説明

自動車用サブフレーム

【課題】 車体の組み立てユニットとして全体を車体に固定可能である、自動車用のねじれにくい安定したサブフレームを提供する。
【解決手段】 自動車、特に自動車の後車軸のためのサブフレーム1は、車体に固定可能なフレームを備え、このフレームが少なくとも、縦材2a,3aによって連結された横材4,5を備え、車輪案内部材のための支承部が縦材に設けられ、フレームの縦材と横材の間に伝動装置の機器が配置されている。各々の側の縦材構造体2,3はそれぞれ上下に配置された縦材を備え、この縦材がその間に伝動装置の機器の軸のための差込み開口を備え、ほぼ端側で集合し、横材に連結され、伝動装置の機器は三点支承部を介して横材と縦材に連結され、伝動装置の機器の軸は差込み開口を通って車輪の方に延びている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車体に固定可能なフレームを備え、このフレームが少なくとも、縦材によって連結された横材を備え、車輪案内部材のための支承部が縦材に設けられ、フレームの縦材と横材の間に伝動装置の機器が配置されている、自動車、特に自動車の後車軸のためのサブフレームに関する。
【0002】
【従来の技術】ドイツ連邦共和国特許第4129538号公報により、車両縦方向に延びる側方部材と、これに加えて配置された横材とを備えたサブフレームが知られている。この側方部材と横材は互いに連結されている。側方部材はサスペンションの車輪案内部材のための支承部を備え、横材は後車軸ディファレンシャルのための支承部を備えている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、サスペンション、ブレーキモジュールおよび場合によっては伝動装置の機器を備えた車体の組み立てユニットとして、全体を車体に固定可能である、自動車用のねじれにくい安定したサブフレームを提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】この課題は請求項1の記載の特徴によって解決される。他の有利な特徴は従属請求項に記載されている。
【0005】本発明によるサブフレームは上下に配置された2個の縦材を備え、この縦材はその間に伝動装置の機器の軸のために差込み開口を備えている。片側の縦材はほぼ端側で集合し、横材に連結されている。この場合、伝動装置の機器は三点支承部を介して横材と縦材に保持されている。機器の軸は差込み開口を通って車輪の方に自由に延びている。
【0006】これによって、揺動可能なサスペンションを支承するためおよび後車軸ディファレンシャルの安定した支承を行うための剛性のある強固な連結部を備えたサブフレームが形成されるという利点がある。
【0007】片側の管状の両縦材の配置は、車両内のスペースの要求と、サスペンションの条件に適合させることができる。というのは、この縦材が適当な屈曲部によって一部が異なる空間平面内に位置することができるからである。
【0008】これにより、下側に位置する縦材が端側にそれぞれ、走行方向に見て前側の支承部を備え、上側に位置する他の縦材がそれぞれ、走行方向に見て、車体に固定するための後側の支承部を備えることができる。更に、支承部が異なる水平高さ平面内にあり、前側の支承部が後側の支承部よりも低い平面内にある。縦材がそれぞれ、少なくとも一つの水平平面と少なくとも一つの垂直平面内に、屈曲部を備えていることにより、差込み開口と、車輪案内部材用の所定の支承個所と、伝動装置の機器のための支承個所が定められ、縦材と横材に直接支持される。
【0009】軸のための差込み開口は、上側に位置する縦材の、走行方向に見て前側に位置する自由端が、下側に位置する縦材に対して角度をなして曲げられ、その端面側の端部が下側に位置する縦材に連結されていることによって形成される。更に、走行方向に見て後側にある、縦材の2つの端部分が、共通の長さにわたって重なり、かつ互いに連結されている。両縦材の間の空間はほぼ四角形に形成され、軸はこの差込み開口内で充分な自由空間を有する。
【0010】管状の縦材は例えば内部高圧変形部品によって形成されている。それによって、管の直径が空間的な所与と強度要求に適合可能である。
【0011】前側に位置する横材は2つの半割り部材状に形成され、組み合わせられて中空室をなす2つの形材からなっている。それによって、横材の製作が簡単になり、軽量部品が形成される。
