説明

自動車用制御装置

【課題】電源装置と電気ボックスとを接続する電源線のサイズダウンを図ることを目的とする。
【解決手段】自動車に搭載される電源装置と、自動車に装備される複数の電装品からなる電装品群と、前記電源装置から引き出された電源線に分岐接続され、かつ前記電装品群を構成する各電装品への通電路となる各分岐ラインと、前記各分岐ラインに設けられ、各分岐ラインを個別に開閉する各半導体スイッチと、予め設定された優先度に従って、前記各半導体スイッチをオン/オフ制御する制御部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車に装備される電装品に対する電流の供給量を制御する自動車用制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車は、車両の前部、後部、シート近傍などの各位置に電気ボックスを配置し、これら各電気ボックスとバッテリなどの電源装置とを電源線により接続して電源装置から各電気ボックスに電源を中継させている。そして、各電気ボックス内では複数の分岐ラインが電源線に分岐接続されており、電源装置から供給される電源を、車両に設置される各電装品に分配しつつ供給させている。
【特許文献1】特開2000−186566公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一般に、バッテリなどの電源装置と各電気ボックスとの間は、単数本、あるいは2本程度の電源線で接続されている。これら電源線の太さは、電気ボックスに連なる各電装品の全てに、電流を最大量供給したとしても、それが、許容電流値を下回らないようなサイズに設定されている。そのため、電源線は太くなり勝ちな状況にあった。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、電源装置と電気ボックスとを接続する電源線のサイズダウンを図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、自動車に搭載される電源装置と、自動車に装備される複数の電装品からなる電装品群と、前記電源装置から引き出された電源線に分岐接続され、かつ前記電装品群を構成する各電装品への通電路となる各分岐ラインと、前記各分岐ラインに設けられ、各分岐ラインを個別に開閉する各半導体スイッチと、予め定められた優先度に基づいて、前記各半導体スイッチをオン/オフ制御する制御部と、を備える。
【0005】
この発明によれば、各分岐ラインを通じて各電装品に供給される電流を、優先度に従って制限することが可能となる。従って、電源装置と電気ボックスとを接続する電源線をサイズダウンできる。
【0006】
この発明の実施態様として、以下の構成とすることが好ましい。
・前記制御部は、前記電装品群のうち、予め定めた優先度の高い電装品に連なる分岐ラインが通電状態になることを条件に、優先度がそれより低く設定された電装品に連なる分岐ライン上に設けられた前記半導体スイッチの内、少なくとも一つをオフ状態に制御する、又はPWM制御して供給する電流量を下げる状態に制御する。このようにしておけば、優先度が低く設定された電装品への通電を制限した分だけ、電源線を流れる電流量が抑えられる。そのため、電源装置と電気ボックスとを接続する電源線の許容電流値を小さくすることが可能となり、電源線をサイズダウンできる。
【0007】
・前記半導体スイッチはパワーFETと、前記パワーFETの電流量に応じたセンス電流が流れるセンスFETと、を含んで構成されたデバイスであると共に、前記制御装置は前記センス電流を検出することにより、各電装品が通電状態であるか、否かを検出する。このような構成であれば、電流検出のための回路素子を専用に設ける必要がなく、制御装置の構成をシンプルにまとめることが可能となる。
【0008】
・前記電装品群が、ストップランプ、デフォッガ、バックドア開閉装置、ワイパ駆動装置を含んでなるものにおいて、前記バックドア開閉装置の優先度を高く設定してある。ワイパ、デフォッガなどは、バックドアが閉止されている状態にて使用されるものであり、バックドアの開放中、これらの装置について使用を制限しても何ら支障がない。
【0009】
