説明

自動消火デバイス

【課題】 器機内の任意の場所に設置可能で、小さな局所的な領域の過熱、発煙、発火などを検知して早期に初期段階で自動的に消火可能で、環境保護の面から使用が好ましくない難燃剤を使用する事なく発火から延焼に至る事故を防止する自動消火デバイスを提供すること。
【解決手段】 機器内に設置可能であって、雰囲気の温度、煙、炎、および可燃性ガスのうち少なくとも1つを電気的に感知する異常感知機能と、この感知に連動して消火剤を散布する消火機能を備えることにより自動消火デバイスを構成する。そのケースの一面に異常感知機能を構成するものとして煙検知センサー12、および温度センサー13が設置され、異常検知信号処理回路14に接続されている。消火剤17およびそれを噴出させるための起爆剤16を内蔵した小型の消火剤散布器18が自動消火デバイス11内に設置され、上記センサーが設置された同じ面上にその消火剤噴出孔19が開けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家電製品、通信機器、製造機械、制御機器などの機器内に設置され、同機器内に設置された他の電気部品、デバイス、回路基板、電気配線、機械部品などの発火事故を未然に防止するための自動消火デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々な電気・機械装置、機器などの発火防止のためには装置や機器の近くに煙や温度などを検知する装置と消火装置を設置して対応している場合が多いが、検知して消火剤や散水で消火するまでには時間がかかり、機器やその設置された周辺部に損傷を与えてしまう。また、家庭内のテレビなどの家電製品についても、自動消火装置が備えられていることが望ましいが、コスト、形状などの点で現状では難しい。
【0003】
そこで、機器内で使用する電気電子部品自体の出火防止のため、各部品の材料、特に有機材料に難燃剤を配合することが広く行われている。しかし、難燃剤はハロゲンを含むものが多く部品を廃棄し焼却する際、ダイオキシンなどの環境負荷物質が発生する。このため、欧州を中心に難燃剤の添加を規制する流れとなっている。
【0004】
このよう背景から、特許文献1に示すように、機器内に設置し、その過熱状態に反応して自動的に消火を行う消火装置が報告されている。図3は上記の従来の機器内に設置可能な消火装置の断面図を示す。
【0005】
31はテレビ受像機である。32はテレビ受像機31内に組込まれる消火装置であり、この消火装置32は密閉状の第1の容器33内に封入された熱膨張剤34が過熱によって膨張する時の加圧力により可撓性の第2の容器35を押圧変形し、該容器の一部に設けた栓部材37を開弁して該容器内に封入した消火薬剤36をノズル38から噴出することにより家電製品、工作機械、制御機械等の発熱源からの出火を防止するものである。
【0006】
【特許文献1】特開平8−117353号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図3に示した従来の消火装置は、周囲雰囲気の過熱状態による容器内の圧力を利用するものであり、その大きさも100mm程度以上であるので、消火剤の噴出のためにはある程度大きな熱量を必要とする。そこで、発火の元となる初期状態の小さな領域での局所的な過熱には反応することができなく、消火までには機器内の部品を多く損傷してしまう。より小型の機器や耐熱性が低い機器には使用することができない。また、過熱にいたる前の発煙や可燃性ガスの放出、原因となる小さな部品の発火にもすぐに反応することができない。
【0008】
本発明の課題は、器機内の任意の場所に設置可能で、小さな局所的な領域の過熱、発煙、発火などを検知して早期に初期段階で自動的に消火可能で、難燃剤を使用することなく発火から延焼に至る事故を防止する自動消火デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を達成するため、本発明では、機器内に設置可能であって、雰囲気の温度、または煙、または炎、または可燃性ガスの少なくとも1つを電気的に感知する異常感知機能と、この感知に連動して消火剤を散布する消火機能を備えることにより自動消火デバイスを構成する。
【0010】
また、本発明による自動消火デバイスでは、異常感知機能と消火機能が一体の部品として構成されてもよい。また、本発明による自動消火デバイスでは、異常感知機能と、消火機能が互いに分離した部品として構成され、両者間が電気的に接続されていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、器機内の任意の場所に設置可能で、小さな局所的な領域の過熱、発煙、発火などを検知して早期に初期段階で自動的に消火可能で、難燃剤を使用することなく発火から延焼に至る事故を防止する自動消火デバイスが得られる。
【0012】
さらに具体的には、電気的な煙センサーや炎センサー又は、電気的な温度センサーになどより火災の兆候である異常を感知し、感知を電気信号による処理回路により処理して電気的または機械的な動作により消火剤を散布する機能と接続し、火災発生前に消火剤を発煙、発火または異常な温度の部品に散布することで火災発生を未然に防止する。
【0013】
これら異常感知機能の部分と消火剤散布の消火機能部分を同一の部品内に設置し、小型化を図ることも、あるいは、これを別部品とし消火剤散布の部分を設計上火災発生の危険性がもっとも高い部分などの近くに配置することで更なる安全性の確保を図ることができる。
【0014】
