自動改札機および情報処理システム
【課題】記名式カードを自動改札機に提示した利用者が記名者本人であることを確認するための処理を簡便化する点について改善の余地がある。
【解決手段】実施の形態の自動改札機10は、利用者が提示する記名式カードに記録された乗車券情報にしたがって改札処理を実行する改札処理部64と、利用者の顔画像を撮像するカメラ部54と、利用者の顔画像を、年齢に対する顔画像の特徴部分が示されたデータと照合することにより、利用者の年齢を推定する利用者属性推定部70と、記名式カードから記名者の年齢を示す情報を読み出す読取/書込部62と、推定された利用者の年齢が、読み出された記名者の年齢と整合するか否かを判定する整合判定部72と、不整合の判定結果となった場合、その旨を、記名式カードの乗車券情報の定期的な更新の際に確認されるべき情報として記録する記録部74とを備える。
【解決手段】実施の形態の自動改札機10は、利用者が提示する記名式カードに記録された乗車券情報にしたがって改札処理を実行する改札処理部64と、利用者の顔画像を撮像するカメラ部54と、利用者の顔画像を、年齢に対する顔画像の特徴部分が示されたデータと照合することにより、利用者の年齢を推定する利用者属性推定部70と、記名式カードから記名者の年齢を示す情報を読み出す読取/書込部62と、推定された利用者の年齢が、読み出された記名者の年齢と整合するか否かを判定する整合判定部72と、不整合の判定結果となった場合、その旨を、記名式カードの乗車券情報の定期的な更新の際に確認されるべき情報として記録する記録部74とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はデータ処理技術に関し、特に、自動改札機および自動改札機を備える情報処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、駅などの交通機関の出入口に設置される自動改札機では、改札処理の高速化等を実現するため、磁気式の乗車券媒体に代わって、無線式の乗車券媒体としての記名式のICカード(以下、「記名式カード」とも呼ぶ。)を処理するものが普及している。このような自動改札装置は、利用者により提示される記名式カードと無線による通信を行うことにより、その記名式カードに記録されている乗車券情報に基づいて、利用者の通行(例えば、駅構内への入場または駅構外への出場)の可否を判定する。
【0003】
以下の特許文献1では、記名式カードを自動改札機に提示した利用者が、記名式カードの記名者本人であることを確認するために、記名式カードに記録された記名者の顔画像と、利用者を撮像して得られた利用者の顔画像とを照合して、その照合結果に基づいて利用者の通行を制御する自動改札機を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−268144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、顔画像は個人情報の最たるものと言え、予め記録された記名者の顔画像が第三者へ漏洩した場合、大きな問題となりうる。そのため、記名者の顔画像を予め保持する方式では、顔画像のデータ管理に非常に高いセキュリティが要求されることになる。本発明者は、記名式カードを自動改札機に提示した利用者が記名者本人であることを確認するための処理を簡便化する点について改善の余地があると考えた。
【0006】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、記名式カードを自動改札機に提示した利用者が記名者本人であることを確認するための処理を簡便化する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の自動改札機は、利用者が提示する記名式の乗車券媒体に記録された乗車券情報にしたがって改札処理を実行する改札処理部と、利用者の顔画像を撮像する撮像部と、利用者の顔画像を、年齢に対する顔画像の特徴部分が示されたデータと照合することにより、利用者の年齢を推定する推定部と、乗車券媒体から、記名者の年齢を示す情報を読み出す取得部と、推定部において推定した利用者の年齢が、取得部において読み出した記名者の年齢と整合するか否かを判定する判定部と、判定部において不整合の判定結果となった場合、利用者の年齢が記名者の年齢と不整合である旨を、乗車券媒体の乗車券情報の定期的な更新の際に確認されるべき情報として記録する記録部と、を備える。
【0008】
本発明の別の態様は、情報処理システムである。この情報処理システムは、自動改札機と情報管理装置とを備える。自動改札機は、利用者が提示する記名式の乗車券媒体に記録された乗車券情報にしたがって改札処理を実行する改札処理部と、利用者の顔画像を撮像する撮像部と、利用者の顔画像を、年齢に対する顔画像の特徴部分が示されたデータと照合することにより、利用者の年齢を推定する推定部と、乗車券媒体から、記名者の年齢を示す情報を読み出す取得部と、推定部において推定した利用者の年齢が、取得部において読み出した記名者の年齢と整合するか否かを判定する判定部と、判定部において不整合の判定結果となった場合、利用者の年齢が記名者の年齢と不整合である旨を記録する記録部と、を含む。情報管理装置は、乗車券媒体の乗車券情報の定期的な更新の際にその更新を行う事業者に確認させるために、その事業者に対して不整合である旨を通知する通知部を含む。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を装置、方法、システム、プログラム、プログラムを格納した記録媒体などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、記名式カードを自動改札機に提示した利用者が記名者本人であることを確認するための処理を簡便化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施の形態の情報処理システムの構成を示す図である。
【図2】図1の自動改札機の機能構成を示すブロック図である。
【図3】乗車記録のデータ構成を示す図である。
【図4】図1の駅サーバの機能構成を示すブロック図である。
【図5】図1の管理サーバの機能構成を示すブロック図である。
【図6】図1の自動券売機の機能構成を示すブロック図である。
【図7】図1の窓口装置の機能構成を示すブロック図である。
【図8】図1の自動改札機の動作を示すフローチャートである。
【図9】図1の駅サーバの動作を示すフローチャートである。
【図10】図1の管理サーバの動作を示すフローチャートである。
【図11】図1の窓口装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態の構成を説明する前に、まず概要を説明する。
これまでの自動改札機では、典型的に以下のシナリオが実行されていた。
(1)自動改札の通過を求める利用者は、自動改札機のカード読取部に記名式カードをかざす。
(2)自動改札機は、記名式カードに記録された乗車券としての情報(例えば定期区間や、定期の期限、チャージ金額を示す情報であり、以下では「乗車券情報」とも呼ぶ。)を読み込む。
(3)自動改札機は、読み込んだ乗車券情報にもとづき課金処理や不正乗車のチェックを行う。
(4)自動改札機は、乗車券情報に問題がなければ(チャージ金額の減算により問題が解消した場合も含む)、ドアを開けた状態として利用者を通過させる。問題があれば、ドアを閉じた状態として利用者の通過を拒否する。
【0013】
これまでの自動改札機では、記名式カードを記名者以外の第三者(例えば家族や友人)が不正に使用しても、その不正を発見することは困難であった。鉄道事業者側から見ると、本来得られるはずの利益を得られない問題、いわば機会損失が発生していた。
【0014】
また、上述の特開2006−268144号公報では、記名式カードを自動改札機に提示した利用者が、記名式カードの記名者本人であることを確認するために、記名式カードに記録された記名者の顔画像と、利用者を撮像して得られた利用者の顔画像とを照合して、その照合結果に基づいて利用者の通行を制御する自動改札機が提案されている。しかし、顔画像は、他人が記名者を容易に特定できる等の観点から、指紋以上に個人情報の最たるものであると言え、予め記録された記名者の顔画像が悪意のある第三者へ漏洩した場合、大きな問題となりうる。そのため、記名者の顔画像を予め保持する方式では、顔画像のデータ管理に非常に高いセキュリティが要求されることになる。また、記名式カードの作成時に記名者の顔写真が必要となり、記名者の負担を増大させてしまう。
【0015】
そこで本実施の形態では、記名式カードを自動改札機に提示した利用者が、その記名式カードにおける記名者本人であることを確認可能にしつつも、その確認処理を簡便化する技術を提案する。具体的には、以下のシナリオを実行する。
【0016】
(1)利用者は、自動改札機のカード読取部に記名式カードをかざす。
(2)自動改札機は、記名式カードに記録された乗車券情報と、記名者の性別および生年月日を読み込む。
(3)自動改札機は、読み込んだ乗車券情報にもとづき課金処理や不正乗車のチェックを行う。
(4)自動改札機は、自身に取り付けられたカメラで利用者を撮像することにより、利用者の顔画像を取得する。
(5)自動改札機は、利用者の顔画像から利用者の性別および年齢層を推定する。
(6)自動改札機は、記名者の性別および生年月日と、利用者の性別および年齢層が整合するか否かをチェックする。
(7)記名者と利用者とが不整合である場合は、その旨を示す情報であり、利用者の顔画像を含む不整合情報を記録する。
(8)記名者と利用者とが整合するか否かにかかわらず、乗車券情報に問題がなければ、ドアを開けた状態として利用者を通過させる。乗車券情報に問題があれば、ドアを閉じた状態として利用者の通過を拒否する。
(9)蓄積された不整合情報は、記名式カードの乗車券情報(典型的には定期乗車券の情報)を更新する際に、その更新を行う装置や担当者により確認される。
【0017】
これにより、記名式カードが不正利用された場合、不整合情報が蓄積され、自動速度違反取締装置のように後日の確認が可能になる。例えば、記名式カードにおける定期乗車券の更新時に窓口担当者が不正利用について問い質すことができる。これにより、記名式カードを他人が不正利用することを抑止して、鉄道事業者の機会損失を低減する。また、記名者の生年月日は現在、一般的に記名式カードに記録されるものであり、記名式カードにおける現状のセキュリティレベルにて運用することができる。
【0018】
図1は、実施の形態の情報処理システムの構成を示す。情報処理システム1000は、鉄道事業者αのA駅に設置された自動改札機10と、自動券売機12と、窓口装置14と、駅サーバ16と、NW機器18と、鉄道事業者βのB駅に設置された自動改札機20と、自動券売機22と、窓口装置24と、駅サーバ26と、NW機器28と、データセンタに設置された管理サーバ30とNW機器32とを備える。
【0019】
自動改札機10および自動改札機20は、駅構内へ入場する利用者や駅構外へ出場する利用者から記名式カードの提示を受け付けて、記名式カードの記録データにもとづいて改札処理を実行する。本実施の形態の記名式カードには、乗車券情報と、記名者の性別および生年月日とが少なくとも記録されていることとする。自動券売機12および自動券売機22は、乗車券の販売処理や記名式カードに対するチャージ処理、さらに記名式カードに記録された乗車券情報、典型的には定期乗車券情報の更新処理(期間延長等)を実行する。窓口装置14および窓口装置24は、駅の窓口担当者により操作される情報端末であり、各種駅務処理、例えば記名式カードに記録された定期乗車券情報の更新処理(期間延長等)を実行する。
【0020】
