説明

腰掛機能を具えたステッキ

【課題】 ステッキとして用いることができるとともに、休憩用の腰掛として機能し、且つそれぞれの利用時に外観的にも違和感がなく、充分実用に耐えることができる新規な腰掛機能を具えたステッキの開発を試みたものである。
【解決手段】 本発明の腰掛機能を具えたステッキSは、ステッキ杆本体1と、握り部2と、石突部3とを具え、前記ステッキ杆本体1を構成する2 本の握り部付杆要素10a、10bと1 本の支脚単用杆要素10cとは、連結部11で互いに遊びを持った状態で束ねられるように連結され、また前記一対の握り部2には、腰掛部4が掛け渡し自在に設けられており、前記3本の杆要素10を束ね合わせた状態とすることによってステッキとして用い、一方、前記3本の杆要素10を連結部11で交差状態に展開し、前記一対の握り部2を離間させ、この間に腰掛部4を展開した状態とし、腰掛として用いることを特徴として成るものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行時にステッキとして用いられ、その途中の休憩時には腰掛として利用できるような腰掛機能を具えたステッキに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば高齢化に伴い人の脚力は、その低下を余儀なくされるが、この際歩行補助具としてステッキが広く用いられている。当然ながら脚力の低下によって歩行続行できる距離、時間等を長くは取れなくなり、比較的に頻繁に休憩を取る必要がある。このため日常的な散歩を習慣付けている高齢者等にあっては、多くは散歩コースを設定するにあたり、休憩できる椅子等が備えられた場所を念頭においてコースを選定している。しかしながら、日常生活をする上では、慣れた散歩コース以外にも出かける必要が生じるのは当然であり、このような場合には、適当な休憩場所が見つからないときには歩行距離を伸ばしたり、あるいは立ったまましばらく休息をとったりしなければならず、苦痛を伴うものとなってしまう。
【0003】
このため、ステッキ等に座板を折りたたみ自在に設け、ステッキを休憩時に腰掛として利用できるものも提案されている。しかしながら、このものは、一定の強度を持った座板をステッキの本体にヒンジ取り付けしたものであり、折り畳めるとはいえ、ステッキ途中に一目で座面とわかる座板が存在し、機能的にその意義を理解できても、自ら用いるとなると使用することをためらう人も少なくない。
このようなこともあって、必ずしも普及をみていない。
【特許文献1】実用新案登録第3065937号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、これらの種々の背景を考慮してなされたものであって、ステッキとして用いることができるとともに、休憩用の腰掛として機能し、且つそれぞれの利用時に外観的にも違和感がなく、また使うにあたっても兼用機能に見られがちないずれにも中途半端で使い難い状況を排除し、それぞれの機能ごとに充分実用に耐えることができる新規な腰掛機能を具えたステッキの開発を試みたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の腰掛機能を具えたステッキは、ステッキ杆本体と、ステッキ杆本体の上部に設けられる握り部と、ステッキ杆本体の下端に装着される石突部とを具え、前記ステッキ杆本体は、3本の杆要素により構成され、そのうちの2本を握り部付杆要素としてその上端部にそれぞれ握り部を具え、更に残る一本を支脚単用杆要素とし、これら各杆要素は、上部寄りの部位に設けた連結部で、互いに遊びを持った状態で束ねられるように連結され、また前記一対の握り部には、腰掛部材が掛け渡し自在に設けられており、前記3本の杆要素を束ね合わせた状態とすることによって、前記一対の握り部を接近させて、ステッキとして用い、一方、前記3本の杆要素を連結部で交差状態に展開し、前記一対の握り部を離間させ、この間に腰掛部材を展開した状態とし、腰掛として用いることを特徴として成るものである。
【0006】
請求項2記載の腰掛機能を具えたステッキは、前記要件に加え、前記杆要素を束ねるにあたっては、石突部を杆要素と別体として、まとめられた各杆要素の各下端に外嵌することによって行うことを特徴として成るものである。
【0007】
請求項3記載の腰掛機能を具えたステッキは、前記要件に加え、前記石突部は、ステッキとして用いるにあたってのステッキ杆本体の長さを実質的に伸張させる伸張部材として機能することを特徴として成るものである。
