説明

膨張ピストンアセンブリ、ヒート・ポンプとして使用される装置、冷凍機、及び熱機関

【課題】大気を熱源として使用し、かつ、従来技術に関連した諸問題の一部を克服するか、または少なくとも緩和する。
【解決手段】膨張ピストンアセンブリは、膨張室124と、ガスが加圧ガス源から膨張室124内へ進入することを許容するための膨張入口弁128と、膨張室124内で受容されたガスを膨張するための膨張ピストン122と、膨張後のガスを排気するための排気弁104とを備える。膨張入口弁128及び排気弁104の少なくとも一つの弁は、少なくとも一つの弁の両側のガス圧がほぼ等しいときに、開くように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主としてヒート・ポンプとして使用され、特に限定しないがヒート・ポンプとしての作動時に熱源として大気を使用するように構成された装置に関するものである。さらに、本発明による装置は、冷凍機(例えば、空気調整ユニット)または熱機関としての使用に向けて構成されることができる。
【背景技術】
【0002】
ビルなどの暖房に使用される従来のヒート・ポンプでは、密閉蒸気サイクルで作動する作動油が使用され、一般的に、熱交換器を介して地面または貯水器のいずれかから熱供給量が引き出される。このような構成において使用される熱交換器は、一般的に、ヒート・ポンプ自体から分離されており、特に、地中熱源式であるか、または、静水または流水を必要とする場合にはかなりのサイズであることが多い。当該装置の作動油は通常、密閉サイクルで機能し、熱交換器から得られた熱は、別の熱交換器を介して別の熱負荷部に供給される。このようなヒート・ポンプで作動油と一般的に使用される冷却材/冷媒は、潜在的な汚染物質であることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−113256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ヒート・ポンプにおける熱源としての大気の使用は、当技術分野で公知であるが、一般的に、大気単位体積当たりの低エネルギーの結果として必要とされる高い体積流量を処理するために非効率な回転式圧縮機(送風機)の使用が必要である。また、このような構成において配置される熱交換素子は一般的に、空気中の湿気による着氷が発生しやすい。
【0005】
したがって、本発明の出願人らは、大気を熱源として使用することができ、かつ、従来技術に関連した諸問題の一部を克服するか、または少なくとも緩和する改良形ヒート・ポンプの必要性を既に認識している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に従って、ヒート・ポンプとして使用される装置であって、圧縮室手段と、ガスが圧縮室手段に入ることを可能にする入口手段と、圧縮室手段内に収容されたガスを圧縮する圧縮手段と、圧縮手段によって圧縮されたガスから熱エネルギーを受け取る熱交換器手段と、熱交換器手段への接触後にガスを受け取る膨張室手段と、膨張室手段内で受け取られたガスを膨張させる膨張手段と、膨張後に上記装置からガスを抜く排気手段とを備える装置を提供する。
【0007】
ガスを周囲大気とすることができる。このようにして、大気を熱源として、かつ作動油(例えば、単相作動油)として使用することができるヒート・ポンプを提供する。有利なことに、作動油として大気を使用することは、潜在的に汚染する冷却材を使用する必要がないことを意味する。さらに、熱源と作動油を一体的にすることができることから、ヒート・ポンプのサイズおよび複雑性をかなり低減することができる。例えば、ヒート・ポンプは、装置の体積全体の大部分は空気力学的に活性であるように構成されることができる。このようにして、ヒート・ポンプは、設置しやすいように構成された単一のコンパクトな装置内に収容されることができる。さらに、全ての熱交換は、装置自体内で発生することができることから、本発明には、大型で複雑な熱交換器は不要である。
【0008】
圧縮は、実質的に等エントロピー圧縮または断熱圧縮とすることができる。熱交換は、実質的に等圧熱交換とすることができる。膨張は、実質的に等エントロピー膨張または断熱膨張とすることができる。
【0009】
入口手段は、圧縮手段と流体連通している少なくとも1つの入口開口を備えることができる。例えば、圧縮手段は、ケーシング内に収容されることができ、入口手段は、ケーシング内に開口アレイを備えることができる。開口アレイは、使用においては、ケーシングの下部(即ち、底部)に設けられることができる。あるいは、開口アレイは、使用においては、ケーシングの上部(例えば、頂面)に設けられることができる。
【0010】
入口手段は、圧縮室手段内へのガスの進入を制御する少なくとも1つの入口弁を更に備えることができる。その少なくとも1つの入口弁は、起動時に、そのそれぞれの入口の開口を封止するように構成されることができる。その少なくとも1つの入口弁は、逆止弁とすることができる。その少なくとも1つの入口弁は、受動的に制御される入口弁を備えることができる。例えば、その少なくとも1つの入口弁は、圧力起動式入口弁(例えば、リード弁、または板弁)を備えることができる。入口弁は、それぞれの開口を封止時に軽く閉鎖状態に保持されるように構成されることができる。その少なくとも1つの入口弁は、そのそれぞれの吐出弁が開いている間は閉鎖状態のままであるように構成されることができる(以下を参照されたい)。別の実施形態においては、その少なくとも1つの入口弁は、能動的に制御される入口弁(例えば、板弁または回転弁)を備えることができる。その少なくとも1つの入口弁は、弁両側での圧力が均等化されたときに開くように構成されることができる。
【0011】
あるいは、その少なくとも1つの弁は、その少なくとも1つの入口開口から延在する通路と、通路のうち、その少なくとも1つの入口開口を遮断する第1の位置と入口開口から一定の間隔で配置された第2の位置との間の部位に沿って自由に移動可能であるように構成された部材とを備えることができる。このようにして、部材の動きを部材全体にわたる圧力差によって自動的に起動させることができる弁(以下、「ボール弁」という)を設定することができる。部材は、ほぼ球形(以下、「ボール部材」という)とすることができる。部材は、プラスチック材で形成されることができる。
【0012】
有利なことに、ボール部材の第1の位置と第2の位置との間の距離は、ボールの直径のわずか半分であればよい。したがって、3mmの直径を有するボールの場合、ボールは、入口を完全に封止/封止解除するためには1.5mm変位させさえすればよい。このようにして、ボールの動きに対応するために圧縮室手段内で必要とされる空間は、きわめて少量にすぎない。さらに、ボール部材は軽量でありかつ移動距離は小さなものにすぎないことから、ボール弁は、1500回/分開閉したときでさえも静かに動作させることができる。一つの特定の実施形態においては、入口手段は、3000個のこのようなボール弁を備え、各々のボールは、低比重のプラスチック材で形成される。このようにして、移動可能部分(即ち、ボール)の慣性が従来の金属製の板弁と比較すると低い弁が設置される。
【0013】
圧縮手段は、圧縮室手段内に含まれたガスを圧縮する圧縮ピストン手段を備えることができる。圧縮ピストン手段は、中に収容されたガスを圧縮するために圧縮室手段内の圧縮ピストン手段を駆動させる駆動手段に結合されることができる。
【0014】
圧縮ピストン手段は、少なくとも2:1の有効ピストン直径:ピストン行程長の比を有することができる。有利なことに、このような比によって、各等エントロピー圧縮(かつ、したがって高サイクル効率)が可能となり、これは、ピストン手段の方がより等しい寸法を有する従来のピストンより表面積/圧縮ガス単位体積が高いものの、ピストン面に螺接触しているガスは、効果的に停滞に近いものであり、一方、シリンダー壁部ではガスは不可避な動きをしており、この壁面積が、このような構成によって比例して低減されるからである。したがって、ピストンの面積と比較するとシリンダー壁部面積を低減することによって、通路面全体にわたるガス流量が最小限に抑えられる。
【0015】
このような比率の他の利点としては、以下がある。
(i)相対的に多量の空気を低速で移動させることができる。
