説明

臨床検査教育装置及びコンピュータプログラム

【課題】必要な検査を適切に実施する能力の向上を図る。
【解決手段】 患者から採取された第1検体に対して第1検査を行って得られる第1検査情報、及び、前記第1検査情報を用いた第1設問、を表示し、前記第1設問に対する第1解答を受け付ける。前記第1解答を受け付けた後、前記検体について前記第1検査の後に行われるべき第2検査で用いられる標本の標本画像、及び、前記標本画像を用いた第2設問、を表示し、前記第2設問に対する第2解答を受け付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、臨床検査教育装置及びコンピュータプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
的確な臨床検査の実施には、臨床検査に携わる者への教育が重要である。臨床検査に関する教育に役立つ装置として、例えば、特許文献1に記載のものがある。
【0003】
特許文献1には、検査者の細胞分類能力を向上させる細胞検査教育支援システムが開示されている。前記システムは、検査対象である血液標本に含まれる細胞の種類を目視で識別して分類する能力を向上させるために適したシステムである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−157028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のシステムは細胞の種類を分類するトレーニングを行うためのものであるため、トレーニングを受ける者は、検体に関する情報として標本画像だけが与えられ、その標本画像について細胞の分類を行うことになる。
一方、実際の臨床検査においては、最初から標本が作製されて目視検査が行われるわけではない。実際には、先ず血球計数装置などの検査装置によって検体を検査し、得られた検査結果から、さらに目視による検査が必要であるかを判断する。そして、目視検査が必要であると判断された場合に、はじめて標本が作製され、顕微鏡による目視検査が行われる。
このように、検査者が実際の検査業務の流れに沿って適切な検査を行うには、標本を目視検査する能力だけでなく、検査結果に基づいて標本の作製の要否を判断する能力も要求される。しかしながら、これまで、実際の検査業務の流れに沿って検査者をトレーニングできる教育装置は提案されていなかった。
【0006】
そこで、本発明は、実際の検査業務の流れに沿って検査者を教育することが可能な臨床検査教育装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明は、患者から採取された第1検体に対して第1検査を行って得られる第1検査情報、及び、前記第1検査情報を用いた第1設問、を表示し、前記第1設問に対する第1解答を受け付け、前記第1解答を受け付けた後、前記検体について前記第1検査の後に行われるべき第2検査で用いられる標本の標本画像、及び、前記標本画像を用いた第2設問、を表示し、前記第2設問に対する第2解答を受け付ける、臨床検査教育装置である。本発明によれば、第1設問に対する第1解答を受け付けた後の第2設問において、第2検査で用いられる標本の標本画像が表示され、その第2設問は、前記標本画像を用いたものとなるため、第1検査から第2検査への流れに即した設問を表示することができる。
【0008】
(2)第1設問は、前記第1検査の後に行うべき検査の種類を問うものであるのが好ましい。
【0009】
(3)前記第1検査情報は、血液を血球計数装置によって検査して得られた検査結果であるのが好ましい。
【0010】
(4)前記標本画像は、血液を塗沫して得られる塗抹標本の画像であるのが好ましい。
【0011】
(5)前記標本画像は、前記第1検査情報とともに表示されるのが好ましい。
【0012】
(6)前記第2解答を受け付けた後、第2検査の検査結果を示す情報とともに、第1追加設問を表示するのが好ましい。
【0013】
(7)前記第2解答を受け付けた後、前記第2検査の後に、前記患者から採取された第2検体について行われるべき第3検査に用いられる第3検査情報、及び、前記第3検査情報を用いた第3設問、を表示するのが好ましい。
【0014】
(8)前記第3検査情報は、前記第3検査で用いられる標本の標本画像であるのが好ましい。
【0015】
(9)前記第3検査で用いられる標本画像は、骨髄液を塗抹して得られる塗抹標本の画像であるのが好ましい。
【0016】
(10)前記第3検査情報は、前記第1検査情報とともに表示されるのが好ましい。
【0017】
(11)前記第2解答を受け付けた後、前記標本画像に含まれる特定の細胞画像に関する第2追加設問を表示するのが好ましい。
【0018】
(12)ユーザのログインを受け付け、ログインしたユーザに応じて異なる設問を表示させるのが好ましい。
【0019】
(13)前記第1検査情報は、尿を尿沈渣分析装置によって検査して得られる検査結果であり、前記標本画像は、尿の標本画像であるのが好ましい。
【0020】
(14)受け付けた解答が正解であるか否かを判断し、受け付けた解答が正解でないと判断された場合に、設問に対する解説を表示するのが好ましい。
【0021】
(15)受け付けた解答の内容に応じて、異なる標本画像及び第2設問を表示するのが好ましい。
【0022】
(16)他の観点からみた本発明は、患者から採取された検体の第1検査に用いられる第1の標本画像、及び、前記第1の標本画像を用いた第1設問、を表示し、前記第1設問に対する第1解答を受け付け、前記第1解答を受け付けた後、前記患者から採取された検体について第1の検査の後に行われるべき第2検査に用いられる第2標本画像又は第2検査の検査結果、及び、前記第2標本画像又は第2検査結果を用いた第2設問、を表示し、前記第2設問に対する第2解答を受け付ける、臨床検査教育装置である。
【0023】
(17)他の観点からみた本発明は、コンピュータを、前記(1)〜(16)のいずれかに記載の臨床検査教育装置として機能させるためのコンピュータプログラムである。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、必要な検査を適切に実施する能力の向上を図るためのトレーニングが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】臨床教育装置の機能ブロック図である。
