説明

自動販売機

【課題】前方から庫内が透視できる自動販売機を実施対象に、庫内から商品取出口への商品搬出動作を損なうことなしに、販売待機の状態では庫内冷気の漏出を確実に抑止して断熱性能の向上化が図れるよう機内構造を改良する。
【解決手段】販売指令に基づき搬送バケットを待機位置から指定のコラムにアクセスして商品を受容した後に再び待機位置に戻り、この位置で商品を搬送バケットから外扉に設けた商品取出口に搬出すようにした自動販売機において、商品収納庫3の断熱側壁にバケット出入口3bを開口した上で、販売待機時には待機位置に移動した搬送バケット7自身で前記バケット出入口3bを閉塞して庫内冷気の漏出を防ぐようにする。また外扉2には透明断熱ガラス5を配した上で、商品収納庫3の開放面を外扉2で断熱的に直接閉塞する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本体キャビネットの前面に外扉を備え、販売時に庫内の商品ラックから搬出した商品を機内に装備のX−Y搬送機構により、外扉の商品取出口に送り出すようにしたコールドもしくはホット商品の自動販売機に関する。
【背景技術】
【0002】
頭記の自動販売機として、前面に透視ガラス付きの外扉を備えた本体キャビネットの内部に断熱壁で囲まれた商品収納庫を画成した上で、該商品収納庫の庫内には上下段,左右列に並ぶ多数のコラムで構築した商品ラック、および商品ラックの前面側には上下,左右の座標軸に沿って移動するX−Y搬送機構に搭載した搬送バケットを装備し、販売指令に基づき前記搬送バケットを待機位置から指定のコラムにアクセスして該コラムから払出した商品を受容した後に再び待機位置に戻り、搬送バケットに受容した商品を送出して外扉に設けた商品取出口に搬出するようにした自動販売機が知られている(例えば、特許文献1参照)。
上記の自動販売機では、商品収納庫内に貯蔵した商品を保冷する庫内冷気が外方に漏出するのを防ぐために、外扉の内側に断熱内扉を配して商品収納庫の開放面(前面)を閉塞するようにした上で、この断熱内扉には外扉の商品取出口に通じる搬出通路にフラッパ式の小扉を設け、販売時に前記の搬送バケットから送り出した商品が前記小扉を押し開いて商品取出口に搬出されるようにしている。
【特許文献1】特開平10−302140号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、前記した従来の自動販売機では、庫内の冷気漏出をできる限り少なく抑えるために、断熱内扉に備えた商品搬出用の小扉(フラッパ式扉)を付勢ばねなどで閉位置に押圧付勢している。一方この種の自動販売機においては、商品重量の大小にかかわらず複数種類の商品を販売可能とすることが望まれている。このために、前記小扉を強いばね力で閉方向に押圧付勢すると軽量な商品は自重で小扉を押し開くことが困難となる。そこで、従来では軽量な商品も販売可能とするために、多少の断熱性能低下を犠牲にして小扉の押圧付勢力を弱めに設定し、搬送バケットから送出した商品が確実に小扉を押し開いて商品取出口に搬出されるようにしている。
しかしながら、フラッパ式の小扉を閉位置に向けて押圧する力を弱めると、小扉と扉座面との間に隙間が生じて庫内冷気が外方に逃げ易くなる。しかも、庫内冷気の漏出は冷凍機の消費電力増加の原因となることから、販売待機状態で庫内冷気が商品搬出通路より庫外側に漏出するのを確実に抑止できる改善策が求められている。
【0004】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、その目的は庫内から商品取出口への商品搬出動作を損なうことなしに、販売待機の状態では庫内冷気の漏出を確実に抑止して断熱性能の向上化が図れるよう機内構造を改良した自動販売機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明によれば、前面に外扉を備えた本体キャビネットの内部に断熱壁で囲まれた商品収納庫を画成した上で、該商品収納庫の庫内には上下段,左右列に並ぶ多数のコラムで構築した商品ラック、およびその前面側にX−Y搬送機構に搭載した搬送バケットを装備し、販売指令に基づき前記搬送バケットを待機位置から指定のコラムにアクセスして該コラムから払出した商品を受容した後に再び待機位置に戻り、この位置でバケットに受容した商品を前記外扉に設けた商品取出口に搬出すようにした自動販売機において、前記商品収納庫の断熱側壁に搬送バケットの出入口を開口した上で、販売待機時には待機位置に移動した搬送バケット自身で前記出入口を閉塞させるようにし(請求項1)、具体的には次記のような態様で構成する。
(1)前記の搬送バケットが断面U字形のクレードル底部にコンベヤ機構を装備した構成になり、そのクレードル側壁の外形サイズに合わせて商品収納庫の断熱側壁にバケット出入口を開口する(請求項2)。
(2)本体キャビネットの内方には、商品収納庫の側方に商品受け渡しスペースを画成した上で、外扉に設けた商品取出口の背後には搬送バケットから送出した商品を商品取出口へ導く商品取出シュータを備え、該シュータを経て搬出バケットから送出した商品を商品取出口に取り出すようにする(請求項3)。
