自動焦点調節装置
【目的】本発明は、フレアー光の影響がある場合もカメラが測距不能に陥いることなく精度の良い測距性能を得る自動焦点調節装置を提供することを目的とする。
【構成】本発明は、撮影レンズ21を通過して測距光学系23に入射する被写体光像Oにフレアー光が影響を及ぼしているか否かをフレア判定部73により判定し、影響していると判定された場合には、光量補正部74により再結像した2像の光量差を補正することによってフレアー光の影響を除去する自動焦点調節装置である。
【構成】本発明は、撮影レンズ21を通過して測距光学系23に入射する被写体光像Oにフレアー光が影響を及ぼしているか否かをフレア判定部73により判定し、影響していると判定された場合には、光量補正部74により再結像した2像の光量差を補正することによってフレアー光の影響を除去する自動焦点調節装置である。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はカメラ等に用いられる自動焦点調節装置に係り、特に撮影光学系を通して得られた被写体像を2つの像に分割して再結像し、その像間隔より撮影光学系のデフォーカス量を求める装置に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、撮影光学系を通過して得られた被写体像を2つの像に分割して、再結像し、その像間隔より撮影光学系のデフォーカス量を求める自動焦点調節装置がある。このような自動焦点調節装置は、再結像された2つの像を比較し、最っとも一致性の高い像間隔を求めることによって撮影光学系のデフォーカス量を求めている。
【0003】従って、測距精度を向上させるためには、再結像された2つの像が等しい光強度、等しい波形を持ち、より一致性の高い像であることが求められている。逆にこの2つの像の一致性を検証することによって、検出した像間隔が信頼できるか否かを判定する自動焦点調節装置装置が提案されている。例えば、特公昭62−7523号公報によると、2つの像の比較値を像自身のコントラスト値と比較することによって、信頼性を判定する方式が開示されている。また、特開昭60−37513号公報には、2つの像の複数の比較値によって信頼性を判定する方式が開示されている。これらの方式では、検出した像間隔の信頼性がないと判断すれば、カメラは測距不能と判定し測距動作を中止している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、前述した自動焦点調節装置はカメラの複数のレンズ群から構成される撮影光学系を利用しており、撮影する画面内又は画面近傍に強い光源がある場合には、レンズ表面に反射等によるフレアー現象(以下、フレアーと称する)が起きることが知られている。
【0005】従来から前記フレアーが起きないような光学設計、レンズコーティングが試みられているが、カメラの小型化・軽量化・低コスト化に推移するに従い、画質に関しては、影響のない程度のフレアは許容されてきた。しかし、このようなフレアが起きた場合に、図11、図12に示すように測距に関しては精度に過大な影響を及ぼしている。図11は、位相差方式の原理を示した図である。
【0006】被写体Oの像は、撮影レンズ1,2,3を通過してフィルム等価面4に結像される。フィルム等価面4に結像された像は、再結像レンズ6によって2つに分割され、光電変換素子列7上に2つの像L,Rとして再結像される。前記光電変換素子列7は、再結像された被写体像L,Rを電気信号に変換し、変換された2像の電気信号を比較することによって、再結像された被写体像L,Rの像間隔を求める。次に測距視野外に被写体Oにくらべて著しく明るい被写体Mがある場合の様子を図12に示す。
【0007】被写体Mの像は、図12に実線で示すように、撮影レンズ11,12,13を通過して、フィルム等価面14に結像される。しかし、前記フィルム等価面14近傍におかれ、測距視野を制限する視野マスク15によって制限され、光電変換素子列17上には再結像されない。
【0008】ところが、図12の点線で示すように、前記撮影レンズ11と12との間に内面反射が起きた際に、大抵の場合は正規の結像関係を有せず、フレアー光として光電変換素子17上に投影される。その内面反射される光量は、極僅かな量であり、被写体OとMの光量が同程度であれば全く問題にはならない。ところが、測距視野外の被写体Mの光量が、視野内の被写体Oの光量に対して、数百〜数千倍を超える明るさであった場合には、再結像された被写体像L,Rに対して多少の影響がでる。図13は、光電変換素子列で変換された再結像被写体像の電気信号を示した図であり、この図に基づき被写体像への影響について説明する。
【0009】図13(a)は、フレアー光がない場合に、被写体像L,Rとも同じ光強度、同じ波形として検出されるが、同図(b),(c)のように、フレアー光が起きた場合には、被写体像L,Rが異なった光強度、異なった波形を生じる。このような像信号に対して、2像の間隔を求めて、さらに検出した像間隔の信頼性を判断すると、多くの場合には、信頼性がないと判定され、カメラは測距不能状態に陥いる。
【0010】また、仮に信頼性が有ると判定されても、このような異なった波形で検出した像間隔では、精度が得られない。例えば、図13(b)に示すような波形であれば、被写体の像間隔が、フレアー光の像間隔に影響される。そこで本発明は、フレアー光の影響があってもカメラが測距不能に陥いることなく精度の良い測距性能を得る自動焦点調節装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明は上記目的を達成するために、撮影光学系を通過した被写体光を2像に分割し、この2像の像間隔に基づいて撮影光学系のデフォーカス量を求める自動焦点調節装置において、前記分割した2像に前記撮影レンズによって発生したフレアー現象の影響があるか否かを判定する判定手段と、この判定手段によってフレアー現象の影響があると判定された場合には、前記2像を光電変換する光電変換手段の出力を、前記2像の光量差によって補正する補正手段と、この補正手段によって、補正された光電変換信号に基づいて前記像間隔を演算する演算手段とで構成される自動焦点調節装置を提供する。
【0012】
【実施例】以下、図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明する。まず、本発明の自動焦点調節装置の基本的な概念を説明する。
【0013】本発明はフレアー光が再結像した被写体光像に影響を及ぼしているか否かを判定し、影響していると判定された場合には、再結像した2像の光量差を補正することによってフレアー光の影響を除去するものである。図2に前記フレアー光の影響を受けた2像に対して、光量差を補正する手法を示し、説明する。
【0014】光学系を通過して、光電変換素子列で変換された再結像被写体像の電気信号の2像L,Rに対して、図2(a)に示したように等しい領域Nの範囲で、光量の総和WL ,WR を求める。
【0015】そして光量の大きい像に対して、(WR −WL )/Nだけ光量を補正すれば、図2(b)に示すように、2像L,Rは同じ光強度、同じ波形の像になり、補正した像で検出した像間隔は、充分に信頼性が高くなる。このような2像の光量差が不都合を起こす例を図3に示す。図3(a)は輝度が連続的に変化する被写体の例である。
【0016】このような被写体で撮影光学系がデフォーカスしている場合、再結像した2像は図3(b)に示すように、像間隔x1 で再結像される。この図3(b)の像に対して、図2に示すような光量差の補正を同様に行なうと、図3(c)に示す像が得られ、補正像で検出した増間隔は、x2 になり、誤まった測距値を検出してしまう。従って、2像の光量差の補正は、フレアー光が再結像された被写体光像に影響を及ぼしていると判定された場合にのみ行なわなければならない。以下にフレアー光が再結像した2像に影響を及ぼしているか判定する手法について述べる。図4は、いわゆる多分割測距パターンの一例を示したものである。
【0017】この図4では、画面50内が6分割されており、測距視野に対応する測光領域51と、その周辺の主要被写体に対応する測光領域52と、画面周辺部を測光する領域53,54,55,56とで構成される。
【0018】図4に示した測光パターンで、測距視野に対応する測光領域51で検出した光量より、その周辺部の測光領域52で検出した光量の方が、数十倍明るい場合には、測距光学系に再結像する被写体光像にフレアー光として影響を及ぼすと考えられる。
