説明

自動販売機

【課題】部品点数の増加を図ることなく、バール等の工具を用いた手口に対する貨幣処理装置の防盗性を確保することができる自動販売機を提供すること。
【解決手段】本体キャビネット10の左側縁部に揺動可能に配設された外扉20と、外扉20の背面に保持させた紙幣処理装置30を囲繞する態様で収納する収納部40と、収納部40の左側方枠部材42の先端部に所定間隔毎に形成されたカール形成部をカールさせてなる本体側カール部421間に、自身の基端部の一部をカールさせてなるカバー側カール部521が進入した状態でこれらカール部の中空部分を軸部材1が挿通することにより、収納部40により形成される背面開口40aを開閉する態様で揺動するカバー部材50を備え、収納部40は、左側方枠部材42の先端部におけるカール形成部を除いた部位を左側縁部側に傾斜する態様で延在させることにより構成される軸カバー部422を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動販売機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常の自動販売機においては、外扉の背面にコインメックや貨幣処理装置であるビルバリデータを保持させるようにしており、本体キャビネットに対して外扉を閉成し、かつ施錠した場合に貨幣処理装置への外部からの進入を阻止して防盗性を確保するようにしている。
【0003】
しかしながら、昨今にあっては、バールや金切り鋏等の工具を用いて外扉を無理矢理こじ開ける手口も見受けられるようになってきた。こうした手口の場合には、外扉がこじ開けられた時点で貨幣処理装置が外部に露出することになり、貨幣処理装置から容易に貨幣を盗み取ることが可能となるため、さらなる防盗性の向上が望まれている。
【0004】
そこで、外扉の背面に保持させた貨幣処理装置を囲繞する態様で収納する収納部と、この収納部により形成される背面開口を開閉する態様で該収納部の一側縁部に揺動可能に設けたカバー部材とを備え、カバー部材が背面開口を閉成している状態においては、必要に応じてカバー部材の開成移動を規制するようにした自動販売機が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4540440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した特許文献1に提案されている自動販売機においては、カバー部材の基端部の一部をカールさせてなるカール部の中空部分に軸部材を挿通させ、かかる軸部材が収納部の一側縁部に支持されることにより、カバー部材が揺動可能に支持されている。つまり、このような特許文献1の自動販売機においては、カバー部材を揺動可能に支持するヒンジ構造において、カバー部材のカール部が露出されている。
【0007】
そのため、外部より進入したバール等の工具によりヒンジ構造を構成するカバー部材のカール部が捲り上げられてしまい、背面開口を閉成しているカバー部材が外されてしまう虞れがあった。
【0008】
尚、上述した特許文献1では、カバー部材のカール部の中空部分に軸部材を挿通させ、かかる軸部材が収納部の一側縁部に支持されてカバー部材が揺動可能に支持されていたが、このような構成に限られず、収納部の一側縁部の先端部に所定間隔毎に形成されたカール形成部をカールさせてなるカール部間に、カバー部材のカール部が進入した状態でこれらカール部の中空部分に軸部材を挿通させ、かかる軸部材が該一側縁部に支持されることにより、カバー部材が揺動可能に支持される構成であっても構わない。このような構成においてもカバー部材のカール部が露出された状態となり、同様の問題が生ずることはいうまでもない。
【0009】
このような問題を解決するために、ヒンジ構造の部分を複雑な構造にしたり、別部品により覆うようにしたりすることが考えられるが、これでは部品点数が増加し、コストの増大化を招来することになり好ましくない。
【0010】
本発明は、上記実情に鑑みて、部品点数の増加を図ることなく、バール等の工具を用いた手口に対する貨幣処理装置の防盗性を確保することができる自動販売機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る自動販売機は、前面が開口した直方状の自動販売機本体と、前記自動販売機本体の一側縁部に揺動可能に配設され、該自動販売機本体の前面開口を開閉する扉体と、前記扉体の背面に保持させた貨幣処理装置を囲繞する態様で収納する収納部と、前記収納部を構成し、かつ前記貨幣処理装置よりも前記一側縁部側に位置する一側方枠部材の先端部に所定間隔毎に形成されたカール形成部をカールさせてなる本体側カール部間に、自身の基端部の一部をカールさせてなるカバー側カール部が進入した状態でこれらカール部の中空部分を軸部材