(3)商品収納庫の開放面を本体キャビネットの前面に配した外扉で閉塞するようにし、かつ該外扉には庫内透視用のガラスとして断熱ガラスを布設する(請求項4)。
【発明の効果】
【0006】
上記構成により、自動販売機の販売待機状態では、X−Y搬送機構に搭載して待機位置に移動した搬送バケットのクレードルが商品収納庫の断熱側壁に開口しているバケット出入口(商品の搬出通路となる)を閉塞している。これにより、従来構造のように断熱内扉で閉塞した商品収納庫から庫外側に通じる商品搬出通路に小扉を設けることなしに庫内冷気の漏出を阻止しつつ、販売動作時にはX−Y搬送機構の移動操作により商品ラックから払出した商品を搬送バケットに受容して機内搬送し、前記のバケット出入口を経て商品取出口に送り出すことができる。
しかも、搬送バケットは電動式のX−Y搬送機構により駆動するので、販売動作時に搬送バケットが商品収納庫の断熱壁に開口したバケット出入口を通り抜ける際に擦れ合って多少の摺動抵抗などが加わってもバケットの搬送動作に支障を来すことがなく、これによりバケット出入口と搬送バケットとの間のクリアランスを最小に設定して庫内冷気の漏出を抑止することができる。
【0007】
さらに、本体キャビネットの前面に配した外扉で商品収納庫の開放面を閉塞するようにし、かつ該外扉に布設した透視ガラスに断熱ガラスを採用することにより、従来構造で外扉の内側に設けた断熱内扉を省略して本体キャビネットの筐体構造を簡略化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図4に示す実施例に基づいて説明する。なお、図1は外扉を開放した状態での自動販売機の外観図、図2は正面図、図3(a),(b)はそれぞれ図2の縦断正面図,および縦断側面図、図4(a)〜(c)は機内に装備したX−Y搬送機構および搬送バケットの詳細構造図である。
まず、図1〜図3において、1は自動販売機の本体キャビネット、2は外扉、3は前面を除く周囲を断熱壁3aで囲んで本体キャビネット1の内方に画成した商品収納庫、4は多数のコラム4aを上下段,左右列に配列して構築した商品ラック、5は前方から商品収納庫3の様子が見えるように外扉2に設けた透視ガラスとしての透明断熱ガラス(例えば、2枚の透明ガラスを組合せてその間を真空引きした断熱構造のガラス)、6は商品ラック4の前方に配備して上下,左右に移動するX−Y搬送機構(X−Y搬送機構の詳細については図4で説明する)、7はX−Y搬送機構6に搭載した搬送バケット、8は外扉2の下部に設けた商品取出口、9は外扉2の背面側に設置したコインメック、10はビルバリデータ、11は扉ロック、12は本体キャビネットのベース部に搭載した庫内冷蔵用の冷凍機であり、庫内に配備した蒸発器12a(図3参照)と配管(不図示)により接続されている。また、前記商品ラック4の各コラム4aには商品13が前後列に並んで収納されている。
【0009】
なお、外扉2はその裏面側の周縁にシール用のガスケットを敷設し、該外扉2を閉じた状態では前記ガスケットを商品収納庫3の前面周縁に押し当ててその開放面(前面)を閉塞するとともに、外扉2に配した透明断熱ガラス5を通して前方から庫内の様子が断熱的に透視できるようにしている。
また、前記の商品収納庫3について、その断熱壁3aの側壁下部には搬送バケット7が左右方向に移動して出入するバケット出入口3bが開口している。さらに、外扉2には商品取出口8に連ねて扉の背後に突き出す搬出シュータ8aが設けてあり、この搬出シュータ8aは外扉2を閉じた状態で商品収納庫3の側方に画成した商品受け渡しスペースに突き出して前記搬送バケット7の下方に対峙するようにしている。
次に、前記したX−Y搬送機構6および搬送バケット7の詳細構造を図4(a)〜(c)に示す。すなわち、X−Y搬送機構6は、庫内の上下端に固定した上レール6a,下レール6bと、上レール6aと下レール6bとの間に跨がって左右方向へ移動可能に案内される縦レール6cと、縦レール6cに沿って上下方向へ移動可能に案内されるブラケット6dを基体としてブラケット6dに搬送バケット7を搭載し、次記のように駆動モータ,ラック・ピニオン機構により搬送バケット7を左右(X軸),上下(Y軸)方向に移動操作するようした構成になる。
【0010】
すなわち、縦レール6c,ブラケット6dはそれぞれガイドローラ6eを介して相手側のレールに案内保持されている。また、各レールにはその長手方向に沿ってラック6fが敷設されており、縦レール6c,ブラケット6dには前記ラック6fと噛み合うピニオン6g,およびピニオン6gに連結した駆動モータ(ステッピングモータ)6hを装備している。ここで駆動モータ6hに移動指令を与えると、ブラケット6dに結合した搬送バケット7は指令に対応して上下,左右に移動する。
また、搬送バケット7は、図示のようにU字形のクレードル7aの底部にベルト式のコンベア14を備えた構造になる。なお、14aはコンベアモータである。