【0019】また画面周辺部の測光領域53,54,55,56のいずれかで検出された光量が、前記測光領域51から検出された光量より、数百倍明るければ、同様にフレアー光の影響があると判定される。
【0020】即ち、前記測光領域と周辺の各領域の光量の差が、どの程度あればフレアー光として影響しているかの判定基準を撮影光学系の構成・特性により、予め定めて、測距領域を含む領域とその他の所定の領域との光量を比較することによって、フレアー光の影響があるか否かを判定することができる。次に前述した多分割測光パターンを用いた判定以外の判定手法について説明する。
【0021】前述した図13(b),(c)に示したフレアー光の影響を受けた再結像被写体像で、像間隔を求め、像間隔の信頼性を前述したような判定を行うと、ほとんどは信頼性が得られないが、図2(b)に示したような像の場合には、充分に高い信頼性が得られる。従って、一度検出した像間隔について信頼性が得られなかった場合は、フレアー光の影響を受けているものと仮定することができる。
【0022】但し、画面に遠近の被写体が共存する場合の再結像被写体像や、測距光学系の再結像範囲を超えるようなデフォーカス量の大きい被写体の再結像被写体像、あるいは光電変換素子の能力を超える低コントラスト被写体の再結像被写体像の場合には、前記多分割測光パターンで検出した像間隔で信頼性を判定しても、信頼性が得られない。
【0023】そこで、まず信頼性を判定した後、前述したような2つの再結像被写体像の光量差を求める。ここで、遠近共存被写体や低コントラスト被写体の場合には、2像の光量差は少なく、2像の光量差が所定値以上の時には、フレアー光の影響を受けている可能性が高いと判定する。そして2像の光量差が所定値以上ある場合は、前述したように光量差を補正した後、像間隔を求めて、求めた像間隔について信頼性を判定する。
【0024】従って、フレアー光の影響を受けている場合には、図2(a)の像から図2(b)の像に補正し、補正後の像から検出した像間隔を用いるため、高い信頼性が得られる。また、デフォーカス量の大きい被写体の場合には、2像の光量差は大きいが、本来の波形が2像間で異なっているため、光量差を補正した像で像間隔を検出しても、信頼性は得られない。このようにしてフレアー光の影響を受けているか否か判定できる。次に図1に本発明による第1実施例としての自動焦点調節装置を搭載したカメラの具体的な構成を示し、説明する。
【0025】この構成において、被写体光Oは、5つのレンズ群即ち、17枚のレンズから成る撮影レンズ21を通過して、メインミラー22aに入射する。前記メインミラー22aは、ハーフミラーになっており、入射光量の1/2が通過して、サブミラー22bを介して測距光学系23に入射する。
【0026】この測距光学系23は、フィルム等価面近傍に置かれ、測距視野を制限するための視野マスク24、測距に不要な赤外光をカットする赤外カットフィルタ25、コンデンサレンズ26及び反射ミラー27、測距光学系に入射した光線のうち撮影光学系上の2つの瞳を通った光線を分離して光電変換素子上に再結像する再結像絞り28及び再結像レンズ29、光電変換素子30により構成される。
【0027】前記メインミラー22aに入射した残りの1/2の光量は、該メインミラー22aで反射され、ファインダー光学系33に入射する。ファインダー光学系33はフォーカシングスクリーン34、コンデンサレンズ35、プリズム36、モールドダハミラー37、接眼レンズ38及び接眼レンズ38の横に並置された測光レンズ39、測光素子40から構成される。
【0028】前記撮影レンズ21を通過した被写体光は、フォーカシングスクリーン34上に結像される。結像された像をコンデンサレンズ35、接眼レンズ38を通して撮影者は観察することができる。同様に測光素子40は、コンデンサレンズ35、測光レンズ39を通して、前記フォーカシングスクリーン34上に結像した被写体像の光量を測定する。前記測光素子40は、前述したように画面内での測光領域は6つの測光領域に分割されている。
【0029】図5は、図1の構成の自動焦点調節装置の電気信号の処理系統を示した図である。前述した測距光学系により、2つに分割された被写体光像は、2つの光電変換素子列30(L),30(R)上に、それぞれ再結像される。前記光電変換素子列30(L),30(R)は、それぞれマトリックス上に配置された64個の画素(図示せず)から構成される。それらの各画素は、該画素上に結像した被写体光量に対応する電気信号を発生し、デジタル値としてCPU61に送信する。そして、前記CPU61に入力された画素データは、EEPROM62内に予め記憶されている不均一補正データに基づき、不均一補正部64で不均一補正される。ここで、不均一補正とは、コンデンサレンズ26、再結像レンズ29等による光量分布の不均一性や各画素ごとの光電変換特性の不均一性を補正するものであり、各画素ごとの補正データが製造時に測定され、EEPROM62に予め補正基準が記憶されている。
【0030】次に不均一補正した画素データは、フィルタ補正部65により、光電変換素子内に発生する電気ノイズや、カメラの他の部分で発生し電源ラインを通して入力される電気ノイズを除去するフィルタ補正が施される。このフィルタ補正は、例えば、高域フィルタあるいは画素データにリミットを設けること等により行なわれる。
【0031】次に前記フィルタ補正された画素データは、画素データ記憶部66に記憶される。記憶された画素データに対して、後述する相関演算部67により相関演算が行なわれ、像間隔検出部68により再結像した2像の像間隔が求められた後、その像間隔に対して、信頼性判定部69により信頼性が判定される。ここで求めた像間隔の信頼性が充分に高ければ、レンズ駆動量計算部70により、レンズ駆動量が測定される。
【0032】一方、前記測光素子60で測定された被写体光量信号は、各測光領域ごとにインターフェースIC63で増幅処理され、CPU61内のA/D変換回路71に入力される。そしてA/D変換された測光値は、6つの領域毎に平均化されて、測光値記憶部72に記憶される。次にフレア判定部73により、予め記憶されている測光値基準値と検出された測光値を比較して、フレアー光の影響があるか否か判定する。この判定で、フレアー光の影響があると判定された場合には、光量補正部74により、前記画素データ記憶部66に記憶された画素データを光量補正する。次に検出された測光値がフレアー光の影響を受けているか否か判定するフレア判定部73について説明する。
【0033】図6のフローチャートを参照して、測光からフレアー光の影響の判定までの動作を説明する。ここで、図4に示した6つの領域で検出される測光値において、測距視野に対応する測光領域51から測光値“BS”、同様に測光領域52から“BA”、測光領域53から“BL”、測光領域54から“BR”、測光領域55から“BU”、測光領域56から“BD”が検出されるものとする。
【0034】前述したように、6つの領域毎に検出された測光値は、ステップS1〜S4に示すように、10回検出され、平均化されて、測光値記憶部72に記憶される(ステップS5)。
【0035】次に中央部の測光値BSに対して、その周辺部の測光値BAが4EV以上明るいか否か判定し(ステップS6)、明るい時は(YES)フレアーフラグを1に設定(ステップS18)し、フレアー光の影響があると判定する。一方、ステップS6で暗い場合には(NO)、画面左右のいずれか明るい方の測光値BR,BLの一方を測光値Bとし(ステップS7,S8,S10)、この測光値Bが測光値BS,BAが6EV以上明るいか否か判定する(ステップS9,S11)。この判定で、測光値Bが測光値BS,BAより6EV以上明るい場合は(YES)、ステップS18に移行し、フレアーフラグを“1”に設定しフレアー光の影響があると判定する。
【0036】一方、測光値Bが測光値BS,BAより暗い場合には(NO)、画面上下のいずれか明るい方の測光値BU,BDの一方を測光値Bとし(ステップS12,S13,S14)、この測光値Bが測光値BS,BAが8EV以上明るいか否か判定する(ステップS15,S16)。この判定で、測光値Bが測光値BS,BAより8EV以上明るい場合は(YES)、ステップS18に移行し、フレアーフラグを“1”に設定しフレアー光の影響があると判定する。一方、測光値Bが測光値BS,BAより暗い場合には(NO)、フレアー光の影響はないものと判定して(NO)、フレアーフラグを“0”に設定する(ステップS17)。以上説明したように、各測光領域において、(1)BAがBSより4EV以上明るい場合、(2)BL又はBRがBA及びBSより6EV以上明るい場合、(3)BU又はBDがBA及びBSより8EV以上明るい場合、