駅サーバ16および駅サーバ26は、各駅に設置された駅務機器(例えば自動改札機、自動券売機、窓口装置等)から通知された情報を集約・集計して保持する。そして、保持する情報を適宜管理サーバ30へ通知する。また、管理サーバ30から提供された各種情報を取得して、適宜駅務機器へ通知する。管理サーバ30は、各駅に設置された駅サーバから通知された情報を集約・集計して保持する。そして、保持する情報を適宜駅サーバへ通知する。これらの各装置は、LANやWAN、インターネット等を含む通信網や、NW機器18、NW機器28、NW機器32を介して相互に接続される。
【0021】
図2は、図1の自動改札機10の機能構成を示すブロック図である。自動改札機10は、各種データを記憶する記憶領域であるデータ保持部40と、外部とのインタフェース機能を提供する外部I/F部50と、データ保持部40において保持され、もしくは外部I/F部50において取得されたデータに基づいて各種データ処理を実行するデータ処理部60とを備える。図1の自動改札機20も同様の機能構成である。
【0022】
本明細書のブロック図において示される各ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのCPUをはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。例えば、図2の各機能ブロックは、ソフトウェアとして記録媒体に格納され、自動改札機10の外部記憶装置にインストールされ、自動改札機10のメインメモリに適宜読み出されてCPUにて実行されてもよい。
【0023】
データ保持部40は、参照画像保持部42と、乗車記録保持部44と、調整情報保持部46とを有する。参照画像保持部42は、運賃体系(例えば定期乗車券の料金体系)が異なる複数種類の年齢層と性別との組み合わせについて、各組み合わせにおける顔画像の特徴部分が示されたデータ(以下単に、「年齢層・性別ごとの参照画像」とも呼ぶ。)を保持する。年齢層・性別ごとの参照画像は、例えば、シルバー料金が適用される70歳以上の年齢層、通勤料金が適用される23歳以上69歳以下の年齢層、通学料金が適用される13歳以上22歳以下の年齢層、小児料金が適用される6歳以上12歳以下の年齢層について、各年齢層における男女それぞれの典型的な顔画像の特徴を示すデータであってもよい。また、各年齢層における男女それぞれの典型的な顔画像そのもののデータであってもよい。
【0024】
乗車記録保持部44は、利用者が記名式カードを提示した履歴を示す情報(以下、「乗車記録」とも呼ぶ。)を保持する。図3は、乗車記録のデータ構成を示す。同図のカードIDフィールドには、記名式カードを一意に特定可能なID(以下、「カードID」とも呼ぶ。)が格納される。本実施の形態のカードIDは、記名式カードを発行した事業者(鉄道事業者等)を識別可能な事業者コードを含む。またカードIDは、乗車券のIDとも言え、定期乗車券のIDとも言える。日時フィールドには、利用者が記名式カードを自動改札機10のカード読取部にかざした日時、言い換えれば利用者が所持する記名式カードとの通信が行われた日時を示すタイムスタンプが格納される。鉄道会社フィールドおよび場所フィールドには、自動改札機10が設置された鉄道事業者名および駅名が格納される。
【0025】
不整合フラグフィールドには、後述の整合判定部72による判定処理において記名者と利用者とが不整合と判定された場合に、その旨を示すデータ(以下、「不整合フラグ」とも呼ぶ。)が設定される。顔画像フィールドには、後述の整合判定部72による判定処理において記名者と利用者とが不整合と判定された場合に、利用者の顔画像のデータが格納される。乗車記録の各フィールドのデータは、適宜コード化されたデータでもよく、暗号化されたデータでもよいことはもちろんである。
【0026】
図2に戻り、調整情報保持部46は、整合判定部72による判定処理において不整合が発生することを抑制するために、上記判定処理を調整するための情報(以下、「年齢調整情報」とも呼ぶ。)を保持する。具体的には、年齢調整情報として、乗車券IDと年齢調整値とを対応付けて保持する。年齢調整値は、具体的には記名式カードに記録された記名者の年齢を、整合判定部72による判定処理の際に増減させる数値であり、例えば「+5歳」や「−10歳」と設定される。
【0027】
外部I/F部50は、アンテナ部52と、カメラ部54と、LAN通信部56とを有する。アンテナ部52は、自動改札機10に対して利用者が提示した記名式カードと無線通信を行ってデータを送受するアンテナであり、利用者が記名式カードをかざす読取部として機能する。
【0028】
カメラ部54は、CCDイメージセンサ等の撮像素子を用いたデジタルカメラやビデオカメラであり、利用者を撮像する。カメラ部54は、利用者が記名式カードを自動改札機10のアンテナ部52にかざした際に、利用者の顔画像を撮像可能な自動改札機10上の位置および角度に設置される。LAN通信部56は、駅に構築されたLANを介して、窓口装置14や駅サーバ16とデータを送受する。
【0029】
データ処理部60は、読取/書込部62と、改札処理部64と、ドア制御部66と、画像処理部68と、利用者属性推定部70と、整合判定部72と、記録部74と、乗車記録通知部76と、調整情報取得部78とを有する。各機能ブロックで示す機能は、典型的には、各機能ブロックに対応するプログラムモジュールがCPUにより実行されることにより実現される。
【0030】
読取/書込部62は、アンテナ部52を介して、記名式カードに記録されたカードIDや、乗車券情報、記名者の性別および生年月日のデータを読み込む。また、乗車券情報の更新情報を記名式カードへ書き込む。ドア制御部66は、自動改札機10に設けられたドアの開閉を制御する。
【0031】
改札処理部64は、記名式カードから取得された乗車券情報にしたがって利用者の通過を許可するか否かを判定する。例えば、乗車券情報に含まれる定期区間の範囲に、自動改札機10が設置された駅が含まれる場合、利用者の通過を許可してもよい。改札処理部64は、利用者の通過を許可する場合、ドア制御部66を介して自動改札機10のドアを開状態にさせるとともに、乗車券情報の更新情報(典型的には駅構内への入場記録や駅構外への出場記録)を、読取/書込部62を介して記名式カードへ記録させる。利用者の通過を拒否する場合、ドア制御部66を介して自動改札機10のドアを閉状態にさせる。
【0032】
画像処理部68は、読取/書込部62において記名式カードからのデータが読み込まれたことを検出すると、カメラ部54において撮像された画像の中から顔画像としての所定の特徴を有する部分を抽出することにより、利用者の顔画像をキャプチャする。変形例として、利用者の顔の特徴情報を取得してもよい。
【0033】
利用者属性推定部70は、利用者の顔画像(もしくは利用者の顔の特徴情報)と、参照画像保持部42に保持された年齢層・性別ごとの参照画像とを比較・照合して、利用者の顔画像に整合する参照画像を特定する。例えば、予め定められた複数の顔の特徴部分について、利用者の顔画像と最も一致率が高い参照画像を、利用者の顔画像に整合する参照画像として特定してもよい。利用者属性推定部70は、特定した参照画像が対応する年齢層および性別を、利用者の年齢層および性別として推定する。
【0034】
整合判定部72は、読取/書込部62において取得された記名者の性別が、利用者属性推定部70において推定された利用者の性別と一致するか否かを判定する。不一致であれば、記名者と利用者は不整合であると判定する。
【0035】
記名者の性別と利用者の性別とが一致する場合、整合判定部72は引き続き、読取/書込部62において取得された記名者の生年月日により特定される記名者の年齢が、利用者属性推定部70において推定された利用者の年齢層と整合するか否かを判定する。その際、整合判定部72は、読取/書込部62において取得されたカードIDと対応づけられた年齢調整値が調整情報保持部46において保持されている場合、その年齢調整値にしたがって記名者の年齢を増減させ、増減後の記名者の年齢により判定する。
【0036】
例えば、記名者の年齢をa、利用者の年齢層をm歳以上n歳以下、年齢調整情報をs歳(sは正もしくは負の値)とする。この場合、整合判定部72は、m≦a+s≦nが成立すれば、記名者の年齢と利用者の年齢層とが整合するとして記名者と利用者は整合すると判定する。不成立であれば、記名者の年齢と利用者の年齢層とが不整合であるとして記名者と利用者は不整合と判定する。
【0037】
記録部74は、整合判定部72において記名者と利用者とが整合すると判定された場合、乗車記録保持部44の乗車記録のうちカードID・日時・鉄道会社・場所の各フィールドにデータを格納する。この乗車記録を以下では「整合乗車記録」とも呼ぶ。その一方、整合判定部72において記名者と利用者とが不整合と判定された場合、記録部74は、乗車記録保持部44の乗車記録のうちカードID・日時・鉄道会社・場所・不整合フラグ・顔画像の各フィールドにデータを格納する。顔画像フィールドには、カメラ部54において撮像された利用者の顔画像のデータを、不正利用の証左物(エビデンス)として格納する。この乗車記録を以下では「不整合乗車記録」とも呼ぶ。
【0038】
乗車記録通知部76は、乗車記録保持部44に保持された乗車記録(整合乗車記録および不整合乗車記録)のデータを定期的に取得し、LAN通信部56を介して駅サーバ16へアップロードする。調整情報取得部78は、LAN通信部56を介して、窓口装置14から送信された年齢調整情報を取得し、調整情報保持部46へ格納する。
【0039】
図4は、図1の駅サーバ16の機能構成を示すブロック図である。駅サーバ16は、乗車記録保持部80と、乗車記録取得部82と、不整合記録抽出部84と、不整合記録通知部86と、不整合記録取得部88と、エラー集計部90と、エラー情報通知部92とを有する。図1の駅サーバ26も同様の機能構成である。
【0040】
乗車記録保持部80は、自動改札機10で記録された乗車記録を保持する。乗車記録取得部82は、自動改札機10から送信された乗車記録のデータを取得して乗車記録保持部80へ格納する。不整合記録抽出部84は、乗車記録保持部80に格納された乗車記録のうち不整合フラグが設定された不整合乗車記録を定期的に抽出する。不整合記録通知部86は、不整合記録抽出部84において抽出された不整合乗車記録のデータを管理サーバ30へ送信する。
【0041】
不整合記録取得部88は、管理サーバ30から送信された不整合乗車記録を取得して乗車記録保持部80へ格納する。エラー集計部90は、乗車記録保持部80に格納された乗車記録のうち不整合乗車記録を定期的に参照して、同一のカードIDに対応づけられた不整合乗車記録のレコード数(以下、「不整合回数」とも呼ぶ。)を定期的に特定する。言い換えれば、各記名式カードが自動改札機10に提示された際に記名者と利用者とが不整合と判定された回数を不整合回数として特定する。エラー情報通知部92は、カードIDと不整合回数とを対応づけた情報(以下、「エラー情報」とも呼ぶ。)を自動券売機12および窓口装置14へ送信する。
【0042】
図5は、図1の管理サーバ30の機能構成を示すブロック図である。管理サーバ30は、不整合記録保持部100と、不整合記録取得部102と、振分け部104と、不整合記録通知部106とを有する。
【0043】
不整合記録保持部100は、自動改札機10や自動改札機20で記録された不整合乗車記録を、配信先の事業者ごとに異なる記憶領域(例えばテーブル)にて保持する。配信先の事業者は、記名式カードにおける定期乗車券情報を更新する事業者であり、典型的には記名式カードを発行した鉄道事業者であり、上述したようにカードIDによって識別される。不整合記録取得部102は、駅サーバ16および駅サーバ26から送信された不整合乗車記録を取得する。
【0044】
振分け部104は、不整合記録取得部102において取得された不整合乗車記録を不整合記録保持部100へ格納する。その際に、不整合乗車記録のカードIDにしたがって配信先の事業者を識別して、その事業者と予め対応づけられた記憶領域へ不整合乗車記録を格納する。不整合記録通知部106は、定期的に、不整合記録保持部100に格納された不整合乗車記録を配信先の事業者ごとに取得する。そして、配信先の事業者に対応する(配信先の事業者が運営する)駅の駅サーバ(例えば駅サーバ16や駅サーバ26)へ不整合乗車記録を送信する。
