自動二輪車の盗難防止方法及びその装置
【課題】常に正確に振動や傾斜角度を検出可能な自動二輪車の盗難防止方法を提供する。
【解決手段】X軸方向及び/又はY軸方向の加速度を検出する加速度センサ206を用い、X,Y各方向のセンサ出力X,Yと所定の基準値Xs,Ysとの差に基づいて盗難状態を判別する自動二輪車の盗難防止方法において、新たな盗難監視状態が開始された後、所定時間Aが経過したときから所定時間Bの間のセンサ出力の平均値を算出し、この平均値を前記基準値として設定することとした。
【解決手段】X軸方向及び/又はY軸方向の加速度を検出する加速度センサ206を用い、X,Y各方向のセンサ出力X,Yと所定の基準値Xs,Ysとの差に基づいて盗難状態を判別する自動二輪車の盗難防止方法において、新たな盗難監視状態が開始された後、所定時間Aが経過したときから所定時間Bの間のセンサ出力の平均値を算出し、この平均値を前記基準値として設定することとした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動二輪車等の車両用盗難防止方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の盗難防止装置として、駐車中の車両の姿勢変化や振動を検出するセンサを備え、該センサが振動等を検出するとサイレンやブザーで警報音を発生するものや、車両のメインスイッチが不正に操作されたときに、点火回路や点火プラグからなるエンジンの点火ユニットを遮断してエンジンが作動しないようにするイモビライザ機能を備えたもの等が従来より知られている。
このような盗難防止装置は、メインスイッチをオフにすることによりセンサやマイコン(マイクロコンピュータ)あるいはCPU等の制御回路などからなる盗難防止システムが自動的にセットされ、盗難やいたずらに対し装置が作動可能な警戒状態となる。
この状態でメインスイッチが不正操作された場合(不正キーや他の工具等の使用によるスイッチ操作あるいは正常キーであってもシステム解除操作をしなかった場合等)にメインスイッチがオンになると、システムが作動して警報音が発生し、またイモビライザが作動して点火ユニットが遮断され、エンジンが始動できなくなる。
これにより、車両の盗難やいたずら行為に対し警報を発し、またイモビライザが作動してエンジンが始動できなくなり盗難予防やいたずらを抑止することができる。
このような盗難防止システムにはメインスイッチを介してバッテリが接続される。メインスイッチがONにされるとシステムに電源電圧が入力される。この後システムの解除操作を行って警報音やイモビライザの動作を停止した警戒解除状態としてから、エンジンを始動して車両を走行させる。
これにより、正常なユーザーが正常に車両を使用する場合に、警報音を発生することなく又イモビライザにより点火ユニットが遮断されることなくエンジンを始動させて運転することができる。
しかしながら、車両の使用開始時にバッテリ電圧が低下した状態でメインスイッチをONにすると、システム解除操作をしてもイモビライザの解除ができず、不正操作の状態となってイモビライザが動作し点火ユニットが遮断されてエンジンの始動ができなくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
また、車両の盗難防止装置として、駐車中の車両の傾きの変化を検出するセンサを備え、該センサが傾きの変化を検出するとサイレンやブザーで警報音を発生するものや、車両のメインスイッチが不正に操作されたときに、点火回路や点火プラグからなるエンジンの点火ユニットを遮断してエンジンが作動しないようにするイモビライザ機能備えたもの等が従来より知られている。
従来、車両の傾きを検出するセンサとして水銀スイッチが用いられていた。この水銀スイッチは、ガラス管の中に水銀の接点体を入れてガラス管の傾斜により接点体を移動させて接点端子をオン/オフさせるものである。
しかしながら、このような水銀スイッチは車体の振動等により接点のオン/オフが繰返されたり、駐車中の車体の傾斜角度により接点の動作範囲が変わってしまい警報装置が誤動作する可能性があった。
一方、重力に基づく傾斜や衝撃等による振動を検出する加速度センサが実用化されている。この加速度センサは、2枚の固定極板間に移動極板を設け、傾きや衝撃により移動極板が移動すると、固定極板との間のコンデンサ容量が変化して傾斜による重力加速度成分や衝撃加速度を検出するものである。このような加速度センサを用いて、例えば車体の左右方向(X軸方向)と前後方向(Y軸方向)の2軸について傾きを検出して盗難を判別することが考えられる。
このような加速度センサを用いた場合、X及びY軸方向の車体の傾斜や振動をセンサ出力により検知して傾斜や振動状態を判別する。この場合、センサ出力の0点は正規の駐車時の車体姿勢(例えば水平)における出力である。
しかしながら、車体が傾斜して駐車した場合には、始めからある程度のセンサ出力が検出されるため、姿勢が変化したときの判断を誤るおそれや微小な傾斜の変化を正確に検出できなくなるおそれを生じる。このため、盗難防止の機能の信頼性が低下し誤警報を発したりあるいは逆に盗難時に動作しなくなる等の不具合を生じる。
また、加速度センサの温度特性等により、使用時の温度変化や長期間の駐車等により、同一の姿勢であってもセンサの出力が変化して誤警報を発するおそれを生じる。
また、2軸加速度センサを用いて盗難状態を判別しようとすると、傾斜検出時に衝撃が作用した場合に、車体が傾いたと誤判断したり、僅かな衝撃を検出して盗難警報を発する等の誤動作をするおそれがあった。
【0004】
本発明は、上記従来技術を考慮したものであって、常に正確に振動や傾斜角度を検出可能な自動二輪車の盗難防止方法の提供を目的とする。
また、本発明は、僅かな振動等による傾斜状態の誤検出に基づく誤警報を防止するとともに大きな振動による盗難状態を確実に検出して傾斜及び振動の検出の信頼性を高めた自動二輪車の盗難防止装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため、請求項1の発明では、X軸方向及び/又はY軸方向の加速度を検出する加速度センサを用い、X,Y各方向のセンサ出力X,Yと所定の基準値Xs,Ysとの差に基づいて盗難状態を判別する自動二輪車の盗難防止方法において、新たな盗難監視状態が開始された後、所定時間Aが経過したときから所定時間Bの間のセンサ出力の平均値を算出し、この平均値を前記基準値として設定することを特徴とする自動二輪車の盗難防止方法を提供する。
【0006】
請求項2の発明では、前記センサ出力を一定の周期で検出し、前記所定時間Aが経過するまでの所定回数の検出データを無視し、その後の所定回数の検出データの平均値を前記基準値として設定し、この基準値を用いて、その後の検出データに基づいて盗難状態を判別することを特徴としている。
【0007】
請求項3の発明では|X−Xs|+|Y−Ys|に基づいて盗難状態を判別することを特徴としている。
さらに請求項4の発明では、一定の時間間隔で前記基準値を更新することを特徴としている。
【0008】
さらに、請求項5の発明では、X軸及びY軸についてそれぞれ加速度を検出する2軸加速度センサと、この加速度センサの出力を読取るセンサ出力読取り手段と、読取ったセンサ出力に基づいて盗難状態かどうかを判別する盗難判別手段と、盗難状態と判別されたときに警報を発する警報手段とを備えた自動二輪車の盗難防止装置において、前記盗難判別手段は、X軸及びY軸のセンサ出力X,YとX軸及びY軸それぞれの所定の基準値Xs,Ysとの差に基づいてX軸とY軸のセンサ出力を合成した演算出力値Aを算出し、この演算出力値Aが所定のしきい値Sより大きい場合には、車体の振動に基づいて盗難状態を判別し、前記演算出力値Aが所定のしきい値Sより小さい場合には、車体の傾斜に基づいて盗難状態を判別することを特徴とする自動二輪車の盗難防止装置を提供する。
【0009】
請求項6の発明では、前記演算出力値Aが所定のしきい値Sより大きい場合に、その状態が通算で所定時間以上連続した場合に盗難状態と判別して警報を発することを特徴としている。
請求項7の発明では、前記演算出力値Aが所定のしきい値Sより小さい場合に、X軸及びY軸それぞれについて過去複数回の出力データの平均値と前回の判別に用いた算出値との新たな平均値を求め、この新たな平均値と所定の基準値Xs,Ysとの差に基づいてX軸及びY軸のセンサ出力を合成した傾斜判別値Dを算出し、この傾斜判別値Dが所定のしきい値Q以上のときに盗難状態と判別して警報を発することを特徴としている。
【0010】
さらに請求項8の発明では、前記演算出力値Aは、X軸及びY軸について現在の出力値をX,Yとし、基準値をXs,Ysとしたとき、A=|X−Xs|+|Y−Ys|であることを特徴としている。
さらに請求項9の発明においては、前記演算出力値Aは、X軸及びY軸について現在の出力値をX,Yとし、基準値をXs,Ysとしたとき、A=√{|X−Xs|2+|Y−Ys|2}であることを特徴としている。
さらに請求項10の発明では、前記センサ出力読取り手段は、一定時間ごとにセンサ出力を読取ってメモリに格納することを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、新たな盗難監視状態の開始の後、すなわちメインスイッチをオフにしたときや警報が鳴った後所定時間後に解除されたときなどであって、盗難防止装置による警戒状態に入った後、開始から所定時間Aだけ経過して出力が安定した後、所定時間Bの間のセンサ出力を検出してその平均値を求め、この平均値を基準値として盗難状態の判断を行う。したがって、警戒状態が開始されるごとに、安定した状態で基準値が算出され、その基準値をセンサ出力の0点となる初期値としてセンサ出力が判別されるため、駐車のたびに姿勢が変わったとしても、それに追従して0点をオフセットさせるため、常に正確に傾斜角度や振動を検出することができる。
【0012】
請求項2の発明によれば、センサ出力を連続して読取らずに例えば数十msの周期ごとに読取ってこれをメモリに保存することにより、消費電力の低減が図られる。
この場合、読取り開始後の所定回数の読み取り検出データは出力が不安定であるため無視して基準値演算や傾斜判断には用いず、その後の安定した状態の最初の所定回数の読み取り検出データを平均化して基準値とする。したがって、常に車体姿勢に応じて安定した信頼性の高い基準値が得られ、この基準値に基づいてセンサ出力から車体姿勢による出力分を相殺できるため、常に正確で信頼性の高い盗難判断ができる。
【0013】
請求項3の発明によれば、センサ出力値X,Yと基準値Xs,Ysとの差の絶対値を加算して盗難状態の判別式とするため、判別式が簡単な計算処理で短時間で算出でき、盗難判断の処理速度を速めることができる。
請求項4の発明によれば、温度変化等によるセンサの出力特性が変化した場合であっても、これに対応して定期的に基準値を書き換えることにより、センサ出力に基づいて常に正確な盗難状態判断ができる。
【0014】
請求項5の発明によれば、X軸及びY軸それぞれについて例えば駐車時の車体姿勢での傾斜状態を基準値として、各方向での基準値との差に基づいてX軸及びY軸のセンサ出力を合成したセンサの演算出力値Aを算出し、この演算出力値Aが所定のしきい値Sより大きいときに振動に基づく盗難状態を判別し、演算出力値Aが所定のしきい値Sより小さいときに車体の傾斜に基づいて盗難状態を判別するため、振動と傾斜を分けて検出することができ、振動判断のしきい値を大きくし、傾斜判断のしきい値を小さくして小さな振動による傾斜の誤判断を防止するとともに、大きな振動を確実に検出して盗難判断の信頼性を高めることができる。
【0015】
請求項6の発明によれば、基準値に基づく演算出力値Aが所定のしきい値Sより大きくなって振動により盗難判断をする場合に、しきい値Sより大きい状態が通算で所定時間以上連続した場合に盗難状態と判別するため、誤って足が当る等の瞬間的な短時間の小さな衝撃は盗難と判断されず誤警報が防止されるとともに、例えばメインスタンドを降ろす等の大きく長く続く振動は確実に検出して盗難状態を判別できる。この場合、通算で所定時間以上連続するとは、振動の波が繰返されて、しきい値S以上の状態だけでなく短時間のしきい値S以下の状態が伴った場合に、しきい値S以上の時間の合計のことである。しきい値S以下の時間が所定時間以上連続したら、しきい値以上の状態での振動検出モードが解除される。
【0016】
請求項7の発明によれば、演算出力値Aが小さく傾斜に基づいて盗難状態を判断する場合に、センサ出力の過去複数回のデータの平均値と前回の盗難判別に用いた算出値との平均値をX軸及びY軸についてそれぞれ求め、この平均値と基準値との差に基づいてX軸及びY軸のセンサ出力を合成した傾斜判別値Dを算出して、この傾斜判別値Dに基づいて盗難状態を判別するため、出力データの平均化により傾斜角度の読取り精度が向上し微小な傾斜変化を確実に検出できるとともに、瞬間的な短時間の振動や風雨等の長く続く不定間隔の微振動は平均化によって打ち消され誤警報が防止される。
【0017】
