説明

自動車のスペアタイヤキャリア

【課題】フロアパネルの下面に回動可能に支持されたキャリアフレームに簡単にスペアタイヤを搭載し、かつ簡単にスペアタイヤをキャリアフレームから取り外せるようにする。
【解決手段】車体パネルに脱落防止ブラケット22を固定し、一体化した脱落防止フック25と規制部材29とをキャリアフレーム8に回動可能に支持し、取付フック13をキャリアフレーム8に係合させているとき、その取付フック13によって規制部材29をフック係合許容位置に加圧し、このとき脱落防止フック25の係合部27を脱落防止ブラケット22のフック受け部23の上方に位置させ、取付フック13をキャリアフレーム8から外したとき、引張ばね35の作用で、規制部材29をフック係合禁止位置に回動させ、このとき脱落防止フック25の係合部27を脱落防止ブラケット22のフック受け部23の上方の位置から退避させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体の一部を構成するフロアパネルの下方にスペアタイヤを保持する自動車のスペアタイヤキャリアに関する。
【背景技術】
【0002】
上述した自動車のスペアタイヤキャリアは従来より周知である(特許文献1参照)。図5は従来のスペアタイヤキャリア1をフロアパネルの下方から見た斜視図である。この図と図1、図6及び図7における矢印Frは自動車の前進方向を示し、矢印Wは自動車の車幅方向を示している。
【0003】
図5に示すように、車体の一部を構成するフロアパネル2の後端部には、同じく車体の一部を構成するロアバックパネル3がスポット溶接によって固着されている。ロアバックパネル3は、車体後部の下側の骨格構造を構成している。かかるロアバックパネル3は、図5のVI−VI線断面図である図6に示すように、ロアバックインナパネル4と該パネル4に溶接により固着されたロアバックアウタパネル5により構成されていて、フロアパネル2の後端部はロアバックインナパネル4にスポット溶接されている。フロアパネル2とロアバックインナパネル4の上方は、荷室Rとなっていて、その荷室Rの後部開口は、車体に回動可能に支持されたバックドア6によって開閉される。図6には、リヤバンパの図示は省略してある。
【0004】
図5に示すように、フロアパネル2の下面には一対の取付ブラケット7が固定され、その各取付ブラケット7には、例えば金属製の丸棒より成るキャリアフレーム8の基端部が枢ピン9を介して回動可能に連結されている。キャリアフレーム8は、本体フレーム10と、その本体フレーム10に溶接により固着された2本の補助フレーム11とから成り、かかるキャリアフレーム8は、矢印A,Bで示したように、その先端部12が上下動する向きに回動可能にフロアパネル2の下面に取付ブラケット7と枢ピン9とを介して支持されている。
【0005】
また、図5に示したスペアタイヤキャリア1は、キャリアフレーム8の先端部12に係脱可能な取付フック13を有し、この取付フック13の上部には、図6に示すように、ねじ穴14が形成されている。そのねじ穴14には、ボルト15が螺着され、該ねじ穴14の内周面に形成されためねじとボルト15の外周面に形成されたおねじがねじ係合している。ボルト15は、ロアバックアウタパネル5の下壁部に形成された孔16を貫通すると共に、ロアバックインナパネル4の上壁部を貫通し、そのボルト15の頭部17が荷室Rに突出して、ロアバックインナパネル4の上壁部上面に載っている(図7も参照)。
【0006】
図6から判るように、上述したボルト15は、取付フック13を、車体の一部を構成するロアバックパネル3に支持しており、しかも図7に示したようにボルト15の頭部17に工具18を係合し、その工具18を回動させて、ボルト15を回すと、そのボルト15に螺着された取付フック13は上下動する。このように、ボルト15は、取付フック13を車体に対して支持させると共に、取付フック13を上下動させるフック昇降手段の一例を構成している。
【0007】
図5に示したように、スペアタイヤSTをキャリアフレーム8に搭載し、そのキャリアフレーム8の先端部12に係合した取付フック13を、フック昇降手段の一例であるボルト15の回転によって上昇させて、スペアタイヤSTをキャリアフレーム8とフロアパネル2の下面との間に挟持して保持することができる。図6に示すように、ボルト15のまわりには円筒状の長いスリーブ19が設けられ、ボルト15を回して取付フック13を最上方位置まで上昇させたとき、スリーブ19の下端が取付フック13の上端に当接するので、それ以上ボルト15を回すことはできない。これにより、取付フック13を過度に上昇させて、スペアタイヤSTに過大な圧力が加えられることを阻止できる。
