説明

脳腫瘍を治療するための方法

本発明は、治療上有効な量のメタ亜ヒ酸ナトリウムを、単独で、または別の抗脳腫瘍薬と併用して、それを必要とする対象に投与することを含む、脳腫瘍を治療する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2009年9月18日に出願された米国仮出願第61/243,648号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、神経膠腫、髄芽細胞腫または髄膜腫などの脳腫瘍を治療するための方法を提供し、より特定的には、本発明は、脳腫瘍を予防、治療、縮小、または除去するための予防上および/もしくは治療上有効な量または投与計画のメタ亜ヒ酸ナトリウムを提供する。
【背景技術】
【0003】
血液脳関門(BBB)は、物質の脳内への侵入を密に制御する血管貫通透過性バリアである。体の他の部分で機能する毛細血管と異なり、脳を灌流する毛細血管には特別な内皮細胞が並んでおり、これらの内皮細胞は、開窓を有さず、内皮細胞の密着結合により封止されている。この密な内皮が、代謝バリアとともにBBBの基盤を構成すると考えられる物理的なバリアを設けている。
【0004】
BBBは、病原体(たとえば、ウイルス)および、全身血液供給の組成(たとえば、電解質レベル)の変化を含む、循環系の他の危険から脳を保護している。しかし、バリアは完全ではなく、バリアを通って自由に広がり得る小さな脂溶性(親油性)分子など、一定の物質を侵入させる。BBBは、脳機能に不可欠な、ブドウ糖およびアミノ酸などの必須の栄養分も侵入させる。これらの栄養分は、一般的に水溶性(親水性)であり、担体媒介輸送、受容体媒介経細胞輸送および吸収性媒介経細胞輸送など、BBBを越えるためのより複雑なメカニズムを必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
正常な状況下では保護性であるが、BBBは、薬剤および他の治療分子の脳への送達を妨害する。BBBは、中枢神経系(CNS)薬剤の98%超の送達を阻止することが報告されている(Pardridge, W J. "Nature Rev.: Drug Discovery" 2002 1:131-139)。BBBにより提起される薬物送達の課題は、特に、人口の高齢化、また、脳卒中、アルツハイマー病、およびパーキンソン病などの神経変性疾患の罹患率が増加するにつれて、抗しがたくなっている。この問題は特に、体の他の部分の腫瘍を治療するのには有効な抗癌剤から利益を得ることのできない、悪性脳腫瘍を患う患者にとっては切実である。したがって、血液脳関門を越えて、脳腫瘍を効果的に治療し得る抗癌剤の顕著な必要性が、当該技術分野において残されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に従うと、脳腫瘍の治療は、治療上有効な量のメタ亜ヒ酸ナトリウム(NaAsO)を、単独で、または他の抗癌薬もしくは治療法と併用して、それを必要とする対象に投与することにより達成される。抗癌薬の他の非限定的な例は、アルキル化剤、抗葉酸剤およびトポイソメラーゼ、ならびに適宜、化学感作剤を含む。
【0007】
本発明の一局面においては、本発明は、治療上有効な量のメタ亜ヒ酸ナトリウムを、それを必要とする対象に投与することを含む、脳腫瘍を治療する方法に関する。本発明のこの局面に関する一実施形態においては、脳腫瘍は神経膠腫である。別の関連る実施形態においては、メタ亜ヒ酸ナトリウムは経口投与または注射により投与される。さらに別の関連する実施形態においては、メタ亜ヒ酸ナトリウムは、1日当たり1回以上、0.001mg〜20mg/kgの単位用量で投与され、ある実施形態においては、1日当たり0.5mg/Kgの用量で投与される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1A】メタ亜ヒ酸ナトリウムのインビボでの膠芽腫細胞生存率に対する効果を示すグラフである。(A)U−87MG細胞。値は平均±S.D.として表わされる。
【図1B】メタ亜ヒ酸ナトリウムのインビボでの膠芽腫細胞生存率に対する効果を示すグラフである。(B)U373細胞。値は平均±S.D.として表わされる。
【図1C】メタ亜ヒ酸ナトリウムのインビボでの膠芽腫細胞生存率に対する効果を示すグラフである。(C)T98G細胞。値は平均±S.D.として表わされる。
【図1D】メタ亜ヒ酸ナトリウムのインビボでの膠芽腫細胞生存率に対する効果を示すグラフである。(D)U138細胞。値は平均±S.D.として表わされる。
【図2A】メタ亜ヒ酸ナトリウムの膠芽腫細胞生存率に対する効果を示すグラフである。(A)U−87MG。値は平均±S.D.として表わされる。
【図2B】メタ亜ヒ酸ナトリウムの膠芽腫細胞生存率に対する効果を示すグラフである。(B)U373。値は平均±S.D.として表わされる。
【図2C】メタ亜ヒ酸ナトリウムの膠芽腫細胞生存率に対する効果を示すグラフである。(C)T98G。値は平均±S.D.として表わされる。
【図2D】メタ亜ヒ酸ナトリウムの膠芽腫細胞生存率に対する効果を示すグラフである。(D)U138。値は平均±S.D.として表わされる。
【図3A】コントロール群とメタ亜ヒ酸ナトリウム治療群との腫瘍体積の比較を示す図である。(A)MRI画像。
【図3B】コントロール群とメタ亜ヒ酸ナトリウム治療群との腫瘍体積の比較を示す図である。(B)腫瘍塊体積(値は平均±S.D.として表わされる)。
【図3C】コントロール群とメタ亜ヒ酸ナトリウム治療群との腫瘍体積の比較を示す図である。(C)体重。
【図4A】コントロール群とメタ亜ヒ酸ナトリウム治療群との腫瘍体積の比較を示す図である。(A)腫瘍塊体積(値は平均±S.D.として表わされる)。
【図4B】コントロール群とメタ亜ヒ酸ナトリウム治療群との腫瘍体積の比較を示す図である。(B)AST、ALT活性。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、脳腫瘍を縮小または除去する治療上有効な量のメタ亜ヒ酸ナトリウム(SMA)を、それを必要とする対象に投与することを含む、脳腫瘍を予防、治療、および/または管理するための方法を提供する。
【0010】
この発明の一部は、前立腺癌の第I/II相臨床試験における薬剤であるメタ亜ヒ酸ナトリウムが、血液脳関門を容易に越えることができるという発見に基づく。また、インビトロおよびインビボの研究の両方において、メタ亜ヒ酸ナトリウムが、マウスおよびヒトにおける脳腫瘍細胞および脳腫瘍に対して悪い影響を及ぼし得ることもわかった。したがって、脳腫瘍の治療に有効なほとんどの薬剤が血液脳関門を浸透しないため、通常、脳腫瘍を治療するために化学療法剤とともに用いられる浸透性血液脳関門破壊を、脳腫瘍を治療するためにメタ亜ヒ酸ナトリウムを使用すれば、用いる必要がなくなる。
【0011】
メタ亜ヒ酸ナトリウムは、他の薬に対して耐性のある脳腫瘍に対して有効な治療であることもわかった。
【0012】
定義
ここで用いられる「脳腫瘍」という用語は、悪性または良性の、すべての新生細胞の成長および増殖を指し、さらに、すべての前癌性および癌性細胞ならびに脳の組織を指す。
【0013】
ここで用いられる「治療上有効な量」という用語は、脳腫瘍もしくはその症状の進行、再発、または発症を予防し、別の脳腫瘍療法の予防効果を向上または改善し、脳腫瘍の重症度および継続期間を減少させ、脳腫瘍の1つ以上の症状を緩和させ、脳腫瘍の進行を防止し、脳腫瘍の回復をもたらし、および/または脳腫瘍の別の療法の治療効果を向上または改善するのに十分なメタ亜ヒ酸ナトリウムの量を指す。本発明のある実施形態においては、メタ亜ヒ酸ナトリウムの治療上有効な量は、一旦投与されると、次の結果のうち1、2または3つ以上を達成するのに有効な量である。(1)脳腫瘍の縮小または除去、(2)脳腫瘍の成長の減少、(3)脳腫瘍の形成の障害、(4)原発性、限局性および/または転移性の脳癌の根絶、切除、または制御、(5)脳腫瘍を患う対象の無疾患、無再発、無進行、および/または全生存の増加、(6)反応率、反応の継続期間、または、反応するかもしくは寛解状態にある脳腫瘍患者の数の増加、(7)脳腫瘍のサイズが維持され、増加しないか、または10%未満、5%未満、4%未満、もしくは2%未満だけ増加する、(8)寛解状態にある脳腫瘍患者の数の増加、(9)寛解状態の長さまたは継続期間の延長、(10)脳腫瘍の再発率の低下、(11)脳腫瘍の再発までの時間の延長、および(12)脳腫瘍に関する症状および/またはクオリティーオブライフの緩和。
【0014】