(ii)ピストンの移動距離が少なくなるほど機械的損失が少なくなる。
【0016】
(iii)任意のストロークについてピストンの移動距離が少なくなり、かつ各シールが対応する空気量/サイクルが多いほど、もしくは、ピストンの移動距離が少なくなるか、または、各シールが対応する空気量/サイクルが多いほど、圧縮ピストン手段に関連したシール内の摩擦損失が少なくなる。
【0017】
(iv)圧縮ピストン手段に関連した周辺シールにおける漏れの影響は、従来の割合のピストンよりも小さい。
有効ピストン直径:ピストン行程長が2:1である場合、ピストン面面積:シリンダー壁面積の比は1:1である。これとは対照的に、通常のディーゼル・エンジンにおいては、ピストン直径:ピストン行程長は約1:1であり、ピストン面面積:シリンダー壁面積の比は1:2である。一つの実施形態においては、有効ピストン直径:ピストン行程長の比は少なくとも3:1である。
【0018】
別の特に有利な実施形態においては、有効ピストン直径:ピストン行程長の比は少なくとも4:1である。4:1またはそれ以上の比では、従来の割合のピストンを凌ぐ顕著な効率の向上が得られることが既に判明している。例えば、有効ピストン直径を約500mmとすることができ、有効行程長を30mmと70mmとの間とすることができる。
【0019】
圧縮ピストン手段は単一の圧縮ピストンを備えることができる。バランスが取れた作動を目指して、単一の圧縮ピストンは、釣り合いおもりを使用して逆位相で(即ち、180°の位相ずれにて)作動するように構成されることができる。あるいは、圧縮ピストン手段は複数の圧縮ピストンを備えることができる。このようにして、ピストン手段に作用する質量および負荷は、より容易に釣り合わされることができる。複数の圧縮ピストンの場合、有効ピストン直径:ピストン行程長の比は、組み合わせ有効ピストン直径:ピストン行程長の比と定義されている。
【0020】
複数の圧縮ピストンの場合、ピストンのうち2つ又はそれ以上は、位相ずれで移動するように構成されることができる。各ピストンは、例えば等しい間隔で隣接ピストンから遅れる。例えばn個のピストンの場合、各ピストンは、隣接ピストンと(1/n)*360°位相ずれとすることができる。このようにして、より一定の力による負荷が駆動手段に掛かり、その結果、はずみ車の必要性が低減されるとともに、単一の高速(定出力)電動機の使用が可能となる。また、より多くの出力が必要とされる場合には、さらなる圧縮機/膨張機モジュールを容易に装置に増設することができる。
【0021】
一つの実施形態においては、複数のピストンは、軸線に沿って横方向に一定の間隔で配置される。別の実施形態においては、複数のピストンは、中心軸線周りに円周方向に一定の間隔で配置される。例えば、圧縮ピストン手段は、1対の正反対のピストン(例えば、ボクサータイプの構成)を備えることができる。対向するピストン同士は、別々の容量のガスを圧縮するように構成されることができる。一つの実施形態においては、対向する圧縮ピストン同士は逆位相で作動する。このようにして、ピストンの作用を釣り合わせることができる。
【0022】
単一の圧縮ピストンを備える圧縮ピストン手段の場合、圧縮ピストン手段は、単一の圧縮ピストンを受け取る単一の圧縮室を備える。複数の圧縮ピストンを備える圧縮ピストン手段の場合、圧縮室は、各々がそれぞれの圧縮ピストンに関連した複数の離散的圧縮室を備えることができる。各圧縮室はそれぞれ、少なくとも1つの入口弁を有することができる。
【0023】
各圧縮ピストンは、第1の位置から第2の位置まで移動可能であり、それぞれの圧縮室内に収容されたガスの圧縮は、各圧縮ピストンが第1の位置から第2の位置まで移動するにつれて行われる。入口手段は、それぞれの圧縮ピストンが第1の位置に移動するにつれてガスが各圧縮室に入ることを可能にするように構成されることができる。例えば、少なくとも1つの入口弁は、それぞれの圧縮ピストンが第2の位置から第1の位置まで移動したときに(例えば、前回の圧縮段階後)開くように構成されることができる。ガスが各圧縮室に入ると、(例えば、少なくとも1つの入口弁を閉じることによって)圧縮室は封止され、それぞれの圧縮ピストンは、ガスを圧縮するように駆動手段によって第1の位置から第2の位置まで駆動して移動する。
【0024】
駆動手段は、機械的リンク機構による駆動機構を備えることができる。別のバージョンにおいては、駆動手段は、非機械的リンク機構(例えば、電磁駆動装置)を有することができる。
【0025】
ガスが圧縮手段によって圧縮されると、ガス(この時点では圧縮によって上昇して入口温度を超える温度を有するはずである)は、いつでも熱交換器手段に容易に接触することができる。一つの実施形態においては、少なくとも1つの圧縮ピストンは、各々がそれぞれの圧縮室から熱交換器手段までガスがその少なくとも1つのピストンを通過することを可能にする吐出弁を有する1つまたはそれ以上の開口を備えることができる。各開口は少なくとも1つの圧縮ピストンの作用面上に位置することができる。ピストンの作用面を通る開口を設けることによって、弁手段に対して利用可能である圧縮ピストン手段の面積は最大化される。弁手段全体がシリンダー・ヘッド内に位置する従来の圧縮機設計では、進入を行うのに利用可能なシリンダー・ヘッドの面積は約半分に過ぎず、吐出についても半分である。本発明の圧縮ピストン手段は、従来の圧縮機における任意のシリンダー・ボアの約2倍の弁面積を実現することができる。
【0026】
各吐出弁は、少なくとも1つの圧縮ピストンが第1の位置から第2の位置まで移動し始めるにつれて1つまたはそれ以上の圧縮ピストン開口を封止するように構成されることができる。1つのバージョンにおいては、各吐出弁は、少なくとも1つのピストンが第2の位置に向かって第1の位置から移動するについて閉じられる圧力起動弁(例えば、有孔リード弁、ボール弁、板弁、または回転弁)を備えることができる。各圧力起動弁は、熱交換器手段内のガス圧の結果として閉じるように構成されることができ、このガス圧は、圧縮段階の大半について、圧縮ピストンまたは少なくとも1つの圧縮ピストンの圧縮室に関連した圧縮室内のガス圧力を上回るものとすることができる。その各圧力起動弁は、そのそれぞれの圧縮室内のガス圧が熱交換器手段内のガス圧以上になると開くように構成されることができ、圧縮ガスを熱交換器手段に吐出することができる。
【0027】
熱交換器手段は、負荷流体を収納する熱伝導体を備えることができ、熱伝導体は、圧縮ガスから負荷流体への熱の伝達を促進するように構成される。例えば、熱伝導体は、高い表面積:体積比を有することができる。このようにして、熱交換器は、相対的に低温のガスから熱を抽出することができる。熱交換器手段は、封止可能な室内に収納されることができる。
【0028】
熱交換器手段は、水蒸気を圧縮ガスから除去するように構成されることができる。このようにして、ガス中の水分をその後の膨張段階前に除去して、排気手段内に氷の形成を最小限に抑えることができる。
【0029】
熱交換器手段は、高質量、低速ガス流量を可能にする大きな横断面積を有することができる。有利なことに、このような流量によって、水蒸気の凝縮の増加を可能なように、熱交換器手段へのガスの接触時間が最大化される。例えば、熱交換器手段は、5メートル/秒以下のガス流量を受け入れるように最適化または構成されることができる。このような低速が必要なのは、確実に、復水が排気手段に吹き飛ばされずに熱交換器手段の表面に定着するためである。一つの実施形態においては、熱交換器手段は、3メートル/秒以下のガス流量を受け入れるように構成される。別の実施形態においては、熱交換器手段は、1.5メートル/秒と2メートル/秒の間のガス流量を受け入れるように構成される。
【0030】
熱交換器手段は、復水を回収する回収トラップを備えることができる。ガスが熱交換器手段で冷えるにつれて、ガス内に含まれた一切の水蒸気は凝縮することができる。熱交換器は、復水を回収トラップ内に導くように構成されることができる。回収トラップ内に回収された水は、水位が閾値になると浮動弁または他の水感知弁によって放出されることができる。
【0031】
