説明

自動的に制御される換気システム

患者に供給される呼吸ガスを制御及び調節するシステムは、患者に呼吸ガスを与える圧力発生器システムと、呼吸ガスの流れを患者に供給する患者回路とを含んでいる。このシステムは、患者回路に結合され、患者の気道に呼吸ガスの流れを伝えるインターフェースデバイスを含んでいる。センサ及び圧力発生器システムに結合された制御器は、患者の呼吸気流の少なくとも1つの特徴を測定し、呼吸気流の少なくとも1つの特徴に基づいて、患者に供給される患者の呼吸サイクルの少なくとも一部の目標の呼吸−振幅に基づくパラメータ及び時間に基づくパラメータを計算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2010年1月22日に出願された米国仮特許出願第61/297,400号の米国特許法第119条(e)の下での優先権の利益を主張し、その内容は参照することにより本明細書に組み込まれるものとする。
【0002】
本発明は、換気装置(ventilator)及び所望の目標体積の空気又は酸素混合気のような流体を患者に供給するために換気装置を制御する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
従来の換気装置は、吸気中に予め設定された体積の流体を患者に供給しようとする量規定(volume targeted)換気モードにおいて空気又は酸素混合気のような流体を患者に供給するために用いられ得る。各吸気中にこの規定量を達成するよう吸気中に患者に供給される流体の体積を調節するために、換気装置は患者に与えられる流体の圧力を調節する。例えば、複数の呼吸サイクルにおける或る吸気相に関して、圧力の増加は患者に供給される流体の体積を増加させ、圧力の減少は患者に供給される流体の体積を減少させる。
【0004】
換気装置は、種々のモードにおいて動作し得る。例えば、量規定換気(「VTV」)モードで動作する量換気装置は、吸入中に患者に供給される流体の実際の体積を監視し、必要に応じて、流体の規定量を満たすために流体が患者に供給される圧力を増加又は減少させる。
【0005】
設定された最小の体積が各呼吸の間に患者に常に供給されることを確実にするように圧力が換気装置によって制御される量保証圧支持(「VAPS」)モードにおいて換気装置を動作させることも知られている。この量換気モードでは、吸気相において患者の吸気流量がその呼吸について設定された体積を与えるのに十分ではないと、換気装置は、体積が制御される動作のモードへ移行し、この設定された圧力を満たすように患者への流体の流れの圧力を増加させる。これは、典型的には、換気装置が患者の吸気ドライブがその呼吸について設定された体積を達成するのに十分ではないことを決定する吸気相の中間又は終末近くで生じる。この圧力の増加は、典型的には、呼吸の終末近くで生じ、これは患者が最も息を吐き出したい時であるので、この換気のモードは、自発呼吸をしている患者には不快である。
【0006】
換気装置の中には、平均量保証圧支持(AVAPS)モードで動作するものもある。AVAPSは、一回換気量の設定値まで圧支持換気を行う。上記AVAPSは、一回換気量の設定値を達成するために数分間にわたってゆっくりと圧支持の量を調整する。一回換気量の設定値は、手作業で決定され、デバイスに入力される。
【0007】
換気デバイスの幾つかの例は、持続的気道陽圧(CPAP)デバイス、二相性気道陽圧デバイス及びオートサーボ換気(ASV)デバイスである。多くの閉塞型睡眠時無呼吸(OSA)の患者の場合、CPAP療法は、肥大した鼻腔を減少させ、上気道を空気圧で支える(splint)ことにより、OSAを治療するのに十分である。幾つかの自動的に制御されるCPAPデバイスは、患者の呼吸活動を監視し、その後、気道開存性を保つためにCPAP圧の適切なレベルを選択する。一般的なOSAの人々の一部は、睡眠中に補助換気を与えるために二相性気道陽圧デバイスを用いて治療される。二相性気道陽圧デバイスは、CPAPのスプリント圧が快適なレベルを超える時又はある程度の決まった換気補助が必要とされる時に用いられる。
【0008】
二相性気道陽圧を与えることができる換気装置のような換気装置は、肥満低換気症候群(OHS)の患者の換気を手伝うために用いられ得る。OHSの患者は、速い呼吸数と減少した一回換気量との組み合わせで呼吸する患者である。これらの特徴は、各呼吸で移動する空気の量を減少させるこれらの患者の大きい腹部の構造によって引き起こされる。圧支持換気は、眠っている患者の一回換気量を増加させ、呼吸数を減少させるために研究室で量を決められる。圧支持を伴わない場合、これらの患者は、250mlの一回換気量において1分間当たり23呼吸を行う。一方、ほとんどの患者の最適な範囲は、1分間当たり11から16呼吸までである。
【0009】
他のタイプの換気装置は、中枢を介した呼吸障害を持つ患者の補助をするオートサーボ換気装置である。補助は、呼吸制御が不安定な患者、鬱血性心不全の患者及び安定な呼吸を妨げる他の状態を有する患者に与えられる。これらのデバイスは、患者の呼吸状態を監視し、患者の呼吸努力が例えば以前の呼吸の間の患者の監視された呼吸努力よりも少ない時に吸気圧の増加の形態で換気の補助を与える。
【0010】
現在の量規定換気装置の場合、デバイスの設定は、熟練した医療従事者の指導の下で決定されなければならない。換気装置の設定は、患者の呼吸仕事量を低減する呼吸数と一回換気量との組み合わせを与えるように調節される。理想的な解決策は、患者を中枢性睡眠時無呼吸にオーバードライブせず、患者の呼吸数を最適な範囲に管理するものである。また、現在のオートサーボ換気装置は、頻呼吸又は呼吸困難のような呼吸数の増大によって示される状態に対して何らかの対応を行うように設計されていない。代わりに、現在のオートサーボ換気装置は、患者の最大流量又は一回換気量において若しくはその付近において安定した呼吸を与えるように設計されている。機械呼吸は、患者が呼吸を開始することができない場合に与えられる。現在のオートサーボ換気装置は、より大きい一回換気量の呼吸を与えることにより患者の呼吸数を最適化することを認めない又はそのように試みない。
【0011】
幾つかのアルゴリズムは、最小の呼吸仕事量に関連する呼吸数を計算するためにオーティス(Otis)の式を用いる。このオーティスの式は、肺の抵抗及びコンプライアンスと呼吸の全仕事量との関係を示している。具体的には、高い呼吸数で少ない一回換気量を吸い込むことは、上気道の抵抗ネットワークの繰り返しの換気のために高い呼吸仕事量を必要とする。更に、低い呼吸数で大きい一回換気量を吸い込むことは、肺コンプライアンスの圧迫に関連する仕事のために高い呼吸仕事量を必要とする。呼吸仕事量、呼吸数、分時換気量、死腔量及び肺コンプライアンスを反映するパラメータを用いる上記オーティスの式は、以下に示されている。すなわち、