が挿通することにより、前記収納部により形成される背面開口を開閉する態様で前記軸部材の軸心回りに揺動するカバー部材とを備えた自動販売機において、前記収納部は、前記一側方枠部材の先端部における前記カール形成部を除いた部位を前記一側縁部側に傾斜する態様で延在させることにより構成される軸カバー部を備えたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項2に係る自動販売機は、上述した請求項1において、前記軸カバー部は、前記軸部材の軸方向に沿った延在長さが、前記本体側カール部の軸方向に沿った延在長さよりも大きいことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項3に係る自動販売機は、上述した請求項1又は請求項2において、前記軸カバー部は、前記カバー部材を臨む面に、開成移動した前記カバー部材を磁力により保持する磁石を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の自動販売機によれば、軸カバー部が、一側方枠部材の先端部におけるカール形成部を除いた部位を一側縁部側に傾斜する態様で延在させることにより構成されるので、カバー側カール部の露出を低減することができ、バール等の工具が進入した場合にもこの工具でカバー部材のカバー側カール部が捲り上げられてしまう虞れがなく、カバー部材が取り外されることを防止することができる。しかも、軸カバー部は、一側方枠部材の先端部を加工して形成しており、別部品等を設ける必要がなく、部品点数が増大してしまう虞れがない。また、既存の自動販売機の構造を大きく変更することもない。よって、部品点数の増加を図ることなく、バール等の工具を用いた手口に対する貨幣処理装置の防盗性を確保することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の実施の形態である自動販売機を示した正面図である。
【図2】図2は、図1に示した外扉の背面側を拡大して示す斜視図である。
【図3】図3は、図1に示した外扉の背面側を拡大して示す斜視図である。
【図4】図4は、収納部とカバー部材との要部を拡大して示す平面断面図である。
【図5】図5は、図4に示したヒンジ構造を拡大して示す拡大平面断面図である。
【図6】図6は、収納部及びカバー部材の要部を側方から見た場合を示す断面側面図である。
【図7】図7は、収納部及びカバー部材の要部を側方から見た場合を示す断面側面図である。
【図8】図8は、収納部及びカバー部材を背面から見た場合を示す説明図であり、(a)はカバー部材が閉成した状態を示し、(b)はカバー部材を上方に向けて移動させた状態を示している。
【図9】図9は、収納部及びカバー部材の要部を側方から見た場合を示す断面側面図である。
【図10】図10は、収納部及びカバー部材の要部を背面側上方より見た場合を示す斜視図である。
【図11】図11は、図9及び図10に示した上方カバー部材を示す斜視図である。
【図12】図12は、収納部及びカバー部材の要部を側方から見た場合を示す断面側面図である。
【図13】図13は、本実施の形態である自動販売機の変形例におけるヒンジ構造を拡大して示す拡大平面断面図である。
【図14】図14は、本実施の形態である自動販売機の変形例におけるヒンジ構造を拡大して示す拡大平面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る自動販売機の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施の形態である自動販売機を示した正面図である。ここで例示する自動販売機は、自動販売機本体である本体キャビネット10に収納した缶入り飲料やペットボトル入り飲料等の商品を販売するもので、本体キャビネット10の前面に外扉(扉体)20を備えている。外扉20は、本体キャビネット10の前面開口を覆うためのもので、本体キャビネット10の左側縁部(一側縁部)に開閉可能に配設してある。この外扉20の前面には、商品見本陳列部21、商品取出口22、表示部23、紙幣投入口24、硬貨投入口25等、商品を販売する上で必要となる構成が設けてある。尚、本実施の形態においては、右方とは、自動販売機を正面から見た場合の右側を示し、左方とは、自動販売機を正面から見た場合の左側を示すものとして説明する。
【0018】
商品見本陳列部21は、本体キャビネット10に収納した商品に対応する商品見本を外部に視認させるためのもので、前面に窓穴26を形成するとともに、この窓穴26を透明の窓板(図示せず)によって覆うことにより構成してある。商品見本陳列部21の窓板には、商品を選択する際にON操作される押ボタン27が商品見本毎に個別に設けてある。
【0019】