【0045】
図6は、図1の自動券売機12の機能構成を示すブロック図である。自動券売機12は、エラー情報保持部110と、エラー情報取得部112と、券売処理部114とを有する。図1の自動券売機22も同様の機能構成である。
【0046】
エラー情報保持部110は、駅サーバ16において設定されたエラー情報を保持する。エラー情報取得部112は、駅サーバ16から送信されたエラー情報を取得してエラー情報保持部110へ格納する。券売処理部114は所定の券売処理を実行する。この券売処理には、乗車券の販売処理や、記名式カードにアクセスして、その記名式カードにおける定期乗車券情報を更新する処理(例えば期間の延長)が含まれる。券売処理部114は、エラー判定部116を含む。エラー判定部116は、記名式カードにおける定期乗車券情報の更新要求が受け付けられた際、その記名式カードのカードIDと対応づけられたエラー情報をエラー情報保持部110にて保持する場合、更新処理を中止させる。そして、窓口での更新を促すメッセージを不図示の表示装置に表示させる。
【0047】
図7は、図1の窓口装置14の機能構成を示すブロック図である。窓口装置14は、エラー情報保持部120と、エラー情報取得部122と、窓口処理部124とを有する。図1の窓口装置24も同様の機能構成である。
【0048】
エラー情報保持部120は、駅サーバ16において設定されたエラー情報を保持する。エラー情報取得部122は、駅サーバ16から送信されたエラー情報を取得してエラー情報保持部120へ格納する。窓口処理部124は、駅の窓口担当者による窓口業務(駅務)に関する各種処理を実行する。この窓口業務の処理には、記名式カードにアクセスして、その記名式カードにおける定期乗車券情報を更新する処理(例えば期間の延長)が含まれる。窓口処理部124は、エラー判定部126と、不整合情報表示部128と、調整情報取得部130と、調整情報通知部132とを含む。
【0049】
エラー判定部126は、記名式カードにおける定期乗車券情報の更新要求が受け付けられた際、その記名式カードのカードIDと対応づけられたエラー情報をエラー情報保持部120にて保持する場合、更新処理を一旦停止させる。変形例として、カードIDと対応づけられたエラー情報においてエラー回数が所定回数以上であることを条件として、更新処理を停止させてもよい。
【0050】
不整合情報表示部128は、駅サーバ16の乗車記録保持部80から、記名式カードのカードIDと対応づけられた不整合乗車記録を取得して所定のディスプレイに表示させる。これにより、過去に記名者と利用者とが不整合と判定された事実を窓口担当者に確認させる。不整合乗車記録には不整合と判定された際の利用者の顔画像が含まれるため、窓口担当者は、その利用者の画像と、窓口にて記名式カードの更新を求める人(典型的には記名者)の外観を見比べて、その記名式カードの不正利用が行われたか否かを判断することができる。また、利用者の画像を記名者に提示して、不正利用の有無を問い質すこともできる。
【0051】
窓口担当者による確認の結果、問題が解消した(例えば、記名式カードの不正利用でないことが判明した、もしくは不正利用に対する対処が完了した)場合、窓口担当者は、その旨をキーボード等の所定の入力装置を介して入力する。窓口処理部124は、その入力を検出した場合、定期乗車券情報の更新処理を再開する。調整情報取得部130は、所定の入力装置に対して窓口担当者が入力した年齢調整値を取得する。調整情報通知部132は、調整情報取得部130において取得された年齢調整値と、処理対象の記名式カードにおけるカードIDとを対応づけた年齢調整情報を自動改札機10へ送信する。それとともに、調整情報通知部132は、年齢調整情報を他駅の自動改札機10(自動改札機20等)へも送信する。
【0052】
以上の構成による動作を以下説明する。
図8は、図1の自動改札機10の動作を示すフローチャートである。図1の自動改札機20の動作も同様である。
アンテナ部52が、自動改札機10の通過を求める利用者による記名式カードの提示を検出すると(S10のY)、読取/書込部62は、その記名式カードから、乗車券情報や、記名者の性別および生年月日を含む情報を取得する(S12)。画像処理部68は、カメラ部54において撮像された画像の中から利用者の顔画像を取得する(S14)。利用者属性推定部70は、利用者の顔画像と性別・年齢層ごとの参照画像とを照合することにより、利用者の性別および年齢層を推定する(S16)。整合判定部72は、年齢調整情報に応じて記名者の年齢を調整した上で、記名者の性別および年齢と、利用者の性別および年齢層とが整合するか否かを判定する(S18)。
【0053】
記名者の性別および年齢が利用者の性別および年齢層と整合する場合(S20のY)、記録部74は整合乗車記録を記録する(S22)。不整合であれば(S20のN)、利用者の顔画像を含む不整合乗車記録を記録する(S24)。改札処理部64は、記名式カードの乗車券情報にもとづき駅構内への利用者の通過可否を判定する。通過を許可する場合(S26のY)、ドア制御部66を介してドアを開状態とさせ(S28)、通過を拒否する場合(S26のN)、ドア制御部66を介してドアを閉状態とさせる(S30)。アンテナ部52に対する記名式カードの提示がなければ(S10のN)、S12〜S30はスキップされる。
【0054】
乗車記録通知部76は、予め定められた通知タイミングとなったことを検出すると(S32のY)、整合乗車記録および不整合乗車記録を駅サーバ16へ送信する(S34)。通知タイミングでなければ(S32のN)、S34はスキップされる。調整情報取得部78は、窓口装置14から年齢調整情報を取得すると(S36のY)、その年齢調整情報を調整情報保持部46へ格納する(S38)。年齢調整情報を受け付けなければ(S36のN)、S38はスキップされる。
【0055】
図8で示したように、改札処理部64は、記名者と利用者とが整合するか否かとは関わりなく、言い換えれば、整合判定部72における判定結果に依存することなく、利用者の通過許否を決定する。したがって、S14〜S24の処理とS26〜S30の処理との間に依存関係はなく、これらの処理は並行して実行されてもよい。また、S14〜S24の処理は、S26〜S30の実行後、すなわち利用者を通過させ、もしくは通過を拒否した後に、比較的低いスループットにて実行されてもよい。例えば、S14〜S24の処理に対するCPUの割当優先度を、少なくともS26〜S30の処理に対するCPUの割当優先度より低く設定してもよい。
【0056】
図9は、図1の駅サーバ16の動作を示すフローチャートである。図1の駅サーバ26も同様に動作する。
乗車記録取得部82は、自動改札機10から通知された乗車記録を受け付けると(S40のY)、その乗車記録を乗車記録保持部80へ格納する(S42)。乗車記録を受け付けなければ(S40のN)、S42はスキップされる。不整合記録抽出部84は、予め定められた通知タイミングになったことを検出すると(S44のY)、乗車記録保持部80に格納された不整合乗車記録を抽出し(S46)、不整合記録通知部86は不整合乗車記録を管理サーバ30へ送信する(S48)。通知タイミングでなければ(S44のN)、S46およびS48はスキップされる。
【0057】
不整合記録取得部88は、管理サーバ30から配信された不整合乗車記録を受け付けると(S50のY)、その不整合乗車記録を乗車記録保持部80へ格納する(S52)。不整合乗車記録を受け付けなければ(S50のN)、S52はスキップされる。エラー集計部90は、予め定められた通知タイミングになったことを検出すると(S54のY)、乗車記録保持部80に格納された不整合乗車記録を集計して、それぞれの記名カードの使用における不整合の発生状況を示すエラー情報を設定する(S56)。エラー情報通知部92は、エラー情報を自動券売機12および窓口装置14へ送信する(S58)。通知タイミングでなければ(S54のN)、S56およびS58はスキップされる。
【0058】
図10は、図1の管理サーバ30の動作を示すフローチャートである。
不整合記録取得部102が、駅サーバ16および駅サーバ26から通知された不整合乗車記録を受け付けると(S60のY)、振分け部104は、不整合乗車記録のそれぞれを、不整合記録保持部100における配信先の事業者ごとの記憶領域へ振分けて格納する(S62)。不整合乗車記録を受け付けなければ(S60のN)、S62はスキップされる。不整合記録通知部106は、予め定められた通知タイミングになったことを検出すると(S64のY)、不整合記録保持部100に格納された不整合乗車記録を、その不整合乗車記録が格納された記憶領域が割り当てられた事業者の駅サーバへ送信する(S66)。通知タイミングでなければ(S64のN)、S66はスキップされる。
【0059】
図11は、図1の窓口装置14の動作を示すフローチャートである。図1の窓口装置24も同様に動作する。
エラー情報取得部122は、駅サーバ16から通知されたエラー情報を受け付けると(S70のY)、そのエラー情報をエラー情報保持部120へ格納する(S72)。エラー情報を受け付けなければ(S70のN)、S72はスキップされる。窓口処理部124が、記名式カードの定期乗車券情報に対する更新要求を受け付けた場合(S74のY)、エラー判定部126は、記名式カードのカードIDを検索キーとしてエラー情報保持部120に格納されたエラー情報を検索する。そのカードIDがエラー情報内でヒットした場合(S76のY)、不整合情報表示部128は、そのカードIDと対応づけられた不整合乗車記録を駅サーバ16から取得して、不整合と判定された際の利用者の顔画像を含む不整合乗車記録を窓口装置14のディスプレイに表示させる(S78)。
【0060】
窓口担当者による確認の結果、記名式カードの定期乗車券情報の更新が可能と判断された旨の入力を検出すると(S80のY)、窓口処理部124は、定期券更新処理を継続して実行する(S82)。窓口担当者により定期乗車券情報の更新ができないと判断された旨の入力を検出すると(S80のN)、S82はスキップされて更新処理が中止される。記名式カードのカードIDがエラー情報内でヒットしなければ(S76のN)、S78およびS80はスキップされて定期券更新処理が継続して実行される。記名式カードの定期乗車券情報に対する更新要求を受け付けなければ(S74のN)、S76〜S82はスキップされる。調整情報取得部130が、窓口担当者により入力された年齢調整値を受け付けると(S84のY)、調整情報通知部132は、その年齢調整値を調整対象の記名者のカードIDと対応づけた年齢調整情報を各駅の自動改札機へ通知する(S86)。年齢調整値の入力を受け付けなければ(S84のN)、S86はスキップされる。
【0061】
図1の自動券売機12および自動券売機22の動作も、図11のS70〜S82と同様である。ただし、記名式カードのカードIDがエラー情報内でヒットした場合、券売処理部114のエラー判定部116は、定期乗車券情報の更新を駅窓口で行うことを促すためのメッセージを所定の表示装置に表示させて更新処理を中止する。
【0062】
ここで、図1を参照して不整合乗車記録の伝達例を説明する。この例において、記名式カードにはA駅〜B駅を定期区間とする定期乗車券情報が含まれ、その記名式カードは鉄道事業者βにより発行された、すなわち定期乗車券情報の更新主体は鉄道事業者βであることとする。A駅の自動改札機10で利用者と記名者の不整合が検出されると、その旨を示す不整合乗車記録は、自動改札機10〜駅サーバ16〜管理サーバ30と伝達される。管理サーバ30は、不整合乗車記録のカードIDにしたがって鉄道事業者βの駅サーバを配信対象とするため、その不整合乗車記録はB駅の駅サーバ26へ伝達され、その不整合乗車記録にもとづくエラー情報が自動券売機22および窓口装置24へ伝達される。これにより、記名式カードの定期乗車券情報が鉄道事業者βにおいて更新される際に、そのB駅の窓口担当者がA駅における記名式カードの不正利用の有無について、更新を要求した記名者に確認することができる。