である。
ここで、「f」は換気の回数であり、「Va」は肺胞換気量であり、「K」は肺コンプライアンス係数であり、「D」は死腔量である。
【0012】
下記の式は、オーティスの式から導かれ、最小の呼吸仕事量に関連する呼吸数を示すものである。

ここで、fは呼吸の回数であり、K′は肺エラスタンスであり、K″は肺における空気の粘性計数であり、Vは死腔量であり、VARは肺胞換気量(VAR=V/60)である。次の式、すなわち、

は、幾つかの換気装置デバイスにおいて用いられている。ここで、
「a」は、流量波形に依存する係数(正弦波状流量の場合、「a」は2π/60である。)であり、
「RCe」は、呼気時定数であり、
「MinVol」は、目標分時換気量であり、
「Vd」は、換気された死腔であり、
「f」は、呼吸回数である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記の式を用いるデバイスは、デバイスに入力される理想体重を必要とする。デバイス内のルックアップテーブルは、理想体重をMinVolの設定値に変換する。上記の式を用いるデバイスは、MinVol、推定される死腔及び呼気時定数を上記式に挿入し、複数の繰り返しの間の差が1分間当たり0.5呼吸よりも小さくなるまでfを上記式にフィードバックすることを含む反復計算を行う。一度上記回数が決定されると、上記デバイスは、MinVolを理想呼吸数fで割ることにより各呼吸のVt規定について一回換気量を計算する。デバイスは、その後、患者に供給される換気を呼吸数=fにVt(目標)一回換気量を供給するために十分な圧支持で制御する。しかしながら、これらのデバイスは、予め決定され、デバイスに外部から入力される理想体重を必要とする。そのため、現在のデバイスは、呼吸の特徴又は他の生理学的特徴を変化させることに基づいて最適な目標一回換気量及び患者に与えられる圧支持を自動的に決定せず、与えない。
【課題を解決するための手段】
【0014】
一観点は、患者に供給される呼吸ガスを制御及び調節するシステムを提供する。このシステムは、患者に呼吸ガスを与える圧力発生器システムと、上記圧力発生器システムに動作可能に結合され、呼吸ガスの流れを上記患者に供給する患者回路とを含んでいる。このシステムは、また、上記患者回路に動作可能に結合され、上記患者の気道に上記呼吸ガスの流れを伝えるインターフェースデバイスも含んでいる。このシステムは、更に、上記圧力発生器システム、上記患者回路及び上記インターフェースデバイスの1つ又はそれ以上に動作可能に結合されたセンサを含んでいる。センサは、上記患者に供給される呼吸ガスの流れを示す1つ又はそれ以上のパラメータを検出するように機能する。このシステムは、また、上記センサ及び上記圧力発生器システムに動作可能に結合された制御器も含んでいる。制御器は、患者の呼吸気流の少なくとも1つの特徴を決定する。制御器は、上記患者の呼吸気流の上記少なくとも1つの特徴に基づいて、上記患者の呼吸サイクルの少なくとも一部の目標の時間に基づくパラメータを計算し、上記患者に供給される目標の呼吸−振幅に基づくパラメータを計算する。
【0015】
他の観点は、患者に供給される呼吸ガスを制御及び調節する方法を提供する。この方法は、患者の呼吸気流の少なくとも1つの特徴を測定することと、上記患者の呼吸気流の上記少なくとも1つの特徴に基づいて、上記患者の呼吸サイクルの少なくとも一部の時間に基づくパラメータを計算することとを含んでいる。この方法は、また、上記患者の呼吸気流の上記少なくとも1つの特徴に基づいて、目標の呼吸−振幅に基づくパラメータを計算することも含んでいる。この方法は、更に、計算された上記目標の呼吸−振幅に基づくパラメータを上記患者に与えることを含んでいる。
【0016】
他の観点は、患者に供給される呼吸ガスを制御及び調節するシステムを提供する。このシステムは、患者の呼吸気流の少なくとも1つの特徴を測定する手段と、上記患者の呼吸気流の上記少なくとも1つの特徴に基づいて、上記患者の呼吸サイクルの少なくとも一部の時間に基づくパラメータを計算する手段とを含んでいる。このシステムは、また、上記患者の呼吸気流の上記少なくとも1つの特徴に基づいて、目標の呼吸−振幅に基づくパラメータを計算する手段も含んでいる。このシステムは、更に、計算された上記目標の呼吸−振幅に基づくパラメータを上記患者に与える手段を含んでいる。
【0017】
本発明のこれら及びその他の目的、特性、特徴並びに動作の方法及び構造物の関連する構成要素の機能、製造の部品と経済面との組み合わせは、添付の図面を参照して以下の説明及び添付の特許請求の範囲を考慮した上でより明らかになるであろう。図面の全てはこの明細書の一部を形成しており、同様の参照符号は幾つかの図の対応する部分を示している。本発明の一形態では、本明細書に示されている構成要素は、縮尺通りには描かれていないことが考慮され得る。しかしながら、図面は、専ら実例及び説明の目的のためのものであり、本発明の限定の定義付けとして意図されていないことを明確に理解されたい。明細書及び特許請求の範囲において、「a」、「an」及び「the」の単数形は、内容が明らかに他を指示していない限り、複数の指示対象を含む。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】回路及びインターフェースを介して患者に接続される圧支持システム又は換気装置の模式的な図を示している。
【図2】患者の流れの吸気相及び呼気相を示す波形である。
【図3】一実施の形態に係るシステムの動作の流れ図である。
【図4】患者の流れの呼気時間を示す波形である。
【図5】患者の流れの呼気テール時間を示す波形である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明の原理に従う圧支持システム又は換気装置2の例示的な実施の形態を示している。本明細書では、「換気装置」という用語は、可変の圧力で呼吸ガスの流れを患者に供給する任意のデバイスを意味しており、生命維持換気システムに限定されるよう意図されてはいない。
【0020】
システム2は、患者の呼吸気流の少なくとも1つの特徴を測定し、上記少なくとも1つの測定された特徴に基づいて理想呼吸数のような目標の時間に基づくパラメータを計算又は決定し、患者に供給される目標一回換気量のような目標となる呼吸−振幅に基づくパラメータを計算し、その後、計算された目標となる呼吸−振幅に基づくパラメータを患者に与える。流量と一回換気量との関係が図2に示されている。図2に示されているように、正の流量は、吸気中の患者への流量を表している。負の流量は、患者から吐き出される流量を表している。吸気一回換気量は、正の流量を積分することによって決定される。呼気一回換気量は、負の流量を積分することによって決定される。
【0021】
図1に戻って参照すると、システム2は、加圧流体源4と、加圧流体源4から加圧流体を受け取るように接続された圧力調節器6とを含んでいる。圧力調節器6は、圧力が調節された流体を患者インターフェースデバイス12を介して患者10に運ぶ患者回路8に供給される加圧流体の圧力を調節する。センサ14は、圧力調節器6から患者に供給される流体の体積を決定するために用いられる患者回路8又はインターフェースデバイス12における流体の流れに関連するパラメータを検出し、このパラメータを示す信号を制御器16に与える。
【0022】
例示的な実施の形態では、センサ14は、患者回路8における流体の流れを検出する流量センサである。この流れは、患者に与えられる流体の体積を決定するために用いられる。しかしながら、本発明は、流量及び従って患者に与えられる流体の体積を決定するために送風器に与えられる電力又は電流のような他のパラメータを用いることも考えていることを理解されたい。圧力センサ18は、患者回路8内の圧力及びより詳細には患者インターフェース12における加圧流体の圧力を検出し、検出された圧力を示す信号を制御器16に供給する。流量が流量センサ14によって測定され、圧力が圧力センサ18によって測定される場所が換気装置2内に存在するように図示されているが、患者の圧力及び患者に供給される流体の体積を測定する目的が決定される限りにおいては実際の流量及び圧力の測定が患者回路8又は患者ンターフェース12に沿ってどこでも行われ得ることに注意されたい。
【0023】
本発明は、患者の他の生理学的状態を検出するために1つ又はそれ以上の患者モニタ19を与えることも考えている。そのような生理学的状態は、患者を監視するため及び/又は換気装置の動作を制御するために用いられ得る。
【0024】
例えば、本発明の一実施の形態は、患者モニタ19が呼吸中に横隔膜により生成されるEMG信号を検出する横隔膜筋電図(「EMG」)検出システムであることを考えている。好適な患者モニタの他の例は、呼吸中に患者の胸の動きを検出する努力検出器である。患者モニタ19は制御器16に接続されており、制御器16は、患者モニタ19から当該制御器に与えられる横隔膜EMG又は努力信号を監視し、例えば、一実施の形態では、換気装置2が呼吸サイクルの吸気相の間に患者10に流体を供給し、呼気相の間は患者10への流体の供給を終わらせる又は減少させるようにする。より具体的には、本発明のこの実施の形態では、制御器16は、吸気相中に加圧流体を患者10に供給し、呼気相中に患者10への加圧流体の供給をしない又は減少させるために圧力調節器6に信号を送る。代替として、制御器16と加圧流体源4との間に破線26によって図示されているように、制御器16は、吸気中に患者10に加圧流体を供給し、呼気中に患者10からの加圧流体の供給を終わらせる又は減少させるように加圧流体源4を直接的に制御し、それによって、圧力調節器6の機能を加圧流体源4に効果的に組み込む。
【0025】
横隔膜EMG又は努力信号の使用が換気装置をトリガするメカニズムとして上記に説明された一方で、自発呼吸をしている患者に用いて好適な任意の従来の換気装置をトリガする技術が用いられることが考えられる。例えば、患者ンターフェース12及び/又は患者回路8において患者によって生成される圧力及び/又は流量が、換気装置をトリガするために用いられる。また、換気装置2及びより具体的には制御器16は、患者が所定の閾値を超えるしばらくの間呼吸を止めている場合、換気装置が呼吸サイクルを自動的に開始するように定期的なバックアップを含んでいる。
【0026】
加圧流体源4は、例えば、圧縮ガス、例えば、空気、酸素、ヘリウム−酸素又は他の酸素混合気のソースである。本発明は、加圧流体源が、周囲の雰囲気又は圧縮ガスのソースからのガスの供給を受け取り、そのようなガスの流れを生成するピストン、ベロー(bellow)又は送風器であることも考えている。圧力調節器6は、例えば、ポペット、ソレノイド、バタフライ、回転、スリーブ又は患者に供給される流体の流量及び/又は圧力を制御するのに用いて好適な任意の他の弁若しくは弁アセンブリである。上述のように、制御器16は、ピストン、ベロー又は送風器の速度を制御することにより加圧流体源4からの流体の圧力及び/又は流量を直接的に、すなわち、専用の圧力制御弁を必要とすることなく制御することができ、それによって、破線27により総体的に示されているように、単一のユニットとして加圧流体源4及び圧力調節器6の機能を効果的に組み合わせている。この目的のために、加圧流体のソース4と圧力調節器6との組み合わせられた機能は、「圧力生成器システム」と呼ばれる。従って、加圧流体源により出力される流体の流量/圧力が、例えば送風器の速さを調節することにより直接的に制御される場合には、上記圧力生成器システムは加圧流体源4のみを含み、そうでなければ、圧力生成器システムは加圧流体のソース4と圧力調節器6との組み合わせを含んでいる。
【0027】
本発明の一実施の形態では、患者回路8は、圧力調節器6とインターフェース12との間に接続された典型的には単肢回路と呼ばれる単一の管又は導管20である。この実施の形態では、導管20及び/又は患者インターフェース12は、呼気ガスを大気に放出し、従って、呼吸ガス供給システムにおける既知の漏れを表す排気アセンブリ22を含んでいる。受動的な排気アセンブリの一例は、システムからのガスの流れの能動的な制御を伴うことなく導管又はインターフェースの内部を大気とつなぐ導管20及び/又は患者インターフェース12に形成された穴又は溝であり、それによって、患者回路及び/又はインターフェースから排ガスの流れを与える。上記穴の大きさは、典型的には、患者回路から呼気ガスを排出するのに十分であるように選択される。しかしながら、本発明の換気装置/圧力発生器システムとともに用いるために、種々の排気デバイス及び構成が考えられることを理解されたい。例えば、Zdrojkowski等による米国特許第5,685,296号公報には、デバイスを通る呼気の流量が患者回路内の様々な圧力にわたって実質的に一定のままである呼気デバイス及び方法が開示されている。この呼気デバイスは、通常、プラトー呼気弁又はPEVと呼ばれ、本発明の圧支持システムとともに用いるのに適している。
【0028】
