説明

自動車のLPGタンク投入装置

【課題】LPGタンクを正確な投入姿勢に回動させ、その姿勢を維持して、安全にトランクに投入することができる自動車のLPGタンク投入装置を提供する。
【解決手段】本装置は、昇降部20を備えたロータリーカラム10と、昇降部に水平に固定されたサポートアーム30と、サポートアームの端部の内側部に備えられた固定板40に一端がヒンジで連結された作動シリンダー50と、正面の一側部に作動シリンダーのシリンダーロッドが連結された回動板60と、回動板の正面の他側部とサポートアームの端部を回動可能に連結するキングピン70と、回動板の背面上下側に装着されるクランピング装置80と、作動シリンダーとクランピング装置に備えられたクランピングシリンダーに空圧を供給する空圧供給装置と、サポートアームに備えられた操作スイッチ90と、を含んで構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車のLPGタンク投入装置に係り、特にLPGタンクの大きさがトランクの入口より大きい場合にも、トランクにLPGタンクを容易に投入することができるようにする自動車のLPGタンク投入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LPGを燃料として使用する自動車において、燃料タンク、すなわちLPGタンクはトランクの内部に装着されるが、一般的には、LPGタンクの大きさがトランクの入口より小さいので、投入および設置に問題が発生しなかった。ところが、近年LPGタンクの大きさがトランクの入口より大きい(正確にいえば、トランク入口の横長より、LPGタンクの下端に固定されたLPGタンクマウンティングプレートの横長が長い場合を言う)車種が開発された。この場合、ワイヤと滑車を用いた既存の単純ハンガーによっては、LPGタンクをトランクに投入することが容易でなかった。
【0003】
すなわち、前記のような条件のトランクにLPGタンクを投入するためには、LPGタンクをX軸、Y軸、Z軸を中心として適切に回転させてトランクに投入可能な姿勢を作り、この姿勢を維持したままトランク内に進入させなければならないが、既存のハンガーを使用する場合には、LPGタンクに連結されたワイヤがトランクの入口にかかるから、LPGタンクを投入可能な姿勢に回動させた後に投入することが難しい。また、重量物品(約27kg)であるLPGタンクを作業者が直接手作業で姿勢を変え、この姿勢を維持しながらトランク内に投入することは非常に難しい。さらに、LPGタンク投入中にLPGタンク胴体またはワイヤがトランクの入口及び内側パネルにかかる場合、車体パネルに損傷が発生することになるので、作業者の心的負担が非常に大きい。そのため、作業性及び生産性が低下することはもちろんのこと、作業者の筋骨格系の疾患につながる事故発生のおそれが大きいという問題点があった。
【特許文献1】特開平11−292492号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、LPGタンクを正確な投入姿勢に自動に回動させ、その姿勢を維持することにより、作業者の労働力を節減するだけでなく、LPGタンクの投入時、トランクパネルとの干渉をなくして作業者の心的負担を解消させることにより、作業性及び生産性が向上し、作業者の筋骨格系の疾患につながる事故の危険を大きく低減させることができる自動車のLPGタンク投入装置を提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明による自動車のLPGタンク投入装置は、昇降部を備えたロータリーカラムと、前記昇降部に水平に固定されたサポートアームと、前記サポートアームの端部の内側部に備えられた固定板に一端がヒンジで連結された作動シリンダーと、前記作動シリンダーのシリンダーロッドに正面の一側部がヒンジで連結された回動板と、前記作動シリンダーが作動すると、トランク内にLPGタンクが投入できる姿勢となるように前記回動板を回動させ、前記回動板の正面の他側部と前記サポートアームの端部を回動可能に連結するキングピンと、前記回動板の背面上下側に装着されるクランピング装置と、前記作動シリンダーと前記クランピング装置に備えられたクランピングシリンダーに空圧を供給する空圧供給装置と、作業者が前記空圧供給装置を制御して、前記作動シリンダーと前記クランピングシリンダーを作動させる、前記サポートアームに備えられた操作スイッチとを含んでなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
以上のような本発明によれば、LPGタンクの投入時、簡単なスイッチ操作により、トランクの入口及び内側パネルに干渉しない状態で、LPGタンクの姿勢を調整することができるので、作業者が破損に対する心的負担なしに小さな力で容易に投入作業を行うことができることになる。したがって、作業性および生産性が向上するだけでなく、作業者の筋骨格系の疾患につながる事故の危険を大きく減少させることができるとの効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に添付図面を参照し、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【実施例1】
【0008】
