説明

腹腔内腫瘍病変の治療又は予防用の医薬組成物

【課題】抗腫瘍ウイルスの投与や増殖に有用な細胞及びその利用を提供する。
【解決手段】ヒト腹膜中皮細胞を、抗腫瘍活性を有するウイルスを保持する細胞として用いる。ヒト腹膜中皮細胞がHF10などの抗腫瘍ウイルスを腹腔等に投与するのに有効なキャリア細胞である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腹腔内播種病変や腹腔内臓器の浸潤病変などの腹腔内腫瘍病変の予防又は治療に有用な抗腫瘍ウイルスのキャリアとしての細胞及びその利用に関する。
【背景技術】
【0002】
卵巣がんや子宮がん等において、腹腔内播種病変の治療又は予防のために、術前や術後に抗がん剤の腹腔内投与が行われる場合がある。しかしながら、腹腔内播種病変の制圧には今なお困難である。こうした抗がん治療において、抗がん剤として抗腫瘍ウイルスを用いるウイルス療法が用いられる場合がある。例えば、麻疹ウイルス(measles virus)のウイルス液を卵巣癌患者の腹腔内に直接投与することも試みられている(非特許文献1)。また、単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus;以下HSVと略す。)のHF10等の変異株を腹腔内投与することも試みられている(非特許文献2)
【非特許文献1】Hasegawa,K. et al. Clinical Cancer Res., 2006, 12(6), 1868-75.Measle virusを用いたpreclinical study.
【非特許文献2】Nawa, A. et al. Gynecol Oncol, 2003,91 81-88.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
抗腫瘍ウイルスを直接腹腔内に投与する方法では、ウイルスが癌細胞に感染するまでの間に中和抗体や補体によるウイルス感染価の減弱による感染域の極端な低下とマクロファージを中心とする細胞性免疫によるウイルスが排除されるという問題がある。このため、投与後において、免疫系の攻撃を抑制又は回避してウイルスの抗腫瘍活性を維持することが重要であると考えられる。
【0004】
抗腫瘍ウイルスを免疫系からの攻撃から保護して有効にその作用を発揮させるためには、抗腫瘍ウイルスを直接投与するのでなく、投与に先だってウイルスを適当な細胞に感染させて得られたウイルス感染細胞を投与することが一つの方法として考えられる。しかしながら、抗腫瘍ウイルスは正常細胞では増殖せず高い選択性で癌細胞内で増殖すると考えられており、抗腫瘍ウイルスを高いウイルス価で保持できる細胞や腹腔内投与に適した細胞は現在までのところ報告されていない。
【0005】
そこで、本発明は、抗腫瘍ウイルスの投与や増殖に有用な細胞及びその利用を提供することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、抗腫瘍ウイルスのキャリア細胞をスクリーニングしたところ、ヒト大網中皮細胞などの腹膜中皮細胞がHF10などの抗腫瘍ウイルスのキャリア細胞として有効であることを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明によれば以下の手段が提供される。
【0007】
本発明によれば、抗腫瘍活性を有するウイルスを保持するウイルス感染ヒト腹膜中皮細胞が提供される。この細胞においては、前記ウイルスは、抗腫瘍活性を有する単純ヘルペスウイルスであってもよいし、前記抗腫瘍活性を有するウイルスは、UL56遺伝子が不活性化されている変異単純ヘルペスウイルスであってもよいし、単純ヘルペスウイルスタイプ1 HF10株であってもよい。また、この細胞においては、前記ヒト腹膜中皮細胞は、ヒト大網中皮細胞を含むことができる。
【0008】
本発明によれば、ヒト腹腔内腫瘍病変の予防又は治療用医薬組成物であって、上記いずれかのウイルス感染ヒト腹膜中皮細胞を有効成分として含有する、組成物が提供される。この組成物においては、ヒト腹腔内臓器腫瘍切除手術の前及び/又は後に腹腔内に投与されるものとすることができる。また、前記腹膜中皮細胞が自家細胞であることが好ましい。
【0009】
本発明によれば、抗腫瘍活性を有するウイルスを保持するウイルス感染細胞の製造方法であって、ヒト腹膜中皮細胞に抗腫瘍活性ウイルスを感染させる感染工程と、前記抗腫瘍活性ウイルスを前記ヒト腹膜中皮細胞内で増殖させる増殖工程と、を備える方法が提供される。この方法においては、前記ヒト腹膜中皮細胞は、ヒト大網中皮細胞を含むことができる。