本発明の他の実施の形態では、患者回路8は、図1において破線24によって示されている第2の管又は導管を含んでおり、これは、典型的には、二肢回路と呼ばれている。第2の管又は導管24は、患者10によって吐き出される流体を換気装置に伝え、大気への排出流体の放出を監視及び/又は制御する能動的な排出アセンブリを含んでいる。能動的な排出アセンブリの一例は、加圧流体が患者10に供給される時に、すなわち、吸気相中に流体が大気へ排出されることを防止し、患者10への加圧流体の供給が終わる又は減少する時に、すなわち、呼気相中にガスが大気へ逃げることを可能にする弁である。典型的には、上記能動的な排出アセンブリは、患者の終末呼気陽圧(「PEEP」)を制御するために排出ガスの流量を制御する。勿論、能動的な排出は、図1に大まかに示されているように換気装置のアクチュエータハウジング内に与えられる必要はないが、実際の位置にかかわらず、典型的には、換気装置により与えられる信号によって又は基づいて制御される。
【0029】
本発明は、患者インターフェースデバイス12が、患者回路からの呼吸ガスの流れを患者の気道に伝えるのに適した侵襲的又は非侵襲的な任意のデバイスであることを考えている。好適な患者インターフェースデバイスの例は、鼻マスク、鼻/口マスク、フルフェイスマスク、気管チューブ、気管内チューブ及び鼻枕型マスクを含んでいる。
【0030】
一実施の形態では、システム2は、プロセス又はアルゴリズム300を実行する。ステップ302において、システム2は、例えば、1分間のうちに患者により交換される空気の体積である患者の分時換気量のような呼吸気流の特徴及び換気パラメータを測定又は決定する。分時換気量を監視する際、数秒から数分までの間である期間を有する観察窓が患者の換気を監視するために用いられる。その値は、その後、1分間のうちに交換された空気の量を反映するように窓の長さに比例して縮小拡大される。一実施の形態では、プロセス300は、第1の呼吸が完了するとすぐに、分時換気量を監視する。一実施の形態では、プロセス300は、第1の呼吸の持続時間で始まり、4分の最大値に拡大する拡大観察窓を用いる。分時換気量を用いて、目標分時換気量(MinVol)の値が監視された換気の関数として算出される。部分成分は、様々な方法によって算出され得る。幾つかの実施の形態では、患者又は臨床医が、分時換気量の百分率又は割合の設定を調節する。システム2も、上記百分率又は割合を設定することが可能である。例えば、一実施の形態では、目標一回換気量は、測定された分時換気量の90%に設定される。
【0031】
システム2は、また、呼気時定数及び呼気テール時定数のような呼吸気流の特徴のための呼気流パターンも測定又は決定する。呼気テール時定数RCeは、患者の全呼気時間の1/4として計算される。図4に示されているような全呼気時間は、受動的な呼気の間に肺を完全に空にするために必要な時間である。言い換えると、呼気時間は、患者が肺から離れる空気の動きを持ち続ける持続時間である。図5に示されているような呼気テール時間は、患者の流量が1分間当たり0リットル(lpm)に達した後の持続時間である。これは、次の呼吸が始まる前に存在する期間である。
【0032】
パラメータの値を得た後、プロセス300は、ステップ304へ進み、理想呼吸数のような患者の呼吸サイクルの少なくとも一部の時間に基づくパラメータが決定される。幾つかの実施の形態では、理想呼吸数は、以下のように上記方法に従って決定される。
【0033】
上記システムは、理想呼吸数のような患者の呼吸サイクルの少なくとも一部の時間に基づくパラメータを決定するためにステップ302において得られるパラメータ又は特徴の値を用いる。理想呼吸数は、以下の式(式1.3)に従って決定され得る。

ここで、
「a」は、流量波形に依存する係数であり、正弦波状流量の場合、aは2π/60であるか又は患者の状態に基づいて最適化され、
「RCe」は、呼気時定数であり、
「MinVol」は、目標分時換気量であり、
「Vd」は、換気された死腔であり、
「f」は、呼吸回数である。
【0034】
幾つかの実施の形態では、実際の分時換気量の代わりに、1回の呼吸よりも長い換気の尺度のような換気の他の尺度が用いられる。従って、他の換気の尺度が用いられると、式1.3は再スケールされる。
【0035】
上記換気された死腔は、専ら有効なガス交換がもたらされない肺の部分に達した呼吸当たりの空気の体積である。例えば、換気された死腔は、肺胞のような呼吸部に達していないが、その代わりに患者の気道(気管、気管支等)内に残っているガスの体積を反映する。適切な換気された死腔の値を決定するために様々な方法が用いられ得る。一実施の形態では、例えば150mlのような一定値が用いられるが、他の値が用いられることも考えられる。他の実施の形態では、適切な値が、監視された分時換気量に対して参照される表に当てはめられる。幾つかの実施の形態では、表の値は、患者の大きさ(例えば、体重)と換気された死腔の値との関係を反映している。例えば、より高い分時換気量の値は、より大きい患者に関係があり、従って、そのような患者はより大きい換気された死腔の値を有する。
【0036】
式1.3は、計算された呼吸数fを式に再び挿入することによりfがサイクル間で著しく変化しなくなるまで繰り返し実行される。一実施の形態では、式1.3は、計算された呼吸数fを式に再び挿入することによりサイクル間のfの値の差が1分間当たり0.5呼吸よりも小さくなるまで繰り返し実行される。fの初期値は、現在の呼吸数である。
【0037】
一実施の形態では、RCeが0.5秒である時、分時換気量及び結果として生じる理想呼吸数fを示す以下の表が生成される。

代替又は追加として、システム2は、理想呼吸数を計算するために以下の方法を用いる。幾つかの状況では、眠っている患者の吐き出された流れは利用できない。これは、眠っている患者が、自身の鼻腔から息を吸い込んだが、口から吐き出す時に生じる。この方法の場合、目標分時換気量及び換気された死腔Vdのパラメータが、理想呼吸数を計算するために用いられる。この数は、全換気に対する換気された死腔の割合が、臨床診療において許容可能な数である例えば30%のような一定値に保たれている時に計算される。
【0038】
この第2の方法を用いると、死腔分時換気量及び(目標分時換気量としても知られる)全分時換気量は、
死腔分時換気量/目標分時換気量=30%
ここで、死腔分時換気量=死腔量×f
のようである。
【0039】
上述したように、死腔量又は換気された死腔は、150mlの値を有していてもよい。そのため、理想呼吸数fは、以下の式(式1.4)、すなわち、
理想呼吸数f=0.3×(目標分時換気量)/0.150
を用いて計算される。ステップ302において得られる目標分時換気量を式1.4に挿入することにより、理想呼吸数fに関して以下の値が得られる。