【0008】
請求項4記載の腰掛機能を具えたステッキは、前記要件に加え、前記腰掛部は、シート状部材を適用したシート本体を含んで構成され、腰掛として用いない場合には、握り部の中空部にシート本体を収納させるものであることを特徴として成るものである。
【発明の効果】
【0009】
まず請求項1記載の発明によれば、この種のステッキで従来多かったステッキ杆本体の途中に座盤を設けるものと違い、ステッキの握り部を利用して、ここに腰掛部材が設けられていることからステッキ本体としての使い勝手もよく、腰掛として安定した機能を発揮することができる。特に、ステッキ杆本体が3本の杆要素で構成され、これらが三脚状に広がって腰掛機能を奏するものであることから、使用感、安定感を充分に得られるものである。
【0010】
また請求項2記載の発明によれば、石突部を利用して杆要素の束ね状態を形成するものであり、ステッキとしての自然で且つ優れた使用感が得られる。
【0011】
また請求項3記載の発明によれば、実際にはステッキとして使用するステッキ杆本体としての長さは、腰掛として利用する際の長さより長い寸法のものが必要とされるものであるが、石突部をその延長部材として機能させることにより、ステッキとして適切な長さ、また腰掛として利用した場合の適切な長さを設定することができる。
【0012】
また請求項4記載の発明によれば、腰掛部をシート状部材とし、且つこれを中空である握り部内に収納できるから、ステッキとしての使用時に腰掛部が邪魔にならず、ステッキとして利用したときに、腰掛部が全く目視されず外観的に違和感のないものが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明を実施するための最良の形態は、以下述べる実施例をその一つとするものであるとともに、この技術思想に基づく種々の改良した実施例も含むものである。
【実施例】
【0014】
以下、本発明を図示の実施例に基づいて具体的に説明する。符号Sは、腰掛機能を具えたステッキを示すものであって、このステッキSは、ステッキ杆本体1と、ステッキ杆本体10の上端に設けられる握り部2と、ステッキ杆本体10の下端に装着される石突部3と、握り部2間に掛け渡される腰掛部4とを主要部材とするものである。
【0015】
まずステッキ杆本体1について説明する。このものは、3本の杆要素10により構成されるものであり、杆要素10のうち2本はその上部に前記握り部2を取り付けるものであり、握り部付杆要素10a、10bとする。一方、握り部2を具えない他の一本の杆要素10は、専ら腰掛として機能する際の支脚となるものであり、支脚単用杆要素10cとする。そして、これら3本の杆要素10は、連結部11において、互いに遊びをもって連結されている。最も一般的にはピン状部材11Pを3本の杆要素10を嵌通するように設けてこれを構成する。もちろんこのような目的が達成できる範囲で、ボールジョイント状部材等を用いてもよい。なお、杆要素10のうち支脚単用杆要素10cについては、展開して使用する際に、連結部11において握り部付杆要素10a、10bの一部と干渉(接触)する部位が生じ、各杆要素10a、10b、10cが充分な三脚状に展開し得ない場合があるため、連結部11の近くの部位を一部抉るようにして、展開用逃げ部12を形成することが好ましい。
【0016】
次に握り部2について説明する。
握り部2は、例えば中空のパイプを適用した握り部本体20が前記握り部付杆要素10aの上部にTの字状に水平固定されて構成されるものである。そして、握り部本体20は中空部21を具えるとともに、それぞれ対向する側面等に抽き出しスリット22を設ける。この抽き出しスリット22は、後述する腰掛部4の一例であるシート本体40を適用した場合のその収納開口並びに抽き出し開口になるものである。
【0017】
次に石突部3について説明する。
この石突部3は、ステッキ杆本体1における各杆要素10に対してその下端に直接設けてもよいが、好ましい実施例としては、石突部3をステッキ杆本体1とは別体のパイプ本体30によって構成し、このものを、杆要素10を束ねた状態で、その下端に外嵌めするようにして用いる構成を採る。具体的には、幾分か管径を広げた上部が開口した杆要素嵌込部31を具え、その下方に更に連続して延長部32を形成し、更に最下端部に石突端部33を設けるものである。