【図2】臨床教育装置を構成するコンピュータのハードウェア構成図である。
【図3】ユーザテーブルと症例テーブルのデータ構造図である。
【図4】問題テーブルの部分データ構造図である。
【図5】問題テーブルの部分データ構造図である。
【図6】問題テーブルの部分データ構造図である。
【図7】参考情報テーブルの内容を示す図である。
【図8】問題情報の設定画面を示す図である。
【図9】実際の血液検査業務の流れの一例を示す図である。
【図10】教育装置のメイン処理を示すフローチャートである。
【図11】ユーザ判定処理を示すフローチャートである。
【図12】表示処理を示すフローチャートである。
【図13】問題1の表示画面である。
【図14】問題2の表示画面である。
【図15】問題3の表示画面である。
【図16】問題4の表示画面である。
【図17】問題5の表示画面である。
【図18】問題6の表示画面である。
【図19】問題7の表示画面である。
【図20】問題8の表示画面である。
【図21】問題9の表示画面である。
【図22】問題10の表示画面である。
【図23】実際の尿検査業務の流れの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明に係る臨床検査教育装置の実施形態を詳細に説明する。
【0027】
[1.第1実施形態:血液検査の教育装置]
[1.1 装置構成]
実施形態に係る臨床教育装置1は、臨床検査技師、医師、又は学生など、臨床検査に携わる者又は将来携わろうとする者に対して臨床検査の能力を向上させるためのトレーニングツールである。臨床教育装置1は、主として、ユーザに対して設問を提示し、その解答を受け付ける機能を有している。臨床検査に関するトレーニングは、ユーザが設問への解答を行うことを通じて行われる。
なお、第1実施形態においては、臨床検査として、血液検査を例として説明する。
【0028】
臨床検査教育装置1は、コンピュータにコンピュータプログラムをインストールして構成されている。以下で説明する臨床検査教育装置1の機能は、コンピュータにインストールされたコンピュータプログラム140aが、当該コンピュータによって実行されることで発揮される。
【0029】
なお、以下では、臨床検査教育装置1を構成するコンピュータとして、ユーザ(検査技師等)が使用する端末装置からアクセスされるサーバコンピュータを想定して説明する。ただし、臨床検査教育装置1を構成するコンピュータは、スタンドアローン型コンピュータであってもよい。
【0030】
図1は、臨床検査教育装置1の機能を示している。臨床検査教育装置1は、制御部10、記憶部20、及び設定部30を備えている。制御部10は、臨床検査教育装置1における機能を果たすための様々な制御を行う。制御部10は、例えば、ディスプレイ120にユーザへの設問を表示させたり、ユーザからの解答の入力を受け付けたりする。
【0031】
記憶部20は、ユーザを管理するユーザテーブル21のほか、設問を生成するための様々な情報22,23,24,25を保持している。設問を生成するための情報としては、症例テーブル22、問題テーブル23、参考情報(検査情報)24、及び標本画像(検査情報)25が設けられている。なお、記憶部20に記憶されている情報の詳細については後述する。
設定部30は、問題の設定など、装置1に必要な設定を行うためのものである。設定部30による問題の設定については後述する。
【0032】
図2は、臨床検査教育装置1のハードウェア構成を示すブロック図である。臨床検査教育装置1を構成するコンピュータ100は、本体110と、ディスプレイ120と、入力デバイス130と、を備えている。
本体110は、CPU110aと、ROM110bと、RAM110cと、ハードディスク110dと、読出装置110eと、入出力インタフェース110fと、画像出力インタフェース110hとから主として構成されている。
CPU110a、ROM110b、RAM110c、ハードディスク110d、読出装置110e、入出力インタフェース110f、及び画像出力インタフェース110hは、バス110iによってデータ通信可能に接続されている。
【0033】
CPU110aは、ROM110bに記憶されているコンピュータプログラム及びRAM110cにロードされたコンピュータプログラムを実行することが可能である。そして、臨床検査教育装置アプリケーションプログラム140aを当該CPU110aが実行することにより、臨床検査教育装置1としての各機能ブロック10,20,30が実現され、コンピュータが臨床検査教育装置1として機能する。
ROM110bは、マスクROM、PROM、EPROM、EEPROM等によって構成されており、CPU110aに実行されるコンピュータプログラムおよびこれに用いるデータ等が記録されている。
【0034】
RAM110cは、SRAM又はDRAM等によって構成されている。RAM110cは、ROM110b及びハードディスク110dに記録されているコンピュータプログラムの読み出しに用いられる。また、これらのコンピュータプログラムを実行するときに、CPU110aの作業領域として利用される。
ハードディスク110dは、オペレーティングシステム及びアプリケーションプログラム等、CPU110aに実行させるための種々のコンピュータプログラム及び当該コンピュータプログラムの実行に用いるデータがインストールされている。臨床検査教育装置アプリケーションプログラム140aも、このハードディスク110dにインストールされている。
【0035】
読出装置110eは、フレキシブルディスクドライブ、CD−ROMドライブ、又はDVD−ROMドライブ等によって構成されており、可搬型記録媒体140に記録されたコンピュータプログラム又はデータを読み出すことができる。また、可搬型記録媒体140には、コンピュータを本発明の教育検査教育装置1として機能させるためのアプリケーションプログラム140aが格納されており、コンピュータが当該可搬型記録媒体140から本発明に係るアプリケーションプログラム140aを読み出し、当該アプリケーションプログラム140aをハードディスク110dにインストールすることが可能である。
【0036】