【0063】
次に、年齢調整情報の伝達について詳細に説明する。ここでは説明を簡明化するため、年齢調整情報がA駅の窓口装置14からB駅の自動改札機20へ伝達されることを例として説明する。図4には不図示であるが、駅サーバ16(すなわち駅サーバ26)は、調整情報取得部および調整情報通知部をさらに備える。また図5には不図示であるが、管理サーバ30は、調整情報取得部および調整情報配信部をさらに備える。窓口装置14の調整情報通知部132は、年齢調整情報を自駅の自動改札機10へ送信するとともに、管理サーバ30へも送信する。管理サーバ30の調整情報取得部は窓口装置14から送信された年齢調整情報を取得して、管理サーバ30の調整情報配信部はその年齢調整情報を各駅の駅サーバ(この例では駅サーバ26)へ送信する。駅サーバ26の調整情報取得部は管理サーバ30から送信された年齢調整情報を取得して、駅サーバ26の調整情報通知部はその年齢調整情報を自駅の自動改札機(この例では自動改札機20)へ送信する。このように、1つの駅の窓口担当者により設定された年齢調整情報が各駅の自動改札機へ伝達される。
【0064】
本実施の形態の情報処理システム1000によれば、記名式カードを自動改札機に提示した利用者が記名者本人であることを改札において確認し、その結果を蓄積しておく。これにより、記名式カードを記名者以外の第三者が不正利用した場合、後日の定期券更新時に費用請求する等、記名式カードの不正利用に対して適切な処置を執ることができる。また、記名式カードを不正利用してもいずれ摘発されるという牽制効果を生じさせ、記名式カードの不正利用の発生そのものを抑制できる。その結果、鉄道事業者等の機会損失を低減することができる。また、その確認においては、記名式カードに一般的に記録される性別および年齢を、利用者の顔画像により推定した性別および年齢層と照合する。これにより、記名式カードおよびサーバのいずれにおいても記名者の個人情報である顔画像を管理する必要がなく、現状のセキュリティレベルで実現することができる。
【0065】
また、自動改札機10における改札処理は、記名者と利用者とが整合するか否かの判定結果に依存せずに実行され、記名者と利用者とが不整合であった場合は、記名式カードにおける定期乗車券情報が更新される際(いわゆる定期券の更新時)に窓口担当者によって不正利用の有無が判断される。これにより、自動改札機10が誤って不整合と判定した場合でも、その誤った判定結果にもとづき利用者(この場合は利用者=記名者)の通過を拒否することはなく、正当な利用者の利便性を低下させてしまうことを防止できる。また、不正利用か否かは、機械的な画像判定ではなく、人間の目によって判断されるため、誤った判断がなされてしまうことを回避しやすくなる。
【0066】
また、記名者と利用者の整合判定処理と改札処理とを相互に非依存の処理、言い換えれば独立して実行可能な処理とすることで、整合判定処理によって改札処理のレスポンスタイムを低下させてしまうことを回避できる。例えば、整合判定処理に対するCPUの割当時間を改札処理に対する割当時間より短くすることで、改札処理のレスポンスタイムを維持しやすくなる。また、朝の通勤・通学ラッシュ時等、改札処理に対して特にシビアなレスポンスタイムが求められる期間は、整合判定処理を非実行とするとともに、整合判定処理に必要なデータを一旦キュー(所定の記憶領域)に格納しておいてもよい。この場合、ラッシュ終了後に整合判定処理を開始させて不整合乗車記録を後追いにて設定させてもよい。不整合乗車記録が確認されるのは、後日の定期券更新時であるため、利用者の改札通過と不整合乗車記録の設定との間にタイムラグを生じても問題は発生しない。なお、各機能ブロックに対するハードウェア資源の割当を動的に調整し、また実行・非実行を制御する実行制御部を自動改札機10がさらに備えてもよいことはもちろんである。
【0067】
また、自動改札機10における利用者の年齢推定処理においては、利用者の顔画像を、運賃体系が異なる複数種類の年齢層それぞれにおける顔画像の特徴部分が示されたデータと照合する。これにより、利用者の顔画像に対して照合すべき参照画像数が低減され、効率的に年齢推定処理を実行できる。また、運賃体系が異なる年齢層間では顔画像の特徴の違いが比較的大きくなるため、利用者の年齢層の推定結果として妥当な結果を得やすくなる。また、鉄道事業者にとって損失が大きい例として、40代の会社員が子供の通学定期を不正利用することや、親のシルバー定期を不正利用することが考えられるが、このような不正利用においては不整合乗車記録が設定されるため、後日の確認および料金徴収が可能になる。
【0068】
また、利用者の画像と記名者の外観とを見比べて、記名式カードの不正利用の有無を判断した窓口担当者は、記名者と利用者の年齢が整合するか否かの判定処理を調整するための年齢調整値を設定する。この年齢調整値は窓口装置から各駅の自動改札機に伝達されて、以降の整合判定処理において使用される。このように、記名者の個性(見た目)に応じた年齢調整値が設定されることにより、特定の記名者に対して不整合の判定結果が頻発することを抑止しやすくなる。すなわち情報処理システム1000の運用において、記名者の個性に応じたチューニングを実現できる。
【0069】
また、各鉄道事業者は、情報処理システム1000の各装置を、駅単位、自動改札機単位に計画的・段階的に導入していくことができる。例えば、乗降客が多い大規模駅等、一部の駅から導入することもできる。また、一般的に記名式カードが記録する性別および年齢(または年齢を特定可能な生年月日)のみを記名者の属性として使用するため、既存の記名式カードの仕組みを流用でき、安価で容易な導入を実現できる。
【0070】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0071】
第1の変形例を説明する。上記実施の形態では、年齢調整情報は自動改札機に保持されることとしたが、変形例では、記名式カード内のメモリに保持されてもよい。この場合、窓口装置14の調整情報通知部132は、所定のカードライタを介して、年齢調整情報を記名式カードへ記録する。自動改札機10の通過を求める利用者による記名式カードの提示が検出されると、自動改札機10の読取/書込部62は、その記名式カードから、乗車券情報や、記名者の性別および生年月日を含む情報とともに、年齢調整情報を取得する。そして、整合判定部72は、年齢調整情報に応じて記名者の年齢を調整した上で、記名者と利用者が整合するかを判定する。なお、年齢調整情報を自動改札機側で保持するか、記名式カード側で保持するかは、鉄道会社や情報処理システム1000のシステム事業者等により適宜決定されてよい。
【0072】
第2の変形例を説明する。上記実施の形態では、自動改札機10の整合判定部72における判定処理を調整する情報として年齢調整情報を示したが、この調整する情報には性別が含まれてもよい。以下では、これまでの「年齢調整情報」を「調整情報」と呼ぶ。窓口担当者は、定期乗車券の更新タイミングで、記名者の性別を調整情報として入力し、窓口装置14の調整情報通知部132はその調整情報を各駅の自動改札機へ通知する。整合判定部72は、調整情報に性別が含まれる場合、利用者属性推定部70による性別の推定結果にかかわらず調整情報の性別を適用し(言い換えれば、推定結果の性別を調整情報の性別へ置き換え)、記名者と利用者が整合するか否かを判定する。この場合、記名者の性別と利用者の性別は常に一致することになるため、性別を示す調整情報は記名者の性別と利用者の性別との整合判定をスキップすべき旨を示す情報であってもよい。整合判定部72は、そのスキップすべき旨を示す情報が調整情報に含まれる場合、記名者の性別と利用者の性別との整合判定をスキップして、年齢層の整合判定のみを実行してもよい。この変形例によれば、記名者の個性(見た目)に応じた性別の調整情報が設定されることにより、特定の記名者に対して不整合の判定結果が頻発することを抑止しやすくなる。
【0073】
第3の変形例を説明する。上記実施の形態では、調整情報(年齢調整情報)が設定されるタイミングは、記名式カードの定期乗車券の更新タイミングであることとした。変形例では、調整情報は、記名式カードの新規購入時、例えば定期乗車券の新規購入時に設定されてもよい。この場合、記名式カードの新規購入(定期乗車券の新規購入)を受け付けた窓口担当者は、記名者を目視確認して、性別や年齢等の調整情報を窓口装置14へ入力し、窓口装置14の調整情報通知部132はその調整情報を各駅の自動改札機へ通知する。記名式カードの新規購入時に調整情報が設定されることにより、以降、特定の記名者(例えば社会人学生や見た目で年齢の判別が困難な利用者等)に対して不整合の判定結果が頻発することを抑止しやすくなり、また、記名式カードの更新時(定期乗車券更新時)の窓口業務の負担を軽減できる。
【0074】
上述した実施の形態、変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施の形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態、変形例それぞれの効果をあわせもつ。
【0075】
請求項に記載の各構成要件が果たすべき機能は、実施の形態および変形例において示された各構成要素の単体もしくはそれらの連係によって実現されることも当業者には理解されるところである。
【符号の説明】
【0076】
10,20 自動改札機、 16,26 駅サーバ、 30 管理サーバ、 54 カメラ部、 62 読取/書込部、 64 改札処理部、 70 利用者属性推定部、 72 整合判定部、 74 記録部、 106 不整合記録通知部、 1000 情報処理システム。
【技術分野】
【0001】
本発明はデータ処理技術に関し、特に、自動改札機および自動改札機を備える情報処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、駅などの交通機関の出入口に設置される自動改札機では、改札処理の高速化等を実現するため、磁気式の乗車券媒体に代わって、無線式の乗車券媒体としての記名式のICカード(以下、「記名式カード」とも呼ぶ。)を処理するものが普及している。このような自動改札装置は、利用者により提示される記名式カードと無線による通信を行うことにより、その記名式カードに記録されている乗車券情報に基づいて、利用者の通行(例えば、駅構内への入場または駅構外への出場)の可否を判定する。
【0003】
以下の特許文献1では、記名式カードを自動改札機に提示した利用者が、記名式カードの記名者本人であることを確認するために、記名式カードに記録された記名者の顔画像と、利用者を撮像して得られた利用者の顔画像とを照合して、その照合結果に基づいて利用者の通行を制御する自動改札機を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−268144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、顔画像は個人情報の最たるものと言え、予め記録された記名者の顔画像が第三者へ漏洩した場合、大きな問題となりうる。そのため、記名者の顔画像を予め保持する方式では、顔画像のデータ管理に非常に高いセキュリティが要求されることになる。本発明者は、記名式カードを自動改札機に提示した利用者が記名者本人であることを確認するための処理を簡便化する点について改善の余地があると考えた。
