自動壁紙糊付機
【課題】
自動壁紙糊付機において軽量化を図るとともに、高い寸法精度を確保する。
【解決手段】
糊付ローラーとドクターローラーを含む複数のローラーの作動によりシート状の壁紙材の裏面に糊付けする自動壁紙糊付機において、前記複数のローラーを両側端部において軸支する一対のフレーム側板部では、その各々が、ローラー軸支板部と外側樹脂カバー部とを有し、ローラー軸支板部は、ローラー対向面側の樹脂部13aと金属フレーム14aとの複合一体化によって構成されており、金属フレーム14aには、複数のローラーの軸支穴部と駆動伝達歯車の軸支穴部とともに軸支穴部間の寸法精度を保つ肉部と肉抜き穴部とが設けられている。
自動壁紙糊付機において軽量化を図るとともに、高い寸法精度を確保する。
【解決手段】
糊付ローラーとドクターローラーを含む複数のローラーの作動によりシート状の壁紙材の裏面に糊付けする自動壁紙糊付機において、前記複数のローラーを両側端部において軸支する一対のフレーム側板部では、その各々が、ローラー軸支板部と外側樹脂カバー部とを有し、ローラー軸支板部は、ローラー対向面側の樹脂部13aと金属フレーム14aとの複合一体化によって構成されており、金属フレーム14aには、複数のローラーの軸支穴部と駆動伝達歯車の軸支穴部とともに軸支穴部間の寸法精度を保つ肉部と肉抜き穴部とが設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動壁紙糊付機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、壁装材(クロス)、すなわち壁紙の裏面に自動的に所定の量の糊を塗布する自動糊付機が知られている。たとえば図1は、自動糊付機の外観の一例を示したものであるが、一般的に、たとえば糊箱内蔵の本体部Aとこれを支える脚部B、本体部Aの後面側に架台によって回転可能に支持された壁紙ロールC並びに本体部Aの前面側に配置された糊付壁紙受けDによって構成されている。
【0003】
壁紙ロールCより送り出された壁紙は、本体部Aにおいてその裏面に糊付され、図中矢印のように、糊付壁紙受けDへと導かれる。
【0004】
本体部Aにおいては、糊付のための複数のローラーをその両側端部において回転可能に軸支する一対のフレーム側板部E1、E2が設けられており、その一方のフレーム側板部E2には、ローラを伝達歯車等を介して駆動するためのモーターを備えた駆動部Fが配置されている。また、本体部Aにおいては、壁紙の測長結果を表示したり、モーターを駆動制御するための表示・操作パネル部Gが設けられている例もある。この図1の例においては、表示・操作パネル部Gは、駆動部Fとともに着脱自在なボックスの形態を構成している。
【0005】
本体部Aは、前記のフレーム側板部E2側から見た図2に模式的に例示したように、通常、送り出しローラー1、検尺ローラー2、ハイテンションローラー3、糊付ローラー4、ドクターローラー5、糊上げローラー6、ナラシローラー7、押えローラー8、そして糊箱9と糊箱受け10を備えている。
【0006】
以上のとおりの複数のローラーは、前記フレーム側板部E1、E2に軸支されるが、このフレーム側板部E1、E2は、たとえば図2に矢印Jで示したように、検尺ローラー2、ハイテンションローラー3、押えローラー8を軸支する上蓋部が開閉自在とされている。ここで、糊付される壁紙Hは、送り出しローラー1と検尺ローラー2の2本のゴムローラーによって挾まれて前記壁紙ロールCより引出され、本体部A内に送り込まれる。検尺ローラー2は、壁紙Hの表面に押し付けられており、壁紙Hの送り方向にあわせて一方向に回転し、その回転量によって送り込まれた壁紙Hの長さが測定できるようにしている。
【0007】
糊付ローラー4の矢印方向への回転によって糊付ローラー4の外周に付着する糊が、壁紙Hの裏面に転写されて糊付される。その際には、ドクターローラー5と糊付ローラー4の間隔が調整されることで、壁紙H裏面に転写される糊の厚みが調整される。糊は、本体部Aの下部に設けられた糊箱9に貯えられており、糊上げローラー6の回転によって糊付ローラー4に転写される。
【0008】
壁紙Hの裏面に転写された糊はナラシローラー7によって均される。ハイテンションローラー3および押えローラー8は、壁紙H表面に上方より力を加えることで、糊付を均一にし、壁紙Hの搬送をスムーズに行う働きをする。
【0009】
また、糊付機には、必要に応じてスリッターが着脱自在に設けられ、このスリッターによって、壁紙Hの耳部を切断したり、柄合わせのために所望の幅に裁断したりすることが可能とされている。
【0010】
本体部Aにおける壁紙H裏面への糊付は、以上のような糊付ローラー4等の回転は、前記駆動部Fに配置したモーターの回転を歯車を介して伝達することで可能としている。
【0011】
本体部Aにおける壁紙H裏面への糊付は、以上のような複数のローラーの協働によって可能とされている。糊付の均一性や所定の糊量の転写を精度良く実現するための設計、加工組立て、調整、メンテナンスが極めて重要な意義を有している。そしてまた、糊付機は、一般的に、建築現場や増改築のための家屋、室内に搬入されて施工業者によって利用されることから、運搬性、利便性、性能の安定性の確保、向上が重要な課題となる。
【0012】
このような課題に係わる点としては、従来より、軽量化の必要性が認識されていた。特に、エレベーター等の自動的な搬送手段が無い施工現場においては、壁紙施工業者が糊付機を手に持って現場まで上り、また下ることがあるため、このような負担軽減のための糊付機の軽量化が求められていた。この軽量化への対応策としては、これまで前記のフレーム側板部E1、E2において複数のローラーの両側端部を軸支していたアルミニウム等の金属製のフレーム側板をエンジニアリングプラスチック製のものに代替することが提案されてもいる(特許文献1)。
【0013】
