を促進させて、枝梗籾から枝梗を除去するようにしている。
【0041】
この際、穀圧が、開閉圧力弁88の閉塞荷重よりも大きい一定圧以上になると、開閉圧力弁88が開放作動して放出口89が開放され、放出口89から処理胴83で処理された脱芒処理籾が放出されるとともに、脱芒処理籾搬送路104を介してホッパー41に環流されるようにしている。そして、撹拌兼移送手段84に負荷が作用すると、撹拌兼移送手段84を駆動する電動モータ95に負荷が作用して、電動モータ95の消費電流値が増大することから、電動モータ95の負荷を電動モータ95に供給される電流値の変化から撹拌兼移送手段84に作用している負荷を確認することができる。
【0042】
上記のような構成において、本発明の要旨は、撹拌兼移送手段84に作用する負荷として、撹拌兼移送手段84を駆動する電動モータ95の電流値を電流値検出センサ100により検出し、この検出電流値が予め設定した目標負荷電流値を維持するように開閉圧力弁88をアクチュエータとしての単動型のエアシリンダ110により開閉作動制御するようにしている。
【0043】
すなわち、フード102の開閉圧力弁88と対向する位置に取付体111を介してエアシリンダ110を横断貫通状に取り付けている。エアシリンダ110は開閉圧力弁88にピストンロッド112の先端を連動連結している。エアシリンダ110のシリンダ本体113には電空レギュレータ120を流体接続している。電空レギュレータ120には電流値検出センサ100を電気接続している。そして、電空レギュレータ120がエアシリンダ110により開閉圧力弁88を閉弁方向に押圧する圧力をフィードバック制御して、電動モータ95の負荷電流値が目標負荷電流値に維持されるようにしている。
【0044】
ここで、目標負荷電流値は、脱芒率(%)が90%以上で、かつ、脱ぷ発生率(%)が1%以下となる負荷電流値で、その付近における脱芒率(%)と脱ぷ発生率(%)が安定している負荷電流値を設定することができる。例えば、本実施形態では目標負荷電流値を30Aと設定している。
【0045】
電空レギュレータ120は、図3に示すように、入力側に電流値検出センサ100と籾検出センサ103を接続した制御部121と、制御部121の出力側に接続した給気用電磁弁122及び排気用電磁弁123と、両電磁弁122,123に接続したサーボチャンバー124と、サーボチャンバー124の下流側と制御部121の入力側とを接続するフィードバック回路125の中途部に設けた圧力センサ126とを備えている。そして、制御部121は圧力センサ126からフィードバック信号(圧力信号)を入力する。127は制御されたエア圧力を出力する出力ポート、128は排気ポート、129は供給圧力源である。
【0046】
かかる電空レギュレータ120は、電流値検出センサ100からの検出信号に応じて、エアシリンダ110に供給する圧力をリニアにコントロールするフィードバック制御形のリモートコントロールレギュレータである。内蔵する給気用電磁弁122及び排気用電磁弁123を作動させて、サーボチャンバー124により圧力をコントロールする。圧力センサ126が出力ポート127の圧力を検出し、制御部121にフィードバック信号を送る。出力ポート127の圧力が、電流値検出センサ100からの検出信号(制御入力情報)による設定圧力と異なっていれば、制御部121は給気用電磁弁122及び排気用電磁弁123のいずれかに動作信号(制御出力情報)を送り、いずれかの電磁弁を作動させて、出力ポート127の圧力が設定圧力になるように圧力コントロールする。
【0047】
給気用電磁弁122の一次側は、メインの供給圧力源129に流体接続されている。給気用電磁弁122が作動すると、サーボチャンバー124の上部の圧力が増加し、サーボチャンバー124を押し下げ、その結果出口側圧力が増加する。反対に、排気用電磁弁123の一次側はサーボチャンバー124の上部につながっている。排気用電磁弁123が作動すると、サーボチャンバー124の上部の圧力が減少し、サーボチャンバー124がスプリングで押し上がり、出口側の加圧流体がメインの排気ポート128から排気され、出口側圧力が低減する。いずれの場合にも、出口側圧力が設定圧力になると作動している電磁弁はストップして制御状態を保つ。
【0048】
出力ポート127の圧力が、制御入力情報による設定圧力よりも低い場合には、制御部121が給気用電磁弁122を作動させる。
