説明

自動液吐出装置

【課題】ポンプ付き容器の押下ヘッドの押し下げ動作開始から液体吐出開始までの時間を安定化することができる自動液吐出装置を提供する。
【解決手段】ポンプ付き容器30の押下ヘッド37を嵌め込んだヘッド嵌合枠4を有する昇降ユニット50を昇降させて、押下ヘッド37の押し下げによるポンプ付き容器30の吐出ノズルからの液吐出のみならず、押し下げを完了した押下ヘッド37の昇降上限位置への上昇、復帰をも行うヘッド押下機構80を有する自動液吐出装置1の提供。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消毒液や洗浄液等の液体を収容する容器に押下ヘッドの押し下げ操作によって前記容器内の液体を吐出ノズルへ供給するポンプを装着したポンプ付き容器を筐体内に取り出し可能に格納し、検出領域に差し込まれたユーザー(利用者)の手指をセンサによって検出したときに、前記液体を吐出ノズルから吐出する吐出動作を自動で行う自動液吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、手指の消毒や洗浄等のために、ユーザー(利用者)の手指をセンサによって検出することにより、消毒液や洗浄液といった液体を吐出ノズルから自動的に吐出する自動液吐出装置が提供されている。この自動液吐出装置としては、消毒液や洗浄液等の液体を収容したボトル形の容器にその上方に突出する押下ヘッドを有するポンプを装着したポンプ付き容器(図14参照)を筐体内に格納したものがある。この自動液吐出装置は、ポンプ付き容器の押下ヘッドの側方から突出する吐出ノズル自体を装置の吐出ノズルとするものであり、センサがユーザーの手指を検出することで筐体内の押下機構が駆動してポンプ付き容器の押下ヘッドを自動的に押し下げ、容器内の液体を前記吐出ノズルから吐出する(例えば特許文献1)。
【0003】
図14は、上述の自動液吐出装置に用いられるポンプ付き容器100のポンプ110と、自動液吐出装置の押下機構の押下部材120との関係を説明する図である。なお、図14において、上側を上、下側を下として説明する。
前記ポンプ付き容器100のポンプ110は、ボトル形の容器101の上部開口部102に螺着したキャップ111を貫通して昇降可能に設けたステム112のキャップ111上に突出された上端に一体化された押下ヘッド114及び該押下ヘッド114からその側方に突出する吐出ノズル113が設けられたノズル付き押下レバー110Aを有する。
【0004】
ノズル付き押下レバー110Aは、ポンプ110に設けられた図示略のリターンスプリングによって上方へ弾性付勢されており、自動液吐出装置は、センサがユーザーの手指を検出したときに押下機構が、ポンプ付き容器100のポンプ110の押下ヘッド114上に載置状態に設けられた押下部材120を下降させて、ノズル付き押下レバー110Aをリターンスプリングの弾性付勢力に抗して押し下げる。ポンプ付き容器100は、ノズル付き押下レバー110Aの押し下げによって、ノズル付き押下レバー110Aに貫設された吐出用液流路119の吐出ノズル113先端に開口する吐出液流路119の片端の液出口119bから液体を吐出する。
【0005】
押下機構による押下部材120の下降(押し下げ)は、押下部材120が予め設定された下降限界位置に達したところで完了する。ノズル付き押下レバー110A及び押下部材120は、押下機構による押下部材120の押し下げ完了後に、ポンプ付き容器100のリターンスプリングの弾性付勢力によって押し上げられて押し下げ前の位置(初期位置)に復帰する。また、押し下げ完了後の押下部材120を、その上下動ストロークの上限位置への復帰を、押下機構に設けられたスプリングによって行い、ポンプ付き容器100のノズル付き押下レバーの上昇限界位置(リターンスプリングによる押し上げ限界位置)への復帰をポンプのリターンスプリングによって行う構成も提案されている。
【0006】
自動液吐出装置は、押下部材120が、ポンプ110のノズル付き押下レバーの上昇限界位置(押し下げ前の初期位置)に対応して設定した初期位置(押し下げ前の位置)にある状態で、ユーザーの手指を検出していない手指検出用のセンサが前記手指を検出することで、押下部材120の押し下げによる液体吐出動作(ここではノズル付き押下レバー110A及び押下部材120の押し下げ開始から初期位置への復帰までを指す)を、予め設定した回数(1回又は複数回)だけ実行する。
自動液吐出装置は、液体吐出動作を行っていない状態において、ユーザーの手指を検出していない手指検出用のセンサが前記手指を検出したときに、液体吐出動作を実行する。液体動作中から動作完了後まで手指検出用センサが前記手指の検出を継続しているときは、設定回数の吐出動作の完了後に、手指検出用センサが手指を検出していない状態にしてから手指検出用センサが手指を検出することで、次回の吐出動作が実行される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−153036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図14に例示した従来の自動液吐出装置は、押下部材120が押下ヘッド114の押し下げを開始してから液体吐出開始までの時間にばらつきがあるといった不満があった。
本発明者による検証の結果、押下部材120が押下ヘッド114を押し下げる際に、ステム112が斜め押しの状態となることがあり、この斜め押しの発生の有無が液体吐出開始時間のばらつきの原因になっている。
【0009】
本発明は、上述の課題に鑑みて、ヘッド押下機構の押下ヘッドの押し下げ動作開始から液体吐出開始までの時間を安定化することができる自動液吐出装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
図14に例示した従来の自動液吐出装置について、本発明者による検証の結果、ステム112の斜め押しは、押下部材120が押下ヘッド114を上昇限界位置から押し下げる際に、押下ヘッド114が押下部材120に対して滑って位置ずれを生じることで発生している。
ポンプ付き容器100の構成部材はプラスチック製であることが一般的である。一方、自動液吐出装置の押下部材120は、ポンプ付き容器100のポンプ110の種々の押下ヘッド114形状に対応して押し下げを可能にするために、ステム112の軸線に垂直に延在する板状に形成されていることが一般的である。押下ヘッド114の押下部材120に対する滑りによる位置ずれは、押下部材120が押下ヘッド114を上昇限界位置から押し下げる際に、プラスチック製のステム112に若干の弾性変形(撓み変形)が生じることに起因する。押下ヘッド114に押下部材120に対する位置ずれが生じると、ステム112の撓み変形が大きくなり、その結果、ステム112が斜め押しの状態となる。
【0011】
ステム112が斜め押しの状態となると、ステム112に斜め押しが生じていない場合に比べて、押下機構の押下ヘッドの押し下げ動作開始から液体吐出開始までの時間が長くなる。このことは、吐出ノズル113からの液体吐出前に、ユーザーが吐出ノズル113先端付近に差し出していた手を引っ込めてしまい、その後に吐出ノズル113から吐出された液体が無駄になる、といった不都合を誘発する。手指検出用のセンサがユーザーの手指を検出したときに2回以上の吐出動作を連続して実行する設定の場合には、吐出ノズル113から複数回行われる液体吐出の時間間隔が長くなると、ユーザーが設定数の吐出動作が完了したものと誤認して、設定数の吐出動作の完了前に、ユーザーが吐出ノズル113先端付近に差し出していた手を引っ込めてしまうことが生じ得る。
【0012】
また、押下部材114に対する滑りによるステム112の変形が大きい場合は、押し下げ完了によって下方への押圧力が解除された後もステム112が真っ直ぐの状態に直ちに復元せず、ステム112の若干の曲げ癖によって、押し下げ後のステム112の上昇時のキャップ111に対する摺動抵抗が大きくなり、ステム112の押し下げ前の元の位置への上昇が遅れることがある。これが、次の吐出動作の遅れの原因となる。また、ステム112の曲げ癖は、次の吐出動作の際の、押下部材120に対する押下ヘッド114の滑り、それによる斜め押しの原因になる。