状況によっては、膨張前に空気中の全ての水含有量を除去することが不可能である場合があり、したがって、膨張機内でのある程度の着氷が発生する可能性があると考えられる。一つの実施形態においては、ヒート・ポンプからの熱出力の一部は、臨時の凍結防止サイクル内で使用される。別の実施形態においては、先に言及した熱交換器手段の後であるが、排気手段の前にさらなる熱交換器が設置されることによって熱交換器手段内のガスからさらなる水分を除去する、即ち、排気手段を介して本装置を出る空気によって冷却する。全体的な性能係数は第2の熱交換器手段によって低減される可能性があるが、さらなる膨張前の冷却が常に必要とされるべきではないことから、ヒート・ポンプの作動は不当に損なわれるべきではなく、膨張前のさらなる空気の冷却は、水分抽出のみに必要とされる程度に限定されるように調整されるべきである。
【0032】
一つのバージョンにおいては、熱交換器手段は、(少なくとも部分的に)熱伝導体を取り囲む熱伝達流体と、熱エネルギーが圧縮ガスから熱伝達流体に伝達されるように、圧縮ガスを流体に通す手段とを更に備えることができる。熱エネルギーは、負荷流体に伝達される熱の割合を最大化するために熱伝達流体から熱伝導体に伝達される。例えば、圧縮ガスを流体に通す手段は、有孔(例えば、多孔性)スクリーンを備えることができる。有孔スクリーンは、流体内に気泡構造体を発生させるように構成されることができ、この気泡構造体は、非常に高い表面積:体積比を有する。有孔スクリーンは、圧縮手段と熱伝導体との間に位置決めされることができる。熱伝達流体を液体とすることができ、かつ、有孔スクリーンを通過するガスによって創製された気泡を担持するのに適切な粘度を有するように選ぶことができる。熱伝達流体は油(例えば、シリコーン・オイル)を含むことができる。熱伝達流体は水と混和不可能であり、水よりも低い密度を有し、通過する加圧ガスの温度より高い自然発火温度を有するように選ばれることができる。細かい気泡の出力を維持するために、2つ以上の有孔スクリーンを配置することができる。別のバージョンにおいては、負荷流体を熱伝達液とすることができ、その結果、熱伝導体の必要性が回避される。
【0033】
圧縮ガスを流体に通す手段は、熱交換器手段内の局部(例えば、熱交換器手段の周辺部よりも中心部が強力である流路)周りに集中するガス流を生成するように構成されることができ、かつ熱交換器手段内で形成された復水を回収トラップに向かって導くように構成されることができる。例えば、圧縮ガスを流体に通す手段は、使用においては、回収トラップより上方にある頂点部を含む凸状または円錐体を有する有孔スクリーンを備えることができる。一つの実施形態においては、回収トラップは周辺回収トラップを備えることができる。さらに、熱伝達流体を復水よりも低い密度を有するように選択することができ、その結果、復水が落ちて回収トラップ内に回収することができる場合には、復水が局所ガス流から離れて、気泡路の集中度が小さい領域に向かって復水が変位するのが促進される。
【0034】
熱伝達液が使用される場合、液体は、圧縮手段が使用されていない期間中に圧縮弁から漏出する恐れがある。このような液体をケーシング内に収容することができ、立ち上げ時に圧縮段階によって液体を戻すことができる。
【0035】
排気手段は膨張ピストン手段を備えることができる。膨張ピストン手段は、(例えば、圧縮ピストン手段が単一の圧縮ピストンを備えるとき)単一の膨張ピストンを備えることができる。バランスが取れた作動を目指して、単一の膨張ピストンは、釣り合いおもりを使用して逆位相で作動するように構成されることができる。あるいは、膨張ピストン手段は、(例えば、圧縮ピストン手段が複数の圧縮ピストンを備えるとき)複数の膨張ピストンを備えることができる。複数の膨張ピストンの場合、ピストンのうち2つ又はそれ以上は位相ずれで作動するように構成されることができる。バランスが取れた作動を目指して、対向する対の膨張ピストンは逆位相で作動することができる。
【0036】
単一の膨張ピストンを備える膨張ピストン手段の場合、膨張室手段は、単一の膨張ピストンを受け止める単一の膨張室を備えることができる。複数の膨張ピストンを備える膨張ピストン手段の場合、膨張室は、各々がそれぞれの膨張ピストンに関連した複数の離散的圧縮室を備えることができる。
【0037】
少なくとも1つの膨張ピストンは、それぞれの圧縮ピストンと同調して移動することができる。
少なくとも1つの膨張ピストン手段は、それぞれの圧縮ピストンの長さに対応するピストン行程長を有することができる。一つの実施形態においては、少なくとも1つの膨張ピストンは、それぞれの圧縮ピストンと等しい有効ピストン直径:ピストン行程長の比(例えば、少なくとも2:1、少なくとも3:1または少なくとも4:1)を有する。
【0038】
少なくとも1つの膨張ピストンは、第1の位置から第2の位置まで移動可能とすることができ、それぞれの膨張室内に含まれたガスの膨張は、第1の位置から第2の位置に少なくとも1つの膨張ピストンを移動させやすくするためにガスが仕事をするにつれて行われる。このようにして、処理ガス内に含まれる元の圧縮エネルギーの一部を回復することができ、かつ圧縮段階の仕事を支援するために使用することができる。
【0039】
第1の位置においては、各膨張ピストンは、(ガスが熱交換器手段と接触した後に)ガスがそのそれぞれの膨張室に入ることを可能にするように構成されることができる。例えば、少なくとも1つの膨張ピストンの各々が、ガスが熱交換器手段からそのそれぞれの膨張室までその少なくとも1つの膨張ピストンを通過することを可能にする機械的に駆動される入口弁(以下、「膨張入口弁」という)を有する1つまたはそれ以上の開口を備えることができる。各開口は、少なくとも1つの膨張ピストンの作用面上に位置することができる。ピストンの作用面を通る開口を設けることによって、弁手段に対して利用可能な膨張ピストン手段の面積が最大化される。
【0040】
各膨張入口弁は、少なくとも1つの圧縮ピストンが第1の位置内に移動するにつれてガスがそれぞれの膨張ピストン開口を通過することを可能にするように構成されることができる。
【0041】
一つの実施形態においては、少なくとも1つの膨張入口弁は少なくとも1つの膨張ピストンの下面上に配置することができ、膨張手段は、少なくとも1つの膨張ピストン内の開口と位置合わせ可能であり、かつ少なくとも1つの膨張ピストンが第1の位置に移動するにつれて突出部が膨張入口弁に接触したときに膨張入口弁を強制的に開くように構成され、かつ少なくとも1つの膨張ピストンが第2の位置に向かって移動するにつれて膨張入口弁が閉じることを可能にする突出部を備えることができる。突出部は、少なくとも1つの膨張室に対して調整可能に取り付けられることができる。このようにして、膨張入口弁が開いている行程の割合を制御することができる。例えば、突出部を弾性的に偏向させて、調整可能な当接部分に対して所定の位置を維持することができる。例えば、突出部をばねに結合させることができる。複数の突出部を設けて、複数の起動負荷をその各膨張入口弁に印加することができる。
【0042】
別の実施形態においては、少なくとも1つの膨張入口弁は回転弁を備えることができる。回転弁は、少なくとも1つの膨張ピストンの面(例えば、後面)に回転可能に結合された板部を備えることができ、板部は、少なくとも1つの膨張ピストンのその各開口と位置合わせする少なくとも1つの開口を備える。板部は、板部と膨張ピストン上の開口とが位置合わせされる第1の位置と、開口がもはやまったく位置合わせされた状態ではない第2の位置との間で少なくとも1つのピストンに対して回転可能とすることができる。回転弁は、第1の位置と第2の位置との間で小さな角度(例えば、5°から10°)で振動するように構成されることができる。第2の位置においては、板部は、少なくとも1つの膨張ピストンに面(例えば、後面)に当たるように圧迫されるように構成されることができる。
【0043】
回転弁は、弁動作中に板部の少なくとも1つのピストンの面との間の摩擦を低減し、かつ間隔を変えるか、もしくは摩擦を低減するか、または間隔を変える間隔手段を備えることができる。このようにして、少なくとも1つの開口を通る空気の圧力の結果として板部とピストン面とが動かなくなる可能性が最小限に抑えられる。間隔手段は、板部がピストン面に対して回転したときに回転するように構成された部材を備えることができる。例えば、部材は、ころ軸受またはボール軸受を備えることができる。一つの実施形態においては、部材はテーパー状側面部と係合するように構成され、テーパー部の方向は、板部が第2の位置から第1の位置に移動するにつれて板部とピストン面との分離を引き起こすようなものである。テーパー状側面部はテーパー状溝を備えることができる。テーパー状側面部はピストン面上に位置することができ、部材は板部上に位置することができる(その逆も同様)。有利なことに、板部は、第1の位置と第2の位置の間を長い距離を移動する必要はなく(それで弁は、相対的に静かである)、弁は、板部が水平軸において動きが固いときに相対的に制御しやすい(特に高速時に)。別の実施形態においては、間隔手段は、ばね手段(例えば、板ばね手段)を備える。