その結果、サーボチャンバー124の上部の圧力が増加し、サーボチャンバーを押し下げ、出力ポート127の圧力が上昇する。圧力センサ126は、常に出力ポート127の圧力を検出し、制御部121にフィードバックしているので、出力ポート127の圧力が上昇して設定圧力に近づくと、制御部121は給気用電磁弁122の駆動パルス幅を小さくして、圧力上昇率を少なくし、やがて設定圧力に達する。
【0049】
反対に、出力ポート127の圧力が制御入力情報による設定圧力よりも高い場合には、制御部121が排気用電磁弁123を作動させる。その結果、サーボチャンバー124の上部の圧力が減少し、サーボチャンバー124を押し上げ、出力ポート127の圧力が減少する。このとき、出力ポート127から排気ポート128へ流体(エア)が排気される。圧力センサ126は常に出力ポート127の圧力を検出し、制御部121にフィードバックしているので、出力ポート127の圧力が減少し設定圧力に近づくと、制御部121は排気用電磁弁123の駆動パルス幅を小さくして圧力減少率を少なくし、やがて設定圧力に達する。
【0050】
次に、図4及び図5のフローチャートを参照しながら、電空レギュレータ120により目標負荷電流値を維持するフィードバック制御について説明する。
【0051】
脱芒機80に設けたセレクトSW(スイッチ;図示せず)の「運転」をONさせると(S201Yes)、電空レギュレータ120の電源がONする(S202)。
【0052】
電流値検出センサ100により検出された検出情報(検出信号)が制御部121に入力されて、制御部121にて負荷電流値が36A以上と判断されることなく(S203No)、電空レギュレータ120の出力圧が上限圧力(D)かつ負荷電流値が25A未満で60秒以上経過しておらず(S204No)、負荷電流値が10A未満でなく(S205No)、負荷電流値が20A未満でなく(S206No)、電空レギュレータ120のモニタ圧が(C)圧未満でなく(S207No)、電空レギュレータ120のモニタ圧が0.015MPa以上であって(S208Yes)、(H)時間が経過した後に(S209Yes)、負荷電流値が(A)−(B)の値よりも小さくはなく、負荷電流値が(A)+(B)の値よりも大きくはない場合に、電空レギュレータ120の出力圧を保持する(S212)。ここで、上限圧力(D)は運転時の上限圧力であり、本実施形態では0.3MPaに設定している。(C)圧は運転開始前の初期圧力であり、本実施形態では0.3MPaに設定している。(A)は目標負荷電流値(負荷電流の目標値)であり、本実施形態では30Aに設定している。(B)は許容目標電流偏差(目標負荷電流値と検出負荷電流値との許容偏差)であり、本実施形態では1Aに設定している。(H)時間は制御間隔時間(制御圧力を変更する間隔の時間)であり、本実施形態では10秒に設定している。
【0053】
タンクである枝梗籾供給部87内の設定上限において籾が籾検出センサ103により検出されない場合は(S213No)、ステップ203に戻される。
【0054】
セレクトSW(スイッチ;図示せず)の「運転」がONされずに(S201No)、電空レギュレータ120の電源がONされない場合には(S214Yes)、電空レギュレータ120の出力圧を0.000MPaにする(S215)。そして、1秒経過後に(S216Yes)、電空レギュレータ120をOFFにする(S217)。
【0055】
制御部121にて負荷電流値が36A以上と判断された場合(S203Yes)や、制御部121にて電空レギュレータ120の出力圧が上限圧力(D)かつ負荷電流値が25A未満で60秒以上経過したと判断された場合には(S204Yes)、電空レギュレータ120の出力圧を1.5秒間だけ0.000MPaにする(S218)。
【0056】
制御部121にて負荷電流値が10A未満と判断された場合には(S205Yes)、電空レギュレータ120の出力圧を0.000MPaにする(S219)。
【0057】
制御部121にて負荷電流値が20A未満と判断された場合には(S206Yes)、電空レギュレータ120の出力圧を(C)圧にする(S220)。
【0058】
制御部121にて電空レギュレータ120のモニタ圧が(C)圧未満と判断された場合には(S207Yes)、電空レギュレータ120の出力圧を(C)圧にする(S221)。