なお、前記アプリケーションプログラム140aは、可搬型記録媒体140によって提供されるのみならず、電気通信回線(有線、無線を問わない)によってコンピュータと通信可能に接続された外部の機器から前記電気通信回線を通じて提供することも可能である。例えば、前記アプリケーションプログラム140aがインターネット上のサーバコンピュータのハードディスク内に格納されており、このサーバコンピュータにコンピュータがアクセスして、当該コンピュータプログラムをダウンロードし、これをハードディスク110dにインストールすることも可能である。
また、ハードディスク110dには、例えば米マイクロソフト社が製造販売するWindows(登録商標)等のグラフィカルユーザインタフェース環境を提供するオペレーティングシステムがインストールされている。以下の説明においては、本実施形態に係るアプリケーションプログラム140aは当該オペレーティングシステム上で動作するものとしている。
【0037】
入出力インタフェース110fは、例えばUSB、IEEE1394、RS−232C等のシリアルインタフェース、SCSI、IDE、IEEE1284等のパラレルインタフェース、およびD/A変換器、A/D変換器等からなるアナログインタフェース等から構成されている。入出力インタフェース110fには、キーボードおよびマウスからなる入力デバイス130が接続されており、ユーザが当該入力デバイス130を使用することにより、コンピュータ100aにデータを入力することが可能である。
画像出力インタフェース110hは、LCDまたはCRT等で構成されたディスプレイ120に接続されており、CPU110aから与えられた画像データに応じた映像信号をディスプレイ120に出力するようになっている。ディスプレイ120は、入力された映像信号にしたがって、画像(画面)を表示する。
【0038】
[1.2 データとその生成]
図3は、記憶部20におけるユーザテーブル21及び症例テーブル22を示している。図3(a)に示すように、ユーザテーブル21は、装置1のユーザとして登録されている者のログイン名と、その者の検査能力カテゴリと、が対応付けられたものである。ここでは、検査能力カテゴリとして、初級と中級の2つが設けられている。
【0039】
症例テーブル22は、症例に対応した設問(問題)が設定されたものである。図3(b)(c)に示すように、ユーザの検査能力カテゴリ(初級又は中級)にあわせて、症例テーブル22として、初級者用の症例テーブル22aと、中級者用の症例テーブル22bとが設けられている。したがって、同一の症例であっても、ユーザのレベル(カテゴリ)に応じて、異なる問題を表示することが可能である。
【0040】
各カテゴリ(初級,中級)には、複数の症例(ここでは、症例名を便宜的に番号(i)で示した)が設定されており、各症例(i)には、それぞれ、複数の問題の番号(j)が対応付けられている。また、症例テーブル22a,22bにおいて、各症例には、その症例に対応した総括情報が登録されている。総括情報は、一の症例に対応した問題群が表示された後に表示される文章情報であり、その症例に対応した問題群を総括する文章情報となっている。
【0041】
問題テーブル23は、問題毎に必要とされる問題情報が登録されたものである。図4〜図6に示すように、問題テーブル23は、問題(j)毎に、”問題文”,”選択肢”,”正解”,”解説”,”参考情報”,”スライド1”,”スライド2”,・・・,”スライドk”のフィールドを備えている。
【0042】
図4に示すように、”問題文”フィールドには、ユーザに対して表示される問題文が文章で登録されている。”選択肢”フィールドには、問題に対する解答の選択肢が登録されている。なお、問題に対する解答方式が、選択式ではなく、記述式である場合には、”選択肢”フィールドの登録は不要である。
図5に示すように、”正解”フィールドには、正解となる選択肢の番号が登録されている。なお、解答方式が、記述式である場合には、正解を表現するためのキーワードなどが登録される。”解説”フィールドには、問題の解説が文章で登録される。
【0043】
図6に示すように、”参考情報”フィールドには、ユーザが問題に解答するために参照する情報24a,24bが指定される。参考情報としては、検査に関する情報、例えば、既に行われた検査結果(検査結果を示す数値データ)、が登録される。”スライド1”,”スライド2”,・・・,”スライドk”の各フィールドには、各問題において、表示可能なデジタル標本画像25a,25b,25cが指定されている。一つの問題について、最大、k枚のデジタル標本画像を指定可能となっている。
【0044】
図7は、参考情報24の具体例を示している。ここでは、参考情報24として、図7(a)に示すRef001(第2参考情報)と、図7(b)に示すRef002(第2参考情報)と、が設けられている。
【0045】
Ref001には、患者情報(年齢、性別)のほか、末梢血を血球計数装置で分析した末梢血検査データ(CBC項目の値)が含まれている。Ref001は、血球計数装置による検査結果(分析結果)を示すものである。
Ref002には、Ref001の内容に加えて、末梢血標本を顕微鏡で目視観察して得られた数値データ(DIFFフィールドの値(血球の比率・数量等))が含まれている。つまり、Ref002は、血球計数装置による検査結果(分析結果)と、その後に行われた顕微鏡検査による検査結果と、が含まれたものとなっている。
【0046】
デジタル標本画像25としては、図1に示すように、末梢血デジタル標本画像25a,骨髄普通染色デジタル標本画像25b,骨髄特殊染色デジタル標本画像25cが登録されている。
末梢血デジタル標本画像25aは、末梢血を普通染色(メイギムザ染色又はライトギムザ染色のことをいう。以下同じ)した塗抹標本をデジタル画像にしたものである。骨髄普通染色デジタル標本画像25bは、普通染色した骨髄液の塗抹標本を、デジタル画像にしたものである。
骨髄特殊染色デジタル標本画像25cは、POX(ペルオキシダーゼ)染色などの特殊染色を行った骨髄液の塗抹標本をデジタル画像にしたものである。
【0047】
なお、参考情報24及び標本画像25は、いずれも、追加検査の必要性やどのような追加検査が必要であるかの判断に用いられる情報である。参考情報24及び標本画像25を総称して、「検査情報」という。
【0048】
図8は、設定部30によって問題を設定することで、問題を症例テーブル22及び問題テーブル23に登録するための画面40を示している。この画面40では、”id”41、”問題番号”42、”問題文”43、”選択肢”44、”正解”45、”レイアウト”46、”症例id”47、”参考情報id”48、”スライド”49、”解説”50を登録することができる。
【0049】
”id”41は、問題テーブル23において問題が登録される際の問題レコード毎の識別子である。”問題番号”42は、問題に付される番号であり、ここで設定された内容は、問題テーブル23の”問題”フィールドに登録される。
”問題文”43で設定された内容は、問題テーブル23の”問題文”フィールドに登録される。”選択肢”44で設定された内容は、問題テーブル23の”選択肢”フィールドに登録される。図8で設定される問題は、解答方式として記述式を採用した場合の例を示しているため、”選択肢”44には何も入力されない。
【0050】
”正解”45で設定された内容は、問題テーブル23の”正解”フィールドに登録される。図8で設定される問題は、解答方式として記述式を採用した場合の例を示しているため、正解を表現するキーワードが入力されている。
【0051】
”レイアウト”46は、問題を表示する際の画面レイアウトを選択するためのものである。”症例id”47は、画面40にて設定される問題が症例テーブル22におけるどの症例に対応するかを指定するためのものである。
【0052】
”参考情報id”48は、その問題における参考情報を指定するためのものである。”参考情報id”48では、参考情報24として登録されている情報24a,24bのうち、一つの参考情報が指定される。
”スライド”49は、その問題において表示可能な標本画像を指定するためのものである。”スライド”49では、標本画像25として登録されている画像25a,25b,25cが選択される。
”解説”50では、で設定された内容は、問題テーブル23の”解説”フィールドに登録される。
【0053】
[1.3 血液検査]
図9は、本実施形態においてトレーニング対象である血液検査業務の流れの一例を示している。ここでは、症例として白血病を想定する。
まず、最初に患者から取得した末梢血を血球計数装置によって分析する(第1の検査方法T1)。血球計数装置による検査結果として、CBC(Complet Blood Count)項目のデータを得る。CBC項目としては、例えば、WBC(白血球数)、RBC(赤血球数)、Hb(血色素量)、Ht(ヘマトクリット値)、MCV(平均赤血球容積)、MCH(平均赤血球血色素量)、MCHC(平均赤血球血色素濃度)、PLT(血小板数)、RET(網赤血球数)などがある。
【0054】
血球計数装置による検査結果に何らかの異常が認められた場合、次の検査として、例えば、末梢血の塗抹標本を用いた顕微鏡検査が行われる(第2の検査方法T2)。末梢血の塗抹標本を用いた顕微鏡検査では、まず、末梢血の塗抹標本を作製し、その塗抹標本を顕微鏡で観察することで、例えば、末梢血の目視による分類カウントが行われる。
【0055】
末梢血の塗抹標本を用いた顕微鏡検査の結果、更に追加の検査として、骨髄液の検査が必要とされる場合がある(第3の検査方法T3,第4の検査方法T4)。骨髄液検査であっても、まず、骨髄液をメイギムザ染色等の普通染色した標本を用いた顕微鏡検査(第3の検査方法T3)で足りる場合もあれば、さらに骨髄液をPOX染色等の特殊染色した標本を用いた顕微鏡検査(第4の検査方法T4)が必要な場合もある。
【0056】
図3に示すような検査業務の流れは、一例にすぎず、実際には、それまでに得られた検査結果に基づいて、様々な検査方法の中から次に必要な検査方法を、検査技師等が適切に選択することが求められる。
【0057】
検査技師等は、医師が確定診断を行うために必要な検査結果として、十分なものが得られるように検査業務を遂行しなければならない。
そのためには、それまでに得られた検査結果や標本について適切な判断を行い、さらに追加の検査が必要であるか、追加の検査が必要である場合にはどのような検査が適切であるかを判断しなければならない。
本実施形態の臨床教育装置1では、上記のような判断を含む一連の検査業務を適切に行えるようにトレーニングすることが可能である。
【0058】
[1.4 教育装置の処理の流れ]
[1.4.1 メイン処理]
図4に示すように、装置(サーバコンピュータ)1の制御部(CPU110a)10は、トレーニングを受けるユーザが使用する端末のディスプレイ120にログイン画面を表示させる(ステップS1)。そのログイン画面にて、ユーザのログイン名が入力されると(ステップS2)、装置1は、正当なユーザであるか否かの判定処理を行う(ステップS3)。なお、判定処理については後述する。
【0059】
続いて、装置1は、問題番号を示す変数”j”に”1”をセットする(ステップS4)。
そして、装置1は、ユーザから症例の選択の入力を受け付けると、その症例の検査業務のトレーニングを行うための問題を表示させる(ステップS5)。なお、表示処理については後述する。
【0060】
装置1は、ユーザから解答の入力が行われると(ステップS6)、解答の正否の判定処理を行う(ステップS7)。解答方式が選択式の場合、正否の判定は、選択された解答が、問題テーブル23の”正解”フィールドの内容に一致しているか否かで行える。記述式の場合、解答文の中に正解を表現するキーワードが含まれているか否かで行える。なお、記述式の場合、解答文に対して自然言語処理による意味解析を行い、解答文の意味が、正解を表現しているか否かを判定してもよい。
なお、ステップS7の判定処理は、省略してもよいし、複数の問題に対する解答が全て終わった後に実行してもよい。
【0061】
ステップS7の正解判定の結果、解答が不正解であった場合には、装置1は、その問題の解説を表示させる(ステップS9)。解説としては、問題テーブル23の”解説”フィールドに登録されている内容が表示される。
本実施形態は、症例テーブル22に登録されている問題の番号(j)順に問題が表示されるため、解答の内容又はその正否は、その後に出題される問題には影響しない。ただし、解答の内容(解答の正否を含む)に応じて、その後に表示される問題の内容を異ならせても良い。これにより、ユーザのレベルに応じた問題の表示が可能となる。
【0062】
そして、次の問題がある場合には、装置1は、ステップS5に戻り、次の問題(j+1)を表示させる(ステップS10,S11)。
