説明

自動洗髪機

【課題】自動洗髪機において、自動洗髪時に被洗髪者の頭部を支持できる状態を維持した上で、人間による洗髪をスムーズに行うことができるようにする。
【解決手段】被洗髪者の頭部を収めるシンク2と、このシンク2に収めた頭部に向けて洗浄水を噴射する上、下ノズルリンク11、12とを備えた自動洗髪機1において、仰向け姿勢の被洗髪者の首をシンク2の内側に臨ませた状態で被洗髪者の後頭部を支える頭部支持ネット70を設け、この頭部支持ネット70を、被洗髪者の後頭部を支持する位置と被洗髪者の首元を支持する位置との間を移動可能に構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シンクに収めた頭部を自動で洗髪する自動洗髪機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被洗髪者の頭部を収めるシンクの内側に、頭部に向けて洗浄水を噴射するノズルリンクを備え、このノズルリンクによって被洗髪者の頭部や髪に洗浄水を噴射することにより自動で洗髪を行えるようにした自動洗髪機が知られている(例えば、特許文献1参照)。この種の自動洗髪機では、シンク内に後頭部を支える頭部支持部を設け、この頭部支持部によって後頭部を支えた状態で、ノズルリンクから頭部へ向けて洗浄水を噴射することにより、洗髪を行うものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−236511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した自動洗髪機では、ノズルリンクを利用した洗髪のみならず、美容師等の人間が、直接、シンクに収めた被洗髪者の頭部の洗髪を行う場合がある。この場合、頭部支持部が人手による洗髪の邪魔となる場合があった。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、自動洗髪時に被洗髪者の頭部を支持できる状態を維持した上で、人手による洗髪をスムーズに行うことができる自動洗髪機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、被洗髪者の頭部を収めるシンクと、このシンクに収めた頭部に向けて洗浄水を噴射するノズルリンクとを備えた自動洗髪機において、仰向け姿勢の被洗髪者の首を前記シンクの内側に臨ませた状態で被洗髪者の後頭部を支える頭部支持部を設け、この頭部支持部を、被洗髪者の後頭部を支持する位置と被洗髪者の首元を支持する位置との間を移動可能に構成したことを特徴とする。
【0006】
また、上記発明の自動洗髪機において、前記頭部支持部を、横方向に延びる軸を中心として、被洗髪者の後頭部を支持する位置と被洗髪者の首元を支持する位置との間を回転可能に構成してもよい。
【0007】
また、上記発明の自動洗髪機において、前記頭部支持部を、被洗髪者の後頭部を支持する位置へ向かって回転した場合、被洗髪者の後頭部を支持する位置に至ったときに回転が制限されて当該位置において位置決めされると共に、被洗髪者の首元を支持する位置へ向かって回転した場合、被洗髪者の首元を支持する位置に至ったときに回転が制限されて当該位置において位置決めされる構成としてもよい。
【0008】
また、上記発明の自動洗髪機において、前記シンクに収めた頭部の首元に向かって洗浄水を噴射する首元用ノズルリンクをさらに設け、前記頭部支持部が被洗髪者の後頭部を支持するとき、前記首元用ノズルリンクから噴射される洗浄水を遮らない位置となるように前記頭部支持部を配置してもよい。
【0009】
また、上記発明の自動洗髪機において、前記頭部支持部と、前記首元用ノズルリンクとを、前記シンクに収めた頭部の首元下方で連結してもよい。
【0010】
また、上記発明の自動洗髪機において、前記頭部支持部を、縦方向に延びる支持部材を、横方向に間隔をあけて設けた縦格子状のネットによって形成してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、自動洗髪時に被洗髪者の頭部を支持できる状態を維持した上で、人間による洗髪をスムーズに行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態に係る自動洗髪機の斜視図である。