請求項8の発明によれば、盗難状態を判別する演算出力値Aが、X軸及びY軸についてセンサ出力値X,Yと基準値Xs,Ysとの差の絶対値を加算したものであるため、簡単な計算処理で短時間で算出でき、盗難判断の処理速度を速めることができる。
請求項9の発明によれば、加速度センサの取付け方向がどのような向きであっても、正確に傾斜状態を検出することができる。
請求項10の発明によれば、センサ出力を連続して読取らずに例えば数十msの周期ごとに読取ってこれをメモリに保存するため、消費電力の低減が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、参考例の車両用盗難防止装置のブロック構成図である。
【図2】図2は、図1の盗難防止装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】図3は、本発明に係る盗難防止装置のブロック構成図である。
【図4】図4は、加速度センサの出力波形図である。
【図5】図5は、本発明に係る盗難防止方法のフローチャートである。
【図6】図6は、本発明に係る2軸加速度センサの出力波形図である。
【図7】図7は、振動検出モードの説明図である。
【図8】図8は、傾斜検出モードの説明図である。
【図9】図9は、加速度センサを用いた盗難防止方法のフローチャートである。
【図10】図10は、参考例の盗難防止装置のブロック構成図である。
【図11】図11は、イモビライザ装置のブロック図である。
【図12】図12は、アラーム装置のブロック図である。
【図13】図13は、参考例の盗難防止システムのブロック構成図である。
【図14】図14は、参考例の実施形態のブロック図である。
【図15】図15は、参考例の実施形態のフローチャートである。
【図16】図16は、参考例の別の実施形態のフローチャートである。
【図17】図17は、参考例のさらに別の実施形態のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、参考例の車両用盗難防止装置のブロック構成図である。
この盗難防止装置は、盗難防止装置本体1内に、メインスイッチ入力判定手段2と、電圧測定手段3と、制御手段4とを有する。メインスイッチ入力判定手段2にメインスイッチ5を介してバッテリ6が接続される。バッテリ6はさらに直接電圧測定手段3に接続される。バッテリ6は、メインスイッチ5を介して車両のスタータモータや表示ランプ等のDC負荷7に接続される。
このメインスイッチ5を通して盗難防止装置本体1に電源電圧が供給される。メインスイッチ入力判定手段2は、メインスイッチ5を通して入力されたバッテリ6からの電圧を検出して、その電圧値に基づいてメインスイッチ5がオンかオフかを判別するものである。
電圧測定手段3はバッテリ電圧を直接測定する。盗難防止装置本体1内には、車体の振動や傾斜を検出する加速度センサ(不図示)が制御手段4に接続して備わる。制御手段4は、盗難防止のための警報発生や点火ユニット遮断等の盗難防止システムを動作制御する盗難防止制御回路(マイコン又はCPU)により構成される。この制御手段4には、警報用のサイレン8及びシステムの動作状態を示すインジケータランプ9が接続される。また、この制御手段4はエンジンの点火ユニット10に接続される。この他、この制御手段4には、加速度センサ(不図示)の検出信号等に基づき異常な振動状態等を判別して駆動回路(不図示)を介してサイレン8やインジケータ9を動作させる演算回路(不図示)やタイマ回路(不図示)等が備わる。
この制御手段4はイモビライザシステムを構成し、予めメインスイッチ5をオン/オフさせるキー(不図示)に暗証番号を設定し、キーが差込まれたとき制御手段4側でその暗証番号を照合して不正キーの場合には点火ユニット10を遮断してエンジンを始動できなくする。
【0020】
図2は、上記盗難防止装置の動作を示すフローチャートである。フローの各ステップの動作は以下の通りである。
ステップS1:
まずメインスイッチ5をONにする。このメインスイッチONの動作は、メインスイッチ入力判定手段2により検出され、メインスイッチON信号が制御手段4に送られる。
ステップS2:
メインスイッチONの直後に、制御手段4が、電圧測定手段3からバッテリ6の電圧を読取る。
ステップS3:
盗難防止装置の動作を停止させるための例えばキーによる解除操作をしたかどうかを判別する。正常な使用であれば解除操作が行われる。不正使用であれば解除操作は行われない。
ステップS4:
解除操作が行われていない場合(不正使用の場合)、上記ステップS2のバッテリ電圧読み取りデータを消去する。
ステップS5:
盗難防止装置は解除されず、警戒状態を継続する。したがって、サイレン8により警報音が発生し、且つイモビライザが機能して点火ユニット10が遮断されエンジンが始動できなくなる。
ステップS6:
上記ステップS3で解除操作をした場合、バッテリ電圧の読取り値(ステップS2)が所定値より小さいかどうかを判別する。この所定値は、システムを動作させるのに最低限必要なバッテリ電圧があるかどうかを判別するための判定基準値である。基準値としては、例えばイモビライザシステムを解除するのに必要な最低動作電圧(例えば8V)に対し、安全率として25%のマージンを付加して10Vに設定する。あるいは、このイモビライザシステムの解除電圧より高いスタータモータの始動限界電圧にマージンを見込んだ付近に基準値を設定してもよい。
ステップS7:
上記ステップS6でバッテリ電圧が所定値以下の場合、サイレンにより警報音を発生させる。例えばイモビライザシステムの必要解除電圧レベルまで電圧低下している場合にサイレンを所定回数鳴らしてユーザーに対し警報を発する。
ステップS8:
イモビライザシステム等の盗難防止システムが解除され、乗車可能な状態である。
【実施例1】
【0021】
図3は本発明に係る盗難防止装置の構成を示し、(A)は装置全体のブロック図、(B)は盗難防止制御回路部分のブロック図である。
(A)に示すように、盗難防止装置本体201にヒューズ202を介してバッテリ203が接続される。バッテリ203は、メインスイッチ204を介して車両のスタータモータや表示ランプ等のDC負荷205に接続される。盗難防止装置本体201内には、車体の振動及び傾斜を検出する加速度センサ206及び盗難防止のための警報発生や点火ユニット遮断等の盗難防止システムを動作制御する盗難防止制御回路(マイコン又はCPU)207が備わる。盗難防止装置本体201には、警報用のサイレン208及びシステムの動作状態を示すインジケータランプ209が接続される。この盗難防止装置本体201はエンジンの点火ユニット210に接続される。
加速度センサ206は、X軸方向及びY軸方向についての加速度を検出して振動及び傾斜状態を検出する2軸加速度センサである。なお、2軸加速度センサ206は、X,Y両方向を検出可能な一体構成のセンサであってもよいし、2つの1軸センサの取付け方向を変えて別体構成のX方向センサとY方向センサとして設置して2つのセンサにより2軸方向を検出可能な加速度センサとしてもよい。
この加速度センサ206は、盗難防止制御回路207に含まれるセンサ出力読取り手段211に接続される。センサ出力読取り手段211には書換え可能なメモリ212及びタイマ213が接続される。センサ出力読取り手段211は、加速度センサ206の検出出力を一定周期(例えば数十ms)で読出し、そのセンサ出力をメモリ212に格納する。
センサ出力読取り手段211は、盗難判定手段214に接続される。盗難判定手段214は、システム状態検出手段216による現在のシステムの状態及びセンサ出力読取り手段211で読取った加速度センサ206の出力データに基づいて盗難状態を判別する。システム状態検出手段216は、この盗難防止装置による盗難防止システムが作動中の警戒状態かどうかを判別する
盗難防止判定手段214は、サイレン208及びインジケータランプ209を含む警報装置215に接続され、盗難状態を判別したときに警報を発するとともに盗難状態を点灯表示する。
【0022】
図4は、本発明に係る加速度センサのX軸方向(又はY軸方向)のセンサ出力波形図である。
時間t0でシステムが新たな警戒状態に入る。この新たな警戒状態に入るときとは、駐車のためにメインスイッチをオフにしたとき(あるいはオフにした後所定時間経過したとき)や、一旦警報が鳴った後所定時間後に自動的に解除されたとき等であり、盗難防止装置が作動可能状態となるように新たにセットされるときである。
本実施形態では、一定時間間隔の周期(T)ごとにセンサ出力を読取って盗難状態の判断を行う。この場合、警戒状態のセット開始(時間t0)から所定回数(この例では8回)の時間(時間t1まで)は、システム状態が切換った直後であり(LEDが点灯状態から消灯状態になり、サイレンが鳴った状態から停止した状態になる等)、センサ出力が安定していないため読取りデータは無視する。なお、この時間t0からt1までが請求項6でいう所定時間Aである。
この時間t1後に所定時間経過した時間t2までの間の所定回数(この例では9〜16回の8回分)の読取りデータの平均値を算出し、この平均値をセンサ出力の0点となる基準値(Xs,Ys)としてメモリに格納する。なお、この時間t1からt2までが請求項6でいう所定時間Bである。
時間t2以降の17回目からのセンサ出力の読取りデータに基づいて盗難状態の判断を行う。盗難状態の判断は、例えば後述のように、読取ったセンサ出力と基準値からX軸及びY軸方向のセンサ出力を組合せた演算出力値を算出し、この演算出力値がしきい値を越えたかどうかにより車体の振動及び傾斜角度の両方の点から盗難状態を判別する。
この基準値(Xs,Ys)は、所定時間(例えば数分)ごとに新たな基準値を算出して更新してもよい。これにより、温度変化等によるセンサの出力特性が変化した場合であっても、これに対応して基準値が書き換えられるため、センサ出力に基づいて常に正確な盗難状態判断ができる。
更新の方法としては、上記出力演算値がしきい値以下の盗難ではない正常な状態の場合に、読取ったセンサ出力と保存されているそれまでの基準値との平均をとり、その値を新たな基準値として書き換える。あるいは、所定時間ごとに新たに所定回数の読取りデータの平均値を算出してこれを新たな基準値としてもよいし、この新たな平均値と保存されている前回の基準値との平均をとってその値を新たな基準値として書き換えてもよい。
【0023】
図5は、本発明の盗難防止方法のフローチャートである。
ステップT1:
警戒状態に入った後、Tの一定間隔でX軸及びY軸それぞれについてセンサ出力X,Yを読込む。
ステップT2:
警戒状態に入ってから8回分のデータを読取ったかどうか、すなわち9回目のデータ読取りの時間が経過したかどうかを判別する。
ステップT3:
9回目の読取りに達してなく、1〜8回目のX,Yセンサ出力の読取りデータであるとき、それらの読取りデータは無視する。
ステップT4:
9回目からのデータが読込まれた場合に、9回目以降さらに所定回数(8回)の出力データが読込まれたかどうか、すなわち初めから16回分のセンサ出力が読取られる時間が経過したかどうかが判別される。
ステップT5:
9〜15回目の読取り中のとき、9回目からの読取りデータをメモリに保存する。
ステップT6:
16回目からのセンサ出力が読取られた場合、保存されている9〜15回目のセンサ出力値と16回目のセンサ出力値とを合わせて平均値を算出し、その平均値を基準値としてメモリに保存する。
ステップT7:
一定周期(T)でセンサ出力を読取って盗難状態の判別を行う。
【0024】
以下図6〜図9を参照して上記基準値を用いて2軸加速度センサのセンサ出力から盗難状態を判別する盗難防止方法の例を説明する。
図6は本発明に係る2軸加速度センサの出力波形図であり、(A)はX軸センサの出力波形、(B)はY軸センサの出力波形を示す。
X軸、Y軸の各センサ出力X,Yは、車体の傾斜変化や振動等により図示したように出力波形を描く。
本実施形態では、各センサ出力X,Yの初期値、すなわち波形が表れる前の静止時の一定出力の値を基準値Xs,Ysとして保存する(図の点線)。この基準値は、例えばメインスイッチを切って駐車したときの車体の姿勢状態におけるセンサ出力を0点とする基準の値である。基準値は、駐車してメインスイッチが切られ、警戒状態に入ったとき、及び振動等により警報が発せられた後、その警報が解除されたときごとに書換えられる。センサ出力を一定周期で検出する場合、最初の数回のセンサ出力データは、出力が不安定であるため、基準値として用いない。所定回数のセンサ出力検出後、安定な状態となった後、所定回数のセンサ出力データを平均化して基準値を求めメモリに保存する。
この基準値は、一定時間ごとに温度変化による出力値の変動に対応するため、更新してもよい。
センサ出力読取り手段211(図3)は、センサ出力X,Yを読取ると、それぞれ基準値Xs,Ysとの差(X−Xs)及び(Y−Ys)を求める。
センサ出力読取り手段211はさらに、この差の絶対値|X−Xs|及び|Y−Ys|を足し合わせた値を演算出力値Aとして算出する。
A=|X−Xs|+|Y−Ys|