ユーザが選択した症例についてのすべての問題が終了すると(ステップS10)、装置1は、その症例についての総括を表示する。総括としては、症例テーブル22に”総括”として登録されている文章が表示される。
以上で、装置1によるメイン処理が終了する。
【0063】
[1.4.2 ユーザ判断処理]
図11は、ステップS3のユーザ判定処理を示している。まず、装置1は、入力されたログイン名がユーザテーブル21に登録されているか否かを判定する(ステップS3−1)。装置1は、ログイン名がユーザテーブル21に登録されていない場合、ログインエラーを表示させ(ステップS3−2)、ステップS1に戻る。
【0064】
ログイン名がユーザテーブル21に登録されている場合、続いて装置1は、ログインしたユーザのカテゴリを、ユーザテーブル21を参照することで決定する(ステップS3−3)。さらに装置1は、決定したカテゴリ(初級又は中級)に応じた症例テーブル22a,22bを参照する。装置1は、参照した症例テーブル22a,22bに登録されている症例の一覧を表示させ(ステップS3−4)、ユーザに症例を選択させる。
ユーザがカテゴリ分けされており、そのカテゴリに応じた問題が用意されているため、装置1は、ログインしたユーザのレベルに応じて異なる設問を表示するように制御することができる。
【0065】
[1.4.3 表示処理]
図12は、ステップS5の表示処理を示している。装置1は、問題表示用の画面(ウィンドウ)60を表示する(ステップS5−1)。そして、装置1は、ユーザが指定した症例におけるj番目の問題(j)の問題文を、画面60の問題文エリア61に表示させる(ステップS5−2)。問題文は、問題テーブル23の”問題文”フィールドを参照することで得られる。
【0066】
その問題(j)に関し、問題テーブル23の”選択肢”フィールドに情報が存在する場合には(ステップS5−3)、装置1は、その情報(選択肢として表示されるべき情報)を、画面60の解答エリア62に表示させる(ステップS5−4)。
【0067】
その問題(j)に関し、問題テーブル23の”参考情報”フィールドに情報が存在する場合には(ステップS5−5)、装置1は、指定された参考情報(Ref001又はRef002)を、画面60の参考情報エリア63に表示させる(ステップS5−6)。
【0068】
そして、装置1は、変数kに”1”をセットし(ステップS5−7)、その問題(j)に関し、問題テーブル23のスライドフィールドに指定されている標本画像を、画面60のスライドエリア64に表示させる(ステップS5−9)。一つの問題について複数の標本画像が指定されている場合には、複数の標本画像が重ねて表示される(ステップS5−8,S5−10)。複数の標本画像は、画面60中のタグによって切替表示が可能である。なお、問題表示当初においては、kの値が最も大きい標本画像が表示される。
【0069】
[1.5 問題の表示例]
図13〜図22は、図4〜図6に示す問題テーブル23に登録されている問題1〜10を、ある症例に関する検査業務トレーニングとして出題した場合の表示例を示している。
【0070】
[1.5.1 問題1;血球計数装置の検査結果に関する問題]
図13の画面は、問題1が表示された画面60である。問題1は、末梢血の血液検査データ(血球計数装置の検査結果)に基づく所見を問うものである。実際の検査業務では、多くの患者に対する検査を効率的に処理するため、最初に血球計数装置を用いた自動スクリーニング検査が行われる。問題1は、そのような検査業務の実情を反映して、血球計数装置の検査結果を参考情報として提示しつつ、血球計数装置の検査結果に基づく判断を問うものとなっている。
【0071】
[1.5.2 問題2;次の検査を問う問題]
図14の画面は、問題2が表示された画面60である。問題2は、末梢血の血液検査データ(血球計数装置の検査結果)に基づいて、次に行うべきステップを問うものである。実際の検査業務では、自動スクリーニング検査による数値データに異常が認められなければ、そこで検査を終了するが、異常が認められれば、再検査の必要がある。問題2は、次に行うべき検査が何であるかを問うものとなっている。
【0072】
[1.5.3 問題3;末梢血標本を用いた検査に関する問題]
図15の画面は、問題3が表示された画面60である。実際の検査業務では、血球計数装置による検査結果に異常が認められた後に、血液標本を顕微鏡にて目視観察する必要があることが多い。問題3では、普通染色の末梢血の標本をデジタル画像とした標本画像(Slide001)が表示され、その標本画像を観察して判断した所見を問うものとなっている。
問題3で表示される標本画像は、先の問題2において問われた「次に行うべき検査」の正解となる検査(末梢血の目視分類カウント検査)で用いられる標本画像となっている。したがって、問題2の次に問題3を問うことは、実際の検査業務の流れに即したものとなる。
【0073】
また、図15の画面60では、図13,14の画面60と同様に、血球計数装置の検査結果が参考情報として表示されている。これは、実際の検査業務では、それまでに得られた検査結果を総合して、必要な判断をすることに対応させたものである。
【0074】
つまり、末梢血の標本画像だけを提示してユーザに必要な判断をさせる場合には、末梢血の標本画像の分析・分類に特化した能力のトレーニングとなってしまう。これに対し、実際の検査業務では、それまでの検査結果を総合して判断するため、図15の画面60のように、標本画像だけでなく、血球計数装置の検査結果も参考情報として表示させることで、実際の検査業務に即した形で、判断のトレーニングが行える。
【0075】
[1.5.4 問題4;次の検査を問う問題]
図16の画面は、問題4が表示された画面60である。問題4は、問題3と同様に、普通染色の末梢血の標本をデジタル画像とした標本画像(Slide001)を提示しつつ、次に行うべきステップを問うものである。つまり、問題4も、問題2と同様に、次に行うべき検査が何であるかを問うものとなっている。
【0076】
問題4では、先の問題2において問われた「次に行うべき検査」の正解となる検査(末梢血の目視分類カウント検査)が既に行われた状態を想定しており、画面60の参考情報エリア63には、Ref001に替えて、Ref002が表示される。つまり、実際の検査業務では、末梢血の目視分類カウントが行われると、血球計数装置の検査結果に加えて、目視分類カウントの結果(DIFF項目)が得られる。これを反映して、図16の参考情報エリア63には、末梢血標本を顕微鏡で目視分類カウントして得られた検査結果も表示される。