【0013】
押下ヘッド114としては、平坦な上面を有する円板状のもの(図14参照)以外に、ドーム形の上面を有する板状のものや、押下ヘッド114全体が球状のもの等のように板状の押下部材120との接触部分が小さいものもある。このような接触部分が小さい押下ヘッドは、押下部材120による押し下げ時に押下部材120に対して滑りによる位置ずれを生じやすく、位置ずれに起因した上述の斜め押しの発生頻度が高くなる。
【0014】
本発明は、上記知見に基づき、ヘッド押下機構の押下ヘッドの押し下げ動作開始から液体吐出開始までの時間を安定化するために以下の構成を提供する。
第1の発明は、液体を収容する容器に押下ヘッドの押し下げ操作によって前記液体を吐出ノズルへ供給して吐出させるポンプを装着したポンプ付き容器を取り出し可能に格納する筐体に、前記吐出ノズルから液体が吐出される吐出領域あるいはその近傍を含んで設定した検出領域に差し込まれたユーザーの手指を検出するセンサと、該センサが前記手指を検出したときに前記ポンプの押下ヘッドを押し下げるヘッド押下機構とが設けられ、前記ヘッド押下機構は、前記ポンプのポンプケースに昇降可能に挿入されその上方に突出するステムの上端に該ステムの軸線に垂直の板状に形成された前記押下ヘッドが脱着可能に嵌め込まれることで該押下ヘッドを上下から挟持する四角枠状のヘッド嵌合枠が、前記筐体に上下方向に延在配置された昇降案内部材に案内されて上下方向に移動する昇降ベースに一体化された昇降ユニットと、この昇降ユニットを予め設定した昇降ストロークを以て上下動させる昇降用駆動機構とを有することを特徴とする自動液吐出装置を提供する。
第2の発明は、前記ヘッド嵌合枠の昇降ストロークによるポンプ付き容器のポンプの押下ヘッドの昇降上限位置が、前記ポンプ付き容器のポンプの構造上の押下ヘッドの上昇限界位置よりも下方に位置することを特徴とする第1の発明の自動液吐出装置を提供する。
第3の発明は、前記昇降用駆動機構はモータを駆動源とするギアユニットであることを特徴とする第1または第2の発明の自動液吐出装置を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ポンプ付き容器の押下ヘッドを押し下げるヘッド嵌合枠が四角枠状となっており、押下ヘッドを上下から挟持した状態となるため、ヘッド嵌合枠に対する押下ヘッドの位置ずれを生じることがない。このため、押下ヘッドの位置ずれに起因したステムの斜め押しを防ぐことができ、ヘッド押下機構の押下ヘッドの押し下げ動作開始から液体吐出開始までの時間を安定化することができる。
【0016】
また、本発明に係る自動液吐出装置のヘッド押下機構は、ヘッド嵌合枠が設けられている昇降ユニットを上下動させる昇降用駆動機構を有しており、昇降ユニットの押し下げのみならず、押し下げの完了した昇降ユニットの昇降上限位置への復帰をも行う。したがって、この自動液吐出装置は、ヘッド押下機構の駆動によって、押し下げ完了後の昇降ユニットを上昇させることで押下ヘッドを昇降ユニットとともに押し下げ前の位置に確実に復帰させることができる。また、ヘッド押下機構の駆動によって、押し下げ完了後の昇降ユニットを上昇させることで、昇降ユニットのヘッド嵌合枠に嵌合状態の押下ヘッドも昇降ユニットとともに押し下げ前の位置に復帰させる構成は、押し下げ完了後の押下ヘッドが押し下げ前の位置に復帰するまでに要する時間が安定する。このことも、ヘッド押下機構の押下ヘッドの押し下げ動作開始から液体吐出開始までの時間の安定化に有効に寄与する。
さらに、この構成であれば、例えば比較的粘度が高い液体をポンプ付き容器から吐出した場合でも、押し下げを完了した昇降ユニットの上昇によって押下ヘッドを昇降ユニットとともに押し下げ前の位置に確実に復帰させることができるため、押下ヘッドの上昇の遅れによって次回吐出動作までの待機時間が長くなるといった不都合の発生を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態の自動液吐出装置を示す全体斜視図である。
【図2】図1の自動液吐出装置の液受けトレーを前カバーに対して開いて使用状態とした状態を示す全体斜視図である。
【図3】図1の自動液吐出装置における筐体の前カバーを取り外した状態を示す斜視図である。
【図4】図1の自動液吐出装置における昇降ユニット付近を示す正面図である。
【図5】図1の自動液吐出装置における昇降ユニット付近を示す部分破断側面図である。
【図6】図1の自動液吐出装置における昇降ユニット付近を示す部分破断平面図である。
【図7】図1の自動液吐出装置における昇降ユニット及び該昇降ユニットのヘッド嵌合枠に嵌め込まれた押下ヘッドが、昇降用駆動機構による昇降ストロークの昇降上限位置にある状態を示す正面図である。
【図8】昇降ユニット及び押下ヘッドが図7の昇降上限位置から該昇降上限位置と昇降下限位置との間の中間位置に下降された状態を示す正面図である。
【図9】昇降ユニット及び押下ヘッドが昇降下限位置にある状態を示す正面図である。
【図10】昇降ユニット及び押下ヘッドが図9の昇降下限位置から該昇降下限位置と昇降上限位置との間の中間位置に上昇された状態を示す正面図である。
【図11】図1の自動液吐出装置に用いられるポンプ付き容器の一例を示す側面図である。
【図12】図1の自動液吐出装置に用いられるポンプ付き容器の他の例を示す側面図である。
【図13】(a)〜(c)は、図1の自動液吐出装置に用いられるポンプ付き容器の押下ヘッドの別態様を示す図である。
【図14】従来の自動液吐出装置の押下部材とポンプ付き容器の押下ヘッドとの関係を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を図示する実施形態により具体的に説明する。図1〜図11は本発明の一実施形態の自動液吐出装置1を示し、図1は全体斜視図、図2は使用状態の斜視図、図3は内部を示す斜視図である。
なお、図1〜図5、図7〜図13(a)〜(c)において、上側を上、下側を下として説明する。また、図4、図6〜図10、図12、図13(a)〜(c)において、左右を左右(左側を左、右側を右)として説明する。
【0019】
図3に示すように、自動液吐出装置1は、略直方体のボックス状となっている筐体2の内部に、消毒液、洗浄液といった液体を収容するポンプ付き容器30を出し入れ可能に格納している。また、この自動液吐出装置1は、図4に示すように、筐体2内に、前記ポンプ付き容器30の容器31からその上方に突出されたステム34上端の押下ヘッド37を押し下げて、ポンプ付き容器30内の液体を押下ヘッド37からその側方に突出する吐出ノズル35先端から吐出させるヘッド押下機構80を有する。図1、図2に示すように、ポンプ付き容器30の前記吐出ノズル35は、筐体2に形成されたノズル突出用長孔15を介して筐体2外側に突出されている。
【0020】
また、この自動液吐出装置1は、吐出ノズル35から液体が吐出される吐出領域(吐出ノズル35先端部の延長上に位置する領域)あるいはその近傍を含んで設定した検出領域に差し込まれたユーザーの手指10を検出するセンサ7(図3、図5参照)を有する。そして、この自動液吐出装置1は、センサ7がユーザーの手指10を検出することで、制御部21(ここでは後述の制御基板)によって駆動制御される前記ヘッド押下機構80が、ポンプ付き容器30の前記押下ヘッド37を押し下げ、ポンプ付き容器30内の消毒液、洗浄液といった液体を吐出ノズル35先端から吐出させる。
なお、この自動液吐出装置1のヘッド押下機構80は、後述のように、ポンプ付き容器30の押下ヘッド37を押し下げのみならず、押下ヘッド37を押し下げた後に、次の押し下げ動作に備えるために、該押下ヘッド37を上昇させ、押し下げ前の初期位置(昇降上限位置)への復帰をも行うものである。
【0021】
図1〜図3に示すように、筐体2は、底板22上に平面視コ字形の側壁部23が立設され該側壁部23上に天板部24を有する容器状の筐体本体11と、筐体本体11の前面側の開口部11aに脱着可能に設けられ前記開口部11aを開閉可能となっている前カバー12とによって構成されている。筐体本体11及び前カバー12はプラスチック製の部材である。