【0010】
本発明によれば、ヒト腹膜中皮細胞を含む、抗腫瘍活性を有するウイルスの保持用材料が提供される。前記ヒト腹膜中皮細胞は、ヒト大網中皮細胞を含むことができる。また、前記保持用材料はヒト腹腔内投与用とすることができる。また、抗腫瘍ウイルスの増殖用とすることもできる。
【0011】
本発明によれば、抗腫瘍活性を有するウイルスの増殖方法であって、ヒト腹膜中皮細胞に前記抗腫瘍活性を有するウイルスを感染させる工程と、前記抗腫瘍活性を有するウイルスを前記ヒト腹膜中皮細胞内で増殖させる工程と、を備える、方法が提供される。この方法においては、前記抗腫瘍活性を有するウイルスは、UL56遺伝子が不活性化されている変異単純ヘルペスウイルスとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、ウイルス感染ヒト腹膜中皮細胞、ヒト腹腔内腫瘍病変の予防又は治療用医薬組成物、抗腫瘍ウイルス感染細胞の製造方法、抗腫瘍ウイルス保持用細胞及び抗腫瘍活性ウイルスの増殖方法等に関する。
【0013】
本発明のウイルス感染ヒト腹膜中皮細胞によれば、抗腫瘍活性を有するウイルス(以下、単に抗腫瘍ウイルスという。)を保持しており、この細胞を腹腔内に投与することで、抗腫瘍ウイルスの感染能力を維持して腹腔内においてその抗腫瘍活性を発揮させることができる。また、本発明のヒト腹腔内腫瘍病変の予防又は治療用医薬組成物は、こうしたウイルス感染ヒト細胞を有効成分として含有するため、腹腔内腫瘍病変の予防又は治療用に利用できる。
【0014】
本発明の抗腫瘍ウイルス保持用材料であるヒト腹膜中皮細胞は、抗腫瘍ウイルスを保持することができるほか、がん細胞でなく正常細胞である点、がん細胞に抗腫瘍ウイルスを感染させたときよりも短期間でウイルスが増殖する点、自家及び他家の細胞を比較的容易に取得できる点、培養が容易である点、及び自家細胞の場合に患者への投与時の拒絶反応を回避できる点において抗腫瘍ウイルスの保持用材料として好ましい。
【0015】
以下、本発明の実施形態について、抗腫瘍ウイルス感染ヒト腹膜中皮細胞及びその製造方法、ヒト腹腔内播種病変の予防又は治療用医薬組成物、抗腫瘍ウイルス保持用細胞、及び抗腫瘍活性ウイルスの増殖方法等につき詳細に説明する。図1には、本発明の抗腫瘍ウイルス感染ヒト腹膜中皮細胞を用いた腹腔内腫瘍病変の予防又は治療の一例を示す。
【0016】
[抗腫瘍ウイルス感染ヒト腹膜中皮細胞]
(抗腫瘍ウイルス)
本発明の抗腫瘍ウイルス感染ヒト腹膜中皮細胞は、抗腫瘍ウイルスを保持している。抗腫瘍ウイルスは、抗腫瘍作用を示すウイルスである。抗腫瘍ウイルスとしては、腫瘍溶解性ウイルス(Oncolytic virus)が挙げられる。腫瘍溶解性ウイルスは、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、単純ヘルペスウイルス(HSV)、レオウイルス及び麻疹ウイルスに属する天然のウイルス及びこれらのウイルスを起源として人工的な遺伝子組換えがなされたウイルスが挙げられる。こうした腫瘍溶解性ウイルスは、腹腔内腫瘍病変の予防又は治療用として用いることができる程度に弱毒化されていることが好ましい。
【0017】
本発明において用いる抗腫瘍ウイルスとしては、免疫回避機構を備えている点、増殖能に優れる点、アシクロビルなどの抗ウイルス薬によって速やかに排除できる点等において、これらのなかでもHSV及び弱毒化HSVが好ましい。また、HSVにはHSV−1及びHSV−2があり、いずれに属する天然及び遺伝子組換え株を用いてもよいが、好ましくは、HSV−1由来株である。具体的には、HSV−1 hrR3株、HSV−1 HF10株(以下、単にHF10株という。)が挙げられる。HSV−1 hrR3株は、UL39遺伝子が不活性化された変異HSVであり、HSV−1 HF10株は、UL56遺伝子の不活性化を含むHSV株である。なお、HSV−1 hrR3株及びHSV−1 HF10株(MNO10)については国際公開パンフレットWO2002/5896925号に開示されている。なお、HSV−1 HF10株は、ヘルペスウイルスのゲノム上116515〜120346の位置に3832bpの欠失が存在し、UL56の全197アミノ酸のN末端側136アミノ酸、およびその上流を欠いている。HSV−1 HF10株は、本出願人(国立大学法人名古屋大学(大学院医学研究科))において、特許法によって要求されている微生物の保存および分譲が保証されており、容易に入手することができる。