この演算出力値Aは、盗難状態を判別するために、X軸及びY軸のセンサ出力X,Yを合成した出力値であり、後述のように、この演算出力値Aの大きさに基づいて車体の振動により(振動検出モード)又は傾斜変化により(傾斜検出モード)、盗難状態を分けて判別する。
【0025】
図7は、振動に基づく盗難状態判別の説明グラフである。横軸は時間、縦軸は上記演算出力値Aであり、Sはしきい値を示す。時間は例えばmsで表わされ、演算出力値Aは例えばmVで表わされる。
本実施形態では、一定時間間隔の周期Tでの計測点においてセンサ出力X,Yが読取られ、これがメモリに格納されるとともに、読取った現時点でのセンサ出力X,Yから演算出力値Aが算出される。車体に振動が加わって、周期Tの計測点でしきい値Sを越えると、その時点(時間T1)から振動検出モードに移行する。この振動検出モードでは、連続してあるいは非常に短時間間隔(例えば1〜数ms)の周期で演算出力値Aを計測して振動状態を監視する。
この振動検出モードにおいて、演算出力値Aがしきい値S以下に下がり(時間T2)、このしきい値S以下の状態が所定時間継続した時点に達すると(時間T3)、振動検出モードを終了して周期Tで計測する通常の検出モード(傾斜検出モード)に戻る。このように途中で振動検出モードが解除されるような波形の振動状態では、しきい値Sを超えている時間が短いため、盗難とは判断しない。
振動検出モードが解除されて再び周期Tの通常検出モード(傾斜検出モード)に戻った場合おいて、演算出力値Aがしきい値Sを越えると(時間T4)、再び振動検出モードに入る。この振動検出モードにおいて、しきい値S以下の時間(T5−T6間及びT7−T8間)が短く所定値に達しない場合には、振動検出モードを継続し、しきい値S以上の通算時間が所定時間に達すると(時間T9)、盗難と判断して警報を発する。
【0026】
図8は、本発明に係る傾斜検出モードの説明図である。前述の演算出力値Aが所定のしきい値以下の場合には、周期Tでセンサ出力を読取ってメモリに保存するとともに以下のように車体の傾斜変化から盗難を判別する。
X軸センサ、Y軸センサについて、図の第1欄〜第8欄に示すように、センサ出力X,Yを複数回分(この例では8回分)メモリに保存する。保存されたセンサ出力データX1〜X8及びY1〜Y8は、周期Tmsの時間間隔で新たなデータX9,X10・・・,Y9,Y10・・・が読取られるごとに1つづつデータが繰り上がって新たなデータで書換えられる。すなわち、初回〜8回の計測後、Tms後はX2〜X9,Y2〜Y9が保存され、その次のTms後にはX3〜X10,Y3〜Y10が保存され、同様にTmsごとにセンサ出力データが順次書換えられる。
なお、メインスイッチを切ってから所定時間又は警報が鳴ってその後解除された後の所定時間は、車体の状態及びセンサ出力が安定しないため、出力データの読取りは行わない。また、インジケータランプ(LED)の表示状態が変わった場合(例えば点灯から点滅等)、その後の所定回数は電源電圧やセンサ出力が変動しているため出力データの読取りは行わない。
次に、図8の第9欄に示すように、過去8回分の出力データの平均値を算出する。図8の第10欄には前回の傾斜判定に用いた算出値Xlast,Ylastが示されている。このXlast,Ylastはメモリに保存され順次書き換えられる。第11欄には第9欄の平均値と第10欄の前回算出値との平均値が示される。
なお、初回の場合、第10欄の前回算出値は0である。2回目以降は、第1欄〜第8欄のデータが1つづつ置換えられるとともに、第10欄の前回の算出値として前回の第11欄の平均値が用いられる。
次に、X軸、Y軸それぞれについて、第11欄の平均値と前述の基準値Xs,Ysとの差を求める。すなわち、
{(ΣX1〜8)/8+Xlast}/2−Xs及び
{(ΣY1〜8)/8+Ylast}/2−Ys
を算出する。
次に、これらのX軸及びY軸それぞれの差の絶対値を足し合わせた値Dを傾斜検出用の演算出力値(傾斜判別値)として盗難判別に用いる。
D=|{(ΣX1〜8)/8+Xlast}/2−Xs|
+|{(ΣY1〜8)/8+Ylast}/2−Ys|
この傾斜判別用の演算出力値(傾斜判別値)Dを用いたときの盗難判断レベルのしきい値Qは、前述の振動検出のための演算出力値Aによる振動レベルのしきい値S(図7)よりも低く設定する。したがって、傾斜変化を検出中に衝撃等により加速度の大きい振動が加わった場合に、その振動により直ちに盗難であると判断せずに、その振動が盗難によるものかどうかを前述の振動検出モードで判別できる。傾斜判別用のしきい値Qは、2段階又はそれ以上に切換え可能として傾斜による盗難検出の感度を変更可能としてもよい。
【0027】
図9は、本発明に係る盗難防止装置の動作を示すフローチャートである。
ステップS1:
所定周期(T)でX軸及びY軸についてセンサ出力X,Yの現在値を読取る。この読取り動作は、メインスイッチがオフになった後又は警報解除後所定時間(例えば1分)経過して状態が安定してから開始する。また、読取り開始後の所定回数(例えば8回)の読取りデータは電源電圧やセンサ出力が不安定状態であるため使用しない。
読取った出力データは、前述のように基準値Xs,Ysの算出に用いられた後、前述(図8)のように8回分がメモリに保存される。なお、メモリへの格納は後述のステップS5で大きな振動がない場合に行ってもよい。
ステップS2:
出力波形に大きな振動があるかどうかを判別する。すなわち、読取った現在値の出力データX,Yから前述の演算出力値A(図6)を算出し、これがしきい値S(図7)より大きいかどうかを判別する。
ステップS3:
上記ステップS2で大きな振動があった場合に、前述の振動検出モードに移行し、その振動が通算で所定時間(T9)以上に達したかどうかを判別する。Yesであればメインスタンドを降ろす等の大きな振動による盗難動作であると判断して警報を発する(ステップS4)。Noであれば振動が所定時間に達するまで又はしきい値S以下の時間が所定時間以上となって振動検出モードを抜けるまでそのまま振動検出モードでの監視を続ける。
ステップS4:
盗難状態であると判別された状態であり、サイレンにより警報を鳴らす。この警報は所定時間(例えば数秒)経過すると自動的に解除される。
ステップS5:
上記ステップS2で大きな振動がない場合に、最初から大きな振動がない(A<S)状態であるのか、又は一度大きな振動があって(A>S)ステップS3に移行し、ここでしきい値S以下の時間が所定時間(T3)以上継続した状態であるのかどうかを判別する。T3に達していなければ達するまで前述の振動検出モードでの監視を続ける。
ステップS6:
上記ステップS5で大きな振動がなかった場合、メモリに保存された過去8回分のX軸、Y軸のセンサ出力について、前述の図8第9欄で説明したように、それぞれ平均値を算出する。
ステップS7:
前述の図8第11欄で説明したように、上記ステップS6で求めた過去8回分の平均値と前回(T前)の判定に使用した算出値との平均値を求める。
ステップS8:
前述(図8)のように、X軸、Y軸それぞれについて、第11欄の平均値と前述の基準値Xs,Ysとの差を求め、これらのX軸及びY軸それぞれの差の絶対値を足し合わせた値Dを傾斜検出用の演算出力値(傾斜判別値)として盗難判別に用いる。
D=|{(ΣX1〜8)/8+Xlast}/2−Xs|
+|{(ΣY1〜8)/8+Ylast}/2−Ys|
この傾斜判別値Dの値が所定のしきい値Q以上であれば盗難であると判断して警報を発する(ステップS4)。傾斜判別値Dがしきい値Q未満であれば盗難状態ではないと判別する。前述のように、この傾斜判別用のしきい値Qは振動検出用のしきい値Sよりも低い。
【0028】
図10は参考例の盗難防止装置の構成を示し、(A)は装置全体のブロック図、(B)は盗難防止制御回路部分のブロック図である。
(A)に示すように、盗難防止装置本体201にヒューズ202を介してバッテリ 203が接続される。バッテリ203は、メインスイッチ204を介して車両のスタータモータや表示ランプ等のDC負荷205に接続される。盗難防止装置本体201内には、車体の振動及び傾斜を検出する加速度センサ206及び盗難防止のための警報発生や点火ユニット遮断等の盗難防止システムを動作制御する盗難防止制御回路(マイコン又はCPU)207が備わる。盗難防止装置本体201には、警報用のサイレン208及びシステムの動作状態を示すインジケータランプ209が接続される。この盗難防止装置本体201はエンジンの点火ユニット210に接続される。
加速度センサ206は、X軸方向及びY軸方向についての加速度を検出して振動及び傾斜状態を検出する2軸加速度センサである。加速度センサ206は、盗難防止制御回路207に含まれるセンサ出力読取り手段211に接続される。センサ出力読取り手段211には書換え可能なメモリ212及びタイマ213が接続される。センサ出力読取り手段211は、加速度センサ206の検出出力を一定周期(例えば数十ms)で読出し、そのセンサ出力をメモリ212に格納する。
センサ出力読取り手段211は、盗難判定手段214に接続される。盗難判定手段214は、センサ出力読取り手段211で読取った加速度センサ206の出力データに基づいて盗難状態を判別する。
盗難防止判定手段214は、サイレン208及びインジケータランプ209を含む警報装置215に接続され、盗難状態を判別したときに警報を発するとともに盗難状態を点灯表示する。
上記図10の盗難防止装置は、前述の図3の盗難防止装置と同様に、図6〜図9で説明した盗難防止方法に基づいて動作する。
【0029】
図11は、イモビライザによる盗難防止装置の構成図である。
キー301にトランスポンダ302が組込まれる。車体側のキーシリンダ308にアンテナ303が組込まれる。キーシリンダ308に又はキーシリンダ308から引出されてメインスイッチ309が備わる。メインスイッチ309はバッテリ310に接続され、イモビライザ装置304に電源を供給する。イモビライザ装置304は、アンテナ303に接続する送受信回路305と、トランスポンダ302から送られるIDコードを照合するID照合回路311と、所定のタイミングでIDコードを照合するとともに照合結果に基づき点火ユニット312を遮断する制御回路306と、制御回路306に接続するタイマ313及びメモリ307とを有する。
トランスポンダ302は、不図示の電磁コイル、コンデンサ、マイクロチップ等で構成され、車両ごとに固有のIDコードが格納されている。メモリ307には予め制御回路306を介してIDコード書込み器(不図示)によりトランスポンダ302のIDコードと同じIDコードが登録されている。
運転するときに、キー301を車体のキーシリンダ308に差込むと、送受信回路305からアンテナ303を介してトランスポンダ302に電力を供給し、トランスポンダ302を充電する。トランスポンダ302の充電が一定量に達すると、このトランスポンダ302に格納された固有のIDコードをアンテナ303を介してイモビライザ装置304に送信する。イモビライザ装置304は、送受信回路305でこのIDコード信号を受信する。この受信されたIDコードは、タイマ313に基づき制御回路306から送られる所定のタイミング信号に基づき、ID照合回路311により、メモリ307に登録されているIDコードと照合される。照合結果に応じて、制御回路306は、トランスポンダ302のIDコードとメモリ307のIDコードが一致していれば、インターフェイス回路(不図示)を介してエンジンの点火ユニット312を動作可能としエンジンが始動できる状態にする。IDコードが一致していなければ、点火ユニット312を遮断してエンジンの始動を禁止する。
【0030】
図12は、盗難状態を検出して警報を発するアラーム装置の構成図である。
アラーム装置315は、メインスイッチ309を介してバッテリ310に接続されたメインスイッチ入力検出回路314と、車体に対する振動や傾斜により盗難状態を検出する傾斜センサあるいは加速度センサからなる盗難検出手段316と、所定のタイミングで盗難検出手段316を警戒状態にセットし、盗難状態を検出したときに例えばサイレンからなる警報装置317を駆動して警報を発する制御回路318とを有する。
このアラーム装置315は、運転を終了してメインスイッチ309をオンからオフに切換えてから所定時間経過した後自動的にセットされ警戒状態となる。正規の使用者が運転を開始する場合には、メインスイッチ309をオフからオンにするとともにアラーム装置315の警戒状態を解除するための解除信号を送らなければならない。
【0031】
図13は、参考例の盗難防止システムのブロック構成図である。
この盗難防止システムは、自動二輪車の車両側にイモビライザ装置404と、これと別体のアラーム装置415が取付けられたものである。イモビライザ装置404に送信装置419が備わり、アラーム装置415に受信装置420が備わる。イモビライザ装置404は、送信装置419を介して、各種動作信号や検出信号をアラーム装置415に送信する。アラーム装置415は、イモビライザ装置404から送られる信号を受信装置420で受信し、この受信信号に基づいて動作する。