【図2】自動洗髪機を上から見た図である。
【図3】自動洗髪機の内部構成を示す概略断面図である。
【図4】図3のシンク部分の拡大図である。
【図5】自動洗髪機に使用する水の流れを示す水路図である。
【図6】頭部支持ネットを上から見た図である。
【図7】(A)は接続部の分解斜視図であり、(B)は回転ボスの側面図である。
【図8】(A)は頭部支持ネットが後頭部位置に位置している場合における接続部の側面図であり、(B)は頭部支持ネットが首元位置に位置している場合における接続部の側面図である。
【図9】頭部支持ネットの使用態様の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は自動洗髪機1の斜視図であり、図2は自動洗髪機1を上から見た図である。図3は自動洗髪機1の概略断面図である。図4は図1の自動洗髪機1においてシンク2部分の拡大図である。図5は自動洗髪機1の水の流れを概略的に示す水路図である。
【0014】
図1〜図4に示すように、自動洗髪機1は、被洗髪者の頭部を収容するためのシンク2と、シンク2を保持するシンク保持台3と、シンク保持台3の前方に配置され、被洗髪者が座るための椅子4(図3)と、椅子4を保持する椅子保持台5(図3)とを備えている。
【0015】
シンク2は、図1〜図4に示すように、その上面に開口を有する碗状の部材である。シンク2の前側には、仰向け姿勢の被洗髪者の首元を、シンク2の内側に臨ませた状態にして、被洗髪者の後頭部を支える頭部支持ネット70(頭部支持部)が配置されている。また、シンク2の前側の壁部2Aには、椅子4に座った状態で被洗髪者が仰向けで、頭部支持ネット70に後頭部を載せた状態で、首を載せることができるネック台7が配置されている。シンク2の上面の開口は、カバー8により覆うことができる。カバー8は、その後端が連結部9(図3、図4)を介してシンク2の後端に連結されていて、連結部9を中心にして鉛直面内で回動可能となっている。洗髪時などには、カバー8を開いた状態で、椅子4に座っている被洗髪者の首をネック台7に載せた後、カバー8を閉じることにより、被洗髪者に頭部をシンク2内に収容することができる。
【0016】
シンク2内には、被洗髪者の頭部および髪に向けて洗浄水(温水、シャンプー液が混入された温水、トリートメント液が混入された温水など)を噴射するための上ノズルリンク11(ノズルリンク)及び下ノズルリンク12(ノズルリンク)が配置されている。上ノズルリンク11は、被洗髪者の頭部に沿うように、図示位置で上に凸の略円弧状に湾曲し、所定間隔でノズルを有する管状の部材であって、その左端部が回動可能に片持ち支持されており、被洗髪者の頭部に向かって洗浄水を噴射する。
下ノズルリンク12は、被洗髪者の髪を囲うように、図示位置で左方に凸の略弓形状に湾曲し、所定間隔でノズルを有する管状の部材であって、その左端部が上ノズルリンク11よりも下方で回転可能に片持ち支持されている。この下ノズルリンク12は、後方に向かって洗浄水を噴射することにより、後方側に垂れ下がった被洗髪者の髪(想像線で示す。)を洗浄する。また、シンク2内には、仰向け姿勢の被洗髪者の首元に向けて洗浄水を噴射する首元用ノズルリンク80が配置されている。
【0017】
上下ノズルリンク11、12、および首元用ノズルリンク80には、それぞれ複数のノズルが備えられていて、洗髪時には、上下ノズルリンク11,12、および首元用ノズルリンク80内に送られてきた洗浄水が各ノズルから噴射される。上下ノズルリンク11,12は回動し、首元用ノズルリンク80は固定である。各ノズルから洗浄水を噴射することで、被洗髪者の頭部および髪の全体を洗浄できる。シンク2内の後側上部には、ハンドシャワー13が配置されている。オペレーター(美容院の従業員など)は、ハンドシャワー13の右方に配置されたコック14を回すことにより、ハンドシャワー13から放水する水量を調節して、手動で洗髪できる。
【0018】