【0008】
スペアタイヤSTをキャリアフレーム8から取り出すときは、作業者がフック昇降手段の一例であるボルト15の頭部17を、図7に示したように工具18を用いて回すことにより、キャリアフレーム8の先端部12に係合した取付フック13を、そのキャリアフレーム8の先端部12と共にわずかに下降させる。次いでその先端部12を少し持ち上げれば、作業者は容易に取付フック13を図6に矢印Cで示した向きに動かし、その取付フック13をキャリアフレーム8の先端部12から外すことができる。このように取付フック13をキャリアフレーム8の先端部12から外せば、キャリアフレーム8はフリーな状態となるので、そのキャリアフレーム8を、スペアタイヤSTと共に、図5に矢印Bで示したように、その先端部12が下方に移動する向きに回動させることができる。これにより、スペアタイヤSTをキャリアフレーム8から取り出すことができる。逆の操作によって、スペアタイヤSTを図5に示したようにキャリアフレーム8に搭載して保持することができる。
【0009】
上述のようにして、スペアタイヤSTを保持して自動車を走行させることができるが、そのスペアタイヤSTの搭載作業時に、ボルト15の締め付けが不充分であったために、スペアタイヤSTを強固に保持できていない場合には、自動車の走行時の振動によって、ボルト15が回転し、取付フック13が下方に移動してしまうおそれがある。
【0010】
そこで、従来のスペアタイヤキャリア1には、図5に示したように、脱落防止フック20がフロアパネル2に回転可能に支持されていた。スペアタイヤSTをキャリアフレーム8に搭載して、該スペアタイヤSTを保持した後に、作業者は、脱落防止フック20を回して、その下部のフレーム受け部21をキャリアフレーム8の下方に移動させる。このため、仮にボルト15が振動により回転して、取付フック13が下降し、これによりキャリアフレーム8が下向きに回動したとしても、脱落防止フック20のフレーム受け部21にキャリアフレーム8が受け止められるので、キャリアフレーム8が大きく矢印B方向に回動して、スペアタイヤSTが脱落することはない。
【0011】
スペアタイヤSTをキャリアフレーム8から取り出すときは、先ず脱落防止フック20を回転して、そのフレーム受け部21をキャリアフレーム8の下方の位置から外れた位置にもたらしてから、前述のスペアタイヤ取り出し作業を行う。
【0012】
上述のように、脱落防止フック20を設けることによって、スペアタイヤの脱落を確実に阻止することができる。ところが、スペアタイヤSTをキャリアフレーム8に搭載するときも、またそのスペアタイヤSTをキャリアフレーム8から取り出すときも、必ず、取付フック13から離れた位置に設けられた脱落防止フック20を回転させる作業を行わなければならないため、その全体の作業が複雑で煩わしいものとなる欠点を免れない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2011−20652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、スペアタイヤをキャリアフレームに搭載し、或いはそのスペアタイヤをキャリアフレームから取り出すときの作業を従来よりも簡素化することのできる自動車のスペアタイヤキャリアを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、上記目的を達成するため、フロアパネルの下面に先端部が上下動する向きに回動可能に支持されたキャリアフレームと、該キャリアフレームの先端部に係脱可能な取付フックと、該取付フックを車体に対して支持させると共に、該取付フックを上下動させるフック昇降手段とを有し、スペアタイヤを搭載したキャリアフレームの先端部に係合した取付フックを前記フック昇降手段によって上昇させた状態で、該キャリアフレームと前記フロアパネルの下面との間にスペアタイヤを挟持して保持し、前記フック昇降手段により、キャリアフレームの先端部に係合した取付フックを該先端部と共に下降させ、次いで該取付フックを前記キャリアフレームの先端部から外した後、該キャリアフレームをその先端部が下方に移動する向きに回動させて、該キャリアフレームからスペアタイヤを取り出し、逆の操作によってスペアタイヤを搭載して保持することのできる自動車のスペアタイヤキャリアにおいて、上端部が車体パネルに固着され、下部にフック受け部が形成されている脱落防止ブラケットと、下部が前記キャリアフレームに回転可能ではあるが、該キャリアフレームに対して上下方向には不動に支持された脱落防止フックと、該脱落防止フックの下部に、該脱落防止フックと一体に回転するように連結された規制部材とを有し、前記脱落防止フックの上部には、前記スペアタイヤを保持したキャリアフレームが降下したとき、前記脱落防止ブラケットのフック受け部に係合して受け止められる係合部が形成されていて、前記規制部材は、前記取付フックが前記キャリアフレームの先端部に係合することを許容するフック係合許容位置と該取付フックが前記キャリアフレームの先端部に係合することを禁止するフック係合禁止位置との間を回動可能であって、該規制部材は、ばねによって前記フック係合禁止位置に向けて回動付勢され、前記取付フックが前記キャリアフレームの先端部に係合しているとき、前記規制部材は、前記ばねの作用に抗して、前記取付フックによって加圧されて前記フック係合許容位置を占め、前記取付フックが前記キャリアフレームの先端部に係合し、かつ前記規制部材がフック係合許容位置を占めた状態で、前記キャリアフレームが前記スペアタイヤを保持しているとき、前記脱落防止フックの係合部は、前記脱落防止ブラケットのフック受け部の上方に位置し、前記取付フックを前記キャリアフレームの先端部から外し、前記規制部材が前記ばねの作用によってフック係合禁止位置に回動したとき、前記脱落防止フックの係合部が前記脱落防止ブラケットのフック受け部の上方の位置から退避するように、該脱落防止ブラケットと脱落防止フックが形成され、前記取付フックをキャリアフレームの先端部に係合させるときは、前記規制部材を、フック係合禁止位置からフック係合許容位置に向けて手で押して回動させることにより、取付フックをキャリアフレームの先端部に係合させることができるように前記規制部材が形成されていることを特徴とする自動車のスペアタイヤキャリアを提案する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、スペアタイヤをキャリアフレームに搭載して保持した状態で自動車を走行させたとき、万一、取付フックが下降して、キャリアフレームが下方に向けて回動したとしても、脱落防止フックの係合部が脱落防止ブラケットのフック受け部に受け止められるので、キャリアフレームが下方に向けて大きく回動することはない。このため、従来のスペアタイヤキャリアと同様にスペアタイヤが脱落するおそれはない。しかもスペアタイヤをキャリアフレームから取り出すべく、取付フックをキャリアフレームの先端部から外したとき、規制部材はばねの作用によって自動的にフック係合禁止位置に回動し、これに伴って脱落防止フックの係合部が脱落防止ブラケットのフック受け部の上方の位置から退避するので、作業者が脱落防止フックを手で回す必要はない。このため、スペアタイヤの取り出し作業を簡素化することができる。さらに、取付フックをキャリアフレームの先端部に係合させるとき、その取付フックのすぐ隣に位置する規制部材を手で押すだけで、脱落防止フックの係合部を、脱落防止ブラケットのフック受け部の上方の位置にもたらすことができる。このため、スペアタイヤをキャリアフレームに搭載するときの作業も簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るスペアタイヤキャリアをフロアパネルの下方から見た斜視図である。
【図2】図1に示したスペアタイヤキャリアの部分拡大図である。
【図3】図2に示したスペアタイヤキャリアの構成要素を分解して示した斜視図である。
【図4】取付フックをキャリアフレームの先端部から外し、これに伴って規制部材がフック係合禁止位置に回動したときの状態を示す、図2と同様な斜視図である。
【図5】従来のスペアタイヤキャリアを示す、図1と同様な斜視図である。
【図6】図5のVI−VI線拡大断面図である。
【図7】ボルトを回すときの様子を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に従って詳細に説明する。
【0019】
図1は本例のスペアタイヤキャリア1を示す斜視図である。ここに示したスペアタイヤキャリア1の基本構成及びその作用、並びに車体の構造は、図5乃至図7を参照して先に説明したところと変わりはない。すなわち、本例のスペアタイヤキャリア1も、車体の一部を構成するフロアパネル2の下面に、一対の取付ブラケット7と枢ピン9を介して、矢印A,Bで示したように、先端部12が上下動する向きに回動可能に支持されたキャリアフレーム8と、そのキャリアフレーム8の先端部12に係脱可能な取付フック13とを有している。キャリアフレーム8は、例えば金属製の丸棒より成り、本体フレーム10と、これに固着された2本の補助フレーム11とから成ることも従来のスペアタイヤキャリアと変わりはない。また、フロアパネル2の後端部は、車体後部の下側の骨格構造を構成するロアバックパネル3にスポット溶接されている。