【0006】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、記名式カードを自動改札機に提示した利用者が記名者本人であることを確認するための処理を簡便化する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の自動改札機は、利用者が提示する記名式の乗車券媒体に記録された乗車券情報にしたがって改札処理を実行する改札処理部と、利用者の顔画像を撮像する撮像部と、利用者の顔画像を、年齢に対する顔画像の特徴部分が示されたデータと照合することにより、利用者の年齢を推定する推定部と、乗車券媒体から、記名者の年齢を示す情報を読み出す取得部と、推定部において推定した利用者の年齢が、取得部において読み出した記名者の年齢と整合するか否かを判定する判定部と、判定部において不整合の判定結果となった場合、利用者の年齢が記名者の年齢と不整合である旨を、乗車券媒体の乗車券情報の定期的な更新の際に確認されるべき情報として記録する記録部と、を備える。
【0008】
本発明の別の態様は、情報処理システムである。この情報処理システムは、自動改札機と情報管理装置とを備える。自動改札機は、利用者が提示する記名式の乗車券媒体に記録された乗車券情報にしたがって改札処理を実行する改札処理部と、利用者の顔画像を撮像する撮像部と、利用者の顔画像を、年齢に対する顔画像の特徴部分が示されたデータと照合することにより、利用者の年齢を推定する推定部と、乗車券媒体から、記名者の年齢を示す情報を読み出す取得部と、推定部において推定した利用者の年齢が、取得部において読み出した記名者の年齢と整合するか否かを判定する判定部と、判定部において不整合の判定結果となった場合、利用者の年齢が記名者の年齢と不整合である旨を記録する記録部と、を含む。情報管理装置は、乗車券媒体の乗車券情報の定期的な更新の際にその更新を行う事業者に確認させるために、その事業者に対して不整合である旨を通知する通知部を含む。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を装置、方法、システム、プログラム、プログラムを格納した記録媒体などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、記名式カードを自動改札機に提示した利用者が記名者本人であることを確認するための処理を簡便化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施の形態の情報処理システムの構成を示す図である。
【図2】図1の自動改札機の機能構成を示すブロック図である。
【図3】乗車記録のデータ構成を示す図である。
【図4】図1の駅サーバの機能構成を示すブロック図である。
【図5】図1の管理サーバの機能構成を示すブロック図である。
【図6】図1の自動券売機の機能構成を示すブロック図である。
【図7】図1の窓口装置の機能構成を示すブロック図である。
【図8】図1の自動改札機の動作を示すフローチャートである。
【図9】図1の駅サーバの動作を示すフローチャートである。
【図10】図1の管理サーバの動作を示すフローチャートである。
【図11】図1の窓口装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態の構成を説明する前に、まず概要を説明する。
これまでの自動改札機では、典型的に以下のシナリオが実行されていた。
(1)自動改札の通過を求める利用者は、自動改札機のカード読取部に記名式カードをかざす。
(2)自動改札機は、記名式カードに記録された乗車券としての情報(例えば定期区間や、定期の期限、チャージ金額を示す情報であり、以下では「乗車券情報」とも呼ぶ。)を読み込む。
(3)自動改札機は、読み込んだ乗車券情報にもとづき課金処理や不正乗車のチェックを行う。
(4)自動改札機は、乗車券情報に問題がなければ(チャージ金額の減算により問題が解消した場合も含む)、ドアを開けた状態として利用者を通過させる。問題があれば、ドアを閉じた状態として利用者の通過を拒否する。
【0013】
これまでの自動改札機では、記名式カードを記名者以外の第三者(例えば家族や友人)が不正に使用しても、その不正を発見することは困難であった。鉄道事業者側から見ると、本来得られるはずの利益を得られない問題、いわば機会損失が発生していた。
【0014】
また、上述の特開2006−268144号公報では、記名式カードを自動改札機に提示した利用者が、記名式カードの記名者本人であることを確認するために、記名式カードに記録された記名者の顔画像と、利用者を撮像して得られた利用者の顔画像とを照合して、その照合結果に基づいて利用者の通行を制御する自動改札機が提案されている。しかし、顔画像は、他人が記名者を容易に特定できる等の観点から、指紋以上に個人情報の最たるものであると言え、予め記録された記名者の顔画像が悪意のある第三者へ漏洩した場合、大きな問題となりうる。そのため、記名者の顔画像を予め保持する方式では、顔画像のデータ管理に非常に高いセキュリティが要求されることになる。また、記名式カードの作成時に記名者の顔写真が必要となり、記名者の負担を増大させてしまう。
【0015】
そこで本実施の形態では、記名式カードを自動改札機に提示した利用者が、その記名式カードにおける記名者本人であることを確認可能にしつつも、その確認処理を簡便化する技術を提案する。具体的には、以下のシナリオを実行する。
【0016】
(1)利用者は、自動改札機のカード読取部に記名式カードをかざす。
(2)自動改札機は、記名式カードに記録された乗車券情報と、記名者の性別および生年月日を読み込む。
(3)自動改札機は、読み込んだ乗車券情報にもとづき課金処理や不正乗車のチェックを行う。
(4)自動改札機は、自身に取り付けられたカメラで利用者を撮像することにより、利用者の顔画像を取得する。
(5)自動改札機は、利用者の顔画像から利用者の性別および年齢層を推定する。
(6)自動改札機は、記名者の性別および生年月日と、利用者の性別および年齢層が整合するか否かをチェックする。
(7)記名者と利用者とが不整合である場合は、その旨を示す情報であり、利用者の顔画像を含む不整合情報を記録する。
(8)記名者と利用者とが整合するか否かにかかわらず、乗車券情報に問題がなければ、ドアを開けた状態として利用者を通過させる。乗車券情報に問題があれば、ドアを閉じた状態として利用者の通過を拒否する。
(9)蓄積された不整合情報は、記名式カードの乗車券情報(典型的には定期乗車券の情報)を更新する際に、その更新を行う装置や担当者により確認される。
【0017】
これにより、記名式カードが不正利用された場合、不整合情報が蓄積され、自動速度違反取締装置のように後日の確認が可能になる。例えば、記名式カードにおける定期乗車券の更新時に窓口担当者が不正利用について問い質すことができる。これにより、記名式カードを他人が不正利用することを抑止して、鉄道事業者の機会損失を低減する。また、記名者の生年月日は現在、一般的に記名式カードに記録されるものであり、記名式カードにおける現状のセキュリティレベルにて運用することができる。
【0018】
図1は、実施の形態の情報処理システムの構成を示す。情報処理システム1000は、鉄道事業者αのA駅に設置された自動改札機10と、自動券売機12と、窓口装置14と、駅サーバ16と、NW機器18と、鉄道事業者βのB駅に設置された自動改札機20と、自動券売機22と、窓口装置24と、駅サーバ26と、NW機器28と、データセンタに設置された管理サーバ30とNW機器32とを備える。
【0019】
自動改札機10および自動改札機20は、駅構内へ入場する利用者や駅構外へ出場する利用者から記名式カードの提示を受け付けて、記名式カードの記録データにもとづいて改札処理を実行する。本実施の形態の記名式カードには、乗車券情報と、記名者の性別および生年月日とが少なくとも記録されていることとする。自動券売機12および自動券売機22は、乗車券の販売処理や記名式カードに対するチャージ処理、さらに記名式カードに記録された乗車券情報、典型的には定期乗車券情報の更新処理(期間延長等)を実行する。窓口装置14および窓口装置24は、駅の窓口担当者により操作される情報端末であり、各種駅務処理、例えば記名式カードに記録された定期乗車券情報の更新処理(期間延長等)を実行する。
【0020】
駅サーバ16および駅サーバ26は、各駅に設置された駅務機器(例えば自動改札機、自動券売機、窓口装置等)から通知された情報を集約・集計して保持する。そして、保持する情報を適宜管理サーバ30へ通知する。また、管理サーバ30から提供された各種情報を取得して、適宜駅務機器へ通知する。管理サーバ30は、各駅に設置された駅サーバから通知された情報を集約・集計して保持する。そして、保持する情報を適宜駅サーバへ通知する。これらの各装置は、LANやWAN、インターネット等を含む通信網や、NW機器18、NW機器28、NW機器32を介して相互に接続される。
【0021】
図2は、図1の自動改札機10の機能構成を示すブロック図である。自動改札機10は、各種データを記憶する記憶領域であるデータ保持部40と、外部とのインタフェース機能を提供する外部I/F部50と、データ保持部40において保持され、もしくは外部I/F部50において取得されたデータに基づいて各種データ処理を実行するデータ処理部60とを備える。図1の自動改札機20も同様の機能構成である。
【0022】
本明細書のブロック図において示される各ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのCPUをはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。例えば、図2の各機能ブロックは、ソフトウェアとして記録媒体に格納され、自動改札機10の外部記憶装置にインストールされ、自動改札機10のメインメモリに適宜読み出されてCPUにて実行されてもよい。
【0023】
データ保持部40は、参照画像保持部42と、乗車記録保持部44と、調整情報保持部46とを有する。参照画像保持部42は、運賃体系(例えば定期乗車券の料金体系)が異なる複数種類の年齢層と性別との組み合わせについて、各組み合わせにおける顔画像の特徴部分が示されたデータ(以下単に、「年齢層・性別ごとの参照画像」とも呼ぶ。)を保持する。年齢層・性別ごとの参照画像は、例えば、シルバー料金が適用される70歳以上の年齢層、通勤料金が適用される23歳以上69歳以下の年齢層、通学料金が適用される13歳以上22歳以下の年齢層、小児料金が適用される6歳以上12歳以下の年齢層について、各年齢層における男女それぞれの典型的な顔画像の特徴を示すデータであってもよい。また、各年齢層における男女それぞれの典型的な顔画像そのもののデータであってもよい。
【0024】
乗車記録保持部44は、利用者が記名式カードを提示した履歴を示す情報(以下、「乗車記録」とも呼ぶ。)を保持する。図3は、乗車記録のデータ構成を示す。同図のカードIDフィールドには、記名式カードを一意に特定可能なID(以下、「カードID」とも呼ぶ。)が格納される。本実施の形態のカードIDは、記名式カードを発行した事業者(鉄道事業者等)を識別可能な事業者コードを含む。またカードIDは、乗車券のIDとも言え、定期乗車券のIDとも言える。日時フィールドには、利用者が記名式カードを自動改札機10のカード読取部にかざした日時、言い換えれば利用者が所持する記名式カードとの通信が行われた日時を示すタイムスタンプが格納される。鉄道会社フィールドおよび場所フィールドには、自動改札機10が設置された鉄道事業者名および駅名が格納される。
【0025】
不整合フラグフィールドには、後述の整合判定部72による判定処理において記名者と利用者とが不整合と判定された場合に、その旨を示すデータ(以下、「不整合フラグ」とも呼ぶ。)が設定される。顔画像フィールドには、後述の整合判定部72による判定処理において記名者と利用者とが不整合と判定された場合に、利用者の顔画像のデータが格納される。乗車記録の各フィールドのデータは、適宜コード化されたデータでもよく、暗号化されたデータでもよいことはもちろんである。
【0026】
図2に戻り、調整情報保持部46は、整合判定部72による判定処理において不整合が発生することを抑制するために、上記判定処理を調整するための情報(以下、「年齢調整情報」とも呼ぶ。)を保持する。具体的には、年齢調整情報として、乗車券IDと年齢調整値とを対応付けて保持する。年齢調整値は、具体的には記名式カードに記録された記名者の年齢を、整合判定部72による判定処理の際に増減させる数値であり、例えば「+5歳」や「−10歳」と設定される。