このようなフレーム側板部E1、E2における金属製からの樹脂への代替は軽量化とともに、加工組立性、メンテナンス性、作動時の振動抑制の観点からも提案されていることが特徴でもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】実開平5−58400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、フレーム側板部E1、E2について、前記提案のように複数のローラーを軸支するフレーム側板を樹脂をもって構成したものは、現状では実機としては販売されていない状況にある。その理由としては、複数のローラーを軸支して高精度での協働によって均一で所定量の糊付を可能とすることが難しいことがある。たとえば、前記の糊付ローラー4とドクターローラー5を軸支するための穴部の中心間の位置(距離)は1/100mmの精度が要求されるが、樹脂の成形加工、組立てによってこの精度を確保することは困難であり、しかも樹脂材料は金属材料に比べて熱膨張による寸法の伸縮が大きいので精度維持ができない。施工業者が現場に運搬したり保管する状況によっては、たとえば車載したままの状態でも冬の0℃以下の気温と夏場の60℃程度の気温でもいかに寸法差が大きいものとなるかが直ちに想定される。
【0016】
このため、前記提案のように樹脂で代替することは容易ではなく、極めて困難であったと言える。
【0017】
そこで、従来の自動糊付機においては、依然として複数のローラーを軸支するためのフレーム側板部は金属によって構成されたものとなっている。ごく一部において樹脂が用いられるとしても、前記のような精度が要求されないカバーのようなものに限られていた。
【0018】
ただ、従前の金属製フレーム側板部については、軽量化のための方策が実現されていないだけでなく、以下のような問題点もあった。
【0019】
すなわち、まず、アルミニウムダイカストフレームのような金属製の場合にはどうしても塗装が必要とされるが、その膜厚の不良、塗装面のキズや剥離、異物の混入などによる部品不具合の発生が懸念されることである。たとえば塗膜が厚くなることで設計どおりの嵌合ができず、ローラーの回転が悪くなったり、部品が所定のとおり納まらないことも考慮される。
【0020】
また、塗装では、安価に意匠性の良好な調色とすることも必ずしも容易ではなかった。
【0021】
さらにまた、従来の自動糊付機では、モーター駆動に係わる制御部では一般にインバーターと呼ばれる方式の速度制御回路が採用されており、高い周波数でスイッチングして任意の交流を生成しているので、人体に危険ではないものの、微量であるが漏電し、左右のフレーム側板部や複数のローラーに伝わる。そこで、従来まではアース線を接続することで人体に伝わることがないようにしている。
【0022】
しかしながら、施工業者が木造住宅などに壁紙施工する場合などでアースを接続しない場合がある。このような場合には、金属製のフレーム側板部や複数のローラーに電位が発生し、これが壁紙の裏面に付着した糊に伝わる。このため、人体に危険ではないが、施工業者が壁紙の先端などを指で掴んだ時に、敏感な人にはピリピリと感じて不快になるという懸念がある。
【0023】
そこで、以上のような事情から、本発明は、従来の自動糊付機における問題点を解消して、軽量化、特にフレーム側板部を対象としての軽量化を可能とするとともに、複数のローラーを軸支してスムーズな協働を可能とする寸法精度を確保することを課題としている。
【0024】
また、本発明は、従来の金属製フレーム側板部における塗装にともなう不具合や、アース接続しない場合の漏電の問題点についても解消することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明の自動糊付機は、前記課題を解決するために以下のことを特徴としている。
【0026】
<1>糊付ローラーとドクターローラーを含む複数のローラーの作動によりシート状の壁紙材の裏面に糊付けする自動壁紙糊付機において、前記複数のローラーを両側端部において軸支する一対のフレーム側板部では、その各々が、ローラー軸支板部と外側樹脂カバー部とを有し、ローラー軸支板部は、ローラー対向面側の樹脂部と金属フレームとの複合一体化によって構成されており、金属フレームには、複数のローラーの軸支穴部と駆動伝達歯車の軸支穴部とともに軸支穴部間の寸法精度を保つ肉部と肉抜き穴部とが設けられている。
【0027】
<2>前記肉部にはリブが設けられている。
【0028】
<3>糊付ローラーの軸支穴部の中心とドクターローラーの軸支穴部中心との間には肉抜き穴部は存在せずに肉部が設けられている。
【0029】
<4>樹脂の板状体と金属フレームとが締結により複合一体化されてフレーム側板部が構成されている。
【0030】
<5>金属フレームとの樹脂一体成形品として複合一体化されたフレーム側板部が構成されている。
【0031】
<6>糊箱の受け具、金属フレームにおける糊上げローラーとともに、糊付ローラー、ドクターローラー並びにナラシローラーの各々の軸支穴部の軸受部は樹脂による絶縁構成とされている。
【0032】
<7>以上のいずれかの自動壁紙糊付機において、具備されている送り出しローラー、検尺ローラー、ハイテンションローラー、並びに押えローラーは、金属または導電性樹脂をもって構成された軸受部により金属フレームの軸支穴部に軸支され、ローラーに帯電した静電気をサージ吸収素子を介して商用電源に逃す構成とされている。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、従来の自動糊付機における問題点を解消し、軽量化、特にフレーム側板部を対象としての軽量化を可能にするとともに、複数のローラーを軸支してスムーズな協働を可能とする高い寸法精度を確保することができる。
【0034】
また、従来の金属製フレーム側板部における塗装にともなう不具合や、アース接続していない場合の漏電の問題点についても解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】自動壁紙糊付機の一例を示した外観図である。
【図2】複数のローラーの配置と糊付のプロセスを例示した断面概要図である。
【図3】駆動側のローラー軸支板部を例示した正面図である。
【図4】従動側のローラー軸支板部を例示した正面図である。
【図5】図3のローラー軸支板部を構成する樹脂部を例示した斜視図である。
【図6】図5に対応する金属フレームを例示した斜視図である。
【図7】図3の組込み外観を示した写真である。
【図8】図7の背面側の外観を示した写真図である。
【図9】図4の組込み外観を示した写真図である。
【図10】インサート成形品としての駆動側のローラー軸支板部を例示した正面図である。
【図11】図10に対応した従動側について例示した正面図である。
【図12】絶縁の構成について例示したブロック概要図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本発明では、たとえば図1や図2に例示の、前記のとおりの糊付ローラーとドクターローラーを含む複数のローラーの作動によりシート状の壁紙の裏面に糊付けする自動壁紙糊付機が対象となる。