上述したように、実際の分時換気量の代わりに、1回の呼吸よりも長い換気の尺度のような換気の他の尺度が用いられ得る。従って、他の換気の尺度が用いられると、式1.4も再スケールされる。
【0040】
上記理想呼吸数は、上述した方法の1つ又は両方を用いて計算される。理想呼吸数を計算するために両方の方法を用いる実施の形態では、結果が矛盾していないかどうかを決定するために、結果が互いに比較される。結果は、幾つかの実施の形態では平均化される。幾つかの実施の形態では、一方の方法が主な方法として用いられ、他方は、入力パラメータの全てが利用可能というわけではない場合に代替の方法として用いられる。
【0041】
理想呼吸数fが得られた後、プロセス300はステップ306へ進む。目標一回換気量が、以下の式、すなわち、
目標一回換気量=目標分時拍出量/f
を用いて決定される。ここで、「f」は理想呼吸数であり、目標分時拍出量=目標分時換気量である。
【0042】
上述したように、目標分時拍出量又は換気装置は、システム2が患者の換気パラメータを監視するステップ302において得られる。ステップ304において上述した第1の方法によって計算される理想呼吸数fと以下の分時換気量の値とを用いて、以下の目標一回換気量が得られる。


【0043】
幾つかの実施の形態では、目標一回換気量を決定するために、患者の呼吸サイクルの少なくとも一部の時間に基づく他のパラメータが用いられる。例えば、一実施の形態では、目標一回換気量を決定するために吸気時間が用いられる。幾つかの実施の形態では、目標一回換気量の代わりに又はそれに加えて、目標ピーク流量のような目標の呼吸−振幅に基づく他のパラメータが用いられる。他の実施の形態では、目標一回換気量の代わりに又はそれに加えて、平均吸気流量が用いられる。
【0044】
幾つかの実施の形態では、システム2は、患者の呼吸抵抗を測定又は決定することが考えられる。代替又は追加として、システム2は、また、患者の肺コンプライアンスを測定又は決定する。従って、患者に供給される目標一回換気量を決定する際、これらの及び他の特徴の任意の1つ又は任意の組み合わせが用いられ得る。患者の呼吸抵抗及び患者の肺コンプライアンスは、例えば、米国特許第5,884,622号公報及び米国特許出願公開US2006/0249148号公報に記載されているような種々の方法を用いて決定される。
【0045】
幾つかの実施の形態では、プロセス300は、その後、ステップ308へ進む。代替として、上記プロセスは、このステップ308をスキップして、ステップ310へ進む。このステップ308では、システム2は、患者10のパラメータを監視し、患者を自動終末呼気陽圧(auto-PEEP)から守る。自動終末呼気陽圧は、最後の呼吸が終了する前に次の呼吸が始まると生じる。自動終末呼気陽圧は、呼気の終わりに肺胞に閉じ込められる気体により引き起こされる。この気体は、大気と平衡ではなく、陽圧を加え、それによって呼吸の仕事を増加させる。このステップ308では、自動終末呼気陽圧が生じないこと及び次の呼吸が生じる前に患者10が吸い込んだ体積を完全に排出する時間を有することを確実にするために、分析が行われる。或る呼吸数及び一回換気量に関して、何らかの呼気テール時間が存在すること又は呼気テール時間が例えば0.5秒のような或る閾値を上回っていることを確実にするために、制限が決定される。上記閾値は、変動し、0秒よりも大きい任意の数である。一回換気量RCe及び呼吸数の値が十分な呼気時間を与えるような当該値を確実にするために、呼気テール時間がステップ302において上述したように監視される。目標一回換気量及び呼吸数は、このステップの結果として修正され得る。一実施の形態では、供給される各呼吸に関して、次の呼吸が供給される前に呼気テール時間の少なくとも0.5秒が存在することが予想される。テール時間が存在しない又は閾値を下回る場合、呼気テール時間が存在する又は閾値を上回るまで、目標一回換気量は低減される。
【0046】
プロセス300は、システム2が目標一回換気量を患者10に与えるステップ310へ進む。システム2は、設定値として目標一回換気量を用いて、閉ループの圧支持を患者に伝える。簡単な閉ループの制御ループは、米国特許第7,011,091号公報に記載されているように目標一回換気量を患者10に供給するために使用される。上記目標量は、より詳細には後述する圧支持を用いて患者10に供給される。
【0047】
目標一回換気量を与える際、上記システムは、実際に患者に供給された又は患者10によって受け取られた呼吸ガスの体積の量を決定する。システム2は、米国特許第7,011,091号公報に記載されている方法を用いることによってこの量を決定する。幾つかの実施の形態では、複数の呼吸サイクルにわたる平均の体積を決定することは、各呼吸中に供給される呼吸ガスの体積を決定することを必要とする。換気装置は大気に放出される流体の量を制御するので、これは、二肢の患者回路においてかなり容易に達成される。また、二肢の形態の患者回路からの漏れは実質的に存在しないと考えられる。従って、各呼吸中に患者10に供給される呼吸ガスの全量は、排気ガスの流動速度を測定するために排気の方の肢にフローメータを与えることによるような任意の従来の技術を用いて決定され、これから、各呼吸サイクル中に放出されるガスの体積を決定する。
【0048】
しかしながら、単肢回路では、各呼吸中に実際に患者10に供給される又は患者10によって受け取られる呼吸ガスの体積の決定は、患者回路内にかなり大きい意図的な漏れ及び患者とインターフェースデバイスとの間のインターフェースにおける意図的ではない漏れが存在する可能性があるという事実のためにより困難である。Sanders等による米国特許第5,148,802号公報、Zdrojkowski等による米国特許第5,313,937号公報、Sanders等による米国特許第5,433,193号公報、Zdrojkowski等による米国特許第5,632,269号公報及びZdrojkowski等による米国特許第5,803,065号公報には、漏れを検出及び推定し、漏れの存在下で患者への呼吸ガスの供給を維持する技術が説明されており、これらのそれぞれの内容は、参照することによって本発明に組み込まれるものとする。以下に、このプロセスの簡単な説明が与えられる。
【0049】