ここで用いられる「治療上有効な投与計画」という用語は、脳腫瘍もしくはその症状の治療および/または管理のためのメタ亜ヒ酸ナトリウムの投与の量、タイミング、頻度、および継続期間についての投与計画を指す。特定の実施形態においては、投与計画は、次の結果の1、2、または3つ以上を達成する。(1)脳腫瘍の縮小または除去、(2)脳腫瘍の成長の減少、(3)脳腫瘍の形成の障害、(4)原発性、限局性および/または転移性脳癌の根絶、切除、または制御、(5)脳腫瘍を患う対象の無疾患、無再発、無進行、および/または全生存の増加、(6)反応率、反応の継続期間、または、反応するかもしくは寛解状態にある脳腫瘍患者の数の増加、(7)脳腫瘍のサイズが維持され、増加しないか、または10%未満、5%未満、4%未満、もしくは2%未満だけ増加する、(8)寛解状態にある脳腫瘍患者の数の増加、(9)寛解状態の長さまたは継続期間の延長、(10)脳腫瘍の再発率の低下、(11)脳腫瘍の再発までの時間の延長、および(12)脳腫瘍に関する症状および/またはクオリティーオブライフの緩和。
【0015】
ここで用いられる「対象」および「患者」という用語は、交換可能に用いられる。ここで用いられる「対象」という用語は、動物、好ましくは、非霊長類(たとえば、ウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ラットなど)および霊長類(たとえば、サルおよびヒト)などの哺乳類を指し、最も好ましくは、ヒトを指す。いくつかの実施形態においては、対象は、家畜(たとえば、ウマ、ブタ、またはウシなど)およびペット(たとえば、イヌまたはネコ)などの非ヒト動物である。特定の実施形態においては、対象は、たとえば、少なくとも70歳の高齢のヒトである。別の実施形態においては、対象は、21歳以上のヒトの成人である。別の実施形態においては、対象はヒトの子供である。さらに別の実施形態においては、対象はヒトの幼児である。
【0016】
1.脳腫瘍
本方法は、膠芽腫などの脳腫瘍の治療に適用可能である。一般的に、脳腫瘍治療の目標は、たとえば、手術により、できるだけ多くの腫瘍細胞を切除すること、手術後に残された細胞を、放射線および/または化学療法によりできるだけ多く死滅させること、さらに、残存する腫瘍細胞を、放射線および化学療法により、できるだけ長い間非分裂性、静止状態、非浸潤性の状態にすることである。画像によるサーベイランスを念入りに行うことは、医療の大変重要な部分である。なぜなら、腫瘍が再成長すると、現在の治療の変更、または、観察段階にある患者の場合、治療の再出発が必要となるためである。
【0017】
脳腫瘍は、その腫瘍が由来すると考えられる細胞の種類に従って分類される。びまん性線維性星状細胞腫は、成人における原発性脳腫瘍の最も一般的な型である。これらの腫瘍は、組織病理学的に、世界保健機構(WHO)グレードII星状細胞腫、WHOグレードIII未分化星状細胞腫およびWHOグレードIV多形性膠芽腫(GBM)の3つの悪性のグレードに分けられる。WHOグレードII星状細胞腫は、びまん性星状細胞腫スペクトルのうち最も無痛性である。星状細胞腫は、周囲の脳に浸潤する傾向を著しく示し、局所制御での治療の試みが妨げられる。これらの浸潤能力は、高グレード腫瘍と同様に、低グレード腫瘍においてもしばしば見られる。
【0018】
多形性膠芽腫は、星状細胞腫のうち最も悪性の段階であり、ほとんどの患者の生存期間は2年未満である。組織学的に、これらの腫瘍は、高密度の細胞充実性、高い増殖指数、内皮増殖および巣状壊死により特徴付けられる。これらの病巣の高い増殖性は、複数の分裂促進効果から生じる可能性が高い。GBMの証の1つは、内皮細胞増殖である。
【0019】
星状細胞腫には生物学的サブセットがあり、生物学的サブセットは、これらの腫瘍に見られる臨床的不均一を反映し得る。これらのサブセットは、しばしば悪性腫瘍の道を辿る、小児科のびまん性線維性星状細胞腫の形態である脳幹部神経膠腫を含む。脳幹部GBMは、より若い患者を侵す成人GBMと遺伝的特徴を共有する。多形黄色星状細胞腫(PXA)は、主に若年成人層を侵す、表在性の低グレード星状細胞腫瘍である。これらの腫瘍は、奇異な組織学上外観を有し、典型的には、外科的治療に適用し得る成長の遅い腫瘍である。しかし、PXAには、GBMとして再発する可能性のあるものもある。毛様細胞性星状細胞腫は、幼年期に最も多い星状細胞腫瘍であり、成人を侵すびまん性線維性星状細胞腫とは、臨床的にも組織病理学的にも異なる。毛様細胞性星状細胞腫は、びまん性線維性星状細胞腫と同じゲノム変化を有さない。上衣下巨細胞星状細胞腫(SEGA)は、通常、結節硬化症(TS)と関連付けられる、脳室周囲の低グレード星状細胞腫瘍であり、組織学的には、TS患者の脳室に並ぶ、いわゆる「ロウ垂れ(candle-gutterings)」と同一である。TSにおける他の腫瘍状病巣と同様に、これらは成長が遅く、真正の新生物よりも過誤腫の方に類似し得る。乳児の線維形成性大脳星状細胞腫(DCAI)および線維形成性乳児神経節膠腫(DIGG)は、生後1年または2年目の子供を侵す、大きく、表在性で、通常は嚢胞性の良性星状細胞腫である。
【0020】
乏突起細胞腫および乏突起星状細胞腫(混合神経膠腫)は、びまん性線維性星状細胞腫と、臨床的にも生物学的にも最も密接に関連する、びまん性の、通常は脳腫瘍である。しかし、これらの腫瘍は、星状細胞腫よりもずっと珍しく、一般的に、びまん性星状細胞腫よりも良い予後を有する。乏突起細胞腫および乏突起星状細胞腫は、WHOグレードIII未分化乏突起細胞腫もしくは未分化乏突起星状細胞腫のいずれか、またはWHOグレードIV GBMに進行する可能性がある。したがって、乏突起細胞腫を引起す遺伝子的変化は、GBMへのさらに別の経路を構築する。
【0021】
上衣腫は、子供における侵襲性の脳室内腫瘍から成人における良性の脊髄腫瘍まである、神経膠腫の臨床的に多様な群である。上衣腫のGBMへの遷移は稀である。脈絡叢腫瘍も、子供における侵襲性のテント上方の脳室内腫瘍から、成人における良性の小脳橋角腫瘍まである、脳室系に優先的に生じるさまざまな腫瘍の群である。脈絡叢腫瘍は、リー・フラウメニ症候群およびフォンヒッペル・リンダウ(VHL)病を患う患者に時々報告されている。
【0022】
髄芽細胞腫は、主に子供において、後頭蓋窩に生じる非常に悪性の原始腫瘍である。髄膜腫は、髄膜に生じる一般的な頭蓋内腫瘍であり、膜下の脳を圧迫する。髄膜腫は通常良性であるが、一部の「非定型」髄膜腫は、局所的に再発する可能性があり、一部の髄膜腫は端的に悪性であり、脳に浸潤したり転移する可能性がある。非定型および悪性髄膜腫は、良性髄膜腫ほど一般的ではない。シュヴァン鞘腫は、末梢神経に生じる良性腫瘍である。シュヴァン鞘腫は、脳神経、特に、それらが小脳橋角塊として現われる第8脳神経の前庭部分(前庭シュヴァン鞘腫、聴神経鞘腫)に生じ得る。血管芽細胞腫は、内皮細胞、周皮細胞および、いわゆる間質細胞からなる原因不明の腫瘍である。これらの良性腫瘍は、若年成人層の小脳および脊髄に最も頻繁に起きる。多血管芽細胞腫(multiple hemangioblastomas)は、フォンヒッペル・リンダウ病(VHL)に特徴的である。血管周囲細胞腫(HPCs)は、局所的に侵襲性の挙動を示し得、転移し得る硬膜腫瘍である。硬膜系の血管周囲細胞腫(HPC)の組織形成は長い間議論されているが、特異なものとして分類する著者もいれば、髄膜腫のサブタイプとして分類する著者もいる。
【0023】
原発性および転移性脳腫瘍のいずれの症状も、主に、脳内の場所および腫瘍のサイズに依存する。脳の各領域には特定の機能の役割があるため、症状は大きく異なる。脳の前頭葉における腫瘍は、脱力感および麻痺、気分障害、思考困難、混乱および方向感覚障害(disorientation)、ならびに大きな感情のムラを引起し得る。頭頂葉の腫瘍は、発作、痺れまたは麻痺、字が書きにくい、単純な数学の問題を解けない、ある動作がしにくい、および触覚の喪失を引起し得る。後頭葉における腫瘍は、各眼の視野の半分の視力喪失、視覚的な幻覚、および発作を引起し得る。側頭葉の腫瘍は、発作、知覚障害および方向障害、ならびに受容失語症を引起し得る。小脳に腫瘍が起きると、その人は運動失調症、協調不能、頭痛、および嘔吐を有し得る。視床下部における腫瘍は、感情的変化、および暑さや寒さの知覚の変化を引起し得る。さらに、視床下部の腫瘍は、子供の成長および栄養に影響を及ぼし得る。小脳を例外として、脳の一方側の腫瘍は、体の反対側に症状および障害を引起す。
【0024】
2.メタ亜ヒ酸ナトリウムの予防的および治療的使用