【0012】特に、走行方向に見て前側に位置す横材のために、2個のU字状の形材または帽子状形材が使用され、後側に位置する横材のために2個の形材が使用される。この場合、一方の形材はアングル材として形成され、他方の形材はU字状の形材として形成されている。
【0013】本発明に従って、例えば、引抜き横材、鋳造横材または内部高圧変形横材が使用可能である。
【0014】後側に位置する横材は、車両の縦中心平面内にスペアタイヤ窪みの一部のための外側の凹部を有し、それによって横材横断面は端側の長方形または正方形の横断面から中央の三角形の横断面に変化している。
【0015】上側と下側の縦材には、上側の車輪案内部材の横リンクを支承するための支承ブラケットが固定されている。この場合、下側の縦材には、下側の車輪案内部材の三角形リンクを支承するための他の支承ブラケットが設けられている。
【0016】後車軸ディファレンシャルまたは伝動装置機器は三点支承部を介してサブフレームのフレームに保持されている。この場合特に、後側の横材が2個の支承部を備え、前側の横材が1個の支承部を備えている。
【0017】横材の間に配置された後車軸ディファレンシャルのケーシング首部を走行方向に見て前方に案内し、所定の平面内で支承できるようにするために、前側の横材は、ほぼ中央の収容窪みを備えている。それによって、横材を形成する両形材は適当に曲げられて形成され、凹形の窪みを形成している。
【0018】付加的なブラケットまたは補強部なしに、支承部材を車体に固定するためのサブフレームに配置できるようにするために、縦材の自由端は平らに変形され、互いに平行に延びる2つの平面を備えている。半円状の端面側の凹部には、支承部材が保持され、溶接部を介して固定されている。
【0019】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態が図に示してある。次に、この実施の形態について詳しく説明する。
【0020】自動車用サブフレーム1は側方の縦材構造体2,3を備えている。この縦材構造体は互いに離隔された横材4,5を介して互いに連結されている。縦材2,3と横材4,5によって形成されたこのサブフレーム1には、例えば後車軸のディファレンシャルのような伝動装置の機器Gが三点支承部6,7,8で保持されている。縦材2,3には、上側に位置する車輪案内部材の横リンク11,12のための支持ブラケット9,10と、下側に位置する車輪案内部材のリンク15またはリンクアームのための他の支持ブラケット13,14が設けられている。
【0021】車両の一方の側の縦材構造体2,3はそれぞれ、上下に配置されかつ特に2本の管2a,3aからなる縦材を備えている。この縦材は少なくとも一つの水平平面と少なくとも一つの垂直平面内に、屈曲部を備え、固有の縦材である両管2a,3aの間に差込み開口16が形成されている。この差込み開口は伝動装置の機器Gの車軸17,18を車輪の方に通すために役立つ。
【0022】車体に対するサブフレーム1の固定は4個の支承部材19,21,20,22によって行われる。この支承部材はそれぞれ、縦材2a,3aの端側に配置されている。下側に位置する縦材3aは走行方向Fに見て前方に位置する支承部材19,21を備え、上側に位置する縦材2aは走行方向Fに見て後側に位置する支承部材20,22を備えている。この支承部材は異なる水平高さ平面X−X,Z−Z内に配置されている。
【0023】縦材2a,3aはそれぞれ曲げられた部分2b,3bを備えている。この部分は向き合っていて、その間に差込み開口16を形成している。上側の縦材2aの前側の自由端23は下側の縦材3aに当てがわれ、溶接によって下側の縦材に連結されている。上側の縦材2aの後側の自由端21aは下側に位置する縦材3aの自由端24に或る長さにわたって重なるように連結されている。
【0024】管状の縦材2a,3aは内部高圧変形部品である。しかし、引抜き管または鋳物でもよい。材料としては軽金属または鉄材料が使用される。同様に、形材を使用してもよい。材料の選択と部品の組成は、要求に応じて行われる。
【0025】支承部材19〜22を固定および収容するために、円形横断面を有する縦材2a,3aは端側が平らなに圧縮され、或る程度の高さhを有する。端面側の半円状の収容部25には支承部材19,20,21,22が挿入され、例えば溶接によって固定されている。
【0026】前側の横材4は縦材2a,3aに直接的におよび少なくとも1個のブラケット薄板26を介して連結されている。