キー401が車体側のキーシリンダ(不図示)に差込まれると、前述(図11)のように、キーシリンダのアンテナを介してトランスポンダのIDコードがイモビライザ装置404に送信される。イモビライザ装置404は、メインスイッチ入力検出回路414と、ID照合回路411と、タイマ413、メモリ407及び制御回路406とを有している。受信されたIDコードは、タイマ413に基づき制御回路406から送られる所定のタイミング信号に基づき、ID照合回路411により、メモリ407に登録されているIDコードと照合される。照合結果に応じて、制御回路406は、トランスポンダのIDコードとメモリ407のIDコードが一致していれば、インターフェイス回路(不図示)を介してエンジンの点火ユニット412を動作可能としエンジンが始動できる状態にする。IDコードが一致していなければ、点火ユニット412を遮断してエンジンの始動を禁止する。
アラーム装置415は、車体に対する振動や傾斜により盗難状態を検出する傾斜センサあるいは加速度センサからなる盗難検出手段416と、所定のタイミングで盗難検出手段416を警戒状態にセットし、盗難状態を検出したときに例えばサイレンからなる警報装置418を駆動して警報を発する制御回路417とを有する。
このように、イモビライザ装置404とアラーム装置415との間に送信手段419及び受信手段420からなる通信手段を設けることにより、イモビライザ装置404の各種動作信号や検出信号に基づいて、アラーム装置415を操作することなくアラーム装置415を動作させることができる。
送信手段419及び受信手段420は、それぞれ送受信手段として双方向に通信可能とし、相互に動作信号を送信して相手側を動作可能としてもよい。
【0032】
図14は、参考例の実施形態に係る盗難防止システムの構成図である。
トランスポンダを組込んだキー401がメインスイッチ409を動作させ、このメインスイッチ409を介してバッテリ(不図示)がイモビライザ装置404に接続される。イモビライザ装置404は、メインスイッチ入力検出回路414と、トランスポンダのIDコードを照合するID照合回路411を有する。このID照合回路411はイモビライザ解除信号送信手段421に接続され、イモビライザ解除信号をアラーム装置415に送信する。
アラーム装置415は、メインスイッチ409に接続されたメインスイッチ入力検出回路425と、イモビライザ解除信号受信手段423及びこれに接続されたアラーム解除手段424を有する。
【0033】
図15は、上記図14の実施形態の動作を示すフローチャートである。各ステップの動作は以下のとおりである。
ステップS1:
運転開始時に、イモビライザ装置404のメインスイッチ入力検出回路414(図14)により、メインスイッチ409がオフからオンへの切換えが検出される。これにより、イモビライザ装置404の動作が開始される。このときアラーム装置415は、メインスイッチがオフのときの警戒状態を継続している。
ステップS2:
ID照合回路411により、差込まれたキーが正規なものか不正なものか又は不正操作によりメインスイッチがオンにされたかどうかを判別する。
ステップS3:
正規のキーである場合、イモビライザ機能を解除してエンジンを始動可能状態にする。このイモビライザ解除信号をイモビライザ解除信号送信手段421を介してアラーム装置415に送信する。
ステップS4:
イモビライザ解除信号を受信したアラーム装置415側で、このイモビライザ解除信号に基づいてアラーム解除手段424により警戒状態を解除し、乗車可能な状態とする。
ステップS5:
上記ステップS2で不正キー又は不正操作である場合に、イモビライザ機能を動作させて点火ユニットを遮断し、エンジンの始動を禁止する。このとき、イモビライザは動作中であるため解除信号は発信されずアラーム装置415へは解除信号は送信されない。したがって、アラーム装置415は警戒状態を続ける。
ステップS6
アラーム装置415が、車体の振動や傾斜により盗難動作を検出した場合に、警報を発する。
【0034】
図16は、参考例の別の実施形態のフローチャートである。
この実施形態は、ステップT1〜T4までは上記図15のフローのステップS1〜S4と同じである。この実施形態では、ステップT2で不正キーの使用又は不正操作を検出したときに、ステップT5において、点火ユニットを遮断してエンジンの始動を禁止するとともに、この不正検出信号を送信手段(図14のイモビライザ解除信号送信手段421)を介してアラーム装置415に送信する。
不正検出信号を受信したアラーム装置415は、この不正検出信号に基づいて警報装置418を駆動して警報を発する(ステップT6)。
【0035】
図17は、参考例のさらに別の実施形態のフローチャートである。この実施形態はアラーム装置をセットする場合のフローを示す。
ステップU1:
運転を終了してメインスイッチをオンからオフに切換えると、これをイモビライザ装置404のメインスイッチ入力検出回路414(図14)の検出信号により判別する。
ステップU2:
イモビライザ装置404の制御回路406(図13)により、メインスイッチがオフになってから所定時間が経過したかどうかを判別する。所定時間経過前であれば所定時間に達するまで待機する。
ステップU3:
所定時間に達したら、イモビライザ装置404からアラーム装置415にアラームセット信号を送信する。
ステップU4:
アラーム装置415は、受信したアラームセット信号に基づきアラーム装置415を警戒状態にセットする。
【産業上の利用可能性】
【0036】
以上説明したように、参考例では、メインスイッチがオンにされた直後の状態、すなわちメインスイッチONの表示ランプやその他の計器類のランプ等の微弱な負荷がかかり且つスタータ等の大きな負荷がかかっていない状態で、バッテリ電圧を測定して読み取り、盗難防止装置の解除操作をした後に、このバッテリ電圧が所定値以下の場合に警報を発することにより、エンジン始動前にバッテリ電圧が低いことをユーザーに知らせることができ、ユーザーはバッテリの充電や交換等の措置を講じることができる。これにより、エンジンが支障なく始動するとともに、次回の乗車時に充分高いバッテリ電圧が得られるため、メインスイッチON後にイモビライザ等の盗難防止装置を解除操作して支障なくエンジンを始動させることができる。
この場合、通常は、バッテリ電圧は無負荷状態で測定すると残量のない電圧が低い場合であっても定格値にほぼ等しい高い測定値となり、正確な電圧が測定できず、また、逆に大きな負荷がかかった状態で測定すると電圧降下が大きくなりすぎ、この場合にも正確なバッテリ電圧が測定できないが、本発明では、メインスイッチがオンにされた直後の微弱負荷がかかった状態でバッテリ電圧を読み取る。したがって、無負荷状態でもなく過大な負荷状態でもなく適度な負荷がかかった状態で電圧を測定するため、正確なバッテリ電圧を読み取ることができる。このように正確なバッテリ電圧を読取ってこれに基づいて電圧不足の状態を警報によりユーザーに知らせることができるため、イモビライザシステムを備えた盗難防止装置において、ユーザーは、充電やバッテリ交換等によりバッテリ電圧を高くすることができ、これにより、電圧不足でイモビライザが解除できなくなってエンジンが始動できなくなることを未然に防止できる。
【0037】
また、本発明では、新たな盗難監視状態の開始の後、すなわちメインスイッチをオフにしたときや警報が鳴った後所定時間後に解除されたときなどであって、盗難防止装置による警戒状態に入った後、開始から所定時間Aだけ経過して出力が安定した後、所定時間Bの間のセンサ出力を検出してその平均値を求め、この平均値を基準値として盗難状態の判断を行う。したがって、警戒状態が開始されるごとに、安定した状態で基準値が算出され、その基準値をセンサ出力の0点となる初期値としてセンサ出力が判別されるため、駐車のたびに姿勢が変わったとしても、それに追従して0点をオフセットさせるため、常に正確に傾斜角度や振動を検出することができる。
また、加速度センサの出力データを周期的に読取ることにより、消費電力の低減を図ることができる。
また、本発明では、X軸及びY軸それぞれについて例えば駐車時の車体姿勢での傾斜状態を基準値として、各方向での基準値との差に基づいてX軸及びY軸のセンサ出力を合成したセンサの演算出力値Aを算出し、この演算出力値Aが所定のしきいS値より大きいときに振動に基づく盗難状態を判別し、演算出力値Aが所定のしきい値Sより小さいときに車体の傾斜に基づいて盗難状態を判別するため、振動と傾斜を分けて検出することができ、振動判断のしきい値Sを大きくし、傾斜判断のしきい値Qを小さくして小さな振動による傾斜の誤判断を防止するとともに、大きな振動を確実に検出して盗難判断の信頼性を高めることができ、盗難防止機能の信頼性を高めるとともに誤警報の防止を図ることができる。
また、加速度センサの出力データを周期的に読取ることにより、消費電力の低減を図ることができる。
【0038】
さらに、参考例では、第1の盗難防止装置(イモビライザ装置)と第2の盗難防止装置(アラーム装置)の2つの盗難防止装置を別個に取付けた場合、2つの盗難防止装置間に設けた通信手段により、イモビライザ装置又はアラーム装置の一方の動作信号を他方に送信し、その動作信号により他方を動作させることができ、他方を動作させるための操作をする必要がなくなり操作性が向上する。
これにより、例えばアラーム装置を後で取付けた場合に、イモビライザ単独の場合と同じ操作で、例えばアラーム装置を解除することができ、アラーム装置の解除手段が不要になり操作が簡単になるとともにコストの低減が図られる。
【符号の説明】
【0039】
201 盗難防止装置本体
202 ヒューズ
203 バッテリ
204 メインスイッチ
205 DC負荷
206 加速度センサ
207 盗難防止制御回路
208 サイレン
209 インジケータランプ
210 点火ユニット
【技術分野】
【0001】
本発明は自動二輪車等の車両用盗難防止方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の盗難防止装置として、駐車中の車両の姿勢変化や振動を検出するセンサを備え、該センサが振動等を検出するとサイレンやブザーで警報音を発生するものや、車両のメインスイッチが不正に操作されたときに、点火回路や点火プラグからなるエンジンの点火ユニットを遮断してエンジンが作動しないようにするイモビライザ機能を備えたもの等が従来より知られている。
このような盗難防止装置は、メインスイッチをオフにすることによりセンサやマイコン(マイクロコンピュータ)あるいはCPU等の制御回路などからなる盗難防止システムが自動的にセットされ、盗難やいたずらに対し装置が作動可能な警戒状態となる。
この状態でメインスイッチが不正操作された場合(不正キーや他の工具等の使用によるスイッチ操作あるいは正常キーであってもシステム解除操作をしなかった場合等)にメインスイッチがオンになると、システムが作動して警報音が発生し、またイモビライザが作動して点火ユニットが遮断され、エンジンが始動できなくなる。
これにより、車両の盗難やいたずら行為に対し警報を発し、またイモビライザが作動してエンジンが始動できなくなり盗難予防やいたずらを抑止することができる。
このような盗難防止システムにはメインスイッチを介してバッテリが接続される。メインスイッチがONにされるとシステムに電源電圧が入力される。この後システムの解除操作を行って警報音やイモビライザの動作を停止した警戒解除状態としてから、エンジンを始動して車両を走行させる。
これにより、正常なユーザーが正常に車両を使用する場合に、警報音を発生することなく又イモビライザにより点火ユニットが遮断されることなくエンジンを始動させて運転することができる。
しかしながら、車両の使用開始時にバッテリ電圧が低下した状態でメインスイッチをONにすると、システム解除操作をしてもイモビライザの解除ができず、不正操作の状態となってイモビライザが動作し点火ユニットが遮断されてエンジンの始動ができなくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
また、車両の盗難防止装置として、駐車中の車両の傾きの変化を検出するセンサを備え、該センサが傾きの変化を検出するとサイレンやブザーで警報音を発生するものや、車両のメインスイッチが不正に操作されたときに、点火回路や点火プラグからなるエンジンの点火ユニットを遮断してエンジンが作動しないようにするイモビライザ機能備えたもの等が従来より知られている。
従来、車両の傾きを検出するセンサとして水銀スイッチが用いられていた。この水銀スイッチは、ガラス管の中に水銀の接点体を入れてガラス管の傾斜により接点体を移動させて接点端子をオン/オフさせるものである。
しかしながら、このような水銀スイッチは車体の振動等により接点のオン/オフが繰返されたり、駐車中の車体の傾斜角度により接点の動作範囲が変わってしまい警報装置が誤動作する可能性があった。
一方、重力に基づく傾斜や衝撃等による振動を検出する加速度センサが実用化されている。この加速度センサは、2枚の固定極板間に移動極板を設け、傾きや衝撃により移動極板が移動すると、固定極板との間のコンデンサ容量が変化して傾斜による重力加速度成分や衝撃加速度を検出するものである。このような加速度センサを用いて、例えば車体の左右方向(X軸方向)と前後方向(Y軸方向)の2軸について傾きを検出して盗難を判別することが考えられる。