【0020】
さらに、本例のスペアタイヤキャリア1は、従来のスペアタイヤキャリアと同じく、ボルトにより構成されたフック昇降手段を有しており、このボルトとこれに関連する構成も、図6及び図7に示したところと変わりはない。よって、本例のスペアタイヤキャリア1の説明に際しても、必要に応じて、図6及び図7を参照することにする。
【0021】
図6を参照して先にも説明したように、本例のスペアタイヤキャリア1においても、取付フック13の上部に形成されたねじ穴14のめねじにボルト15の下部のおねじが螺着されている。このボルト15は、図6に示したように、車体の一部を構成するロアバックパネル3のロアバックアウタパネル5に形成された孔16を貫通すると共に、ロアバックインナパネル4の上壁部を貫通し、そのボルト15の頭部17が、荷室Rに突出し、ロアバックインナパネル4の上壁部上面に載っている。図7に示したように、作業者がボルト15の頭部17に工具18を係合して、そのボルト15を回すことにより、取付フック13を上下動させることができる。ロアバックパネル以外の車体部分、例えばフロアパネル2、又はそのフロアパネル2と該フロアパネル2に固着された補強部材(図示せず)より成る車体部分にボルト15を貫通させ、そのボルト15の頭部17を、当該車体部分の上面に載せることもできる。このように本例のスペアタイヤキャリア1も、取付フック13を車体に対して支持させると共に、取付フック13を上下動させるフック昇降手段を有しており、そのフック昇降手段がボルト15によって構成されている。
【0022】
特開2011−20652号公報に記載されているように、ボルトの下端を取付フックに一体に固着すると共に、ロアバックパネルを貫通して荷室に突出したボルト上部のおねじにナットを螺着し、そのナットを回すことによって、ボルトと取付フックを上下動させることもできる。この場合には、取付フックが固定されたボルトと、そのボルトに螺着されたナットとによって、フック昇降手段が構成される。
【0023】
また、本例のスペアタイヤキャリア1も、スペアタイヤSTを搭載したキャリアフレーム8の先端部12に係合した取付フック13を、フック昇降手段の一例であるボルト15を回すことによって上昇させた状態で、キャリアフレーム8とフロアパネル2の下面との間にスペアタイヤSTを挟持して保持することができる。このとき、ボルト15のまわりに設けられたスリーブ19によって、取付フック13を過度に上昇させることを阻止し、スペアタイヤSTに過大な圧力が加えられることがないようにすることも従来のスペアタイヤキャリアと変わりはない。
【0024】
スペアタイヤSTをキャリアフレーム8から取り外し、又はそのスペアタイヤSTをキャリアフレーム8に搭載するときの基本操作も従来のスペアタイヤキャリアの場合と同様である。すなわち、スペアタイヤSTをキャリアフレーム8から取り出すときは、フック昇降手段の一例であるボルト15の頭部17を、図7に示したように工具18を用いて回すことにより、キャリアフレーム8の先端部12に係合した取付フック13を、その先端部12と共にわずかに下降させ、次いでその先端部12を少し持ち上げた後、取付フック13を図6に矢印Cで示した向きに動かして、その取付フック13をキャリアフレーム8の先端部12から外す。その後、キャリアフレーム8を、スペアタイヤSTと共に、図1に矢印Bで示したように、その先端部12が下方に移動する向きに回動させて、キャリアフレーム8からスペアタイヤSTを取り出す。逆の操作によってスペアタイヤSTを図1に示したようにキャリアフレーム8に搭載して保持することができる。
【0025】
本例のスペアタイヤキャリア1が従来のスペアタイヤキャリアと異なるところは、本例のスペアタイヤキャリア1には、図5に示した脱落防止フック20が設けられておらず、その代わりに次の構成が採用されている点である。
【0026】
先ず、図2及び図3に示すように、本例のスペアタイヤキャリア1は、車体パネルの一例であるロアバックアウタパネル5の下壁部下面と後壁部後面とに上端部が固着された脱落防止ブラケット22を有し、その脱落防止ブラケット22の下部にはフック受け部23が形成されている。図3における×印は、脱落防止ブラケット22がロアバックアウタパネル5にスポット溶接されていることを示している。脱落防止ブラケットの上端部を、ロアバックアウタパネル5以外の車体パネル、例えばフロアパネル2の下面、又はそのフロアパネル2に固着された補強部材(図示せず)の下面などに固着することも可能である。