【0077】
実際の検査業務では、複数の検査を行うことで、検査結果・標本画像などの複数の検査情報の量が、積み上げ式に増加していく。本実施形態の装置1では、問題の進行を、実際の検査業務の流れに一致させており、さらに、実際の検査業務において積み上げ式に増加する検査情報のユーザへの提示量が、問題の進行に合わせて増加する。これにより、実際の検査業務の流れに即したトレーニングが可能である。
【0078】
[1.5.5 問題5;普通染色骨髄標本を用いた検査に関する問題]
図17の画面は、問題5が表示された画面60である。問題5においては、骨髄普通染色デジタル標本画像(Slide002)が表示される。問題5で表示される標本画像は、先の問題4において問われた「次に行うべき検査」の正解となる検査(骨髄普通染色標本の目視分類カウント検査)で用いられる標本画像となっている。したがって、問題4の次に問題5を問うことは、実際の検査業務の流れに即したものとなる。
【0079】
なお、図17に示すように、問題4の出題当初においては、装置1は、スライドエリア64に骨髄普通染色デジタル標本画像(Slide002)だけを表示する。ただし、末梢血デジタル標本画像(Slide001)も切替表示可能であり、タグ64aを選択することで、末梢血デジタル標本画像(Slide001)を表示させることができる。また、骨髄普通染色デジタル標本画像(Slide002)のタグ64bを選択すれば、骨髄普通染色デジタル標本画像(Slide002)の表示に戻すことができる。
このように、標本画像についても、それまでに得られた複数の標本画像がすべて表示可能である。したがって、ユーザは、それまでの検査情報(検査結果・標本画像)を総合した判断のトレーニングを受けることができる。
【0080】
[1.5.6 問題6;骨髄普通染色標本を用いた検査に関する問題]
図18の画面は、問題6が表示された画面60である。問題6においても、問題5と同様に、骨髄普通染色デジタル標本画像(及び末梢血デジタル標本画像)が表示され、骨髄普通染色デジタル標本画像をユーザが観察して答えるのに適した問題となっている。
【0081】
[1.5.7 問題7;骨髄普通染色標本を用いた検査に関する問題]
図19の画面は、問題7が表示された画面60である。問題7においても、問題5,6と同様に、骨髄普通染色デジタル標本画像(及び末梢血デジタル標本画像)が表示され、骨髄普通染色デジタル標本画像をユーザが観察して答えるのに適した問題となっている。この問題は、骨髄普通染色の標本画像に含まれる特定の細胞画像(白血球の細胞)に関して問うものである。

【0082】
[1.5.8 問題8;骨髄普通染色標本を用いた検査に関する問題]
図20の画面は、問題8が表示された画面60である。問題8においても、問題5〜7と同様に、骨髄普通染色デジタル標本画像(及び末梢血デジタル標本画像)が表示され、骨髄普通染色デジタル標本画像をユーザが観察して答えるのに適した問題となっている。
【0083】
[1.5.9 問題9;次の検査を問う問題]
図21の画面は、問題9が表示された画面60である。問題9は、問題5〜8と同様に、普通染色の骨髄の標本をデジタル画像とした標本画像(Slide002)を提示する。問題9は、問題2,4と同様に、次に行うべき検査が何であるかを問うものとなっている。
【0084】
[1.5.10 問題10;骨髄特殊染色標本を用いた検査に関する問題]
図22の画面は、問題10が表示された画面60である。問題10においては、骨髄POX染色デジタル標本画像(Slide003)が表示される。
問題10で表示される標本画像は、先の問題9において問われた「次に行うべき検査」の正解となる検査(骨髄POX染色標本の検査)で用いられる標本画像となっている。したがって、問題9の次に問題10を問うことは、実際の検査業務の流れに即したものとなる。
【0085】
なお、図22に示すように、問題10の出題当初においては、装置1は、スライドエリア64に骨髄POX染色デジタル標本画像(Slide003)だけを表示する。ただし、末梢血デジタル標本画像(Slide001)及び骨髄普通染色デジタル標本画像(Slide002)もタグ64a,64bの操作によって切替表示可能である。
【0086】
[1.6 問題表示画面の補足説明]
図15に示すように、画面60は、スライドエリア64に表示される標本画像の表示の仕方を調整する表示調整部66が設けられている。表示調整部66は、拡大ボタン66a及び縮小ボタン66bを備えており、これらのボタン66a,66bの選択により、標本画像を拡大させたり、縮小させたりすることができる。
表示調整部66は、スクロール用ボタン66cを備えており、これらのボタン66cを選択することで、スライドエリア64に表示されている標本画像を上下左右にスライドさせることができる。
【0087】
また、画面60は、スライドエリア64に表示される標本画像の元になった塗抹標本において、標本画像としてデジタル画像化されている領域を示す画像領域表示部67を備えている。この表示部67内の四角で囲まれた範囲67aが、塗抹標本全体のうち、標本画像としてデジタル画像化された領域である。
【0088】
さらに、画面60は、標本画像全体において、現在、スライドエリア64に表示されている位置を示す位置表示部68を備えている。位置表示部68は、横軸68aとこれと交差する縦軸68bとを備えており、両軸68a,68bの交点が、スライドエリア64に表示されている位置を示している。
【0089】
また、画面60のスライドエリア64に標本画像を表示させる場合における初期位置と初期倍率は、問題毎に設定されている。初期位置とは、装置1が、問題とともに、当該問題に対応した標本画像を画面60のスライドエリア64に表示させる際において、スライドエリア64に表示させる位置が標本画像全体におけるどの位置であるかを示すものである。初期倍率とは、装置1が、問題とともに、当該問題に対応した標本画像を画面60のスライドエリア64に表示させる際において、標本画像の初期位置をどの程度の倍率で表示させるかを示すものである。