筐体本体11の天板部24にはキー孔13が設けられており、キー孔13にキー14(図3参照)を差し込んで回転操作することにより前カバー12の閉じ状態のロックとロック解除とを切り換えることができる。筐体本体11から前カバー12を取り外し、筐体本体11の前面側の開口部11aを開放すると、ポンプ付き容器30の交換作業を行える。
【0022】
前カバー12のノズル突出用長孔15は、前カバー12に上下方向に延在形成されている。吐出ノズル35は、自動液吐出装置1のヘッド押下機構80によるポンプ付き容器30の押下ヘッド37の昇降に伴い、ノズル突出用長孔15を貫通した状態のまま、前記押下ヘッド37と一体的に昇降する。
ノズル突出用長孔15は、ヘッド押下機構80による押下ヘッド37の昇降に伴う吐出ノズル35の押下ヘッド37との一体的な昇降を可能とするために、前カバー12における上下方向の形成範囲を、ヘッド押下機構80による押下ヘッド37の昇降に伴う吐出ノズル35の上下方向の可動範囲よりも若干大きく確保してある。
【0023】
図2に示すように、筐体2の前カバー12の前面部分における下部には透明パネル部16が設けられており、透明パネル部16を通じて筐体2の内部の透視が可能となっている。従って、ポンプ付き容器30内の液体の残量を透明パネル部16を通じて確認することができる。
なお、図示例の筐体2における、前カバー12の透明パネル部16及び後述のセンサカバー部12a以外の部分と、筐体本体11とは遮光性を有している。
【0024】
前カバー12には、皿形の液受けトレー17が回動可能に取り付けられている。この液受けトレー17は、その外周部の一部が、筐体本体11の底板22にその前面側のヒンジ部25を介して底板22前面と底板22上面との境界に沿って延在する回転軸線を以て回転可能に枢着され、前記ヒンジ部25から延出されている。この液受けトレー17は、前記ヒンジ部25を中心とする回動によって、筐体本体11に装着状態の前カバー12にその外面側から重ねた閉じ状態(図1参照)と、筐体2から前側に突出する開状態(図2参照)とを自在に切り換えることができる。液受けトレー17は、図2に例示した開状態にすることで、前カバー12の前記ノズル突出用長孔15から筐体2前側に突出された吐出ノズル35の下方に配置され、前記吐出ノズル35から吐出された液体を受け止める位置となるため、液体がテーブル面や床面に落下することを防止することができる。
【0025】
なお、この実施形態の液受けトレー17は遮光性部材である。図1に示すように、閉じ状態にした液受けトレー17は、前カバー12の透明パネル部16を覆って、筐体2内のポンプ付き容器30への太陽光や紫外光等の外光の照射を防ぐことができる。但し、液受けトレー17は、少なくとも吐出ノズル35から吐出された液体を受け止める機能を有していれば良く、必ずしも遮光性部材である必要は無い。
【0026】
図3に例示したセンサ7は、ユーザーの手指からの赤外線を検出する赤外線センサである。この赤外線センサ(センサ7)は、筐体2の内部に設けられており、図1、図2に示すように前カバー12に設けられた赤外線透過性のセンサカバー部12aを介して、ユーザーの手指からの赤外線を検出する。センサカバー部12aは、遮光性の前カバー12の前面側に突出するキャップ状に形成されており、前カバー12を筐体本体11に装着した状態においてその内側にセンサ7を収納する。
【0027】
図3、図5に示すように、赤外線センサ(センサ7)は、具体的には、筐体本体11に取り付けて筐体2内側上部に設けられた制御基板21に実装されている。但し、センサ7としては、赤外線センサに限定されず、吐出ノズル35から液体が吐出される吐出領域あるいはその近傍を含んで設定した検出領域に差し込まれたユーザーの手指10を検出可能なものであれば良く、また、その設置位置にも限定は無い。また、センサ7としては、センサカバー部12aを介してユーザーの手指からの赤外線を検出する形態に限定されず、ユーザーの手指からの赤外線をセンサカバー部12aを介さずに直接受光して検出する形態としても良い。
【0028】
なお、図示例のセンサカバー部12aは、前カバー12に形成された開口部12c(図1、図2参照)に赤外線透過性のキャップ状部材を内挿して、前カバー12にその前面側に突出状態に取り付けたものであるが、これに限定されない。例えば、予め制御基板21に固定してセンサ7を収納したキャップ状のセンサカバー部12aが、筐体本体11に対する前カバー12の着脱によって前カバー12に開口されている開口部12cに挿脱される構成も採用可能である。
【0029】
図3に示すように、筐体2の筐体本体11の内部にはヘッド押下機構80(具体的には、図4等に示す後述の昇降用駆動機構60のモータ61)に電力を供給するバッテリユニット20が格納されている。制御部21(制御基板)は、バッテリユニット20の上側に配置されている。
【0030】
ヘッド押下機構80は、モータ61(電動モータ)を駆動源とする昇降用駆動機構60の駆動によって、ポンプ付き容器30の押下ヘッド37を嵌め込むことができるヘッド嵌合枠4を有する昇降ユニット50を昇降させて、昇降ユニット50とともにヘッド嵌合枠4に嵌め込まれた前記押下ヘッド37を昇降させる。制御部21は前記昇降用駆動機構60のモータ61の駆動を制御することにより、ヘッド押下機構80によるポンプ付き容器30の押下ヘッド37の昇降動作、すなわち、昇降用駆動機構60による昇降ユニット50のヘッド嵌合枠4の昇降動作を制御する。
【0031】
図3に示すように、この自動液吐出装置1は、制御基板21に設けられている制御回路(電気回路)の回路電圧が予め設定した閾値以上であるか否かを表示するためのパワーモニタランプ8を有している。このパワーモニタランプ8としては、例えば制御基板21の回路電圧が予め設定した閾値以上であるときに点灯し、前記回路電圧が前記閾値よりも低いときに消灯するものや、回路電圧が前記閾値以上の状態から前記閾値よりも低くなったときに発光色が変化するもの等を用いることができる。
図示例の自動液吐出装置1において、パワーモニタランプ8は、前記制御基板21に実装して、前記前カバー12に設けられた出射窓12bに臨む位置に設けられており、点灯時の出射光を前記出射窓12bから筐体2前側へ出射できる。但し、パワーモニタランプ8の設置位置は、図示例に限定されず、適宜変更可能である。
【0032】
図3、図6に示すように、筐体本体11の側壁部23は、背板部23aとその両側の側板部23b、23cとによって平面視コ字形に形成されている。図3に示すように、バッテリユニット20は、側壁部23の一対の側板部23b、23cの一方(図3において符号23bの側板部23b)に取り付けられている。バッテリユニット20と該バッテリユニット20を取り付けた側板部23bとは反対側の側板部23cとの間には、ポンプ付き容器30の容器31を収納するための空間(容器収納空間)が確保されている。ポンプ付き容器30は、前記容器収納空間に収納した容器31を底板22上に載置し、容器31上方の押下ヘッド37をヘッド押下機構80の昇降ユニット50のヘッド嵌合枠4に脱着可能に嵌め込んで筐体本体11内に格納される。
【0033】
図11は、この実施形態の自動液吐出装置1のポンプ付き容器30を示す。ポンプ付き容器30は消毒液や洗浄液といった液体を収容する容器31と、容器31に装着されたポンプ32とを有している。
ポンプ32は、容器31上端の口部31a外周に螺着して着脱可能に取り付けられるキャップ33に、筒状のポンプケース36、前記キャップ33を貫通してその中心軸線に沿って移動するステム34等を設けたキャップ一体型のポンプである。
図11に示すポンプ付き容器30において前記ポンプ32は、容器31上端の口部31a外周に螺着して取り付けられたキャップ33と、キャップ33を上下方向に貫通して昇降可能に設けられたステム34の上端に押下ヘッド37及び吐出ノズル35を一体的に設けたノズル付き押下レバー32Aとを有している。また、このポンプ32は、前記キャップ33に連結して容器31内に挿入された筒状のポンプケース36と、前記キャップ33から下方に延出するポンプケース36の下端部から垂下する吸い上げ管40とを有している。吸い上げ管40は、前記ポンプケース36とともに容器31内に挿入され、その下端部が容器31底部に到達されている。