【0037】いずれか1つ条件が満たされる場合には、フレアー光の影響があると判定される。ここで、左右の領域の測光値(BL,BR)と上下の領域の測光値(BU,BD)との判定条件が異なるのは、測距光学系において被写体光像を2像に分割する方向と同じである左右の領域の方がフレアー光の影響を受けて像間隔が検出しにくくなりやすいためである。また上下の領域から受けるフレアー光は、再結像した2像に均等な影響を与える可能性が大きく、条件をきびしくして構わない。
【0038】なお、フレアー光の発生条件は撮影光学系の構成,特性によって大きく異なるため、判定条件はこの限りではない。また本実施例のようなズーム機能を有する撮影光学系の場合には、焦点距離によっても、レンズの位置関係が大きく異なるため焦点距離によって判定条件を変えてもよい。
【0039】また、本実施例では測光値の相対値により判定しているが、フレアー光の発生条件が、太陽光等の高輝度光源に限定されると考えられる場合には、絶対値で判定してもよい。
【0040】次に図7のフローチャートを参照して、フレアー光の影響を補正してレンズ駆動力量を求めるまでの動作について説明する。ここで各構成部材の符号は図5の参照符号を用いる。
【0041】まず、前述した2つの光電変換素子列30(L),30(R)より出力された画素データを入力し記憶する(ステップS20)。記憶した画素データに不均一補正部64により不均一補正し(ステップS21)、フィルタ補正部65によりフィルタ補正を行う(ステップS22)。
【0042】次にフレアーフラグを判定し、“1”の場合は、フレアー光の影響があると判定され、記憶されている画素データに対して前述したような光量補正を行なう(ステップS25)。次に相関演算部67により相関演算を行ない(ステップS24)、その結果に基づき像間隔検出部68により像間隔を検出する(ステップS26)。ここで検出された像間隔に対して、信頼性判定部69により、信頼性の値を計算し(ステップS27)、判定する(ステップS28)。この判定で、信頼性があると判定された場合は(YES)、レンズ駆動量計算部70でレンズ駆動量を計算し(ステップS29)、信頼性がないと判定された場合は(NO)、測距不能と判定する(ステップS30)。次に本実施例の光量補正部74における光量補正について説明する。
【0043】まず、再結像し、2つの光電変換素子列30(L),30(R)で得られた2像の画素データをL(I) ,R(I) (Iは画素番号で左端から順に1〜64である)とする。これら2像についてそれぞれ光量を求める。
【0044】
【数1】
【0045】この場合、各光電変換素子列の中央部48画素について画素データを加算して求めている。周辺部を使用しないのは、周辺部がデフォーカスしている時に再結像絞りによって、光路が遮断される可能性があるためである。次に光量差を補正する。
【0046】
【数2】
【0047】この場合、明るい方の光電変換素子出力に対して減算補正したが、光電変換素子の出力が最っとも明るい画素出力基準で行なわれる方式の場合は、暗い方の光電変換素子出力に対して、加算補正しても構わない。
【0048】
【数3】
【0049】ここで補正された画素データは、図5に示す画素データ記憶部66に記憶される。なお、2像の光量WL ,WR の差が所定値に満たない場合には、フレアー光の影響がないものとして補正を行なわないようにしてもよい。次に図8のフローチャートを参照して、本実施例の相関演算部67により行われる相関演算について説明する。
【0050】まず、変数SLに初期値“5”、変数SRに初期値“37”が設定される(ステップS31)。次に、変数Jに“8”を設定する(ステップS32)。前記変数SLは、2像の画素データのうちの一方の画素データL(I) の内から、相関演算によって他方の画素データR(I) と比較される小ブロックの先頭画素番号であり、前記変数SRは同様にR(I) の小ブロック先頭画素番号である。前記変数Jは、小ブロックの移動回数をカウントする変数である。また相関演算は次式で行なわれ、相関出力F(s) が求められる(ステップS33)。
【0051】
【数4】
ただし、小ブロックの画素数は27画素とする。
【0052】次に、相関出力F(s) の最小値を検出する、すなわちF(s) とFMIN を比較し(ステップS34)、この比較で、F(s) がFMIN より小さければ(YES)、FMIN にF(s) を代入し、その時の変数SL,SRを変数SLM,SRMに代入する(ステップS35)。
【0053】次に変数SR,Jからそれぞれ“1”を減算する(ステップS36)。そして変数Jが“0”になったか否か判定し(ステップS37)、この判定で“0”でなければ(NO)、ステップS32に戻り、相関演算をくり返す。すなわち変数SLを固定し、変数SRを8回ずらせながら相関をとる。また、前記判定で変数Jが“0”ならば(YES)、変数SLに“4”を加算し、変数SRに“3”を加算し(ステップS38)、前記変数SLが“29”になるまで相関演算をくり返し行う(ステップS39)。以上の手順により、効率的に2像の間で相関演算を行なうことができる。
【0054】この結果、得られた相関出力F(s) の最小値FMIN を与える小ブロックの位置SLM,SRMが最っとも相関性の高い像位置、すなわち2像の像間隔を示す。但し、この像間隔は画素単位であり、レンズ駆動量を計算するには精度が粗い。よって補間を行ない、画素単位以下の精度で2像間隔を求める。まず、次式によって最っとも相関の高い像間隔から“±1”画素ずらした時の相関出力FM,FPを求める(ステップS40)。
【0055】
【数5】
よって、求める2像の間隔S0 は次のようになる(ステップS41)。
【0056】
【数6】
【0057】次に前記(10),(11)式により求めた像間隔の信頼性SKを求める(ステップS42)。ここで、図9(a),(b)を参照して、求める信頼性について説明する。
【0058】まず分割された2像は、検出した像間隔S0 が正しい像間隔であれば、検出された像間隔で一致する。よって、前記相関出力F(s) は、図9(a)に示すように像間隔S0 で“0”になる。
【0059】しかし前述したようにフレアー光の影響を受けている像、遠近の被写体が共存する像、大デフォーカスされた像若しくは、低コントラスト被写体の像等の場合には、分割された2像は一致しないため、前記相関出力F(s) は図9(b)に示すように、検出された像間隔S0 では、“0”にならない。図9に示す特性から、次式によって信頼性の値SKを求めることができる。
【0060】
【数7】
【0061】即ち、信頼性の高い場合には、図9(a)に示すように、(12)式又は(13)式の分子が分母と同様な大きさになり、信頼性の値SKは約“1”とみなせる。しかし信頼性がない場合には、図9(b)に示すように、分母に比べて分子が大きくなり、SKの値は“1”より大きな値になる。
【0062】従って、(12)式又は(13)式で求められたSKを所定値SK0と比較することによって、検出された像間隔S0 の信頼性を判定することができる(ステップS43)。この判定で、信頼性があると判定された場合は(YES)、検出された像間隔S0 より、レンズ駆動量を求める(ステップS44)。しかし信頼性がないと判定された場合には(NO)、測距不能と判定し(ステップS45)、相関演算を終了する。
【0063】なお、実際には測距光学系の誤差や、光学変換素子の変換誤差や電気ノイズ等の影響により、分割された2像の像信号は一致しない場合があり、信頼性の判定値SK0は“1”より大きい値になる場合がある(例えば2〜3)。
【0064】従って、判定値SK0を限定すると測距不能に判定されることが多くなり、カメラとしての商品性を損なうので、条件によっては判定値を大きく設定する。例えば低輝度の場合、光電変換素子で発生する暗電流の影響で一致性が悪くなるため、判定値を大きく設定する。
【0065】また低輝度時に被写体を照明する補助光を設けているカメラでは、補助光非点灯時の判定値を小さくし、点灯時の判定値を大きく設定することによって、補助光を点灯していない時に検出した像間隔によって、レンズ駆動されないようにする。
