説明

自動水栓の制御装置

【課題】 使用しないのに吐水が行われる誤動作を確実に防止し、安定性及び信頼性を高める。また、実施の容易化を図るとともに、低コスト性,設置性及び汎用性、更には使い勝手及び利便性を高める。
【解決手段】 被検出物までの距離を検出する測距センサ4sを用いたセンサ部4と、このセンサ部4から得る一次検出信号Dxを予め設定した閾値Dsと比較することにより被検出物が存在することを示す第一判別信号D1を出力する第一判別処理部5と、一次検出信号Dxを微分した微分信号である二次検出信号Dyに基づいて被検出物の動きがあることを示す第二判別信号D2を出力する第二判別処理部6と、少なくとも、第一判別信号D1と第二判別信号D2の双方が出力したことに基づいて開閉バルブ2を開側に制御するバルブ制御信号Doを出力する制御出力部7と、を有する制御回路3を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサ部の検出結果により開閉バルブを制御して自動で吐水又は止水を行う自動水栓の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、スパウト(蛇口)の下方にかざした手をセンサ部により検出したなら、制御部により開閉バルブを開側に制御し、自動で吐水するようにした自動水栓は知られている。ところで、キッチンに設置されるシンクでは、シンク内に食器や鍋等が置かれることも多い。したがって、この場合、吐水を必要としないのに、センサ部の無用な検出により、吐水が行われる場合もあり、この種の自動水栓にとって、このような誤動作を防止することは重要な課題となる。
【0003】
従来、このような課題に対処した自動水栓としては、特許文献1に開示される自動水栓及び特許文献2に開示されるキッチン水栓装置が知られている。特許文献1の自動水栓は、吐水口に近接した領域における物体を検知する第1の検知センサと、該近接領域を含み、かつそれよりも広い領域における物体を検知する第2の検知センサを設け、第1の検知センサが物体を検知しているときには常に開弁を行わせ、第2の検知センサが物体を検知しているときには、第1の検知センサが非検知状態を所定時間以上継続していない場合に限り開弁を行わせるようにしたものである。また、特許文献2のキッチン水栓装置は、カウンターの配置された側のシンクに電波センサを配置し、シンク内部の電波センサ近傍と、キッチン水栓装置の吐水口近傍とに検出エリアを配置し、その間に給水を禁止する禁止エリアを設け、キッチン水栓を利用する際の手の差出す行為と、手を洗う行為を分割し、二つの検知エリアが、それぞれの行為に対応する被検知体を検知してキッチン水栓装置から給水を行うようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−83027号公報
【特許文献2】特開2009−235734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した従来の自動水栓は、次のような問題点があった。
【0006】
第一に、いずれの自動水栓も、複数の検知エリアを設定し、これらの検知エリアに存在する被検知体に対応して制御を行うものであるが、シンク内に置かれる食器や鍋等は、様々な位置に様々な格好で置かれ、必ずしも検知エリアを意識して置かれるものではない。したがって、検知エリアを設定したとしても、センサ部の無用な検出により吐水が行われる誤動作を防止する観点からはほとんど効果を期待できない。
【0007】
第二に、複数の検知エリアを設定するには、複数のセンサを使用したり或いは難しいエリア設定が必要になるなど、低コスト性及び設置性の観点からはマイナス要因になる。しかも、形状や大きさ等の異なる様々な種類のシンクが存在するため、これらにマッチングさせる観点からも汎用性に難があるとともに、使用者も検知エリアを意識して使用せざるを得ないなど、使い勝手や利便性の観点からも難がある。