このような加速度センサを用いた場合、X及びY軸方向の車体の傾斜や振動をセンサ出力により検知して傾斜や振動状態を判別する。この場合、センサ出力の0点は正規の駐車時の車体姿勢(例えば水平)における出力である。
しかしながら、車体が傾斜して駐車した場合には、始めからある程度のセンサ出力が検出されるため、姿勢が変化したときの判断を誤るおそれや微小な傾斜の変化を正確に検出できなくなるおそれを生じる。このため、盗難防止の機能の信頼性が低下し誤警報を発したりあるいは逆に盗難時に動作しなくなる等の不具合を生じる。
また、加速度センサの温度特性等により、使用時の温度変化や長期間の駐車等により、同一の姿勢であってもセンサの出力が変化して誤警報を発するおそれを生じる。
また、2軸加速度センサを用いて盗難状態を判別しようとすると、傾斜検出時に衝撃が作用した場合に、車体が傾いたと誤判断したり、僅かな衝撃を検出して盗難警報を発する等の誤動作をするおそれがあった。
【0004】
本発明は、上記従来技術を考慮したものであって、常に正確に振動や傾斜角度を検出可能な自動二輪車の盗難防止方法の提供を目的とする。
また、本発明は、僅かな振動等による傾斜状態の誤検出に基づく誤警報を防止するとともに大きな振動による盗難状態を確実に検出して傾斜及び振動の検出の信頼性を高めた自動二輪車の盗難防止装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため、請求項1の発明では、X軸方向及び/又はY軸方向の加速度を検出する加速度センサを用い、X,Y各方向のセンサ出力X,Yと所定の基準値Xs,Ysとの差に基づいて盗難状態を判別する自動二輪車の盗難防止方法において、新たな盗難監視状態が開始された後、所定時間Aが経過したときから所定時間Bの間のセンサ出力の平均値を算出し、この平均値を前記基準値として設定することを特徴とする自動二輪車の盗難防止方法を提供する。
【0006】
請求項2の発明では、前記センサ出力を一定の周期で検出し、前記所定時間Aが経過するまでの所定回数の検出データを無視し、その後の所定回数の検出データの平均値を前記基準値として設定し、この基準値を用いて、その後の検出データに基づいて盗難状態を判別することを特徴としている。
【0007】
請求項3の発明では|X−Xs|+|Y−Ys|に基づいて盗難状態を判別することを特徴としている。
さらに請求項4の発明では、一定の時間間隔で前記基準値を更新することを特徴としている。
【0008】
さらに、請求項5の発明では、X軸及びY軸についてそれぞれ加速度を検出する2軸加速度センサと、この加速度センサの出力を読取るセンサ出力読取り手段と、読取ったセンサ出力に基づいて盗難状態かどうかを判別する盗難判別手段と、盗難状態と判別されたときに警報を発する警報手段とを備えた自動二輪車の盗難防止装置において、前記盗難判別手段は、X軸及びY軸のセンサ出力X,YとX軸及びY軸それぞれの所定の基準値Xs,Ysとの差に基づいてX軸とY軸のセンサ出力を合成した演算出力値Aを算出し、この演算出力値Aが所定のしきい値Sより大きい場合には、車体の振動に基づいて盗難状態を判別し、前記演算出力値Aが所定のしきい値Sより小さい場合には、車体の傾斜に基づいて盗難状態を判別することを特徴とする自動二輪車の盗難防止装置を提供する。
【0009】
請求項6の発明では、前記演算出力値Aが所定のしきい値Sより大きい場合に、その状態が通算で所定時間以上連続した場合に盗難状態と判別して警報を発することを特徴としている。
請求項7の発明では、前記演算出力値Aが所定のしきい値Sより小さい場合に、X軸及びY軸それぞれについて過去複数回の出力データの平均値と前回の判別に用いた算出値との新たな平均値を求め、この新たな平均値と所定の基準値Xs,Ysとの差に基づいてX軸及びY軸のセンサ出力を合成した傾斜判別値Dを算出し、この傾斜判別値Dが所定のしきい値Q以上のときに盗難状態と判別して警報を発することを特徴としている。
【0010】
さらに請求項8の発明では、前記演算出力値Aは、X軸及びY軸について現在の出力値をX,Yとし、基準値をXs,Ysとしたとき、A=|X−Xs|+|Y−Ys|であることを特徴としている。
さらに請求項9の発明においては、前記演算出力値Aは、X軸及びY軸について現在の出力値をX,Yとし、基準値をXs,Ysとしたとき、A=√{|X−Xs|2+|Y−Ys|2}であることを特徴としている。
さらに請求項10の発明では、前記センサ出力読取り手段は、一定時間ごとにセンサ出力を読取ってメモリに格納することを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、新たな盗難監視状態の開始の後、すなわちメインスイッチをオフにしたときや警報が鳴った後所定時間後に解除されたときなどであって、盗難防止装置による警戒状態に入った後、開始から所定時間Aだけ経過して出力が安定した後、所定時間Bの間のセンサ出力を検出してその平均値を求め、この平均値を基準値として盗難状態の判断を行う。したがって、警戒状態が開始されるごとに、安定した状態で基準値が算出され、その基準値をセンサ出力の0点となる初期値としてセンサ出力が判別されるため、駐車のたびに姿勢が変わったとしても、それに追従して0点をオフセットさせるため、常に正確に傾斜角度や振動を検出することができる。
【0012】
請求項2の発明によれば、センサ出力を連続して読取らずに例えば数十msの周期ごとに読取ってこれをメモリに保存することにより、消費電力の低減が図られる。
この場合、読取り開始後の所定回数の読み取り検出データは出力が不安定であるため無視して基準値演算や傾斜判断には用いず、その後の安定した状態の最初の所定回数の読み取り検出データを平均化して基準値とする。したがって、常に車体姿勢に応じて安定した信頼性の高い基準値が得られ、この基準値に基づいてセンサ出力から車体姿勢による出力分を相殺できるため、常に正確で信頼性の高い盗難判断ができる。
【0013】
請求項3の発明によれば、センサ出力値X,Yと基準値Xs,Ysとの差の絶対値を加算して盗難状態の判別式とするため、判別式が簡単な計算処理で短時間で算出でき、盗難判断の処理速度を速めることができる。
請求項4の発明によれば、温度変化等によるセンサの出力特性が変化した場合であっても、これに対応して定期的に基準値を書き換えることにより、センサ出力に基づいて常に正確な盗難状態判断ができる。
【0014】
請求項5の発明によれば、X軸及びY軸それぞれについて例えば駐車時の車体姿勢での傾斜状態を基準値として、各方向での基準値との差に基づいてX軸及びY軸のセンサ出力を合成したセンサの演算出力値Aを算出し、この演算出力値Aが所定のしきい値Sより大きいときに振動に基づく盗難状態を判別し、演算出力値Aが所定のしきい値Sより小さいときに車体の傾斜に基づいて盗難状態を判別するため、振動と傾斜を分けて検出することができ、振動判断のしきい値を大きくし、傾斜判断のしきい値を小さくして小さな振動による傾斜の誤判断を防止するとともに、大きな振動を確実に検出して盗難判断の信頼性を高めることができる。
【0015】
請求項6の発明によれば、基準値に基づく演算出力値Aが所定のしきい値Sより大きくなって振動により盗難判断をする場合に、しきい値Sより大きい状態が通算で所定時間以上連続した場合に盗難状態と判別するため、誤って足が当る等の瞬間的な短時間の小さな衝撃は盗難と判断されず誤警報が防止されるとともに、例えばメインスタンドを降ろす等の大きく長く続く振動は確実に検出して盗難状態を判別できる。この場合、通算で所定時間以上連続するとは、振動の波が繰返されて、しきい値S以上の状態だけでなく短時間のしきい値S以下の状態が伴った場合に、しきい値S以上の時間の合計のことである。しきい値S以下の時間が所定時間以上連続したら、しきい値以上の状態での振動検出モードが解除される。
【0016】
請求項7の発明によれば、演算出力値Aが小さく傾斜に基づいて盗難状態を判断する場合に、センサ出力の過去複数回のデータの平均値と前回の盗難判別に用いた算出値との平均値をX軸及びY軸についてそれぞれ求め、この平均値と基準値との差に基づいてX軸及びY軸のセンサ出力を合成した傾斜判別値Dを算出して、この傾斜判別値Dに基づいて盗難状態を判別するため、出力データの平均化により傾斜角度の読取り精度が向上し微小な傾斜変化を確実に検出できるとともに、瞬間的な短時間の振動や風雨等の長く続く不定間隔の微振動は平均化によって打ち消され誤警報が防止される。
【0017】
請求項8の発明によれば、盗難状態を判別する演算出力値Aが、X軸及びY軸についてセンサ出力値X,Yと基準値Xs,Ysとの差の絶対値を加算したものであるため、簡単な計算処理で短時間で算出でき、盗難判断の処理速度を速めることができる。
請求項9の発明によれば、加速度センサの取付け方向がどのような向きであっても、正確に傾斜状態を検出することができる。
請求項10の発明によれば、センサ出力を連続して読取らずに例えば数十msの周期ごとに読取ってこれをメモリに保存するため、消費電力の低減が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、参考例の車両用盗難防止装置のブロック構成図である。
【図2】図2は、図1の盗難防止装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】図3は、本発明に係る盗難防止装置のブロック構成図である。
【図4】図4は、加速度センサの出力波形図である。
【図5】図5は、本発明に係る盗難防止方法のフローチャートである。
【図6】図6は、本発明に係る2軸加速度センサの出力波形図である。
【図7】図7は、振動検出モードの説明図である。
【図8】図8は、傾斜検出モードの説明図である。
【図9】図9は、加速度センサを用いた盗難防止方法のフローチャートである。
【図10】図10は、参考例の盗難防止装置のブロック構成図である。
【図11】図11は、イモビライザ装置のブロック図である。
【図12】図12は、アラーム装置のブロック図である。
【図13】図13は、参考例の盗難防止システムのブロック構成図である。
【図14】図14は、参考例の実施形態のブロック図である。
【図15】図15は、参考例の実施形態のフローチャートである。
【図16】図16は、参考例の別の実施形態のフローチャートである。
【図17】図17は、参考例のさらに別の実施形態のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、参考例の車両用盗難防止装置のブロック構成図である。
この盗難防止装置は、盗難防止装置本体1内に、メインスイッチ入力判定手段2と、電圧測定手段3と、制御手段4とを有する。メインスイッチ入力判定手段2にメインスイッチ5を介してバッテリ6が接続される。バッテリ6はさらに直接電圧測定手段3に接続される。バッテリ6は、メインスイッチ5を介して車両のスタータモータや表示ランプ等のDC負荷7に接続される。
このメインスイッチ5を通して盗難防止装置本体1に電源電圧が供給される。メインスイッチ入力判定手段2は、メインスイッチ5を通して入力されたバッテリ6からの電圧を検出して、その電圧値に基づいてメインスイッチ5がオンかオフかを判別するものである。
電圧測定手段3はバッテリ電圧を直接測定する。盗難防止装置本体1内には、車体の振動や傾斜を検出する加速度センサ(不図示)が制御手段4に接続して備わる。制御手段4は、盗難防止のための警報発生や点火ユニット遮断等の盗難防止システムを動作制御する盗難防止制御回路(マイコン又はCPU)により構成される。この制御手段4には、警報用のサイレン8及びシステムの動作状態を示すインジケータランプ9が接続される。また、この制御手段4はエンジンの点火ユニット10に接続される。この他、この制御手段4には、加速度センサ(不図示)の検出信号等に基づき異常な振動状態等を判別して駆動回路(不図示)を介してサイレン8やインジケータ9を動作させる演算回路(不図示)やタイマ回路(不図示)等が備わる。
この制御手段4はイモビライザシステムを構成し、予めメインスイッチ5をオン/オフさせるキー(不図示)に暗証番号を設定し、キーが差込まれたとき制御手段4側でその暗証番号を照合して不正キーの場合には点火ユニット10を遮断してエンジンを始動できなくする。
【0020】
図2は、上記盗難防止装置の動作を示すフローチャートである。フローの各ステップの動作は以下の通りである。
ステップS1:
まずメインスイッチ5をONにする。このメインスイッチONの動作は、メインスイッチ入力判定手段2により検出され、メインスイッチON信号が制御手段4に送られる。
ステップS2:
メインスイッチONの直後に、制御手段4が、電圧測定手段3からバッテリ6の電圧を読取る。
ステップS3:
盗難防止装置の動作を停止させるための例えばキーによる解除操作をしたかどうかを判別する。正常な使用であれば解除操作が行われる。不正使用であれば解除操作は行われない。