【0066】ここで、信頼性値SKが判定値SK0より小さい値の場合は、検出された像間隔で直ちにレンズ駆動量を求める。また判定値SK0より大きく、第2の判定値SK1より小さい場合には、複数回の測距の後、検出された像間隔の変化がないことを確認してからレンズ駆動量を求めてもよい。
【0067】前記信頼性値SKが、判定値SK0より大きく、第3の判定値SK3よりも小さい場合には、相関演算で相関をとる2像の位置関係をずらして相関をとりなおしても良い。これは相関をとった小ブロック内に距離の異なる複数の被写体像が含まれた場合に信頼性が悪くなるためであり、相関をとる小ブロックの位置関係をずらせるか、小ブロックの画素数を小さくすることによって被写体像を絞ることができる。次に図10のフローチャートを参照して、本発明による第2実施例としての測光手段を用いない自動焦点調節装置について説明する。
【0068】前述した第1実施例と同様に検出された2像の画像データに対して、相関演算を行ない(ステップS51)、2像の像間隔を検出して(ステップS52)、検出した像間隔に対して信頼性値の計算する(ステップS53)。次に計算した信頼性値に基づいて信頼性の判定をする(ステップS54)。この判定で信頼性があれば(YES)、直ちにレンズ駆動量を計算する(ステップS63)。ここで、信頼性がないと判定される被写体像は次のような像が考えられる。
(1)フレアー光の影響を受けた像、(2)異なる距離の被写体が共存した像、(3)低コントラスト被写体、(4)デフォーカス量の大きい像。
【0069】前記ステップS54で信頼性が無いと判定された場合(NO)、フレアー光の影響を受けている像と仮定し、2像の光量を(1)式,(2)式に基づいて計算し、2像の光量差ΔWを求める(ステップS55)。
【0070】
【数8】
【0071】次に、異なる距離の被写体が共存した増感剤あるいは低コントラスト被写体の場合2像の光量差ΔWが小さく、フレアー光の影響を受けた像あるいはデフォーカス量の大きい像の場合には、2像の光量差ΔWは大きい値を示す。従って、2像の光量差ΔWを判定値ΔW0 と比較することによって(ステップS56)、フレアー光の影響を受けている可能性を高かめることができる。この比較で2像の光量差が所定値以下の場合には(NO)、測距不能と判定する(ステップS58)。
【0072】ここで、(1)式、(2)式によって、前記光量差を求めた場合、判定値ΔW0 が約1000になる。但し、フレアー光の発生条件及び再結像被写体像の影響の度合は、撮影光学系の構成,特性によって大きく変わり、前記判定値ΔW0 は撮影光学系に応じて決められる。またカメラがズーム機構を有している場合には、焦点距離に応じて、判定値ΔW0 を変更しても良い。また、装置個々でフレアー光の発生状態にバラツキがある場合には、工場出荷時に所定条件でフレアー光を発生させて、その画像データより、判定値ΔW0 を測定し、EEPROMに書き込んでおくこともできる。
【0073】ステップS56の比較で、2像の光量差が所定値以上の場合は(YES)、(3)式,(4)式あるいは(5)式,(6)式に基づいて、CPU61内に記憶されている画素データに対して、光量補正を行なう(ステップS57)。次に光量補正した画素データに対して前述した相関演算(ステップS59)、像間隔検出(ステップS60)、信頼性計算(ステップS61)を繰り返し行う。
【0074】前述したように、フレアー光の影響がある場合には、光量補正した画素データで求めた像間隔は高い信頼性が得られる。一方、デフォーカス量の大きい被写体の像の場合は、本来の2像が一致していないため、信頼性は得られない。
【0075】従って光量補正した画素データで求めた像間隔の信頼性を判定することによって(ステップS62)、フレアー光の影響を受けた像であるか否かを判定できる。同時に、ステップS60で求まった像間隔が正しい像間隔になる。
【0076】前記ステップS62で信頼性があると判定された場合には(YES)、検出した像間隔によってレンズ駆動量を求め(ステップS63)、信頼性がない場合には(NO)、測距不良と判定し(ステップS63)、
【0077】なお、デフォーカス量の大きい像の可能性がない場合、例えば、撮影光学系のデフォーカス量に対して、測距光学系のデフォーカス検出範囲が充分にある場合などでは光量差の判定(ステップS56)した後、直ちにレンズ駆動量を求めても良い。あるいは2回目の相関演算(ステップS59)を省略し、1回目の相関演算(ステップS51)で求めた小ブロックの画像位置SLM,SRMに対して光量補正した画素データで像間隔を求めても良い。また本発明は、前述した実施例に限定されるものではなく、他にも発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形や応用が可能であることは勿論である。
【0078】
【発明の効果】以上詳述したように本発明によれば、測距視野外の光源によるフレアー光が測距視野内の被写体像に影響を及ぼす場合でも、2像の光量差を補正することによって安定した測距動作を続けることができる自動焦点調節装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明による第1実施例としての自動焦点調節装置を搭載したカメラの具体的な構成を示す図である。
【図2】図2は、本発明の原理を説明するための光電変換素子列で変換された再結像被写体像の電気信号を示す図である。
【図3】図3は、本発明の原理を説明するための光電変換素子列で再変換された輝度が連続的に変化する被写体像の電気信号を示す図である。
【図4】図4は、多分割測距パターンの一例を示したものである。
【図5】図5は、図1に示す構成の自動焦点調節装置の電気信号の処理系統を示す図である。
【図6】図6は、測光からフレアー光の影響の判定までの動作を示すフローチャートである。
【図7】図7は、フレアー光の影響を補正してレンズ駆動力量を求める動作を示すフローチャートである。
【図8】図8は、第1実施例の相関演算部により行われる相関演算の手順を示すフローチャートである。
【図9】図9(a),(b)は、相関出力の特性を示す図である。
【図10】図10は、本発明による第2実施例としての測光手段を用いない自動焦点調節装置の動作を示すフローチャートである。
【図11】図11は、測距における原理を示す図である。
【図12】図12は、位相差方式で測距視野外に被写体より著しく明るい被写体Mがある場合の原理を示す図である。
【図13】図13(a),(b),(c)は、従来の光電変換素子列で変換された再結像被写体像の電気信号を示す図である。
【符号の説明】
1,2,3,11,12,13,21…撮影レンズ、4,14…フィルム等価面、5,15,24…視野マスク、6,16…再結像レンズ、7,17,30,30(L),30(R)…光電変換素子列、22a…メインミラー、22b…サブミラー、23…測距光学系、25…赤外カットフィルタ、26…コンデンサレンズ、27…反射ミラー、28…再結像絞り、29…再結像レンズ、33…ファインダー光学系、34…フォーカシングスクリーン、35…コンデンサレンズ、36…プリズム、37…モールドダハミラー、38…接眼レンズ、39…測光レンズ、40,60…測光素子、50…画面、51,52,53,54,55,56…測光領域、61…CPU、62…EEPROM、63…インタフェースIC、64…不均一補正部、65…フィルタ補正部、66…画素データ記憶部、67…相関演算部、68…像間隔検出部、69…信頼性判定部、70…レンズ駆動量計算部、71…A/D変換回路、72…測光値記憶部、73…フレア判定部、74…光量補正部、L,R…被写体像、O…被写体光。
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はカメラ等に用いられる自動焦点調節装置に係り、特に撮影光学系を通して得られた被写体像を2つの像に分割して再結像し、その像間隔より撮影光学系のデフォーカス量を求める装置に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、撮影光学系を通過して得られた被写体像を2つの像に分割して、再結像し、その像間隔より撮影光学系のデフォーカス量を求める自動焦点調節装置がある。このような自動焦点調節装置は、再結像された2つの像を比較し、最っとも一致性の高い像間隔を求めることによって撮影光学系のデフォーカス量を求めている。