なお杆要素嵌込部31は、3本の杆要素10を受入れるために、一例として完全な円形ではなく、いわばおむすび形状の開口部にすることが好ましい。
【0018】
次に腰掛部4について説明する。
この腰掛部4は、一対の握り部本体20の間に掛け渡されるような構成を採るものであり、好ましい実施例としてはシート本体40によって、腰掛部4を構成する。このシート本体40は、一定幅の帯状の布等を用いたその一端に固定芯41を設け、他端に巻取芯42を設ける。これら固定芯41、巻取芯42は、共に握り部本体20の中空部21内に収められるとともに、シート本体40は、抽き出しスリット22から引き出された状態となっている。そして巻取芯42側には巻取りつまみ43が前記握り部本体20の一端から張り出すように設けられ、このものを回すことにより握り部本体20の中空部21内にシート本体40を巻き取るようにして収めるものである。
【0019】
本発明は、以上述べたような構成を基本とするものであり、次のように用いる。
まず本発明のステッキSを歩行補助具として用いる場合の形態を始発状態として説明する(図3(a)参照)。この場合は、ステッキ本体1の各杆要素10は、束ねられた状態となっている。当然ながらこの場合には、一対の握り部2はほぼ平行して接するような状態となっている。
このとき腰掛部4を構成するシート本体40は、巻取り芯42が巻取り状態に操作されて握り部本体20の一方の中空部21に巻き取られ、他端側は固定芯41と端部近くのシート本体40が他の一方の握り部本体20内に収まった状態となっている。
【0020】
そしてステッキ本体1の3本の杆要素10は、下端においてまとめられた状態となり、石突部3を構成するパイプ本体30の杆要素嵌込部31に嵌め込まれるような状態となっている。つまりパイプ本体30が、ステッキ杆本体1の下端部に外嵌めされた状態となっている。このような状態であると、実質的にステッキSの握り部2の高さは、ステッキ杆本体1の高さに加え、さらに石突部3の延長部32を加えた高さとなり、利用者が自然な姿勢で歩行することができる高さが得られる。また握り部2は、平行して揃った状態となり、あたかも一体化したような太さであるから、使用者Uが握るにあたっても、過剰な太さを意識させず、むしろ握った際の安定感を感じさせるようなものとなっている。なおステッキ杆本体1は、下端部では、三角形状に外接するような形状であるが、連設部11から上方は、例えば平行した状態となっている。もちろん杆要素10はそれぞれ弾性特性等の関係でこのような弾性変形は許容されるものである。
【0021】
次にこのような歩行補助具としてのステッキの始発状態から、腰掛機能を発揮させる場合には、次にように操作する。
まず石突部3をステッキ杆本体1の下端から抜き外すようにする(図3(b)参照)。これによって杆要素10は、それぞれ展開し得る状態となる。次いで図3(c)に示すように一対の握り部本体20を持って、これらを単に離間するように操作する。これによって、一方の中空部21に巻き取られていたシート本体40は、展開しながら抽き出しスリット22から相対的に引き出されるようになり、シート本体40の繰り出し寸法分だけの間隔を開けた状態で握り部本体20の間隔が設定される。この握り部本体20の間隔寸法は、腰掛として利用するに適した状態にステッキ杆本体1を三脚状に広げる寸法に設定されており、握り部本体20を充分広げた状態で、まず握り部2は、杆要素10a、10bが適切な開脚状態を得る。次いで支脚単用杆要素10cを、既に開脚している握り部付杆要素10a、10bのほぼ中間線上に広げるようにして、安定した三脚形状を得るのである。このようにすることにより、各杆要素10が三脚様の支脚を構成するとともに、更に握り部2の間に腰掛部4が展開された状態が得られ、、この上に座って安定した状態で休憩ができる。
【0022】
このときステッキSの実質的な長さ寸法は、石突部3が取り外されことから、歩行補助具として適している高さ寸法L1から石突部3の延長部32の長さ寸法L3に対応した寸法だけが短くなることとなり、結果として歩行補助具として適した高さから、腰掛としての適切な高さL2に設定することができる。
なおこの状態から再びステッキとして用いる場合には、図3(d)から(g)に示すように握り部2を再び寄せ合うようにする。このとき、たるみ状態のシート本体40は、巻取りつまみ43を回転させることにより巻取芯41に巻き取られ、一方の握り部本体20内に収められる。その後、各ステッキ杆本体10の下端を束ね、これに石突部3を外嵌めする。