自動洗髪機1で使用する水は、図5に示すように、機外の水道設備および給湯設備(図示せず)からミキシングバルブ15および給水管16を介して機内に供給される。ミキシングバルブ15には、水道設備から水供給部17を介して水が与えられるとともに、給湯設備から湯供給部18を介して湯が与えられる。ミキシングバルブ15は、水供給部17および湯供給部18から与えられる水および湯を混合し、温水にして給水管16に送り出すためのものである。給水管16内の途中部には、ミキシングバルブ15から送り出される温水の温度を検知するためのサーミスター19が配置されている。サーミスター19の検知結果に基づいてモーター20が駆動されることにより、ミキシングバルブ15が開閉されて水と湯との混合割合が調整され、設定温度の温水が生成される。ミキシングバルブ15は、モーター20で調整される電動タイプである。モーター20は、DCモーターまたは直流電動機であり、ブラシなどを備えている。
【0019】
また、シンク2の側方には、操作パネル60(図3、図4)が設けられており、設定温度は、オペレーター(ユーザー)が操作パネル60を操作することにより決定される。給水管16は、途中部(サーミスター19よりも下流側)からハンドシャワー用給水管21と貯湯用給水管22とに分岐している。ハンドシャワー用給水管21は、コック14によって開閉可能なハンドシャワー用バルブ23を介してハンドシャワー13に連通している。一方、貯湯用給水管22は、給湯バルブとしての貯湯バルブ24を介して貯湯タンク25内に温水を供給することができる。
【0020】
貯湯タンク25の内部には、当該貯湯タンク25に貯められている温水の水位を検知するための第1水位センサー26および第2水位センサー27が、上下方向に一定間隔を空けて配置されている。貯湯タンク25内の温水が使用されて、所定の最低水位に達したことが第2水位センサー27により検知された場合には、貯湯バルブ24が開かれて、貯湯タンク25内に温水が供給される。その後、貯湯タンク25内の温水が所定の最高水位に達したことが第1水位センサー26により検知されると、貯湯バルブ24が閉じられて、温水の供給が停止する。このようにして、貯湯タンク25内には、最低水位と最高水位との間で、常に温水が貯められた状態となっている。
【0021】
貯湯タンク25の上部(第1水位センサー26よりも上方)には、第1水位センサー26の故障などに起因して貯湯タンク25内に最高水位以上の温水が供給された場合に、その余分な温水を貯湯タンクの外部に溢れ出させるための溢水口28が形成されている。溢水口28から溢れ出した温水は、オーバーフロータンク29によって受けられ、このオーバーフロータンク29に連通する排水管30を通って機外に排出される。オーバーフロータンク29内にはオーバーフローセンサー31が配置され、たとえば排水管30が詰まってオーバーフロータンク29内の水位が最高水位に到達したことがオーバーフローセンサー31によって検知された場合には、自動洗髪機1の運転が停止される。
【0022】
貯湯タンク25の最下部には、一端がメインポンプ32に接続された吸込管33の他端が接続されている。メインポンプ32は、インバータ(図示せず)から交流電流が供給されることにより駆動され、吸込管33を介して貯湯タンク25内の温水を吸い込むものである。吸込管33の途中には、シャンプー液が収容されたシャンプー容器34に至るシャンプー供給管35と、トリートメント液が収容されたトリートメント容器36に至るトリートメント供給管37とが接続されている。シャンプー供給管35およびトリートメント供給管37の途中部には、それぞれシャンプー用ポンプ38およびトリートメント用ポンプ39が備えられていて、シャンプー用ポンプ38およびトリートメント用ポンプ39の働きにより、吸込管33内を通る温水に、シャンプー液およびトリートメント液の混入量を適度に調整することにより、メインポンプ32には、そのとき使用すべき洗浄水が汲み込まれることとなる。
【0023】