【0044】
膨張入口弁を、圧力、機械的起動、電磁的起動、油圧的起動のうちの1つまたはそれ以上によって、または、任意の他の手段によって動作させることができる。本発明の一つの実施形態においては、圧縮ピストン手段および膨張ピストン手段は、同期して機能するように互いに結合することができる。例えば、単一の圧縮ピストンおよび単一の膨張ピストンの場合、結合手段(例えば、相互結合支柱)によってピストンを互いに(例えば、剛性に)結合することができる。複数の圧縮ピストンおよび複数の膨張ピストンの場合、1対の圧縮ピストンと膨張ピストンとを互いに結合することができる。このようにして、膨張段階を利用して、圧縮段階の仕事を支援して、かつ本装置のサイクル当たりの仕事を低減する(例えば、大幅に低減する)ことができる。このようなピストン構成を有する主たる利点は、
(i) 膨張中に戻されるエネルギーを直に用いて圧縮中に必要とされるエネルギーを支援することができ、
(ii) 2つのピストン面を安定させる一助となり、
(iii) ピストンに課せられた高い負荷に対応することができる軽量ピストン構造体
に対応し、また、
(iv) 負荷は、サイクル内の特定の時点で外部圧力によって無効にされることが多いので全体的に低減することができる。
【0045】
別の構成においては、対を成す圧縮ピストンを互いに(例えば、剛性に)結合することができる。あるいは、または、さらに対を成す膨張ピストンを互いに(例えば、剛性に)結合することができる。上記の利点ii)からiv)は、当該の圧縮機と圧縮機の対の場合に当てはまり、i)からiv)は、このような膨張機と膨張機の組み合わせの場合に当てはまる。
【0046】
圧縮室および膨張室は、大径および短行程(例えば、それぞれ、0.6m台および0.03m台)とすることができるので、ピストン間の領域を利用して、熱交換器手段を収納することができる。このようにして、一般家庭の建物の壁部内またはその近傍に容易に取り付けることができる非常にコンパクトなヒート・ポンプを得ることができる。しかしながら、別の実施形態においては、熱交換器手段は、ピストン間の領域の外側に位置することができる。直にピストン間の空間に位置しない別個の熱交換器の主たる利点は、
(i) ピストンのはるかに軽量および複雑ではない構成という効果があり、
(ii) 相互結合棒に対応する熱交換器が不要であるのではるかに単純な熱交換器という効果があり、
(iii) 構成品の物理的なレイアウトにおけるはるかに大きな柔軟性という効果があり、
(iv) 複数の圧縮ピストンと膨張ピストンとが1つの熱交換器を共有することを可能にし、
(v) 直接型の暖房として、例えば、加熱された圧縮空気を使用するように設計された放熱器を設置して建物全体に対応する1つの大きな熱交換器を効果的に実現することによって、作動油を使用することが可能になる。
【0047】
排気手段は、膨張室手段と流体連通している1つまたはそれ以上の出口開口を備えることができ、かつ1つまたはそれ以上の出口開口を介したガスの逃げを制御する排気弁(例えば、先に定義したタイプの回転弁)を備えることができる。排気弁を機械的に起動させることができ、かつ圧縮段階/膨張段階の大部分にわたって閉じることができる。例えば、排気弁を、(例えば、圧縮手段を制御する駆動手段と共に回転するカムを介して)圧縮手段の動きに依存して起動させることができる。膨張入口弁起動手段は、膨張室手段および熱交換器手段内の圧力が、膨張入口弁が開く前にほぼ均等化することを可能にするように構成されることができる。排気弁は、膨張/圧縮行程の大部分にわたって閉じることができる。膨張室内の圧力が基準圧力(例えば、大気圧)と等しくなるので、排気弁は、膨張行程のそれ以降にわたって実質的に基準つまり大気圧のままであることを可能にするように構成されることができる。例えば、排気弁は、膨張室内の圧力が基準つまり大気圧と等しくなるにつれて開くように構成されることができる。このようにして、作用ガスの過剰膨張(排気弁が開かれたときの突発的かつ非効率な圧力上昇を引き起こす恐れがある)の結果としての大気圧を下回る圧力の低下を回避することができる。
【0048】
排気手段は熱交換器手段の一端に位置することができ、入口は反対端に位置することができる。このようにして、入口手段と排気手段との間を流れる間に空気と熱交換器手段との接触を最大化することができる。
【0049】
一つの実施形態においては、入口手段は、圧縮ピストンを駆動させる駆動手段近傍(例えば、その上方)に位置することができる。このようにして、ヒート・ポンプは、大気圧を若干上回る空気を用いて作動することができる。
【0050】
空気圧調整ユニットとしての使用
本発明の第1の態様による装置は、空気圧調整ユニットとしても使用されることができる。例えば、入口および排気部は、各々が建物の内側と外側とで空気を抜く/解放するリムを有する分岐ダクトを備えることができる。弁(例えば、浮動弁)を使用して、建物および建物外部から取り込まれる空気の割合と、また建物および建物外部に排気される空気の割合を変えることができる。建物を冷房するために、空気は、初めは圧縮によって加熱された状態で建物内からポンプに入り、(先述したように)負荷流体に至るエネルギーを失い、その後、膨張されて(したがって、冷却されて)建物に戻される。負荷流体は、外部熱交換器を使用して冷却されることができるか、または、別の実施形態においては、単に流し捨てられることができる。例えば、負荷流体が水である場合、現地の水泳プール、湖または河川を水源とヒートシンクとの両方として使用することができる。
【0051】
熱機関としての使用
本発明の実施形態の第1の態様による装置は、大略的に、熱力学的に活性である体積として利用可能な全体的な体積の割合が非常に高いものとなる。したがって、本装置は多量の電力を適度な温度差で処理することができることから、本発明に係る装置は、効果的な温度差の低い熱機関として作動するように構成されることができる。この運転モードであれば、大気は、圧縮段階に入って圧縮され、熱交換器手段に移送されると、かつては負荷流体であったが今は熱供給部であるものによって加熱された後、膨張手段を介して膨張する。膨張手段は、比体積が今度は装置を介して増大するので、対応するヒート・ポンプバージョンよりも大きな膨張室を有するように構成されることができる。しかしながら、本装置は本質的に同じものである。
【0052】
熱機関の理想的なサイクル熱効率は、単純に、同じ温度範囲にわたって機能するヒート・ポンプの性能係数の逆である。このようにして、さらなるエネルギーを低位熱から抽出する効果的な方法が提供される。このような構成を用いて、例えば、発電所の冷却システムに取って代ってさらなるエネルギーを工程内で抽出することができる。
【0053】
本発明の第2の態様に従って、熱伝達流体と、熱エネルギーが圧縮ガスから熱伝達流体に伝達されるように、圧縮ガスを熱伝達流体に通す手段とを備える、加圧ガスを受け取る室を備える熱交換器を備える、ヒート・ポンプとして使用される装置が提供される。
【0054】
圧縮ガスを熱伝達流体に通す手段は、有孔(例えば、多孔性)スクリーンを備えることができる。熱伝達流体を液体とすることができ、かつ有孔スクリーンを通過する加圧ガスによって創製された気泡を担持するのに適切な粘度を有するように選ぶことができる。熱伝達流体は油(例えば、シリコーン・オイル)を備えることができる。熱伝達流体は水と混和不可能であり、水よりも低い密度を有し、通過する加圧ガスの温度より高い自然発火温度を有するように選ばれることができる。細かい気泡の出力を維持するために、2つ以上の有孔スクリーンを配置することができる。
【0055】
一つのバージョンにおいては、負荷流体を収納する熱伝導体を備えることができ、熱伝導体は、熱伝達液から負荷流体への熱の伝達を促進するように構成される。例えば、熱伝導体は高い表面積:体積比を有することができる。