商品取出口22は、本体キャビネット10に収納された商品が払い出された場合に、これを外部に取り出すための開口である。
【0020】
表示部23は、利用者が投入した貨幣の入金額、釣銭の金額等々、商品を販売する上で必要となる各種情報を外部に表示するためのものであり、例えば液晶表示器によって構成してある。
【0021】
紙幣投入口24は、表示部23の下方域に設けてあり、利用者が紙幣を投入するための開口である。この紙幣投入口24を通じて投入された紙幣は、ビルバリデータと称される紙幣処理装置(貨幣処理装置)30において処理されることになる。紙幣処理装置30は、紙幣投入口24を通じて投入された紙幣が正規なものであるか否かを識別し、正規なものとして識別した紙幣を内部に取り込む一方、損傷や偽造等の理由により正規な紙幣として識別できなかった紙幣を返却するものである。また、紙幣処理装置30は、紙幣が投入された直後に返却レバー28が操作された場合、これを返却するように機能する。尚、紙幣投入口24は、紙幣を返却する際の紙幣返却口としても機能するように構成してある。
【0022】
硬貨投入口25は、利用者が硬貨を投入するための開口である。この硬貨投入口25を通じて投入された硬貨は、コインメックと称される硬貨処理装置31において処理されることになる。硬貨処理装置31は、硬貨投入口25を通じて投入された硬貨が正規なものであるか否かを識別し、正規なものとして識別した硬貨を内部に取り込む一方、損傷や偽造等の理由により正規なものとして識別できなかった硬貨を返却するものである。また、硬貨処理装置31は、硬貨が投入された直後に返却レバー28が操作された場合、これを返却するように機能する。尚、硬貨処理装置31によって正規なものとして内部に取り込まれた硬貨は、その後、図示していない硬貨回収箱に回収されることになる。また、硬貨投入口25から投入した硬貨を返却する場合には、外扉20の下部に設けた硬貨返却口29を通じて行われる。
【0023】
図2及び図3は、それぞれ図1に示した外扉20の背面側を拡大して示す斜視図である。これら図2及び図3に示すように、上述した紙幣処理装置30及び硬貨処理装置31は、外扉20の背面に隣り合うように保持させてある。これら紙幣処理装置30及び硬貨処理装置31のうち、硬貨処理装置31が外扉20の開放端側に保持させてあり、紙幣処理装置30は、硬貨処理装置31よりも基端側、すなわち本体キャビネット10の左側縁部に近接する側に保持させてある。
【0024】
このような外扉20の背面には、収納部40及びカバー部材50が設けてある。収納部40は、鋼板からなるものであって、紙幣処理装置30を囲繞する態様で収納するものである。この収納部40は、上方枠部材41、左側方枠部材42、右側方枠部材43及び下方枠部材44によって構成してある。
【0025】
カバー部材50は、鋼板からなり、自身の基端部と左側方枠部材42の先端部との間で構成されるヒンジ構造を介して揺動可能に設けてあり、収納部40により形成される背面開口40aを開閉するものである。このカバー部材50は、背面開口40aを覆うことができる大きさであれば良いが、本実施の形態においては、背面開口40aだけでなく、硬貨処理装置31の一部を覆うことができる大きさを有している。つまり、カバー部材50は、背面開口40aを閉成した状態においては、自身の中央領域部分が収納部40の右側方枠部材43に対向し、かつ自身の先端部(開閉端部)が硬貨処理装置31よりも外扉20の開放端側に位置する大きさを有している。
【0026】
かかるカバー部材50は、先端部に開閉フック部51が形成してある。開閉フック部51は、外扉20の背面に向けて延在した後、下方に向けて延在する形状をなしている。このような開閉フック部51は、外扉20の背面において硬貨処理装置31よりも開放端側に設けられた受金33と係合することで、閉成状態となっているカバー部材50が開成移動することを規制するものである。
【0027】
ここでカバー部材50の開閉移動について説明する。カバー部材50を一旦閉成移動させた後、上方に向けて移動させて再び閉成移動させる。その後に背面開口40aを閉成した場合に下方に向けて移動させることで、開閉フック部51が受金33に係合し、カバー部材50は、図2に示すような全閉状態となる。この全閉状態にあるカバー部材50を開成させる場合には、カバー部材50を上方に向けて移動させて開閉フック部51と受金33との係合状態を解除し、その後に開成移動させる。これによりカバー部材50は、図3に示すような開成状態となる。その後にカバー部材50を下方に向けて移動させればよい。
【0028】