単肢回路では、1呼吸サイクルにわたって患者10に受け取られる流体の体積は、当該呼吸サイクル中の換気装置により患者に供給される流体の量、すなわち、換気装置により出力される流体の量と、患者回路からの漏れ及び患者インターフェースデバイスからの漏れを含む換気装置システムから漏れた流体の量との差から決定される。典型的には、漏れの大部分は、患者回路内の排気口からのものである。より具体的には、大気に漏れる流体は、一般に、単肢回路において排気アセンブリ22によって与えられる排気流のような既知の漏れ及び患者と患者インターフェースデバイス12との間のインターフェースにおける漏れのような未知の漏れの結果である。任意の或る時間において患者10により受け取られる流体の体積は、米国特許第7,011,091号公報に説明されている方法に従って推定され、この公報の内容は参照することによって全体が本明細書に組み込まれるものとする。単肢システムでは、1呼吸サイクル中に患者に供給される流体の体積を推定する際、システム2は漏れ率を計算に入れる。患者によって受け取られる体積の推定される量が、目標一回換気量を与えるために圧力生成器システムによって生成されるべきである圧力の量を決定するために用いられる。
【0050】
幾つかの実施の形態では、患者に供給される流体の量の調節は、圧力調節器6が吸気気道陽圧(IPAP)レベルを調節するようにする制御器16によって達成される。
【0051】
幾つかの実施の形態では、圧支持レベルが調節される。当業者には理解されるように、「圧支持」という用語は、吸気気道陽圧と呼気気道陽圧との差として定義される。数学的に言えば、圧支持(PS)は、以下のように定義される。すなわち、PS=IPAP−EPAPと定義される。従って、圧支持の調節は、IPAP及び/又はEPAPレベルを調節することにより達成される。
【0052】
一実施の形態では、本発明は、複数の呼吸にわたる平均体積が目標量に対応するように或る吸気相から次までのIPAPレベル(IPAPとも呼ばれる。)を調節する。VTV又はVAPSモードにおいてなされるような各呼吸についての目標量ではなく、複数の呼吸にわたる平均体積を得るために患者への呼吸ガスの供給に関してIPAPレベルを変化させることにより、例えば、本発明の換気モードは、自発呼吸をしている患者にとってより快適であり、一方で、患者の変化する呼吸の要求に依然として反応する。
【0053】
第1の呼吸サイクル30の間に加圧流体が患者10に与えられると、圧力調節器6は、患者に供給される流体についての吸気気道陽圧レベルを設定する。IPAPレベルは、最大IPAPのIPAPmaxと最小IPAPのIPAPminとの間で設定される。IPAPmax及びIPAPminは、典型的には臨床医によって設定される。しかしながら、本発明は、IPAPmax、IPAPmin又は両方が換気装置によって自動的に設定されることも考えている。例えば、一度ユーザがIPAPminを設定すると、換気装置は、IPAPminよりも大きい固定された圧力の固定された割合としてIPAPmaxを自動的に設定する。臨床医がIPAPmaxを設定した後、IPAPminは同様に設定され得る。
【0054】
システム2は、呼吸サイクルの呼気相から吸気相への最後の移行のときから経過した時間の量も監視する。自発吸気努力が或る期間にわたって検出されない場合、「機械によって引き起こされる呼吸」がシステム2によって患者に自動的に与えられ、従って、肺を換気する。幾つかの実施の形態では、患者がTperiod=60/fminと関連のある時間内に自発呼吸を開始できない場合に、機械によって引き起こされる呼吸が患者に与えられる。Fminは、理想呼吸数fに等しいか、又は理想呼吸数fよりも少ない1分間当たり2呼吸である若しくは1分間当たり10呼吸の固定された値である。
【0055】
制御器16は、米国特許第7,011,091号公報に説明されている方法に従って計算された目標一回換気量を患者に与える。この公報の内容は参照することによって全体が本明細書に組み込まれるものとする。一実施の形態では、制御器16は、(a)患者の呼吸サイクルの各吸気相について、センサにより与えられる患者に供給される流体の体積を示すパラメータに基づいて患者によって受け取られる流体の体積を決定する、(b)複数の吸気相にわたって患者によって受け取られる流体の平均体積を決定する、(c)上述した方法を用いて患者によって受け取られる流体の平均体積を目標一回換気量と比較する、(d)この比較に基づいて、圧力発生器システムが該システムにより出力される流体の圧力又は流動速度を調節するようにする。換気装置2の作動を受けて、制御器16は、吸気相中に加圧流体が患者10に供給されるようにし、呼気中に加圧流体の流れが減少する又は患者からなくなるようにする。上述したように、各呼吸サイクルの間に患者に供給される流体の所望の体積である目標一回換気量は、システム2により決定される。
【0056】
一実施の形態では、目標一回換気量を患者に与える際、米国特許第7,011,091号公報に説明されているように、制御器64が、患者の現在の圧支持レベルからどの程度圧支持が加えられる又は取り除かれるべきであるのかの推定を表す圧支持誤差を決定する。そのような実施の形態では、制御器64は、圧支持誤差がゼロに近づくように数分にわたって徐々に圧支持レベルを変える。一実施の形態では、EPAP圧は固定されたままであり、IPAP圧は数分にわたって傾斜をつけられる。上記傾斜の時間は、1分間平均化アレイの使用により制限される。このアレイは、測定システムが動作するよりも速くシステムを制御することを防止するように圧力の増減の決定が再度なされる前に新しいデータで満たされる。
【0057】
一実施の形態では、上記制御器は、患者の各呼吸サイクルの一回換気量が正常なパラメータの範囲内であるかどうかを決定する。範囲内である場合、上記システムは、更なる処理ステップにおいて当該呼吸に関連するデータを用いる。呼吸データが正常なパラメータの範囲内にない場合には、当該呼吸に関連するデータは廃棄される。本発明は、廃棄される又は正常ではないと見なされる呼吸の数を監視し、例えば、あまりにも多くの非正常な呼吸が検出された場合に警報が出されることも考えている。そのような出来事は、患者が明らかな呼吸障害の期間を経験していること、圧支持システムが正しく機能していないこと又は両方を示している。
【0058】
本発明は、吸気一回換気量の決定に関して上述した方法を用いて侵襲的又は非侵襲的換気装置システムにおいて呼気一回換気量を決定することを考えていることに注意されたい。すなわち、吸気一回換気量の決定に関して上述した原理と同じ原理が呼気一回換気量の決定に当てはまる。勿論、呼気一回換気量を決定するために、任意の従来の技術が用いられ得る。
【0059】
前述のことに基づいて、本発明は、前の呼吸サイクル中に患者により受け取られた流体の体積の関数として呼吸サイクル中に患者に供給される流体の体積を調節し、それによって、患者の不快感を防ぐ装置及び方法を提供することを理解されたい。これは、患者が換気装置がこれらのわずかな変化に過剰反応することなく1呼吸サイクル中に非常に浅い又は非常に深い呼吸をすることによるような自身の呼吸パターンの一時性を変化させることを可能にする。
