説明

腐食試験機

【課題】霧状の液体を噴出する噴霧手段が設けられた腐食試験機において、噴霧手段から噴霧された霧状の液体中に試料を均一に晒し、試験結果にムラを生じさせることなく、正確な腐食促進試験を実施することにある。
【解決手段】試料(P)が載置される載置台(26−1〜26−4)を噴霧手段(18)の周りで回転させるとともに載置台(26−1〜26−4)自体を回転させる回転機構(27)とこの回転機構(27)を作動する駆動手段(28)とが備えられた試料回転装置(25)を設け、この試料回転装置(25)を作動制御する制御手段(43)を設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、腐食試験機に係り、噴霧手段から噴霧された霧状の液体中に試料を均一に晒すことができる腐食試験機に関する。
【背景技術】
【0002】
腐食試験機は、塗装、メッキ、アルマイト等の金属表面処理や金属材料の腐食性(防錆性、防食性)を評価するために用いられている。
このような腐食試験機には、塩水噴霧試験機、塩乾湿の複合サイクル試験機、ガス腐食試験機等の各試験機がある。
塩水噴霧試験機は、試験槽内を所定の温度状態に維持しつつ、塩水の噴霧を行い、試料の防錆・防食効果を調べるためのものであり、短時間で試料の腐食性を知ることができ、自動車、住宅、家電製品、日常生活用品等のあらゆる工業製品の試験に使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4247799号公報 特許文献1に記載の塩水噴霧試験機は、霧状の液体を噴出する噴出口が備えられた噴霧塔(噴霧手段)の周りで、試料を所定の回動速度で且つ他方向に間欠的に回転させるものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来、塩水噴霧試験機においては、噴霧手段から霧状の溶液(塩水)が噴霧されるが、噴霧手段と試験槽内の左右部位や前後部位に載置される試料との間の距離にバラツキが生じ、また、霧状の溶液の飛んで行く距離がその質量によって異なることから、試料への霧状の液体の降下(降霧)が均一にならず、このため、試料の設置場所により試験結果が異なるという不都合があった。
【0005】
そこで、この発明の目的は、試料を載置する載置台を噴霧手段の周りで回転させるとともに、載置台自体を回転させて、噴霧手段から噴霧された霧状の液体中に試料を均一に晒し、試験結果にムラを生じさせることなく、正確な腐食促進試験を実施する腐食試験機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、試験槽内で霧状の液体を噴出する噴出口が備えられた噴霧手段を設け、この噴霧手段から噴霧された霧状の液体を試料に降りかけて試料の腐食促進試験を実施する腐食試験機において、試料が載置される載置台を前記噴霧手段の周りで回転させるとともに前記載置台自体を回転させる回転機構とこの回転機構を作動する駆動手段とが備えられた試料回転装置を設け、この試料回転装置を作動制御する制御手段を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明の腐食試験機は、試料を載置する載置台を噴霧手段の周りで回転させるとともに、載置台自体を回転させることから、噴霧手段から噴霧された霧状の液体中に試料を均一に晒し、試験結果にムラを生じさせることなく、正確な腐食促進試験を実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は塩水噴霧試験機の断面図である。(実施例)
【図2】図2は試料回転装置の概略平面図である。(実施例)
【発明を実施するための形態】
【0009】
この発明は、噴霧手段から噴霧された霧状の液体中に試料を均一に晒し、試験結果にムラを生じさせることなく、正確な腐食促進試験を実施する目的を、試料を載置する載置台を噴霧手段の周りで回転させるととも載置台自体を回転させて実現するものである。
【実施例】
【0010】
図1、図2は、この発明の実施例を示すものである。
図1において、1は試料の腐食促進試験を実施する腐食試験機として例示する塩水噴霧試験機である。
この塩水噴霧試験機1は、試験槽2と、この試験槽2の上部の蓋体3とからなる。 試験槽2は、底部材4と、この底部材4に立設した筒体5とを備えている。
筒体5内には、底部4の上面に下側支板6を載置し、また、底部4の近傍且つ平行に区画部材7を配設し、この区画部材7の下側で機器用空間8を区画形成するとともに、区画部材7の上側で試験室9を区画形成する。
区画部材7は、下面が支持材10で支持され、底部4と平行に延びる横架部11と、試験室9の中央部位で上方に延びた立上円筒部12とからなる。
【0011】
底部4の上面に載置した下側支板6には、中央部位で、機器用空間8から試験室9内に突出して軸空間13を形成する中空状の固定用軸14が立設される。この固定用軸14の下部は、底部4及び下側支板6を貫通して下方に開口している。