上記の構成で自動販売機の販売待機時にはX−Y搬送機構6に搭載した搬送バケット7が図1,図3(a)で示す待機位置に停止しており、この待機位置で商品収納庫3の断熱側壁3aに開口したバケット出入口3bを搬送バケット7のクレードル側壁で閉塞し、庫内冷気の漏出を阻止している。なお、商品収納庫3の断熱側壁3aに開口したバケット出入口3bは搬送バケット7のクレードル側壁の外形サイズに合わせて形成しており、この待機位置では搬送バケット7のクレードル側壁がバケット出入口3bとの間に殆ど隙間を残さずに嵌まり込んで庫内と庫外との間を遮蔽する。
【0011】
この販売待機状態から販売指令が与えられると、X−Y搬送機構6の駆動モータ6hが始動して搬送バケット7を商品ラック4の指定したコラム4aにアクセスし、この位置でコラム4aから前方に払出した商品13を搬送バケット7に受容する。また、商品13の受け渡しが済むと、X−Y搬送機構6は前記のアクセス移動経路を逆に辿って搬送バケット7を先記した待機位置に復帰させ、この位置で商品13を受容した搬送バケット7のクレードル7aが先記のバケット出入口3bを通して商品収納庫3の側方に突き出るとともに、クレードル側壁がバケット出入口3bを閉塞して庫内冷気の漏出を阻止する。続いて搬送バケット7に装備のコンベア14を始動して受容商品を搬送バケット7から後方に送り出すと、商品は自重落下し、その下方に対峙している搬出シュータ8aを滑り落ちて外扉2に設けた商品取出口8に搬出されて一連の販売動作が終了する。
【0012】
なお、図示実施例の構造では、販売動作中は搬送バケット7が庫内側に移動してバケット出入口3bが開放状態となる。このために、庫内の冷気がバケット出入口3bより庫外に漏出するが、この販売動作時間は短時間で冷気の漏出量も極少ないので庫内の保冷性能には殆ど影響しない。かかる点、バケット出入口3bの外側に例えば搬送バケット7で押し開くフラッパ式の小扉を追加装備しておけば販売動作中の冷気漏出をより確実に防止できる。
また、図示実施例の形態では庫内を保冷してコールド商品を販売するものについて説明したが、庫内を加温してホット商品を販売するもの、さらには庫内に保冷室と加温室を画成してコールド商品とホット商品を併売する自動販売機にも適用することができ、本発明は図示の実施形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施例による自動販売機の前面扉開放状態での外観図
【図2】図1の正面図
【図3】図2の内部構造を表す図で、(a),(b)はそれぞれ縦断正面図、および縦断側面図
【図4】図1の自動販売機の庫内に装備したX−Y搬送機構および搬送バケットの詳細構造図で、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は要部の平面図
【符号の説明】
【0014】
1 本体キャビネット
2 外扉
3 商品収納庫
3a 断熱壁
3b バケット出入口
4 商品ラック
4a コラム
5 透明断熱ガラス
6 X−Y搬送機構
7 搬送バケット
8 商品取出口
8a 搬出シュータ
13 商品
14 コンベア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面に外扉を備えた本体キャビネットの内部に断熱壁で囲まれた商品収納庫を画成した上で、該商品収納庫の庫内には上下段,左右列に並ぶ多数のコラムで構築した商品ラック、およびその前面側にX−Y搬送機構に搭載した搬送バケットを装備し、販売指令に基づき前記搬送バケットを待機位置から指定のコラムにアクセスして該コラムから払出した商品を受容した後に再び待機位置に戻り、この位置でバケットに受容した商品を前記外扉に設けた商品取出口に搬出すようにした自動販売機において、
前記商品収納庫の断熱側壁に搬送バケットの出入口を開口し、販売待機時には待機位置に移動した搬送バケット自身で前記出入口を閉塞するようにしたことを特徴とする自動販売機。
【請求項2】
請求項1に記載の自動販売機において、搬送バケットが断面U字形のクレードル底部にコンベヤ機構を装備した構成になり、そのクレードル側壁の外形サイズに合わせて商品収納庫の断熱側壁にバケット出入口を開口したことを特徴とする自動販売機。
【請求項3】
請求項1または2に記載の自動販売機において、商品収納庫の側方に商品受け渡しスペースを画成した上で、外扉に設けた商品取出口の背後には搬送バケットから送出した商品を商品取出口へ導く商品取出シュータを備えたことを特徴とする自動販売機。
【請求項4】
請求項1ないし3に記載の自動販売機において、商品収納庫の開放面をキャビネットの前面に配した外扉で閉塞するようにし、かつ該外扉には庫内透視用のガラスとして断熱ガラスを布設したことを特徴とする自動販売機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−269034(P2008−269034A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−107651(P2007−107651)
【出願日】平成19年4月16日(2007.4.16)
【出願人】(000237710)富士電機リテイルシステムズ株式会社 (1,851)
【Fターム(参考)】