【0018】
抗腫瘍ウイルスとしては、より好ましくは、HF10株が挙げられる。HF10株は、中枢神経系侵襲性を欠損し、がん細胞で効率的に増殖できるほか、宿主免疫系活性化機構を備えるとともに、ゲノム上の欠損領域が大きく、当該欠損を安定的に維持しやすいからである。
【0019】
(ヒト腹膜中皮細胞)
抗腫瘍ウイルスが保持される細胞は、ヒト腹膜中皮細胞を用いることができる。ヒト腹膜は、腹腔を裏打ちするとともに腹腔のなかに含まれる内蔵の大部分を覆っている漿膜嚢を構成部分である中皮細胞及びその培養細胞を含んでいる。ヒト腹膜としては、例えば、胃の大弯から出て横行結腸に至る腹膜のひだである大網中皮細胞や小網中皮細胞が挙げられる。大網は、通常、エプロン状に小腸前部に垂れ下がっている。なお、本明細書において、ヒト腹膜中皮細胞とは、がん化等していない正常細胞を意味している。
【0020】
ヒト腹膜は、その少なくとも一部が腹腔内臓器腫瘍の外科手術時に切除されることが多いほか、内視鏡手術でも除去することができるため、入手が容易であるほか低侵襲であるといえる。また、ヒト腹膜中皮細胞は、正常細胞であるにも関わらずHSVの増殖に適している傾向があり、培養も容易である。
【0021】
ヒト腹膜中皮細胞としては、好ましくはヒト大網中皮細胞を用いる。ヒト大網は、ヒト腹膜と同様、ヒト大網は、腹腔内臓器腫瘍の外科手術時に切除され、内視鏡手術でも容易に除去することができるため、入手が容易であるほか低侵襲であるといえる。また、ヒト大網中皮細胞は、正常細胞であるにも関わらずHSVの増殖に適しており、がん細胞におけるよりもHSVの増殖の立ち上がりが早い(3〜6時間程度)傾向があるとともに、培養が容易であるからである。
【0022】
ヒトの腹腔内播種病変の予防又は治療用に投与するあたり、投与を受ける患者との関係においてはヒト腹膜中皮細胞は、自家又は他家の細胞であることが好ましい。異種細胞の移植による超急性拒絶反応や急性拒絶反応を回避するためである。他家細胞の場合、各種抗原及び補体について移植適合性のある他家細胞が選択される。好ましくは自家細胞である。
【0023】
ヒト腹膜中皮細胞は、患者自身又は移植適合性のある患者以外の個人から採取される。採取される方法は特に限定されない。患者自身の場合には、腫瘍摘出の外科手術に伴って採取されてもよいし、別途腹腔内視鏡手術によって採取されてもよい。さらに、患者以外の他者にあっても、同様に通常の外科手術や内視鏡手術によって採取される。なお、ヒト腹膜中皮細胞は、予め採取され保存されていた組織又は細胞であってもよいし、予め採取され培養されたものであってもよい。
【0024】
また、ヒト大網から中皮細胞を採取方法は特に限定されない。例えば、採取して適当な大きさにカットした大網をトリプシン処理し、表層の中皮細胞を分離培養し、必要に応じて免疫染色等して、中皮細胞であるかどうかを確認すればよい。
【0025】
抗腫瘍ウイルスに感染したヒト大網中皮細胞などのヒト腹膜中皮細胞は、例えば、抗腫瘍ウイルスをMOI0.1以上10以下(好ましくは1以上3以下)で感染保持させたヒト腹膜中皮細胞が200mlあたり105clls以上108cells以下、好ましくは105cells以上108cells以下となるような増殖特性を備えていることが好ましい。
【0026】
本発明の抗腫瘍ウイルス感染ヒト腹膜中皮細胞は、腹腔内に投与するのにあたり、裸の抗腫瘍ウイルスを投与するのに比較して、高い抗腫瘍活性を発揮することができる。こうした高い抗腫瘍活性は、抗腫瘍ウイルスとキャリーセルであるヒト腹膜中皮細胞との組み合わせによるものと考えられ、特に、HF10株などの弱毒化HSVとヒト大網中皮細胞との組み合わせが、迅速かつ高いウイルス増殖能ひいては高い抗腫瘍活性の発現に大きく寄与することができる。また、投与にあたっては、ヒト大網中皮細胞等のヒト腹膜中皮細胞を患者の自家細胞又は移植適合性のある他家細胞とすることで患者の免疫系の攻撃回避に効果的であると考えられる。
【0027】
[抗腫瘍ウイルス感染細胞の製造方法]
抗腫瘍ウイルスに感染したヒト腹膜中皮細胞を取得する方法は、ヒト腹膜中皮細胞に抗腫瘍ウイルスを感染させる工程と、抗腫瘍ウイルスをヒト腹膜中皮細胞内で増殖させる工程と、を備えることができる。これらの感染工程及び増殖工程は、いずれも生体外のヒト腹膜中皮細胞に対して実施することが好ましい。
【0028】