次に、カバー部材50を開閉可能に支持するヒンジ構造について説明する。ヒンジ構造は、左側方枠部材42の先端部に上下方向に沿って所定間隔毎に形成されたカール形成部をカールさせてなる本体側カール部421間に、カバー部材50の基端部の一部をカールさせてなるカバー側カール部521が進入した状態でこれら本体側カール部421及びカバー側カール部521の中空部分を長尺状の軸部材1が交互に挿通することにより構成されるものである。軸部材1は、上端部に平板状のフランジ(図示せず)が設けられており、左側方枠部材42の最も上方にある本体側カール部421に支持されることになる。このようなヒンジ構造により、カバー部材50は、軸部材1の軸心回りに回動可能となっている。尚、図2及び図3に示すように、本体側カール部421とカバー側カール部521との間には隙間Sが設けてある。この隙間Sは、上述したように、カバー部材50を上下方向に沿って移動(軸部材1の軸方向に沿って移動)させるためのものである。
【0029】
かかるヒンジ構造においては、収納部40の左側方枠部材42は、軸カバー部422を備えている。軸カバー部422は、左側方枠部材42の先端部におけるカール形成部を除いた部位を、図4に示すように、外扉20の開放端と反対側、すなわち左側縁部側に傾斜する態様で延在させることにより構成してある。このような軸カバー部422は、軸部材1の軸方向に沿った延在長さ(上下方向の長さ)が、本体側カール部421の軸方向に沿った延在長さよりも大きくしてある。
【0030】
図5は、図4に示したヒンジ構造を拡大して示す拡大平面断面図である。この図5に示すように、軸カバー部422が設けてあるので、ヒンジ構造を構成するカバー部材50のカバー側カール部521の露出を低減することができ、図5に示すような角度でバール等の工具Bが進入した場合にもこの工具Bでカバー部材50のカバー側カール部521が捲り上げられてしまう虞れがなく、カバー部材50が取り外されることを防止することができる。
【0031】
しかも、軸カバー部422は、従前切り捨てられていた部位を用いて形成しており、別部品等を設ける必要がなく、部品点数が増大してしまう虞れがない。また、既存の自動販売機の構造を大きく変更することもない。
【0032】
よって、本実施の形態である自動販売機によれば、部品点数の増加を図ることなく、バール等の工具Bを用いた手口に対する紙幣処理装置30の防盗性を確保することができる。
【0033】
特に、軸カバー部422の上下方向の延在長さを本体側カール部421の延在長さよりも大きくしてあるので、バール等の工具Bにより軸カバー部422が変形されたとしてもその変形抵抗を大きくすることができる。
【0034】
上記自動販売機においては、収納部40とカバー部材50との間に、種々の開成規制手段、すなわち第1開成規制手段60、第2開成規制手段70及び第3開成規制手段80が設けてある。
【0035】
第1開成規制手段60は、図3に示すように、カバー部材50の収納部40に対向する側の下縁部に下フック部61を設ける一方、下方枠部材44に下フック規制部62を設けることによって構成したものである。
【0036】
図6は、収納部40及びカバー部材50の要部を側方から見た場合を示す断面側面図である。この図6に示すように、下フック部61は、カバー部材50の下縁部から外扉20の背面に向けて延在した後、下方に向けて手前側に傾斜する態様で屈曲した部分である。下フック規制部62は、収納部40の下方枠部材44からカバー部材50の下方域に向けて延在した後、上方に向けて手前側に傾斜する態様で屈曲した部分である。
【0037】
このような第1開成規制手段60は、カバー部材50が閉成した状態においては、図6に示すようにこれら下フック部61及び下フック規制部62を互いに対向する態様で配置させることでカバー部材50の開成移動を規制する一方、図には明示していないが収納部40に対してカバー部材50を上方に向けて移動させた場合には、下フック部61の移動域が下フック規制部62から逸脱してカバー部材50の開成移動を許容するものである。
【0038】
このように収納部40とカバー部材50との下縁部間に第1開成規制手段60を設けることにより、カバー部材50の下方側の露出を低減することができ、図7に示すような角度でバール等の工具Bが進入した場合にも収納部40の下方枠部材44(下フック規制部62)が邪魔板として作用し、カバー部材50が工具Bにより捲り上げられる虞れがなく、カバー部材50が取り外されることを防止することができる。
【0039】
また、第1開成規制手段60を構成する下フック部61は、カバー部材50の下縁部の一部を加工して形成し、下フック規制部62は下方枠部材44を加工して形成したもので、別部品を設ける必要がなく、部品点数が増大してしまう虞れがない。また、既存の自動販売機の構造を大きく変更するものではない。
【0040】