吸込管33からメインポンプ32内に吸い込まれた洗浄水は、4つの分路を有する送水管40に送り出される。送水管40内には、フィルター41が設けられていて、その下流側の4つの分路には、上ノズルバルブ42、下ノズルバルブ43、首元用ノズルバルブ74、及び、排水バルブ44の4つのバルブが設けられている。上ノズルバルブ42、下ノズルバルブ43、首元用ノズルバルブ74、及び、排水バルブ44が設けられた4つの分路には、それぞれ、分岐路46、47、75、48が延設されている。上ノズルバルブ42から延設された分岐路46の終端は上ノズルリンク11に接続され、下ノズルバルブ43から延設された分岐路47の終端は下ノズルリンク12に接続され、首元用ノズルバルブ74から延設された分岐路75の終端は首元用ノズルリンク80に接続されている。
【0024】
シンク2の底面には、当該シンク2内に水を排出するための排水口50が形成されていて、この排水口50は、逆流を防止するための排水トラップ51を介して排水管30に連通している。これにより、シンク2の排水口50から排出された水は、排水管30を通って、機外に排水されるようになっている。排水バルブ44から延設された分岐路48の終端は、排水トラップ51に接続されている。
【0025】
図6は、頭部支持ネット70および首元用ノズルリンク80の関係を示す図である。図7は、接続部93(後述)の分解斜視図である。
首元用ノズルリンク80は、上述したように、シンク2に収めた頭部の首元に対して洗浄水を噴射するノズルリンクである。
首元用ノズルリンク80は、図6に示すように、横方向(図6において矢印Y1で示す方向)に延びる管状の部材であって、2つの隅部にブラケット81,81が溶接で固定され、このブラケット81,81を介してシンク2の前側の内壁に固定されている。首元用ノズルリンク80の筒部82は、被洗髪者の首元の形状に倣って下に凸に湾曲しており、上部の中央寄りには、所定の間隔をあけて、3つのノズル83、83、83が取り付けられている。
【0026】
図7(A)に示すように、首元用ノズルリンク80において、ブラケット81の近傍には、上方へ向かって立ち上がった立ち上り部90の一端が接続されている。立ち上り部90は、図7(A)に示すように、側面視L字形状の部材であり、所定の長さだけ上方へ向かって延出した後、後方へ向かって略直角に折り曲がり、さらに、後方へ向かって所定の長さだけ延出している。
立ち上り部90の他端には、所定の範囲内で回動可能な状態で、立ち上り部90に対して頭部支持ネット70を接続するための接続部93が設けられている。
【0027】
頭部支持ネット70は、図6に示すように、縦方向に延びる2本の外枠部100が、所定の距離だけ間隔を開けて対向した状態で設けられている。この外枠部100は、金属等の剛性の高い素材によって形成されている。この外枠部100には、柔軟性があり、かつ、強度の高い部材によって形成されたネット部101が支持されている。このネット部101は、図6に示すように、2つの外枠部100の一端102のそれぞれを結ぶ一端連結部103と、2つの外枠部100の他端104のそれぞれを結ぶ他端連結部105とを備えている。そして、これら一端連結部103、他端連結部105、及び、2つの外枠部100で囲まれる領域において、縦方向(図6の矢印Y2が示す方向)に延びる支持部材106が所定の間隔を開けて縦格子状に複数設けられている。これら支持部材106は、その両端部が一端連結部103及び他端連結部105のそれぞれに接続されている。
【0028】
この頭部支持ネット70は、自動洗髪機1による自動洗髪時において、被洗髪者の後頭部を支持するネットである(図4、図5参照)。被洗髪者の頭部がシンク2に収められている間、被洗髪者の後頭部がこの頭部支持ネット70によって支えられるため、被洗髪者に負担をかけることなく、シンク2内における適切な位置に頭部が延在した状態を維持することができる。
特に、本実施形態では、頭部支持ネット70は、縦方向に延びる支持部材106が、横方向に間隔を開けて縦格子状に複数設けられて形成されている。一般に、人間の後頭部において、髪は、後頭部から首元へ向かう方向に向かって生えているため、頭部支持ネット70を縦格子状とすることにより、ネットを網状としたり又は横格子状としたりした場合と比較して、支持部材106のそれぞれの間に形成された隙間から髪を垂らし易くなる。これにより、頭部支持ネット70において髪が束になり、また、からまり、これらに起因して、後頭部に対する洗浄水の噴射が阻害される、といった事態が発生することを好適に防止できる。