ウイルス感染工程は、例えば、以下の方法を採用することができる。すなわち、ヒト腹膜中皮細胞を準備し、適当な感染多重度(Multiplicity of Infection;MOI)でウイルスを添加し、所定時間接触させ吸着させた後、ウイルス液を除去すればよい。MOIは特に限定しないが、0.1以上から10以下程度とすることができる。好ましくは、1以上3以下とすることができる。また、ヒト腹膜中皮細胞にウイルス液と接触させる時間も適宜設定することができるが、例えば、30分〜1時間程度とすることができる。
【0029】
ウイルス感染後の増殖工程は、感染細胞として使用することを考慮すると、ウイルスがヒト腹膜中皮細胞内で増殖し、細胞を溶解しない程度に行うことが好ましい。培養条件はヒト腹膜中皮細胞の培養に適した条件及びウイルスの増殖速度を考慮して設定することができる。ウイルスの増殖速度等を考慮すると、培養時間は2時間以内、好ましくは1時間以内程度とする
【0030】
増殖工程実施後、トリプシン等で処理して細胞を回収、PBS等に懸濁することで、投与に適した本発明の抗腫瘍ウイルス感染ヒト腹膜中皮細胞を取得することができる。
【0031】
以上のことから、本発明の抗腫瘍ウイルス感染ヒト腹膜中皮細胞の製造方法によれば、容易にウイルス増殖能及び抗腫瘍活性を腹腔内で発揮可能な状態の抗腫瘍ウイルスを提供することができる。
【0032】
[抗腫瘍ウイルス保持用材料]
本発明の一実施形態である抗腫瘍ウイルス保持用材料は、ヒト大網中皮細胞などのヒト腹膜中皮細胞を含むことができる。上記のとおり、ヒト腹膜中皮細胞は、抗腫瘍ウイルスの感染、増殖及び保持に適したものであるから、抗腫瘍ウイルス感染細胞を取得するのに用いる抗腫瘍ウイルス保持用材料として好ましい。ヒト腹膜中皮細胞は、上記のように抗腫瘍ウイルスの増殖特性、抗腫瘍活性の発揮等に有効であるほか、その由来を考慮しても腹腔内投与に適しているといえる。ヒト腹膜中皮細胞は、また、培養が容易である点においても好ましい。
【0033】
抗腫瘍ウイルス保持用材料は、ヒト腹腔内投与との関係においては自家細胞であることが好ましく、また、ヒト大網中皮細胞を用いることが好ましい。さらに、既に説明したように、患者やその他の個体から外科的手法や内視鏡手術によって取得された組織から分離された細胞又はその培養細胞であってもよい。
【0034】
抗腫瘍ウイルス保持用材料は、腹腔内腫瘍病変の予防又は治療用として腹腔内投与用の材料(細胞)として用いることもできるし、抗腫瘍ウイルスの感染及び増殖用の材料(細胞)として用いることもできる。
【0035】
[ヒト腹腔内播種病変の予防又は治療用医薬組成物]
本発明の医薬組成物は、本発明の抗腫瘍ウイルス感染ヒト腹膜中皮細胞を有効成分として含有することができる。本医薬組成物は、抗腫瘍ウイルス感染ヒト腹膜中皮細胞を有効成分とすることで、ヒト腹腔内に投与するのにあたり高い抗腫瘍ウイルスの増殖能及び抗腫瘍活性を発揮することができる。なお、本医薬組成物の実質的な有効成分は抗腫瘍ウイルスである。このため、本医薬組成物は、ヒト腹膜中皮細胞に保持される抗腫瘍ウイルスを有効成分とする、医薬組成物又はヒト腹膜中皮細胞をキャリアとして備える抗腫瘍ウイルスを有効成分とする医薬組成物と言い換えることができる。
【0036】
本医薬組成物において、抗腫瘍ウイルス及びヒト腹膜中皮細胞については、既に説明した抗腫瘍ウイルス感染ヒト腹膜中皮細胞におけるこれらの実施態様をそのまま適用することができ、好ましい実施態様も同様に適用することができる。したがって、抗腫瘍ウイルスとしては、HSV及び弱毒化HSV、UL56遺伝子が不活性化された弱毒化HSV、なかでも特にHSV−1 HF10株を好ましく用いることができ、ヒト腹膜中皮細胞としては、ヒト大網中皮細胞を好ましく用いることができ、特に自家細胞のヒト大網中皮細胞を好ましく用いることができる。
【0037】
本医薬組成物は、ヒトの腹腔内腫瘍病変の予防若しくは治療を目的として、その有効量がヒトに投与される。本医薬組成物は、腹腔内播種病変の予防又は治療に有効である。腹腔内腫瘍病変としては、腹腔内に露出された状態の腫瘍病変をいう。例えば、腹腔内に存在する臓器の腫瘍が浸潤して臓器表面までに到達した状態(腹腔内浸潤病変)、さらに腹腔内に播種した状態(腹腔内播種病変)が挙げられる。こうした腹腔内腫瘍病変は、肝臓癌、すい臓癌、大腸癌及び胃癌等の各種消化器癌、卵巣癌、子宮癌(子宮体癌及び子宮頚癌を含む)等の生殖器癌、膀胱癌、尿管癌、腎臓癌等などの腹腔内臓器腫瘍の進行に伴って形成されることが多い。
【0038】