【0056】
別のバージョンにおいては、負荷流体を熱伝達液とすることができ、その結果、熱伝導体の必要性が回避される。
ガスが熱交換器手段で冷えるにつれて、復水(例えば、水)を熱交換器手段内で形成することができる。圧縮ガスを熱伝達流体に通す手段は、熱交換器手段内の局部(例えば、熱交換器手段の周辺部よりも中心部が強力であるガス流)周りに集中するガス流を生成するように構成されることができ、かつ熱交換器手段内で形成された復水を周辺回収トラップに向かって導くように構成されることができる。例えば、圧縮ガスを熱伝達流体に通す手段は、使用においては、周辺回収トラップより上方にある頂点部を含む凸状または円錐体を有する有孔スクリーンを備えることができる。さらに、熱伝達流体は、復水よりも低い密度を有するように選択されることができ、その結果、復水が落ちて周辺回収トラップ内に回収することができる場合には、復水が局所ガス流から離れて、ガス流の集中度が小さい領域に向かって復水が変位するのが促進される。
【0057】
周辺回収トラップ内に回収された水は、水位が閾値になると浮動弁または他の水感知弁によって放出されることができる。
本発明の第3の態様に従って、大気が圧縮室に入ることを可能にする入口手段と、圧縮室内に収容された大気を圧縮する圧縮手段と、圧縮手段によって圧縮された大気から熱エネルギーを受け取る熱交換器手段と、熱エネルギーが熱交換器手段に移送されると大気を本装置から抜く排気手段とを備える、ヒート・ポンプとして使用される装置が提供される。
【0058】
本発明の第4の態様に従って、第1の開口を有する第1の部分と、第2の開口を有する第2の部分とを備え、第1の部分が、流体の通過を防止するために第1および第2の開口が位置合わせされない第1の位置と、流体の通過を可能にするために第1および第2の開口が位置合わせされる第2の位置との間で第2の部分に対して回転可能であり、弁動作中に第1の部分と第2の部分との間隔を変える間隔手段を更に備える弁が提供される。
【0059】
間隔手段は、第1の部分が第2の位置に入るにつれて第1および第2の部分が圧迫されることを可能にするように構成されることができる。このようにして、第1および第2の開口を通過する流体の圧力の結果として2つの部分が動かなくなる可能性を最小限に抑えることができる。第1の部分は、ほぼ板状である。
【0060】
間隔手段は、第1の部分が第2の部分に対して回転したときに回転するように構成された部材を備えることができる。例えば、部材は、ころ軸受またはボール軸受を備えることができる。一つの実施形態においては、部材はテーパー状側面部と係合するように構成され、テーパー部の方向は、第1の部分が第2の位置から第1の位置に移動するにつれて第1の部分と第2の部分との分離を引き起こすようなものである。テーパー状側面部はテーパー状溝を備えることができる。テーパー状側面部は第2の部分上に位置することができ、部材は第1の部分上に位置することができる(その逆も同様)。有利なことに、第1の部分は、第1の位置と第2の位置の間を長い距離を移動する必要はなく(それで弁は、相対的に静かである)、弁は、第1の部分が水平軸において動きが固いときに相対的に制御しやすい(特に高速時に)。
【0061】
別の実施形態においては、間隔手段は、ばね手段(例えば、板ばね手段)を備える。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明を実施する第1のヒート・ポンプの概略横断面図である。
【図2】ヒート・ポンプ・サイクルにおける様々な段階での図1のヒート・ポンプの一連の概略図を示す図である。
【図3】図1のヒート・ポンプ内で配置された排気手段の概略詳細を示す図である。
【図4】図1のポンプの一般的なサイクルをモデル化したP−V図である。
【図5】本発明を実施する第2のヒート・ポンプの概略横断面図である。
【図6A】図5のヒート・ポンプにおいて配置されたピストンおよび回転弁の概略詳細を示す図である。
【図6B】図6Aに示すピストンの下面図である。
【図6C】図6Aに示すピストンおよび回転弁の概略横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0063】
ここで、本発明の実施形態について、添付図面を参照しながら一例として説明する。
図1は、入口手段30と、圧縮室40と、圧縮手段60と、熱交換器手段80と、膨張室124と、膨張手段120と、排気手段100とを備える本体20を備えるヒート・ポンプ10を示す。
【0064】
入口手段30は、複数の入口開口32と入口弁34とを備える。入口弁34は、入口開口32を遮断するために入口弁34が移動するにつれて入口の開口32が封止されるように、入口の開口32に対してずれている複数の入口弁の開口36を備える。入口弁34を圧力起動弁(例えば、多孔性リード弁)とすることができる。
【0065】
圧縮手段60は、駆動機構64に結合された圧縮ピストン62を備える。圧縮ピストン62は圧縮室40に摺動可能に取り付けられ、かつ、その中に収容されたガスを圧縮するように構成される。圧縮ピストン62は、開口66を備える作用面63と、頂面に配置され、開口66を通るガス流を制御する吐出弁68とを有する。吐出弁68は、開口66を遮断するために吐出弁68が移動するにつれて開口66が封止されるように開口66に対してずれている複数の吐出弁の開口70を備える。吐出弁68を圧力起動弁(例えば、多孔性リード弁)とすることができる。
【0066】
使用においては、入口手段30を介してヒート・ポンプに入る空気は、圧縮室40内に入ることができる。空気が圧縮室40に入ると、入口開口32は、入口弁34によって封止され、圧縮ピストン62が、その後、駆動機構64によって起動される(ピストン開口66は、熱交換器手段80内のガス圧によって封止された状態)。圧縮室内に含まれた空気が圧縮手段60によってほぼ熱交換器手段80内のレベルまで圧縮されると、吐出弁68を開くことによってガスが、熱交換器手段80に移送される。
【0067】
熱交換器手段80は、熱伝達液84(例えば、油)によって取り囲まれた熱伝導体82を収納する熱交換器室81を備える。熱伝導体82は、中を通る負荷流体の流れを案内する経路を画定するパイプ86網を備える。熱交換器手段80は、圧縮手段60と熱伝導体82との間に位置決めされた円錐有孔スクリーン88も備え、有孔スクリーン88は、圧縮空気が圧縮手段60を出て熱伝達液84に入るにつれて気泡の形成を促進するように構成される。熱伝達手段は、有孔スクリーン88によって創製された気泡を伝播させるのに適した粘度を有するように選ばれる。空気が冷えるにつれて熱交換器手段内に形成された復水を回収するために、本体20基部周辺部周りに回収トラップ90が設けられる。周辺回収トラップ内に回収された水は、浮動弁または他の水位感知弁(図示せず)によって除去されることができる。
【0068】
膨張手段120は、相互結合支柱101によって圧縮ピストン62に剛性に結合され、かつ膨張室124内に摺動可能に取り付けられた膨張ピストン122を備える。膨張ピストン122は、複数の開口126を備えるピストン面123と、下面に配置され、膨張ピストン開口126を通るガス流を制御する膨張入口弁128とを有する。膨張入口弁128は、膨張入口弁128が膨張ピストン122に当たるにつれて開口122が封止されるように開口126に対してずれている複数の開口130を備える。膨張入口弁128は、膨張入口弁128が突出部130、131によって、または(別のバージョンにおいては)膨張手段からの圧力によって膨張ピストン開口126から変位されるにつれて、空気が膨張ピストン開口126を通過可能に構成される。
【0069】
図1および図3から分かるように、突出部130、131は、膨張ピストン122の開口132、133とそれぞれ位置合わせ可能である。突出部130、131は、ピストンが熱交換器手段80に向かって移動し始めるにつれて膨張入口弁128が膨張ピストン開口部122を再度封止することを可能にすると同時に、膨張ピストン122が出口開口102に向かって移動するにつれて、膨張ピストン122が出口開口102に向かって移動するにつれて膨張ピストン122の中心部から離れるように膨張入口弁128を圧迫するように構成される。膨張入口弁128は、軽量ばねによって閉鎖位置を維持するように偏向される。
【0070】