【0003】従って、測距精度を向上させるためには、再結像された2つの像が等しい光強度、等しい波形を持ち、より一致性の高い像であることが求められている。逆にこの2つの像の一致性を検証することによって、検出した像間隔が信頼できるか否かを判定する自動焦点調節装置装置が提案されている。例えば、特公昭62−7523号公報によると、2つの像の比較値を像自身のコントラスト値と比較することによって、信頼性を判定する方式が開示されている。また、特開昭60−37513号公報には、2つの像の複数の比較値によって信頼性を判定する方式が開示されている。これらの方式では、検出した像間隔の信頼性がないと判断すれば、カメラは測距不能と判定し測距動作を中止している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、前述した自動焦点調節装置はカメラの複数のレンズ群から構成される撮影光学系を利用しており、撮影する画面内又は画面近傍に強い光源がある場合には、レンズ表面に反射等によるフレアー現象(以下、フレアーと称する)が起きることが知られている。
【0005】従来から前記フレアーが起きないような光学設計、レンズコーティングが試みられているが、カメラの小型化・軽量化・低コスト化に推移するに従い、画質に関しては、影響のない程度のフレアは許容されてきた。しかし、このようなフレアが起きた場合に、図11、図12に示すように測距に関しては精度に過大な影響を及ぼしている。図11は、位相差方式の原理を示した図である。
【0006】被写体Oの像は、撮影レンズ1,2,3を通過してフィルム等価面4に結像される。フィルム等価面4に結像された像は、再結像レンズ6によって2つに分割され、光電変換素子列7上に2つの像L,Rとして再結像される。前記光電変換素子列7は、再結像された被写体像L,Rを電気信号に変換し、変換された2像の電気信号を比較することによって、再結像された被写体像L,Rの像間隔を求める。次に測距視野外に被写体Oにくらべて著しく明るい被写体Mがある場合の様子を図12に示す。
【0007】被写体Mの像は、図12に実線で示すように、撮影レンズ11,12,13を通過して、フィルム等価面14に結像される。しかし、前記フィルム等価面14近傍におかれ、測距視野を制限する視野マスク15によって制限され、光電変換素子列17上には再結像されない。
【0008】ところが、図12の点線で示すように、前記撮影レンズ11と12との間に内面反射が起きた際に、大抵の場合は正規の結像関係を有せず、フレアー光として光電変換素子17上に投影される。その内面反射される光量は、極僅かな量であり、被写体OとMの光量が同程度であれば全く問題にはならない。ところが、測距視野外の被写体Mの光量が、視野内の被写体Oの光量に対して、数百〜数千倍を超える明るさであった場合には、再結像された被写体像L,Rに対して多少の影響がでる。図13は、光電変換素子列で変換された再結像被写体像の電気信号を示した図であり、この図に基づき被写体像への影響について説明する。
【0009】図13(a)は、フレアー光がない場合に、被写体像L,Rとも同じ光強度、同じ波形として検出されるが、同図(b),(c)のように、フレアー光が起きた場合には、被写体像L,Rが異なった光強度、異なった波形を生じる。このような像信号に対して、2像の間隔を求めて、さらに検出した像間隔の信頼性を判断すると、多くの場合には、信頼性がないと判定され、カメラは測距不能状態に陥いる。
【0010】また、仮に信頼性が有ると判定されても、このような異なった波形で検出した像間隔では、精度が得られない。例えば、図13(b)に示すような波形であれば、被写体の像間隔が、フレアー光の像間隔に影響される。そこで本発明は、フレアー光の影響があってもカメラが測距不能に陥いることなく精度の良い測距性能を得る自動焦点調節装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明は上記目的を達成するために、撮影光学系を通過した被写体光を2像に分割し、この2像の像間隔に基づいて撮影光学系のデフォーカス量を求める自動焦点調節装置において、前記分割した2像に前記撮影レンズによって発生したフレアー現象の影響があるか否かを判定する判定手段と、この判定手段によってフレアー現象の影響があると判定された場合には、前記2像を光電変換する光電変換手段の出力を、前記2像の光量差によって補正する補正手段と、この補正手段によって、補正された光電変換信号に基づいて前記像間隔を演算する演算手段とで構成される自動焦点調節装置を提供する。
【0012】
【実施例】以下、図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明する。まず、本発明の自動焦点調節装置の基本的な概念を説明する。
【0013】本発明はフレアー光が再結像した被写体光像に影響を及ぼしているか否かを判定し、影響していると判定された場合には、再結像した2像の光量差を補正することによってフレアー光の影響を除去するものである。図2に前記フレアー光の影響を受けた2像に対して、光量差を補正する手法を示し、説明する。
【0014】光学系を通過して、光電変換素子列で変換された再結像被写体像の電気信号の2像L,Rに対して、図2(a)に示したように等しい領域Nの範囲で、光量の総和WL ,WR を求める。
【0015】そして光量の大きい像に対して、(WR −WL )/Nだけ光量を補正すれば、図2(b)に示すように、2像L,Rは同じ光強度、同じ波形の像になり、補正した像で検出した像間隔は、充分に信頼性が高くなる。このような2像の光量差が不都合を起こす例を図3に示す。図3(a)は輝度が連続的に変化する被写体の例である。
【0016】このような被写体で撮影光学系がデフォーカスしている場合、再結像した2像は図3(b)に示すように、像間隔x1 で再結像される。この図3(b)の像に対して、図2に示すような光量差の補正を同様に行なうと、図3(c)に示す像が得られ、補正像で検出した増間隔は、x2 になり、誤まった測距値を検出してしまう。従って、2像の光量差の補正は、フレアー光が再結像された被写体光像に影響を及ぼしていると判定された場合にのみ行なわなければならない。以下にフレアー光が再結像した2像に影響を及ぼしているか判定する手法について述べる。図4は、いわゆる多分割測距パターンの一例を示したものである。
【0017】この図4では、画面50内が6分割されており、測距視野に対応する測光領域51と、その周辺の主要被写体に対応する測光領域52と、画面周辺部を測光する領域53,54,55,56とで構成される。
【0018】図4に示した測光パターンで、測距視野に対応する測光領域51で検出した光量より、その周辺部の測光領域52で検出した光量の方が、数十倍明るい場合には、測距光学系に再結像する被写体光像にフレアー光として影響を及ぼすと考えられる。
【0019】また画面周辺部の測光領域53,54,55,56のいずれかで検出された光量が、前記測光領域51から検出された光量より、数百倍明るければ、同様にフレアー光の影響があると判定される。
【0020】即ち、前記測光領域と周辺の各領域の光量の差が、どの程度あればフレアー光として影響しているかの判定基準を撮影光学系の構成・特性により、予め定めて、測距領域を含む領域とその他の所定の領域との光量を比較することによって、フレアー光の影響があるか否かを判定することができる。次に前述した多分割測光パターンを用いた判定以外の判定手法について説明する。
【0021】前述した図13(b),(c)に示したフレアー光の影響を受けた再結像被写体像で、像間隔を求め、像間隔の信頼性を前述したような判定を行うと、ほとんどは信頼性が得られないが、図2(b)に示したような像の場合には、充分に高い信頼性が得られる。従って、一度検出した像間隔について信頼性が得られなかった場合は、フレアー光の影響を受けているものと仮定することができる。
【0022】但し、画面に遠近の被写体が共存する場合の再結像被写体像や、測距光学系の再結像範囲を超えるようなデフォーカス量の大きい被写体の再結像被写体像、あるいは光電変換素子の能力を超える低コントラスト被写体の再結像被写体像の場合には、前記多分割測光パターンで検出した像間隔で信頼性を判定しても、信頼性が得られない。