本発明は、予防上もしくは治療上有効な量または投与計画のメタ亜ヒ酸ナトリウムを、それを必要とする対象に投与することを含み、その量または投与計画によって、脳腫瘍のサイズの少なくともおよそ5%の縮小が得られる、脳腫瘍を予防、治療、および/または管理するための方法を提供する。ある実施形態においては、脳腫瘍のサイズの縮小は、周期的に監視される。したがって、特定の実施形態においては、本発明は、対象における脳腫瘍を予防、治療および/または管理する方法であって、(a)有効量のメタ亜ヒ酸ナトリウムの1回以上の用量を、それを必要とする対象に投与することと、(b)ある回数の用量の投与の前、間、および/または後、さらに次の用量の投与の前に、対象における脳腫瘍を監視することと、(c)必要に応じて工程(a)を繰返すことによって、対象における脳腫瘍のサイズの少なくとも5%の縮小を検出することとを含む、方法を提供する。
【0025】
ある実施形態においては、その量または投与計画のメタ亜ヒ酸ナトリウムによって、脳腫瘍のサイズの少なくとも5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%または99%の縮小が得られる。たとえば、いくつかの実施形態においては、その量または投与計画のメタ亜ヒ酸ナトリウムによって、脳のサイズの少なくともおよそ5%〜99%、5%〜80%、5〜40%、10%〜99%、10〜80%、10〜60%、10%〜40%、20〜99%、20%〜80%、20%〜60%、20%〜40%、50%〜98%、50%〜80%、または60%〜99%の縮小が得られる。
【0026】
他の実施形態においては、その量または投与計画のメタ亜ヒ酸ナトリウムによって、脳腫瘍のサイズの少なくとも1.1倍、1.2倍、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、25倍、50倍、75倍、100倍、200倍または1000倍の縮小が得られる。いくつかの実施形態においては、脳腫瘍のサイズの縮小は、投与計画の投与の2週間後、1ヶ月後、2ヶ月後、3ヶ月後、4ヶ月後、6ヶ月後、9ヶ月後、1年後、2年後、3年後、または4年後に得られる。
【0027】
いくつかの実施形態においては、その量または投与計画のメタ亜ヒ酸ナトリウムによって、バルク脳腫瘍サイズの縮小と同様に、脳癌細胞の減少も得られる。ある実施形態においては、バルク脳腫瘍サイズの縮小および脳癌細胞の減少は、周期的に監視される。したがって、一実施形態においては、本発明は、対象における脳腫瘍を予防、治療および/または管理する方法であって、(a)有効量のメタ亜ヒ酸ナトリウムの1回以上の用量を、それを必要とする対象に投与することと、(b)ある回数の用量の投与の前、間、および/または後、さらに次の用量の投与の前に、対象における脳細胞およびバルク脳腫瘍サイズを監視することと、(c)必要に応じて工程(a)を繰返すことによって、対象における脳癌細胞の量および/またはバルク脳腫瘍サイズの少なくとも5%の減少を検出することとを含む、方法を提供する。
【0028】
ある実施形態においては、その量または投与計画のメタ亜ヒ酸ナトリウムによって、脳癌細胞およびバルク脳腫瘍サイズの少なくともおよそ5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、90%、95%、98%または99%の減少が得られる。たとえば、いくつかの実施形態においては、投与計画によって、脳癌細胞およびバルク脳腫瘍サイズのおよそ2%〜98%、5%〜80%、5〜40%、10%〜99%、10〜80%、10〜60%、10%〜40%、20〜99%、20%〜80%、20%〜60%、20%〜40%、50%〜99%、50%〜80%、または60%〜99%の減少が得られる。他の特定の実施形態においては、投与計画によって、脳癌細胞の量および/またはバルク脳腫瘍のサイズの少なくとも1.1倍、1.2倍、1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、4倍、5倍、10倍、20倍、25倍、50倍、75倍、100倍、200倍または1000倍の減少が得られる。いくつかの実施形態においては、脳癌細胞の減少およびバルク脳腫瘍サイズの縮小は、投与計画の投与の2週間後、1ヶ月後、2ヶ月後、3ヶ月後、4ヶ月後、6ヶ月後、9ヶ月後、1年後、2年後、3年後、4年後、5年後、または10年後に得られる。
【0029】
腫瘍のバルクサイズを評価するには、多くの既知の方法を用いることができる。このような方法の非限定的な例は、画像法(たとえば、コンピューター断層撮影(CT)、磁気共鳴画像法(MRI)、超音波、X線像、PETスキャン、放射性核種スキャン、骨スキャンなど)、視覚的方法(たとえば、脳手術など)、血液またはバイオプシー試験(たとえば、EGFRvIIIの検出など、膠芽腫細胞はしばしばこの突然変異を含む)、組織病理診断、細胞診断、およびフローサイトメトリーを含む。
【0030】
いくつかの実施形態においては、バルク腫瘍サイズは、画像法から求められる腫瘍病巣のサイズに基づく評価により測定することができる。特定の実施形態においては、評価は、Therasse,P.ら、"New Guidelines to Evaluate the Response to Treatment in Solid Tumors," J. of the Nat. Canc. Inst. 92(3), 205-216 (2000)に記載される、Response Evaluation Criteria In Solid Tumors (RECIST) Guidelinesに従って行なわれる。たとえば、特定の実施形態においては、バルク腫瘍サイズを表わす対象の病巣は、従来の画像技術を用いる場合(たとえば、従来のCTスキャン、PETスキャン、骨スキャン、MRIまたはX線)、ベースライン(治療前)でその最長直径が少なくとも≧20mmとなるように選択され、スパイラルCTスキャニングを用いる場合、ベースラインでその最長直径が少なくとも≧10mmの病巣となるように選択される。
【0031】
本発明は、治療上もしくは予防上有効な量または投与計画のメタ亜ヒ酸ナトリウムを、それを必要とする対象に投与することを含み、対象にメタ亜ヒ酸ナトリウムを、最大耐用量(MTD)と同等もしくはそれ未満の用量で、または無毒性量(NOAEL)と同等もしくはそれ未満の用量で投与することを含む、脳腫瘍を予防、縮小、治療、または除去する方法を提供する。メタ亜ヒ酸ナトリウムのMTDは、典型的には、第I相用量増加試験の結果に基づく。
【0032】
動物実験で求められるようなNOAELは、ヒト診療試験用の最大推奨開始用量を求めるためにしばしば用いられる。NOAELは、ヒト等価投与量(HED)を求めるために外挿できる。典型的には、種間のこのような外挿は、体表面積(すなわち、mg/m)に標準化された用量に基づいて行なわれる。特定の実施形態においては、NOAELは、マウス、ハムスター、ラット、フェレット、モルモット、ウサギ、イヌ、霊長類、霊長類(サル、マーモセット、リスザル、ヒヒ)、マイクロブタおよびミニブタのいずれかにおいて求められる。ヒト等価用量を求めるためのNOAELの使用およびそれらの外挿に関する考察については、Guidance for Industry Estimating the Maximum Safe Starting Dose in Initial Clinical Trials for Therapeutics in Adult Healthy Volunteers, U.S. Department of Health and Human Services Food and Drug Administration Center for Drug Evaluation and Research (CDER), Pharmacology and Toxicology, July 2005を参照。したがって、ある実施形態においては、投与計画は、HED未満の用量での療法を投与することを含む。たとえば、本発明は、予防上もしくは治療上有効な量または投与計画のメタ亜ヒ酸ナトリウムを、それを必要とする対象に投与することを含み、HEDと同等またはそれ未満の用量でメタ亜ヒ酸ナトリウムを対象に投与することを含む、寛解状態の対象における脳腫瘍の再発を予防する方法を提供する。
【0033】
3.標的集団