さらに従来行われてきた、個々の部品を難燃化することで発火・延焼を防止することに比較し、環境負荷となりえる難燃剤を含有しない製品を設計することが可能となり、環境配慮型の製品開発が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0016】
図1は本発明による自動消火デバイスの実施の形態の説明図であり、図1(a)は本発明による自動消火デバイスの一例の内部の斜視図を示し、図1(b)は機器内に組み込まれた本発明による自動消火デバイスの一例を示す機器内部の斜視図である。
【0017】
図1(a)において、11は本発明による自動消火デバイスを示し、そのケースの一面に異常感知機能を構成するものとして煙検知センサー12、および温度センサー13が設置され、異常検知信号処理回路14に接続されている。10は外部からの電源供給端子である。
【0018】
一方、消火機能を構成するものとして、消火剤17およびそれを噴出させるための起爆剤16を内蔵した小型の消火剤散布器18が自動消火デバイス11内に設置され、上記センサーが設置された同じ面上にその消火剤噴出孔19が開けられている。また、起爆剤16にトリガーを印加するための電気端子20は前記異常検知信号処理回路14に接続された消火機能制御回路15に接続されている。
【0019】
図1(b)において、21はテレビ、エアコンなどの家庭電気機器、または通信装置などの機器を示し、22はその機器の内部に設置され、多くの電気部品を実装した回路基板、23はそれらの電気部品の中で故障による発熱や発火の可能性を含んだ被監視電気部品である。その上方に本発明による自動消火デバイス11が、煙検知センサー、温度センサー、消火剤噴出孔の設置された面が下方の被監視電気部品23の方向を向くように設置されている。
【0020】
図1(b)において、被監視電気部品23が過熱し、または過熱によって発煙を生ずると煙検知センサー12、または温度センサー13からの感知信号が異常検知信号処理回路14で処理されて異常信号が検出され、それにより消火機能制御回路15内で起爆剤16へのトリガーパルスが発生して送出され、起爆剤16が爆発して消火剤17を下方に噴出させ、被監視電気部品23のそれ以上の加熱、または延焼を防止する。
【0021】
以上の各部機能のフローチャートを図2に示す。図2においては上記の説明で省略した、誤動作を防止するための安全回路25、外部からの電源供給が断たれた場合に対処するための電源バックアップ26が設けられている。
【0022】
図1において使用する煙検知センサー12としては、例えば一酸化炭素などのガスの吸着によって電気伝導度が変化するいわゆる感ガス半導体素子を用いることができ、温度センサー13としては温度によって抵抗値が変化するサーミスターを、また炎センサーとしては赤外線センサーなどを用いることができる。
【0023】
また、消火剤散布器18に使用する消火剤17としては燐酸塩類を主成分とした粉末のABS消火剤や尿素、炭酸ナトリウムを主成分とした液体の消火剤を用いることができ、起爆剤としてはアジ化ナトリウムなどを使用することができる。また、本発明においては、起爆剤を用いず、電気的な発熱体と熱膨張剤を一体にして、その膨張圧力により消火剤を噴出させる構造とすることもできる。
【0024】
以上のように、本発明においては、電気的な煙センサー又は、電気的な温度センサーにより火災の兆候を感知し、感知を電気信号による処理回路により処理して電気的または機械的な動作により消火剤を散布する機能と接続し、火災発生前に消火剤を発煙し、または過熱した異常な温度の部品に散布することで火災発生を未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明による自動消火デバイスの実施の形態の説明図。図1(a)は本発明による自動消火デバイスの一例の内部の斜視図。図1(b)は機器内に組み込まれた本発明による自動消火デバイスの一例を示す機器内部の斜視図。
【図2】各部機能のフローチャート。
【図3】従来の機器内に設置可能な消火装置を示す図。
【符号の説明】
【0026】
10 電源供給端子
11 自動消火デバイス
12 煙感知センサー
13 温度センサー
14 異常検知信号処理回路
15 消火機能制御回路
16 起爆剤
17 消火剤
18 消火剤散布器
19 消火剤噴出孔
20 電気端子
21 機器
22 回路基板
23 被監視電気部品
25 安全回路
26 電源バックアップ
31 テレビ受像機
32 消火装置
33 第1の容器
34 熱膨張剤
35 第2の容器
36 消火薬剤
37 栓部材
38 ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器内に設置可能であって、雰囲気の温度、煙、炎、および可燃性ガスのうち少なくとも1つを電気的に感知する異常感知機能と、この感知に連動して消火剤を散布する消火機能を有する自動消火デバイス。
【請求項2】
請求項1記載の自動消火デバイスにおいて、異常感知機能と消火機能が一体の部品として構成された自動消火デバイス。
【請求項3】
請求項1記載の自動消火デバイスにおいて、異常感知機能と、消火機能が互いに分離した部品として構成され、両者間が電気的に接続された自動消火デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−334064(P2006−334064A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−161153(P2005−161153)
【出願日】平成17年6月1日(2005.6.1)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)
【出願人】(302005204)NECトーキン岩手株式会社 (6)