【0023】そこで、まず信頼性を判定した後、前述したような2つの再結像被写体像の光量差を求める。ここで、遠近共存被写体や低コントラスト被写体の場合には、2像の光量差は少なく、2像の光量差が所定値以上の時には、フレアー光の影響を受けている可能性が高いと判定する。そして2像の光量差が所定値以上ある場合は、前述したように光量差を補正した後、像間隔を求めて、求めた像間隔について信頼性を判定する。
【0024】従って、フレアー光の影響を受けている場合には、図2(a)の像から図2(b)の像に補正し、補正後の像から検出した像間隔を用いるため、高い信頼性が得られる。また、デフォーカス量の大きい被写体の場合には、2像の光量差は大きいが、本来の波形が2像間で異なっているため、光量差を補正した像で像間隔を検出しても、信頼性は得られない。このようにしてフレアー光の影響を受けているか否か判定できる。次に図1に本発明による第1実施例としての自動焦点調節装置を搭載したカメラの具体的な構成を示し、説明する。
【0025】この構成において、被写体光Oは、5つのレンズ群即ち、17枚のレンズから成る撮影レンズ21を通過して、メインミラー22aに入射する。前記メインミラー22aは、ハーフミラーになっており、入射光量の1/2が通過して、サブミラー22bを介して測距光学系23に入射する。
【0026】この測距光学系23は、フィルム等価面近傍に置かれ、測距視野を制限するための視野マスク24、測距に不要な赤外光をカットする赤外カットフィルタ25、コンデンサレンズ26及び反射ミラー27、測距光学系に入射した光線のうち撮影光学系上の2つの瞳を通った光線を分離して光電変換素子上に再結像する再結像絞り28及び再結像レンズ29、光電変換素子30により構成される。
【0027】前記メインミラー22aに入射した残りの1/2の光量は、該メインミラー22aで反射され、ファインダー光学系33に入射する。ファインダー光学系33はフォーカシングスクリーン34、コンデンサレンズ35、プリズム36、モールドダハミラー37、接眼レンズ38及び接眼レンズ38の横に並置された測光レンズ39、測光素子40から構成される。
【0028】前記撮影レンズ21を通過した被写体光は、フォーカシングスクリーン34上に結像される。結像された像をコンデンサレンズ35、接眼レンズ38を通して撮影者は観察することができる。同様に測光素子40は、コンデンサレンズ35、測光レンズ39を通して、前記フォーカシングスクリーン34上に結像した被写体像の光量を測定する。前記測光素子40は、前述したように画面内での測光領域は6つの測光領域に分割されている。
【0029】図5は、図1の構成の自動焦点調節装置の電気信号の処理系統を示した図である。前述した測距光学系により、2つに分割された被写体光像は、2つの光電変換素子列30(L),30(R)上に、それぞれ再結像される。前記光電変換素子列30(L),30(R)は、それぞれマトリックス上に配置された64個の画素(図示せず)から構成される。それらの各画素は、該画素上に結像した被写体光量に対応する電気信号を発生し、デジタル値としてCPU61に送信する。そして、前記CPU61に入力された画素データは、EEPROM62内に予め記憶されている不均一補正データに基づき、不均一補正部64で不均一補正される。ここで、不均一補正とは、コンデンサレンズ26、再結像レンズ29等による光量分布の不均一性や各画素ごとの光電変換特性の不均一性を補正するものであり、各画素ごとの補正データが製造時に測定され、EEPROM62に予め補正基準が記憶されている。
【0030】次に不均一補正した画素データは、フィルタ補正部65により、光電変換素子内に発生する電気ノイズや、カメラの他の部分で発生し電源ラインを通して入力される電気ノイズを除去するフィルタ補正が施される。このフィルタ補正は、例えば、高域フィルタあるいは画素データにリミットを設けること等により行なわれる。
【0031】次に前記フィルタ補正された画素データは、画素データ記憶部66に記憶される。記憶された画素データに対して、後述する相関演算部67により相関演算が行なわれ、像間隔検出部68により再結像した2像の像間隔が求められた後、その像間隔に対して、信頼性判定部69により信頼性が判定される。ここで求めた像間隔の信頼性が充分に高ければ、レンズ駆動量計算部70により、レンズ駆動量が測定される。
【0032】一方、前記測光素子60で測定された被写体光量信号は、各測光領域ごとにインターフェースIC63で増幅処理され、CPU61内のA/D変換回路71に入力される。そしてA/D変換された測光値は、6つの領域毎に平均化されて、測光値記憶部72に記憶される。次にフレア判定部73により、予め記憶されている測光値基準値と検出された測光値を比較して、フレアー光の影響があるか否か判定する。この判定で、フレアー光の影響があると判定された場合には、光量補正部74により、前記画素データ記憶部66に記憶された画素データを光量補正する。次に検出された測光値がフレアー光の影響を受けているか否か判定するフレア判定部73について説明する。
【0033】図6のフローチャートを参照して、測光からフレアー光の影響の判定までの動作を説明する。ここで、図4に示した6つの領域で検出される測光値において、測距視野に対応する測光領域51から測光値“BS”、同様に測光領域52から“BA”、測光領域53から“BL”、測光領域54から“BR”、測光領域55から“BU”、測光領域56から“BD”が検出されるものとする。
【0034】前述したように、6つの領域毎に検出された測光値は、ステップS1〜S4に示すように、10回検出され、平均化されて、測光値記憶部72に記憶される(ステップS5)。
【0035】次に中央部の測光値BSに対して、その周辺部の測光値BAが4EV以上明るいか否か判定し(ステップS6)、明るい時は(YES)フレアーフラグを1に設定(ステップS18)し、フレアー光の影響があると判定する。一方、ステップS6で暗い場合には(NO)、画面左右のいずれか明るい方の測光値BR,BLの一方を測光値Bとし(ステップS7,S8,S10)、この測光値Bが測光値BS,BAが6EV以上明るいか否か判定する(ステップS9,S11)。この判定で、測光値Bが測光値BS,BAより6EV以上明るい場合は(YES)、ステップS18に移行し、フレアーフラグを“1”に設定しフレアー光の影響があると判定する。
【0036】一方、測光値Bが測光値BS,BAより暗い場合には(NO)、画面上下のいずれか明るい方の測光値BU,BDの一方を測光値Bとし(ステップS12,S13,S14)、この測光値Bが測光値BS,BAが8EV以上明るいか否か判定する(ステップS15,S16)。この判定で、測光値Bが測光値BS,BAより8EV以上明るい場合は(YES)、ステップS18に移行し、フレアーフラグを“1”に設定しフレアー光の影響があると判定する。一方、測光値Bが測光値BS,BAより暗い場合には(NO)、フレアー光の影響はないものと判定して(NO)、フレアーフラグを“0”に設定する(ステップS17)。以上説明したように、各測光領域において、(1)BAがBSより4EV以上明るい場合、(2)BL又はBRがBA及びBSより6EV以上明るい場合、(3)BU又はBDがBA及びBSより8EV以上明るい場合、
【0037】いずれか1つ条件が満たされる場合には、フレアー光の影響があると判定される。ここで、左右の領域の測光値(BL,BR)と上下の領域の測光値(BU,BD)との判定条件が異なるのは、測距光学系において被写体光像を2像に分割する方向と同じである左右の領域の方がフレアー光の影響を受けて像間隔が検出しにくくなりやすいためである。また上下の領域から受けるフレアー光は、再結像した2像に均等な影響を与える可能性が大きく、条件をきびしくして構わない。
【0038】なお、フレアー光の発生条件は撮影光学系の構成,特性によって大きく異なるため、判定条件はこの限りではない。また本実施例のようなズーム機能を有する撮影光学系の場合には、焦点距離によっても、レンズの位置関係が大きく異なるため焦点距離によって判定条件を変えてもよい。
【0039】また、本実施例では測光値の相対値により判定しているが、フレアー光の発生条件が、太陽光等の高輝度光源に限定されると考えられる場合には、絶対値で判定してもよい。
【0040】次に図7のフローチャートを参照して、フレアー光の影響を補正してレンズ駆動力量を求めるまでの動作について説明する。ここで各構成部材の符号は図5の参照符号を用いる。