図1は、本発明によるLPGタンク投入装置の斜視図である。図2は、図1の要部拡大斜視図である。本発明のカラムは、上下が固定され、カラム全体が回転可能なロータリーカラム10であって、本体に沿って上下方向に移動する昇降部20を備え、この昇降部20には、底面に対して水平のサポートアーム30が取り付けられる。
【0009】
サポートアーム30の端部は、ロータリーカラム10を中心とするサポートアーム30の回動円に対して略接線方向に折り曲げられており、折り曲げられた部分の中間部である端部の内側部に固定板40が備えられる。固定板40には、空圧供給装置(図示せず)から空圧を受ける作動シリンダー50の本体一側端部がヒンジで連結される。
【0010】
また、作動シリンダー50のシリンダーロッド51には、両端が丸い平板である回動板60の正面(作業時に作業者と向かい合う面で、図面に示す面である)一側部にヒンジで連結される。そして、回動板60の正面他側部はサポートアーム30の端部にキングピン70を介してヒンジ連結される。キングピン70は、作動シリンダー50が作動してシリンダーロッド51が回動板60を押したとき、後述するクランピング装置80に固定されたLPGタンクTが、トランクの内部に干渉なしに投入できる姿勢を取れるように、回動板60を回動させる角度に取り付けられる。
【0011】
例えば、特定の車種において、LPGタンクTをトランクの内部に干渉なしに投入するために、LPGタンクTがX軸(前後方向の軸)を中心としてa°、Y軸(左右方向の軸)を中心としてb°、Z軸(上下方向の軸)を中心としてc°回転した姿勢を持たなければならない。そのためキングピン70は、作動シリンダー50が作動したとき、回動板60をX軸、Y軸、Z軸を中心としてそれぞれa°、b°、c°だけ回動させることができる角度にサポートアーム30の端部に設置されるものである。
【0012】
一方、クランピング装置80は回動板60の背面上下側にそれぞれ取り付けられるもので、回動板60に装着される長方形平板状の固定板81、この固定板81の正面に装着されたクランピングシリンダー82、このクランピングシリンダー82のシリンダーロッド82aによって、固定板81に形成されたガイド溝81aに沿って前後進するクランピング部材83、および下端に、LPGタンクTの表面に密着する面着部84aが備えられ、固定板81の上下方向両側端に固定される支持部84から構成される。そして、支持部84の面着部84aがLPGタンクTの表面に密着し、クランピングシリンダー82によってクランピング部材83が前進したとき、クランピング部材83の下端に形成された挿入端83aが挿入してかかるように、LPGタンクTに係止部材T’が取り付けられる。
【0013】
また、上側および下側のクランピング装置80は設置及び作動方向のみ互いに反対であるばかり、実質的に同一構成のものである。ただ、上側クランピング装置80の固定板81には、投入作業時、作業者の操作便宜性のために、取っ手85が取り付けられることができる。一方、回動板60を回動させる作動シリンダー50及びクランピング部材83を前後進させるクランピングシリンダー82は空圧シリンダーである。したがって、これらは空圧供給装置に圧力ホースを介して連結されているが、このような構成は当業者に自明な事項であるので、その図示を省略する。
【0014】
空圧供給装置は、各投入装置専用のコンプレッサー、圧力タンク、バルブなどから構成された独立的な装置であることもできる。工場内の任意位置に空圧を供給するために、工場内に設置された空圧供給システムであることもできる。本発明はそれに対する限定を置かない。すなわち、各シリンダーに連結された圧力ホースが任意の圧力供給部に連結され、この圧力供給部の出口に、管路を開閉する電子バルブが備えられ、この電子バルブの開閉操作のための操作スイッチ90が備えられた一般の構成のみでも十分である。そこで本発明は、使用者の便宜のために、操作スイッチ90がサポートアーム30上に備えられる。
【0015】
一方、クランピング装置80の固定板81は、アーチ状のスプリング鋼でなったロッド86(以下、アーチロッドという)を介して回動板60に装着することができる。これは、クランピング装置80の面着部84aがLPGタンクTの表面に接触するときに発生する衝撃を緩和させるためのものである。アーチロッド86は、中央部が回動板60に固定され、両端部がそれぞれ上下クランピング装置80の固定板81に固定される構造に取り付けられる。すなわち、図3の平面図にアーチロッド86を示しているが、その側方のA方向から見るとき、アーチロッド86の形状は、中央が回動板60側に膨らんでおり、両端が反対方向の各固定板81側に曲がったアーチ状に形成されている。そして、アーチロッド86、回動板60及び固定板81の結合は、熔接、マウンティングブラケット、ボルトなどのような締結用部品によってなされる。
【0016】
以下、本発明の作用および効果を説明する。作業者は、サポートアーム30を上下及び円周方向に移動させることで、クランピング部材83が係止部材T’の前に位置するように、面着部84aをLPGタンクTに密着させる。ついで、操作スイッチ90の操作で空圧供給装置からクランピングシリンダー82に空圧を供給してクランピングシリンダー82を作動させることで、シリンダーロッド82aがクランピング部材83を押して、クランピング部材83の挿入端83aが係止部材T’に挿入されてかかるようにする。したがって、LPGタンクTがサポートアーム30に固定され、サポートアーム30の移動によって移動することができることになる。
【0017】