本発明に従うと、上記のように、予防上および/もしくは治療上有効な量または投与計画のメタ亜ヒ酸ナトリウムが、脳腫瘍を患っているかまたは発病するリスクのある対象に投与される。リスクのある対象は、特定の型の脳腫瘍に対して遺伝的素因を有する患者であってもよい。一実施形態においては、治療上有効な量または投与計画のメタ亜ヒ酸ナトリウムが、脳腫瘍または新生物を切除するための手術を受けているか、または受けた対象に投与される。特定の実施形態においては、治療上有効な量または投与計画のメタ亜ヒ酸ナトリウムは、脳腫瘍または新生物を切除するための手術と同時にまたはその後、対象に投与される。別の実施形態においては、治療上有効な量または投与計画のメタ亜ヒ酸ナトリウムは、脳腫瘍または新生物を切除するための手術の前に対象に投与され、いくつかの実施形態においては、メタ亜ヒ酸ナトリウムは、手術の間および/または後に投与される。
【0034】
特定の実施形態においては、治療上有効な量または投与計画のメタ亜ヒ酸ナトリウムは、放射線療法を受ける予定であるか、受けているか、または受けた対象に投与される。このような対象には、化学療法を受けた対象、ホルモン療法を受けた対象、および/または免疫療法を含む生物学的療法を受けた対象、ならびに手術を受けた対象が含まれる。または、投与計画のメタ亜ヒ酸ナトリウムは、患者が非ヒ素系薬剤による化学療法を受けているか、または放射線療法を受けている期間の前、または同じ期間中に、患者に投与されてもよい。
【0035】
ある実施形態においては、治療上有効な量または投与計画のメタ亜ヒ酸ナトリウムは、1つ以上の脳腫瘍療法に失敗したかまたはそれに対して屈折性(refractory)である主体に投与される。一実施形態においては、脳腫瘍が療法に屈折性であるということは、脳癌細胞の少なくとも一部の有意な部分が死滅していないか、または癌細胞区分が停止していることを意味する。脳癌細胞が屈折性であるか否かの判断は、このような文脈において、「屈折性」の当該技術分野で受入れられている意味を用いて、癌細胞に対する療法の効果を検定するための当該技術分野で既知の任意の方法によって、インビボまたはインビトロのいずれでも行なうことができる。
【0036】
4.メタ亜ヒ酸ナトリウムの投与量および投与頻度
一実施形態においては、対象における脳腫瘍を予防、治療、除去、および/または管理するために対象に投与されるメタ亜ヒ酸ナトリウムの1日量は、患者の体重の500mg/kg以下、好ましくは、250mg/kg以下、100mg/kg以下、95mg/kg以下、90mg/kg以下、85mg/kg以下、80mg/kg以下、75mg/kg以下、70mg/kg以下、65mg/kg以下、60mg/kg以下、55mg/kg以下、50mg/kg以下、45mg/kg以下、40mg/kg以下、35mg/kg以下、30mg/kg以下、25mg/kg以下、20mg/kg以下、15mg/kg以下、10mg/kg以下、5mg/kg以下、2.5mg/kg以下、2mg/kg以下、1.5mg/kg以下、または1mg/kg以下である。1日量は、その日を通して1回または複数回で投与することができる。
【0037】
別の実施形態においては、対象における脳腫瘍を予防、治療、除去、および/または管理するために対象に投与されるメタ亜ヒ酸ナトリウムの1日量は、0.001mg〜20mg、0.01mg〜15mg、0.1mg〜12mg、0.1mg〜10mg、0.1mg〜8mg、0.1mg〜7mg、0.1mg〜5mg、0.1〜2.5mg、0.25mg〜20mg、0.25〜15mg、0.25〜12mg、0.25〜10mg、0.25〜8mg、0.25mg〜7mg、0.25mg〜5mg、0.5mg〜2.5mg、1mg〜20mg、1mg〜15mg、1mg〜12mg、1mg〜10mg、1mg〜8mg、1mg〜7mg、1mg〜5mg、または1mg〜2.5mgの単位用量である。ある実施形態においては、患者に投与されるメタ亜ヒ酸ナトリウムの1日量は、約2.5〜15mg/日である。1日量は、患者の全体的な健康状態、反応を考慮して、治療期間中、増やしても減らしてもよい。
【0038】
ある実施形態においては、対象における脳腫瘍を予防、治療、除去、および/または管理するために対象に投与されるメタ亜ヒ酸ナトリウムの1日量は、患者の体重の0.01〜10g/mの範囲内であり、より典型的には、0.1g/mm〜7.5g/mである。一実施形態においては、対象に投与される投与量は、対象の体の表面積の0.5g/m〜5g/m、または1g/m〜5g/mの範囲である。
【0039】
本発明のある実施形態においては、1日量のメタ亜ヒ酸ナトリウムは、連続3日〜21日間など、連日で患者に投与されるが、治療の全日数は、患者によって異なり得る。他の実施形態においては、メタ亜ヒ酸ナトリウムは、たとえば3日間の期間投与された後、たとえば3日間の期間、患者はメタ亜ヒ酸ナトリウムにより治療されない。治療は、同じまたは異なる治療のパターンを用いて繰返してもよい。他の実施形態においては、患者は、メタ亜ヒ酸ナトリウムが投与されない期間中、放射線療法または化学療法などの別の抗癌剤により治療されてもよく、そのような実施形態においては、患者は、必ずしも毎日治療を受けるわけではない。
【0040】
メタ亜ヒ酸ナトリウムによる治療は、脳腫瘍を縮小または除去するのに必要である限り実施されてもよい。治療は、たとえば3日だけでもよく、また、6ヶ月以上まで継続してもよい。たとえば、メタ亜ヒ酸ナトリウムによる治療は、3日連続などの3日間、さらに3ヶ月以上まで実施してもよいが、より長い期間中は、患者は必ずしも毎日治療を受ける必要はない。
【0041】
いくつかの実施形態においては、予防上および/もしくは治療上有効な量または投与形態のメタ亜ヒ酸ナトリウムは、放射線療法、化学療法剤、および/または化学感作剤を用いてなど、1つ以上の追加的な療法と併用して投与される。好ましくは、併用療法で用いられる1つ以上の追加的な療法の投与量は、癌を予防、治療、および/または管理するのに用いられたか、または現在用いられている投与量よりも低い。癌の予防、治療、および/または管理のために現在用いられている1つ以上の追加的な療法の推奨される投与量は、ここにその全体が引用により援用される、Hardman et al., eds., Goodman & Gilman's The Pharmacological Basis Of Basis Of Therapeutics, 10th ed, Mc-Graw-Hill, New York, 2001、およびPhysician's Desk Reference (60.sup.th ed., 2006)を含むが、これらに限定されない、当該技術分野の任意の参考文献から得ることができる。本発明の実施において用いられ得る典型的な化学療法剤は、たとえば、アルキル化剤、葉酸代謝拮抗剤およびトポイソメラーゼを含む。
【0042】
追加的な癌治療剤の例は、アシビシン、アクラルビシン、塩酸アコダゾール、アクロニン、アドゼレシン、アルデスロイキン、アルトレタミン、アンボマイシン、酢酸アメタントロン、アミノグルテチミド、アムサクリン、アナストロゾール、アントラサイクリン、アントラマイシン、アスパラギナーゼ、アスペルリン、アザシチジン(Vidaza)、アゼテパ、アゾトマイシン、バチマスタット、ベンゾデパ、ビカルタミド、塩酸ビサントレン、二メシル酸ビスナフィド、ビスフォスフォネート(たとえば、パミドロネート(アレディア)、クロドロン酸ナトリウム(Bonefos)、ゾレドロン酸(ゾメタ)、アレンドロネート(フォサマックス)、エチドロネート、イバンドロネート、シマドロネート、リセドロネート、およびチルドロネートなど)、ビゼレシン、硫酸ブレオマイシン、ブレキナールナトリウム、ブロピリミン、ブスルファン、カクチノマイシン、カルステロン、カラセミド、カルベチマー、カルボプラチン、カルマスティン、塩酸カルビシン、カルゼルシン、セデフィンゴール、クロラムブシル、シロレマイシン、シスプラチン、クラドリビン、メシル酸クリスナトール、シクロホスファミド、シタラビン(Ara−C)、ダカルバジン、ダクチノマイシン、塩酸ダウノルビシン、デシタビン(ダコジェン)、脱メチル化剤、デキソルマプラチン、デザグアニン、メシル酸デザグアニン、ジアジコン、ドセタキセル、ドキソルビシン、塩酸ドキソルビシン、ドロロキシフェン、クエン酸ドロロキシフェン、プロピオン酸ドロモスタノロン、デュアゾマイシン、エダトレキサート、塩酸エフロルニチン、EphA2インヒビター、エルサミトルシン、エンロプラチン、エンプロメート、エピプロピジン、塩酸エピルビシン、エルブロゾール、塩酸エソルビシン、エストラムスチン、エストラムスチンリン酸ナトリウム、エタニダゾール、エトポシド、リン酸エトポシド、エトプリン、塩酸ファドロゾール、ファザラビン、フェンレチニド、フロキシウリジン、リン酸フルダラビン、フルオロウラシル、フルロシタビン、ホスキドン、フォストリエシンナトリウム、ゲムシタビン、塩酸