・前記電装品群が、シート調整装置と、空調装置と、を含んでなるものにおいて、前記シート調整装置は乗客が着座するパワーシートの位置、姿勢を調整する機能を担う装置であり、前記空調装置は前記パワーシートの空調を調整する機能を担う装置であり、前記シート調整装置の優先度を高く設定してある。一般に、乗客によるシートの調整は、極短時間で終わる。これに対して空調の調整(変化)には時間がかかるので、短い時間、空調の調整を制限したとしても、空調機能が極端に下がらない。よって、調整装置の優先度を高く設定することにより、空調装置側が制限を受けても、実質的な影響が小さい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電源装置と電気ボックスとを接続する電源線をサイズダウン出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図7によって説明する。
【0012】
1.全体構成
本実施形態は、本発明の自動車用制御装置を、電動開閉式のバックドアを備えた5ドア車に適用したものである。図1には、本5ドア車10の電源ネットワーク図が示されている。同図に示すように、本5ドア車(以下、車両とも呼ぶ)には、1個のバッテリ(本発明の「電源装置」に相当)Bと、9個の電気ボックスが9個配置されている。
【0013】
具体的に説明すると、車両の前部(エンジンルーム)に、バッテリBと、バッテリボックス20、フロント電気ボックス30が配置されている。そして、車両の中央部のD席(ドライバー席)側に、第1センター電気ボックス40と2つのシート用電気ボックス43、45が設置され、また、車両の中央部のP席(パッセンジャー席)側に、第2センター電気ボックス50と2つのシート用電気ボックス53、55が配置されている。そして、車両の後部にリヤ電気ボックス60が配置されている。
【0014】
図1に示すように、フロント電気ボックス30、第1センター電気ボックス40、第2センター電気ボックス50、並びにリヤ電気ボックス60が電源線Gによりバッテリボックス20に接続されている。
【0015】
図2にて示すように、各電気ボックス30、40、50、60に連なる電源線G3、G4、G5、G6は、バッテリボックス20内にて共通接続された後、バッテリBの正極に接続されている。そして、各電気ボックス30、40、50、60には、続いて詳しく説明を行うように、車載される複数の電装品が電気的に接続されており、バッテリBから各電装品に対して各電気ボックス30〜60を中継させつつ、電源を供給させる構成となっている。
【0016】
また、D席側に設置される2つのシート用電気ボックス43、45は共に、電源線G43、G45によって第1センター電気ボックス40に接続され、電気ボックス40を中継してバッテリBから電源供給される構成となっている。また、P席側に設置される2つのシート電気ボックス53、55は共に電源線G53、G55によって第2センター電気ボックス50に接続され、電気ボックス50を中継してバッテリBから電源供給される構成となっている。
【0017】
尚、図2中に示す符号25はセンサ、符号27は電源監視装置である。センサ25はバッテリBの温度、電流を検出する機能を担うものである。また電源監視装置は、センサ25から出力される出力信号及び電圧(図2参照)に基づいてバッテリBの状態を監視する機能を担うものである。
【0018】
2.リヤ電気ボックス60とそれに連なる各電装品(電装品群)
リヤ電気ボックス60は、図3にて示すように、ボックス内において電源線G6から分岐する4本の分岐ラインL1〜L4と、各分岐ラインL1〜L4上に介挿されるインテリジェンスパワースイッチIPS1〜IPS4と、同じく各分岐ライン上に介挿されるヒューズH1〜H4と、CPU100と、メモリ110とを備える。
【0019】
インテリジェンスパワースイッチIPSというのは、パワーMOSFET(ソースを電源側に接続し、ドレインを負荷側に接続したPチャンネルMOSFET)と、パワーFETの電流量に応じたセンス電流が流れるセンスFET(不図示)と、パワーMOSFETを駆動させる駆動回路Dと、をワンチップ化したモノリシックIC(デバイス)である。
【0020】
そして、上記各インテリジェンスパワースイッチIPSを介挿させた分岐ラインL1〜L4には、車両後部に装備される各電装品(電装品群)が電気的に連なっている。具体的には、第一分岐ラインL1にストップランプLPが連なり、第二分岐ラインL2にデフォッガDFが連なっている。また、第三分岐ラインL3にバックドア開閉装置の駆動源となるバックドア開閉モータ80がECUを介して連なり、第4分岐ラインL4にワイパモータ(ワイパ駆動装置)90がECUを介して連なっている。