この状態で、作業者は、図1に示すように、サポートアーム30を上昇させる。このとき、昇降部20に、滑車とワイヤを介して同重量のバランスウェイト備えることにより、作業者が小さな力で簡単にサポートアーム30を上昇させることができる。このような助力装置の構成は、スプリングを用いても具現することができる。なお、バランスウェイト及びスプリングを用いる方法は、当業界の慣用技術であるのでその詳細な説明は省略する。
【0018】
前記のように、サポートアーム30を上昇させた後、作業者は操作スイッチ90を操作して作動シリンダー50を作動させる。作動シリンダー50のシリンダーロッド51が前進すると、キングピン70を中心として回動板60が回動し、LPGタンクTがX軸、Y軸、Z軸を中心として所定角度だけ回動する。これにより、LPGタンクTがトランクの入口または内側パネルにかからず、LPGタンクをトランクに投入可能な姿勢にできる。その状態を上方から見たものが図4である。
【0019】
したがって、作業者は、LPGタンクTがトランクの入口または内側パネルにかかってLPGタンクTまたは車体パネルを損傷させることを心配しなくてもよく、このような負担なしに迅速にサポートアーム30を回動させてLPGタンクTをトランクの内部に投入することができるので、作業性および生産性が大きく向上する。また、LPGタンクTを投入するとき、LPGタンクTの姿勢を維持するために、作業者が直接力を尽くす必要がないので、筋骨格系の疾患につながる事故の危険を大きく低減させることができる。
【0020】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はこの実施例に限定されることなく、本発明の属する技術的範囲を逸脱しない範囲での全ての変更を含む。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明は、LPGタンクの投入時、作業者の労働力を節減し、トランクパネルとの干渉のおそれをなくして作業者の心的負担を解消させるので、作業性及び生産性が向上し、作業者の筋骨格系の疾患につながる事故の危険を大きく低減させる自動車のLPGタンク投入装置として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明による自動車のLPGタンク投入装置の斜視図である。
【図2】本発明によるLPGタンク投入装置の図1の要部拡大斜視図である。
【図3】本発明によるLPGタンク投入装置の作動前の状態を示す平面図である。
【図4】本発明によるLPGタンク投入装置の作動中の状態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0023】
10 ロータリーカラム
20 昇降部
30 サポートアーム
40 固定板
50 作動シリンダー
60 回動板
70 キングピン
80 クランピング装置
90 操作スイッチ
T LPGタンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降部を備えたロータリーカラムと、
前記昇降部に水平に固定されたサポートアームと、
前記サポートアームの端部の内側部に備えられた固定板に一端がヒンジで連結された作動シリンダーと、
前記作動シリンダーのシリンダーロッドに正面の一側部がヒンジで連結された回動板と、
前記作動シリンダーが作動すると、トランク内にLPGタンクが投入できる姿勢となるように前記回動板を回動させ、前記回動板の正面の他側部と前記サポートアームの端部を回動可能に連結するキングピンと、
前記回動板の背面上下側に装着されるクランピング装置と、
前記作動シリンダーと前記クランピング装置に備えられたクランピングシリンダーに空圧を供給する空圧供給装置と、
作業者が前記空圧供給装置を制御して前記作動シリンダーと前記クランピングシリンダーを作動させる、前記サポートアームに備えられた操作スイッチと、を含んでなることを特徴とする自動車のLPGタンク投入装置。
【請求項2】
前記クランピング装置は、前記回動板に装着された固定板と、前記固定板に装着されたクランピングシリンダーと、前記クランピングシリンダーのシリンダーロッドによって、前記固定板に形成されたガイド溝に沿って前後進するクランピング部材と、前記固定板の上下方向両側端に固定され、下端にLPGタンクの表面に密着する面着部が備えられた支持とからなり、
前記LPGタンクには、前記クランピング部材の下端に形成された挿入端が挿入されてかかるように、係止部材が備えられたことを特徴とする請求項1に記載の自動車のLPGタンク投入装置。
【請求項3】
前記クランピング装置のなかで、前記上側クランピング装置の固定板には取っ手が取り付けられたことを特徴とする請求項2に記載の自動車のLPGタンク投入装置。
【請求項4】
前記クランピング装置の固定板が弾力を有するアーチ状ロッドであるアーチロッドを介して前記回動板に装着されたことを特徴とする請求項2に記載の自動車のLPGタンク投入装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−119242(P2007−119242A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−339448(P2005−339448)
【出願日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(500518050)起亞自動車株式会社 (449)