【0008】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決した自動水栓の制御装置の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述した課題を解決するため、水路Pwを開閉する開閉バルブ2と、センサ部による被検出物の検出により開閉バルブ2を開側に制御し、かつセンサ部による被検出物の非検出により開閉バルブ2を閉側に制御する制御回路とを備える自動水栓Mの制御装置1を構成するに際して、被検出物までの距離を検出する測距センサ4sを用いたセンサ部4と、このセンサ部4から得る一次検出信号Dxを予め設定した閾値Dsと比較することにより被検出物が存在することを示す第一判別信号D1を出力する第一判別処理部5と、一次検出信号Dxを微分した微分信号である二次検出信号Dyに基づいて被検出物の動きがあることを示す第二判別信号D2を出力する第二判別処理部6と、少なくとも、第一判別信号D1と第二判別信号D2の双方が出力したことに基づいて開閉バルブ2を開側に制御するバルブ制御信号Doを出力する制御出力部7と、を有する制御回路3を備えることを特徴とする。
【0010】
この場合、発明の好適な態様により、センサ部4には、反射型の赤外線センサ4siを用いることができるとともに、このセンサ部4は、スパウト11の吐水口11oの近傍に配し、かつ下方に向けて配設することができる。一方、第二判別処理部6は、一次検出信号Dxを微分するアクティブ回路を用いた微分回路部12、さらには、この微分回路部12から得る微分信号である二次検出信号Dyを直流化することにより第二判別信号D2を得る直流化回路部13を備えて構成できる。
【発明の効果】
【0011】
このような構成を有する本発明に係る自動水栓Mの制御装置1によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0012】
(1) 測距センサ4sを用いたセンサ部4により被検出物の動きの有無を検出して開閉バルブ2を制御するようにしたため、食器や鍋等の被検出物がシンク内の様々な位置に様々な格好で置かれた場合であっても、被検出物を動かさない限り、開閉バルブ2が開側に制御されないため、センサ部4による無用な検出を回避できる。したがって、使用しないのに吐水が行われる誤動作を確実に防止できるなど、安定性及び信頼性の高い自動水栓Mを提供できる。
【0013】
(2) 実施に際しては単一のセンサ部4で足り、かつ比較的簡易な制御回路3により容易に実施できる。特に、複数の検出エリアを設定するなどの面倒な技術的要素は不要になるとともに、形状や大きさ等の異なる様々な種類のシンク等に容易に設置可能となり、低コスト性,設置性及び汎用性を高めることができる。しかも、使用者は、検知エリアなどを意識する必要がないため、使い勝手及び利便性を高めることができる。
【0014】
(3) 好適な態様により、センサ部4に、反射型の赤外線センサ4siを用いれば、汎用的な測距センサの利用により、容易かつ低コストに実施できる。
【0015】
(4) 好適な態様により、センサ部4を、スパウト11における吐水口11oの近傍に配し、かつ下方に向けて配設すれば、吐水口11oの下方における最も使用頻度の高い位置及び被検出物の動きを最も良好に検出可能な位置に配設できるとともに、その最適化も容易に行うことができる。
【0016】
(5) 好適な態様により、第二判別処理部6に、一次検出信号Dxを微分するアクティブ回路を用いた微分回路部12を設ければ、食器や鍋等の被検出物の動きの有無を最適な形態により検出することができ、使用しないのに吐水が行われる誤動作をより的確に回避できる。
【0017】
(6) 好適な態様により、第二判別処理部6に、微分回路部12から得る微分信号である二次検出信号Dyを直流化することにより第二判別信号D2を得る直流化回路部13を設ければ、第一判別処理部5の第一判別信号D1と第二判別処理部6の第二判別信号D2から、AND回路等の簡易な回路により、容易にバルブ制御信号Doを得ることができる。したがって、制御回路3及び制御処理の容易化に寄与できるとともに、ハードウェアのコスト低減にも寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の好適実施形態に係る自動水栓の制御装置における全体の構成を示す機能ブロック図、
【図2】同制御装置における制御回路の一例を示す具体的回路図、
【図3】同制御装置の動作を説明するためのフローチャート、
【図4】同制御装置の動作時における各部の信号のタイミングチャート、
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0020】
まず、本実施形態に係る制御装置1を備える自動水栓Mの概要について、図1を参照して説明する。