突出部130、131は、膨張入口弁が開いている間に利用可能な行程長を伸ばすようにばね134によって弾性的に偏向される。膨張入口弁128が開いている行程の割合は、摺動プランジャ調整バレル136によってばねの位置を変えることによって調整されることができる。
【0071】
排気手段100は、複数の出口開口102と、機械的に起動される排気弁104とを備える。排気弁104は、出口開口102を遮断するために排気弁104が移動するにつれて出口開口102が封止されるように、出口開口102に対してずれている複数の排気弁の開口106を備える。排気弁104は、駆動機構64と同期して回転するカム(図示せず)を介して機械的に起動することができる。
【0072】
図2においては、ヒート・ポンプ10は、ヒート・ポンプ・サイクル中の8つの連続的な「クランク」位置(各々45°増分にて)にて駆動機構64を伴って図示されている。熱交換装置及び気泡スクリーンは、明瞭さを期すために割愛されている。様々な位置を、以下の通り説明する(段落番号は、図面番号を示す。)
1:(駆動機構64の)クランクは下死点。全ての弁は、閉じられており、ピストンアセンブリは、上方に移動し始めようとしている。
【0073】
2:ピストンアセンブリは上方に移動中であり、排気弁104(アセンブリ頂部)は開いており、入口弁34(アセンブリ底部)は開いている。膨張室124と圧縮室40との両方が大気中に通気されるときのアセンブリ全体にわたる圧力差は、ほぼゼロである。膨張室124は大気中に空気抜き中であり、圧縮室40には新鮮な大気が充填されている。
【0074】
3: 中間行程、ピストンアセンブリは上方に移動中、膨張室124は半分空気抜きされ、圧縮室40には新鮮な大気が半分充填されている。弁位置は段階2のときのものである。
【0075】
4:クランクは上死点に接近中。排気弁104は閉じる途中である。膨張入口弁128(膨張ピストンの下面)は開こうとしている。入口弁34は閉じる途中である。
5:上死点。膨張入口弁128は開いており、ピストン間の空間から膨張室124に移るときにピストン間の空間内で熱交換器手段80によって冷却された加圧処理空気が入っている。圧縮室弁は閉じられている。排気弁104は閉じられている。
【0076】
6:クランクはもはや上死点ではない。ピストンアセンブリは下降中。膨張入口弁128は閉じる途中。圧縮室弁は閉じられている。圧縮室内の空気が圧縮中であり、圧縮はピストン間の支柱を介して加圧膨張室によって支援されており、したがって、過去の圧縮エネルギーの一部が回復されている。排気弁104は閉じられている。
【0077】
7:中間ストローク、ピストンアセンブリは下降中。膨張室弁は、この時点で閉じられており、膨張スペース内の空気は膨張中であり、ピストンに対して仕事をしており、この仕事はピストン間の支柱を介して圧縮ピストンに伝達される。全ての圧縮室弁は閉じられており、圧縮室内の空気は圧縮中である。
【0078】
8:下死点に接近中。膨張室124内の空気は、この時点で大気温度および大気比体積を下回っており、排気弁104は、この時点で開いているばねまたは類似物(図示せず)によって座に対してわずかに軽く保持されており、これによって、大気圧の一部の空気が、それ以降の下がり工程について、膨張室124圧力がほぼ大気圧のままであるように膨張室124に再度入ることができる。吐出弁68は、ピストン間の空間と圧縮ピストンとの間の圧力差が既に等しくなっているので開く。圧縮された温風が、圧縮室40からピストン間の空間に移り、熱交換器手段80を介してエネルギーを負荷部にいつでも伝達することができる。
【0079】
9:クランクは下死点。全ての弁は閉じられており、ピストンアセンブリは上方に動き始めようとしている。
上述した動作においては、
a)圧縮側の弁34および68の一方のみが一度に開いており、弁が開くときに各側の圧力はほぼ等しく、
b)膨張側の弁128及び104の一方のみが一度に開いており、弁が開くときに各側の圧力はほぼ等しいことに注意されたい。
【0080】
膨張室は、初めは、上死点(TDC)直前に排気弁を閉じることによって加圧され、これによって、熱交換室のレベルまで予圧縮されて、膨張室入口弁の両側の圧力が均等化され、その時点で、ばねが入っており、かつ上り行程中に圧縮された弁アクチュエータが、弁座から弁を押し離す。ピストンがシリンダー・ヘッドから離れるので、弁は、弁アクチュエータが移動範囲外となったときに弁アクチュエータとの接触がなくなり、これによって弁が閉じる。したがって、アクチュエータの移動を設定することによって膨張比が制御され、圧縮は単に熱交換空間まで自動弁を介するものであることから、また、圧力はその空間内にある。熱交換空間内でのほぼ一定の圧力の制御は非常に簡単であり、その理由は、熱交換空間の体積は、体積流量/サイクルの約15倍から20倍であり、圧力の変動が低いからである。
【0081】
膨張室弁の動作
膨張室弁は、2つの圧力間で空気を循環させているひとつの形態のエアロックとして動作する。膨張室の目的は、排気する前に最小の空力学的損失で熱交換器からの加圧(冷気)空気を大気圧に戻すことである。これは、以下を意味する。
【0082】
(i) 加圧された熱交換器空気の充填分を取り込み、
(ii) この空気を大気圧まで減圧し、
(iii) この充填分の大部分を大気中に放出し、
(iv) しかし、熱交換器圧力まで再加圧するために十分な空気のみをシリンダー内に残し、
(v) その後、別の充填分の加圧された熱交換器空気を取り込み、かつ、このサイクルを繰り返す。
【0083】
圧縮ピストンは、各行程中、固定質量のガスを熱交換器に追加する。唯一変動するものはガスを追加する圧力であり、その結果、ガスをその圧力にするためにガスに対して行う必要がある仕事量である。
【0084】
膨張入口弁が閉じるタイミングによって、膨張すべき、室内に残される圧縮空気の体積が決まる。本質的には、熱交換空間内の圧力は、行程毎に膨張されかつ放出されるガス質量がその入りに等しくなるまで上昇し続けることになる。
【0085】
圧力低減が必要とされる場合、膨張入口弁は後で閉じることができ、体積が増大する。
圧力増大が必要とされる場合、膨張入口弁は早めに閉じることができ、体積が減少する。
【0086】
しかしながら、膨張入口弁は、膨張室内の圧力が下死点(BDC)さえも大気圧まで下がることがないほどガスの質量が大きくなるくらい遅く閉じるようになっていてはならない。
【0087】
この単純な制御によって、システム全体の圧力および熱交換器の内側で到達する温度が決まる。さらに実際の温度は、入口ガス温度の関数であるが、熱交換器の内側での温度増大を、システムの圧力を上げることによって達成することができる。
【0088】
膨張室弁の動作(膨張ピストンが位置BDCから移動して位置2を経て、位置3TDCに至り、その後、位置3から位置4を経て、位置1に戻るとき)に関与する諸段階の要約を以下に提示する。
【0089】
排気弁が開き、その後、膨張したガスが膨張室から放出される。
ヒート・ポンプ膨張1
ピストン位置 1(BDC)
ピストン方向 静止
膨張入口弁 閉
排気弁 開
膨張室 大気圧
ヒート・ポンプ膨張2
ピストン位置 1から2に移動
ピストン方向 上昇
膨張入口弁 閉
排気弁 開
膨張室 大気圧
ヒート・ポンプ膨張3
ピストン位置 2に到達
ピストン方向 上昇
膨張入口弁 閉
排気弁 開
膨張室 大気圧
排気弁は、残りのガスが熱交換器圧力まで再度圧縮されることを可能にするために閉じる。
【0090】
ヒート・ポンプ膨張4
ピストン位置 2
ピストン方向 上昇
膨張入口弁 閉
排気弁 閉
膨張室 大気圧
ヒート・ポンプ膨張5
ピストン位置 2から3に移動
ピストン方向 上昇
膨張入口弁 閉
排気弁 閉
膨張室 大気圧から熱交換器圧力に上昇
膨張入口弁が開いて、熱交換空間と膨張空間をつなぐことを可能にするために、
ヒート・ポンプ膨張6
ピストン位置 2から3に移動
ピストン方向 上昇
膨張入口弁 開
排気弁 閉
膨張室 熱交換器圧力
ヒート・ポンプ膨張7
ピストン位置 3(上死点)
ピストン方向 静止
膨張入口弁 開
排気弁 閉
膨張室 熱交換器圧力
その後、新しい充填分の圧縮ガスが熱交換空間から膨張空間まで進むことを可能にするために、
ヒート・ポンプ膨張8
ピストン位置 3から4に移動
ピストン方向 下降
膨張入口弁 開
排気弁 閉
膨張室 熱交換器圧力