【0037】
もちろん、図1のように、前記表示・操作部G並びに駆動部Fがボックスの形態として着脱自在とされたものであってもよいし、これ以外の従来からの様々の形態であってもよい。
【0038】
本発明の自動壁紙糊付機では、たとえば図2に例示した複数のローラーを両側端部で軸支する図1におけるような一対のフレーム側板部E1、E2において、ローラー軸支板部11a、11bと樹脂カバー部12a、12bとを有し、各々のローラー軸支板部11a、11bは、ローラー対向面側の樹脂部と金属フレームとの複合一体化によって構成されている。
【0039】
図3および図4は、この複合一体化されているローラー軸支部11a、11bの各々を例示した正面図である。なお、この例では、図1のモーター駆動部Fの配置とは反対側のフレーム側板部E1に駆動部があって、ローラー軸支部11aが駆動側にあり、ローラー軸支部11bが従動側に位置している。
【0040】
この図3および図4に例示したローラー軸支部11a、11bにおいては、ローラー対向面側の樹脂部(図中の背面側)13a、13bと金属フレーム(図中の表面側)14a、14bとが各々の板状体のネジ止めにより締結されて複合一体化されている。この複合一体化のための板状体の例を図3の駆動側のローラー軸支部11aの場合として示したものが図5および図6である。
【0041】
いずれも上蓋部を除いたフレーム側部E1下方部のローラー軸支部について例示している。
【0042】
図5は前記樹脂部13aを示し、背面が、すなわち図中矢印方向が、ローラーに対向している。この板状体の樹脂部13aにはローラー軸支のための穴部15a、15bなどを有している。穴部15aは糊付ローラー用のものであり、穴部15bはドクターローラー用のものである。また、図6は金属フレーム14aを示している。この金属フレーム14aには、肉部16とこれに設けられた突状のリブ17とともに、空隙としての肉抜き穴部18とが設けられている。また、ローラー軸支のための穴部19a、19bなどを有している。穴部19aは糊付ローラー軸受用のものであり、穴部19bはドクターローラー軸受用のものである。
【0043】
さらに、金属フレーム14aには、糊付ローラー等の回転のための駆動伝達歯車の軸支穴部20等も設けられている。
【0044】
図5および図6に例示した樹脂部13aと金属フレーム部14aとをネジ止め締結で複合一体化したローラー軸支部11aについて自動壁紙糊付機への組込み状態として例示したものが図7および図8の外観写真である。図7に見えるように金属フレーム14aの肉抜き穴部18には、樹脂部13aが露出している。また、図8のように、樹脂部13aは、ローラーに対向する面側に配置されている。
【0045】
図9は、図4に例示した従動側のローラー軸支部11bについて自動壁紙糊付機への組込み状態としてその外観を例示した写真である。前記と同様に金属フレーム14bの肉抜き穴部18には樹脂部13bが露出していることがわかる。
【0046】
従来のアルミニウムなどの金属製のものに代えて、樹脂部と金属フレームとの複合一体化によりローラー軸支部を構成することで、金属の使用量(厚みおよび/または面積)を大幅に低減して大きく軽量化を図ることが可能となる。その際には、前記のとおりの肉抜き穴部を設けることも可能となり、軽量化効果は一段と顕著なものとなる。
【0047】
そして、本発明の自動壁紙糊付機においては、複数のローラーの協働がスムースに、安定して実行されるように寸法精度の確保が図られてもいる。すなわち、金属フレームにおいては、複数のローラーの軸支穴部の間の寸法精度を保つように肉部16と肉抜き穴部18が設けられ、肉部16には適宜に補強のためのリブ17も設けられている。
【0048】
たとえば、図6、そして図3にも例示されているように、糊付ローラーの軸支のための穴部19aの中心とドクターローラーの軸支のための穴部19bの中心と間には肉抜き穴部18は存在せずに肉部16のみが設けられ、さらにはリブ17によって補強されることが好適なものとして考慮される。これによって、両中心間の位置寸法の精度として1/100mmのレベルが確保される。このことは、自動壁紙糊付機の使用時、運搬や保管時の温度が大きく変化しても安定して維持されることになる。
【0049】
糊付ローラーの軸支のための穴部19aの中心と駆動伝達歯車用の軸支穴部20の中心との間も同様に肉部16、あるいは肉部16とリブ17のみによって構成されることが望ましい。
【0050】
軽量化とともに高い寸法精度を確保されるものとして、肉部と肉抜き空部が配置される。さらには、肉部へのリブの配置も同様である。その際には、当然にも、樹脂部や金属フレームの素材の種類、強度等の特性、成形性、加工組立性、メンテナンス性等が考慮される。リブについてはダイカスト成形に際しての湯の通り道として残すことも実際的に考慮されることになる。
【0051】
様々な形態として、本発明によれば軽量化は金属製の場合に比べてその重量で30%以上、さらには40%以上の低減も可能となる。
【0052】
なお、前記の樹脂材料としてはABS、ポリアセタールなどが、また金属材料としては、アルミニウムをはじめマグネシウム、これらの合金などが一般的に考慮される。
【0053】
図3から図9に示した例では、ネジ止め締結による別体としての樹脂部と金属フレームとの複合一体化が実現されているが、このような形態によれば、各々の部材としての製造、成形が比較的容易であって、組立も難しくない。しかも、樹脂部と金属フレームとの熱膨張率の差を吸収できる構造とすることが可能である。また、樹脂と金属とが完全に分離できるのでリサイクルが容易でもある。
【0054】
さらには、フレーム側板部E1、E2においてその外表面に露出するのは、樹脂カバー12a、12bとともに樹脂部13a、13bだけであるので、この樹脂部のみの交換によって色調等による意匠性を変更し、向上させることも容易となる。もちろん、前記の締結はネジ止め以外の様々の手段であってもよい。
【0055】
別体部品のネジ止め等による締結以外にも、複合一体化は様々に実現されてよい。たとえば、ダイカスト等により成形した金属フレームを用いてその上に樹脂成形する、インサート成形等の方法が考慮される。図10、図11は、図3と図4に対応してインサート成形により構成したローラー軸支部11a、11bを例示したものである。金属フレーム14a、14bの肉抜き穴部18には、樹脂部13a、13bによる突状ブロックが形成され、一体化が更に図られてより強度が向上することになる。