【0060】
幾つかの実施の形態では、換気装置2は、目標一回換気量を与えることのみによって換気療法を与える。すなわち、換気装置は、換気療法全体として目標一回換気量を与える。幾つかの実施の形態では、換気装置2は、目標一回換気量を与えることに加えて追加の治療の形態を与える。すなわち、一回換気量の供給は、複数の要素の換気療法の1つの要素のみである。例えば、幾つかの実施の形態では、換気装置2は、米国特許出願公開US2006/0070624号公報に記載されているオートサーボ換気装置の形態でもあり得る。この公報の内容は、参照することによって全体が本明細書に組み込まれるものとする。そのような実施の形態では、上述したような一回換気量の計算が、基準の圧支持の値又は最小のIPAP値を計算するために最小一回換気量として用いられる。オートサーボアルゴリズムを用いる換気装置2は、その後、安定した呼吸を与えるために圧支持の値を調節する。幾つかの実施の形態では、換気装置は、圧支持の値を調節するために吸気圧を増加又は減少させる。従って、目標一回換気量に従って計算される基準の圧支持の値は、患者に供給される圧支持の値の変更を達成するためにオートサーボアルゴリズムに基づいて換気装置2による調節に依存して増加又は減少する。患者に与えられる圧支持についてのまとめられた結果をもたらすために、米国特許第6,532,956号公報に記載されているflexのような第3のアルゴリズムが追加されることが考えられる。
【0061】
制御器、マイクロプロセッサ又はプロセッサのような本発明の実施の形態は、例えば、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア又はその種々の組み合わせに作られる。本発明は、また、1つ又はそれ以上の処理デバイスを用いて読み取られ、実行される機械可読媒体に記憶された命令としても実現され得る。一実施の形態では、機械可読媒体は、機械(例えば、コンピューティングデバイス)により読み取られ得る形態で情報を記憶及び/又は伝送する種々のメカニズムを含んでいる。例えば、機械可読記憶媒体は、リードオンリメモリ、ランダムアクセスメモリ、磁気ディスク記憶媒体、光記憶媒体、フラッシュメモリデバイス及び情報を記憶する他の媒体を含んでおり、機械可読伝送媒体は、搬送波、赤外線信号、デジタル信号及び情報を伝送する他の媒体を含む伝播信号の形態を含んでいる。ファームウェア、ソフトウェア、ルーティン又は命令が、或る行為を行う具体的な例示的観点及び実施の形態の面で上記開示において説明されたが、そのような説明は単に便宜的なものであり、そのような行為は、実際には、コンピューティングデバイス、処理デバイス、プロセッサ、制御器又はファームウェア、ソフトウェア、ルーティン若しくは命令を実行する他のデバイス若しくは機械から生じることは理解されるであろう。
【0062】
上記実施の形態は、上述した具体的な時間周期、割合及び定数に限定されるものではないことが理解され得る。むしろ、本発明の一般的な原理が維持される限り、これらの量の他の値が用いられ得る。また、これらの量は、固定される必要はない。その代わりに、これらの量は、患者の監視された状態に基づいて制御器64によって動的に変更され得る。これは、例えば、上述の量が現在の治療方式に対応していない場合により積極的に患者を治療するために行われ、逆も同様である。
【0063】
本発明が、現在最も実用的で好ましい実施の形態であると考えられることに基づいて説明の目的のために詳細に説明されたが、そのような詳細は単にその目的のためであり、本発明は開示された実施の形態に限定されず、逆に、添付の特許請求範囲の精神及び範囲内である変更形態及び均等な取り合わせを含めるように意図されていることを理解されたい。例えば、本発明は、可能な限り任意の実施の形態の1つ又はそれ以上の特徴が任意の他の実施の形態の1つ又はそれ以上の特徴と組み合わせられ得ると考えていることを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に供給される呼吸ガスを制御及び調節するシステムであって、
患者に呼吸ガスを与える圧力発生器システムと、
前記圧力発生器システムに動作可能に結合され、呼吸ガスの流れを患者に供給する患者回路と、
患者回路に動作可能に結合され、患者の気道に前記呼吸ガスの流れを伝えるインターフェースデバイスと、
前記圧力発生器システム、患者回路及び前記インターフェースデバイスの1つ又はそれ以上に動作可能に結合されたセンサであって、患者に供給される呼吸ガスの流れを示す1つ又はそれ以上のパラメータを検出する当該センサと、
前記センサ及び前記圧力発生器システムに動作可能に結合された制御器であって、患者の呼吸気流の少なくとも1つの特徴を決定し、患者の呼吸気流の前記少なくとも1つの特徴に基づいて、患者の呼吸サイクルの少なくとも一部の目標の時間に基づくパラメータを計算し、患者に供給される目標の呼吸−振幅に基づくパラメータを計算する当該制御器と
を有する、当該システム。
【請求項2】
患者の呼吸気流の前記少なくとも1つの特徴が、実際の患者の分時換気量を有する、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記制御器が、換気された死腔の値及び目標分時換気量の値を用いることによって理想呼吸数を計算する、請求項2記載のシステム。
【請求項4】
前記理想呼吸数が、前記目標分時換気量に対する前記換気された死腔の値の比率を用いて計算される、請求項3記載のシステム。
【請求項5】
前記比率が0.3に等しい、請求項4記載のシステム。
【請求項6】
目標分時換気量が、患者の実際の分時換気量の割合又は百分率として計算される、請求項2記載のシステム。
【請求項7】
患者の呼吸気流の前記少なくとも1つの特徴が、一呼吸よりも長い時間の経過にわたる患者の換気の尺度を有する、請求項1記載のシステム。
【請求項8】
前記目標の時間に基づくパラメータが、理想呼吸数又は理想吸気時間を有する、請求項1記載のシステム。
【請求項9】
前記制御器が、各繰り返しにおいて計算される理想呼吸数の差が或る閾値の量よりも小さくなるまで理想呼吸数を繰り返し計算することによって前記理想呼吸数を決定する、請求項8記載のシステム。
【請求項10】
前記閾値の量が、1分間当たり0.5呼吸である、請求項9記載のシステム。
【請求項11】
前記目標の呼吸−振幅に基づくパラメータが、一回換気量、ピーク流量又は平均吸気流量を有する、請求項1記載のシステム。
【請求項12】
患者の呼吸気流の前記少なくとも1つの特徴が、患者の呼気時間、患者の呼吸抵抗又は患者の肺コンプライアンスを有する、請求項1記載のシステム。
【請求項13】