図6及び図7に示すように、頭部支持ネット70の外枠部100のそれぞれには、横方向に沿って外側へ向かって延出する棒状のネット支持棒108が設けられており、このネット支持棒108の端部には、接続部93が設けられている。
【0029】
ここで、接続部93について詳述する。
接続部93は、立ち上り部90の他端に溶接により強固に固定された回転ボス94を備えている。この回転ボス94には、回転ボス94を横方向に貫通する貫通孔95が形成されている。
この貫通孔95は、図7(B)に示すように、その断面が、円を所定の位置で上下方向に切り落とした略D字状をしており、切り落とした部位に対応する位置には、回転規制部96が形成されている。
一方で、頭部支持ネット70から横方向へ向かって延びるネット支持棒108の端部には、図7(A)に示すように、フランジ状の位置決めフランジ110が設けられており、この位置決めフランジ110のさらに外側には、回転受け部111が設けられている。
位置決めフランジ110は、図示は省略したが、回転ボス94の内部において横方向外側への動きが回転規制部96によって規制された状態で、回転ボス94の内部に形成されたフランジ収納部(不図示)に嵌合する。この位置決めフランジ110がフランジ収納部に嵌合することにより、回転受け部111の中心軸と、回転ボス94の中心軸とが、同一軸となった状態が維持され、かつ、回転ボス94の内部における回転受け部111の横方向外側への動きが規制される。
また、回転受け部111は、所定の範囲内で中心軸L1(図7、図8)を中心として回転可能な状態で、回転ボス94に形成された貫通孔95に嵌合する。なお、回転ボス94の貫通孔95における回転に伴ってネット支持棒108が回転し、このネット支持棒108の回転に伴って、頭部支持ネット70が回転する。
【0030】
図8は、接続部93の側面図であり、特に、(A)は頭部支持ネット70が後頭部位置T1(後述)に位置しているときの側面図であり、(B)は頭部支持ネット70が首元位置T2(後述)に位置しているときの側面図である。
図8に示すように、回転受け部111は、回転ボス94の貫通孔95内で中心軸L1を中心として回転する部材であり、中心軸L1に対して所定の方向に偏って肉厚部112が設けられている。この肉厚部112の一側面には、後頭部位置時接触面113が形成され、他側面には、首元位置時接触面114が形成されている。
【0031】
図8(A)を参照し、回転受け部111が、回転ボス94の貫通孔95内において、中心軸L1を中心として、図8(A)における時計回り(矢印Y4に示す方向)へ回転すると、肉厚部112の後頭部位置時接触面113が回転規制部96に接触し、貫通孔95内における回転受け部111のそれ以上の回転が規制される。そして、本実施形態では、後頭部位置時接触面113が回転規制部96に接触し、貫通孔95における回転受け部111の回転が規制された状態に至ったときに、頭部支持ネット70が後方へ向かって延在した状態となるよう、回転受け部111において肉厚部112が形成されている。以下の説明では、頭部支持ネット70が後方へ向かって延在した状態(図8(A)に示す状態)を、適宜、「頭部支持ネット70が後頭部位置T1に位置している」と表現する。
この後頭部位置T1は、自動洗髪機1による自動洗髪時に、シンク2に収納された被洗髪者の後頭部を支持する位置である。図2、3、4に示すように、後頭部位置T1に頭部支持ネット70が位置している場合、被洗髪者の後頭部に対応する位置に頭部支持ネット70が延在し、頭部支持ネット70に後頭部が載置され、頭部支持ネット70により後頭部が支持される。
なお、後頭部位置T1に位置する頭部支持ネット70に被洗髪者の後頭部が載置された場合、図8(A)の矢印Y6に示すように、頭部支持ネット70に対し下方へ向かう力が加わり、これに伴い、頭部支持ネット70、及び、この頭部支持ネット70と連係して動く回転受け部111を、矢印Y4方向へ回転させようとする力が発生することになるが、回転規制部96により回転受け部111の矢印Y4方向への回転が規制されるため、頭部支持ネット70が後頭部位置T1に位置した状態が維持される。