【0056】
このため、金属使用の低減化がさらに可能になる。
【0057】
いずれの方法、手段によっても、本発明におけるフレーム側板部E1、E2の外表面は樹脂であることから、従来の金属製の場合の塗装による不都合の発生も懸念されない。しかも比較的低コストで、樹脂を用いることによる調色変化や意匠性の向上、高級感の実現が容易となる。
【0058】
自動壁紙糊付機の基本構成については本発明においても例えば図1、図2に示したような構成が前提とされる。この構成を大別すると、糊付機を駆動し、全体を制御する駆動・制御部と、複数のローラーとこれを軸支するフレーム側板部並びに糊箱とからなる作動部に区分される。駆動・制御部にはモーター、モーター制御部、表示操作部、そして主演算部が含まれる。
【0059】
また、作動部には、前記のような、送り出しローラー、検尺ローラー、ハイテンションローラー、そして押えローラーという、糊には接触することのないローラー群と、糊付ローラー、ドクターローラー、糊上げローラー、そしてナラシローラーという、糊に接触するローラー群、さらには糊箱が含まれる。
【0060】
このような構成のうちの駆動・制御部では、モーターの駆動・制御にともなって、従来より、人体に危険でない微量の漏電がある。
【0061】
通常、この漏電の対策として、駆動・制御部にはアース線を接続し、左右のフレーム側板部やローラーを介して人体に流れないようにしている。しかしながら、木造住宅などの壁紙施工する場合などでアース線を大地に接続しない場合がある。漏電は、壁紙そのものには伝導しない。一方、壁紙の裏面に付着した糊には伝導する。このため、前記作動部における糊に抵触することのない送り出しローラー、検尺ローラーなどのローラー群については特段の対策は必要とされない。一方、糊に接するローラー群においては、フレーム側板部における本発明の金属フレームやこれに軸支されるローラーに電位が発生し、これが糊に伝わり、敏感な施工作業者の場合には壁紙裏面に付着した糊に触れることでピリピリ感じて不快感をおぼえる場合がある。
【0062】
そこで、本発明の自動壁紙糊付機においては、図12に示したように、糊に接するドクターローラー、糊付ローラー、ナラシローラー、そして糊上げローラー等のローラー群や糊箱について、金属フレームを用いるフレーム側板部との関係において絶縁構造とすることが考慮される。
【0063】
より具体的な形態としては、たとえば、糊上げローラー、糊付ローラー、ドクターローラー、並びにナラシローラーの金属フレームでの軸支穴部の軸受部には、絶縁樹脂性の軸受けやベアリングなどによる樹脂をもっての絶縁構成が採用されることが好ましい。また、糊箱についてはその受け具を樹脂性(絶縁性)のものとすることが考慮される。
【0064】
このような絶縁構造とすることで、アース接続しない場合でも施工作業者に不快感を与えることがない。
【0065】
なお、糊に接することのないローラー群においては壁紙との接触による静電気への対策が別途に考慮される。静電気は、ある程度の電圧(約5kV以上)になると放電し、施工作業者に対して衝撃を与えることになりかねない。そこで、たとえば送り出しローラー、検尺ローラー、ハイテンションローラー、押えローラーについては、金属または導電性樹脂をもって構成された軸受部により本発明金属フレームの軸支穴部に軸支し、これらローラーに帯電した静電気を図12に示したようにサージ吸収素子を介して商用電源に逃す構成とすることが好適なものとして考慮される。
【0066】
以上のような絶縁や静電気への対策によって、金属フレームと樹脂部との複合一体化をもって、フレーム側板部を構成する本発明の場合にも、施工作業性、利便性は良好なものとなる。
【符号の説明】
【0067】
A 本体部
B 脚部
C 壁紙ロール
D 糊付壁紙受け
E1、E2 フレーム側板部
F 駆動部
G 表示・操作パネル
H 壁紙
1 送り出しローラー
2 検尺ローラー
3 ハイテンションローラー
4 糊付ローラー
5 ドクターローラー
6 糊上げローラー
7 ナラシローラー
8 押えローラー
9 糊箱
10 糊箱受け
11a、11b ローラー軸支部
12a、12b 樹脂カバー部
13a、13b 樹脂部
14a、14b 金属フレーム
15a、15b 穴部
16 肉部
17 リブ
18 肉抜き穴部
19a、19b 穴部
20 駆動伝達歯車用の軸支穴部
【技術分野】
【0001】
本発明は自動壁紙糊付機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、壁装材(クロス)、すなわち壁紙の裏面に自動的に所定の量の糊を塗布する自動糊付機が知られている。たとえば図1は、自動糊付機の外観の一例を示したものであるが、一般的に、たとえば糊箱内蔵の本体部Aとこれを支える脚部B、本体部Aの後面側に架台によって回転可能に支持された壁紙ロールC並びに本体部Aの前面側に配置された糊付壁紙受けDによって構成されている。
【0003】
壁紙ロールCより送り出された壁紙は、本体部Aにおいてその裏面に糊付され、図中矢印のように、糊付壁紙受けDへと導かれる。
【0004】
本体部Aにおいては、糊付のための複数のローラーをその両側端部において回転可能に軸支する一対のフレーム側板部E1、E2が設けられており、その一方のフレーム側板部E2には、ローラを伝達歯車等を介して駆動するためのモーターを備えた駆動部Fが配置されている。また、本体部Aにおいては、壁紙の測長結果を表示したり、モーターを駆動制御するための表示・操作パネル部Gが設けられている例もある。この図1の例においては、表示・操作パネル部Gは、駆動部Fとともに着脱自在なボックスの形態を構成している。
【0005】
本体部Aは、前記のフレーム側板部E2側から見た図2に模式的に例示したように、通常、送り出しローラー1、検尺ローラー2、ハイテンションローラー3、糊付ローラー4、ドクターローラー5、糊上げローラー6、ナラシローラー7、押えローラー8、そして糊箱9と糊箱受け10を備えている。
【0006】
以上のとおりの複数のローラーは、前記フレーム側板部E1、E2に軸支されるが、このフレーム側板部E1、E2は、たとえば図2に矢印Jで示したように、検尺ローラー2、ハイテンションローラー3、押えローラー8を軸支する上蓋部が開閉自在とされている。ここで、糊付される壁紙Hは、送り出しローラー1と検尺ローラー2の2本のゴムローラーによって挾まれて前記壁紙ロールCより引出され、本体部A内に送り込まれる。検尺ローラー2は、壁紙Hの表面に押し付けられており、壁紙Hの送り方向にあわせて一方向に回転し、その回転量によって送り込まれた壁紙Hの長さが測定できるようにしている。