ゲムシタビン、ヒストンデアセチラーゼインヒビター(HDAC−Is)、ヒドロキシ尿素、塩酸イダルビシン、イホスファミド、イルモホシン、メシル酸イマチニブ(グリベック)、(組換えインターロイキンII、またはrIL2を含む)インターロイキンII、インターフェロンα−2a、インターフェロンα−2b、インターフェロンα−nl、インターフェロンα−n3、インターフェロンβ−Ia、インターフェロンγ−Ib、イプロプラチン、塩酸イリノテカン、酢酸ランレオチド、レナリドマイド(レブラミド)、レトロゾール、酢酸リュープロリド、塩酸リアロゾール、ロメトレキソールナトリウム、ロムスチン、塩酸ロソキサントロン、マソプロコール、メイタンシン、塩酸メクロレタミン、抗CD2抗体(たとえば、シプリズマブ(メドイミューン社の国際公開WO02/098370、その全体がここに引用により援用される))、酢酸メゲストロール、酢酸メレンゲストロール、メルファラン、メノガリル、メルカプトプリン、メトトレキセートナトリウム、メトプリン、メツレデパ、ミチンドミド、ミトカルシン、ミトクロミン、マイトジリン、ミトマルシン、マイトマイシン、ミトスパー、ミトタン、塩酸ミトキサントロン、ミコフェノール酸、ノコダゾール、ノガラマイシン、オルマプラチン、オキサリプラチン、オキシスラン、パクリタキセル、ペグアスパルガーゼ、ペリオマイシン、ペンタムスチン、硫酸ペプロマイシン、ペルホスファミド、ピポブロマン、ピポスルファン、塩酸ピロキサントロン、プリカマイシン、プロメスタン、ポルフィマーナトリウム、ポルフィロマイシン、プレドニムスチン、塩酸プロカルバジン、ピューロマイシン、塩酸ピューロマイシン、ピラゾフリン、リボプリン、ログレチミド、サフィンゴール、塩酸サフィンゴール、セムスチン、シムトラゼン、スパルフォセートナトリウム、スパルソマイシン、塩酸スピロゲルマニウム、スピロムスチン、スピロプラチン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、スロフェヌル、タリソマイシン、テコガランナトリウム、テガフール、塩酸テロキサントロン、テモポルフィン、テニポシド、テロキシロン、テストラクトン、チアミプリン、チオグアニン、チオテパ、チアゾフリン、チラパザミン、クエン酸トレミフェン、酢酸トレストロン、リン酸トリシリビン、トリメトレキサート、グルクロン酸トリメトレキサート、トリプトレリン、塩酸ツブロゾール、ウラシルマスタード、ウレデパ、バプレオチド、ベルテポルフィン、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンクリスチン、ビンデシン、硫酸ビンデシン、硫酸ビネジピン、硫酸ビングリシネート、硫酸ビンレウロシン、酒石酸ビノレルビン、硫酸ビンロシジン、硫酸ビンゾリジン、ボロゾール、ゼニプラチン、ジノスタチン、塩酸ゾルビシンを含むが、これらに限定されない。
【0043】
併用療法は周期的に投与することができ、たとえば、治療剤を1日目に投与した後、2日目に第2の治療剤を投与し、その後、投与しない期間の後、異なる連日数で治療剤を再投与する場合が、本発明に包含される。投与計画は、患者の主治医により、患者の全体的な健康状態、年齢、体重、治療に対する反応、および他の関連要因などの要因を考慮して判断される。
【0044】
メタ亜ヒ酸ナトリウムおよび1つ以上の追加的な療法は、別々に、同時に、または順番に投与することができる。薬剤の組合せは、同じまたは異なる投与経路により対象に投与してもよい。代替的な実施形態においては、2種類以上の予防剤または治療剤が単一の組成物で投与される。併用療法は周期的に投与することもでき、たとえば、治療剤または治療が1日目に投与された後、2日目に第2の治療剤が投与され、その後、投与しない期間の後、異なる連日数で治療剤を再投与する場合が、本発明に包含される。
【0045】
経口または静脈内投与用に製剤化したメタ亜ヒ酸ナトリウムの投与単位を含有するキットが、本発明により意図される。キットは、メタ亜ヒ酸ナトリウムを単独の抗脳腫瘍剤として含んでもよく、または、アルキル化剤、葉酸代謝拮抗剤およびトポイソメラーゼなど、特定の薬剤の送達のために適宜製剤化した脳腫瘍を治療するための他の薬剤、ならびに、必要に応じて化学感作剤も含有してもよい。キットは、1回または数回の治療用に、十分な量の治療剤を含有する。
【0046】
本明細書で言及したすべての刊行物、特許および特許出願は、個々の刊行物、特許または特許出願が、具体的に個別に、ここに引用により援用されるように指定されたのと同じ程度で、引用により本明細書中に援用される。本明細書中の参考文献の引用または考察は、それが本発明の先行技術であることを認めるとして解釈されるべきではない。
【0047】
5.メタ亜ヒ酸ナトリウムの医薬組成物および投与形態
本発明の医薬組成物および投与形態は、メタ亜ヒ酸ナトリウム、溶媒和物、水和物、立体異性体、クラスレート、またはそのプロドラッグを含む。本発明の医薬組成物および投与形態はさらに、1種類以上の賦形剤を含むことができる。
【0048】
本発明の医薬組成物および投与形態は、1種類以上の追加的な有効成分も含むことができる。その結果、本発明の医薬組成物および投与形態は、メタ亜ヒ酸ナトリウムおよび、オプションで第2の有効薬剤を含むことができる(上記の併用療法のように)。
【0049】
本発明の単一の単位投与形態は、対象への経口および非経口(たとえば、皮下、静脈内、ボーラス注入、筋肉内、または動脈内)投与、経皮膚的または経皮的投与に好適である。投与形態の例は、錠剤、カプレット、軟質弾性ゼラチンカプセル剤などのカプセル剤、カシェ剤、トローチ、ロゼンジ、分散液、坐剤、散剤、エアロゾル(たとえば、鼻内噴霧または吸入器)、ゲル剤、懸濁液(たとえば、水性もしくは非水性液体懸濁液、水中油型乳剤、または油中水型乳剤)、溶液、およびエリキシル剤を含む、患者への経口または粘膜投与に好適な液体投与形態、患者への非経口投与に好適な液体投与形態、および、対象への非経口投与に好適な液体投与形態を与えるように再構成され得る無菌固体(たとえば、結晶性または非晶質固体)を含むが、これらに限定されない。
【0050】
本発明の投与形態の組成物、形状、および型は、典型的には、それらの用途に依存して異なる。たとえば、侵襲性脳腫瘍の治療で用いられる投与形態は、より侵襲性の低い脳腫瘍の治療で用いられる投与形態が含むよりも、より多くの量のメタ亜ヒ酸ナトリウムおよび、オプションで1種類以上の他の有効成分を含有してもよい。同様に、非経口投与形態は、同じ疾患を治療するために用いられる経口投与形態が含むよりも、より少ない量のメタ亜ヒ酸ナトリウムおよび、1種類以上の他の有効成分をオプションで含有してもよい。この発明により包含される特定の投与形態が、これらおよび他の点で互いに異なることは、当業者には容易にわかるであろう。たとえば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th ed., Mack Publishing, Easton Pa. (1990)を参照。
【0051】
メタ亜ヒ酸ナトリウムの典型的な医薬組成物および投与形態は、1種類以上の賦形剤を含む。好適な賦形剤は、薬学分野の当業者には周知であり、好適な賦形剤の非限定的な例をここに示す。特定の賦形剤が医薬組成物または投与形態に組み込むのに好適であるかどうかは、患者への投与形態の投与の仕方を含むが、これに限定されない、当該技術分野で周知のさまざまな要因に依存する。たとえば、錠剤などの経口投与形態は、非経口投与形態に用いるのに好適ではない賦形剤を含有してもよい。特定の賦形剤の適性は、投与形態中の特定の有効成分にも依存する。
【0052】
本発明の組成物は、当該技術分野で周知であり、たとえば、U.S. Pharmacopeia (USP) 25-NF20 (2002)に列挙される賦形剤を含むことができる。一般的に、本発明の組成物は、1種類以上の有効成分、結合剤/増量剤、および滑沢剤を、医薬上適合性があり、医薬上許容される量で含む。ある実施形態においては、投与形態は、メタ亜ヒ酸ナトリウムならびに、オプションで、1種類以上の他の有効成分、微結晶性セルロース、α澱粉、およびステアリン酸マグネシウムを含む。
【0053】
5.1 経口投与形態
経口投与に好適な本発明の医薬組成物は、錠剤(たとえば、チュアブル錠剤)、カプレット、カプセル剤、および液体(たとえば、矯味矯臭シロップ剤(flavored syrups)などの個別の投与形態として提示することができるが、これらに限定されない。このような投与形態は、所定量の有効成分を含有し、当業者に周知の薬学の方法により調製すればよい。一般的には、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th ed., Mack Publishing, Easton Pa. (1990)を参照。