【0021】
CPU100は4つの出力ポートO1〜O4と4つの入力ポートI1〜I4を備え、操作スイッチなどから与えられる動作指令信号Sが取り込まれる構成となっている。そして、CPU100の備える4つの出力ポートO1〜O4と各インテリジェンスパワースイッチIPSの駆動回路Dとの間が、信号ラインにより接続されている。
【0022】
上記したCPU100は、入力される動作指令信号Sに従って、各インテリジェンスパワースイッチIPSを個別に開閉操作して、分岐ラインL1〜L4に連なる各電装品を個別に通電操作出来る。
【0023】
また、CPU100の各入力ポートI1〜I4には、各インテリジェンスパワースイッチIPSを流れる電流値に応じた電圧信号(具体的にはセンスFETにて検出されるセンス電流を電圧に変換したもの)Stがそれぞれ取り込まれる構成となっている。これにより、CPU100にて各インテリジェンスパワースイッチIPSを通じて各電装品に流れる負荷電流を監視できる構成となっている。
【0024】
さて、図3に示すメモリ(記憶手段)110には、各電装品について優先度に関するデータが予め記憶されている。ここでいう、優先度というのは、各電装品に対する通電の優先度を定めるものであり、本実施形態では、リヤ電気ボックス60より電源の分配を受ける各電装品の内、バックドア開閉装置(バックドア開閉モータ80)の優先度が高く設定され、それ以外の電装品(具体的には、ストップランプ、デフォッガ、ワイパモータ)の優先度を低く設定してある。
【0025】
そして、CPU100は、以下説明するように、各分岐ラインL1〜L4の通電状態を監視し、優先度の高い電装品に連なる分岐ラインLが通電状態になると、優先度が低く設定された電装品に連なる分岐ライン上に設けられたインテリジェンスパワースイッチIPSをオフ状態に制御して、優先度が低く設定された電装品に対する通電を断つ制御を行う。
【0026】
3.CPU100による制御例
図4を参照して、CPU100による制御例を説明する。尚、ここでは、制御の開始時刻となる時刻「t0」にて、バックドアは閉じた状態にあってバックドア開閉モータ80は非通電状態(負荷電流が流れていない状態)にあり、またストップランプLP、デフォッガDF、ワイパモータ90についても非動作状態(負荷電流が流れていない状態)にあったものとする。
【0027】
CPU100は、時刻t0にて制御を開始し、それ以降、定期的に操作スイッチから動作信号指令Sが与えられていないか確認する処理を行いながら、各入力ポートI1〜I4の電圧レベルを監視する。
【0028】
そして、制御開始後、例えば時刻t1にて、デフォッガDF、ワイパを作動させるべく、乗客により操作スイッチの操作が行われると、デフォッガDFの作動を指示する動作指令信号S、ワイパの作動を指示する動作指令信号SがCPU100に与えられる。これにより、CPU100はインテリジェンスパワースイッチIPS2とインテリジェンスパワースイッチIPS4とをそれぞれオン状態にする。
【0029】
すると、分岐ラインL2、分岐ラインL4が閉じた状態となるので、両分岐ラインL2、L4を通じてデフォッガDF、ワイパモータ90に負荷電流が流れる。
【0030】
また、続く時刻t2にて、例えば、ブレーキペダルが踏まれると、ストップランプLPの作動を指示する動作指令信号SがCPU100に与えられる。すると、CPU100はインテリジェンスパワースイッチIPS1をオン状態にする。これにより、分岐ラインL1が閉じた状態となるので、分岐ラインL1を通じてストップランプLPに負荷電流が流れる。
【0031】
CPU100は上記した各インテリジェンスパワースイッチIPSの制御を行いながら、これと並行させて各入力ポートI1〜I4の電圧レベルをチェックして各分岐ラインL1〜L4の通電状況を監視(負荷電流が流れているか、どうかを監視)する処理を継続的に行う。そして、CPU100は優先度の高く設定された電装品、すなわちバックドア開閉モータ80に連なる分岐ラインL3が通電状況になければ、各分岐ラインL1〜L4上に設けられた各インテリジェンスパワースイッチIPSのオン/オフを、入力された動作指令Sに従った状態を維持する。
【0032】
これにより、次に説明する時刻t3までの間は、分岐ラインL1上のインテリジェンスパワースイッチIPS1、分岐ラインL2上のインテリジェンスパワースイッチIPS2、分岐ラインL4上のインテリジェンスパワースイッチIPS4はいずれもオンした状態が維持され、ストップランプLP、デフォッガDF、ワイパモータ90に負荷電流が供給され続ける。