【0023】
〔他の実施例〕
本発明は以上述べた実施の形態を一つの基本的な技術思想とするものであるが、更に次のような改変が考えられる。例えば腰掛部4は、シート本体40を利用して、巻取り状にして握り部本体20の中空部21内に収めているが、完全に別体のシート状のものとして、使用時に握り部本体20同士に掛け渡すような操作をして用いることももとより可能である。例えば図4(a)に示すようにシート本体40の両端に前記握り部本体20の端部に嵌め込まれるフック状部材45を設けておく手法である。またシート本体40を用いず図4(b)に示すようなスラット状の連結部材を設けておき、このものが拡開自在になるようにして用いることももとより差し支えない。
【0024】
またステッキ本体1の杆要素10を束ねる場合に、石突部3を利用しているが、これを用いずに、例えば図4(c)に示すように常時連結部11近くに環状の留め部材を設けておき、下方に移動させて下端部を縛り付けるようにして束ねても差し支えない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の腰掛機能を具えたステッキの歩行補助具としての使用状態並びに腰掛けとしての使用状態を示す斜視図である。
【図2】本発明の腰掛機能を具えたステッキの分解斜視図である。
【図3】本発明に係るステッキを歩行補助具から腰掛けに変形するための手順を示した説明図である。
【図4】本発明の腰掛機能を具えたステッキの他の実施例を示した斜視図であり、(a)と(b)は、腰掛部に関する他の実施例を示すものであり、(c)は石突部に関する他の実施例である。
【符号の説明】
【0026】
S (腰掛機能を具えた) ステッキ
1 ステッキ杆本体
10 杆要素
10a 握り部付杆要素
10b 握り部付杆要素
10c 支脚単用杆要素
11 連結部
12 展開用逃げ部
2 握り部
20 握り部本体
21 中空部
22 抽き出しスリット
3 石突部
30 パイプ本体
31 杆要素嵌込部
32 延長部
4 腰掛部
40 シート本体
41 固定芯
42 巻取芯
43 巻取りつまみ
45 フック状部材
L1 (歩行補助具としての)高さ寸法
L2 (腰掛としての)高さ寸法
L3 延長部の高さ寸法
U 利用者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステッキ杆本体と、ステッキ杆本体の上部に設けられる握り部と、ステッキ杆本体の下端に装着される石突部とを具え、
前記ステッキ杆本体は、3本の杆要素により構成され、そのうちの2本を握り部付杆要素としてその上端部にそれぞれ握り部を具え、更に残る一本を支脚単用杆要素とし、これら各杆要素は、上部寄りの部位に設けた連結部で、互いに遊びを持った状態で束ねられるように連結され、また前記一対の握り部には、腰掛部材が掛け渡し自在に設けられており、前記3本の杆要素を束ね合わせた状態とすることによって、前記一対の握り部を接近させて、ステッキとして用い、
一方、前記3本の杆要素を連結部で交差状態に展開し、前記一対の握り部を離間させ、この間に腰掛部材を展開した状態とし、腰掛として用いることを特徴とすることを特徴とする腰掛機能を具えたステッキ。
【請求項2】
前記杆要素を束ねるにあたっては、石突部を杆要素と別体として、まとめられた各杆要素の各下端に外嵌することによって行うことを特徴とする前記請求項1記載の腰掛機能を具えたステッキ。
【請求項3】
前記石突部は、ステッキとして用いるにあたってのステッキ杆本体の長さを実質的に伸張させる伸張部材として機能することを特徴とする前記請求項1または2記載の腰掛機能を具えたステッキ。
【請求項4】
前記腰掛部は、シート状部材を適用したシート本体を含んで構成され、腰掛として用いない場合には、握り部の中空部にシート本体を収納させるものであることを特徴とする前記請求項1、2または3記載の腰掛機能を具えたステッキ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−56209(P2009−56209A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−227684(P2007−227684)
【出願日】平成19年9月3日(2007.9.3)
【出願人】(598064417)