【0034】
キャップ33は、その上端のリング状上壁部33aの内周に一体化されてリング状上壁部33aから下方に突出するステム収納筒部33bを有している。ステム34は、ステム収納筒部33bに内挿されている。前記ポンプケース36は、その上端部を前記ステム収納筒部33bの外周に固定してキャップ33に連結され、前記ステム収納筒部33bから下方へ延出されている。
ノズル付き押下レバー32Aは、ステム34の下端部に一体化してキャップ33下側(ステム収納筒部33b下側)に配置され前記ポンプケース36内に昇降可能に収納されたピストン38を有している。また、このポンプ32は、ポンプケース36内に収納して前記ピストン38の下側に配置したリターンスプリング39によって、ノズル付き押下レバー32Aを上方へ弾性付勢している。
【0035】
ノズル付き押下レバー32Aは、ポンプ付き容器30を本実施形態の自動液吐出装置1の筐体2の外に配置した取り出し状態で、かつ該ノズル付き押下レバー32Aにその自重以外にキャップ33に対して相対的に下方への押し下げ力が作用していないときに、リターンスプリング39の弾性付勢力によって、ピストン38がステム収納筒部33bに当接する上昇限界位置に配置される。ピストン38がステム収納筒部33bに当接する位置が、ポンプ付き容器30のポンプ32の構造上の、ノズル付き押下レバー32Aの上昇限界位置である。押下ヘッド37及び吐出ノズル35は、ノズル付き押下レバー32Aが上昇限界位置にあるとき、キャップ33からその上方に離隔した位置に配置される。また、ノズル付き押下レバー32Aは、前記押下ヘッド37がキャップ33(具体的にはリング状上壁部33a)に当接する位置が、ポンプ付き容器30の構造上のノズル付き押下レバー32Aの下降限界位置となっている。
また、ステム収納筒部33bは、該ステム収納筒部33bとポンプケース36とからなるシリンダ部32Bの天井壁として機能する。以下、ステム収納筒部33bを天井壁とも言う。
【0036】
ポンプケース36の下端部には、ポンプケース36から下方に垂下する前記吸い上げ管40内側の液流路からシリンダ部32B内への液体の流入を許可し、シリンダ部32Bから吸い上げ管40への液体の逆流を阻止する逆止弁41(図示例ではボール式逆止弁)が設けられている。この逆止弁41は、シリンダ部32B内における該逆止弁41とピストン38との間の領域である液充填室36aと、吸い上げ管40内側の液流路との間に介在されている。
前記リターンスプリング39は、ポンプケース36下端部のスプリング受け部36bとその上方の前記ピストン38との間に配置して、液充填室36aに収納されている。前記スプリング受け部36bは、該スプリング受け部36bから下方へのリターンスプリング39の変位、及びポンプケース36から下方への脱落を規制する。
【0037】
ポンプ付き容器30は、キャップ33からその上方に離隔した位置にある押下ヘッド37をリターンスプリング39の弾性付勢力に抗して押し下げ、ノズル付き押下レバー32A全体を下降させた後、ノズル付き押下レバー32Aの上昇に伴い、逆止弁41を介して吸い上げ管40から液充填室36aに液体を吸い込む。このとき、吸い上げ管40の下端開口部から、容器31内の液体が吸い上げ管40内側の流路に吸い込まれる。
ポンプ付き容器30の吐出ノズル35からの液吐出は、液充填室36a内に液体が充填された状態で、キャップ33からその上方に離隔した位置にある押下ヘッド37をリターンスプリング39の弾性付勢力に抗して押し下げることで実現される。ポンプ付き容器30は、液充填室36a内に液体が充填された状態で、キャップ33からその上方に離隔した位置にある押下ヘッド37を押し下げると、ノズル付き押下レバー32Aの下降に伴いピストン38が液充填室36a内の液体をノズル付き押下レバー32Aに貫設された吐出用液流路42に押し出す。その結果、吐出ノズル35先端に開口する吐出液流路42の片端の液出口42bから液体を吐出させることができる。吐出用液流路42は、ノズル付き押下レバー32A下端部の前記液充填室36aに臨む部分に開口された液入口42aから吐出ノズル35先端に開口する液出口42bまで、ノズル付き押下レバー32Aの構成部材の内部に延在形成されている。
【0038】
なお、図示例のノズル付き押下レバー32Aは、吐出用液流路42の液入口42a側の端部に、液入口42aから液出口42b方向への液体の移動を許可し、吐出用液流路42内の液体の液充填室36aへの逆流防止用の逆止弁42c(図示例ではボール式逆止弁。以下、レバー下端逆止弁とも言う)を有している。このため、このポンプ32は、押下ヘッド37の押し下げによる吐出ノズル35先端からの液体の吐出後に、ノズル付き押下レバー32Aが上昇しても、吐出用液流路42におけるレバー下端逆止弁42cから液出口42b側の領域に液体が充填された状態が保たれる。
【0039】
自動液吐出装置1の筐体2内に格納されたポンプ付き容器30は、昇降ユニット50のヘッド嵌合枠4に嵌め込まれた押下ヘッド37が、ヘッド嵌合枠4によって上下から挟持される。ヘッド押下機構80は、昇降ユニット50を昇降させることで、ポンプ付き容器30の押下ヘッド37、ノズル付き押下レバー32A全体を昇降させる。
ヘッド押下機構80によるノズル付き押下レバー32Aの昇降範囲は、ポンプ付き容器30の構造上のノズル付き押下レバー32Aの昇降範囲(既述の上昇限界位置及び下降限界位置で定められる範囲)と一致させるか、該昇降範囲よりも若干狭い範囲とされる。
【0040】
図11に示すように、図示例の自動液吐出装置1は、ヘッド押下機構80によるノズル付き押下レバー32Aの昇降範囲(昇降ストローク)の上限位置G1(昇降上限位置)が、ポンプ付き容器30の構造上のノズル付き押下レバー32Aの上昇限界位置G2によりも若干下方とされている。すなわち、ヘッド押下機構80による昇降ストロークの上限位置G1にあるノズル付き押下レバー32Aの押下ヘッド37上端の筐体本体11の底板22上面からの高さ方向(上下方向)の離隔距離は、筐体2から取り出し状態のポンプ付き容器30におけるノズル付き押下レバー32Aが上昇限界位置G2にあるときの全高(容器31底面から押下ヘッド37上端までの距離)に比べて若干小さい。また、図示例の自動液吐出装置1において、ヘッド押下機構80によるノズル付き押下レバー32Aの昇降範囲(昇降ストローク)の下限位置G3(昇降下限位置)は、ポンプ付き容器30の構造上のノズル付き押下レバー32Aの下降限界位置によりも若干上方とされているが、この下限位置G3は、ポンプ付き容器30の構造上のノズル付き押下レバー32Aの下降限界位置と一致させても良い。
【0041】
押下ヘッド37の押し下げは、自動吐出装置1のヘッド押下機構80の駆動によって昇降ユニット50が下降されることにより行われる。押下ヘッド37は、ヘッド押下機構80の駆動によって、昇降下限位置まで下降される。
また、ヘッド押下機構80によって降下された押下ヘッド37は、リターンスプリング39の弾性付勢力、及びヘッド押下機構80の駆動によって昇降ユニット50が上昇することにより、昇降下限位置から上昇され、昇降上限位置に復帰する。
【0042】
図4〜図6に示すように、ヘッド押下機構80は昇降ユニット50と、昇降ユニット50を上下動させる昇降用駆動機構60とによって構成されている。
昇降ユニット50は、筐体2の筐体本体11の内部に固定して設けられた昇降案内部材26によって上下方向の移動が案内されて昇降用駆動機構60の駆動によって昇降される昇降ベース51に、ポンプ付き容器30のポンプ32の押下ヘッド37が脱着可能に嵌め込まれるヘッド嵌合枠4を一体化したものである。
昇降ベース51、ヘッド嵌合枠4及び昇降案内部材26はプラスチック製であるが、これらの材質には特には限定はなく、金属製のものも採用可能である。
【0043】