【0033】
そして、時刻t3にて、バックドアを開放させるべく、乗客により操作スイッチが操作されると、バックドアの開放を指示する動作指令信号SがCPU100に与えられる。これにより、CPU100はインテリジェンスパワースイッチIPS3をオン状態にする。これにより、分岐ラインL3が閉じた状態となるので、分岐ラインL3を通じてバックドア開閉モータ80に負荷電流が流れる。
【0034】
そして、分岐ラインL3が通電状態になると、インテリジェンスパワースイッチIPS3にて負荷電流がセンシングされ、入力ポートP3の電圧レベルが負荷電流の大きさに対応した電圧値に変化する(具体的には、ゼロボルトから負荷電流の大きさに対応した電圧値になる)。すると、CPU100は、この電圧値の変化を受けて、優先度の低く設定された各電装品、すなわちストップランプLP、デフォッガDF、ワイパモータ90に連なる分岐ラインL1、L2、L4上に設けられた各インテリジェンスパワースイッチIPS1、IPS2、IPS4に対して一斉に制御信号Srを与えてスイッチIPS1、IPS2、IPS4をオン状態からオフ状態に切り換える。これにより、優先度の低く設定された各電装品に対する負荷電流の供給は停止する。
【0035】
そして、時刻t3にて開放し始めたバックドアは時刻t4にて完全に開放する。これにより、時刻t4にて、バックドア開閉モータ80に負荷電流の供給も停止する。そのため、分岐ラインL3は非通電状態に戻り、入力ポートP3の電圧レベルが再び変動しほぼゼロに戻る。すると、CPU100は、この電圧値の変動を受けて、優先度の低く設定された各電装品、すなわちストップランプLP、デフォッガDF、ワイパモータ90に連なる分岐ラインL1、L2、L4上に設けられた各インテリジェンスパワースイッチIPS1、IPS2、IPS3に対して一斉に制御信号Srを与え、今度はスイッチをオフ状態からオン状態に切り換える。これにより、優先度の低く設定された各電装品に対する負荷電流の供給が再開される。
【0036】
その後、時刻t5にて、バックドアを閉止させるべく、乗客により操作スイッチが操作されると、バックドアの開放を指示する動作指令信号SがCPU100に与えられる。これにより、CPU100はインテリジェンスパワースイッチIPS3をオン状態にする。これにより、分岐ラインL3が閉じた状態となるので、分岐ラインL3を通じてバックドア開閉モータ80に負荷電流が流れる。
【0037】
そして、分岐ラインL3に負荷電流が流れると、インテリジェンスパワースイッチIPS3にて負荷電流がセンシングされ、入力ポートP3の電圧レベルが負荷電流の大きさに対応した電圧値に変化する。すると、CPU100は、この電圧値の変化を受けて、優先度の低く設定された各電装品、すなわちストップランプLP、デフォッガDF、ワイパモータ90に連なる分岐ラインL1、L2、L4上に設けられた各インテリジェンスパワースイッチIPS1、IPS2、IPS4に対して一斉に制御信号Srを与えてスイッチIPS1、IPS2、IPS4をオン状態からオフ状態に切り換える。これにより、優先度の低く設定された各電装品に対する負荷電流の供給は停止する。
【0038】
そして、時刻t5にて閉止し始めたバックドアは時刻t6にて完全に閉止する。これにより、時刻t6にて、バックドア開閉モータ80に対する負荷電流の供給も停止する。これにより、入力ポートP3の電圧レベルが再び変動しほぼゼロに戻る。すると、CPU100は、この電圧値の変動を受けて、優先度の低く設定された各電装品、すなわちストップランプLP、デフォッガDF、ワイパモータ90に連なる分岐ラインL1、L2、L4上に設けられた各インテリジェンスパワースイッチIPS1、IPS2、IPS3に対して一斉に制御信号Srを与え、今度はスイッチをオフ状態からオン状態に切り換える。これにより、優先度の低く設定された各電装品に対する負荷電流の供給が再開される。
【0039】
このように、CPU100は、バックドア開閉モータ80に連なる分岐ラインL3が通電状態(負荷電流が流れている状態)になることを条件に、優先度の低い電装品に連なる分岐ラインL1、L2、L4上に設けられた各インテリジェンスパワースイッチIPS1、インテリジェンスパワースイッチIPS2、インテリジェンスパワースイッチIPS4をオフする。