【0021】
例示は、キッチンのシンク21に設置された自動水栓Mを示す。この自動水栓Mはシンク21の近傍に取付けたスパウト(蛇口)11を備える。スパウト11は斜め上方に起立するとともに、先端には下方を向いた吐水口11oを備え、この吐水口11oはシンク21の上方に位置する。また、スパウト11の後端(下端)には、水路Pwを構成する水道管Pwpを接続する。したがって、吐水口11oはスパウト11の内部を通して水道管Pwpに連通接続される。なお、水道管Pwpは、給水源である不図示の上水本管側に接続される。
【0022】
一方、水道管Pwpの中途には、当該水道管Pwp(水路Pw)を開閉する開閉バルブ2を接続する。開閉バルブ2はバルブ制御信号Doが付与されることにより水道管Pwpを開閉することができる電磁開閉弁等を用いる。また、この開閉バルブ2に対して、バルブ制御信号Doを付与する制御回路3を備える。制御回路3は、スパウト11に取付けたセンサ部4と、このセンサ部4のセンサ出力信号である一次検出信号Dxが付与される制御ユニット31を備える。したがって、開閉バルブ2と制御回路3(センサ部4及び制御ユニット31)は、本実施形態に係る制御装置1を構成する。
【0023】
次に、本実施形態に係る制御装置1の構成について、図1及び図2を参照して具体的に説明する。
【0024】
制御装置1は、制御回路3を備え、この制御回路3にはセンサ部4と制御ユニット31が含まれる。センサ部4は、図1に示すように、吐水口11oの後方近傍であって、スパウト11の下面に配設する。これにより、センサ部4の指向性(検出エリア)は下方となる矢印C方向となる。センサ部4をこのように配設すれば、吐水口11oの下方における最も使用頻度の高い位置及び被検出物の動きを最も良好に検出可能な位置に配設できるとともに、その最適化も容易に行うことができる。
【0025】
センサ部4には、シンク21内に入れられる被検出物(食器,鍋,手等)までの距離を定量的に検出する測距センサ4s、具体的には、反射型の赤外線センサ4siを用いることができる。したがって、この赤外線センサ4siは、赤外線を発光するLED等を用いた赤外線発光部を備えるとともに、反射する赤外線を受光するフォトトランジスタ等の受光部を備える。センサ部4に、このような反射型の赤外線センサ4siを用いれば、汎用的な測距センサの利用により、容易かつ低コストに実施できる利点がある。
【0026】
他方、制御ユニット31は、図1に示すように、赤外線センサ4siから出力されるセンサ出力信号である一次検出信号Dxを、予め設定した閾値Dsと比較することにより、被検出物が存在することを示す第一判別信号D1を出力する第一判別処理部5を備える。したがって、第一判別処理部5には、閾値Dsの大きさを設定する閾値設定部32と、一次検出信号Dxと閾値Dsの大きさを比較するコンパレータ回路部33を備え、このコンパレータ回路部33から第一判別信号D1が出力される。この場合、閾値Dsとしては、一例として、赤外線センサ4siから真下方向に250〔mm〕下がった位置における一次検出信号Dxの大きさを設定できる。
【0027】
また、一次検出信号Dxを微分した微分信号である二次検出信号Dyに基づいて被検出物の動きがあることを示す第二判別信号D2を出力する第二判別処理部6を備える。したがって、第二判別処理部6には、一次検出信号Dxを微分するアクティブ回路を用いた微分回路部12を備える。第二判別処理部6に、このようなアクティブ回路を用いた微分回路部12を設ければ、食器や鍋等の被検出物の動きの有無を最適な形態により検出することができ、使用しないのに吐水が行われる誤動作をより的確に回避できる利点がある。一方、第二判別処理部6には、微分回路部12から得る微分信号である二次検出信号Dyを直流化することにより第二判別信号D2を得る直流化回路部13を備え、この直流化回路部13から第二判別信号D2が出力される。したがって、直流化回路部13には、二次検出信号Dyを直流化する機能を備えており、例えば、二次検出信号Dyを整流する整流機能、この整流機能により整流された信号を平滑化する平滑機能、この平滑機能により平滑された信号を波形整形する波形整形機能等を備えている。
【0028】