ヒート・ポンプ膨張9
ピストン位置 4に到達
ピストン方向 下降
膨張入口弁 開
排気弁 閉
膨張室 熱交換器圧力
この正確なガス充填分は、膨張入口弁を強制的に閉じることで決まる。
【0091】
ヒート・ポンプ膨張10
ピストン位置 4
ピストン方向 下降
膨張入口弁 閉
排気弁 閉
膨張室 熱交換器圧力から大気圧に降下
このガス充填分は、大気圧まで膨張される。
ヒート・ポンプ膨張11
ピストン位置 4から1に移動
ピストン方向 下降
膨張入口弁 閉
排気弁 閉
膨張室 熱交換器圧力から大気圧に降下
ヒート・ポンプ膨張12
ピストン位置 4から1に移動
ピストン方向 下降
膨張入口弁 閉
排気弁 閉
膨張室 熱交換器圧力から大気圧に降下
図4は、ヒート・ポンプ10に関する理想的なP−V(体積に対してプロットされた圧力)図を示す。図の右側の曲線150は、周囲温度および大気圧からの等エントロピー圧縮を表し、直線部160は、熱交換器手段80を通過するときの流れの等圧冷却を表し、図の左側の曲線170は大気圧への等圧膨張を表す。言うまでもなく、真のP−V図は、真のサイクル内で発生する取り消し不可能な諸工程のために、理想的なサイクルとの幾らかの違いを示す可能性がある。
【0092】
図3のP−V図に示す理想的なサイクルを用いて、以下の性能に関する数値を予測する。
【0093】
【表1】

上記の例においては、ヒート・ポンプ10は、2.423kwの機械動力の入力に関して800サイクル/分で作動し、かつ2.423kwの機械動力の入力について負荷部に11kwを供給する0.6mの圧縮膨張シリンダー直径を有すると想定されている。負荷部は、90%の想定熱交換器効果で初めの10℃から90℃まで加熱され、かつ排気ガス(この例では空気)は−49℃の温度にて放出されると想定されている。
【0094】
上記の例は、80℃の負荷流体温度の変化を表す。初期温度が最初の温度を超えるように負荷流体が暖められる(暖房システム循環流において行われるように)と、作用ガス流は負荷流体によってより若干小さい程度で冷却され、これによって、結果的に、性能係数はほとんど変化しないが入力作業/サイクルを低減する膨張段階についてより多くの仕事が利用可能である。負荷部が圧縮段階から出るガス流と初めは同じである極端な状況においては、負荷部に対しては熱作業が行われず、圧縮によってガスに追加される全エネルギーは膨張に利用可能である。理想的なサイクルについては、この場合に膨張によって回復されるエネルギーは圧縮エネルギーとまさに等しいものとなり、したがって、装置を駆動させるのに必要とされる機械仕事はない。これは、明らかに理想的な摩擦なし、損失なしのシステムのみに当てはまるものであるが、理想的な性能係数は、入力周囲作用ガスと負荷流体のピーク温度との温度差の関数に過ぎないこととを示すために使用される。この温度差は圧縮膨張比によって制御され、その理由は、圧縮弁動作を自動的なもの(例えば、圧力差によって駆動される)とすることができ、装置の圧力比、したがって、出力の温度を膨張段階の入口弁のタイミングによって制御することができるからである。
【0095】
さらに、圧縮機内の真のサイクル内の損失、および、例えば有孔スクリーンを通る流れを強制することによる種々の損失は、負荷流体によって抽出することができる熱として明白に示されることになる点に注目することができる。エネルギー損失に負荷流体が対応することができない唯一の地点は入口と膨張段階との間であり、かつガスが熱交換器から排出された時点となる。駆動機構/動力源によって廃熱が生成される場合、入口流を駆動システムの冷却流にもさせることによってこの作用も利用することができる。したがって、膨張入口の高さより下方におけるシステムの種々の損失は性能係数(COP)を低減することになるが、それでも、結果的には、負荷流体の有用な加熱が得られることになる。
【0096】
図5は、入口手段30’と、圧縮室40’と、圧縮手段60’と、熱交換器手段80(図示せず)と、膨張室124’と、膨張手段120’と、排気手段100’とを備える本体20’を備えるヒート・ポンプ10’を示す。
【0097】
入口手段30’は、各々が対応するボール入口弁34を有する複数の入口開口32’を備える。各ボール入口弁34’は、それぞれの入口開口32’に結合された通路内で移動するように抑制されたボール35を備える。圧縮室40’内の圧力が大気圧を上回ったとき、各ボール35は、シールを実現するためにそれぞれの入口開口32’に当たるように圧迫される。圧縮室40内の圧力が大気圧に降下したとき、ボール35は、空気の進入を可能にするために、それぞれの入口開口32’から自由に離れることができる。
【0098】
圧縮手段60’は、駆動機構64’に結合された単一の圧縮ピストン62’を備える。圧縮ピストン62’は圧縮室40’内に摺動可能に取り付けられ、かつ、その中に含まれたガスを圧縮するように構成される。圧縮ピストン62’は、各々が頂面上に配置された、開口66’を通るガス流を制御する対応するボール吐出弁68’を有する、複数の開口66’を備えるピストン面63’を有する。各ボール吐出弁68’は、それぞれの開口66’に結合された通路内で移動するように抑制されたボール69を備える。圧縮室40’内の圧力が熱交換器手段内の圧力を下回ったとき、各ボール69は、シールを実現するためにそれぞれの開口66’に当たるように圧迫される。ピストン面63’の両側の圧力が均等化したとき、圧縮ガスがピストン面63’を通過することを可能にするために、それぞれの開口66’から自由に移動することができる。
【0099】
使用においては、入口手段30’を介してヒート・ポンプ10’に入る空気は、圧縮室40’内に進むことができる。空気が圧縮室40’に入ると、入口開口32’は、圧縮ピストン62が(ピストン開口66が熱交換器手段80’内のガス圧によって封止された状態で)駆動機構64によって起動されたとき、ボール入口弁34’によって封止される。圧縮室内に含まれた空気が圧縮手段60’によって圧縮されると、ガスは、ボール吐出弁68’が自動的に開いたときに出口83を介して熱交換器手段(図示せず)に移送される。膨張手段120’によるさらなる処理に向けてガスが(入口85を介して)膨張室124’に進入する前に、熱エネルギーおよび水蒸気が、熱交換器手段(図示せず)内の圧縮ガスから除去される。確実にガスがヒート・ポンプの各段階を通過するようにするために、移動可能のシール部200、201、202が設置される。
【0100】
膨張手段120’は、軽量相互結合支柱101’によって圧縮ピストン62’に剛性に結合され、かつ膨張室124’内に摺動可能に取り付けられた膨張ピストン122’を構成する。軽量補強構造体(または「構造的ピストンコア」)103は、剛性を高めるために支柱101’に結合される。膨張ピストン122’は、複数の開口126’を備えるピストン面123’と、下面に配置され、膨張ピストン開口126’を通るガス流を制御する回転膨張入口弁128’とを有する。
【0101】
回転膨張入口弁128’は、ピストン面123’上の開口126’と位置合わせ可能である複数の開口130’と、各々がそれぞれの相互結合支柱101の振動を受け取りかつ可能にする複数の弓形溝(図示せず)とを有する円形板部129を備える。円形板部129はピストン面123’に回転可能に取り付けられ、かつ開口126’および130’が位置合わせされる第1の位置から全ての開口126’および130’がまったく位置合わせされない第2の位置まで回転可能である。第2の位置においては、円形板部129は開口122’を封止するためにピストン面123’に当たるように圧迫される。図6Aから図6Cから分かるように、円形板部129は、各々が円形板部129内のそれぞれの溝137内に取り付けられた複数のころ軸受135を備える。ピストン面123’は、各々が対応するころ軸受135を受容する複数のテーパー状(またはカム形状の)溝138を備える。テーパー状溝138および溝137は、円形板部が第2の位置にあるとき完全にころ軸受135を受容するように構成される。円形板部129が第2の位置から第1の位置に回転するにつれて、テーパー状溝138の外形部は深さが減少し、円形板部129およびピストン面123’は分離する。円形板部129は、駆動機構64’の駆動軸65内に収納された第1の回転可能なアクチュエータ140によって回転する。円形板部129を、(例えば、第1の回転可能なアクチュエータに結合されたばねによって)第2の位置において偏向することができる。