【0040】
これにより、リヤ電気ボックス60に連なる全電装品に負荷電流が同時に流れ続けることがなくなるので、バッテリBとリヤ電気ボックス60とを接続する電源線G6の許容電流値を小さくすることが可能となる。具体的には、全電装品に負荷電流が同時に流れるケースであれば、全電流(負荷電流の総和)の最大値は、図5のIbとなるが、実施形態1の例では、全電流(負荷電流の総和)の最大値が図4のIaとなり、図5の例に比べて小さくなる。以上のことから、バッテリBとリヤ電気ボックス60とを接続する電源線G6をサイズダウンできる。
【0041】
また、この例では、バックドア開閉モータ80の優先度を高く設定してある。ワイパ、デフォッガDFなどは、バックドアが閉止されている状態にて使用されるものであり、バックドアの開放中、これらの装置を制限しても何ら支障がない。
【0042】
4.シート用電気ボックスとそれに連なる各電装品(電装品群)
本例では、車載される4つのパワーシートに対応して、4つのシート用電気ボックス43、45、53、55を設けており、各シート用電気ボックス43、45、53、55を通じて各パワーシートに搭載される電装品に電源を分配している。これら4つのシート用電気ボックス43、45、53、55による電源分配構造は同じであるので、ここでは、シート用電気ボックス43を例にとって説明を行う。
【0043】
シート用電気ボックス43は、図6にて示すように2系統に分かれており、ボックス内において電源線G43が、2本の分岐ラインL5〜L6に分岐している。そして、分岐ラインL5には第1コントロールユニット230が連なり、また、分岐ラインL6には第2コントロールユニット240が連なっている。
【0044】
第1コントロールユニット230は、パワーシートの位置、姿勢などを調整する各調整装置(前後スライド装置、リクライニング装置、ランバーサポート装置)を駆動制御するものであって、CPU235とドライブ回路237とを備えてなる。ドライブ回路237は、分岐ラインL5から再分岐する複数本の分岐ラインHを備える。
【0045】
これら各分岐ラインHは前後スライド装置(本発明の「シート調整装置」の一例)の駆動源となるスライドモータ300、リクライニング装置(本発明の「シート調整装置」の一例)の駆動源となるリクライニングモータ310、ランバーサポート装置(本発明の「シート調整装置」の一例)の駆動源となるランバーサポートモータ320にそれぞれ連なっている。そして、これら各分岐ラインH上には、トランジスタ(エミッタを電源側に接続し、コレクタを負荷側に接続したPNPトランジスタ)Trよりなるロードスイッチが設けられている。
【0046】
CPU235には操作スイッチなどから与えられる動作指令信号Sが取り込まれる構成となっており、係るCPU235は入力される動作指令信号Sに従って上記した各トランジスタTrを個別に開閉操作して、各調整装置300、310、320を個別に通電操作することが出来る。
【0047】
第2コントロールユニット240は、パワーシートの空調装置(加温用ヒータ、冷却用ぺルチェ素子、シートブロア)を駆動制御するものであって、CPU245とドライブ回路247とを備えてなる。ドライブ回路247は、分岐ラインL6から再分岐する複数本の分岐ラインHを備える。これら各分岐ラインHは加温用ヒータ(本発明の「空調装置」の一例)330、冷却用ぺルチェ素子(本発明の「空調装置」の一例)340、シートブロア(本発明の「空調装置」の一例)の駆動源となるブロアモータ350にそれぞれ連なっている。そして、これら各分岐ラインH上には、トランジスタ(エミッタを電源側に接続し、コレクタを負荷側に接続したPNPトランジスタ)Trよりなるロードスイッチが設けられている。
【0048】
CPU245は操作スイッチなどから与えられる動作指令信号Sが取り込まれる構成となっており、係るCPU245は入力される動作指令信号Sに従って上記した各トランジスタTrを個別に開閉操作して、各空調装置330、340、350を個別に通電操作することが出来る。
【0049】
また、分岐ラインL5にはインテリジェンスパワースイッチIPS5が介挿されると共に、分岐ラインL6にはインテリジェンスパワースイッチIPS6が介挿されている。インテリジェンスパワースイッチIPS5、IPS6は、先のインテリジェンスパワースイッチIPS1〜IPS4と同様に、パワーMOSFET(ここでは、Pチャンネル)と、パワーFETの電流量に応じたセンス電流が流れるセンスFET(不図示)と、パワーMOSFETを駆動させる駆動回路Dと、を1チップ化したモノリシックICである。