図6に示すように、昇降ベース51は、平面視コ字形に形成され上下方向に延在する板状に形成され、昇降案内部材26によって装置前後方向(図6において上下方向)に垂直の向きに保持されたままその昇降が案内される。この昇降ベース51は、装置前後方向に垂直の主板部52と、この主板部52の装置左右方向(図6において左右方向)両端に突設されたリブ状の突壁部53とによって平面視コ字形に形成されている。前記突壁部53は、前記主板部52から、筐体本体11の背面側(背板部23b側。装置前後方向後側)に向かって突出されており、その突端が、昇降案内部材26の後述の板部26aに当接されている。
【0044】
図5、図6に示すように、図示例の昇降ベース51は、主板部52上端に筐体本体11の背面側(背板部23b側)に向かって突出された上端リブ52aを有している。この上端リブ52aは、装置左右方向両側の突壁部53を橋絡している。この上端リブ52aの主板部52から装置前後方向後側への突出寸法は、突壁部53の主板部52から装置前後方向後側への突出寸法と同じに揃えられている。
但し、昇降ベース51は、上端リブ52aの主板部52から装置前後方向後側への突出寸法は、突壁部53の主板部52からの突出寸法よりも小さくしても良く、また、上端リブ52aを省略しても良い。
【0045】
ヘッド嵌合枠4は昇降ベース51の前面側に装置前後方向前側へ向かって突出、延出されている。
ヘッド嵌合枠4は昇降ベース51に一体化されている。図示例の昇降ユニット50は、ヘッド嵌合枠4と昇降ベース51とを一体に樹脂成形したプラスチック製の一体成形品である。但し、昇降ユニット50としては、プラスチック製の一体成形品に限定されず、例えば昇降ベース51に該昇降ベース51とは別部材のヘッド嵌合枠4を固定して一体化した構成であっても良い。
【0046】
図4、図5に示すように、ヘッド嵌合枠4は、上下に離隔して互いに平行に設けられた平板状の上板部4a及び下板部4bが左右の側板部4cによって連結された四角枠状に形成されている。
図3〜図7に示すように、下板部4bの幅方向(左右方向)の中間部分には、該下板部4bの前端から昇降ベース51に向かって延びるスリット4dが形成されている。
【0047】
ポンプ付き容器30の押下ヘッド37はステム34軸線に対して垂直の板状に形成された部分(ヘッド本体)を有する。自動吐出装置1の筐体2内に格納するポンプ付き容器30としては、押下ヘッド37のヘッド本体の高さ寸法(押下ヘッド37のステム34の軸線方向における寸法)が、ヘッド嵌合枠4の上板部4aと下板部4bとの間隔(離隔距離)と略同じものを用いる。
ヘッド嵌合枠4は、前記下板部4bのスリット4dにポンプ付き容器30のステム34を挿入することにより、押下ヘッド37のヘッド本体を上板部4aと下板部4bとの間に挿入して挟み込むことが可能となっている。
【0048】
また、自動液吐出装置1の筐体2内に格納されているポンプ付き容器30は、筐体2の前カバー12を筐体本体11から取り外して筐体本体11前側を開放し、ヘッド嵌合枠4内側に嵌め込まれている押下ヘッド37、及び前記下板部4bのスリット4dに挿入されているステム34を、ヘッド嵌合枠4から装置前側へ抜き出すことで、筐体本体11から簡単に取り出すことができる。これにより、ポンプ付き容器30の交換を楽に行うことができる。
【0049】
図4、図6、図11等に示すように、ポンプ付き容器30の押下ヘッド37は、ステム34の軸線に対し垂直の平板状(図示例では円板状)に形成されており、ステム34の軸線に対して垂直の平面状の上面37a及び下面37bを有する。この押下ヘッド37は、その全体がヘッド本体として機能するものである。この押下ヘッド37において、高さ寸法は、前記下面37bから上面37aからの距離、すなわち、板状の押下ヘッド37の厚み寸法である。
【0050】
但し、ポンプ付き容器30の押下ヘッド37としては、図12に示す押下ヘッド37Aのように、ステム34の軸線に対し垂直の板状のヘッド本体37cの下側に、ステム34上端部に外挿した筒状首部37dを突設したものも採用可能である。この押下ヘッド37Aは、ヘッド本体37cの厚み寸法が、ヘッド嵌合枠4の上板部4aと下板部4bとの間隔と略同じになっている。この押下ヘッド37Aは、筒状首部37dをヘッド嵌合枠4の前記下板部4bのスリット4dに挿入することで、ヘッド本体37cを、ヘッド嵌合枠4の上板部4aと下板部4bとの間に挿入して嵌め込むことができる。
【0051】
また、ポンプ付き容器30の押下ヘッド37のヘッド本体としては、その高さ寸法が、ヘッド嵌合枠4の上板部4aと下板部4bとの間隔と略同じであり、ヘッド嵌合枠4の上板部4aと下板部4bとの間に嵌め込むことが可能なものであれば良く、ヘッド本体の形状には特に限定は無い。押下ヘッド37のヘッド本体としては、例えば図13(a)に示すように、上面が上に凸の外観ドーム形をなす板状のもの(ヘッド本体37e)、図13(b)に示すように、上面が凹曲面部をなす板状のもの(ヘッド本体37f)等も採用可能である。また、ヘッド本体としては、図13(c)に示すように、球状あるいは半球状(図示例は半球状)に形成されたもの(ヘッド本体37g)も採用可能である。
図13(a)〜(c)に例示したポンプ付き容器30の押下ヘッド37は、いずれも、ヘッド本体の下側に、ヘッド嵌合枠4の前記下板部4bのスリット4dに挿入可能な太さの筒状首部37dが突設された構成のものであるが、押下ヘッドとしては、筒状首部37dを有しておらず、ヘッド本体のみによって構成されているものも採用可能である。
【0052】
ヘッド嵌合枠4の上板部4aの下部には、装置前後方向に延在するリブ4eが複数突設されている。ヘッド嵌合枠4の上板部4aはこのリブ4eを含む。
複数のリブ4eは、装置左右方向に間隔を開けて複数箇所に突設されている。このリブ4eは、昇降ベース51から片持ち状に突出するヘッド嵌合枠4の昇降ベース51に対する曲げ強度を高める。その結果、ヘッド嵌合枠4は撓むことなく押下ヘッド37を押し下げることが可能となっている。
【0053】
図6に示すように、昇降案内部材26は筐体2の筐体本体11の内部に固定された支持板55に取り付けられている。支持板55は筐体本体11内面に突設された複数の支持突片11bにねじ56を用いてねじ止めして筐体本体11に、装置前後方向に直交する向きで固定されている。図示例の支持突片11bは、筐体本体11の背板部23bに突設されている。支持板55は、筐体本体11の背板部23bの支持突片11b以外の板状部分から前側に離隔した位置に設けられている。
【0054】
昇降案内部材26は、支持板55の前面側(装置前後方向前側)に固定して上下方向に延在配置されている。昇降案内部材26は支持板55に当接した板部26bと、板部26bの左右方向両端部に装置前側に向かって突設された平面視L字形の鉤部26aとを有して構成されている。昇降案内部材26の左右両側の鉤部26aは、板部26bからの突出先端同士が、装置左右方向において互いに対向する平面視L字形に形成されている。
【0055】
昇降ユニット50のヘッド嵌合枠4は、昇降ベース51の装置左右方向中央部から前側(装置前後方向前側)へ突出されている。昇降ユニット50は、前記昇降ベース51の前記ヘッド嵌合枠4を介して左右両側に張り出す張出部を、それぞれ、昇降案内部材26の鉤部26aと板部26bとによって構成された平面視コ字状の案内部の内側に収納した状態で、昇降案内部材26に対して摺動しながら昇降する。また、昇降ユニット50は、前記昇降ベース51の左右両側の張出部が前記鉤部26aによって板部26bに押さえ込まれており、板部26bと鉤部26aとに摺動しながら、昇降案内部材26に対してがたつくことなく昇降する。
なお、昇降ユニット50のヘッド嵌合枠4は、昇降ユニット50の昇降に伴い、昇降案内部材26の左右両側の鉤部26aの間を昇降する。
【0056】
次に、この実施形態の自動吐出装置1のヘッド押下機構80の昇降用駆動機構60について説明する。
昇降用駆動機構60は筐体2の筐体本体11の内部に固定された支持板55に取り付けられている。図4、図5、図6に示すように、昇降用駆動機構60は支持板55の前面側に取り付けられたモータ61と、支持板55に軸支してその裏面(筐体本体11の背板部23aに臨む面)側に配置した複数のギア63、64、65によって減速機構を構成するギアユニット62とを有している。