本医薬組成物は、上記腹腔内の各種腫瘍の進行に伴って及びこれら腫瘍の切除手術前後において腹腔内腫瘍病変の可能性がある場合に、これを予防しあるいはその進行を抑制するために予防的に投与されうる。また、本医薬組成物は、上記腹腔内の各種腫瘍に伴って、あるいは当該腫瘍の切除手術前後において、腹腔内腫瘍病変がある場合、この進行を抑制し、改善しあるいは治療するために治療的に投与されうる。
【0039】
本医薬組成物は、腹腔内投与に適している。腹腔内投与方法は特に限定されないで、従来公知の各種方法を採用できる。例えば、シリンジ、カテーテルのほか、適当な埋め込みポート等で利用して直接腹腔内に注入することが可能である。
【0040】
本医薬組成物の調製方法は、特に限定されない。例えば、適当な溶液に懸濁後、そのままあるいは無菌の容器に封入して利用することができる。本医薬組成物は、医薬的に許容される添加物を共に含むことができる。添加剤としては特に限定されないが、担体、賦形剤、防腐剤、安定剤、結合剤、酸化防止剤、膨化剤、等張剤、溶解補助剤、保存剤、緩衝剤、希釈剤等が挙げられる。使用し得る添加剤は、特に限定されないが、例えば、水、生理食塩水、医薬的に許容される有機溶媒、ゼラチン、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、エチルセルロース、キサンタンガム、アラビアゴム、トラガント、カゼイン、寒天、ジグリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン(HSA)、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、PBS、無血清培地、医薬添加物として許容される界面活性剤あるいは生体内で許容し得る生理的pHの緩衝液などが挙げられる。使用される担体は、使用部位に応じて上記の中から適宜あるいは組合せて選択されるが、これらに限定されるものではない。また、本剤は、適当な容器に封入した後、凍結乾燥してもよい。
【0041】
本医薬組成物の有効投与量は、特に限定されないが、例えば、患者1回あたり、MOI0.1以上10以下(好ましくは1以上3以下)で抗腫瘍ウイルスを感染保持させたヒト腹膜中皮細胞を105clls以上108cells以下(好ましくは200ml中)、好ましくは105cells以上108cells以下(好ましくは200ml中)を投与することを選択できる。投与回数は、症状等に応じ1回〜数回又は長期にわたって繰り返すこともできる。
【0042】
本医薬組成物は、腹腔内腫瘍病変の可能性があるとき及び当該病変があるときにおいて、どのような段階でも使用できる。上記したように、腹腔内の臓器の腫瘍の切除手術前に予防的あるいは治療的に投与することもできる。当該切除手術後に予防的あるいは治療的に投与することもできる。さらに、腹腔内腫瘍病変の予防又は治療目的で切除手術の有無に関わらず投与することもできる。
【0043】
[抗腫瘍活性ウイルスの増殖方法]
本発明の抗腫瘍ウイルスの増殖方法は、ヒト腹膜中皮細胞に抗腫瘍ウイルスを感染させる工程と、抗腫瘍ウイルスをヒト腹膜中皮細胞内で増殖させる工程と、を備えることができる。本発明の増殖方法によれば、抗腫瘍ウイルスを速やかにかつ効率よく増殖させることができる。したがって、所望の量の抗腫瘍ウイルスを迅速に得ることができる。このため、抗腫瘍ウイルスをそのまま投与する場合に抗腫瘍ウイルスを調製することができる。
【0044】
本増殖方法における抗腫瘍ウイルス及びヒト腹膜中皮細胞については、既に説明した実施態様をそのまま適用でき、これらについての好ましい実施態様も適用できる。また、本増殖方法における感染工程については、既に説明した本発明の感染細胞の製造方法における感染工程についての実施態様をそのまま適用でき、これらのついての好ましい実施態様も適用できる。したがって、抗腫瘍ウイルスは、弱毒化HSVであることが好ましく、UL56遺伝子が不活性化されている変異HSVであることがより好ましく、さらに好ましくは、HSV−1 HF10株である。また、ヒト腹膜中皮細胞は、ヒト大網中皮細胞であることが好ましい。さらに、ヒト腹膜中皮細胞は自家細胞であっても多家細胞であってもよいが、投与にあたりできるだけ生体異物を除去する観点からは自家細胞であることが好ましい。
【0045】
一方、本増殖方法における増殖工程は、抗腫瘍ウイルスがヒト腹膜中皮細胞を溶解しない程度に実施してもよいが、抗腫瘍ウイルスがヒト腹膜中皮細胞を溶解する程度に行うことが好ましい。こうすることで、最大限のウイルス粒子を取得することができるからである。
【0046】
感染工程及び増殖工程における各種条件の設定は、本増殖方法における作用を得られるよう適宜設定すればよい。当業者であればこうした条件設定は必要に応じて行うことができる。