さらに、第一判別信号D1と第二判別信号D2の双方が出力したことに基づいて開閉バルブ2を開側に制御するバルブ制御信号Doを出力する制御出力部7を備える。上述した第二判別処理部6には、微分回路部12から得る二次検出信号Dy(微分信号)を直流化することにより第二判別信号D2を得る直流化回路部13を備えるため、第一判別処理部5から出力する第一判別信号D1と第二判別処理部6から出力する第二判別信号D2をAND回路等の簡易な回路により比較し、目的のバルブ制御信号Doを容易に得ることができる。したがって、制御回路3及び制御処理の容易化に寄与できるとともに、ハードウェアのコスト低減にも寄与できる。
【0029】
なお、図1は、制御ユニット31を機能ブロック図により示したが、より具体的な回路の一例としては、図2に示す回路により実施できる。図2において、第一判別処理部5は、オペアンプ41を備え、このオペアンプ41の非反転入力部には一次検出信号Dxが付与されるとともに、反転入力部には抵抗R1及びR2の分圧抵抗回路により閾値Dsを設定する閾値設定部32を接続する。オペアンプ41の出力部は抵抗R3を介してグランドに接続する。第二判別処理部6は、オペアンプ42を備え、このオペアンプ42の反転入力部には、一次検出信号DxがコンデンサCを介して付与されるとともに、非反転入力部はグランドに接続する。また、オペアンプ42の反転入力部と出力部間は抵抗R4で接続する。これにより、アクティブ回路を用いた微分回路部12が構成される。制御出力部7は、AND回路43を備え、このAND回路43の一方の入力部にオペアンプ41の出力部から第一判別信号D1が付与されるとともに、AND回路43の他方の入力部にオペアンプ42の出力部から第二判別信号D2が付与される。そして、AND回路43の出力部からバルブ制御信号Doが出力し、開閉バルブ2に付与される。
【0030】
次に、本実施形態に係る制御装置1を含む自動水栓Mの動作(機能)について、図1及び図2、更に、図3に示すフローチャート及び図4に示すタイミングチャートを参照して説明する。
【0031】
まず、非使用時には、開閉バルブ2は閉側、即ち、ノーマルクローズとなり、自動水栓Mは止水状態となる(ステップS1)。したがって、使用者が電源をOFFにし或いは停電等により手動操作を行う場合以外は、開閉バルブ2は閉側に切換わっている(ステップS2)。一方、センサ部4(赤外線センサ4si)は、発光部から一定時間間隔おきに赤外線を発光するとともに、反射する赤外線を受光部により受光することにより、手や食器等の被検出物の有無をセンシングする。
【0032】
今、使用者が、吐水口11oの下方に手を差し入れ、手洗いや食器等の洗浄を行う場合を想定する。この場合、センサ部4は、手や食器等の被検出物を検出するため、センサ部4からは一次検出信号Dxが出力する(ステップS3)。この際に出力する一次検出信号Dxは、図4(a)に示すDxmのようになり、この一次検出信号Dxm(Dx)は、コンパレータ回路部33に付与されることにより閾値Dsと比較される(ステップS4)。例示の場合、図4(a)に示すように、一次検出信号Dxmは閾値Dsよりも大きくなるため、コンパレータ回路部33(第一判別処理部5)からは、図4(b)に符号D1mで示す第一判別信号D1(「1」データ)が出力する(ステップS5,S6)。
【0033】
また、センサ部4から出力する一次検出信号Dxは、微分回路部12にも付与されるため、この一次検出信号Dxは、アクティブ回路を用いた微分回路部12により微分処理される(ステップS7)。これにより、微分回路部12からは微分信号である二次検出信号Dyが得られる。例示の場合、手洗いや食器等の洗浄に伴う動きのある被検出物が検出されるため、得られる二次検出信号Dyは、図4(c)に示すDymのようにな。そして、この二次検出信号Dym(Dy)は直流化回路部13に付与される。直流化回路部13では、例えば、二次検出信号Dymを整流機能により整流し、整流された信号を平滑機能により平滑するとともに、さらに、この平滑機能により平滑された信号を波形整形機能により波形整形(一定レベル(図4(c)中、Dss)でカット)することにより直流化を行う(ステップS8)。これにより、直流化回路部13(第二判別処理部6)からは、図4(d)に符号D2mで示す第二判別信号D2(「1」データ)が出力する(ステップS9,S10)。
【0034】