【0027】
また、図3に示すように、キャリアフレーム8には、円筒状のカラー24が溶接によって固着され、そのカラー24に脱落防止フック25の下部が回転自在に嵌合している。この脱落防止フック25は、支柱部26と、その支柱部26の上端に一体に形成され、該支柱部26に対して曲折した係合部27とから成り、その支柱部26の下部がカラー24に回転自在に嵌合している。係合部27の機能については後述する。
【0028】
図3に示すように、脱落防止フック25の支柱部26には段部28が形成され、その段部28がカラー24の上端に当接することによって、脱落防止フック25がカラー24から下方に抜け出ることが阻止される。また、カラー24の下部から下方に突出した支柱部26の下部の横断面は小判形に形成され、その下部に後述する機能を有する規制部材29に形成された小判形の孔30が嵌合している。このように、脱落防止フック25の小判形の横断面形状の下部と、規制部材29の小判形の孔30が嵌合することによって、脱落防止フック25と規制部材29の相対回転が禁止され、規制部材29は脱落防止フック25と一体に回転することができる。また、規制部材29の孔30から下方に突出した脱落防止フック25の下部の部分にはEリング31が係止され、これによって脱落防止フック25がカラー24から上方に向け出ることが阻止され、規制部材29が脱落防止フック25に固定連結される。
【0029】
上述のように、本例のスペアタイヤキャリア1は、下部がカラー24を介してキャリアフレーム8に回転可能ではあるが、そのキャリアフレーム8に対して上下方向には不動に支持された脱落防止フック25と、その脱落防止フック25の下部に、該脱落防止フック25と一体に回転するように連結された規制部材29とを有している。
【0030】
規制部材29は、取付フック13がキャリアフレーム8の先端部12に係合することを許容する図1及び図2に示したフック係合許容位置と、取付フック13がキャリアフレーム8の先端部12に係合することを禁止する図4に示したフック係合禁止位置との間を脱落防止フック25と共に、その支柱部26の中心軸線の周りに矢印P,Q方向に回動可能に脱落防止フック25の下部に連結されている。
【0031】
また、図2乃至図4に示すように、キャリアフレーム8には、ばね係止板32が溶接により固着され、このばね係止板32に形成された小孔33と、規制部材29に形成された小孔34には、引張ばね35の各端部が係止されている。このばね35によって規制部材29は、脱落防止フック25と共に、図4に示したフック係合禁止位置に向けて回動付勢されている。
【0032】
図1及び図2に示したように、取付フック13をキャリアフレーム8の先端部12に係合し、ボルト15の回転によって取付フック13を最上方位置に持ち上げることにより、キャリアフレーム8に搭載したスペアタイヤSTをそのキャリアフレーム8とフロアパネル2の間に挟んで保持しているとき、規制部材29は、取付フック13によって加圧されて図2に示したフック係合許容位置を占めている。取付フック13の一部が、規制部材29に圧接しながらその規制部材29を押圧し、これによって規制部材29が、引張ばね35の作用に抗してフック係合許容位置に押し付けられた状態に保持されているのである。
【0033】
上述のように、取付フック13がキャリアフレーム8の先端部12に係合しているとき、規制部材29は、ばね35の作用に抗して、取付フック13によって加圧されてフック係合位置を占めている。
【0034】
図2に示し、かつ上に説明したように、取付フック13をキャリアフレーム8の先端部12に係合し、かつ規制部材29がフック係合許容位置を占めた状態で、キャリアフレーム8がフロアパネル2と協働してスペアタイヤSTを保持しているとき、脱落防止フック25の上部の係合部27は、図2に明示するように、脱落防止ブラケット22のフック受け部23の上方に位置している。従って、この状態で自動車を走行させたとき、振動によってボルト15がまわってしまい、取付フック13とキャリアフレーム8の先端部12が、多少、下方に降下しても、脱落防止フック25の係合部27が脱落防止ブラケット22のフック受け部23に係合して受け止められる。このため、キャリアフレーム8が図1に矢印Bで示した下方に大きく回動して、スペアタイヤSTが脱落してしまうことはない。このように、脱落防止フック25の上部には、スペアタイヤSTを保持したキャリアフレーム8が降下したとき、脱落防止ブラケット22のフック受け部23に係合して受け止められる係合部27が形成されているのである。