【0102】
排気手段100’は、複数の出口開口102’と、回転排気弁104’とを備える。回転排気弁104は、出口開口102’と位置合わせ可能である複数の開口(図示せず)を備える円形板部105を備える。円形板部105は、本体20’の下面22’に回転可能に取り付けられ、かつ円形板部105の開口および出口開口102’が位置合わせされる第1の位置から開口がもはや全く位置合わせされない第2の位置まで回転可能である。第2の位置においては、円形板部105は、開口102’を封止するために本体20’の下面22’に当たるように圧迫される。回転入口弁104’の形態および動作は、上述した回転膨張入口弁128’の形態および動作に対応する。円形板部105は、第2の回転可能なアクチュエータ(図示せず)によって回転する。円形板部105を、第2の位置において、(例えば、第2の回転可能なアクチュエータに結合されたばねによって)偏向させることができる。
【0103】
ヒート・ポンプ10および10’に特定の修正を行うことができる。例えば、駆動軸は基部を介して本体に入ってもよい。圧縮段階は本体頂部にて、膨張段階は底部で行われてもよい。また、空気流は、周囲空気が本体側面から出入りし、圧縮空気が本体の頂部および底部から出るよう逆にすることができる。さらに、圧縮ピストン及び膨張ピストンを、分離させて独立して作動することができる。例えば、単一の圧縮室内に収納された単一の圧縮ピストン(ピストン面の片側は大気中に通気される)と、単一の膨張室内に収納された単一の膨張ピストン(ピストン面の片側は大気中に通気される)とを備えるヒート・ポンプを設置することができる。あるいは、ピストン面の両側を使用してガスを圧縮することを可能にするために2層の圧縮室を設置することができ、および、膨張ピストン面の両側を使用してガス膨張を可能にするために2層の膨張室を設置することができるか、もしくは、ピストン面の両側を使用してガスを圧縮することを可能にするために2層の圧縮室を設置することができる。
【0104】
付属書
本発明の利点
多くのヒート・ポンプシステムが抱える難しい問題は、装置低温側の着氷である。本発明に従って作製されるヒート・ポンプは、ヒート・ポンプに入る水分を担持する空気は周囲冷凍状態を上回るか、または着氷性の霧という最悪の場合、周囲冷凍状態を若干下回ることになることから、着氷に関する諸問題に抗すると思われる。ヒート・ポンプ内の圧縮は凍結レベルをかなり上回るように温度を上げるはずであり、負荷による加圧流が冷却すれば結果的に液体として放出されることができる、液体として装置内に凝縮する水が発生することになる。その後、膨張機に入るガス流は入力流と比較すると非常に乾燥したものになり、したがって、氷の形成は制限されるはずである。本発明のさらなる利点は、流れから抽出された水分の蒸発熱が負荷部へ利用可能になる点である。
【0105】
結論として、本発明では、起こり得る機械的かつ熱的損失の大半は結果的に負荷部で利用可能な熱エネルギーとなる潜在的な性能係数が高いヒート・ポンプが提供される。一般家庭の環境での設置コストは非常に低く、恐らく単純なボイラーの設置と同等のものになると思われる。大型かつ遠隔熱回収設備および着氷などのヒート・ポンプに関連した共通の諸問題は本発明の固有の性質によって緩和され、場合によると、回避されることもある。
【0106】
圧縮段階の弁配置
高いCOPを得るためには、以下の気流特性を有することが必須である。
(i) 低い空気力学的損失、即ち、低い空気流率
(ii) 高い空気質量流率
(iii) 開弁時の気流向けの広い面積
短いピストン行程およびピストン直径の配置を使用したとき、広いピストン面が利用可能であるが、シリンダー壁部の面積はほんのわずかである。これは、直接、ピストン面を介した弁設置を行う方がよいことを意味する。
【0107】
圧縮弁を自己起動とすることができ、かつ、その結果、操作しやすいものであると考えられる。考えられる選択対象弁としては以下がある。
(i) 板弁
(ii) 多重ボール弁
(iii) リード弁
より高い運転速度を得るためには、これらの弁を起動させることが必要と考えられ、その場合、膨張弁と同様に設計される必要があろう。
【0108】
膨張段階の弁配置
高いCOPを得るためには、以下の気流特性を有することが必須である。
(iv) 低い空気力学的損失、即ち低い空気流率
(v) 空気の高い質量流率
(vi) 開弁時には気流に対して広い面積が必要
短いピストン行程およびピストン直径の配置を使用したとき、やはり、直接ピストン面を介した弁設置を行う方がよい。
【0109】
膨張弁は、物理的に起動させる必要がある(機械的、圧力、または電気的/電子的)。以下が考えられる。
(i) 板弁
(ii) (間欠式)回転弁
【符号の説明】
【0110】
10…ヒート・ポンプ、60…圧縮手段、62…圧縮ピストン、80…熱交換器手段、104…排気弁、120…膨張手段、122…膨張ピストン、123…ピストン面、124…膨張室、126…膨張ピストン開口、128…膨張入口弁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨張ピストンアセンブリであって、
膨張室手段と、
ガスが加圧ガス源から前記膨張室手段内へ進入することを許容するための膨張入口弁と、
前記膨張室手段内で受容されたガスを膨張するための膨張ピストン手段と、
膨張後のガスを排気するための排気弁とを備え、
前記膨張入口弁及び前記排気弁の少なくとも一つの弁は、前記少なくとも一つの弁の両側のガス圧がほぼ等しいときに、開くように構成されている、膨張ピストンアセンブリ。
【請求項2】
前記排気弁は、前記膨張室手段内のガスの完全な通気を防ぐべく閉じるように構成され、前記膨張ピストン手段は、前記膨張室手段内に残留するガスを前記加圧ガス源の圧力とほぼ等しい圧力まで圧縮するように構成されている、請求項1に記載の膨張ピストンアセンブリ。
【請求項3】
前記排気弁は、前記膨張室手段内の圧力が基準又は大気圧とほぼ等しくなるときに開くように構成されている、請求項1又は2に記載の膨張ピストンアセンブリ。
【請求項4】
前記膨張ピストン手段は、第1の位置と第2の位置との間で移動可能な膨張ピストンを備え、前記第1の位置から前記第2の位置に前記膨張ピストンを移動するように前記ガスが仕事をするときに、前記膨張室手段内に含まれるガスの膨張が行われ、
前記膨張ピストンが前記第1の位置から前記第2の位置へ向かって移動して前記第2の位置へ到達する前に、前記排気弁が開くように構成されている、請求項3に記載の膨張ピストンアセンブリ。
【請求項5】
ヒート・ポンプとして使用される装置であって、
圧縮室手段と、
ガスが前記圧縮室手段に進入することを許容するための圧縮入口弁と、
前記圧縮室手段内に含まれるガスを圧縮するための圧縮ピストン手段と、
前記圧縮室手段によって圧縮されたガスから熱エネルギーを受け取るための熱交換器手段と、
ガスが前記圧縮ピストン手段から前記熱交換器手段まで通過することを許容するための圧縮吐出弁と、
前記熱交換器手段への接触後に加圧ガスを受け取るための膨張ピストンステージとを備え、
膨張ピストンステージが請求項1〜4の何れか一項に記載の膨張ピストンアセンブリを備える装置。
【請求項6】
前記ガスが空気である請求項5に記載の装置。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の装置を備える冷凍機。
【請求項8】
請求項5又は6に記載の装置を備える熱機関。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【公開番号】特開2011−185598(P2011−185598A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−115123(P2011−115123)
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【分割の表示】特願2008−502473(P2008−502473)の分割
【原出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(510093314)アイゼントロピック リミテッド (8)
【氏名又は名称原語表記】ISENTROPIC LIMITED