【0047】
以下、本発明を実施例を挙げて具体的に説明するが、これらの実施例は本発明を説明するためのものであって、本発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0048】
[ヒト大網中皮細胞の調製]
患者同意のもと、検体(ヒト大網)を採取(最大10cmX10cm)した。大網を滅菌PBSで洗浄後、はさみでカットし、再度PBSで洗浄した。カットした大網を50mlファルコンチューブに入れ(チューブの1/3−1/4程度)、37℃で温めておいた0.25%トリプシン含有/EDTA(ギブコ社製、GIBCO 25200)を大網が浸漬する程度(約25ml程度)加えた。37℃の温浴にチューブを配置して、5分毎に軽く振ることを20分間継続した。その後、滅菌ビーカーにチューブ内容物を出し、チューブ内を10%FCS−RPMI1640ですすぎ、さらに、大網表面を10%FCS−RPMI1640ですすぎ、新しいファルコンチューブにビーカー内容物を移し、2500rpmで5分間遠心した。遠心後、上清を残量が5mlくらいまで除き、新しい10%FCS−RPMI1640を加えて懸濁し、培養器(dish,flaskなど)に移し、37℃、5%CO2雰囲気(ガス)で静置した。翌日、培地を除き、10%FCS−RPMI1640加えて37℃、5%CO2雰囲気下で培養し、5〜7日程度で継代した。なお、採取した大網は正常であり、培養中の大網中皮細胞も正常細胞であることを確認している。
【実施例2】
【0049】
[弱毒化HSV−1 HF10株感染ヒト大網中皮細胞の調製及び評価]
UL56遺伝子を含む領域を欠損しているHSV−1ウイルスをHF株から分離した。このHSV−1 HF株由来クローン10(MNO10:名古屋大学医学部病態制御研究施設ウイルス感染研究部門にて保管)は、PCR、塩基配列の決定およびウエスタン分析を行うことにより、UL56遺伝子が欠損していることを確認した。本実施例では、このHF10株を弱毒化(UL39遺伝子にLacZ遺伝子を挿入して破壊して弱毒化されている。)したHh101株を用いた。なお、Hh101株は、HF10株のマウスへの毒性を考慮して使用した。
【0050】
実施例1において1回継代したヒト大網中皮細胞にHh101株をMOI0.03及び3でそれぞれ感染させた。すなわち、PBSで所定濃度に調製したウイルス液を、所定の細胞数で準備されたヒト大網中皮細胞に対して添加し、1時間静置した。1時間後、ウイルス液を除き、5%FCS−RPMI1640で培養を開始した。感染から所定時間経過後において細胞状態をメイグリュンワルド・ギムザ染色にて観察した。対照として、同様のMOIで卵巣腫瘍細胞株SKOV3に対してもHF10株を感染させて細胞状態を観察した。
【0051】
図2に、Hh101株感染ヒト大網中皮細胞のメイグリュンワルド・ギムザ染色による経時観察結果(3MOIによる結果)を示し、図3に、Hh101株感染後のヒト大網中皮細胞及びSKOV3細胞の経時的な細胞変性観察結果を示し、図4に、ヒト大網中皮細胞及びSKOV3細胞にHh101株を感染させたときのプラーク形成ユニットの評価結果を示す。
【0052】
図2に示すように、Hh101株感染ヒト大網中皮細胞では、感染させたウイルスの増殖により感染5時間経過後においてヒト大網中皮細胞が溶菌されてウイルス粒子が放出されていた。これに対して、Hh101感染SKOV3細胞は、感染8時間〜11時間経過後で溶菌されていた。したがって、Hh101株は正常細胞であるヒト大網中皮細胞に感染させた方が増殖の立ち上がりが3時間以上早く、感染後短時間で、しかもより多くのウイルスを放出できることがわかった。短時間で増殖放出されることから、腹腔内等体内投与した際、免疫細胞による攻撃が開始される感染初期の時間内においてウイルスの増殖時間を確保することができることがわかった。
【0053】
また、図3に示すように、ヒト大網中皮細胞にHh101株を感染させたとき、Hh101株による細胞変性効果は、MOI0.03のとき感染12時間経過後、MOI3のとき感染6時間経過後に現れた。これに対して、SKOV3株に感染させたとき、MOI0.03で感染18時間経過後、MOI3で感染15時間経過後で細胞変性効果が現れた。以上のことから、Hh101株が正常細胞であるヒト大網中皮細胞に感染させたほうがより早く細胞変性効果を発揮すること、すなわち、高い増殖率を得られることがわかった。
【0054】