【0027】両横材4,5はそれぞれ、形材によって2つの半割り部材状に形成されている。前側に位置する横材4は横断面がU字状または帽子状の2個の形材30,31からなっている。この形材は組み合わさって中空室32を有する1つの形材を形成し、曲がった縁部33で互いに連結されている。
【0028】車両の縦中心平面内L−Lで、横材4は伝動装置の機器Gのケーシング首部のための上方に向かって開放した収容窪み34を備えている。この収容窪み34の下方には、伝動装置の機器Gを保持する支承部材6のブラケットが設けられている。
【0029】後側に位置する横材5は組み合わせられる2個の形材35,36からなっている。内側のアングル材35は長い垂直な脚部と、接合部を有する狭い水平な他の脚部を備えている。外側の形材36はU字状の形材として形成され、横材5の中央の範囲において凹部37によって変形されているので、端部の四角形の中空室38aの代わりに、三角形の中空室38が中央に生じる。
【0030】両側の上側の縦材2aの支承ブラケット7a,8aと後側の横材5との間には、伝動装置の機器Gのための支承部材7,8が保持されている。
【0031】上側に位置する縦材2aには、分解された横リンク11,12を揺動可能に支承するための支承ブラケット9,10が配置されている。車輪案内リンクの下側のリンク平面は例えば三角形リンク15として支承ブラケット13,14に揺動可能に保持されている。支承ブラケット14は同時に、下側に位置する縦材3aを固定するために役立つ。
【図面の簡単な説明】
【図1】後車軸サブフレームの斜視図である。
【図2】サブフレームの平面図である。
【図3】サブフレームの側面図である。
【図4】サブフレームを前方から見た図である。
【図5】伝動装置の機器を備えたサブフレームの平面図である。
【図6】2個の形材からなる後側に位置する横材の断面図である。
【図7】2個のU字状形材からなる前側に位置する横材の断面図である。
【符号の説明】
1 サブフレーム
2,3 縦材構造体
2a,3a 縦材
4,5 横材
6,7,8 三点支承部
7a,8a 支承ブラケット
9,10,13,14 支承個所
11,12,15 車輪案内部材
16 差込み開口
17,18 軸
19,21 前側の支承部
20,22 後側の支承部
23,24 自由端
23a 自由端
26 ブラケット薄板
30,31 U字状形材
32 中空室
34 収容窪み
35 アングル材
36 U字状形材
37 凹部
38 中空室
F 走行方向
G 伝動装置の機器
X−X,Z−Z 水平な高さ平面

【特許請求の範囲】
【請求項1】 車体に固定可能なフレームを備え、このフレームが少なくとも、縦材によって連結された横材を備え、車輪案内部材のための支承部が縦材に設けられ、フレームの縦材と横材の間に伝動装置の機器が配置されている、自動車、特に自動車の後車軸のためのサブフレームにおいて、各々の側の縦材構造体(2,3)がそれぞれ上下に配置された縦材(2a,3a)を備え、この縦材がその間に伝動装置の機器(G)の軸(17,18)のための差込み開口(16)を備え、ほぼ端側で集合し、横材(4,5)に連結され、伝動装置の機器(G)が三点支承部(6,7,8)を介して横材(4,5)と縦材(2a,3a)に連結され、伝動装置の機器(G)の軸(17,18)が差込み開口(16)を通って車輪の方に延びていることを特徴とするサブフレーム。
【請求項2】 下側に位置する縦材(3a)が端側にそれぞれ、走行方向(F)に見て前側の支承部(19,21)を備え、上側に位置する他の縦材(2a)がそれぞれ、走行方向(F)に見て、車体に固定するための後側の支承部(20,22)を備えていることを特徴とする請求項1記載のサブフレーム。
【請求項3】 支承部(19,21,20,22)が異なる水平高さ平面(X−X,Z−Z)内にあり、前側の支承部(19,21)が後側の支承部(20,22)よりも低い平面(X−X)内にあることを特徴とする請求項1または2記載のサブフレーム。
【請求項4】 縦材(2a,3a)がそれぞれ、少なくとも一つの水平平面と少なくとも一つの垂直平面内に、屈曲部を備え、それによって差込み開口(16)と、車輪案内部材(11,12,15)用の所定の支承個所(9,10,14,15)と、伝動装置の機器(G)のための三点支承個所(6,7,8)が形成されていることを特徴とする請求項1記載のサブフレーム。