患者の呼吸気流の前記少なくとも1つの特徴が患者の呼気時間を有し、前記制御器が呼気時定数を決定し、前記呼気時定数は、前記時間に基づくパラメータを計算するために用いられる前記呼気時間の割合又は百分率である、請求項1記載のシステム。
【請求項14】
前記制御器が、
a)閉ループの圧支持を用いて、
b)閉ループの圧支持を用いる換気療法の構成要素として、又は
c)閉ループの圧支持を用いる換気療法の全体として
計算された前記目標の呼吸−振幅に基づくパラメータを患者に供給する、請求項1記載のシステム。
【請求項15】
前記制御器が、前記計算された目標の呼吸−振幅に基づくパラメータに基づいて患者に供給される基準の圧支持の値を計算する、請求項1記載のシステム。
【請求項16】
前記制御器が、基準の圧支持の値を調節することができる、請求項11記載のシステム。
【請求項17】
少なくとも1つの前記センサが流量センサを有する、請求項1記載のシステム。
【請求項18】
実際の分時換気量が、目標分時換気量の値を計算するために用いられる、請求項1記載のシステム。
【請求項19】
前記制御器が、換気された死腔を反映する値を用いて理想呼吸数を計算する、請求項1記載のシステム。
【請求項20】
患者の呼吸気流の前記少なくとも1つの特徴が呼気テール時間を有し、前記制御器は、前記呼気テール時間が或る閾値の量を上回るように目標一回換気量を調節する、請求項1記載のシステム。
【請求項21】
前記閾値の量が0.5秒である、請求項20記載のシステム。
【請求項22】
前記目標の時間に基づくパラメータが、計算された前記目標の呼吸−振幅に基づくパラメータに基づいて計算される、請求項1記載のシステム。
【請求項23】
前記目標の呼吸−振幅に基づくパラメータが、前記目標の時間に基づくパラメータに基づいて計算される、請求項1記載のシステム。
【請求項24】
患者に供給される呼吸ガスを制御及び調節する方法であって、
患者の呼吸気流の少なくとも1つの特徴を決定することと、
患者の呼吸気流の前記少なくとも1つの特徴に基づいて、患者の呼吸サイクルの少なくとも一部の時間に基づくパラメータを計算することと、
患者の呼吸気流の前記少なくとも1つの特徴に基づいて、目標の呼吸−振幅に基づくパラメータを計算することと、
計算された前記目標の呼吸−振幅に基づくパラメータを患者に与えることと
を有する、当該方法。
【請求項25】
患者の呼吸気流の前記少なくとも1つの特徴が、実際の患者の分時換気量を有する、請求項24記載の方法。
【請求項26】
患者の呼吸気流の前記少なくとも1つの特徴が、一呼吸よりも長い時間の経過にわたる患者の換気の尺度を有する、請求項24記載の方法。
【請求項27】
前記目標の時間に基づくパラメータが、理想呼吸数又は理想吸気時間を有する、請求項24記載の方法。
【請求項28】
前記理想呼吸数を決定することは、呼気時定数を用いることを有し、前記呼気時定数は、前記時間に基づくパラメータを計算するために用いられる呼気時間の割合又は百分率である、請求項27記載の方法。
【請求項29】
前記理想呼吸数を決定することは、各繰り返しにおいて計算される理想呼吸数の差が或る閾値の量よりも小さくなるまで理想呼吸数を繰り返し計算することを有する、請求項27記載の方法。
【請求項30】
前記閾値の量が1分間当たり0.5呼吸である、請求項29記載の方法。
【請求項31】
前記目標の呼吸−振幅に基づくパラメータが、ピーク流量、一回換気量又は平均吸気流量を有する、請求項24記載の方法。
【請求項32】
患者の呼吸気流の前記少なくとも1つの特徴が、患者の呼気時間、患者の呼吸抵抗又は患者の肺コンプライアンスを有する、請求項24記載の方法。
【請求項33】
前記計算された目標の呼吸−振幅に基づくパラメータを患者に与えることが、閉ループの圧支持を用いることを有する、請求項24記載の方法。
【請求項34】
前記計算された目標の呼吸−振幅に基づくパラメータを患者に与えることが、計算された目標一回換気量に基づいて患者に与えられる基準の圧支持の値を計算することを有する、請求項24記載の方法。
【請求項35】
基準の圧支持の値を調節することを更に有する、請求項24記載の方法。
【請求項36】
実際の分時換気量が目標分時換気量の値を計算するために用いられ、前記理想呼吸数を決定することは、換気された死腔の値及び目標分時換気量の値を用いることを有する、請求項27記載の方法。
【請求項37】
前記目標分時換気量が、患者の前記実際の分時換気量の割合又は百分率として計算される、請求項36記載の方法。
【請求項38】
前記理想呼吸数が、前記目標分時換気量の値に対する前記換気された死腔の値の比率を用いて計算される、請求項36記載の方法。
【請求項39】
前記比率が0.3に等しい、請求項38記載の方法。
【請求項40】
理想呼吸数を計算することは、換気された死腔を反映する値を用いることを有する、請求項24記載の方法。
【請求項41】
前記呼吸気流の少なくとも1つの特徴が呼気テール時間を有し、制御器は、前記呼気テール時間が或る閾値の量を上回るように一回換気量を調節する、請求項24記載の方法。
【請求項42】
前記閾値の量が0.5秒である、請求項41記載の方法。
【請求項43】
前記目標の時間に基づくパラメータが、計算された前記目標の呼吸−振幅に基づくパラメータに基づいて計算される、請求項24記載の方法。
【請求項44】
前記目標の呼吸−振幅に基づくパラメータが、前記目標の時間に基づくパラメータに基づいて計算される、請求項24記載の方法。
【請求項45】
患者に供給される呼吸ガスを制御及び調節するシステムであって、
患者の呼吸気流の少なくとも1つの特徴を決定する手段と、
患者の呼吸気流の前記少なくとも1つの特徴に基づいて、患者の呼吸サイクルの少なくとも一部の時間に基づくパラメータを計算する手段と、
患者の呼吸気流の前記少なくとも1つの特徴に基づいて、目標の呼吸−振幅に基づくパラメータを計算する手段と、
計算された前記目標の呼吸−振幅に基づくパラメータを患者に与える手段と
を有する、当該システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−517827(P2013−517827A)
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−549430(P2012−549430)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【国際出願番号】PCT/IB2010/055922
【国際公開番号】WO2011/089491
【国際公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)