ステップS4:
解除操作が行われていない場合(不正使用の場合)、上記ステップS2のバッテリ電圧読み取りデータを消去する。
ステップS5:
盗難防止装置は解除されず、警戒状態を継続する。したがって、サイレン8により警報音が発生し、且つイモビライザが機能して点火ユニット10が遮断されエンジンが始動できなくなる。
ステップS6:
上記ステップS3で解除操作をした場合、バッテリ電圧の読取り値(ステップS2)が所定値より小さいかどうかを判別する。この所定値は、システムを動作させるのに最低限必要なバッテリ電圧があるかどうかを判別するための判定基準値である。基準値としては、例えばイモビライザシステムを解除するのに必要な最低動作電圧(例えば8V)に対し、安全率として25%のマージンを付加して10Vに設定する。あるいは、このイモビライザシステムの解除電圧より高いスタータモータの始動限界電圧にマージンを見込んだ付近に基準値を設定してもよい。
ステップS7:
上記ステップS6でバッテリ電圧が所定値以下の場合、サイレンにより警報音を発生させる。例えばイモビライザシステムの必要解除電圧レベルまで電圧低下している場合にサイレンを所定回数鳴らしてユーザーに対し警報を発する。
ステップS8:
イモビライザシステム等の盗難防止システムが解除され、乗車可能な状態である。
【実施例1】
【0021】
図3は本発明に係る盗難防止装置の構成を示し、(A)は装置全体のブロック図、(B)は盗難防止制御回路部分のブロック図である。
(A)に示すように、盗難防止装置本体201にヒューズ202を介してバッテリ203が接続される。バッテリ203は、メインスイッチ204を介して車両のスタータモータや表示ランプ等のDC負荷205に接続される。盗難防止装置本体201内には、車体の振動及び傾斜を検出する加速度センサ206及び盗難防止のための警報発生や点火ユニット遮断等の盗難防止システムを動作制御する盗難防止制御回路(マイコン又はCPU)207が備わる。盗難防止装置本体201には、警報用のサイレン208及びシステムの動作状態を示すインジケータランプ209が接続される。この盗難防止装置本体201はエンジンの点火ユニット210に接続される。
加速度センサ206は、X軸方向及びY軸方向についての加速度を検出して振動及び傾斜状態を検出する2軸加速度センサである。なお、2軸加速度センサ206は、X,Y両方向を検出可能な一体構成のセンサであってもよいし、2つの1軸センサの取付け方向を変えて別体構成のX方向センサとY方向センサとして設置して2つのセンサにより2軸方向を検出可能な加速度センサとしてもよい。
この加速度センサ206は、盗難防止制御回路207に含まれるセンサ出力読取り手段211に接続される。センサ出力読取り手段211には書換え可能なメモリ212及びタイマ213が接続される。センサ出力読取り手段211は、加速度センサ206の検出出力を一定周期(例えば数十ms)で読出し、そのセンサ出力をメモリ212に格納する。
センサ出力読取り手段211は、盗難判定手段214に接続される。盗難判定手段214は、システム状態検出手段216による現在のシステムの状態及びセンサ出力読取り手段211で読取った加速度センサ206の出力データに基づいて盗難状態を判別する。システム状態検出手段216は、この盗難防止装置による盗難防止システムが作動中の警戒状態かどうかを判別する
盗難防止判定手段214は、サイレン208及びインジケータランプ209を含む警報装置215に接続され、盗難状態を判別したときに警報を発するとともに盗難状態を点灯表示する。
【0022】
図4は、本発明に係る加速度センサのX軸方向(又はY軸方向)のセンサ出力波形図である。
時間t0でシステムが新たな警戒状態に入る。この新たな警戒状態に入るときとは、駐車のためにメインスイッチをオフにしたとき(あるいはオフにした後所定時間経過したとき)や、一旦警報が鳴った後所定時間後に自動的に解除されたとき等であり、盗難防止装置が作動可能状態となるように新たにセットされるときである。
本実施形態では、一定時間間隔の周期(T)ごとにセンサ出力を読取って盗難状態の判断を行う。この場合、警戒状態のセット開始(時間t0)から所定回数(この例では8回)の時間(時間t1まで)は、システム状態が切換った直後であり(LEDが点灯状態から消灯状態になり、サイレンが鳴った状態から停止した状態になる等)、センサ出力が安定していないため読取りデータは無視する。なお、この時間t0からt1までが請求項6でいう所定時間Aである。
この時間t1後に所定時間経過した時間t2までの間の所定回数(この例では9〜16回の8回分)の読取りデータの平均値を算出し、この平均値をセンサ出力の0点となる基準値(Xs,Ys)としてメモリに格納する。なお、この時間t1からt2までが請求項6でいう所定時間Bである。
時間t2以降の17回目からのセンサ出力の読取りデータに基づいて盗難状態の判断を行う。盗難状態の判断は、例えば後述のように、読取ったセンサ出力と基準値からX軸及びY軸方向のセンサ出力を組合せた演算出力値を算出し、この演算出力値がしきい値を越えたかどうかにより車体の振動及び傾斜角度の両方の点から盗難状態を判別する。
この基準値(Xs,Ys)は、所定時間(例えば数分)ごとに新たな基準値を算出して更新してもよい。これにより、温度変化等によるセンサの出力特性が変化した場合であっても、これに対応して基準値が書き換えられるため、センサ出力に基づいて常に正確な盗難状態判断ができる。
更新の方法としては、上記出力演算値がしきい値以下の盗難ではない正常な状態の場合に、読取ったセンサ出力と保存されているそれまでの基準値との平均をとり、その値を新たな基準値として書き換える。あるいは、所定時間ごとに新たに所定回数の読取りデータの平均値を算出してこれを新たな基準値としてもよいし、この新たな平均値と保存されている前回の基準値との平均をとってその値を新たな基準値として書き換えてもよい。
【0023】
図5は、本発明の盗難防止方法のフローチャートである。
ステップT1:
警戒状態に入った後、Tの一定間隔でX軸及びY軸それぞれについてセンサ出力X,Yを読込む。
ステップT2:
警戒状態に入ってから8回分のデータを読取ったかどうか、すなわち9回目のデータ読取りの時間が経過したかどうかを判別する。
ステップT3:
9回目の読取りに達してなく、1〜8回目のX,Yセンサ出力の読取りデータであるとき、それらの読取りデータは無視する。
ステップT4:
9回目からのデータが読込まれた場合に、9回目以降さらに所定回数(8回)の出力データが読込まれたかどうか、すなわち初めから16回分のセンサ出力が読取られる時間が経過したかどうかが判別される。
ステップT5:
9〜15回目の読取り中のとき、9回目からの読取りデータをメモリに保存する。
ステップT6:
16回目からのセンサ出力が読取られた場合、保存されている9〜15回目のセンサ出力値と16回目のセンサ出力値とを合わせて平均値を算出し、その平均値を基準値としてメモリに保存する。
ステップT7:
一定周期(T)でセンサ出力を読取って盗難状態の判別を行う。
【0024】
以下図6〜図9を参照して上記基準値を用いて2軸加速度センサのセンサ出力から盗難状態を判別する盗難防止方法の例を説明する。
図6は本発明に係る2軸加速度センサの出力波形図であり、(A)はX軸センサの出力波形、(B)はY軸センサの出力波形を示す。
X軸、Y軸の各センサ出力X,Yは、車体の傾斜変化や振動等により図示したように出力波形を描く。
本実施形態では、各センサ出力X,Yの初期値、すなわち波形が表れる前の静止時の一定出力の値を基準値Xs,Ysとして保存する(図の点線)。この基準値は、例えばメインスイッチを切って駐車したときの車体の姿勢状態におけるセンサ出力を0点とする基準の値である。基準値は、駐車してメインスイッチが切られ、警戒状態に入ったとき、及び振動等により警報が発せられた後、その警報が解除されたときごとに書換えられる。センサ出力を一定周期で検出する場合、最初の数回のセンサ出力データは、出力が不安定であるため、基準値として用いない。所定回数のセンサ出力検出後、安定な状態となった後、所定回数のセンサ出力データを平均化して基準値を求めメモリに保存する。
この基準値は、一定時間ごとに温度変化による出力値の変動に対応するため、更新してもよい。
センサ出力読取り手段211(図3)は、センサ出力X,Yを読取ると、それぞれ基準値Xs,Ysとの差(X−Xs)及び(Y−Ys)を求める。
センサ出力読取り手段211はさらに、この差の絶対値|X−Xs|及び|Y−Ys|を足し合わせた値を演算出力値Aとして算出する。
A=|X−Xs|+|Y−Ys|
この演算出力値Aは、盗難状態を判別するために、X軸及びY軸のセンサ出力X,Yを合成した出力値であり、後述のように、この演算出力値Aの大きさに基づいて車体の振動により(振動検出モード)又は傾斜変化により(傾斜検出モード)、盗難状態を分けて判別する。
【0025】
図7は、振動に基づく盗難状態判別の説明グラフである。横軸は時間、縦軸は上記演算出力値Aであり、Sはしきい値を示す。時間は例えばmsで表わされ、演算出力値Aは例えばmVで表わされる。
本実施形態では、一定時間間隔の周期Tでの計測点においてセンサ出力X,Yが読取られ、これがメモリに格納されるとともに、読取った現時点でのセンサ出力X,Yから演算出力値Aが算出される。車体に振動が加わって、周期Tの計測点でしきい値Sを越えると、その時点(時間T1)から振動検出モードに移行する。この振動検出モードでは、連続してあるいは非常に短時間間隔(例えば1〜数ms)の周期で演算出力値Aを計測して振動状態を監視する。
この振動検出モードにおいて、演算出力値Aがしきい値S以下に下がり(時間T2)、このしきい値S以下の状態が所定時間継続した時点に達すると(時間T3)、振動検出モードを終了して周期Tで計測する通常の検出モード(傾斜検出モード)に戻る。このように途中で振動検出モードが解除されるような波形の振動状態では、しきい値Sを超えている時間が短いため、盗難とは判断しない。
振動検出モードが解除されて再び周期Tの通常検出モード(傾斜検出モード)に戻った場合おいて、演算出力値Aがしきい値Sを越えると(時間T4)、再び振動検出モードに入る。この振動検出モードにおいて、しきい値S以下の時間(T5−T6間及びT7−T8間)が短く所定値に達しない場合には、振動検出モードを継続し、しきい値S以上の通算時間が所定時間に達すると(時間T9)、盗難と判断して警報を発する。
【0026】
図8は、本発明に係る傾斜検出モードの説明図である。前述の演算出力値Aが所定のしきい値以下の場合には、周期Tでセンサ出力を読取ってメモリに保存するとともに以下のように車体の傾斜変化から盗難を判別する。
X軸センサ、Y軸センサについて、図の第1欄〜第8欄に示すように、センサ出力X,Yを複数回分(この例では8回分)メモリに保存する。保存されたセンサ出力データX1〜X8及びY1〜Y8は、周期Tmsの時間間隔で新たなデータX9,X10・・・,Y9,Y10・・・が読取られるごとに1つづつデータが繰り上がって新たなデータで書換えられる。すなわち、初回〜8回の計測後、Tms後はX2〜X9,Y2〜Y9が保存され、その次のTms後にはX3〜X10,Y3〜Y10が保存され、同様にTmsごとにセンサ出力データが順次書換えられる。
なお、メインスイッチを切ってから所定時間又は警報が鳴ってその後解除された後の所定時間は、車体の状態及びセンサ出力が安定しないため、出力データの読取りは行わない。また、インジケータランプ(LED)の表示状態が変わった場合(例えば点灯から点滅等)、その後の所定回数は電源電圧やセンサ出力が変動しているため出力データの読取りは行わない。
次に、図8の第9欄に示すように、過去8回分の出力データの平均値を算出する。図8の第10欄には前回の傾斜判定に用いた算出値Xlast,Ylastが示されている。このXlast,Ylastはメモリに保存され順次書き換えられる。第11欄には第9欄の平均値と第10欄の前回算出値との平均値が示される。
なお、初回の場合、第10欄の前回算出値は0である。2回目以降は、第1欄〜第8欄のデータが1つづつ置換えられるとともに、第10欄の前回の算出値として前回の第11欄の平均値が用いられる。
次に、X軸、Y軸それぞれについて、第11欄の平均値と前述の基準値Xs,Ysとの差を求める。すなわち、
{(ΣX1〜8)/8+Xlast}/2−Xs及び
{(ΣY1〜8)/8+Ylast}/2−Ys
を算出する。
次に、これらのX軸及びY軸それぞれの差の絶対値を足し合わせた値Dを傾斜検出用の演算出力値(傾斜判別値)として盗難判別に用いる。
D=|{(ΣX1〜8)/8+Xlast}/2−Xs|
+|{(ΣY1〜8)/8+Ylast}/2−Ys|
この傾斜判別用の演算出力値(傾斜判別値)Dを用いたときの盗難判断レベルのしきい値Qは、前述の振動検出のための演算出力値Aによる振動レベルのしきい値S(図7)よりも低く設定する。したがって、傾斜変化を検出中に衝撃等により加速度の大きい振動が加わった場合に、その振動により直ちに盗難であると判断せずに、その振動が盗難によるものかどうかを前述の振動検出モードで判別できる。傾斜判別用のしきい値Qは、2段階又はそれ以上に切換え可能として傾斜による盗難検出の感度を変更可能としてもよい。