【0027】
外部I/F部50は、アンテナ部52と、カメラ部54と、LAN通信部56とを有する。アンテナ部52は、自動改札機10に対して利用者が提示した記名式カードと無線通信を行ってデータを送受するアンテナであり、利用者が記名式カードをかざす読取部として機能する。
【0028】
カメラ部54は、CCDイメージセンサ等の撮像素子を用いたデジタルカメラやビデオカメラであり、利用者を撮像する。カメラ部54は、利用者が記名式カードを自動改札機10のアンテナ部52にかざした際に、利用者の顔画像を撮像可能な自動改札機10上の位置および角度に設置される。LAN通信部56は、駅に構築されたLANを介して、窓口装置14や駅サーバ16とデータを送受する。
【0029】
データ処理部60は、読取/書込部62と、改札処理部64と、ドア制御部66と、画像処理部68と、利用者属性推定部70と、整合判定部72と、記録部74と、乗車記録通知部76と、調整情報取得部78とを有する。各機能ブロックで示す機能は、典型的には、各機能ブロックに対応するプログラムモジュールがCPUにより実行されることにより実現される。
【0030】
読取/書込部62は、アンテナ部52を介して、記名式カードに記録されたカードIDや、乗車券情報、記名者の性別および生年月日のデータを読み込む。また、乗車券情報の更新情報を記名式カードへ書き込む。ドア制御部66は、自動改札機10に設けられたドアの開閉を制御する。
【0031】
改札処理部64は、記名式カードから取得された乗車券情報にしたがって利用者の通過を許可するか否かを判定する。例えば、乗車券情報に含まれる定期区間の範囲に、自動改札機10が設置された駅が含まれる場合、利用者の通過を許可してもよい。改札処理部64は、利用者の通過を許可する場合、ドア制御部66を介して自動改札機10のドアを開状態にさせるとともに、乗車券情報の更新情報(典型的には駅構内への入場記録や駅構外への出場記録)を、読取/書込部62を介して記名式カードへ記録させる。利用者の通過を拒否する場合、ドア制御部66を介して自動改札機10のドアを閉状態にさせる。
【0032】
画像処理部68は、読取/書込部62において記名式カードからのデータが読み込まれたことを検出すると、カメラ部54において撮像された画像の中から顔画像としての所定の特徴を有する部分を抽出することにより、利用者の顔画像をキャプチャする。変形例として、利用者の顔の特徴情報を取得してもよい。
【0033】
利用者属性推定部70は、利用者の顔画像(もしくは利用者の顔の特徴情報)と、参照画像保持部42に保持された年齢層・性別ごとの参照画像とを比較・照合して、利用者の顔画像に整合する参照画像を特定する。例えば、予め定められた複数の顔の特徴部分について、利用者の顔画像と最も一致率が高い参照画像を、利用者の顔画像に整合する参照画像として特定してもよい。利用者属性推定部70は、特定した参照画像が対応する年齢層および性別を、利用者の年齢層および性別として推定する。
【0034】
整合判定部72は、読取/書込部62において取得された記名者の性別が、利用者属性推定部70において推定された利用者の性別と一致するか否かを判定する。不一致であれば、記名者と利用者は不整合であると判定する。
【0035】
記名者の性別と利用者の性別とが一致する場合、整合判定部72は引き続き、読取/書込部62において取得された記名者の生年月日により特定される記名者の年齢が、利用者属性推定部70において推定された利用者の年齢層と整合するか否かを判定する。その際、整合判定部72は、読取/書込部62において取得されたカードIDと対応づけられた年齢調整値が調整情報保持部46において保持されている場合、その年齢調整値にしたがって記名者の年齢を増減させ、増減後の記名者の年齢により判定する。
【0036】
例えば、記名者の年齢をa、利用者の年齢層をm歳以上n歳以下、年齢調整情報をs歳(sは正もしくは負の値)とする。この場合、整合判定部72は、m≦a+s≦nが成立すれば、記名者の年齢と利用者の年齢層とが整合するとして記名者と利用者は整合すると判定する。不成立であれば、記名者の年齢と利用者の年齢層とが不整合であるとして記名者と利用者は不整合と判定する。
【0037】
記録部74は、整合判定部72において記名者と利用者とが整合すると判定された場合、乗車記録保持部44の乗車記録のうちカードID・日時・鉄道会社・場所の各フィールドにデータを格納する。この乗車記録を以下では「整合乗車記録」とも呼ぶ。その一方、整合判定部72において記名者と利用者とが不整合と判定された場合、記録部74は、乗車記録保持部44の乗車記録のうちカードID・日時・鉄道会社・場所・不整合フラグ・顔画像の各フィールドにデータを格納する。顔画像フィールドには、カメラ部54において撮像された利用者の顔画像のデータを、不正利用の証左物(エビデンス)として格納する。この乗車記録を以下では「不整合乗車記録」とも呼ぶ。
【0038】
乗車記録通知部76は、乗車記録保持部44に保持された乗車記録(整合乗車記録および不整合乗車記録)のデータを定期的に取得し、LAN通信部56を介して駅サーバ16へアップロードする。調整情報取得部78は、LAN通信部56を介して、窓口装置14から送信された年齢調整情報を取得し、調整情報保持部46へ格納する。
【0039】
図4は、図1の駅サーバ16の機能構成を示すブロック図である。駅サーバ16は、乗車記録保持部80と、乗車記録取得部82と、不整合記録抽出部84と、不整合記録通知部86と、不整合記録取得部88と、エラー集計部90と、エラー情報通知部92とを有する。図1の駅サーバ26も同様の機能構成である。
【0040】
乗車記録保持部80は、自動改札機10で記録された乗車記録を保持する。乗車記録取得部82は、自動改札機10から送信された乗車記録のデータを取得して乗車記録保持部80へ格納する。不整合記録抽出部84は、乗車記録保持部80に格納された乗車記録のうち不整合フラグが設定された不整合乗車記録を定期的に抽出する。不整合記録通知部86は、不整合記録抽出部84において抽出された不整合乗車記録のデータを管理サーバ30へ送信する。
【0041】
不整合記録取得部88は、管理サーバ30から送信された不整合乗車記録を取得して乗車記録保持部80へ格納する。エラー集計部90は、乗車記録保持部80に格納された乗車記録のうち不整合乗車記録を定期的に参照して、同一のカードIDに対応づけられた不整合乗車記録のレコード数(以下、「不整合回数」とも呼ぶ。)を定期的に特定する。言い換えれば、各記名式カードが自動改札機10に提示された際に記名者と利用者とが不整合と判定された回数を不整合回数として特定する。エラー情報通知部92は、カードIDと不整合回数とを対応づけた情報(以下、「エラー情報」とも呼ぶ。)を自動券売機12および窓口装置14へ送信する。
【0042】
図5は、図1の管理サーバ30の機能構成を示すブロック図である。管理サーバ30は、不整合記録保持部100と、不整合記録取得部102と、振分け部104と、不整合記録通知部106とを有する。
【0043】
不整合記録保持部100は、自動改札機10や自動改札機20で記録された不整合乗車記録を、配信先の事業者ごとに異なる記憶領域(例えばテーブル)にて保持する。配信先の事業者は、記名式カードにおける定期乗車券情報を更新する事業者であり、典型的には記名式カードを発行した鉄道事業者であり、上述したようにカードIDによって識別される。不整合記録取得部102は、駅サーバ16および駅サーバ26から送信された不整合乗車記録を取得する。
【0044】
振分け部104は、不整合記録取得部102において取得された不整合乗車記録を不整合記録保持部100へ格納する。その際に、不整合乗車記録のカードIDにしたがって配信先の事業者を識別して、その事業者と予め対応づけられた記憶領域へ不整合乗車記録を格納する。不整合記録通知部106は、定期的に、不整合記録保持部100に格納された不整合乗車記録を配信先の事業者ごとに取得する。そして、配信先の事業者に対応する(配信先の事業者が運営する)駅の駅サーバ(例えば駅サーバ16や駅サーバ26)へ不整合乗車記録を送信する。
【0045】
図6は、図1の自動券売機12の機能構成を示すブロック図である。自動券売機12は、エラー情報保持部110と、エラー情報取得部112と、券売処理部114とを有する。図1の自動券売機22も同様の機能構成である。
【0046】
エラー情報保持部110は、駅サーバ16において設定されたエラー情報を保持する。エラー情報取得部112は、駅サーバ16から送信されたエラー情報を取得してエラー情報保持部110へ格納する。券売処理部114は所定の券売処理を実行する。この券売処理には、乗車券の販売処理や、記名式カードにアクセスして、その記名式カードにおける定期乗車券情報を更新する処理(例えば期間の延長)が含まれる。券売処理部114は、エラー判定部116を含む。エラー判定部116は、記名式カードにおける定期乗車券情報の更新要求が受け付けられた際、その記名式カードのカードIDと対応づけられたエラー情報をエラー情報保持部110にて保持する場合、更新処理を中止させる。そして、窓口での更新を促すメッセージを不図示の表示装置に表示させる。
【0047】
図7は、図1の窓口装置14の機能構成を示すブロック図である。窓口装置14は、エラー情報保持部120と、エラー情報取得部122と、窓口処理部124とを有する。図1の窓口装置24も同様の機能構成である。
【0048】
エラー情報保持部120は、駅サーバ16において設定されたエラー情報を保持する。エラー情報取得部122は、駅サーバ16から送信されたエラー情報を取得してエラー情報保持部120へ格納する。窓口処理部124は、駅の窓口担当者による窓口業務(駅務)に関する各種処理を実行する。この窓口業務の処理には、記名式カードにアクセスして、その記名式カードにおける定期乗車券情報を更新する処理(例えば期間の延長)が含まれる。窓口処理部124は、エラー判定部126と、不整合情報表示部128と、調整情報取得部130と、調整情報通知部132とを含む。
【0049】
エラー判定部126は、記名式カードにおける定期乗車券情報の更新要求が受け付けられた際、その記名式カードのカードIDと対応づけられたエラー情報をエラー情報保持部120にて保持する場合、更新処理を一旦停止させる。変形例として、カードIDと対応づけられたエラー情報においてエラー回数が所定回数以上であることを条件として、更新処理を停止させてもよい。
【0050】
不整合情報表示部128は、駅サーバ16の乗車記録保持部80から、記名式カードのカードIDと対応づけられた不整合乗車記録を取得して所定のディスプレイに表示させる。これにより、過去に記名者と利用者とが不整合と判定された事実を窓口担当者に確認させる。不整合乗車記録には不整合と判定された際の利用者の顔画像が含まれるため、窓口担当者は、その利用者の画像と、窓口にて記名式カードの更新を求める人(典型的には記名者)の外観を見比べて、その記名式カードの不正利用が行われたか否かを判断することができる。また、利用者の画像を記名者に提示して、不正利用の有無を問い質すこともできる。
【0051】
窓口担当者による確認の結果、問題が解消した(例えば、記名式カードの不正利用でないことが判明した、もしくは不正利用に対する対処が完了した)場合、窓口担当者は、その旨をキーボード等の所定の入力装置を介して入力する。窓口処理部124は、その入力を検出した場合、定期乗車券情報の更新処理を再開する。調整情報取得部130は、所定の入力装置に対して窓口担当者が入力した年齢調整値を取得する。調整情報通知部132は、調整情報取得部130において取得された年齢調整値と、処理対象の記名式カードにおけるカードIDとを対応づけた年齢調整情報を自動改札機10へ送信する。それとともに、調整情報通知部132は、年齢調整情報を他駅の自動改札機10(自動改札機20等)へも送信する。
【0052】
以上の構成による動作を以下説明する。