【0007】
糊付ローラー4の矢印方向への回転によって糊付ローラー4の外周に付着する糊が、壁紙Hの裏面に転写されて糊付される。その際には、ドクターローラー5と糊付ローラー4の間隔が調整されることで、壁紙H裏面に転写される糊の厚みが調整される。糊は、本体部Aの下部に設けられた糊箱9に貯えられており、糊上げローラー6の回転によって糊付ローラー4に転写される。
【0008】
壁紙Hの裏面に転写された糊はナラシローラー7によって均される。ハイテンションローラー3および押えローラー8は、壁紙H表面に上方より力を加えることで、糊付を均一にし、壁紙Hの搬送をスムーズに行う働きをする。
【0009】
また、糊付機には、必要に応じてスリッターが着脱自在に設けられ、このスリッターによって、壁紙Hの耳部を切断したり、柄合わせのために所望の幅に裁断したりすることが可能とされている。
【0010】
本体部Aにおける壁紙H裏面への糊付は、以上のような糊付ローラー4等の回転は、前記駆動部Fに配置したモーターの回転を歯車を介して伝達することで可能としている。
【0011】
本体部Aにおける壁紙H裏面への糊付は、以上のような複数のローラーの協働によって可能とされている。糊付の均一性や所定の糊量の転写を精度良く実現するための設計、加工組立て、調整、メンテナンスが極めて重要な意義を有している。そしてまた、糊付機は、一般的に、建築現場や増改築のための家屋、室内に搬入されて施工業者によって利用されることから、運搬性、利便性、性能の安定性の確保、向上が重要な課題となる。
【0012】
このような課題に係わる点としては、従来より、軽量化の必要性が認識されていた。特に、エレベーター等の自動的な搬送手段が無い施工現場においては、壁紙施工業者が糊付機を手に持って現場まで上り、また下ることがあるため、このような負担軽減のための糊付機の軽量化が求められていた。この軽量化への対応策としては、これまで前記のフレーム側板部E1、E2において複数のローラーの両側端部を軸支していたアルミニウム等の金属製のフレーム側板をエンジニアリングプラスチック製のものに代替することが提案されてもいる(特許文献1)。
【0013】
このようなフレーム側板部E1、E2における金属製からの樹脂への代替は軽量化とともに、加工組立性、メンテナンス性、作動時の振動抑制の観点からも提案されていることが特徴でもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】実開平5−58400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、フレーム側板部E1、E2について、前記提案のように複数のローラーを軸支するフレーム側板を樹脂をもって構成したものは、現状では実機としては販売されていない状況にある。その理由としては、複数のローラーを軸支して高精度での協働によって均一で所定量の糊付を可能とすることが難しいことがある。たとえば、前記の糊付ローラー4とドクターローラー5を軸支するための穴部の中心間の位置(距離)は1/100mmの精度が要求されるが、樹脂の成形加工、組立てによってこの精度を確保することは困難であり、しかも樹脂材料は金属材料に比べて熱膨張による寸法の伸縮が大きいので精度維持ができない。施工業者が現場に運搬したり保管する状況によっては、たとえば車載したままの状態でも冬の0℃以下の気温と夏場の60℃程度の気温でもいかに寸法差が大きいものとなるかが直ちに想定される。
【0016】
このため、前記提案のように樹脂で代替することは容易ではなく、極めて困難であったと言える。
【0017】
そこで、従来の自動糊付機においては、依然として複数のローラーを軸支するためのフレーム側板部は金属によって構成されたものとなっている。ごく一部において樹脂が用いられるとしても、前記のような精度が要求されないカバーのようなものに限られていた。
【0018】
ただ、従前の金属製フレーム側板部については、軽量化のための方策が実現されていないだけでなく、以下のような問題点もあった。
【0019】
すなわち、まず、アルミニウムダイカストフレームのような金属製の場合にはどうしても塗装が必要とされるが、その膜厚の不良、塗装面のキズや剥離、異物の混入などによる部品不具合の発生が懸念されることである。たとえば塗膜が厚くなることで設計どおりの嵌合ができず、ローラーの回転が悪くなったり、部品が所定のとおり納まらないことも考慮される。
【0020】
また、塗装では、安価に意匠性の良好な調色とすることも必ずしも容易ではなかった。
【0021】
さらにまた、従来の自動糊付機では、モーター駆動に係わる制御部では一般にインバーターと呼ばれる方式の速度制御回路が採用されており、高い周波数でスイッチングして任意の交流を生成しているので、人体に危険ではないものの、微量であるが漏電し、左右のフレーム側板部や複数のローラーに伝わる。そこで、従来まではアース線を接続することで人体に伝わることがないようにしている。
【0022】
しかしながら、施工業者が木造住宅などに壁紙施工する場合などでアースを接続しない場合がある。このような場合には、金属製のフレーム側板部や複数のローラーに電位が発生し、これが壁紙の裏面に付着した糊に伝わる。このため、人体に危険ではないが、施工業者が壁紙の先端などを指で掴んだ時に、敏感な人にはピリピリと感じて不快になるという懸念がある。
【0023】
そこで、以上のような事情から、本発明は、従来の自動糊付機における問題点を解消して、軽量化、特にフレーム側板部を対象としての軽量化を可能とするとともに、複数のローラーを軸支してスムーズな協働を可能とする寸法精度を確保することを課題としている。
【0024】
また、本発明は、従来の金属製フレーム側板部における塗装にともなう不具合や、アース接続しない場合の漏電の問題点についても解消することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明の自動糊付機は、前記課題を解決するために以下のことを特徴としている。
【0026】