【0054】
本発明の典型的な経口投与形態は、従来の医薬配合技術に従って、メタ亜ヒ酸ナトリウムを少なくとも1種類の賦形剤と緊密な混和物となるように組合せることにより調製される。賦形剤は、投与に望ましい調剤の形態に依存して、幅広い種類の形態を取り得る。たとえば、経口液体またはエアロゾル投与形態での使用に好適な賦形剤は、水、グリコール、油、アルコール、矯味矯臭剤(flavoring agent)、保存剤、および着色剤を含むが、これらに限定されない。固形経口投与形態(たとえば、散剤、錠剤、カプセル剤、およびカプレット)での使用に好適な賦形剤の例は、デンプン、砂糖、微晶質セルロース、希釈剤、顆粒化剤、滑沢剤、結合剤、および崩壊剤を含むが、これらに限定されない。
【0055】
その投与のしやすさから、錠剤およびカプセル剤が、最も有利な経口投与単位形態を代表し、この場合、固形賦形剤が使用される。所望により、錠剤は標準水性または非水性技術によりコーティングすることができる。このような投与形態は、薬学の如何なる方法により調製することもできる。一般的には、医薬組成物および投与形態は、有効成分を、液状キャリア、微細に割った固体キャリア、またはその両方と、均一に、緊密に混和し、その後、必要に応じて生成物を望ましい形状に形づくることにより調製される。
【0056】
たとえば、錠剤は圧縮または成形により調製することができる。圧縮錠剤は、オプションで賦形剤と混合した散剤または顆粒剤などの、自由流動形態の有効成分を好適な機械で圧縮することにより調製できる。成形錠剤は、不活性な液状希釈剤で湿らせた粉末化化合物の混合物を好適な機械で成形することにより作ることができる。
【0057】
本発明の経口投与形態に用いることのできる賦形剤の例は、結合剤、増量剤、崩壊剤、および滑沢剤を含むが、これらに限定されない。医薬組成物および投与形態での使用が好適な結合剤は、コーンスターチ、ジャガイモデンプン、または他のデンプン、ゼラチン、アラビアゴムなどの天然および合成ゴム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸、他のアルギン酸塩、トラガント末、グアーガム、セルロースおよびその誘導体(たとえば、エチルセルロース、酢酸セルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシルメチルセルロースナトリウム)、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、α澱粉、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(たとえば、2208、2906、2910番など)、微結晶性セルロース、ならびにこれらの混合物を含むが、これらに限定されない。
【0058】
微結晶性セルロースの好適な形態は、アビセル−PH−101、アビセル−PH−103、アビセル RC−581、アビセル−PH−105(ペンシルベニア州マーカスフック、FMC社、米国ビスコース部門、アビセル販売より入手可能)として販売される材料、ならびにこれらの混合物を含むが、これらに限定されない。特定の結合剤は、微結晶性セルロースとアビセル RC−581として販売されているカルボキシルメチルセルロースナトリウムとの混合物である。
【0059】
ここに開示される医薬組成物および投与形態での使用が好ましい増量剤の例は、タルク、炭酸カルシウム(たとえば、顆粒または粉末)、微結晶性セルロース、粉末セルロース、デキストレート、カオリン、マンニトール、ケイ酸、ソルビトール、デンプン、α澱粉、およびこれらの混合物を含むが、これらに限定されない。本発明の医薬組成物における結合剤または増量剤は、典型的には、医薬組成物または投与形態の約50〜約99重量%で存在する。
【0060】
5.2 非経口投与形態
非経口投与形態は、皮下、静脈内(ボーラス注入を含む)、筋肉内および動脈内を含むが、これらに限定されない、さまざまな経路により患者に投与することができる。その投与は、典型的には患者の異物に対する自然防御を経由することから、非経口投与形態は、好ましくは無菌であるか、または、患者に投与する前に殺菌することが可能である。非経口投与形態の例は、直ちに注射可能な溶液、注射用の医薬上許容されるビヒクル中に直ちに溶解または懸濁可能な乾燥製品、直ちに注射可能な懸濁液、および乳剤を含むが、これらに限定されない。
【0061】
本発明の非経口投与形態を提供するために使用できる好適なビヒクルは、当業者に周知である。例は、注射用水USP;水性ビヒクル、たとえば、以下に限定されないが、塩化ナトリウム注射剤、リンゲル注射剤、デキストロース注射剤、デキストロースおよび塩化ナトリウム注射剤、ならびに乳酸リンゲル注射剤など;水と混合可能なビヒクル、たとえば、以下に限定されないが、エチルアルコール、ポリエチレングリコール、およびポリプロピレングリコールなど;非水性ビヒクル、たとえば、以下に限定されないが、トウモロコシ油、綿実油、落花生油、胡麻油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、および安息香酸ベンジルなどを含むが、これらに限定されない。
【実施例】
【0062】
ここに記載の実施例において、下記の材料および方法を使用した。
ビヒクル:試験物であるメタ亜ヒ酸ナトリウムを、無菌水でPO投与用に製剤化し、生理食塩水でIV投与用に製剤化した。
【0063】
投与製剤および分析:メタ亜ヒ酸ナトリウムを投与のおよそ2〜3時間前に、MDSPSにより製剤化した。投与液は、経口投与用には、試験物を無菌水に1.0mg/mLの公称濃度が得られるように溶解/懸濁し、IV投与用には、試験物を生理食塩水に0.5mg/mLの公称濃度で溶解/懸濁することにより調製した。透明の溶液が得られた。メタ亜ヒ酸ナトリウムの製剤の情報を表2に列挙する。
【0064】
73匹(加えて、10匹のスペア)のオスCD−1(ICR)アルビノマウス(到着の際、およそ4週齢で18〜27g)をチャールズ・リバー(Charles River)カナダ社より入手した。受取った際に、各動物に対し健康検査を行なった。この検査は、異常な姿勢または動きの有無とともに、動物の外皮、四肢、および開口部の評価を含む。異常なしの検査後、動物に識別番号を割当てて、重量により無作為化し、治療群に振分けた(表3を参照)。動物を投与前に2時間絶食させ、投与の前、午前中に秤量した(21〜29g)。投与量の計算は、動物の最も最近の体重に基づいて行なった。すべての動物に、目標用量体積を10mL/kgとして、10mg/kgでPO投与し、5mg/kgでIV投与した。薬剤投与後、さらに、その後の連続的血液採取の間、動物を定期的に観察した。投与後、血液サンプル(0.2〜0.3mL)を、投与後5分、15分、30分、60分、120分、240分、480分、1440分、1920分、2880分、3360分および4320分に、イソフルラン麻酔下、大静脈経由で得た。各血液採取の後、動物を屠殺し、投与後5分、30分、60分、120分、240分、480分、1440分、2880分および4320分に脳を採取する。血液サンプルを、抗凝固剤としてK2−EDTAを含有する管内に移し、直ちに氷上に置いて遠心分離をした(冷却して3200gを10分)。血漿サンプルを事前にラベル付けした微量遠心管内に移した。微量遠心管をキャッピングし、凍結保存に移すまでドライアイス上に置いた。脳を採取して、適当にラベル付けした30mL管内に移し、氷上に置いて凍結保存した。すべての動物を屠殺し、最後のPKサンプルの採取後廃棄した。すべてのPKサンプル(血漿および脳)を凍結保存して、ICP−MSにより濃度評価した。
【0065】
実施例1
マウスにおけるメタ亜ヒ酸ナトリウムの血漿および脳薬物動態プロファイルの判断
分析:血漿および脳サンプル全体を、105℃のテフロンボンベ中で濃縮硝酸により消化した。消化物を40mLに希釈し、ICP−MSにより分析した。消化物を誘導結合プラズマへと吸引し、得られたイオンを真空インターフェイスにより四重極質量分析計へと抽出した。サンプル中のヒ素の量を、質量75での標準溶液の反応の比較により測定した。NRCC DOLT−3およびDORM−2を標準参考材料として分析した。
【0066】
薬物動態(PK)分析:薬剤濃度対時間のデータを分析して、非区画分析により以下のPKパラメータを作製した(表1)。
【0067】
【表1】