【0027】
図9は、本発明に係る盗難防止装置の動作を示すフローチャートである。
ステップS1:
所定周期(T)でX軸及びY軸についてセンサ出力X,Yの現在値を読取る。この読取り動作は、メインスイッチがオフになった後又は警報解除後所定時間(例えば1分)経過して状態が安定してから開始する。また、読取り開始後の所定回数(例えば8回)の読取りデータは電源電圧やセンサ出力が不安定状態であるため使用しない。
読取った出力データは、前述のように基準値Xs,Ysの算出に用いられた後、前述(図8)のように8回分がメモリに保存される。なお、メモリへの格納は後述のステップS5で大きな振動がない場合に行ってもよい。
ステップS2:
出力波形に大きな振動があるかどうかを判別する。すなわち、読取った現在値の出力データX,Yから前述の演算出力値A(図6)を算出し、これがしきい値S(図7)より大きいかどうかを判別する。
ステップS3:
上記ステップS2で大きな振動があった場合に、前述の振動検出モードに移行し、その振動が通算で所定時間(T9)以上に達したかどうかを判別する。Yesであればメインスタンドを降ろす等の大きな振動による盗難動作であると判断して警報を発する(ステップS4)。Noであれば振動が所定時間に達するまで又はしきい値S以下の時間が所定時間以上となって振動検出モードを抜けるまでそのまま振動検出モードでの監視を続ける。
ステップS4:
盗難状態であると判別された状態であり、サイレンにより警報を鳴らす。この警報は所定時間(例えば数秒)経過すると自動的に解除される。
ステップS5:
上記ステップS2で大きな振動がない場合に、最初から大きな振動がない(A<S)状態であるのか、又は一度大きな振動があって(A>S)ステップS3に移行し、ここでしきい値S以下の時間が所定時間(T3)以上継続した状態であるのかどうかを判別する。T3に達していなければ達するまで前述の振動検出モードでの監視を続ける。
ステップS6:
上記ステップS5で大きな振動がなかった場合、メモリに保存された過去8回分のX軸、Y軸のセンサ出力について、前述の図8第9欄で説明したように、それぞれ平均値を算出する。
ステップS7:
前述の図8第11欄で説明したように、上記ステップS6で求めた過去8回分の平均値と前回(T前)の判定に使用した算出値との平均値を求める。
ステップS8:
前述(図8)のように、X軸、Y軸それぞれについて、第11欄の平均値と前述の基準値Xs,Ysとの差を求め、これらのX軸及びY軸それぞれの差の絶対値を足し合わせた値Dを傾斜検出用の演算出力値(傾斜判別値)として盗難判別に用いる。
D=|{(ΣX1〜8)/8+Xlast}/2−Xs|
+|{(ΣY1〜8)/8+Ylast}/2−Ys|
この傾斜判別値Dの値が所定のしきい値Q以上であれば盗難であると判断して警報を発する(ステップS4)。傾斜判別値Dがしきい値Q未満であれば盗難状態ではないと判別する。前述のように、この傾斜判別用のしきい値Qは振動検出用のしきい値Sよりも低い。
【0028】
図10は参考例の盗難防止装置の構成を示し、(A)は装置全体のブロック図、(B)は盗難防止制御回路部分のブロック図である。
(A)に示すように、盗難防止装置本体201にヒューズ202を介してバッテリ 203が接続される。バッテリ203は、メインスイッチ204を介して車両のスタータモータや表示ランプ等のDC負荷205に接続される。盗難防止装置本体201内には、車体の振動及び傾斜を検出する加速度センサ206及び盗難防止のための警報発生や点火ユニット遮断等の盗難防止システムを動作制御する盗難防止制御回路(マイコン又はCPU)207が備わる。盗難防止装置本体201には、警報用のサイレン208及びシステムの動作状態を示すインジケータランプ209が接続される。この盗難防止装置本体201はエンジンの点火ユニット210に接続される。
加速度センサ206は、X軸方向及びY軸方向についての加速度を検出して振動及び傾斜状態を検出する2軸加速度センサである。加速度センサ206は、盗難防止制御回路207に含まれるセンサ出力読取り手段211に接続される。センサ出力読取り手段211には書換え可能なメモリ212及びタイマ213が接続される。センサ出力読取り手段211は、加速度センサ206の検出出力を一定周期(例えば数十ms)で読出し、そのセンサ出力をメモリ212に格納する。
センサ出力読取り手段211は、盗難判定手段214に接続される。盗難判定手段214は、センサ出力読取り手段211で読取った加速度センサ206の出力データに基づいて盗難状態を判別する。
盗難防止判定手段214は、サイレン208及びインジケータランプ209を含む警報装置215に接続され、盗難状態を判別したときに警報を発するとともに盗難状態を点灯表示する。
上記図10の盗難防止装置は、前述の図3の盗難防止装置と同様に、図6〜図9で説明した盗難防止方法に基づいて動作する。
【0029】
図11は、イモビライザによる盗難防止装置の構成図である。
キー301にトランスポンダ302が組込まれる。車体側のキーシリンダ308にアンテナ303が組込まれる。キーシリンダ308に又はキーシリンダ308から引出されてメインスイッチ309が備わる。メインスイッチ309はバッテリ310に接続され、イモビライザ装置304に電源を供給する。イモビライザ装置304は、アンテナ303に接続する送受信回路305と、トランスポンダ302から送られるIDコードを照合するID照合回路311と、所定のタイミングでIDコードを照合するとともに照合結果に基づき点火ユニット312を遮断する制御回路306と、制御回路306に接続するタイマ313及びメモリ307とを有する。
トランスポンダ302は、不図示の電磁コイル、コンデンサ、マイクロチップ等で構成され、車両ごとに固有のIDコードが格納されている。メモリ307には予め制御回路306を介してIDコード書込み器(不図示)によりトランスポンダ302のIDコードと同じIDコードが登録されている。
運転するときに、キー301を車体のキーシリンダ308に差込むと、送受信回路305からアンテナ303を介してトランスポンダ302に電力を供給し、トランスポンダ302を充電する。トランスポンダ302の充電が一定量に達すると、このトランスポンダ302に格納された固有のIDコードをアンテナ303を介してイモビライザ装置304に送信する。イモビライザ装置304は、送受信回路305でこのIDコード信号を受信する。この受信されたIDコードは、タイマ313に基づき制御回路306から送られる所定のタイミング信号に基づき、ID照合回路311により、メモリ307に登録されているIDコードと照合される。照合結果に応じて、制御回路306は、トランスポンダ302のIDコードとメモリ307のIDコードが一致していれば、インターフェイス回路(不図示)を介してエンジンの点火ユニット312を動作可能としエンジンが始動できる状態にする。IDコードが一致していなければ、点火ユニット312を遮断してエンジンの始動を禁止する。
【0030】
図12は、盗難状態を検出して警報を発するアラーム装置の構成図である。
アラーム装置315は、メインスイッチ309を介してバッテリ310に接続されたメインスイッチ入力検出回路314と、車体に対する振動や傾斜により盗難状態を検出する傾斜センサあるいは加速度センサからなる盗難検出手段316と、所定のタイミングで盗難検出手段316を警戒状態にセットし、盗難状態を検出したときに例えばサイレンからなる警報装置317を駆動して警報を発する制御回路318とを有する。
このアラーム装置315は、運転を終了してメインスイッチ309をオンからオフに切換えてから所定時間経過した後自動的にセットされ警戒状態となる。正規の使用者が運転を開始する場合には、メインスイッチ309をオフからオンにするとともにアラーム装置315の警戒状態を解除するための解除信号を送らなければならない。
【0031】
図13は、参考例の盗難防止システムのブロック構成図である。
この盗難防止システムは、自動二輪車の車両側にイモビライザ装置404と、これと別体のアラーム装置415が取付けられたものである。イモビライザ装置404に送信装置419が備わり、アラーム装置415に受信装置420が備わる。イモビライザ装置404は、送信装置419を介して、各種動作信号や検出信号をアラーム装置415に送信する。アラーム装置415は、イモビライザ装置404から送られる信号を受信装置420で受信し、この受信信号に基づいて動作する。
キー401が車体側のキーシリンダ(不図示)に差込まれると、前述(図11)のように、キーシリンダのアンテナを介してトランスポンダのIDコードがイモビライザ装置404に送信される。イモビライザ装置404は、メインスイッチ入力検出回路414と、ID照合回路411と、タイマ413、メモリ407及び制御回路406とを有している。受信されたIDコードは、タイマ413に基づき制御回路406から送られる所定のタイミング信号に基づき、ID照合回路411により、メモリ407に登録されているIDコードと照合される。照合結果に応じて、制御回路406は、トランスポンダのIDコードとメモリ407のIDコードが一致していれば、インターフェイス回路(不図示)を介してエンジンの点火ユニット412を動作可能としエンジンが始動できる状態にする。IDコードが一致していなければ、点火ユニット412を遮断してエンジンの始動を禁止する。
アラーム装置415は、車体に対する振動や傾斜により盗難状態を検出する傾斜センサあるいは加速度センサからなる盗難検出手段416と、所定のタイミングで盗難検出手段416を警戒状態にセットし、盗難状態を検出したときに例えばサイレンからなる警報装置418を駆動して警報を発する制御回路417とを有する。
このように、イモビライザ装置404とアラーム装置415との間に送信手段419及び受信手段420からなる通信手段を設けることにより、イモビライザ装置404の各種動作信号や検出信号に基づいて、アラーム装置415を操作することなくアラーム装置415を動作させることができる。
送信手段419及び受信手段420は、それぞれ送受信手段として双方向に通信可能とし、相互に動作信号を送信して相手側を動作可能としてもよい。
【0032】
図14は、参考例の実施形態に係る盗難防止システムの構成図である。
トランスポンダを組込んだキー401がメインスイッチ409を動作させ、このメインスイッチ409を介してバッテリ(不図示)がイモビライザ装置404に接続される。イモビライザ装置404は、メインスイッチ入力検出回路414と、トランスポンダのIDコードを照合するID照合回路411を有する。このID照合回路411はイモビライザ解除信号送信手段421に接続され、イモビライザ解除信号をアラーム装置415に送信する。
アラーム装置415は、メインスイッチ409に接続されたメインスイッチ入力検出回路425と、イモビライザ解除信号受信手段423及びこれに接続されたアラーム解除手段424を有する。
【0033】
図15は、上記図14の実施形態の動作を示すフローチャートである。各ステップの動作は以下のとおりである。
ステップS1:
運転開始時に、イモビライザ装置404のメインスイッチ入力検出回路414(図14)により、メインスイッチ409がオフからオンへの切換えが検出される。これにより、イモビライザ装置404の動作が開始される。このときアラーム装置415は、メインスイッチがオフのときの警戒状態を継続している。
ステップS2:
ID照合回路411により、差込まれたキーが正規なものか不正なものか又は不正操作によりメインスイッチがオンにされたかどうかを判別する。
ステップS3:
正規のキーである場合、イモビライザ機能を解除してエンジンを始動可能状態にする。このイモビライザ解除信号をイモビライザ解除信号送信手段421を介してアラーム装置415に送信する。
ステップS4:
イモビライザ解除信号を受信したアラーム装置415側で、このイモビライザ解除信号に基づいてアラーム解除手段424により警戒状態を解除し、乗車可能な状態とする。
ステップS5:
上記ステップS2で不正キー又は不正操作である場合に、イモビライザ機能を動作させて点火ユニットを遮断し、エンジンの始動を禁止する。このとき、イモビライザは動作中であるため解除信号は発信されずアラーム装置415へは解除信号は送信されない。したがって、アラーム装置415は警戒状態を続ける。
ステップS6
アラーム装置415が、車体の振動や傾斜により盗難動作を検出した場合に、警報を発する。
【0034】
図16は、参考例の別の実施形態のフローチャートである。
この実施形態は、ステップT1〜T4までは上記図15のフローのステップS1〜S4と同じである。この実施形態では、ステップT2で不正キーの使用又は不正操作を検出したときに、ステップT5において、点火ユニットを遮断してエンジンの始動を禁止するとともに、この不正検出信号を送信手段(図14のイモビライザ解除信号送信手段421)を介してアラーム装置415に送信する。