【0050】
また、図6に示す符号200はCPU、符号210はメモリである。CPU200は両インテリジェンスパワースイッチIPS5、インテリジェンスパワースイッチIPS6をオン/オフ制御する機能を担うものであって、2つの出力ポートO5、O6と2つの入力ポートI5、I6を備えている。そしてCPU200の備える出力ポートO5とインテリジェンスパワースイッチIPS5の駆動回路Dとの間が信号ラインにより接続され、出力ポートO6とインテリジェンスパワースイッチIPS6の駆動回路Dとの間が信号ラインにより接続されている。
【0051】
また、CPU200の各入力ポートI5にはインテリジェンスパワースイッチIPS5を流れる電流値に応じた電圧信号(具体的にはセンスFETにて検出されるセンス電流を電圧に変換したもの)Stが取り込まれる構成となっており、CPU200の各入力ポートI6にはインテリジェンスパワースイッチIPS5を流れる電流値に応じた電圧信号(具体的にはセンスFETにて検出されるセンス電流を電圧に変換したもの)Stが取り込まれる構成となっている。
【0052】
これにより、CPU200にて各インテリジェンスパワースイッチIPS5、IPS6を通じ調整装置300、310、320側に流れる負荷電流、空調装置330、340、350側に流れる負荷電流を監視できる構成となっている。
【0053】
そして、メモリ210には優先度に関するデータが予め記憶されている。具体的には、調整装置300、310、320側の優先度が高く設定され、空調装置330、340、350側の優先度が低く設定されている。
【0054】
5.CPU200による制御例
図7を参照して、CPU200による制御例を説明する。尚、ここでは、制御の開始時刻となる時刻t0にて、各調整装置300、310、320、及び各空調装置330、340、350はいずれも作動していない状態(負荷電流が流れていない状態)にあったものとする。
【0055】
CPU200は時刻t0にて制御を開始すると、それと同時に、分岐ラインL5に設けられるインテリジェンスパワースイッチIPS5、分岐ラインL6に設けられるインテリジェンスパワースイッチIPS6に制御信号を与えて、両スイッチIPS5、IPS6をいずれもオン状態に制御する。そして、CPU200は両スイッチIPS5、IPS6をオン状態にすると、それ以降、定期的に入力ポートI5〜I6の電圧レベルを監視する。
【0056】
制御開始後、時刻t1にて、乗客によりヒータとブロアの操作スイッチが操作されると、加温用ヒータ330とブロアモータ350の作動を指示する動作指令信号令信号SがCPU245に与えられる。これにより、CPU245は加温用ヒータ330、ブロアモータ350に連なる分岐ラインH上のトランジスタTrに制御信号を与え、トランジスタTrをオンさせる。すると、分岐ラインL6を通じて加温用ヒータ330、ブロアモータ350に負荷電流が流れる。
【0057】
また、続く時刻t2にて、乗客により、リクライニング装置の操作スイッチが操作されると、CPU235はリクライニングモータ310に連なる分岐ラインH上のトランジスタTrに制御信号を与え、トランジスタTrをオンさせる。すると、分岐ラインL5を通じてリクライニングモータ310に負荷電流が流れる。
【0058】
そして、分岐ラインL5に負荷電流が流れる状態(通電状態)になると、インテリジェンスパワースイッチIPS5にて負荷電流がセンシングされ、入力ポートP5の電圧レベルが負荷電流の大きさに対応した電圧値に変化する。すると、CPU200は、この電圧値の変化を受けて、優先度の低く設定された空調装置330、340、350に対応する分岐ラインL6上に設けられたインテリジェンスパワースイッチIPS6をオン状態からオフ状態に切り換える。これにより、優先度の低く設定された空調装置側の各電装品330、340、350に対する負荷電流の供給は停止する。
【0059】
そして、CPU200は、優先度の高い調整装置300、310、320側の分岐ラインL5に負荷電流が流れている間(図7の例では、時刻t2〜時刻t4までの間)は、分岐ラインL6上に設けられたインテリジェンスパワースイッチIPS6をオフ状態に制御する。
【0060】