【0057】
図4、図5、図6に示すように、ギアユニット62は、モータ61の駆動ギア61aに噛合する入力ギア63と、一または複数の伝達ギア65(図示例ではひとつ)と、この伝達ギア65を介して伝達される前記入力ギア63からの回転駆動力によって回転駆動される出力ギア64とを有している。
また、出力ギア64のギア軸64aは、前記支持板55から、昇降案内部材26の板部26b中央部に開口された窓孔26c(図5参照)を貫通して前記板部26bの前側へ突出された部分(前側突出部)を有している。そして、昇降用駆動機構60は、前記ギア軸64aの前記前側突出部に固定して一体的に設けられたピン板67の前面側に突設した係合ピン66を、前記昇降ユニット50の昇降ベース51の主板部52に左右方向に延在形成された長孔状の係合スリット54に挿入している。
【0058】
入力ギア63は、モータ61の駆動ギア61aに噛合するメインギア63aに、該メインギア63aに比べて径小のサブギア63bを同軸に固定して一体化したものである。
前記伝達ギア65は、入力ギア63のサブギア63bに噛合するメインギア65aに、該メインギア65aに比べて径小のサブギア65bを同軸に固定して一体化したものであり、サブギア65bを出力ギア64に噛合させて、入力ギア63を介して伝達されるモータ61の回転駆動力を出力ギア64に伝達する。
なお、入力ギア63のメインギア63a、伝達ギア65のメインギア65a、出力ギア64は、入力ギア63のサブギア63b及び伝達ギア65のサブギア65bに比べて径大に形成されている。また、互いに噛み合わされたギア間では、駆動側ギアが従動側ギアに比べて径小で歯数が少なく、モータ61からの回転駆動力を減速して伝達する減速比が確保されている。
【0059】
ギアユニット62は、モータ61の回転駆動力を減速して出力ギア64に伝達して出力ギア64及びピン板67を回転させる減速機構を構成するものであれば良く、図示例の構成に限定されない。
ギアユニット62としては、例えば、入力ギア63と出力ギア64との間に複数の伝達ギア65を設けた構成も採用可能である。この場合は、複数の伝達ギア65を、駆動側の伝達ギア65のサブギア65bに従動側の伝達ギア65のメインギア65aを噛み合わせ、回転駆動力伝達方向において最も駆動側に位置する伝達ギア65のメインギア65aを入力ギア63のサブギア63bに噛み合わせ、最も従動側に位置する伝達ギア65のサブギア65bを出力ギア64に噛み合わせる。
また、ギアユニット62としては、伝達ギア65を省略して、入力ギア63のサブギア63bに出力ギア64を直接噛み合わせた構成も採用可能である。
【0060】
前記昇降用駆動機構60は、モータ61の回転駆動によって出力ギア64が回転すると、ピン板67が出力ギア64のギア軸64aと一体に回転する。ピン板67における係合ピン66の突設位置は、出力ギア64のギア軸64aに対し偏心されている。このため、モータ61の駆動によってピン板67が回転すると、この回転によって係合ピン66はギア軸64aを中心とした円周上を移動(回動)する円運動を行う。既述のように、係合ピン66は昇降ベース51の主板部52に形成されている係合スリット54に挿入されているため、係合ピン66が円運動を行うと、昇降ベース51に上下方向の移動力が作用して、係合ピン66の回動に伴い昇降ユニット50が昇降案内部材26に案内されながら上下方向に移動する。これによりヘッド嵌合枠4による押下ヘッド37の押し下げ及び引き上げを行うことができる。
【0061】
ピン板67の回転に伴う係合ピン66の回動は、係合スリット54長手方向における挿入位置の移動を伴って進行する。係合スリット54の長手方向寸法は、ピン板67の回転によって回動する係合ピン66の装置左右方向の変位量(移動量)よりも長い。装置左右方向における係合スリット54の形成範囲は、ピン板67が1回転したときの係合ピン66の装置左右方向における可動範囲よりも広く、係合ピン66はピン板67の回転によって係合スリット54に挿入された状態を維持したまま出力ギア64のギア軸64aの軸線を中心に回動する。
また、係合スリット66の長手方向に直交する幅方向(上下方向)の寸法は、係合ピン66外径と略同等(同等又は僅かに大きい)に揃えられている。
【0062】
図4、図7に示すように、この自動液吐出装置1は、液吐出動作を行っていないとき、すなわちヘッド押下機構80の昇降用駆動機構60のモータ61が駆動されていないときには、係合ピン66が、ピン板67の回転による移動ルートにおける最上部である待機位置に配置される。
昇降ベース51及びポンプ付き容器30の押下ヘッド37の昇降ストロークは、ピン板67の回転による係合ピン66の回動半径によって決まる。昇降ベース51及びポンプ付き容器30の押下ヘッド37の昇降ストロークは、係合ピン66が待機位置にあるときが上限位置(昇降上限位置)であり、係合ピン66がその回動の中心を介して前記待機位置とは反対側に位置するとき、すなわち係合ピン66がその回動による移動ルートにおける最下部(図9に示す位置。以下、回動下端位置とも言う)に位置するときが下限位置(昇降下限位置)である。
【0063】
昇降用駆動機構60の駆動による押下ヘッド37の押し下げは、図7〜図9に示すように係合ピン66がピン板67の回転によって待機位置から半円を描いて回動下端位置に到達する間に行われる。押下ヘッド37の押し下げにより、ポンプ付き容器30の吐出ノズル35から液体の吐出が行われる。図9〜図10に示すように、押下ヘッド37は、押し下げ完了後、係合ピン66がピン板67の回転によって回動下端位置から半円を描いて待機位置に到達することで、昇降上限位置に復帰する。
【0064】
ポンプ付き容器30は、押下ヘッド37が容器31に対して昇降することで、ノズル付き押下レバー32A全体が容器31に対して昇降する。したがって、ポンプ付き容器30は、昇降用駆動機構60の駆動によって押下ヘッド37が昇降上限位置から押し下げられることで、吐出ノズル35から液体を吐出できる。また、ポンプ付き容器30は、押し下げの完了した押下ヘッド37が昇降下限位置から昇降上限位置に復帰することで、吸い上げ管40(図11参照)内の液体をシリンダ部32Bの液充填室36a内に吸い上げる。
【0065】
モータ61の駆動は、制御部21によって制御されている。制御部21はセンサ7がユーザーの手指を検出したときに出力する検出信号が入力されると、モータ61を駆動する。モータ61が駆動することにより係合ピン66が待機位置から円運動を開始し、回動下端位置を経由して待機位置に復帰する。昇降用駆動機構60の駆動によるピン板67の回転方向、係合ピン66の回動方向は一定であり、図示例では右回り方向になっている。
【0066】
昇降用駆動機構60は、係合ピン66が待機位置にある状態で、センサ7がユーザーの手指を検出したときに、制御部21の制御によって、係合ピン66を待機位置から回動下端位置を経由して待機位置に復帰させるピン回動動作を予め設定した回数(1回又は複数回)だけ実行する。1回のピン回動動作によって、ポンプ付き容器30のノズル付き押下レバー32Aを昇降上限位置から昇降下限位置まで押し下げてから昇降上限位置に復帰させるまでの1サイクルの吐出動作(昇降動作)が行われる。
また、昇降用駆動機構60は、係合ピン66の回動動作(ピン回動動作)を開始してから設定回数のピン回動動作が完了するまで、係合ピン66の回動を停止することなく、一定速度で係合ピン66を回動させる。
【0067】
昇降用駆動機構60は、ピン回動動作を行っていない状態において、ユーザーの手指を検出していないセンサ7が前記手指を検出したときに、ピン回動動作を実行する。ピン回動動作中から動作完了後までセンサ7が前記手指の検出を継続しているときは、設定回数のピン回動動作の完了後に、センサ7が手指を検出していない状態にしてからセンサ7が手指を検出することで、次回のピン回動動作が実行される。
【0068】