【0032】
さらに、図6に示すように、頭部支持ネット70が後頭部位置T1に位置している場合、上面視において、首元用ノズルリンク80に形成された3つのノズル83、83、83と、頭部支持ネット70とが重ならない状態となる。ここで、首元用ノズルリンク80は、被洗髪者の首元に洗浄液を噴射するためのノズルリンクであり、ノズル83から略真上へ向かって洗浄水が噴射される。そして、頭部支持ネット70が後頭部位置T1に位置している場合、上面視において、首元用ノズルリンク80に形成された3つのノズル83、83、83と、頭部支持ネット70とが重ならない状態となるため、首元用ノズルリンク80から、被洗髪者の首元に、頭部支持ネット70に阻害されることなく、確実に、洗浄水を噴射できる。
【0033】
一方で、図8(B)を参照し、回転受け部111が、回転ボス94の貫通孔95内において、中心軸L1を中心として、図8(B)における反時計回り(矢印Y5に示す方向)へ回転すると、肉厚部112の首元位置時接触面114が回転規制部96に接触し、貫通孔95内における回転受け部111のそれ以上の回転が規制される。そして、本実施形態では、首元位置時接触面114が回転規制部96に接触し、貫通孔95における回転受け部111の回転が規制された状態に至ったときに、頭部支持ネット70が前方へ向かって延在した状態となるよう、回転受け部111において肉厚部112が形成されている。以下の説明では、頭部支持ネット70が前方へ向かって延在した状態(図8(B)に示す状態)を、適宜、「頭部支持ネット70が首元位置T2に位置している」と表現する。
【0034】
首元位置T2は、自動洗髪機1による自動洗髪時ではなく、美容師等の人間が、シンク2に収めた被洗髪者の頭部を、直接、洗髪する際に被洗髪者の首元を支持する位置である。詳述すると、頭部支持ネット70が後頭部位置T1している場合、頭部支持ネット70が被洗髪者の後頭部を覆うこととなり、美容師等の人手による後頭部の洗髪を阻害することとなる。一方で、頭部支持ネット70が首元位置T2に位置している場合は、頭部支持ネット70により被洗髪者の後頭部が覆われることなく、頭部の髪が生えている部位のほとんど全てが露出した状態となる。このため、美容師等は、直接、被洗髪者の頭部を洗髪する際は、頭部支持ネット70を回転させて、頭部支持ネット70を首元位置T2に至らしめた上で、洗髪を実行する。これにより、スムーズ、かつ、良好な洗髪が実現される。
なお、頭部支持ネット70が首元位置T2に位置している場合、被洗髪者の首元が支持された状態となり、後頭部が支持された場合と比較して、被洗髪者の負担が大きくなることが考えられる。しかしながら、美容師等が、直接、被洗髪者の頭部を洗髪する際、通常、手によって適切に頭部を支持しつつ、洗髪が行われる。このため、被洗髪者に対して過度の負担がかかることはない。
また、首元位置T2に位置する頭部支持ネット70に被洗髪者の首元が載置された場合、図8(B)の矢印Y7に示すように、頭部支持ネット70に対し下方へ向かう力が加わり、これに伴い、頭部支持ネット70、及び、この頭部支持ネット70と連係して動く回転受け部111を矢印Y5方向へ回転させようとする力が発生することになるが、回転規制部96により回転受け部111の矢印Y5方向への回転が規制されるため、頭部支持ネット70が首元位置T2に位置した状態が維持される。
【0035】
このように、本実施形態では、頭部支持ネット70は、後頭部位置T1と首元位置T2との間を移動可能である。このため、自動洗髪中は頭部支持ネット70を後頭部位置T1に位置させ、これにより、被洗髪者に負担を感じさせることなく、シンク2内で被洗髪者の頭部を支持し、一方、人間が直接洗髪する際は頭部支持ネット70を首元位置T2に位置させ、これにより、洗髪をスムーズ、かつ、良好に行うようにする、といった使い方が可能になる。
特に、本実施形態では、頭部支持ネット70を回動させる、という非常に簡易な作業により頭部支持ネット70を後頭部位置T1又は首元位置T2へ位置させることができるため、作業性がよい。さらに、頭部支持ネット70の位置を変更する場合、洗髪者に頭を上げてもらった状態で頭部支持ネット70を回転すればよく、洗髪者の頭部をシンク2から一旦出す必要がないため、ユーザーの利便性、使用者の利便性がよい。