不正検出信号を受信したアラーム装置415は、この不正検出信号に基づいて警報装置418を駆動して警報を発する(ステップT6)。
【0035】
図17は、参考例のさらに別の実施形態のフローチャートである。この実施形態はアラーム装置をセットする場合のフローを示す。
ステップU1:
運転を終了してメインスイッチをオンからオフに切換えると、これをイモビライザ装置404のメインスイッチ入力検出回路414(図14)の検出信号により判別する。
ステップU2:
イモビライザ装置404の制御回路406(図13)により、メインスイッチがオフになってから所定時間が経過したかどうかを判別する。所定時間経過前であれば所定時間に達するまで待機する。
ステップU3:
所定時間に達したら、イモビライザ装置404からアラーム装置415にアラームセット信号を送信する。
ステップU4:
アラーム装置415は、受信したアラームセット信号に基づきアラーム装置415を警戒状態にセットする。
【産業上の利用可能性】
【0036】
以上説明したように、参考例では、メインスイッチがオンにされた直後の状態、すなわちメインスイッチONの表示ランプやその他の計器類のランプ等の微弱な負荷がかかり且つスタータ等の大きな負荷がかかっていない状態で、バッテリ電圧を測定して読み取り、盗難防止装置の解除操作をした後に、このバッテリ電圧が所定値以下の場合に警報を発することにより、エンジン始動前にバッテリ電圧が低いことをユーザーに知らせることができ、ユーザーはバッテリの充電や交換等の措置を講じることができる。これにより、エンジンが支障なく始動するとともに、次回の乗車時に充分高いバッテリ電圧が得られるため、メインスイッチON後にイモビライザ等の盗難防止装置を解除操作して支障なくエンジンを始動させることができる。
この場合、通常は、バッテリ電圧は無負荷状態で測定すると残量のない電圧が低い場合であっても定格値にほぼ等しい高い測定値となり、正確な電圧が測定できず、また、逆に大きな負荷がかかった状態で測定すると電圧降下が大きくなりすぎ、この場合にも正確なバッテリ電圧が測定できないが、本発明では、メインスイッチがオンにされた直後の微弱負荷がかかった状態でバッテリ電圧を読み取る。したがって、無負荷状態でもなく過大な負荷状態でもなく適度な負荷がかかった状態で電圧を測定するため、正確なバッテリ電圧を読み取ることができる。このように正確なバッテリ電圧を読取ってこれに基づいて電圧不足の状態を警報によりユーザーに知らせることができるため、イモビライザシステムを備えた盗難防止装置において、ユーザーは、充電やバッテリ交換等によりバッテリ電圧を高くすることができ、これにより、電圧不足でイモビライザが解除できなくなってエンジンが始動できなくなることを未然に防止できる。
【0037】
また、本発明では、新たな盗難監視状態の開始の後、すなわちメインスイッチをオフにしたときや警報が鳴った後所定時間後に解除されたときなどであって、盗難防止装置による警戒状態に入った後、開始から所定時間Aだけ経過して出力が安定した後、所定時間Bの間のセンサ出力を検出してその平均値を求め、この平均値を基準値として盗難状態の判断を行う。したがって、警戒状態が開始されるごとに、安定した状態で基準値が算出され、その基準値をセンサ出力の0点となる初期値としてセンサ出力が判別されるため、駐車のたびに姿勢が変わったとしても、それに追従して0点をオフセットさせるため、常に正確に傾斜角度や振動を検出することができる。
また、加速度センサの出力データを周期的に読取ることにより、消費電力の低減を図ることができる。
また、本発明では、X軸及びY軸それぞれについて例えば駐車時の車体姿勢での傾斜状態を基準値として、各方向での基準値との差に基づいてX軸及びY軸のセンサ出力を合成したセンサの演算出力値Aを算出し、この演算出力値Aが所定のしきいS値より大きいときに振動に基づく盗難状態を判別し、演算出力値Aが所定のしきい値Sより小さいときに車体の傾斜に基づいて盗難状態を判別するため、振動と傾斜を分けて検出することができ、振動判断のしきい値Sを大きくし、傾斜判断のしきい値Qを小さくして小さな振動による傾斜の誤判断を防止するとともに、大きな振動を確実に検出して盗難判断の信頼性を高めることができ、盗難防止機能の信頼性を高めるとともに誤警報の防止を図ることができる。
また、加速度センサの出力データを周期的に読取ることにより、消費電力の低減を図ることができる。
【0038】
さらに、参考例では、第1の盗難防止装置(イモビライザ装置)と第2の盗難防止装置(アラーム装置)の2つの盗難防止装置を別個に取付けた場合、2つの盗難防止装置間に設けた通信手段により、イモビライザ装置又はアラーム装置の一方の動作信号を他方に送信し、その動作信号により他方を動作させることができ、他方を動作させるための操作をする必要がなくなり操作性が向上する。
これにより、例えばアラーム装置を後で取付けた場合に、イモビライザ単独の場合と同じ操作で、例えばアラーム装置を解除することができ、アラーム装置の解除手段が不要になり操作が簡単になるとともにコストの低減が図られる。
【符号の説明】
【0039】
201 盗難防止装置本体
202 ヒューズ
203 バッテリ
204 メインスイッチ
205 DC負荷
206 加速度センサ
207 盗難防止制御回路
208 サイレン
209 インジケータランプ
210 点火ユニット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X軸方向及び/又はY軸方向の加速度を検出する加速度センサを用い、X,Y各方向のセンサ出力X,Yと所定の基準値Xs,Ysとの差に基づいて盗難状態を判別する自動二輪車の盗難防止方法において、新たな盗難監視状態が開始された後、所定時間Aが経過したときから所定時間Bの間のセンサ出力の平均値を算出し、この平均値を前記基準値として設定することを特徴とする自動二輪車の盗難防止方法。
【請求項2】
前記センサ出力を一定の周期で検出し、前記所定時間Aが経過するまでの所定回数の検出データを無視し、その後の所定回数の検出データの平均値を前記基準値として設定し、この基準値を用いて、その後の検出データに基づいて盗難状態を判別することを特徴とする請求項1に記載の自動二輪車の盗難防止方法。
【請求項3】
|X−Xs|+|Y−Ys|に基づいて盗難状態を判別することを特徴とする請求項1または2に記載の自動二輪車の盗難防止装置。
【請求項4】
一定の時間間隔で前記基準値を更新することを特徴とする請求項1、2または3に記載の自動二輪車の盗難防止方法。
【請求項5】
X軸及びY軸についてそれぞれ加速度を検出する2軸加速度センサと、この加速度センサの出力を読取るセンサ出力読取り手段と、読取ったセンサ出力に基づいて盗難状態かどうかを判別する盗難判別手段と、盗難状態と判別されたときに警報を発する警報手段とを備えた自動二輪車の盗難防止装置において、前記盗難判別手段は、X軸及びY軸のセンサ出力X,YとX軸及びY軸それぞれの所定の基準値Xs,Ysとの差に基づいてX軸とY軸のセンサ出力を合成した演算出力値Aを算出し、この演算出力値Aが所定のしきい値Sより大きい場合には、車体の振動に基づいて盗難状態を判別し、前記演算出力値Aが所定のしきい値Sより小さい場合には、車体の傾斜に基づいて盗難状態を判別することを特徴とする自動二輪車の盗難防止装置。
【請求項6】
前記演算出力値Aが所定のしきい値Sより大きい場合に、その状態が通算で所定時間以上連続した場合に盗難状態と判別して警報を発することを特徴とする請求項5に記載の自動二輪車の盗難防止装置。
【請求項7】
前記演算出力値Aが所定のしきい値Sより小さい場合に、X軸及びY軸それぞれについて過去複数回の出力データの平均値と前回の判別に用いた算出値との新たな平均値を求め、この新たな平均値と前記所定の基準値Xs,Ysとの差に基づいてX軸及びY軸のセンサ出力を合成した傾斜判別値Dを算出し、この傾斜判別値Dが所定のしきい値Q以上のときに盗難状態と判別して警報を発することを特徴とする請求項5に記載の自動二輪車の盗難防止装置。
【請求項8】
前記演算出力値Aは、X軸及びY軸について現在の出力値をX,Yとし、基準値をXs,Ysとしたとき、A=|X−Xs|+|Y−Ys|であることを特徴とする請求項5に記載の自動二輪車の盗難防止装置。
【請求項9】
前記演算出力値Aは、X軸及びY軸について現在の出力値をX,Yとし、基準値をXs,Ysとしたとき、A=√{|X−Xs|2+|Y−Ys|2}であることを特徴とする請求項5に記載の自動二輪車の盗難防止装置。
【請求項10】
前記センサ出力読取り手段は、一定時間ごとにセンサ出力を読取ってメモリに格納することを特徴とする請求項5から9のいずれかに記載の自動二輪車の盗難防止装置。
【請求項1】
X軸方向及び/又はY軸方向の加速度を検出する加速度センサを用い、X,Y各方向のセンサ出力X,Yと所定の基準値Xs,Ysとの差に基づいて盗難状態を判別する自動二輪車の盗難防止方法において、新たな盗難監視状態が開始された後、所定時間Aが経過したときから所定時間Bの間のセンサ出力の平均値を算出し、この平均値を前記基準値として設定することを特徴とする自動二輪車の盗難防止方法。
【請求項2】
前記センサ出力を一定の周期で検出し、前記所定時間Aが経過するまでの所定回数の検出データを無視し、その後の所定回数の検出データの平均値を前記基準値として設定し、この基準値を用いて、その後の検出データに基づいて盗難状態を判別することを特徴とする請求項1に記載の自動二輪車の盗難防止方法。
【請求項3】
|X−Xs|+|Y−Ys|に基づいて盗難状態を判別することを特徴とする請求項1または2に記載の自動二輪車の盗難防止装置。
【請求項4】
一定の時間間隔で前記基準値を更新することを特徴とする請求項1、2または3に記載の自動二輪車の盗難防止方法。
【請求項5】
X軸及びY軸についてそれぞれ加速度を検出する2軸加速度センサと、この加速度センサの出力を読取るセンサ出力読取り手段と、読取ったセンサ出力に基づいて盗難状態かどうかを判別する盗難判別手段と、盗難状態と判別されたときに警報を発する警報手段とを備えた自動二輪車の盗難防止装置において、前記盗難判別手段は、X軸及びY軸のセンサ出力X,YとX軸及びY軸それぞれの所定の基準値Xs,Ysとの差に基づいてX軸とY軸のセンサ出力を合成した演算出力値Aを算出し、この演算出力値Aが所定のしきい値Sより大きい場合には、車体の振動に基づいて盗難状態を判別し、前記演算出力値Aが所定のしきい値Sより小さい場合には、車体の傾斜に基づいて盗難状態を判別することを特徴とする自動二輪車の盗難防止装置。
【請求項6】
前記演算出力値Aが所定のしきい値Sより大きい場合に、その状態が通算で所定時間以上連続した場合に盗難状態と判別して警報を発することを特徴とする請求項5に記載の自動二輪車の盗難防止装置。
【請求項7】
前記演算出力値Aが所定のしきい値Sより小さい場合に、X軸及びY軸それぞれについて過去複数回の出力データの平均値と前回の判別に用いた算出値との新たな平均値を求め、この新たな平均値と前記所定の基準値Xs,Ysとの差に基づいてX軸及びY軸のセンサ出力を合成した傾斜判別値Dを算出し、この傾斜判別値Dが所定のしきい値Q以上のときに盗難状態と判別して警報を発することを特徴とする請求項5に記載の自動二輪車の盗難防止装置。
【請求項8】
前記演算出力値Aは、X軸及びY軸について現在の出力値をX,Yとし、基準値をXs,Ysとしたとき、A=|X−Xs|+|Y−Ys|であることを特徴とする請求項5に記載の自動二輪車の盗難防止装置。
【請求項9】
前記演算出力値Aは、X軸及びY軸について現在の出力値をX,Yとし、基準値をXs,Ysとしたとき、A=√{|X−Xs|2+|Y−Ys|2}であることを特徴とする請求項5に記載の自動二輪車の盗難防止装置。
【請求項10】
前記センサ出力読取り手段は、一定時間ごとにセンサ出力を読取ってメモリに格納することを特徴とする請求項5から9のいずれかに記載の自動二輪車の盗難防止装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2009−107624(P2009−107624A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−3439(P2009−3439)
【出願日】平成21年1月9日(2009.1.9)
【分割の表示】特願2004−519291(P2004−519291)の分割
【原出願日】平成15年7月8日(2003.7.8)
【出願人】(000191858)ヤマハモーターエレクトロニクス株式会社 (98)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月9日(2009.1.9)
【分割の表示】特願2004−519291(P2004−519291)の分割
【原出願日】平成15年7月8日(2003.7.8)
【出願人】(000191858)ヤマハモーターエレクトロニクス株式会社 (98)
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