<1>糊付ローラーとドクターローラーを含む複数のローラーの作動によりシート状の壁紙材の裏面に糊付けする自動壁紙糊付機において、前記複数のローラーを両側端部において軸支する一対のフレーム側板部では、その各々が、ローラー軸支板部と外側樹脂カバー部とを有し、ローラー軸支板部は、ローラー対向面側の樹脂部と金属フレームとの複合一体化によって構成されており、金属フレームには、複数のローラーの軸支穴部と駆動伝達歯車の軸支穴部とともに軸支穴部間の寸法精度を保つ肉部と肉抜き穴部とが設けられている。
【0027】
<2>前記肉部にはリブが設けられている。
【0028】
<3>糊付ローラーの軸支穴部の中心とドクターローラーの軸支穴部中心との間には肉抜き穴部は存在せずに肉部が設けられている。
【0029】
<4>樹脂の板状体と金属フレームとが締結により複合一体化されてフレーム側板部が構成されている。
【0030】
<5>金属フレームとの樹脂一体成形品として複合一体化されたフレーム側板部が構成されている。
【0031】
<6>糊箱の受け具、金属フレームにおける糊上げローラーとともに、糊付ローラー、ドクターローラー並びにナラシローラーの各々の軸支穴部の軸受部は樹脂による絶縁構成とされている。
【0032】
<7>以上のいずれかの自動壁紙糊付機において、具備されている送り出しローラー、検尺ローラー、ハイテンションローラー、並びに押えローラーは、金属または導電性樹脂をもって構成された軸受部により金属フレームの軸支穴部に軸支され、ローラーに帯電した静電気をサージ吸収素子を介して商用電源に逃す構成とされている。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、従来の自動糊付機における問題点を解消し、軽量化、特にフレーム側板部を対象としての軽量化を可能にするとともに、複数のローラーを軸支してスムーズな協働を可能とする高い寸法精度を確保することができる。
【0034】
また、従来の金属製フレーム側板部における塗装にともなう不具合や、アース接続していない場合の漏電の問題点についても解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】自動壁紙糊付機の一例を示した外観図である。
【図2】複数のローラーの配置と糊付のプロセスを例示した断面概要図である。
【図3】駆動側のローラー軸支板部を例示した正面図である。
【図4】従動側のローラー軸支板部を例示した正面図である。
【図5】図3のローラー軸支板部を構成する樹脂部を例示した斜視図である。
【図6】図5に対応する金属フレームを例示した斜視図である。
【図7】図3の組込み外観を示した写真である。
【図8】図7の背面側の外観を示した写真図である。
【図9】図4の組込み外観を示した写真図である。
【図10】インサート成形品としての駆動側のローラー軸支板部を例示した正面図である。
【図11】図10に対応した従動側について例示した正面図である。
【図12】絶縁の構成について例示したブロック概要図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本発明では、たとえば図1や図2に例示の、前記のとおりの糊付ローラーとドクターローラーを含む複数のローラーの作動によりシート状の壁紙の裏面に糊付けする自動壁紙糊付機が対象となる。
【0037】
もちろん、図1のように、前記表示・操作部G並びに駆動部Fがボックスの形態として着脱自在とされたものであってもよいし、これ以外の従来からの様々の形態であってもよい。
【0038】
本発明の自動壁紙糊付機では、たとえば図2に例示した複数のローラーを両側端部で軸支する図1におけるような一対のフレーム側板部E1、E2において、ローラー軸支板部11a、11bと樹脂カバー部12a、12bとを有し、各々のローラー軸支板部11a、11bは、ローラー対向面側の樹脂部と金属フレームとの複合一体化によって構成されている。
【0039】
図3および図4は、この複合一体化されているローラー軸支部11a、11bの各々を例示した正面図である。なお、この例では、図1のモーター駆動部Fの配置とは反対側のフレーム側板部E1に駆動部があって、ローラー軸支部11aが駆動側にあり、ローラー軸支部11bが従動側に位置している。
【0040】
この図3および図4に例示したローラー軸支部11a、11bにおいては、ローラー対向面側の樹脂部(図中の背面側)13a、13bと金属フレーム(図中の表面側)14a、14bとが各々の板状体のネジ止めにより締結されて複合一体化されている。この複合一体化のための板状体の例を図3の駆動側のローラー軸支部11aの場合として示したものが図5および図6である。
【0041】
いずれも上蓋部を除いたフレーム側部E1下方部のローラー軸支部について例示している。
【0042】
図5は前記樹脂部13aを示し、背面が、すなわち図中矢印方向が、ローラーに対向している。この板状体の樹脂部13aにはローラー軸支のための穴部15a、15bなどを有している。穴部15aは糊付ローラー用のものであり、穴部15bはドクターローラー用のものである。また、図6は金属フレーム14aを示している。この金属フレーム14aには、肉部16とこれに設けられた突状のリブ17とともに、空隙としての肉抜き穴部18とが設けられている。また、ローラー軸支のための穴部19a、19bなどを有している。穴部19aは糊付ローラー軸受用のものであり、穴部19bはドクターローラー軸受用のものである。
【0043】
さらに、金属フレーム14aには、糊付ローラー等の回転のための駆動伝達歯車の軸支穴部20等も設けられている。
【0044】
図5および図6に例示した樹脂部13aと金属フレーム部14aとをネジ止め締結で複合一体化したローラー軸支部11aについて自動壁紙糊付機への組込み状態として例示したものが図7および図8の外観写真である。図7に見えるように金属フレーム14aの肉抜き穴部18には、樹脂部13aが露出している。また、図8のように、樹脂部13aは、ローラーに対向する面側に配置されている。
【0045】
図9は、図4に例示した従動側のローラー軸支部11bについて自動壁紙糊付機への組込み状態としてその外観を例示した写真である。前記と同様に金属フレーム14bの肉抜き穴部18には樹脂部13bが露出していることがわかる。
【0046】
従来のアルミニウムなどの金属製のものに代えて、樹脂部と金属フレームとの複合一体化によりローラー軸支部を構成することで、金属の使用量(厚みおよび/または面積)を大幅に低減して大きく軽量化を図ることが可能となる。その際には、前記のとおりの肉抜き穴部を設けることも可能となり、軽量化効果は一段と顕著なものとなる。
【0047】