図4、図7に示すように、この自動液吐出装置1は、筐体本体11内に、昇降上限位置に存在する昇降ユニット50を検出するリミットセンサ27を有する。リミットセンサ27が昇降ユニット50を検出しているとき、リミットセンサ27から出力される検出信号が制御部21に入力される。制御部21は、昇降用駆動機構60のモータ61が停止しており、かつリミットセンサ27が昇降ユニット50を検出している状態で、ユーザーの手指を検出したセンサ7から検出信号が入力されたときのみ、前記モータ61を駆動させて昇降用駆動機構60によるピン回動動作が開始させる。リミットセンサ27が昇降ユニット50を検出していない状態では、制御部21にユーザーの手指を検出したセンサ7から検出信号が入力されても、制御部21におけるセンサ7からの検出信号に基づくモータ61の制御はキャンセルされ、昇降用駆動機構60のピン回動動作は開始されない。
【0069】
センサ7がユーザーの手指を検出したときの昇降用駆動機構60のピン回動動作の設定回数が1回であるとき、ユーザーの手指を検出したセンサ7からの検出信号に基づいて制御部21の制御によって開始されたモータ61の駆動は、昇降ユニット50を検出したリミットセンサ27からの検出信号が制御部21に入力されることにより停止する。
センサ7がユーザーの手指を検出したときの昇降用駆動機構60のピン回動動作の設定回数が複数回であるとき、制御部21は、昇降ユニット50を検出したリミットセンサ27からの検出信号の入力によってピン回動動作の完了回数をカウントする。そして、制御部21は、最終回のピン回動動作によって下降され昇降上限位置に復帰した昇降ユニット50をリミットセンサ27が検出し、該リミットセンサ27からの検出信号が入力されることで、モータ61の駆動を停止させる。
【0070】
図7〜図10に例示するリミットセンサ27は、昇降案内部材26にその左右方向に互いに離隔させて取り付け対向配置した発光部27aと受光部27bとからなる光センサである。このリミットセンサ27の発光部27a及び受光部27bは、昇降ユニット50が昇降上限位置にあるときのヘッド嵌合枠4の上板部4aの配置位置を介してその両側位置に互いに対向させて設けられ、上板部4aの検出によって昇降上限位置の昇降ユニット50を検出する。
なお、リミットセンサ27としては、昇降上限位置にある昇降ユニット50を検出するものであれば良く、上述の光センサ等に限定されない。このリミットセンサ27としては、上述の光センサ等の非接触形センサの他、昇降ユニット50との接触によって昇降上限位置にある昇降ユニット50を検出を行う接触形センサであっても良い。
【0071】
この自動液吐出装置1は、四角枠状のヘッド嵌合枠4によってポンプ付き容器30の押下ヘッド37を上下から挟持するため、押下ヘッド37がヘッド嵌合枠4に対して位置ずれを生じることがない。このため、押下ヘッド37の位置ずれに起因したステム34の斜め押しがなくなり、ヘッド押下機構80の押下ヘッド37の押し下げ動作(この実施形態の自動液吐出装置1にあってはピン回動動作)の開始から吐出ノズル35からの液体吐出開始までの時間を安定化することができる。
【0072】
また、この自動液吐出装置1は、図14に例示した従来技術で生じていた、板状の押下部材120に対する押下ヘッド114の滑りに起因するステムの撓み変形を防ぐことができる。このため、この自動液吐出装置1は、板状の押下部材120に対する押下ヘッド114の滑りに起因する撓み変形によってステムを傷める心配が無く、その結果、ポンプ付き容器の寿命を延長できるといった利点もある。
【0073】
また、この自動液吐出装置1のヘッド押下機構80は、昇降ユニット50の押し下げのみならず、押し下げの完了した昇降ユニット50の昇降上限位置への復帰をも行う。このため、この自動液吐出装置1は、ヘッド押下機構80の駆動によって、押し下げ完了後の昇降ユニット50を上昇させることで、昇降ユニット50のヘッド嵌合枠4に嵌合状態の押下ヘッド37も昇降ユニット50とともに上昇させ、押し下げ前の位置、すなわち昇降上限位置に確実に復帰させることができる。
このため、この自動液吐出装置1は、何らかの原因で、容器31に対するステム34の移動抵抗が若干増大した場合であっても、押し下げ完了後のノズル付き押下レバー32Aの昇降下限位置から昇降上限位置への復帰に要する時間が長くなることを防ぐことができ、該時間を安定化することができる。
【0074】
なお、この自動液吐出装置1にあっては、上述のように、従来技術における板状の押下部材120に対する押下ヘッド114の滑りに起因するステムの撓み変形を防止できるため、該滑りに起因する撓み変形によるステムのキャップに対する摺動抵抗の増大、それによる押し下げ完了後のステム及び押下ヘッドの上昇の遅れを生じる心配は無い。
【0075】
さらに、この自動液吐出装置1は、例えば比較的粘度が高い液体をポンプ付き容器30から吐出した場合でも、ヘッド押下機構80の駆動によって、押し下げ完了後の昇降ユニット50を上昇させることで、昇降ユニット50のヘッド嵌合枠4に嵌合状態の押下ヘッド37も昇降ユニット50とともに上昇させ昇降上限位置に確実に復帰させることができる。したがって、押下ヘッドの上昇の遅れによって次回吐出動作までの待機時間が長くなるといった不都合の発生を防ぐことができる。
【0076】
上述の実施形態のヘッド押下機構80の昇降用駆動機構60は、減速機構を構成するギアユニット62の減速比によって、ポンプ付き容器30のシリンダ部32B内のリターンスプリング39の弾性付勢力の作用や、ポンプ付き容器30から吐出する液体の粘度に影響を受けることなく、ポンプ付き容器30のノズル付き押下レバー32Aの押下ヘッド37の押し下げと、押し下げ後の昇降上限位置への上昇、復帰とを同じ速度で円滑に行うことが可能である。
つまり、昇降用駆動機構60は、ポンプ付き容器30のノズル付き押下レバー32Aの昇降抵抗が多少大きくなっても、減速機構を構成するギアユニット62の減速比によって昇降ユニット50の昇降速度が全くあるいは殆ど影響を受けることなく、昇降ユニット50の昇降に押下ヘッド37を追従させて押下ヘッド37を円滑に昇降させることができる。
【0077】
また、ヘッド押下機構80が、昇降ユニット50の押し下げのみならず、押し下げの完了した昇降ユニット50の昇降上限位置への復帰をも行う構成は、例えばキャップ33に対するステム34の摺動抵抗の増大や、ポンプ付き容器30の容器31内の液体の粘度等によって、押し下げ後のノズル付き押下レバー32Aの上昇抵抗が増大したときに、昇降ユニット50の上昇によってノズル付き押下レバー32Aの押下レバー37を引き上げることでステム34に引っ張り力を作用させることができる。その結果、ステム34の撓み変形を解消あるいは小さくすることができる。
【0078】
図11に示すように、昇降用駆動機構60の駆動によるポンプ付き容器30の押下ヘッド37の昇降上限位置が、ポンプ付き容器30における構造上の押下ヘッド37の上昇限界位置よりも下方に位置する構成は、ポンプ付き容器30におけるシリンダ部32Bの液充填室36a内へのエアの侵入に起因するポンプミスの防止に有効に寄与する。
【0079】
本発明者は、仮に、図11に示すポンプ付き容器30を、図14に例示した従来の自動液吐出装置に適用し、ポンプ付き容器30のノズル付き押下レバー32Aを板状の押下部材120によって上昇限界位置から押し下げ、液吐出後にリターンスプリング39の弾性付勢力のみによって上昇限界位置に復帰させる構成とした場合について検証した。この場合、押下ヘッド37を押し下げて液体を吐出ノズル35から吐出する際に液体の円滑な吐出ができないポンプミスを生じることがあることを把握した。このポンプミスは、ポンプケース36内の液充填室36aへのエア侵入によって生じている。液充填室36aへのエアの侵入は、押下部材120が押下ヘッド37を上昇限界位置から押し下げる際に、ステム34が斜め押しの状態となることに起因する。
【0080】
ポンプ付き容器30の構成部材はプラスチック製であることが一般的であり、図11に例示したポンプ付き容器30は、ボール式逆止弁41、42cのボール及びリターンスプリング39を除く全ての部材がプラスチック製である。ステム34が斜め押しの状態になると、シリンダ部32B内のピストン38がポンプケース36内周面を押圧することによって、ポンプケース36がステム収納筒部33bの軸線に対して僅かに傾くことがある。このとき、ポンプケース36は、キャップ33に固定されている部分から下方に延出する部分(以下、下側延出部)の上端の変形によってステム収納筒部33bに対して傾いている。このため、ノズル付き押下レバー32Aが上昇限界位置にあるとき、ポンプケース36の下側延出部上端の変形が、ピストン38とポンプケース36内周面との間のシール性に影響を与え、液充填室36a内へのエア侵入の原因となる。