更に、第1開成規制手段60は、カバー部材50を閉成させた状態では、下フック部61が収納部40により囲繞される領域に進入しており、側方から見た場合に、下フック部61が左側方枠部材42及び右側方枠部材43とオーバーラップする位置関係にある。そのため、図7に示す角度以外の角度からバール等の工具Bが進入して、カバー部材50を捲り上げようとしても下フック部61が左側方枠部材42及び右側方枠部材43のいずれかに当接してカバー部材50の変形を抑制することができる。
【0041】
よって、本実施の形態である自動販売機によれば、部品点数の増加を図ることなく、バール等の工具Bを用いた手口に対する紙幣処理装置30の防盗性を確保することができる。
【0042】
第2開成規制手段70は、図2及び図3に示すように、収納部40の右側方枠部材43に係合片71を設ける一方、カバー部材50の中央領域部分に係止孔72を設けることによって構成したものである。
【0043】
係合片71は、右側方枠部材43の一部を屈曲させて形成した舌片状のものである。係止孔72は、カバー部材50の中央領域に形成したもので、上側の左右幅が下側の左右幅よりも小さい異形状のものである。ここで係止孔72の下側は係合片71の挿通を許容する大きさであり、上側は係合片71の挿通を規制する大きさである。
【0044】
このような第2開成規制手段70は、図8の(a)に示すように、カバー部材50が閉成した状態においては係止孔72に挿通した係合片71が該係止孔72の上側の開口縁部72aに当接することでカバー部材50の開成移動を規制するものである。その一方、図8の(b)に示すように、収納部40に対してカバー部材50を上方に向けて移動させた場合には、係合片71が係止孔72から離脱可能となってカバー部材50の開成移動を許容するものである。
【0045】
このように収納部40とカバー部材50との間に第2開成規制手段70を設けることにより、閉成した状態にあるカバー部材50と収納部40との係合状態を強化することができ、進入したバール等の工具Bによる悪戯に対してカバー部材50の変形抵抗を向上させることができる。
【0046】
しかも、第2開成規制手段70は、右側方枠部材43の一部を屈曲して形成した係合片71と、カバー部材50の中央領域部分をくり抜いて形成した係止孔72とにより構成されるもので、従来のようにロック板のような別部品を必要としない。
【0047】
よって、本実施の形態である自動販売機によれば、部品点数の増加を図ることなく、バール等の工具Bを用いた手口に対する紙幣処理装置30の防盗性を確保することができる。
【0048】
第3開成規制手段80は、図3に示すように、カバー部材50の収納部40に対向する側の上縁部に上フック部81を設ける一方、上方枠部材41に上フック規制部82を設けることによって構成したものである。
【0049】
図9は、収納部40及びカバー部材50の要部を側方から見た場合を示す断面側面図である。この図9に示すように、上フック部81は、カバー部材50の上縁部から外扉20の背面に向けて延在した後、下方に向けて手前側に傾斜する態様で屈曲した部分である。上フック規制部82は、収納部40の上方枠部材41からカバー部材50に向けて延在した後、上方に向けて手前側に傾斜する態様で屈曲した部分である。
【0050】
このような第3開成規制手段80は、カバー部材50が閉成した状態においては、図9に示すようにこれら上フック部81及び上フック規制部82を互いに対向する態様で配置させることでカバー部材50の開成移動を規制する一方、図には明示していないが収納部40に対してカバー部材50を上方に向けて移動させた場合には、上フック部81の移動域が上フック規制部82から逸脱してカバー部材50の開成移動を許容するものである。
【0051】
そして、図10及び図11に示すように、上記上方枠部材41に締結され、表示部23の背面側を覆う表示カバー部材90には、上方カバー部材83が例えばスポット溶接等により設けてある。この上方カバー部材83は、上方遮蔽板831と左方遮蔽板832とが連続して形成されてなり、上方遮蔽板831により第3開成規制手段80の上方域を覆い、左方遮蔽板832により第3開成規制手段80の左方域を覆うものである。
【0052】
また、図10に示すように、上方カバー部材83は、左方遮蔽板832が軸部材1の上方域に位置し、該軸部材1の上方への移動を規制するストッパ部材として機能するものである。
【0053】
このような上方カバー部材83が第3開成規制手段80の上方域及び左方域を覆うことで、第3開成規制手段80の露出の割合を低減させることができ、図12に示すような角度でバール等の工具Bが進入した場合にも上方カバー部材83が邪魔板として作用し、第3開成規制手段80が破損される虞れがない。特に、上方カバー部材83の上方遮蔽板831が工具Bにより第3開成規制手段80に近接する態様で変形すると、かかる上方遮蔽板831が第3開成規制手段80を押さえ込むことになる。この結果、第3開成規制手段80のかみ込み力が増大して、上フック部81が上フック規制部82から離脱することを抑制でき、これにより、カバー部材50が取り外されることを防止することができる。