【0059】
制御部121にて電空レギュレータ120のモニタ圧が0.015MPa以上であると判断された場合には(S208Yes)、電空レギュレータ120の電源をOFFにして「圧力低下」ランプ(図示せず)をONさせ(S222)、運転を終了させる。この場合、セレクタSW「停止」でリセットされる。
【0060】
制御部121にて負荷電流値が(A)−(B)の値よりも小さいと判断され(S210Yes)、負荷電流値/(A)>100+(E)%であると判断された場合には(S223Yes)、電空レギュレータ120の出力圧を(F)圧だけ増大させる(S224)。この際、負荷電流値/(A)>100+(E)%であると判断されない場合には(S223No)、電空レギュレータ120の出力圧を(G)圧だけ増大させる(S225)。ここで、(E)圧は圧力ステップ切替割合(検出負荷電流値が目標負荷電流値の何%かで圧力ステップを変更する)であり、本実施形態では10%に設定している。(F)圧は圧力ステップ1(検出負荷電流値が圧力ステップ切替割合未満時の圧力ステップ)であり、本実施形態では0.01MPaに設定している。(G)圧は圧力ステップ2(検出負荷電流値が圧力ステップ切替割合以上時の圧力ステップ)であり、本実施形態では0.02MPaに設定している。
【0061】
制御部121にて負荷電流値が(A)+(B)の値よりも大きいと判断され(S211Yes)、負荷電流値/(A)<100−(E)%であると判断された場合には(S226Yes)、電空レギュレータ120の出力圧を(F)圧だけ減少させる(S227)。この際、負荷電流値/(A)<100−(E)%であると判断されない場合には(S226No)、電空レギュレータ120の出力圧を(G)圧だけ減少させる(S228)。
【0062】
タンクである枝梗籾供給部87内の設定上限において籾が籾検出センサ103により検出された場合は(S213Yes)、電空レギュレータ120の出力圧を(I)圧にする(S229)。ここで、(I)圧は、下限圧力(運転時の下限圧力)であり、本実施形態では0.1MPaに設定している。
【0063】
そして、制御部121にて負荷電流値が27A未満と判断された場合には(S230Yes)、ステップ203に戻される。
【0064】
このようにして、本実施形態では、目標負荷電流値が30Aに維持されるように電空レギュレータ120によりフィードバック制御している。
【符号の説明】
【0065】
80 脱芒機
83 処理胴
88 開閉圧力弁
89 放出口
100 電流値検出センサ
110 エアシリンダ
120 電空レギュレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撹拌兼移送手段を内蔵した処理胴の一側部から穀粒を供給して、処理胴の他側部に形成した放出口側に撹拌兼移送手段により穀粒を撹拌しながら移送させて、放出口を開閉自在に閉弁している開閉圧力弁を穀圧により開放することで処理胴内の穀粒を放出口から放出可能となした脱芒機において、
前記撹拌兼移送手段に作用する負荷として、撹拌兼移送手段を駆動する電動機の電流値を検出し、この検出電流値が予め設定した目標負荷電流値を維持するように開閉圧力弁をアクチュエータにより閉弁方向に押圧する圧力を制御するようにしたことを特徴とする脱芒機。
【請求項2】
前記開閉圧力弁を開閉作動させる前記アクチュエータとしてのエアシリンダに電空レギュレータを接続し、電空レギュレータに電動機の電流値検出手段を接続して、前記目標負荷電流値を維持するように電空レギュレータがエアシリンダにより開閉圧力弁を閉弁方向に押圧する圧力をフィードバック制御するようにしたことを特徴とする請求項1記載の脱芒機。
【請求項3】
請求項1又は2記載の脱芒機は、穀物処理設備の精選装置に設けたことを特徴とする脱芒機を備えた穀物処理設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−255280(P2011−255280A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−130398(P2010−130398)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】