そして、時刻t4にてリクライニングの調整が完了すると、それと同時に、CPU235はリクライニングモータ310に連なる分岐ラインH上のトランジスタTrに制御信号を与え、トランジスタTrをオフさせる。
【0061】
その結果、分岐ラインL5に負荷電流が流れない状態(非通電状態)になり、CPU200の入力ポートP3の電圧レベルが再び変動しほぼゼロに戻る。すると、CPU200は、この電圧値の変動を受けて、優先度の低く設定された空調装置に対応する分岐ラインL6上に設けられたインテリジェンスパワースイッチIPS6をオフ状態からオン状態に切り換える。これにより、優先度の低く設定された空調装置に対する負荷電流の供給が再開される。
【0062】
このように、CPU200は、優先度の高い調整装置300、310、320側の分岐ラインL5が通電状態(負荷電流が流れる状態)になることを条件に、優先度の低い空調装置330、340、350側の分岐ラインL6上に設けられた各インテリジェンスパワースイッチIPS6をオフする。
【0063】
これにより、シート用電気ボックス43に連なる全電装品に負荷電流が同時に流れ続けることがなくなるので、第一センター電気ボックス40とシート用電気ボックス43とを接続する電源線G43の許容電流値を小さくすることが可能となる。具体的には、全電装品に負荷電流が同時に流れるケースであれば、全電流(負荷電流の総和)の最大値は、図8のIdとなるが、実施形態1の制御例では、全電流(負荷電流の総和)の最大値が図4のIcとなり、図8の例に比べて小さくなる。以上のことから、上記電源線G43をサイズダウンできる。
【0064】
また、この例では、調整装置300、310、320の優先度を高く設定してある。一般に、乗客によるシートの調整(アジェスト)は、極短時間で終わる。これに対して空調の調整には時間がかかるので、短い時間、空調を制限したとしても、空調の性能が極端に下がらない。よって、調整装置300、310、320側の優先度を高く設定することにより、空調装置330、340、350側が制限を受けても、実質的な影響が小さい。
【0065】
<実施形態2>
本発明の実施形態1では、リヤ電気ボックス60に連なる電装品のうち、バックドア開閉モータ80の優先度を高く設定した例を示した。実施形態2のものは、優先度を複数段階に設定にしている。具体的には、バックドア開閉モータ80の優先度を最も高いランクとし、次いでストップランプLPの優先度を高くし、次いでワイパモータ90の優先度を高くし、デフォッガDFの優先度を低く設定してある。
【0066】
そして、バックドア開閉モータ80に連なる分岐ラインL3が通電状態にあれば、実施形態1と同様にそれより優先度の低い他の電装品が連なる分岐ラインL1、L2、L4上に設けられた各インテリジェンスパワースイッチIPS1、インテリジェンスパワースイッチIPS2、インテリジェンスパワースイッチIPS4をオフする。
【0067】
また、ストップランプLPに連なる分岐ラインL1が通電状態にあれば、デフォッガDFに連なる分岐ラインL2上に設けられたインテリジェンスパワースイッチIPS2をオフする。
【0068】
このようにしておけば、各電装品の作動シーンに応じて電源分配の制限を働かせることが可能となる。具体的には、バックドアの開閉中であれば、それより優先度の低い他の電装品(ストップランプLP、ワイパモータ90、デフォッガDF)に対する通電が遮断される。また、バックドアの閉止中にて、ブレーキペダルが踏まれると、図9にて示すように、ストップランプLPが通電状態となり、デフォッガDFに対する通電が遮断される。
【0069】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0070】
(1)実施形態1では、優先度の高い電装品に連なる分岐ラインが通電状態になったとき、優先度の低い電装品に対応する分岐ライン上に設けられたインテリジェンスパワースイッチIPSをオフして電流の供給を遮断するようにした。本発明は、電源線Gを流れる電流値(言い換えれば、各負荷電流のトータル値)が大きくならないように制限できればよく、例えば、優先度の高い電装品に連なる分岐ラインが通電状態になったとき、優先度の低い電装品に対する電流量を、通常時のそれに比べて下げる制御(PWM制御)を行ってもよい。
【0071】