【0090】
標本画像における位置と倍率は、顕微鏡観察における標本の観察位置とその観察倍率に対応する。問題によって、適切な位置や倍率が異なるため、初期位置と初期倍率が装置1に設定されていることで、標本画像のうち、問題に対応した適切な位置の画像を、適切な倍率で表示させることができる。
【0091】
例えば、問題5のように「低倍率視野にて骨髄の細胞密度を評価して下さい。」といった低倍率での観察を指定する問題では、スライドエリア64で表示される標本画像の初期倍率は、低倍率に設定される。これにより、ユーザは、表示調整部66を操作しなくても、低倍率視野の標本画像を観察することができる。
【0092】
また、問題7のように「この白血球の細胞の分類名を選択してください。」といった標本画像中の特定の位置に存在する細胞に関する問題では、スライドエリア64で表示される標本画像の初期位置は、その細胞を表示可能な位置に設定される。これにより、ユーザは、表示調整部66を操作して、その細胞を表示させる操作を行わなくても、その細胞を観察することができる。
【0093】
ここまで詳細に説明したように、本実施形態の臨床検査教育装置は、先ず、患者から採取された検体を血球計数装置によって検査して得られる検査結果を表示するとともに、検査結果に関する設問を出題する。その後、検体を塗抹して得られる塗沫標本の画像を表示するとともに、その標本画像に関する設問を表示する。このように実際の検査業務の流れに即した順序で検体の情報を提示して出題を行うため、解答者は、実際の検査業務の流れに沿って検査業務をシミュレーションすることができる。
さらに、本実施形態の臨床検査教育装置では、解答者は、検査結果に関する設問に解答しない限り、その検体がすでに標本が作製された検体であるかを知ることができない。検査技師の教育のために従来行われているペーパーテストでは、ある検体の検査結果に関する設問に解答する前に問題用紙に目を通すことで、その検体の標本画像の設問が次に出題されることがわかってしまう。そのため、解答者は、標本作製が必要な検体の検査結果であることが予見できてしまい、検査結果に対して適切な判断を行うことができない。これに対して、本実施形態の臨床検査教育装置では、検査結果に関する設問に解答しない限り、標本の作製が必要な検体かどうかを知ることができないため、より実際の臨床検査に近い状況で検査結果を検討するトレーニングを行うことができる。
【0094】
さらに、本実施形態では、検体の血球計数装置による検査結果を表示するとともに、その検体に対して次に行うべき検査の種類を問う設問を出題する。これにより、解答者は、検査結果を検討して次に行うべき検査が何かを判断する能力を養うことができる。
【0095】
さらに、本実施形態では、塗抹標本画像に関する設問を出題するとき、検体の標本画像とともに、検体を血球計数装置によって検査して得られた検査結果を表示する。実際の臨床検査の流れにおいては、それまでに行われた検査結果を総合的に勘案して目視検査を行う。そのため、標本画像とともに検査結果を表示することにより、実際の臨床検査の業務に即した状況でのトレーニングが可能となる。
【0096】
さらに、本実施形態では、患者から採取された末梢血の普通染色の塗抹標本の画像と、その画像の目視検査による検査結果を表示するとともに、その患者の検体について次に行うべきステップを問う設問を表示する。実際の臨床検査においては、末梢血の塗抹標本を目視検査するだけでは、医師による確定診断に必要な情報を提供するには不十分な場合もある。本実施形態によれば、末梢血の塗抹標本だけでは不十分な情報を判断する能力を養うことができる。
【0097】
さらに、本実施形態では、末梢血の塗抹標本の目視検査に関する設問を出題したのち、骨髄液の塗抹標本の画像とそれに関する設問を表示する。これにより、末梢血を検査した結果、白血病が疑われると判断された患者についての骨髄液の検査をトレーニングすることができる。
【0098】
さらに、本実施形態では、末梢血の標本画像に含まれる特定の細胞画像を提示して、その細胞に関する設問を出題する。これにより、実際の臨床検査の流れに即したトレーニングを行いながら、細胞の分類に関する知識の向上を図ることが可能になる。
【0099】
さらに、本実施形態では、ログインしたユーザに応じて異なる設問を出題するように構成されている。これにより、ユーザのレベルに応じたトレーニングが可能になる。
【0100】
さらに、本実施形態では、受け付けた解答が正解でないとき、設問に対する解答を表示できるようになっている。これにより、解答者は、自動スクリーニングによる検査結果や塗抹標本についてどのような点に着目し、判断すればよいかを知ることができる。
【0101】
[2.第2実施形態:尿検査の教育装置]
上記装置1は、血液検査の教育装置としての利用に限られるものではなく、尿検査の教育装置などのその他の臨床検査の教育装置として利用することができる。図23に示すように、尿沈渣検査の業務は、血液検査と同様に、複数の検査が必要となることがある検査業務である。
つまり、尿検査業務では、まず、尿沈渣分析装置による自動スクリーニング検査を行い、尿沈渣の検査結果(数値データ)を得る(第1の検査方法T11)。この検査結果の項目としては、RBC(赤血球)、WBC(白血球)、EC(上皮細胞)、CAST(円柱)、BACT(細菌)などの項目がある。
【0102】
尿検査装置による検査結果に次の検査として、例えば、尿の標本を用いた顕微鏡検査が行われる(第2の検査方法T2)。尿検査装置による検査結果に何らかの異常が認められた場合、尿標本の顕微鏡観察が行われる。
【0103】
したがって、装置1を尿検査教育装置として用いる場合、問題テーブルに上記のような検査業務の流れを考慮した問題を設定すればよい。
【0104】
[3.付記]
本発明は、上記各実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
上記実施形態では、第1の設問として血球計数装置などの自動スクリーニング検査による検査結果に関する設問を表示し、第2の設問として塗抹標本画像に関する設問を表示する例を示したが、これに限られるものではない。例えば、第1の設問として塗抹標本画像(例えば骨髄液の塗抹標本の画像)に関する設問を表示し、第2の設問として自動スクリーニング検査の検査結果(骨髄液を血球計数装置によって検査した検査結果)に関する設問を表示してもよい。