図8は、図1の自動改札機10の動作を示すフローチャートである。図1の自動改札機20の動作も同様である。
アンテナ部52が、自動改札機10の通過を求める利用者による記名式カードの提示を検出すると(S10のY)、読取/書込部62は、その記名式カードから、乗車券情報や、記名者の性別および生年月日を含む情報を取得する(S12)。画像処理部68は、カメラ部54において撮像された画像の中から利用者の顔画像を取得する(S14)。利用者属性推定部70は、利用者の顔画像と性別・年齢層ごとの参照画像とを照合することにより、利用者の性別および年齢層を推定する(S16)。整合判定部72は、年齢調整情報に応じて記名者の年齢を調整した上で、記名者の性別および年齢と、利用者の性別および年齢層とが整合するか否かを判定する(S18)。
【0053】
記名者の性別および年齢が利用者の性別および年齢層と整合する場合(S20のY)、記録部74は整合乗車記録を記録する(S22)。不整合であれば(S20のN)、利用者の顔画像を含む不整合乗車記録を記録する(S24)。改札処理部64は、記名式カードの乗車券情報にもとづき駅構内への利用者の通過可否を判定する。通過を許可する場合(S26のY)、ドア制御部66を介してドアを開状態とさせ(S28)、通過を拒否する場合(S26のN)、ドア制御部66を介してドアを閉状態とさせる(S30)。アンテナ部52に対する記名式カードの提示がなければ(S10のN)、S12〜S30はスキップされる。
【0054】
乗車記録通知部76は、予め定められた通知タイミングとなったことを検出すると(S32のY)、整合乗車記録および不整合乗車記録を駅サーバ16へ送信する(S34)。通知タイミングでなければ(S32のN)、S34はスキップされる。調整情報取得部78は、窓口装置14から年齢調整情報を取得すると(S36のY)、その年齢調整情報を調整情報保持部46へ格納する(S38)。年齢調整情報を受け付けなければ(S36のN)、S38はスキップされる。
【0055】
図8で示したように、改札処理部64は、記名者と利用者とが整合するか否かとは関わりなく、言い換えれば、整合判定部72における判定結果に依存することなく、利用者の通過許否を決定する。したがって、S14〜S24の処理とS26〜S30の処理との間に依存関係はなく、これらの処理は並行して実行されてもよい。また、S14〜S24の処理は、S26〜S30の実行後、すなわち利用者を通過させ、もしくは通過を拒否した後に、比較的低いスループットにて実行されてもよい。例えば、S14〜S24の処理に対するCPUの割当優先度を、少なくともS26〜S30の処理に対するCPUの割当優先度より低く設定してもよい。
【0056】
図9は、図1の駅サーバ16の動作を示すフローチャートである。図1の駅サーバ26も同様に動作する。
乗車記録取得部82は、自動改札機10から通知された乗車記録を受け付けると(S40のY)、その乗車記録を乗車記録保持部80へ格納する(S42)。乗車記録を受け付けなければ(S40のN)、S42はスキップされる。不整合記録抽出部84は、予め定められた通知タイミングになったことを検出すると(S44のY)、乗車記録保持部80に格納された不整合乗車記録を抽出し(S46)、不整合記録通知部86は不整合乗車記録を管理サーバ30へ送信する(S48)。通知タイミングでなければ(S44のN)、S46およびS48はスキップされる。
【0057】
不整合記録取得部88は、管理サーバ30から配信された不整合乗車記録を受け付けると(S50のY)、その不整合乗車記録を乗車記録保持部80へ格納する(S52)。不整合乗車記録を受け付けなければ(S50のN)、S52はスキップされる。エラー集計部90は、予め定められた通知タイミングになったことを検出すると(S54のY)、乗車記録保持部80に格納された不整合乗車記録を集計して、それぞれの記名カードの使用における不整合の発生状況を示すエラー情報を設定する(S56)。エラー情報通知部92は、エラー情報を自動券売機12および窓口装置14へ送信する(S58)。通知タイミングでなければ(S54のN)、S56およびS58はスキップされる。
【0058】
図10は、図1の管理サーバ30の動作を示すフローチャートである。
不整合記録取得部102が、駅サーバ16および駅サーバ26から通知された不整合乗車記録を受け付けると(S60のY)、振分け部104は、不整合乗車記録のそれぞれを、不整合記録保持部100における配信先の事業者ごとの記憶領域へ振分けて格納する(S62)。不整合乗車記録を受け付けなければ(S60のN)、S62はスキップされる。不整合記録通知部106は、予め定められた通知タイミングになったことを検出すると(S64のY)、不整合記録保持部100に格納された不整合乗車記録を、その不整合乗車記録が格納された記憶領域が割り当てられた事業者の駅サーバへ送信する(S66)。通知タイミングでなければ(S64のN)、S66はスキップされる。
【0059】
図11は、図1の窓口装置14の動作を示すフローチャートである。図1の窓口装置24も同様に動作する。
エラー情報取得部122は、駅サーバ16から通知されたエラー情報を受け付けると(S70のY)、そのエラー情報をエラー情報保持部120へ格納する(S72)。エラー情報を受け付けなければ(S70のN)、S72はスキップされる。窓口処理部124が、記名式カードの定期乗車券情報に対する更新要求を受け付けた場合(S74のY)、エラー判定部126は、記名式カードのカードIDを検索キーとしてエラー情報保持部120に格納されたエラー情報を検索する。そのカードIDがエラー情報内でヒットした場合(S76のY)、不整合情報表示部128は、そのカードIDと対応づけられた不整合乗車記録を駅サーバ16から取得して、不整合と判定された際の利用者の顔画像を含む不整合乗車記録を窓口装置14のディスプレイに表示させる(S78)。
【0060】
窓口担当者による確認の結果、記名式カードの定期乗車券情報の更新が可能と判断された旨の入力を検出すると(S80のY)、窓口処理部124は、定期券更新処理を継続して実行する(S82)。窓口担当者により定期乗車券情報の更新ができないと判断された旨の入力を検出すると(S80のN)、S82はスキップされて更新処理が中止される。記名式カードのカードIDがエラー情報内でヒットしなければ(S76のN)、S78およびS80はスキップされて定期券更新処理が継続して実行される。記名式カードの定期乗車券情報に対する更新要求を受け付けなければ(S74のN)、S76〜S82はスキップされる。調整情報取得部130が、窓口担当者により入力された年齢調整値を受け付けると(S84のY)、調整情報通知部132は、その年齢調整値を調整対象の記名者のカードIDと対応づけた年齢調整情報を各駅の自動改札機へ通知する(S86)。年齢調整値の入力を受け付けなければ(S84のN)、S86はスキップされる。
【0061】
図1の自動券売機12および自動券売機22の動作も、図11のS70〜S82と同様である。ただし、記名式カードのカードIDがエラー情報内でヒットした場合、券売処理部114のエラー判定部116は、定期乗車券情報の更新を駅窓口で行うことを促すためのメッセージを所定の表示装置に表示させて更新処理を中止する。
【0062】
ここで、図1を参照して不整合乗車記録の伝達例を説明する。この例において、記名式カードにはA駅〜B駅を定期区間とする定期乗車券情報が含まれ、その記名式カードは鉄道事業者βにより発行された、すなわち定期乗車券情報の更新主体は鉄道事業者βであることとする。A駅の自動改札機10で利用者と記名者の不整合が検出されると、その旨を示す不整合乗車記録は、自動改札機10〜駅サーバ16〜管理サーバ30と伝達される。管理サーバ30は、不整合乗車記録のカードIDにしたがって鉄道事業者βの駅サーバを配信対象とするため、その不整合乗車記録はB駅の駅サーバ26へ伝達され、その不整合乗車記録にもとづくエラー情報が自動券売機22および窓口装置24へ伝達される。これにより、記名式カードの定期乗車券情報が鉄道事業者βにおいて更新される際に、そのB駅の窓口担当者がA駅における記名式カードの不正利用の有無について、更新を要求した記名者に確認することができる。
【0063】
次に、年齢調整情報の伝達について詳細に説明する。ここでは説明を簡明化するため、年齢調整情報がA駅の窓口装置14からB駅の自動改札機20へ伝達されることを例として説明する。図4には不図示であるが、駅サーバ16(すなわち駅サーバ26)は、調整情報取得部および調整情報通知部をさらに備える。また図5には不図示であるが、管理サーバ30は、調整情報取得部および調整情報配信部をさらに備える。窓口装置14の調整情報通知部132は、年齢調整情報を自駅の自動改札機10へ送信するとともに、管理サーバ30へも送信する。管理サーバ30の調整情報取得部は窓口装置14から送信された年齢調整情報を取得して、管理サーバ30の調整情報配信部はその年齢調整情報を各駅の駅サーバ(この例では駅サーバ26)へ送信する。駅サーバ26の調整情報取得部は管理サーバ30から送信された年齢調整情報を取得して、駅サーバ26の調整情報通知部はその年齢調整情報を自駅の自動改札機(この例では自動改札機20)へ送信する。このように、1つの駅の窓口担当者により設定された年齢調整情報が各駅の自動改札機へ伝達される。
【0064】
本実施の形態の情報処理システム1000によれば、記名式カードを自動改札機に提示した利用者が記名者本人であることを改札において確認し、その結果を蓄積しておく。これにより、記名式カードを記名者以外の第三者が不正利用した場合、後日の定期券更新時に費用請求する等、記名式カードの不正利用に対して適切な処置を執ることができる。また、記名式カードを不正利用してもいずれ摘発されるという牽制効果を生じさせ、記名式カードの不正利用の発生そのものを抑制できる。その結果、鉄道事業者等の機会損失を低減することができる。また、その確認においては、記名式カードに一般的に記録される性別および年齢を、利用者の顔画像により推定した性別および年齢層と照合する。これにより、記名式カードおよびサーバのいずれにおいても記名者の個人情報である顔画像を管理する必要がなく、現状のセキュリティレベルで実現することができる。
【0065】
また、自動改札機10における改札処理は、記名者と利用者とが整合するか否かの判定結果に依存せずに実行され、記名者と利用者とが不整合であった場合は、記名式カードにおける定期乗車券情報が更新される際(いわゆる定期券の更新時)に窓口担当者によって不正利用の有無が判断される。これにより、自動改札機10が誤って不整合と判定した場合でも、その誤った判定結果にもとづき利用者(この場合は利用者=記名者)の通過を拒否することはなく、正当な利用者の利便性を低下させてしまうことを防止できる。また、不正利用か否かは、機械的な画像判定ではなく、人間の目によって判断されるため、誤った判断がなされてしまうことを回避しやすくなる。
【0066】
また、記名者と利用者の整合判定処理と改札処理とを相互に非依存の処理、言い換えれば独立して実行可能な処理とすることで、整合判定処理によって改札処理のレスポンスタイムを低下させてしまうことを回避できる。例えば、整合判定処理に対するCPUの割当時間を改札処理に対する割当時間より短くすることで、改札処理のレスポンスタイムを維持しやすくなる。また、朝の通勤・通学ラッシュ時等、改札処理に対して特にシビアなレスポンスタイムが求められる期間は、整合判定処理を非実行とするとともに、整合判定処理に必要なデータを一旦キュー(所定の記憶領域)に格納しておいてもよい。この場合、ラッシュ終了後に整合判定処理を開始させて不整合乗車記録を後追いにて設定させてもよい。不整合乗車記録が確認されるのは、後日の定期券更新時であるため、利用者の改札通過と不整合乗車記録の設定との間にタイムラグを生じても問題は発生しない。なお、各機能ブロックに対するハードウェア資源の割当を動的に調整し、また実行・非実行を制御する実行制御部を自動改札機10がさらに備えてもよいことはもちろんである。
【0067】