なお、図6及び図7(A)に示すように、頭部支持ネット70は、立ち上り部90を介して、シンク2に収めた頭部の首元下方で連結された状態となる。このように、首元下方で連結したことで、左右の洗髪空間を確保できる。
【0036】
次いで、図9を用いて、頭部支持ネット70の使用の態様の一例について説明する。
自動洗髪機1による自動洗髪中は、図9(A)に示すように、頭部支持ネット70を後頭部位置T1に位置させる。これにより、自動洗髪が行われている間、頭部支持ネット70によって被洗髪者の後頭部が支持され、被洗髪者の負担を軽減した上で、シンク2における適切な位置に頭部が延在した状態が維持される。
そして、自動洗髪機1による自動洗髪が終了すると、すすぎや、さらなる確実な洗浄、又は、洗髪者の依頼等により、美容師等の人間により、直接、被洗髪者の洗髪が行われる。その際、被洗髪者に頭を上げてもらった上で、頭部支持ネット70を回動させ、後頭部位置T1から首元位置T2へ頭部支持ネット70を移動する(図9(B))。これにより、被洗髪者の首元が頭部支持ネット70に支持された状態で、被洗髪者の頭部の全域が、洗髪可能に露出する。そして、美容師等の人間により、スムーズかつ良好な洗髪が実行される。
【0037】
以上説明したように、本実施形態に係る自動洗髪機1は、被洗髪者の頭部を収めるシンク2と、このシンク2に収めた頭部に向けて洗浄水を噴射する上ノズルリンク11、下ノズルリンク12とを備えている。そして、自動洗髪機1に、仰向け姿勢の被洗髪者の首を前記シンクの内側に臨ませた状態で被洗髪者の後頭部を支える頭部支持ネット70を設けると共に、この頭部支持ネット70を、被洗髪者の後頭部を支持する後頭部位置T1と被洗髪者の首元を支持する首元位置T2との間を移動可能に構成している。
これによれば、自動洗髪中は頭部支持ネット70を後頭部位置T1に位置させ、これにより、被洗髪者に負担を感じさせることなく、シンク2内で被洗髪者の頭部を支持し、一方、人間が直接洗髪する際は頭部支持ネット70を首元位置T2に位置させ、これにより、洗髪をスムーズ、かつ、良好に行うようにする、といった使い方が可能になる。
【0038】
また、本実施形態では、頭部支持ネット70を、横方向に延びる軸を中心として、後頭部位置T1と首元位置T2との間を回転可能に構成している。
これによれば、頭部支持ネット70を回動させる、という非常に簡易な作業により頭部支持ネット70を後頭部位置T1又は首元位置T2へ位置させることができるため、作業性がよい。
【0039】
また、本実施形態では、頭部支持ネット70を、後頭部位置T1へ向かって回転した場合、後頭部位置T1に至ったときに回転が制限されて当該位置において位置決めされると共に、首元位置T2へ向かって回転した場合、首元位置T2に至ったときに回転が制限されて当該位置において位置決めされる構成としている。
これによれば、頭部支持ネット70を回動させる、という非常に簡易な作業により頭部支持ネット70を後頭部位置T1又は首元位置T2へ位置させることができるため、作業性がよい。
【0040】
また、本実施形態では、頭部支持ネット70が後頭部位置T1に位置している場合、上面視において、首元用ノズルリンク80に形成された3つのノズル83、83、83と、頭部支持ネット70とが重ならない状態となる。ここで、首元用ノズルリンク80は、被洗髪者の首元に洗浄液を噴射するためのノズルリンクであり、ノズル83から略真上へ向かって洗浄水が噴射される。そして、頭部支持ネット70が後頭部位置T1に位置している場合、上面視において、首元用ノズルリンク80に形成された3つのノズル83、83、83と、頭部支持ネット70とが重ならない状態となるため、首元用ノズルリンク80から、被洗髪者の首元に、頭部支持ネット70に阻害されることなく、確実に、洗浄水を噴射できる。
また、本実施形態では、頭部支持ネット70と、首元用ノズルリンク80とを、シンク2に収めた頭部の首元下方で連結している。
これによれば、首元下方で連結したことで、左右の洗髪空間を確保できる。