【0041】まず、前述した2つの光電変換素子列30(L),30(R)より出力された画素データを入力し記憶する(ステップS20)。記憶した画素データに不均一補正部64により不均一補正し(ステップS21)、フィルタ補正部65によりフィルタ補正を行う(ステップS22)。
【0042】次にフレアーフラグを判定し、“1”の場合は、フレアー光の影響があると判定され、記憶されている画素データに対して前述したような光量補正を行なう(ステップS25)。次に相関演算部67により相関演算を行ない(ステップS24)、その結果に基づき像間隔検出部68により像間隔を検出する(ステップS26)。ここで検出された像間隔に対して、信頼性判定部69により、信頼性の値を計算し(ステップS27)、判定する(ステップS28)。この判定で、信頼性があると判定された場合は(YES)、レンズ駆動量計算部70でレンズ駆動量を計算し(ステップS29)、信頼性がないと判定された場合は(NO)、測距不能と判定する(ステップS30)。次に本実施例の光量補正部74における光量補正について説明する。
【0043】まず、再結像し、2つの光電変換素子列30(L),30(R)で得られた2像の画素データをL(I) ,R(I) (Iは画素番号で左端から順に1〜64である)とする。これら2像についてそれぞれ光量を求める。
【0044】
【数1】
【0045】この場合、各光電変換素子列の中央部48画素について画素データを加算して求めている。周辺部を使用しないのは、周辺部がデフォーカスしている時に再結像絞りによって、光路が遮断される可能性があるためである。次に光量差を補正する。
【0046】
【数2】
【0047】この場合、明るい方の光電変換素子出力に対して減算補正したが、光電変換素子の出力が最っとも明るい画素出力基準で行なわれる方式の場合は、暗い方の光電変換素子出力に対して、加算補正しても構わない。
【0048】
【数3】
【0049】ここで補正された画素データは、図5に示す画素データ記憶部66に記憶される。なお、2像の光量WL ,WR の差が所定値に満たない場合には、フレアー光の影響がないものとして補正を行なわないようにしてもよい。次に図8のフローチャートを参照して、本実施例の相関演算部67により行われる相関演算について説明する。
【0050】まず、変数SLに初期値“5”、変数SRに初期値“37”が設定される(ステップS31)。次に、変数Jに“8”を設定する(ステップS32)。前記変数SLは、2像の画素データのうちの一方の画素データL(I) の内から、相関演算によって他方の画素データR(I) と比較される小ブロックの先頭画素番号であり、前記変数SRは同様にR(I) の小ブロック先頭画素番号である。前記変数Jは、小ブロックの移動回数をカウントする変数である。また相関演算は次式で行なわれ、相関出力F(s) が求められる(ステップS33)。
【0051】
【数4】
ただし、小ブロックの画素数は27画素とする。
【0052】次に、相関出力F(s) の最小値を検出する、すなわちF(s) とFMIN を比較し(ステップS34)、この比較で、F(s) がFMIN より小さければ(YES)、FMIN にF(s) を代入し、その時の変数SL,SRを変数SLM,SRMに代入する(ステップS35)。
【0053】次に変数SR,Jからそれぞれ“1”を減算する(ステップS36)。そして変数Jが“0”になったか否か判定し(ステップS37)、この判定で“0”でなければ(NO)、ステップS32に戻り、相関演算をくり返す。すなわち変数SLを固定し、変数SRを8回ずらせながら相関をとる。また、前記判定で変数Jが“0”ならば(YES)、変数SLに“4”を加算し、変数SRに“3”を加算し(ステップS38)、前記変数SLが“29”になるまで相関演算をくり返し行う(ステップS39)。以上の手順により、効率的に2像の間で相関演算を行なうことができる。
【0054】この結果、得られた相関出力F(s) の最小値FMIN を与える小ブロックの位置SLM,SRMが最っとも相関性の高い像位置、すなわち2像の像間隔を示す。但し、この像間隔は画素単位であり、レンズ駆動量を計算するには精度が粗い。よって補間を行ない、画素単位以下の精度で2像間隔を求める。まず、次式によって最っとも相関の高い像間隔から“±1”画素ずらした時の相関出力FM,FPを求める(ステップS40)。
【0055】
【数5】
よって、求める2像の間隔S0 は次のようになる(ステップS41)。
【0056】
【数6】
【0057】次に前記(10),(11)式により求めた像間隔の信頼性SKを求める(ステップS42)。ここで、図9(a),(b)を参照して、求める信頼性について説明する。
【0058】まず分割された2像は、検出した像間隔S0 が正しい像間隔であれば、検出された像間隔で一致する。よって、前記相関出力F(s) は、図9(a)に示すように像間隔S0 で“0”になる。
【0059】しかし前述したようにフレアー光の影響を受けている像、遠近の被写体が共存する像、大デフォーカスされた像若しくは、低コントラスト被写体の像等の場合には、分割された2像は一致しないため、前記相関出力F(s) は図9(b)に示すように、検出された像間隔S0 では、“0”にならない。図9に示す特性から、次式によって信頼性の値SKを求めることができる。
【0060】
【数7】
【0061】即ち、信頼性の高い場合には、図9(a)に示すように、(12)式又は(13)式の分子が分母と同様な大きさになり、信頼性の値SKは約“1”とみなせる。しかし信頼性がない場合には、図9(b)に示すように、分母に比べて分子が大きくなり、SKの値は“1”より大きな値になる。
【0062】従って、(12)式又は(13)式で求められたSKを所定値SK0と比較することによって、検出された像間隔S0 の信頼性を判定することができる(ステップS43)。この判定で、信頼性があると判定された場合は(YES)、検出された像間隔S0 より、レンズ駆動量を求める(ステップS44)。しかし信頼性がないと判定された場合には(NO)、測距不能と判定し(ステップS45)、相関演算を終了する。
【0063】なお、実際には測距光学系の誤差や、光学変換素子の変換誤差や電気ノイズ等の影響により、分割された2像の像信号は一致しない場合があり、信頼性の判定値SK0は“1”より大きい値になる場合がある(例えば2〜3)。
【0064】従って、判定値SK0を限定すると測距不能に判定されることが多くなり、カメラとしての商品性を損なうので、条件によっては判定値を大きく設定する。例えば低輝度の場合、光電変換素子で発生する暗電流の影響で一致性が悪くなるため、判定値を大きく設定する。
【0065】また低輝度時に被写体を照明する補助光を設けているカメラでは、補助光非点灯時の判定値を小さくし、点灯時の判定値を大きく設定することによって、補助光を点灯していない時に検出した像間隔によって、レンズ駆動されないようにする。
【0066】ここで、信頼性値SKが判定値SK0より小さい値の場合は、検出された像間隔で直ちにレンズ駆動量を求める。また判定値SK0より大きく、第2の判定値SK1より小さい場合には、複数回の測距の後、検出された像間隔の変化がないことを確認してからレンズ駆動量を求めてもよい。
【0067】前記信頼性値SKが、判定値SK0より大きく、第3の判定値SK3よりも小さい場合には、相関演算で相関をとる2像の位置関係をずらして相関をとりなおしても良い。これは相関をとった小ブロック内に距離の異なる複数の被写体像が含まれた場合に信頼性が悪くなるためであり、相関をとる小ブロックの位置関係をずらせるか、小ブロックの画素数を小さくすることによって被写体像を絞ることができる。次に図10のフローチャートを参照して、本発明による第2実施例としての測光手段を用いない自動焦点調節装置について説明する。
【0068】前述した第1実施例と同様に検出された2像の画像データに対して、相関演算を行ない(ステップS51)、2像の像間隔を検出して(ステップS52)、検出した像間隔に対して信頼性値の計算する(ステップS53)。次に計算した信頼性値に基づいて信頼性の判定をする(ステップS54)。この判定で信頼性があれば(YES)、直ちにレンズ駆動量を計算する(ステップS63)。ここで、信頼性がないと判定される被写体像は次のような像が考えられる。
(1)フレアー光の影響を受けた像、(2)異なる距離の被写体が共存した像、(3)低コントラスト被写体、(4)デフォーカス量の大きい像。
【0069】前記ステップS54で信頼性が無いと判定された場合(NO)、フレアー光の影響を受けている像と仮定し、2像の光量を(1)式,(2)式に基づいて計算し、2像の光量差ΔWを求める(ステップS55)。