【0081】
ステム34とステム収納筒部33bとの間には、ノズル付き押下レバー32Aが上昇限界位置よりも下方に位置するときにピストン38と天井壁33bとの間に形成される空間に連通するエア通路が、例えばステム収納筒部33b内周面に形成した溝によって確保されている。ポンプケース36の下側延出部上端に変形が生じていると、ノズル付き押下レバー32Aが上昇限界位置にあるときに、液充填室36a内へのエア侵入と、逆止弁41から吸い上げ管40への液漏出とによって液充填室36a内の液量が減少することがあり、この液量減少によってポンプミスが発生する。
なお、液吐出後のポンプ付き容器30のノズル付き押下レバー32Aの吐出用流路42は、レバー下端逆止弁42cから液出口42b側に充填された液体によって塞がれた状態になっているため、この吐出用流路42から液充填室36aへのエア侵入は生じにくい。
【0082】
本実施形態の自動液吐出装置1は、筐体2内に格納したポンプ付き容器30の押下ヘッド37の押し下げ時にステム34の斜め押しを生じない。しかしながら、ポンプ付き容器30の押下ヘッド37の押し下げ時のステム34の若干の撓み変形によって、プラスチック製のポンプケース36の下側延出部のキャップ33に対する微小な傾動が繰り返し作用し、ポンプケース36の下側延出部の上端に微小な変形を生じる可能性はある。
図11に示すように、昇降用駆動機構60の駆動によるポンプ付き容器30の押下ヘッド37の昇降上限位置が、ポンプ付き容器30における構造上の押下ヘッド37の上昇限界位置よりも下方に位置する構成であれば、昇降用駆動機構60が駆動していない待機状態時に昇降上限位置に静止するノズル付き押下レバー32Aのピストン38が、シリンダ部32Bの天井壁33bから若干下方に配置される。すなわち、昇降上限位置のノズル付き押下レバー32Aのピストン38を、ポンプケース36の下側延出部の上端を避けて、その下方にずれた位置に配置できる。これにより、ポンプケース36の下側延出部上端の微小な変形が、ピストン38とポンプケース36内周面との間のシール性に影響を与えることによる液充填室36a内へのエア侵入を防ぐことができる。
【0083】
また、昇降用駆動機構60の駆動によるポンプ付き容器30の押下ヘッド37の昇降上限位置が、ポンプ付き容器30における構造上の押下ヘッド37の上昇限界位置よりも下方に位置する構成であれば、ポンプ付き容器30がポンプ32のリターンスプリング39の弾性力によって底板22とヘッド嵌合枠4との間に保持された状態となる。このため、押下ヘッド37の昇降動作の繰り返しや、装置移動時の振動、外部からの衝撃等による、筐体2内におけるポンプ付き容器30の位置ずれや、ヘッド嵌合枠4に対する押下ヘッド37の位置ずれを抑制できる。このことは、押下ヘッド37の押し下げによるステム34の撓み変形の抑制あるいは防止に有利であり、ステム34が傷みにくくなることでポンプ付き容器30の寿命延長に有効に寄与する。
【0084】
また、昇降用駆動機構60の駆動によるポンプ付き容器30の押下ヘッド37の昇降上限位置が、ポンプ付き容器30における構造上の押下ヘッド37の上昇限界位置よりも下方に位置する構成であれば、押下ヘッド37の昇降ストロークが短くなるため、押下ヘッド37を昇降上限位置から昇降下限位置まで下降させてから昇降上限位置に復帰させるまでの1サイクルの吐出動作(昇降動作)の所要時間を短縮できる。これにより、次回吐出までの待機時間を短縮することができる。
【0085】
なお、上述の実施形態においては、昇降ユニット50を昇降させる昇降用駆動機構として、モータ61の回転駆動力を減速して伝達してピン板67を回転させる減速機構を構成するギアユニット62を有する昇降用駆動機構60を例示したが、昇降用駆動機構としては、昇降ユニットの押し下げと、押し下げの完了した昇降ユニットの昇降上限位置への復帰とを行う構成のものであれば良く、上述のギアユニット62を有する構成に限定されない。昇降用駆動機構としては、例えば、昇降ユニットに突設した突片を挟み込んだ一対の偏心カムをモータの回転駆動力によって同期回転させて昇降させる構成等を採用可能である。また、昇降用駆動機構としては、例えば、長手方向中央部をピンによって軸支した棒材の一端をモータの駆動軸外周に該駆動軸と平行な軸線を以て回転自在にピン結合し、前記モータの駆動軸の回転駆動によって、前記棒材の他端とともに該他端に連結した昇降ユニットを昇降させる構成等も採用可能である。
【0086】
また、自動液吐出装置に適用するポンプ付き容器としては、液体を収容する容器に押下ヘッドの押し下げ操作によって前記液体を吐出ノズルへ供給して吐出させるポンプを装着した構成のものであれば良く、必ずしもレバー下端逆止弁42cを有するノズル付き押下レバーを採用した構成のものに限定されない。ポンプ付き容器のポンプとしては、レバー下端逆止弁42cを有していないノズル付き押下レバーを採用した構成も採用可能である。
また、このポンプとしては、押し下げ状態の押下ヘッドの上昇によるシリンダ部32Bの液充填室36aへの液体の吸い上げと、押下ヘッドの押し下げによって液充填室36aに充填されている液体の吐出ノズルへの押し出し、吐出を行う構成に限定されず、例えばキャップを貫通して昇降可能に設けられたステム上端の押下ヘッドの押し下げによって容器内にエアを送り込りことで、容器内の液体を該容器内に挿入された流路管から該流路管に連通する吐出ノズルへ押し出して吐出する構成のものも採用可能である。
【0087】
昇降案内部材26、昇降ユニット50等の具体的構成、形状は、上述の実施形態に限定されず、適宜設計変更可能である。
【符号の説明】
【0088】
1…自動液吐出装置、2…筐体、4…ヘッド嵌合枠、7…センサ、10…手指、26…昇降案内部材、30…ポンプ付き容器、31…容器、32…ポンプ、33…キャップ、34…ステム、35…吐出ノズル、36…ポンプケース、37…押下ヘッド、50…昇降ユニット、51…昇降ベース、60…昇降用駆動機構、61…モータ、62…ギアユニット、80…ヘッド押下機構。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容する容器に押下ヘッドの押し下げ操作によって前記液体を吐出ノズルへ供給して吐出させるポンプを装着したポンプ付き容器を取り出し可能に格納する筐体に、前記吐出ノズルから液体が吐出される吐出領域あるいはその近傍を含んで設定した検出領域に差し込まれたユーザーの手指を検出するセンサと、該センサが前記手指を検出したときに前記ポンプの押下ヘッドを押し下げるヘッド押下機構とが設けられ、
前記ヘッド押下機構は、前記ポンプのポンプケースに昇降可能に挿入されその上方に突出するステムの上端に該ステムの軸線に垂直の板状に形成された前記押下ヘッドが脱着可能に嵌め込まれることで該押下ヘッドを上下から挟持する四角枠状のヘッド嵌合枠が、前記筐体に上下方向に延在配置された昇降案内部材に案内されて上下方向に移動する昇降ベースに一体化された昇降ユニットと、この昇降ユニットを予め設定した昇降ストロークを以て上下動させる昇降用駆動機構とを有することを特徴とする自動液吐出装置。
【請求項2】
前記ヘッド嵌合枠の昇降ストロークによるポンプ付き容器のポンプの押下ヘッドの昇降上限位置が、前記ポンプ付き容器のポンプの構造上の押下ヘッドの上昇限界位置よりも下方に位置することを特徴とする請求項1に記載の自動液吐出装置。
【請求項3】
前記昇降用駆動機構はモータを駆動源とするギアユニットであることを特徴とする請求項1または2に記載の自動液吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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