この固定用軸14の上部には、塩水噴霧手段15が設けられる。
この塩水噴霧手段15は、固定用軸14の上端に固定されて液体(塩水)を貯留する塩水容器16と、この塩水容器16の上部に固定されて噴出口17が蓋体3の高さ位置まで延びた筒状の噴霧手段として噴霧塔18と、この噴霧塔18の途中に配設された塩水噴霧ノズル19と、この塩水噴霧ノズル19からの塩水を圧縮空気によって噴霧塔18内に噴霧するための圧縮空気ノズル20とを備えている。
【0012】
塩水噴霧ノズル19には、塩水容器16内からの塩水を導く塩水供給管21が接続している。
圧縮空気ノズル20には、固定用軸14の軸空間13内に開口する圧縮空気供給管22が接続している。
固定用軸14の下端には、圧縮空気接続管23の一端が接続している。この圧縮空気接続管23の他端には、空気圧縮機24が接続している。この空気圧縮機24で生成された圧縮空気は、圧縮空気接続管23と固定用軸14の軸空間13と圧縮空気供給管22とを経て圧縮空気ノズル20に供給される。
【0013】
また、塩水噴霧試験機1には、試料回転装置25が設けられる。
この試料回転装置25は、試料が所定の取付手段で固定して載置される載置台(ターンテーブル)として、例えば、4つの第1〜第4載置台26−1〜26−4を噴霧塔18の周りで回転(公転)させるとともに第1〜第4載置台26−1〜26−4自体を回転(自転)させる回転機構27と、この回転機構27を作動する駆動手段である駆動モータ28とを備え、以下のように構成される。
【0014】
機器用空間8において、固定用軸14の下部の外周面には、下側固定用部材29が設けられる。
この下側固定用部材29には、下側軸受30を介して固定用軸14と同心上で且つこの固定用軸14の径よりも大きな回動軸31の下部が回転可能に立設される。
この回動軸31は、上部で塩水容器16の下面に取り付けた上側固定用部材32の上側軸受33によって回転可能に支持されている。
機器用空間8において、回動軸31の外周面の下部には、被動ギヤ34が水平方向に固定されている。この被動ギヤ34には、下側支板6の上面に取り付けた駆動モータ28の駆動ギヤ35が噛み合っている。
試験室9内において、塩水容器16の下方には、区画部材7の立上円筒部12の上端に設置され且つ回動軸31に遊嵌した上側支板36が設けられている。
回動軸31の上部には、試験室9において、第1〜第4載置台26−1〜26−4に対応する第1〜第4支持枠37−1〜37−4が固定されている。この第1〜第4支持枠37−1〜37−4は、一端が平面視において円周方向等間隔で回動軸31の外周面に固定され、そして、L字形状に上方に折り曲げられ、他端となる先端が試験室9の上部位に位置している。
この第1〜第4支持枠37−1〜37−4の先端には、第1〜第4軸受38−1〜38−4を介して第1〜第4試料側歯車39−1〜39−4が水平方向で回転可能に設けられている。この第1〜第4試料側歯車39−1〜39−4は、同一平面上に配置され、上面に第1〜第4載置台26−1〜26−4を所定の固定手段によって固定している。
【0015】
一方、噴霧塔18の外周面には、第1〜第4試料側歯車39−1〜39−4に噛み合うように、水平方向に配置された噴霧手段側歯車としての塔側歯車40が設けられている。なお、この塔側歯車40は、直接噴霧塔18の外周面に固定したり、あるいは、軸受(図示せず)を介して噴霧塔18の外周面に回転可能に設けることも可能である。
塔側歯車40は、第1〜第4試料側歯車39−1〜39−4の上面に第1〜第4載置台26−1〜26−4を載置することから、この第1〜第4載置台26−1〜26−4と干渉しないように、その幅が第1〜第4試料側歯車39−1〜39−4の幅よりも小さく設定され、且つ、第1〜第4試料側歯車39−1〜39−4の上面よりも下方に位置して第1〜第4試料側歯車39−1〜39−4に噛み合っている。
従って、図2に示すように、第1〜第4試料側歯車39−1〜39−4は、回動軸31の回転方向(A)で噴霧塔18の周りで回転(公転)すると、塔側歯車40に噛み合っていることから、回動軸31の回転方向(A)と同じ方向(B)で回転(自転)する。
これら第1〜第4試料側歯車39−1〜39−4及び塔側歯車40は、噴霧塔18の噴出口17よりも下方に配置されている。
また、第1〜第4載置台26−1〜26−4、第1〜第4試料側歯車39−1〜39−4及び塔側歯車40は、塩化ビニル等の腐食しない樹脂素材によって形成されている。
【0016】
試験室9には、この試験室9の温度を測定する測温センサ41が配設される。
空気圧縮機24と駆動モータ28と測温センサ41とは、制御盤42に内蔵された制御手段43に連絡している。
【0017】
この制御手段43は、空気圧縮機24等の機器を作動制御する運転制御部43Aを備え、また、試料回転制御部43Bを備えて、駆動モータ28を駆動制御することによって試料回転装置25を作動して第1〜第4載置台26−1〜26−4の回転状況を変更、例えば、回動軸31の回転速度を変化して第1〜第4載置台26−1〜26−4の回転速度を変更させたり、回動軸31の回転方向を所定時間毎で正方向と逆方向とに変更させて第1〜第4載置台26−1〜26−4の回転方向を変更する。