【請求項5】 上側に位置する縦材(2a)の、走行方向(F)に見て前側に位置する自由端(23)が、下側に位置する縦材(3a)に対して角度をなして曲げられ、その端面側の端部が下側に位置する縦材(3a)に連結されていることを特徴とする請求項1または4記載のサブフレーム。
【請求項6】 走行方向(F)に見て後側にある、縦材(2a,3a)の2つの端部分(23a,24)が、共通の長さにわたって重なり、かつ連結されていることを特徴とする請求項1,4または5記載のサブフレーム。
【請求項7】 縦材(2a,3a)の自由端が支承部(20,22,19,21)を収容および連結するために、或る高さ(h)を有するように平らに形成され、それぞれの支承部に対応する半円形の収容部(25)を備えていることを特徴とする請求項1,4,5または6記載のサブフレーム。
【請求項8】 縦材(2a,3a)が内部高圧変形部品からなっていることを特徴とする請求項1記載のサブフレーム。
【請求項9】 前側に位置する横材(4)が縦材(2a,3a)に直接連結され、更に少なくとも1個のブラケット薄板(26)を介してこの縦材に連結されていることを特徴とする請求項1記載のサブフレーム。
【請求項10】 前側に位置する横材(4)が2つの半割り部材状に形成され、かつ横断面がU字状の形材(30,31)からなり、この形材が互いに連結されて、中空室(32)を有する閉じた縦材を形成していることを特徴とする請求項1または9記載のサブフレーム。
【請求項11】 前側に位置する横材(4)が伝動装置の機器(G)のケーシング首部のためのほぼ中央に配置された収容窪み(34)を備え、この範囲において横材(4)の内側に、機器(G)のための第1の内側の支承部受け(6)が配置されていることを特徴とする請求項1,9または10記載のサブフレーム。
【請求項12】 走行方向(F)に見て後側に位置する横材(5)が2つの半割り部材状に形成され、内側のアングル材(35)と外側のU字状形材(36)からなり、このアングル材とU字状形材が車両の縦中心平面(L−L)の両側において凹部(37)によってほぼ三角形の中空室(38)を形成し、自由端範囲においてほぼ四角形の中空室(38a)を形成していることを特徴とする請求項1記載のサブフレーム。
【請求項13】 外側に位置する形材(36)が、車両の縦中心平面(L−L)の両側に延びる、スペアタイヤ窪みのための外側の凹部(37)を有し、三角形の中空室(38)を有することを特徴とする請求項12記載のサブフレーム。
【請求項14】 走行方向(F)に見て後側に位置する横材(5)と、上側の縦材(2a)の支承ブラケット(7a,8a)との間に、伝動装置の機器(G)のための支承部材(7,8)が配置および固定されていることを特徴とする請求項1,11,12または13記載のサブフレーム。
【請求項15】 上側に位置する縦材(2a)に、上側の車輪案内部材の横リンク(11,12)の支承部材のための支承ブラケット(9,10)が固定され、下側に位置する縦材(3a)に、下側の車輪案内部材の三角形リンク(15)の支承部材のための他の支承ブラケット(13,14)が設けられていることを特徴とする請求項1〜14のいずれか一つに記載のサブフレーム。
【請求項16】 支承ブラケット(14)が上側に位置する縦材(2a)の自由端(23a)に連結され、同時に連結のために下側に位置する縦材(3a)の自由端(24)のための形状補完的な収容部を備えていることを特徴とする請求項15記載のサブフレーム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図5】
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【図7】
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【公開番号】特開2000−264245(P2000−264245A)
【公開日】平成12年9月26日(2000.9.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−59353(P2000−59353)
【出願日】平成12年3月3日(2000.3.3)
【出願人】(390009335)ドクトル インジエニエール ハー ツエー エフ ポルシエ アクチエンゲゼルシヤフト (123)
【氏名又は名称原語表記】DR.ING.H.C.F.PORSCHE AKTIENGESELLSCHAFT