さらに、図4に示すように、Hh101株をヒト大網中皮細胞及びSKOV3細胞にそれぞれ感染させたとき(MOI0.03)のPFU(/ml)を計測した結果によれば、明らかに正常細胞であるヒト大網中皮細胞に感染させたとき、SKOV3細胞に感染させたときよりも高い増殖能を示すことが明らかであった。
【実施例3】
【0055】
[弱毒化HSV−1 HF10株(Hh101株)感染ヒト大網中皮細胞によるSKOV3細胞への効果]
実施例1と同様にして2回継代して得たヒト大網中皮細胞にMOI3でHh101株を感染させた。感染から2時間後に0.25%トリプシン/EDTA溶液を添加して感染細胞を分離して(A)1×104、(B)1×103、及び(C)1×102個の感染細胞をSKOV3細胞(約100×106個)に対して投与して細胞状態を観察した。対照として、Hh101株を(a)3×104PFU(MOI0.03)、(b)3×103PFU(MOI0.003)及び(c)3×102PFU(MOI0.0003)でSKOV3細胞に直接投与して細胞状態を観察した。なお、SKOV3細胞は、5%FCS−RPMI1640で培養を開始した。図5に、(A)及び(a)で投与した場合のSKOV3の細胞状態の経時的変化(Hh101感染ヒト大網中皮細胞のSKOV3細胞への感染から9時間から24時間)を示し、図6に、同様に(A)及び(a)で投与した場合のSKOV3のメイグリュンワルド・ギムザ染色による細胞状態の経時的変化(Hh101感染ヒト大網中皮細胞のSKOV3細胞への感染から9時間〜48時間経過後)を示す。
【0056】
図5に示すように、Hh101感染ヒト大網中皮細胞を投与(感染)した場合には、感染9時間経過後において既にSKOV3細胞の溶解が観察された。これに対して、HF10を直接投与した場合には、感染24時間経過後において初めて溶解が観察された。また、感染24時間経過後に、培養上清のウイルス力価(PFU/ml)を測定したところ、上記(A)は6.3×104PFU/mlであり、上記(a)は2.1×102PFU/mlであり、ヒト大網中皮細胞を介してHh101株を投与することで約300倍のウイルス力価を得られた。
【0057】
また、図6に示すように、Hh101感染ヒト大網中皮細胞をSKOV3に投与すると、感染9時間経過後から、細胞変性効果(CPE)を観察することができ、徐々にその量が増えて36時間経過後には、明確に溶菌が観察された。これに対して、Hh101を直接投与すると、感染18時間経過後に始めてCPEを観察することができ、48時間経過後において溶菌を観察することができた。以上のことから、ヒト大網中皮細胞を介してHh101を投与することで早期に高い抗腫瘍活性を発揮させることができることがわかった。
【実施例4】
【0058】
[Hh101株感染ヒト大網中皮細胞の腹腔内播種モデルへの投与の効果]
(1)腹腔内播種モデルの作製
エーテル麻酔下に、合計6匹の6週令のヌードマウスに卵巣癌由来のSKOV3 oldを2×106/500μlPBSをマウスの腹腔内に投与した。
【0059】
(2)Hh101感染ヒト大網中皮細胞の調製
腹腔内播種モデル作製からday6、day9及びday12のとき、実施例1において調製したヒト大網中皮細胞にHh101株をMOI3で感染させた。すなわち、PBSで所定濃度に調製したウイルス液を、所定の細胞数で準備されたヒト大網中皮細胞に対して添加し、1時間静置した。1時間後、ウイルス液を除き、5%FCS−RPMI1640で1時間培養した。感染2時間後に、0.25%トリプシン/EDTA液で処理して、細胞を分散させた後、細胞をファルコンチューブに回収した。回収した分散液を1100rpmで5分間遠心分離後、細胞をPBSで洗浄し、さらに、遠心及び洗浄を2回繰り返した。最終的に得られた細胞をPBSに懸濁して細胞数を計数し、3×106/1mlPBS/マウス)投与した。3匹の腹腔内播種モデル(ウイルス感染細胞1〜3)につき上記の日程でそれぞれ3回投与した。コントロールとして、PBS1mlを3匹の腹腔内播種モデル(コントロール1〜3)について上記日程でそれぞれ3回投与した。
【0060】
これらの腹腔内播種モデルについて、day21で体重を測定するとともに解剖して腹腔内腫瘍の状態を観察計量した。表1にこれらの結果を示す。
【0061】
【表1】

【0062】
表1に示すように、Hh101感染ヒト大網中皮細胞投与群では体重の変化は認めらなかったが、コントロール群の1及び3に体重減少が認められた。また、解剖当日の活動性に関しては明らかな差は認められなかった。
【0063】