【0070】
【数8】
【0071】次に、異なる距離の被写体が共存した増感剤あるいは低コントラスト被写体の場合2像の光量差ΔWが小さく、フレアー光の影響を受けた像あるいはデフォーカス量の大きい像の場合には、2像の光量差ΔWは大きい値を示す。従って、2像の光量差ΔWを判定値ΔW0 と比較することによって(ステップS56)、フレアー光の影響を受けている可能性を高かめることができる。この比較で2像の光量差が所定値以下の場合には(NO)、測距不能と判定する(ステップS58)。
【0072】ここで、(1)式、(2)式によって、前記光量差を求めた場合、判定値ΔW0 が約1000になる。但し、フレアー光の発生条件及び再結像被写体像の影響の度合は、撮影光学系の構成,特性によって大きく変わり、前記判定値ΔW0 は撮影光学系に応じて決められる。またカメラがズーム機構を有している場合には、焦点距離に応じて、判定値ΔW0 を変更しても良い。また、装置個々でフレアー光の発生状態にバラツキがある場合には、工場出荷時に所定条件でフレアー光を発生させて、その画像データより、判定値ΔW0 を測定し、EEPROMに書き込んでおくこともできる。
【0073】ステップS56の比較で、2像の光量差が所定値以上の場合は(YES)、(3)式,(4)式あるいは(5)式,(6)式に基づいて、CPU61内に記憶されている画素データに対して、光量補正を行なう(ステップS57)。次に光量補正した画素データに対して前述した相関演算(ステップS59)、像間隔検出(ステップS60)、信頼性計算(ステップS61)を繰り返し行う。
【0074】前述したように、フレアー光の影響がある場合には、光量補正した画素データで求めた像間隔は高い信頼性が得られる。一方、デフォーカス量の大きい被写体の像の場合は、本来の2像が一致していないため、信頼性は得られない。
【0075】従って光量補正した画素データで求めた像間隔の信頼性を判定することによって(ステップS62)、フレアー光の影響を受けた像であるか否かを判定できる。同時に、ステップS60で求まった像間隔が正しい像間隔になる。
【0076】前記ステップS62で信頼性があると判定された場合には(YES)、検出した像間隔によってレンズ駆動量を求め(ステップS63)、信頼性がない場合には(NO)、測距不良と判定し(ステップS63)、
【0077】なお、デフォーカス量の大きい像の可能性がない場合、例えば、撮影光学系のデフォーカス量に対して、測距光学系のデフォーカス検出範囲が充分にある場合などでは光量差の判定(ステップS56)した後、直ちにレンズ駆動量を求めても良い。あるいは2回目の相関演算(ステップS59)を省略し、1回目の相関演算(ステップS51)で求めた小ブロックの画像位置SLM,SRMに対して光量補正した画素データで像間隔を求めても良い。また本発明は、前述した実施例に限定されるものではなく、他にも発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形や応用が可能であることは勿論である。
【0078】
【発明の効果】以上詳述したように本発明によれば、測距視野外の光源によるフレアー光が測距視野内の被写体像に影響を及ぼす場合でも、2像の光量差を補正することによって安定した測距動作を続けることができる自動焦点調節装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明による第1実施例としての自動焦点調節装置を搭載したカメラの具体的な構成を示す図である。
【図2】図2は、本発明の原理を説明するための光電変換素子列で変換された再結像被写体像の電気信号を示す図である。
【図3】図3は、本発明の原理を説明するための光電変換素子列で再変換された輝度が連続的に変化する被写体像の電気信号を示す図である。
【図4】図4は、多分割測距パターンの一例を示したものである。
【図5】図5は、図1に示す構成の自動焦点調節装置の電気信号の処理系統を示す図である。
【図6】図6は、測光からフレアー光の影響の判定までの動作を示すフローチャートである。
【図7】図7は、フレアー光の影響を補正してレンズ駆動力量を求める動作を示すフローチャートである。
【図8】図8は、第1実施例の相関演算部により行われる相関演算の手順を示すフローチャートである。
【図9】図9(a),(b)は、相関出力の特性を示す図である。
【図10】図10は、本発明による第2実施例としての測光手段を用いない自動焦点調節装置の動作を示すフローチャートである。
【図11】図11は、測距における原理を示す図である。
【図12】図12は、位相差方式で測距視野外に被写体より著しく明るい被写体Mがある場合の原理を示す図である。
【図13】図13(a),(b),(c)は、従来の光電変換素子列で変換された再結像被写体像の電気信号を示す図である。
【符号の説明】
1,2,3,11,12,13,21…撮影レンズ、4,14…フィルム等価面、5,15,24…視野マスク、6,16…再結像レンズ、7,17,30,30(L),30(R)…光電変換素子列、22a…メインミラー、22b…サブミラー、23…測距光学系、25…赤外カットフィルタ、26…コンデンサレンズ、27…反射ミラー、28…再結像絞り、29…再結像レンズ、33…ファインダー光学系、34…フォーカシングスクリーン、35…コンデンサレンズ、36…プリズム、37…モールドダハミラー、38…接眼レンズ、39…測光レンズ、40,60…測光素子、50…画面、51,52,53,54,55,56…測光領域、61…CPU、62…EEPROM、63…インタフェースIC、64…不均一補正部、65…フィルタ補正部、66…画素データ記憶部、67…相関演算部、68…像間隔検出部、69…信頼性判定部、70…レンズ駆動量計算部、71…A/D変換回路、72…測光値記憶部、73…フレア判定部、74…光量補正部、L,R…被写体像、O…被写体光。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 撮影光学系を通過した被写体光を2像に分割し、この2像の像間隔に基づいて撮影光学系のデフォーカス量を求める自動焦点調節装置において、前記分割した2像に前記撮影レンズによって発生したフレアー現象の影響があるか否かを判定する判定手段と、この判定手段によってフレアー現象の影響があると判定された場合には、前記2像を光電変換する光電変換手段の出力を、前記2像の光量差によって補正する補正手段と、この補正手段によって、補正された光電変換信号に基づいて前記像間隔を演算する演算手段とを具備することを特徴とする自動焦点調節装置。
【請求項1】 撮影光学系を通過した被写体光を2像に分割し、この2像の像間隔に基づいて撮影光学系のデフォーカス量を求める自動焦点調節装置において、前記分割した2像に前記撮影レンズによって発生したフレアー現象の影響があるか否かを判定する判定手段と、この判定手段によってフレアー現象の影響があると判定された場合には、前記2像を光電変換する光電変換手段の出力を、前記2像の光量差によって補正する補正手段と、この補正手段によって、補正された光電変換信号に基づいて前記像間隔を演算する演算手段とを具備することを特徴とする自動焦点調節装置。
【図1】
【図2】
【図4】
【図3】
【図5】
【図11】
【図12】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図13】
【図10】
【図2】
【図4】
【図3】
【図5】
【図11】
【図12】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図13】
【図10】
【公開番号】特開平5−264892
【公開日】平成5年(1993)10月15日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−60676
【出願日】平成4年(1992)3月17日
【出願人】(000000376)オリンパス光学工業株式会社 (11,466)
【公開日】平成5年(1993)10月15日
【国際特許分類】
【出願日】平成4年(1992)3月17日
【出願人】(000000376)オリンパス光学工業株式会社 (11,466)
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