【0035】
前述のように、キャリアフレーム8からスペアタイヤSTを取り外すべく、ボルト15の回転によって取付フック13を少し下げ、次いでその取付フック13を図4に示したようにキャリアフレーム8の先端部12から外すと、規制部材29は引張ばね35の作用によって図4に示したフック係合禁止位置に回動する。一方、図3に示したように、キャリアフレーム8にはフックガイド36が溶接によって固着され、そのフックガイド36にはストッパ37が突設されていて、上述のように規制部材29が図4に示したフック係合禁止位置に回動したとき、その規制部材29は、上記ストッパ37に当接して、フック係合禁止位置に止められる。フックガイド36は、ほぼU字形に形成されていて、図2に示したように取付フック13をキャリアフレーム8の先端部12に係合させたとき、フックガイド36は、その取付フック13が矢印D方向にずれ動くことを阻止する。なお、図4においては、図を判りやすくするため、取付フック13を、ロアバックアウタパネル5に形成された孔16から外した状態で図示してある。
【0036】
上述のように、規制部材29が引張ばね35の作用によってフック係合禁止位置に回動したとき、脱落防止フック25も規制部材29と共に回動して、図4に示すように、脱落防止フック25の係合部27が、脱落防止ブラケット22のフック受け部23の上方の位置から退避する。このように係合部27がフック受け部25の上方の位置から退避するように、脱落防止ブラケット22と脱落防止フック25が形成されているのである。
【0037】
上述のように、取付フック13をキャリアフレーム8の先端部12から外すと、規制部材29がばね35の作用で自動的にフック係合禁止位置に回動し、これに伴って脱落防止25の係合部27が脱落防止ブラケット22のフック受け部23の上方の位置から退避するので、作業者は、脱落防止ブラケット22に邪魔されることなく、キャリアフレーム8を図1に矢印Bで示した下方に回動させてスペアタイヤSTをキャリアフレーム8から取り出すことができる。
【0038】
最下方位置に回動したキャリアフレーム8の上にスペアタイヤSTを載せ、次いでそのキャリアフレーム8を図1に矢印Aで示した上方に回動し、引き続きそのキャリアフレーム8の先端部12に取付フック13を係合させようとしたとき、そのままでは、規制部材12が、図4に示したフック係合禁止位置を占めているので、その規制部材12に邪魔されて、取付フック13をキャリアフレーム8の先端部12に係合させることはできない。そこで、作業者は、規制部材29のつまみ部38を、図4に矢印Eで示した方向に手で軽く押して、規制部材29を図4に矢印Qで示した方向に回動させ、その規制部材29を図2に示したフック係合許容位置にもたらす。このようにすれば、取付フック13をキャリアフレーム8の先端部12に係合させることを邪魔する物がなくなるため、支障なくその取付フック13をキャリアフレーム8の先端部12に引っ掛けて係合させることができる。このようにして取付フック13を先端部12に係合させれば、規制部材29は、その取付フック13によって加圧され、図2に示したフック係合許容位置に保持される。
【0039】
上述のように、取付フック13をキャリアフレーム8の先端部12に係合させるときは、規制部材29を、図4に示したフック係合禁止位置から図2に示したフック係合許容位置に向けて手で押して回動させることにより、取付フック13をキャリアフレーム8の先端部12に係合させることができるように規制部材29が形成されているのである。
【0040】
以上説明したスペアタイヤキャリア1によれば、スペアタイヤSTをキャリアフレーム8から取り出すべく、取付フック13をキャリアフレーム8の先端部12から外したとき、規制部材29は、ばねの作用によって自動的にフック係合禁止位置に回動し、これに伴って脱落防止フック25の係合部27が脱落防止ブラケット22のフック受け部の上方の位置から退避するので、作業者が脱落防止フック25を手で回す必要がない。このため、簡単にスペアタイヤSTの取り出し作業を行うことができる。しかも、取付フック13をキャリアフレーム8の先端部12に係合させるときは、その取付フック13のすぐ隣に位置する規制部材29を手で押すだけで、脱落防止フック25の係合部27を、脱落防止ブラケット22のフック受け部23の上方の位置にもたらすことができる。このため、スペアタイヤをキャリアフレームに搭載するときの作業も簡素化することができる。