【0068】
試験中、臨床兆候は観察されなかった。理論的サンプル採取地点からの有意な時間偏差(2分より長い)は存在しなかった。生物学的マトリックスサンプル中のメタ亜ヒ酸ナトリウムの濃度を得た(生データは示さず)。簡潔には、PO(経口)経由で10mg/kgのメタ亜ヒ酸ナトリウムにより治療したID番号1001〜1036の動物の血漿中のメタ亜ヒ酸ナトリウムの濃度を測定し、IV(注射)経由で4mg/kgのメタ亜ヒ酸ナトリウムにより治療したID番号2001〜2037の動物の血漿中のメタ亜ヒ酸ナトリウムの濃度を測定し、PO経由で10mg/kgのメタ亜ヒ酸ナトリウムにより治療したID番号1001〜1036の動物の脳中のメタ亜ヒ酸ナトリウムの濃度を測定し、IV経由で5mg/kgのメタ亜ヒ酸ナトリウムにより治療したID番号2001〜2037の動物の脳中のメタ亜ヒ酸ナトリウムの濃度を測定した。メタ亜ヒ酸ナトリウム濃度の測定データを表4〜表7にまとめる。メタ亜ヒ酸ナトリウムの分析に関連する異常は観察されなかった。POおよびIV投与後に、薬物動態(PK)分析を完了した(表4〜7を参照)。
【0069】
【表2】