そして、本発明の自動壁紙糊付機においては、複数のローラーの協働がスムースに、安定して実行されるように寸法精度の確保が図られてもいる。すなわち、金属フレームにおいては、複数のローラーの軸支穴部の間の寸法精度を保つように肉部16と肉抜き穴部18が設けられ、肉部16には適宜に補強のためのリブ17も設けられている。
【0048】
たとえば、図6、そして図3にも例示されているように、糊付ローラーの軸支のための穴部19aの中心とドクターローラーの軸支のための穴部19bの中心と間には肉抜き穴部18は存在せずに肉部16のみが設けられ、さらにはリブ17によって補強されることが好適なものとして考慮される。これによって、両中心間の位置寸法の精度として1/100mmのレベルが確保される。このことは、自動壁紙糊付機の使用時、運搬や保管時の温度が大きく変化しても安定して維持されることになる。
【0049】
糊付ローラーの軸支のための穴部19aの中心と駆動伝達歯車用の軸支穴部20の中心との間も同様に肉部16、あるいは肉部16とリブ17のみによって構成されることが望ましい。
【0050】
軽量化とともに高い寸法精度を確保されるものとして、肉部と肉抜き空部が配置される。さらには、肉部へのリブの配置も同様である。その際には、当然にも、樹脂部や金属フレームの素材の種類、強度等の特性、成形性、加工組立性、メンテナンス性等が考慮される。リブについてはダイカスト成形に際しての湯の通り道として残すことも実際的に考慮されることになる。
【0051】
様々な形態として、本発明によれば軽量化は金属製の場合に比べてその重量で30%以上、さらには40%以上の低減も可能となる。
【0052】
なお、前記の樹脂材料としてはABS、ポリアセタールなどが、また金属材料としては、アルミニウムをはじめマグネシウム、これらの合金などが一般的に考慮される。
【0053】
図3から図9に示した例では、ネジ止め締結による別体としての樹脂部と金属フレームとの複合一体化が実現されているが、このような形態によれば、各々の部材としての製造、成形が比較的容易であって、組立も難しくない。しかも、樹脂部と金属フレームとの熱膨張率の差を吸収できる構造とすることが可能である。また、樹脂と金属とが完全に分離できるのでリサイクルが容易でもある。
【0054】
さらには、フレーム側板部E1、E2においてその外表面に露出するのは、樹脂カバー12a、12bとともに樹脂部13a、13bだけであるので、この樹脂部のみの交換によって色調等による意匠性を変更し、向上させることも容易となる。もちろん、前記の締結はネジ止め以外の様々の手段であってもよい。
【0055】
別体部品のネジ止め等による締結以外にも、複合一体化は様々に実現されてよい。たとえば、ダイカスト等により成形した金属フレームを用いてその上に樹脂成形する、インサート成形等の方法が考慮される。図10、図11は、図3と図4に対応してインサート成形により構成したローラー軸支部11a、11bを例示したものである。金属フレーム14a、14bの肉抜き穴部18には、樹脂部13a、13bによる突状ブロックが形成され、一体化が更に図られてより強度が向上することになる。
【0056】
このため、金属使用の低減化がさらに可能になる。
【0057】
いずれの方法、手段によっても、本発明におけるフレーム側板部E1、E2の外表面は樹脂であることから、従来の金属製の場合の塗装による不都合の発生も懸念されない。しかも比較的低コストで、樹脂を用いることによる調色変化や意匠性の向上、高級感の実現が容易となる。
【0058】
自動壁紙糊付機の基本構成については本発明においても例えば図1、図2に示したような構成が前提とされる。この構成を大別すると、糊付機を駆動し、全体を制御する駆動・制御部と、複数のローラーとこれを軸支するフレーム側板部並びに糊箱とからなる作動部に区分される。駆動・制御部にはモーター、モーター制御部、表示操作部、そして主演算部が含まれる。
【0059】
また、作動部には、前記のような、送り出しローラー、検尺ローラー、ハイテンションローラー、そして押えローラーという、糊には接触することのないローラー群と、糊付ローラー、ドクターローラー、糊上げローラー、そしてナラシローラーという、糊に接触するローラー群、さらには糊箱が含まれる。
【0060】
このような構成のうちの駆動・制御部では、モーターの駆動・制御にともなって、従来より、人体に危険でない微量の漏電がある。
【0061】
通常、この漏電の対策として、駆動・制御部にはアース線を接続し、左右のフレーム側板部やローラーを介して人体に流れないようにしている。しかしながら、木造住宅などの壁紙施工する場合などでアース線を大地に接続しない場合がある。漏電は、壁紙そのものには伝導しない。一方、壁紙の裏面に付着した糊には伝導する。このため、前記作動部における糊に抵触することのない送り出しローラー、検尺ローラーなどのローラー群については特段の対策は必要とされない。一方、糊に接するローラー群においては、フレーム側板部における本発明の金属フレームやこれに軸支されるローラーに電位が発生し、これが糊に伝わり、敏感な施工作業者の場合には壁紙裏面に付着した糊に触れることでピリピリ感じて不快感をおぼえる場合がある。
【0062】
そこで、本発明の自動壁紙糊付機においては、図12に示したように、糊に接するドクターローラー、糊付ローラー、ナラシローラー、そして糊上げローラー等のローラー群や糊箱について、金属フレームを用いるフレーム側板部との関係において絶縁構造とすることが考慮される。
【0063】
より具体的な形態としては、たとえば、糊上げローラー、糊付ローラー、ドクターローラー、並びにナラシローラーの金属フレームでの軸支穴部の軸受部には、絶縁樹脂性の軸受けやベアリングなどによる樹脂をもっての絶縁構成が採用されることが好ましい。また、糊箱についてはその受け具を樹脂性(絶縁性)のものとすることが考慮される。
【0064】
このような絶縁構造とすることで、アース接続しない場合でも施工作業者に不快感を与えることがない。
【0065】
なお、糊に接することのないローラー群においては壁紙との接触による静電気への対策が別途に考慮される。静電気は、ある程度の電圧(約5kV以上)になると放電し、施工作業者に対して衝撃を与えることになりかねない。そこで、たとえば送り出しローラー、検尺ローラー、ハイテンションローラー、押えローラーについては、金属または導電性樹脂をもって構成された軸受部により本発明金属フレームの軸支穴部に軸支し、これらローラーに帯電した静電気を図12に示したようにサージ吸収素子を介して商用電源に逃す構成とすることが好適なものとして考慮される。