【0054】
よって、本実施の形態である自動販売機によれば、バール等の工具Bを用いた手口に対する紙幣処理装置30の防盗性を確保することができる。
【0055】
また、上方カバー部材83の左方遮蔽板832が軸部材1の上方域に位置し、該軸部材1の上方への移動を規制するので、外部より進入したバール等の工具Bにより各カール部が捲り上げられ、軸部材1が上方に引き抜かれてしまうことがなく、カバー部材50が取り外されることを防止することができる。
【0056】
これによっても、バール等の工具Bを用いた手口に対する紙幣処理装置30の防盗性を確保することができる。
【0057】
以上説明したように、本実施の形態である自動販売機では、軸カバー部422を設けること、第1開成規制手段60を設けること、あるいは第2開成規制手段70を設けることにより、部品点数の増加を図ることなく、バール等の工具Bを用いた手口に対する紙幣処理装置30の防盗性を確保することができる。
【0058】
また、上方カバー部材83を設けることにより、バール等の工具Bを用いた手口に対する紙幣処理装置30の防盗性を確保することができる。
【0059】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の変更を行うことができる。
【0060】
図13に示すように、軸カバー部422の前記カバー部材50を臨む面に磁石Mを設けても良い。このような磁石Mを設けることにより、図14に示すように、カバー部材50が開成移動した場合に、開成した状態にあるカバー部材50を磁力により一時的に保持することができ、貨幣処理装置(紙幣処理装置30)のメンテナンス等を行う際の作業性を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
以上のように、本発明に自動販売機は、例えば缶入り飲料やペットボトル入り飲料等の商品の販売に適している。
【符号の説明】
【0062】
1 軸部材
10 本体キャビネット
20 外扉
30 紙幣処理装置
31 硬貨処理装置
40 収納部
40a 背面開口
41 上方枠部材
42 左側方枠部材
421 本体側カール部
422 軸カバー部
43 右側方枠部材
44 下方枠部材
50 カバー部材
521 カバー側カール部
60 開成規制手段
61 下フック部
62 下フック規制部
70 第2開成規制手段
71 係合片
72 係止孔
72a 開口縁部
80 第3開成規制手段
81 上フック部
82 上フック規制部
83 上方カバー部材
831 上方遮蔽板
832 左方遮蔽板
90 表示カバー部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面が開口した直方状の自動販売機本体と、
前記自動販売機本体の一側縁部に揺動可能に配設され、該自動販売機本体の前面開口を開閉する扉体と、
前記扉体の背面に保持させた貨幣処理装置を囲繞する態様で収納する収納部と、
前記収納部を構成し、かつ前記貨幣処理装置よりも前記一側縁部側に位置する一側方枠部材の先端部に所定間隔毎に形成されたカール形成部をカールさせてなる本体側カール部間に、自身の基端部の一部をカールさせてなるカバー側カール部が進入した状態でこれらカール部の中空部分を軸部材が挿通することにより、前記収納部により形成される背面開口を開閉する態様で前記軸部材の軸心回りに揺動するカバー部材と
を備えた自動販売機において、
前記収納部は、前記一側方枠部材の先端部における前記カール形成部を除いた部位を前記一側縁部側に傾斜する態様で延在させることにより構成される軸カバー部を備えたことを特徴とする自動販売機。
【請求項2】
前記軸カバー部は、前記軸部材の軸方向に沿った延在長さが、前記本体側カール部の軸方向に沿った延在長さよりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の自動販売機。
【請求項3】
前記軸カバー部は、前記カバー部材を臨む面に、開成移動した前記カバー部材を磁力により保持する磁石を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の自動販売機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−83895(P2012−83895A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−228593(P2010−228593)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(000237710)富士電機リテイルシステムズ株式会社 (1,851)
【Fターム(参考)】