また、表1に示すように、Hh101感染ヒト大網中皮細胞投与群とコントロール群とで腫瘍量を比較すると、Hh101感染ヒト大網中皮細胞投与群では、平均で0.28gであり、コントロール群では平均で0.70g(ただし2を除くと1.06gとなる。)であり、明らかな腫瘍量の減少が認められた。
【0064】
以上のことから、ヒト腹膜中皮細胞、より具体的には大網中皮細胞を介して抗腫瘍ウイルスを投与することにより、腹腔内播種病変を効果的に抑制することができることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の抗腫瘍ウイルス感染ヒト腹膜中皮細胞を利用した腹腔内腫瘍病変の予防又は治療を示す概念図である。
【図2】実施例2におけるHh101株感染ヒト大網中皮細胞のメイグリュンワルド・ギムザ染色による経時観察結果(MOI3による結果)を示す図である。
【図3】実施例2におけるHh101株感染後のヒト大網中皮細胞及びSKOV3細胞の経時的な細胞変性観察結果を示す図である。
【図4】ヒト大網中皮細胞及びSKOV3細胞にHh101株を感染させたときの感染からの経過時間とプラーク形成ユニットとの関係を示すグラフ図である。
【図5】実施例3において(A)及び(a)で投与した場合のSKOV3の細胞状態の経時的変化(Hh101感染ヒト大網中皮細胞のSKOVへの感染後9時間から24時間)を示す図である。
【図6】実施例3において(A)及び(a)で投与した場合のSKOV3のメイグリュンワルド・ギムザ染色による細胞状態の経時的変化(SKOV3細胞への感染9時間〜48時間経過後)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗腫瘍活性を有するウイルスを保持するウイルス感染ヒト腹膜中皮細胞。
【請求項2】
前記ウイルスは、抗腫瘍活性を有する単純ヘルペスウイルスである、請求項1に記載の細胞。
【請求項3】
前記抗腫瘍活性を有するウイルスは、UL56遺伝子が不活性化されている変異単純ヘルペスウイルスである、請求項2に記載の細胞。
【請求項4】
前記変異単純ヘルペスウイルスは、単純ヘルペスウイルスタイプ1 HF10株を含む、請求項3に記載の細胞。
【請求項5】
前記ヒト腹膜中皮細胞は、ヒト大網中皮細胞を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の細胞。
【請求項6】
ヒト腹腔内腫瘍病変の予防又は治療用医薬組成物であって、
請求項1〜5のいずれかに記載のウイルス感染ヒト腹膜中皮細胞を有効成分として含有する、組成物。
【請求項7】
ヒト腹腔内臓器腫瘍切除手術の前及び/又は後に腹腔内に投与される、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記腹膜中皮細胞が自家細胞である、請求項6又は7に記載の組成物。
【請求項9】
抗腫瘍活性を有するウイルスを保持するウイルス感染細胞の製造方法であって、
ヒト腹膜中皮細胞に抗腫瘍活性ウイルスを感染させる感染工程と、
前記抗腫瘍活性ウイルスを前記ヒト腹膜中皮細胞内で増殖させる増殖工程と、
を備える、方法。
【請求項10】
前記ヒト腹膜中皮細胞は、ヒト大網中皮細胞を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ヒト腹膜中皮細胞を含む、抗腫瘍活性を有するウイルスの保持用材料。
【請求項12】
前記ヒト腹膜中皮細胞は、ヒト大網中皮細胞を含む、請求項11に記載の保持用材料。
【請求項13】
前記保持用細胞はヒト腹腔内投与用である、請求項11又は12に記載の保持用材料。
【請求項14】
抗腫瘍活性を有するウイルスの増殖方法であって、
ヒト腹膜中皮細胞に前記抗腫瘍活性を有するウイルスを感染させる工程と、
前記抗腫瘍活性を有するウイルスを前記ヒト腹膜中皮細胞内で増殖させる工程と、
を備える、方法。
【請求項15】
前記抗腫瘍活性を有するウイルスは、UL56遺伝子が不活性化されている変異単純ヘルペスウイルスである、請求項14に記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−7277(P2009−7277A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−169020(P2007−169020)
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【出願人】(504139662)国立大学法人名古屋大学 (996)
【Fターム(参考)】