【0041】
また、規制部材29を手で矢印E方向に押さなければ取付フック13をキャリアフレーム8の先端部12に係合させることができないので、脱落防止フック25の係合部27を脱落防止ブラケット22のフック受け部23の上方の位置に回動させることを忘れたまま、取付フック13をキャリアフレーム8の先端部12に係合させることを阻止できる。
【0042】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明はこの実施形態に限定されず、各種改変して構成できるものである。
【符号の説明】
【0043】
1 スペアタイヤキャリア
2 フロアパネル
8 キャリアフレーム
12 先端部
13 取付フック
22 脱落防止ブラケット
25 脱落防止フック
27 係合部
29 規制部材
35 ばね
ST スペアタイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロアパネルの下面に先端部が上下動する向きに回動可能に支持されたキャリアフレームと、該キャリアフレームの先端部に係脱可能な取付フックと、該取付フックを車体に対して支持させると共に、該取付フックを上下動させるフック昇降手段とを有し、スペアタイヤを搭載したキャリアフレームの先端部に係合した取付フックを前記フック昇降手段によって上昇させた状態で、該キャリアフレームと前記フロアパネルの下面との間にスペアタイヤを挟持して保持し、前記フック昇降手段により、キャリアフレームの先端部に係合した取付フックを該先端部と共に下降させ、次いで該取付フックを前記キャリアフレームの先端部から外した後、該キャリアフレームをその先端部が下方に移動する向きに回動させて、該キャリアフレームからスペアタイヤを取り出し、逆の操作によってスペアタイヤを搭載して保持することのできる自動車のスペアタイヤキャリアにおいて、
上端部が車体パネルに固着され、下部にフック受け部が形成されている脱落防止ブラケットと、下部が前記キャリアフレームに回転可能ではあるが、該キャリアフレームに対して上下方向には不動に支持された脱落防止フックと、該脱落防止フックの下部に、該脱落防止フックと一体に回転するように連結された規制部材とを有し、前記脱落防止フックの上部には、前記スペアタイヤを保持したキャリアフレームが降下したとき、前記脱落防止ブラケットのフック受け部に係合して受け止められる係合部が形成されていて、前記規制部材は、前記取付フックが前記キャリアフレームの先端部に係合することを許容するフック係合許容位置と該取付フックが前記キャリアフレームの先端部に係合することを禁止するフック係合禁止位置との間を回動可能であって、該規制部材は、ばねによって前記フック係合禁止位置に向けて回動付勢され、前記取付フックが前記キャリアフレームの先端部に係合しているとき、前記規制部材は、前記ばねの作用に抗して、前記取付フックによって加圧されて前記フック係合許容位置を占め、前記取付フックが前記キャリアフレームの先端部に係合し、かつ前記規制部材がフック係合許容位置を占めた状態で、前記キャリアフレームが前記スペアタイヤを保持しているとき、前記脱落防止フックの係合部は、前記脱落防止ブラケットのフック受け部の上方に位置し、前記取付フックを前記キャリアフレームの先端部から外し、前記規制部材が前記ばねの作用によってフック係合禁止位置に回動したとき、前記脱落防止フックの係合部が前記脱落防止ブラケットのフック受け部の上方の位置から退避するように、該脱落防止ブラケットと脱落防止フックが形成され、前記取付フックをキャリアフレームの先端部に係合させるときは、前記規制部材を、フック係合禁止位置からフック係合許容位置に向けて手で押して回動させることにより、取付フックをキャリアフレームの先端部に係合させることができるように前記規制部材が形成されていることを特徴とする自動車のスペアタイヤキャリア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−91395(P2013−91395A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234209(P2011−234209)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(000157083)トヨタ自動車東日本株式会社 (1,164)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)