また、本発明における「第1設問」、「第2設問」、「第3設問」、「第1対設問」、及び「第2追加設問」の用語は、これらの設問が互いに異なる設問であることを示すために採用された用語であり、それ以上に限定して解釈されるべきものではない。
例えば、上記実施形態における「問題2」及び「問題3」を、それぞれ「第1設問」及び「第2設問」の例として捉えることもできるし、上記実施形態における「問題4」及び「問題5」を、それぞれ「第1設問」及び「第2設問」の例として捉えることもできる。また、上記実施形態における「問題9」及び「問題10」を、それぞれ「第1設問」及び「第2設問」の例として捉えることもできる。
【0105】
さらに、上記実施形態における「問題2」及び「問題3」を、それぞれ「第1設問」及び「第2設問」の例として捉えた場合、「第1追加設問」の例としては、「問題4」が該当する。
さらに、上記実施形態における「問題2」及び「問題3」を、それぞれ「第1設問」及び「第2設問」の例として捉えた場合、「第3設問」の例としては、「問題5」が該当する。なお、問題5では、第3検査情報として、骨髄普通染色標本画像を表示しているが、第3検査情報としては、標本画像に限らず、他の検査用の情報であってもよい。第3検査情報としては、例えば、好中球アルカリホスファタファーゼ(neutrophil alkaline phosphatase : NAP)染色をした結果(NAP Score)などの数値データであってもよい。
【0106】
また、上記実施形態における「問題4」及び「問題5」を、それぞれ「第1設問」及び「第2設問」の例として捉えること、「第3設問」の例としては、「問題10」が該当する。
【0107】
なお、第2追加設問の例としては、「問題7」が該当する。
【符号の説明】
【0108】
1 臨床検査教育装置
10 制御部
20 記憶部
30 設定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者から採取された第1検体に対して第1検査を行って得られる第1検査情報、及び、前記第1検査情報を用いた第1設問、を表示し、
前記第1設問に対する第1解答を受け付け、
前記第1解答を受け付けた後、前記検体について前記第1検査の後に行われるべき第2検査で用いられる標本の標本画像、及び、前記標本画像を用いた第2設問、を表示し、
前記第2設問に対する第2解答を受け付ける、
臨床検査教育装置。
【請求項2】
第1設問は、前記第1検査の後に行うべき検査の種類を問うものである
請求項1記載の臨床検査教育装置。
【請求項3】
前記第1検査情報は、前記第1検体としての血液を血球計数装置によって検査して得られた検査結果である
請求項1又は2記載の臨床検査教育装置。
【請求項4】
前記標本画像は、前記第1検体としての血液を塗抹して得られる塗抹標本の画像である
請求項1〜3のいずれか1項に記載の臨床検査教育装置。
【請求項5】
前記標本画像は、前記第1検査情報とともに表示される
請求項1〜4のいずれか1項に記載の臨床検査教育装置。
【請求項6】
前記第2解答を受け付けた後、第2検査の検査結果を示す情報とともに、第1追加設問を表示する
請求項1〜5のいずれか1項に記載の臨床検査教育装置。
【請求項7】
前記第2解答を受け付けた後、前記第2検査の後に、前記患者から採取された第2検体について行われるべき第3検査に用いられる第3検査情報、及び、前記第3検査情報を用いた第3設問、を表示する
請求項1〜6のいずれか1項に記載の臨床検査教育装置。
【請求項8】
前記第3検査情報は、前記第3検査で用いられる標本の標本画像である
請求項7記載の臨床検査教育装置。
【請求項9】
前記第3検査で用いられる標本画像は、前記第2検体としての骨髄液を塗抹して得られる塗沫標本の画像である
請求項8記載の臨床検査教育装置。
【請求項10】
前記第3検査情報は、前記第1検査情報とともに表示される
請求項7〜9のいずれか1項に記載の臨床検査教育装置。
【請求項11】
前記第2解答を受け付けた後、前記第1検査情報としての検体の標本画像に含まれる特定の細胞画像に関する第2追加設問を表示する
請求項1〜10のいずれか1項に記載の臨床検査教育装置。
【請求項12】
ユーザのログインを受け付け、
ログインしたユーザに応じて異なる設問を表示させる、
請求項1〜11のいずれか1項に記載の臨床検査教育装置。
【請求項13】
前記第1検査情報は、前記第1検体としての尿を尿沈渣分析装置によって検査して得られた検査結果であり、
前記標本画像は、前記第1検体としての尿の標本画像である
請求項1〜12のいずれか1項に記載の臨床検査教育装置。
【請求項14】
受け付けた解答が正解であるか否かを判断し、
受け付けた解答が正解でないと判断された場合に、設問に対する解説を表示する、
請求項1〜13のいずれか1項に記載の臨床検査教育装置。
【請求項15】
受け付けた第1解答の内容に応じて、異なる標本画像及び第2設問を表示する
請求項1〜14のいずれか1項に記載の臨床検査教育装置。
【請求項16】
患者から採取された検体の第1検査に用いられる第1の標本画像、及び、前記第1の標本画像を用いた第1設問、を表示し、
前記第1設問に対する第1解答を受け付け、
前記第1解答を受け付けた後、前記患者から採取された検体について第1の検査の後に行われるべき第2検査に用いられる第2標本画像又は第2検査の検査結果、及び、前記第2標本画像又は第2検査結果を用いた第2設問、を表示し、
前記第2設問に対する第2解答を受け付ける、
臨床検査教育装置。
【請求項17】
コンピュータを、請求項1〜16のいずれか1項に記載の臨床検査教育装置として機能させるためのコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図23】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2012−42621(P2012−42621A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182552(P2010−182552)
【出願日】平成22年8月17日(2010.8.17)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】