そして、第一判別信号D1m(D1)と第二判別信号D2m(D2)は、共に、AND回路43により構成される制御出力部7に付与される。この場合、制御出力部7からは、図4(e)に符号Domで示すバルブ制御信号Do(「1」データ)が出力する(ステップS11)。このバルブ制御信号Dom(Do)は開閉バルブ2に供給され、開閉バルブ2を開側に制御する(ステップS12)。これにより、自動水栓Mのスパウト11は吐水状態となる(ステップS13)。吐水は、第一判別信号D1m(D1)と第二判別信号D2m(D2)の双方が出力されている限り継続して行われる。一方、使用者が手洗いや食器等の洗浄を終了し、第一判別信号D1m(D1)と第二判別信号D2m(D2)の一方又は双方が出力されなくなれば、制御出力部7からのバルブ制御信号Doの出力が解除されるため、開閉バルブ2は閉側に戻る。この結果、自動水栓Mのスパウト11は止水状態となる(ステップS14,S1…)。
【0035】
次に、シンク21内に、食器や鍋等が置かれ、そのまま放置されている状態を想定する。この場合、センサ部4は食器や鍋等の固定された被検出物を検出するため、センサ部4から一次検出信号Dxが出力するも、この際に出力する一次検出信号Dxは、図4(a)に示すDxcのようにほぼ一定となる(ステップS3)。この一次検出信号Dxc(Dx)は、コンパレータ回路部33に付与されることにより閾値Dsと比較される(ステップS4)。この場合、図4(a)に示すように、一次検出信号Dxcは閾値Dsよりも大きくなるため、コンパレータ回路部33からは、図4(b)に符号D1cで示す第一判別信号D1(「1」データ)が出力するとともに、出力する時間は、被検出物がそのまま置かれている時間に対応する(ステップS5,S6)。
【0036】
また、センサ部4から出力する一次検出信号Dxは、微分回路部12にも付与され、一次検出信号Dxに対する微分処理が行われる(ステップS7)。微分回路部12からは微分信号である二次検出信号Dyを出力する。この際、出力する二次検出信号Dyは、図4(c)に示す正側のDycと負側のDycとなり、この二次検出信号Dyc,Dycは、直流化回路部13に付与され、二次検出信号Dyc,Dycに対する直流化処理が行われる(ステップS8)。これにより、直流化回路部13(第二判別処理部6)からは、図4(d)に符号D2cで示す第二判別信号D2(「1」データ)が出力する(ステップS9,S10)。
【0037】
しかし、この場合、第二判別信号D2cの時間は短時間となるため、制御出力部7から出力するバルブ制御信号Doの出力時間も、図4(e)に符号Docで示すように、短時間となる。したがって、シンク21内に食器や鍋等を置いた際に、一瞬、僅かな吐水が行われるとしても、その後は止水状態となる(ステップS11,S12,S13,S14,S1…)。なお、このような短時間の第二判別信号D2cは、一定時間以上継続していることを条件に出力させるようにすれば、短時間の第二判別信号D2cはキャンセル(リセット)することができる。
【0038】
その他、図4(a)において、符号Dxfは、センサ部4の検出エリアよりも離れた位置で動いた被検出物の一次検出信号を示す。この一次検出信号Dxf(Dx)の大きさは、閾値Dsよりも小さいため、第一判別信号D1は出力しない。また、動きに対応する二次検出信号Dyf(Dy)及び第二判別信号D2f(D2)は出力するが、第一判別信号D1が出力しないことからバルブ制御信号Doも出力しない。即ち、外乱には反応しない。一方、図4(a)において、符号Dxnは、シンク21内に、黒色のパネル等が置かれ、反射物がない場合における一次検出信号である。この場合、第一判別信号D1と第二判別信号D2のいずれも出力しない。さらに、図4(a)において、符号Dxpは、シンク21内に、何も存在しない場合における一次検出信号である。この場合、シンク21の底面が反射面として作用するため、一次検出信号Dxp(Dx)の大きさは、一次検出信号Dxnよりも大きくなるが、閾値Dsよりも小さいため、第一判別信号D1と第二判別信号D2のいずれも出力しない。
【0039】
よって、このような本実施形態に係る自動水栓Mの制御装置1によれば、測距センサ4sを用いたセンサ部4により被検出物の動きの有無を検出して開閉バルブ2を制御するようにしたため、食器や鍋等の被検出物がシンク内の様々な位置に様々な格好で置かれた場合であっても、被検出物を動かさない限り、開閉バルブ2が開側に制御されないため、センサ部4による無用な検出を回避できる。したがって、使用しないのに吐水が行われる誤動作を確実に防止できるなど、安定性及び信頼性の高い自動水栓Mを提供できる。また、実施に際しては単一のセンサ部4で足り、かつ比較的簡易な制御回路3により容易に実施できる。特に、複数の検出エリアを設定するなどの面倒な技術的要素は不要になるとともに、形状や大きさ等の異なる様々な種類のシンク等に容易に設置可能となり、低コスト性,設置性及び汎用性を高めることができる。しかも、使用者は、検知エリアなどを意識する必要がないため、使い勝手及び利便性を高めることができる。