【0066】
以上のような絶縁や静電気への対策によって、金属フレームと樹脂部との複合一体化をもって、フレーム側板部を構成する本発明の場合にも、施工作業性、利便性は良好なものとなる。
【符号の説明】
【0067】
A 本体部
B 脚部
C 壁紙ロール
D 糊付壁紙受け
E1、E2 フレーム側板部
F 駆動部
G 表示・操作パネル
H 壁紙
1 送り出しローラー
2 検尺ローラー
3 ハイテンションローラー
4 糊付ローラー
5 ドクターローラー
6 糊上げローラー
7 ナラシローラー
8 押えローラー
9 糊箱
10 糊箱受け
11a、11b ローラー軸支部
12a、12b 樹脂カバー部
13a、13b 樹脂部
14a、14b 金属フレーム
15a、15b 穴部
16 肉部
17 リブ
18 肉抜き穴部
19a、19b 穴部
20 駆動伝達歯車用の軸支穴部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
糊付ローラーとドクターローラーを含む複数のローラーの作動によりシート状の壁紙材の裏面に糊付けする自動壁紙糊付機において、前記複数のローラーを両側端部において軸支する一対のフレーム側板部では、その各々が、ローラー軸支板部と外側樹脂カバー部とを有し、ローラー軸支板部は、ローラー対向面側の樹脂部と金属フレームとの複合一体化によって構成されており、金属フレームには、複数のローラーの軸支穴部と駆動伝達歯車の軸支穴部とともに軸支穴部間の寸法精度を保つ肉部と肉抜き穴部とが設けられていることを特徴とする自動壁紙糊付機。
【請求項2】
肉部にはリブが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の自動壁紙糊付機。
【請求項3】
糊付ローラーの軸支穴部の中心とドクターローラーの軸支穴部中心との間には肉抜き穴部は存在せずに肉部が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の自動壁紙糊付機。
【請求項4】
樹脂の板状体と金属フレームとが締結により複合一体化されてフレーム側板部が構成されていることを特徴とする請求項1から3のうちのいずれか一項に記載の自動壁紙糊付機。
【請求項5】
金属フレームとの樹脂一体成形品として複合一体化されたフレーム側板部が構成されていることを特徴とする請求項1から3のうちのいずれか一項に記載の自動壁紙糊付機。
【請求項6】
請求項1から5のうちのいずれか一項に記載の自動壁紙糊付機であって、糊箱の受け具、金属フレームにおける糊上げローラーとともに、糊付ローラー、ドクターローラー並びにナラシローラーの各々の軸支穴部の軸受部は樹脂による絶縁構成とされていることを特徴とする自動糊付機。
【請求項7】
請求項1から6のうちのいずれか一項に記載の自動壁紙糊付機であって、具備されている送り出しローラー、検尺ローラー、ハイテンションローラー、並びに押えローラーは、金属または導電性樹脂をもって構成された軸受部により金属フレームの軸支穴部に軸支され、ローラーに帯電した静電気をサージ吸収素子を介して商用電源に逃す構成とされていることを特徴とする自動壁紙糊付機。
【請求項1】
糊付ローラーとドクターローラーを含む複数のローラーの作動によりシート状の壁紙材の裏面に糊付けする自動壁紙糊付機において、前記複数のローラーを両側端部において軸支する一対のフレーム側板部では、その各々が、ローラー軸支板部と外側樹脂カバー部とを有し、ローラー軸支板部は、ローラー対向面側の樹脂部と金属フレームとの複合一体化によって構成されており、金属フレームには、複数のローラーの軸支穴部と駆動伝達歯車の軸支穴部とともに軸支穴部間の寸法精度を保つ肉部と肉抜き穴部とが設けられていることを特徴とする自動壁紙糊付機。
【請求項2】
肉部にはリブが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の自動壁紙糊付機。
【請求項3】
糊付ローラーの軸支穴部の中心とドクターローラーの軸支穴部中心との間には肉抜き穴部は存在せずに肉部が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の自動壁紙糊付機。
【請求項4】
樹脂の板状体と金属フレームとが締結により複合一体化されてフレーム側板部が構成されていることを特徴とする請求項1から3のうちのいずれか一項に記載の自動壁紙糊付機。
【請求項5】
金属フレームとの樹脂一体成形品として複合一体化されたフレーム側板部が構成されていることを特徴とする請求項1から3のうちのいずれか一項に記載の自動壁紙糊付機。
【請求項6】
請求項1から5のうちのいずれか一項に記載の自動壁紙糊付機であって、糊箱の受け具、金属フレームにおける糊上げローラーとともに、糊付ローラー、ドクターローラー並びにナラシローラーの各々の軸支穴部の軸受部は樹脂による絶縁構成とされていることを特徴とする自動糊付機。
【請求項7】
請求項1から6のうちのいずれか一項に記載の自動壁紙糊付機であって、具備されている送り出しローラー、検尺ローラー、ハイテンションローラー、並びに押えローラーは、金属または導電性樹脂をもって構成された軸受部により金属フレームの軸支穴部に軸支され、ローラーに帯電した静電気をサージ吸収素子を介して商用電源に逃す構成とされていることを特徴とする自動壁紙糊付機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図12】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図12】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−179863(P2012−179863A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45553(P2011−45553)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(000163121)極東産機株式会社 (68)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(000163121)極東産機株式会社 (68)
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