【0070】
【表3】

【0071】
【表4】

【0072】
【表5】

【0073】
【表6】

【0074】
【表7】

【0075】
結論:メタ亜ヒ酸ナトリウムの経口およびIV投与後、副作用は観察されなかった。公称サンプル採取出血時間から有意な偏差は生じなかった。研究サンプルの分析に関連する異常は観察されなかった。用いられたすべての濃度について薬物動態(PK)分析を完了した。
【0076】
実施例2
メタ亜ヒ酸ナトリウムの細胞生存率に対する効果
この研究の目的は、メタ亜ヒ酸濃度の細胞生存率に対する効果を研究することである。
【0077】
5mMメタ亜ヒ酸ナトリウムを1N NaOH(×1000超)に溶解することにより、メタ亜ヒ酸ナトリウムの原液を調製した。培養液を10%FBS添加DMEMにより調製した。用いた洗浄培地は、2%FBS添加DPBSであった。試験した細胞型は、ヒト癌細胞株(MDA−MB−231;(乳癌);u87MG(脳癌)であった。用いた他の試薬は、ヘキスト33342(ビスベンズイミド)、PI(ヨウ化プロピジウム)およびトリプシン−EDTAであった。
【0078】
凍結した細胞を37℃で解凍し、バイアル当たり2×10細胞をDPBSおよびDMEMで洗浄した。細胞を5ml DMEMを含有する25Tフラスコに播種し、3日間培養した。3日後、細胞をトリプシン−EDTAにより処置して、付着した細胞を回収した。2×10細胞を24ウェルプレートに播種した。2〜3日後、細胞は70〜80%の培養密度を示し、細胞をメタ亜ヒ酸ナトリウムにより、0.005、0.01、0.03、0.05、0.075、0.1μMの濃度当たり3ウェルで処置した。残りの6ウェルはコントロールであった。細胞を24時間メタ亜ヒ酸ナトリウムにより処置した。表8を参照。処置の24時間後、細胞をトリプシン−EDTAによりトリプシン化し、洗浄し、その後10μg/mlヘキスト33342(ビスベンズイミド)および10μg/mlプロピジウムにより染色し、蛍光顕微鏡下で生存率を調べた。蛍光顕微鏡下、ヘキスト33342で染色された青色細胞は、生細胞を示し、ヨウ化プロピジウムで染色された赤色細胞は、死細胞を示す。生存率は以下のように計算し、繰返した回数を計算することにより、平均±SDを計算した。
【0079】
生存率=ヘキスト染色細胞(青色)/ヘキスト+ヨウ化プロピジウム染色細胞(赤色)
※ヘキストは、生細胞および死細胞の両方の核への浸透性を有するが、ヨウ化プロピジウムは、死細胞の核にしか浸透できない。
【0080】
【表8】

【0081】
【表9】

【0082】
結論:インビトロの研究は、メタ亜ヒ酸ナトリウムが乳癌細胞(MDA−MB−231)および脳腫瘍細胞(u98MG)において受容性を示すことを示す。0.03〜0.05μMメタ亜ヒ酸ナトリウムでの乳癌細胞および0.03μMメタ亜ヒ酸ナトリウムでの脳腫瘍細胞は、LD50を示した。上記範囲のメタ亜ヒ酸ナトリウム濃度では、生存率に関して2つの細胞株間に有意差はなかったが、脳腫瘍細胞の方がより受容性を示した。表9を参照。
【0083】
実施例3
メタ亜ヒ酸ナトリウムの脳腫瘍に対する効果に関するヒト患者報告の概要
2.5mgメタ亜ヒ酸ナトリウム/丸剤で製剤化したメタ亜ヒ酸ナトリウムの経口投与形態により治療された脳腫瘍患者から、以下の情報が集められた。
【0084】
【表10】

【0085】
上記の事例に基づく情報は、メタ亜ヒ酸ナトリウムが原発性および続発性脳腫瘍に対する有効な治療であることをさらに証拠付ける。
【0086】
実施例4
メタ亜ヒ酸ナトリウムの膠芽腫細胞株におけるインビトロの細胞毒性効果
U−87 MG細胞、U373細胞、T98G(ヒト膠芽腫細胞)またはU373神経芽細胞腫細胞を、試験マウスの脳に頭蓋内注入し、その後、試験マウスをさまざまな量のメタ亜ヒ酸ナトリウムで治療した。治療の細胞毒性効果を、市販のCell Counting Kit-8(CCK−8、同仁化学研究所、日本)を用いて、またはMTT細胞増殖アッセイ(シグマ、米国)により、またはELISAリーダシステムにより、細胞をカウントすることにより評価した。
【0087】
【表11】

【0088】
【表12】

【0089】
【表13】

【0090】
2) 腫瘍塊の測定(ヘマトキシリンおよびエオジン染色)
腫瘍塊(mm)=腫瘍長さ(mm)×腫瘍幅(mm)×0.5
3) 血液生化学試験
アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)、アラニントランスアミナーゼ(ALT) シグマ診断キットUVIKON、コントロン社(Kontron Inc.)
結果:膠芽腫細胞株におけるメタ亜ヒ酸ナトリウムのインビトロの細胞毒性効果
メタ亜ヒ酸ナトリウムは、4種類のすべての神経芽細胞腫細胞株(U−87MG、U373、T98G、U373)において有意な抗癌効果を示す(コントロール群と比較して、***p<0.001)(図1A〜図1D)。
【0091】
メタ亜ヒ酸ナトリウムは、1、10、50、100μMで治療したときのU−87MG、U373、T98GおよびU373神経芽細胞腫細胞株において、用量依存性の抗癌効果を示した。
【0092】
メタ亜ヒ酸ナトリウムのU−87MG同所性膠芽腫モデルにおける有効性の研究
(1) メタ亜ヒ酸ナトリウムの原発性同所性脳腫瘍モデルIにおける有効性
いずれの治療も、肝酵素レベル、体重および致死性について、副作用を全く引起さなかった。コントロール群の腫瘍塊は、55.4±13.5mmであった。1.25mg/kg、2.5mg/kgおよび5mg/kgのメタ亜ヒ酸ナトリウムの投与は、腫瘍成長の28%(40.2±12.3mm)、35%(36.2±9.2mm)および60%(21.9±7.7mm)の阻害をそれぞれ引起した(図3A)。MRI画像法は、5mg/kgのメタ亜ヒ酸ナトリウムにより治療した群において、腫瘍塊の縮小を示した(図3B)。群の間で体重の有意差はなかった(図3C)。
【0093】
(2) メタ亜ヒ酸ナトリウムの原発性同所性脳腫瘍モデルIIにおける有効性
コントロール群の腫瘍塊は30.0±3.6mmであった。2.5mg/kgおよび5mg/kgのメタ亜ヒ酸ナトリウムの投与は、腫瘍成長の45%(16.7±7.9mm)および46%(16.3±3.0mm)の阻害をそれぞれ引起した。10mg/kgのメタ亜ヒ酸ナトリウムの投与は、抗癌効果を示さなかった(図4A)。群の間で血清ALTおよびASTの有意差はなかった(図4B)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタ亜ヒ酸ナトリウムがヒト血液脳関門を越える、ヒト患者における脳腫瘍の治療のための医薬組成物を製造するためのメタ亜ヒ酸ナトリウムの使用。
【請求項2】
前記医薬組成物は、経口投与用に製剤化される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記医薬組成物は、2.5mg〜20mgの量のメタ亜ヒ酸ナトリウムを送達するように製剤化される、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
前記脳腫瘍は、少なくとも1つの化学療法剤による治療に対して屈折性である、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
前記脳腫瘍は、乏突起細胞腫、乏突起星状細胞腫、星状細胞腫、髄芽細胞腫、髄膜腫、シュヴァン鞘腫、血管芽細胞腫または血管細胞腫である、請求項1に記載の使用。
【請求項7】
前記医薬組成物は、静脈内送達用に製剤化される、請求項1に記載の使用。
【請求項8】
前記脳腫瘍は、全体または一部が手術により切除された、請求項1に記載の使用。
【請求項9】
経口または静脈内送達用に製剤化されたメタ亜ヒ酸ナトリウムの1以上の投与単位と、経口または静脈内投与用に製剤化された、メタ亜ヒ酸ナトリウムと異なる抗脳腫瘍化学療法剤の1以上の投与単位とを含む、キット。
【請求項10】
前記抗脳腫瘍化学療法剤は、アルキル化剤、葉酸代謝拮抗剤およびトポイソメラーゼから選択される、請求項9に記載のキット。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【公表番号】特表2013−505242(P2013−505242A)
【公表日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−529803(P2012−529803)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際出願番号】PCT/US2010/048314
【国際公開番号】WO2011/034775
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(509267579)コミノックス・インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】