また、自動改札機10における利用者の年齢推定処理においては、利用者の顔画像を、運賃体系が異なる複数種類の年齢層それぞれにおける顔画像の特徴部分が示されたデータと照合する。これにより、利用者の顔画像に対して照合すべき参照画像数が低減され、効率的に年齢推定処理を実行できる。また、運賃体系が異なる年齢層間では顔画像の特徴の違いが比較的大きくなるため、利用者の年齢層の推定結果として妥当な結果を得やすくなる。また、鉄道事業者にとって損失が大きい例として、40代の会社員が子供の通学定期を不正利用することや、親のシルバー定期を不正利用することが考えられるが、このような不正利用においては不整合乗車記録が設定されるため、後日の確認および料金徴収が可能になる。
【0068】
また、利用者の画像と記名者の外観とを見比べて、記名式カードの不正利用の有無を判断した窓口担当者は、記名者と利用者の年齢が整合するか否かの判定処理を調整するための年齢調整値を設定する。この年齢調整値は窓口装置から各駅の自動改札機に伝達されて、以降の整合判定処理において使用される。このように、記名者の個性(見た目)に応じた年齢調整値が設定されることにより、特定の記名者に対して不整合の判定結果が頻発することを抑止しやすくなる。すなわち情報処理システム1000の運用において、記名者の個性に応じたチューニングを実現できる。
【0069】
また、各鉄道事業者は、情報処理システム1000の各装置を、駅単位、自動改札機単位に計画的・段階的に導入していくことができる。例えば、乗降客が多い大規模駅等、一部の駅から導入することもできる。また、一般的に記名式カードが記録する性別および年齢(または年齢を特定可能な生年月日)のみを記名者の属性として使用するため、既存の記名式カードの仕組みを流用でき、安価で容易な導入を実現できる。
【0070】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0071】
第1の変形例を説明する。上記実施の形態では、年齢調整情報は自動改札機に保持されることとしたが、変形例では、記名式カード内のメモリに保持されてもよい。この場合、窓口装置14の調整情報通知部132は、所定のカードライタを介して、年齢調整情報を記名式カードへ記録する。自動改札機10の通過を求める利用者による記名式カードの提示が検出されると、自動改札機10の読取/書込部62は、その記名式カードから、乗車券情報や、記名者の性別および生年月日を含む情報とともに、年齢調整情報を取得する。そして、整合判定部72は、年齢調整情報に応じて記名者の年齢を調整した上で、記名者と利用者が整合するかを判定する。なお、年齢調整情報を自動改札機側で保持するか、記名式カード側で保持するかは、鉄道会社や情報処理システム1000のシステム事業者等により適宜決定されてよい。
【0072】
第2の変形例を説明する。上記実施の形態では、自動改札機10の整合判定部72における判定処理を調整する情報として年齢調整情報を示したが、この調整する情報には性別が含まれてもよい。以下では、これまでの「年齢調整情報」を「調整情報」と呼ぶ。窓口担当者は、定期乗車券の更新タイミングで、記名者の性別を調整情報として入力し、窓口装置14の調整情報通知部132はその調整情報を各駅の自動改札機へ通知する。整合判定部72は、調整情報に性別が含まれる場合、利用者属性推定部70による性別の推定結果にかかわらず調整情報の性別を適用し(言い換えれば、推定結果の性別を調整情報の性別へ置き換え)、記名者と利用者が整合するか否かを判定する。この場合、記名者の性別と利用者の性別は常に一致することになるため、性別を示す調整情報は記名者の性別と利用者の性別との整合判定をスキップすべき旨を示す情報であってもよい。整合判定部72は、そのスキップすべき旨を示す情報が調整情報に含まれる場合、記名者の性別と利用者の性別との整合判定をスキップして、年齢層の整合判定のみを実行してもよい。この変形例によれば、記名者の個性(見た目)に応じた性別の調整情報が設定されることにより、特定の記名者に対して不整合の判定結果が頻発することを抑止しやすくなる。
【0073】
第3の変形例を説明する。上記実施の形態では、調整情報(年齢調整情報)が設定されるタイミングは、記名式カードの定期乗車券の更新タイミングであることとした。変形例では、調整情報は、記名式カードの新規購入時、例えば定期乗車券の新規購入時に設定されてもよい。この場合、記名式カードの新規購入(定期乗車券の新規購入)を受け付けた窓口担当者は、記名者を目視確認して、性別や年齢等の調整情報を窓口装置14へ入力し、窓口装置14の調整情報通知部132はその調整情報を各駅の自動改札機へ通知する。記名式カードの新規購入時に調整情報が設定されることにより、以降、特定の記名者(例えば社会人学生や見た目で年齢の判別が困難な利用者等)に対して不整合の判定結果が頻発することを抑止しやすくなり、また、記名式カードの更新時(定期乗車券更新時)の窓口業務の負担を軽減できる。
【0074】
上述した実施の形態、変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施の形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態、変形例それぞれの効果をあわせもつ。
【0075】
請求項に記載の各構成要件が果たすべき機能は、実施の形態および変形例において示された各構成要素の単体もしくはそれらの連係によって実現されることも当業者には理解されるところである。
【符号の説明】
【0076】
10,20 自動改札機、 16,26 駅サーバ、 30 管理サーバ、 54 カメラ部、 62 読取/書込部、 64 改札処理部、 70 利用者属性推定部、 72 整合判定部、 74 記録部、 106 不整合記録通知部、 1000 情報処理システム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者が提示する記名式の乗車券媒体に記録された乗車券情報にしたがって改札処理を実行する改札処理部と、
前記利用者の顔画像を撮像する撮像部と、
前記利用者の顔画像を、年齢に対する顔画像の特徴部分が示されたデータと照合することにより、前記利用者の年齢を推定する推定部と、
前記乗車券媒体から、記名者の年齢を示す情報を読み出す取得部と、
前記推定部において推定した利用者の年齢が、前記取得部において読み出した記名者の年齢と整合するか否かを判定する判定部と、
前記判定部において不整合の判定結果となった場合、前記利用者の年齢が前記記名者の年齢と不整合である旨を、前記乗車券媒体の乗車券情報の定期的な更新の際に確認されるべき情報として記録する記録部と、
を備えることを特徴とする自動改札機。
【請求項2】
前記改札処理部は、前記判定部における判定結果に依存することなく改札処理を実行することを特徴とする請求項1に記載の自動改札機。
【請求項3】
前記推定部は、前記利用者の顔画像を、運賃体系が異なる年齢層のそれぞれに対する顔画像の特徴部分が示されたデータと照合することにより、前記利用者が属する年齢層を推定し、
前記判定部は、前記利用者が属する年齢層が前記記名者の年齢と整合するか否かを判定することを特徴とする請求項1または2に記載の自動改札機。
【請求項4】
前記記録部は、前記確認されるべき情報として、前記利用者の年齢が前記記名者の年齢と不整合となったときの前記利用者の顔画像を含む情報を記録することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の自動改札機。
【請求項5】
自動改札機と情報管理装置とを備え、
前記自動改札機は、
利用者が提示する記名式の乗車券媒体に記録された乗車券情報にしたがって改札処理を実行する改札処理部と、
前記利用者の顔画像を撮像する撮像部と、
前記利用者の顔画像を、年齢に対する顔画像の特徴部分が示されたデータと照合することにより、前記利用者の年齢を推定する推定部と、
前記乗車券媒体から、記名者の年齢を示す情報を読み出す取得部と、
前記推定部において推定した利用者の年齢が、前記取得部において読み出した記名者の年齢と整合するか否かを判定する判定部と、
前記判定部において不整合の判定結果となった場合、前記利用者の年齢が前記記名者の年齢と不整合であることを示す情報を記録する記録部と、を含み、
前記情報管理装置は、前記乗車券媒体の乗車券情報の定期的な更新の際にその更新を行う事業者に確認させるために、当該事業者に対して前記不整合であることを示す情報を通知する通知部を含むことを特徴とする情報処理システム。
【請求項1】
利用者が提示する記名式の乗車券媒体に記録された乗車券情報にしたがって改札処理を実行する改札処理部と、
前記利用者の顔画像を撮像する撮像部と、
前記利用者の顔画像を、年齢に対する顔画像の特徴部分が示されたデータと照合することにより、前記利用者の年齢を推定する推定部と、
前記乗車券媒体から、記名者の年齢を示す情報を読み出す取得部と、
前記推定部において推定した利用者の年齢が、前記取得部において読み出した記名者の年齢と整合するか否かを判定する判定部と、
前記判定部において不整合の判定結果となった場合、前記利用者の年齢が前記記名者の年齢と不整合である旨を、前記乗車券媒体の乗車券情報の定期的な更新の際に確認されるべき情報として記録する記録部と、
を備えることを特徴とする自動改札機。
【請求項2】
前記改札処理部は、前記判定部における判定結果に依存することなく改札処理を実行することを特徴とする請求項1に記載の自動改札機。
【請求項3】
前記推定部は、前記利用者の顔画像を、運賃体系が異なる年齢層のそれぞれに対する顔画像の特徴部分が示されたデータと照合することにより、前記利用者が属する年齢層を推定し、
前記判定部は、前記利用者が属する年齢層が前記記名者の年齢と整合するか否かを判定することを特徴とする請求項1または2に記載の自動改札機。
【請求項4】
前記記録部は、前記確認されるべき情報として、前記利用者の年齢が前記記名者の年齢と不整合となったときの前記利用者の顔画像を含む情報を記録することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の自動改札機。
【請求項5】
自動改札機と情報管理装置とを備え、
前記自動改札機は、
利用者が提示する記名式の乗車券媒体に記録された乗車券情報にしたがって改札処理を実行する改札処理部と、
前記利用者の顔画像を撮像する撮像部と、
前記利用者の顔画像を、年齢に対する顔画像の特徴部分が示されたデータと照合することにより、前記利用者の年齢を推定する推定部と、
前記乗車券媒体から、記名者の年齢を示す情報を読み出す取得部と、
前記推定部において推定した利用者の年齢が、前記取得部において読み出した記名者の年齢と整合するか否かを判定する判定部と、
前記判定部において不整合の判定結果となった場合、前記利用者の年齢が前記記名者の年齢と不整合であることを示す情報を記録する記録部と、を含み、
前記情報管理装置は、前記乗車券媒体の乗車券情報の定期的な更新の際にその更新を行う事業者に確認させるために、当該事業者に対して前記不整合であることを示す情報を通知する通知部を含むことを特徴とする情報処理システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−113557(P2012−113557A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−262785(P2010−262785)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(000155469)株式会社野村総合研究所 (1,067)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(000155469)株式会社野村総合研究所 (1,067)
【Fターム(参考)】
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