(2)実施形態1では、CPU200にて、系統単位で通電を遮断する制御例を説明した。具体的には、優先度の高い調整装置300、310、320側の分岐ラインL5が通電状態になることを条件に、優先度の低い空調装置330、340、350側の分岐ラインL6上に設けられたインテリジェンスパワースイッチIPS6をオフして、空調装置側の各装置に対する通電を一斉に遮断する構成とした。このような制御例の他にも、例えば、図10にて示すように、調整装置を構成する各装置300、310、320と、空調装置を構成する各装置330、340、350が一斉に通電しないように、各装置300〜350に連なる各分岐ラインHを個々に通電制御することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】実施形態1に適用された車両の電源ネットワーク図
【図2】バッテリと各電気ボックスとの配線構造を示す回路図
【図3】リヤ電気ボックスの回路図
【図4】各電装品の通電タイミングを示す図
【図5】各電装品の通電タイミングを示す図(比較例を示す図)
【図6】シート用電気ボックスの回路図
【図7】各電装品の通電タイミングを示す図
【図8】各電装品の通電タイミングを示す図(比較例を示す図)
【図9】実施形態2における各電装品の通電タイミングを示す図
【図10】他の制御例を示す図
【符号の説明】
【0073】
20…バッテリボックス
40…第一センター電気ボックス
50…第二センター電気ボックス
43、45、53、55…シート用電気ボックス
100…CPU(本発明の「制御部」に相当)
200…CPU(本発明の「制御部」に相当)
L1〜L4…分岐ライン
IPS1〜IPS4…インテリジェンスパワースイッチ(本発明の「半導体スイッチ」に相当)
L5、L6…分岐ライン
IPS5〜IPS6…インテリジェンスパワースイッチ(本発明の「半導体スイッチ」に相当)
B…バッテリ(本発明の「電源装置」に相当)
LP…ストップランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車に搭載される電源装置と、
自動車に装備される複数の電装品からなる電装品群と、
前記電源装置から引き出された電源線に分岐接続され、かつ前記電装品群を構成する各電装品への通電路となる各分岐ラインと、
前記各分岐ラインに設けられ、各分岐ラインを個別に開閉する各半導体スイッチと、
予め定められた優先度に基づいて、前記各半導体スイッチをオン/オフ制御する制御部と、を備える自動車用制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記電装品群のうち、予め定めた優先度の高い電装品に連なる分岐ラインが通電状態になることを条件に、優先度がそれより低く設定された電装品に連なる分岐ライン上に設けられた前記半導体スイッチの内、少なくとも一つをオフ状態に制御する、又はPWM制御して供給する電流量を下げる状態に制御することを特徴とする請求項1に記載の自動車用制御装置。
【請求項3】
前記半導体スイッチはパワーFETと、前記パワーFETの電流量に応じたセンス電流が流れるセンスFETと、を含んで構成されたデバイスであると共に、前記制御部は前記センス電流を検出することにより、前記各分岐ラインが通電状態であるか、否かを検出することを特徴とする請求項2に記載の自動車用制御装置。
【請求項4】
前記電装品群が、ストップランプ、デフォッガ、バックドア開閉装置、ワイパ駆動装置を含んでなるものにおいて、前記バックドア開閉装置の優先度を高く設定してあることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の自動車用制御装置。
【請求項5】
前記電装品群が、シート調整装置と、空調装置と、を含んでなるものにおいて、
前記シート調整装置は乗客が着座するパワーシートの位置、姿勢を調整する機能を担う装置であり、
前記空調装置は前記パワーシートの空調を調整する機能を担う装置であり、
前記シート調整装置の優先度を高く設定してあることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の自動車用制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−120545(P2010−120545A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−296978(P2008−296978)
【出願日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)