【0040】
以上、好適実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量,数値等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
【0041】
例えば、センサ部4として、赤外線センサ4siを例示したが、被検出物までの距離を検出できるセンサであれば、超音波センサ等の各種測距センサを適用可能である。また、センサ部4は、スパウト11の吐水口11oの近傍に配し、かつ下方に向けて配設する場合を例示したが、必ずしも例示の位置に限定されるものではない。一方、第二判別信号D2を得る直流化回路部13を例示したが、二次検出信号Dyを判別する機能を有する回路であれば、他の判別回路により置換できる。さらに、例示は、電気回路(ハードウェア)により実施した場合を示したが、同様の機能を有するマイクロコンピュータ(ソフトウェア)により実現することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明に係る制御装置1は、キッチンをはじめ、洗面所,お風呂,トイレブース、更には屋外の手洗い場や各種水道設備等の様々な用途の自動水栓Mに利用できる。
【符号の説明】
【0043】
1:制御装置,2:開閉バルブ,3:制御回路,4:センサ部,4s:測距センサ,4si:赤外線センサ,5:第一判別処理部,6:第二判別処理部,7:制御出力部,11:スパウト,11o:吐水口,12:微分回路部,13:直流化回路部,Pw:水路,M:自動水栓,Ds:閾値,Dx:一次検出信号,Dy:二次検出信号,D1:第一判別信号,D2:第二判別信号,Do:バルブ制御信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水路を開閉する開閉バルブと、センサ部による被検出物の検出により前記開閉バルブを開側に制御し、かつ前記センサ部による被検出物の非検出により前記開閉バルブを閉側に制御する制御回路とを備える自動水栓の制御装置であって、前記被検出物までの距離を検出する測距センサを用いたセンサ部と、このセンサ部から得る一次検出信号を予め設定した閾値と比較することにより被検出物が存在することを示す第一判別信号を出力する第一判別処理部と、前記一次検出信号を微分した微分信号である二次検出信号に基づいて前記被検出物の動きがあることを示す第二判別信号を出力する第二判別処理部と、少なくとも、前記第一判別信号と前記第二判別信号の双方が出力したことに基づいて前記開閉バルブを開側に制御するバルブ制御信号を出力する制御出力部と、を有する制御回路を備えることを特徴とする自動水栓の制御装置。
【請求項2】
前記センサ部は、反射型の赤外線センサを用いることを特徴とする請求項1記載の自動水栓の制御装置。
【請求項3】
前記センサ部は、スパウトにおける吐水口の近傍に配し、かつ下方に向けて配設することを特徴とする請求項1又は2記載の自動水栓の制御装置。
【請求項4】
前記第二判別処理部は、前記一次検出信号を微分するアクティブ回路を用いた微分回路部を備えることを特徴とする請求項1,2又は3記載の自動水栓の制御装置。
【請求項5】
前記第二判別処理部は、前記微分回路部から得る微分信号である前記二次検出信号を直流化することにより前記第二判別信号を得る直流化回路部を備えることを特徴とする請求項4記載の自動水栓の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−180672(P2012−180672A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−43812(P2011−43812)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(390034153)株式会社バイタル (6)
【Fターム(参考)】