【0041】
また、本実施形態では、頭部支持ネット70を、縦方向に延びる支持部材106を、横方向に間隔をあけて設けた縦格子状のネットによって形成している。
一般に、人間の後頭部において、髪は、後頭部から首元へ向かう方向に向かって生えているため、頭部支持ネット70を縦格子状とすることにより、網状としたり又は横格子状としたりした場合と比較して、支持部材106のそれぞれの間に形成された隙間から髪を垂らし易くなる。これにより、頭部支持ネット70において髪が束になり、また、からまり、これらに起因して、後頭部に対する洗浄水の噴射が阻害される、といった事態が発生することを好適に防止できる。
【0042】
なお、上述した実施の形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の範囲内で任意に変形および応用が可能である。
例えば、上述の実施形態では、自動洗髪機1は、上ノズルリンク11と下ノズルリンク12を備え、これらが協働する構成であったが、ノズルリンクの数や、形状は実施形態の例に限定されない。すなわち、シンク2内で頭部を支える自動洗髪機1に広く本発明を適用可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 自動洗髪機
2 シンク
T1 後頭部位置
T2 首元位置
11 上ノズルリンク(ノズルリンク)
12 下ノズルリンク(ノズルリンク)
70 頭部支持ネット(頭部支持部)
80 首元用ノズルリンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被洗髪者の頭部を収めるシンクと、このシンクに収めた頭部に向けて洗浄水を噴射するノズルリンクとを備えた自動洗髪機において、
仰向け姿勢の被洗髪者の首を前記シンクの内側に臨ませた状態で被洗髪者の後頭部を支える頭部支持部を設け、
この頭部支持部を、被洗髪者の後頭部を支持する位置と被洗髪者の首元を支持する位置との間を移動可能に構成したことを特徴とする自動洗髪機。
【請求項2】
前記頭部支持部を、
横方向に延びる軸を中心として、被洗髪者の後頭部を支持する位置と被洗髪者の首元を支持する位置との間を回転可能に構成したことを特徴とする請求項1に記載の自動洗髪機。
【請求項3】
前記頭部支持部を、
被洗髪者の後頭部を支持する位置へ向かって回転した場合、被洗髪者の後頭部を支持する位置に至ったときに回転が制限されて当該位置において位置決めされると共に、被洗髪者の首元を支持する位置へ向かって回転した場合、被洗髪者の首元を支持する位置に至ったときに回転が制限されて当該位置において位置決めされる構成としたことを特徴とする請求項2に記載の自動洗髪機。
【請求項4】
前記シンクに収めた頭部の首元に向かって洗浄水を噴射する首元用ノズルリンクをさらに設け、
前記頭部支持部が被洗髪者の後頭部を支持するとき、前記首元用ノズルリンクから噴射される洗浄水を遮らない位置となるように前記頭部支持部を配置したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の自動洗髪機。
【請求項5】
前記頭部支持部と、前記首元用ノズルリンクとを、前記シンクに収めた頭部の首元下方で連結したことを特徴とする請求項4に記載の自動洗髪機。
【請求項6】
前記頭部支持部を、
縦方向に延びる支持部材を、横方向に間隔をあけて設けた縦格子状のネットによって形成したことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の自動洗髪機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−212247(P2011−212247A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−83676(P2010−83676)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(308012668)三洋アクア株式会社 (37)
【出願人】(000108672)タカラベルモント株式会社 (113)
【Fターム(参考)】