【0018】
次に、この実施例に係る試料回転装置25の動作を説明する。
図2に示すように、制御手段43からの制御信号により駆動モータ28が駆動し、この駆動モータ28の駆動によって回動軸31が回動して、この回動軸31の回動に伴って第1〜第4載置台26−1〜26−4が噴霧塔18の周りで回転(公転:図2の矢印Aで示す)するとともに、第1〜第4試料側歯車39−1〜39−4が塔側歯車40に噛み合っていることから、第1〜第4試料側歯車39−1〜39−4自体が回転(自転:図2の矢印Bで示す)する。つまり、第1〜第4載置台26−1〜26−4は、第1〜第4試料側歯車39−1〜39−4と共に回転(自転:図2の矢印Bで示す)する。
これにより、噴霧塔18の噴出口17から噴霧された霧状の液体が、噴霧塔18の周りで回転且つそれ自体で回転する第1〜第4載置台26−1〜26−4上の試料Pに均一に降りかかり(降霧)、噴霧塔18から噴霧された霧状の液体を試料Pに均一に供給して晒すことができ、試料Pの試験結果にムラが生じることをなくし、正確な腐食促進試験を実施できる。
また、試料回転装置25は、駆動モータ28によって回動される回動軸31と、この回動軸31に固定した第1〜第4支持枠37−1〜37−4と、この第1〜第4支持枠37−1〜37−4の先端に回転可能に設けられて第1〜第4載置台26−1〜26−4を保持する第1〜第4試料側歯車39−1〜39−4と、この第1〜第4試料側歯車39−1〜39−4に噛み合って噴霧塔18に設けられた塔側歯車40とを備える。このような構造により、試料回転装置25の構成を簡単にすることができる。
更に、駆動モータ28を駆動することによって試料回転装置25を作動させて第1〜第4載置台26−1〜26−4の回転状況を変更することから、試料Pの試験結果にムラが生じることを効率的に抑制できる。更に、第1〜第4載置台26−1〜26−4を、一方向に所定回転数で回転させた後に、逆方向に所定回転数で回転させることも可能である。
【0019】
なお、この実施例においては、第1〜第4試料側歯車39−1〜39−4や塔側歯車40の径や歯数を変更することにより、第1〜第4載置台26−1〜26−4の回転速度等を変化させて、試料Pの試験結果にムラが生じることをなくし、正確な腐食促進試験を実施できる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
この発明に係る試料回転装置を、塩水噴霧試験機のみならず、複合サイクル試験機やガス腐食試験機等の他の腐食試験機にも適用できる。
【符号の説明】
【0021】
1 腐食試験機として例示した塩水噴霧試験機
2 試験槽
9 試験室
15 塩水噴霧手段
18 噴霧塔(噴霧手段)
25 試料回転装置
26−1〜26−4 第1〜第4載置台
27 回転機構
28 駆動モータ(駆動手段)
31 回動軸
37−1〜37−4 第1〜第4支持枠
39−1〜39−4 第1〜第4試料側歯車
40 塔側歯車(噴霧手段側歯車)
42 制御盤
43 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験槽内で霧状の液体を噴出する噴出口が備えられた噴霧手段を設け、この噴霧手段から噴霧された霧状の液体を試料に降りかけて試料の腐食促進試験を実施する腐食試験機において、試料が載置される載置台を前記噴霧手段の周りで回転させるとともに前記載置台自体を回転させる回転機構とこの回転機構を作動する駆動手段とが備えられた試料回転装置を設け、この試料回転装置を作動制御する制御手段を設けたことを特徴とする腐食試験機。
【請求項2】
前記試料回転装置は、前記駆動手段の駆動によって回動される回動軸と、この回動軸に固定した支持枠と、この支持枠の先端に回転可能に設けられて前記載置台を保持する試料側歯車と、この試料側歯車に噛み合って前記噴霧手段に設けられた噴霧手段側歯車とを備えることを特徴とする請求項1に記載の腐食試験機。
【請求項3】
前記制御手段は、前記駆動手段を駆動することによって前記試料回転装置を作動して前記載置台の回転状況を変更させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の腐食試験機。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−172974(P2012−172974A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−31766(P2011−31766)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(000107583)スガ試験機株式会社 (28)
【Fターム(参考)】