説明

自動車用灰皿

【課題】 灰皿の消火筒に溜まった灰や固形物を効果的に除去すること、吸殻収容部の容積が小さくとも沢山の吸殻を収容すること、灰皿を逆さまにするだけでスムーズに吸殻を捨てることのできる自動車用灰皿を提供することを目的とする。
【解決手段】 吸殻収容部と、フレームと、蓋とから灰皿本体を構成し、該フレームに固定された、消火筒を有する消火筒部材と、該フレームに回動可能に軸支された第1スロープ部材とからなり、該消火筒の側面から底面にかけて一条のスリットを備え、該第1スロープ部材には該スリットに係合可能にカギ状部を有する掻出部を備えて構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の室内で使用する灰皿に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、着火したタバコを差し込んで酸欠状態として容易に消火することができる消火筒を備えた自動車用の灰皿がよく知られている。消火筒は、概ねタバコの直径と同一の内寸で、差し込んだタバコが自立する程度の深さから形成されている。しかしながら、このような消火筒は、使用頻度にもよるが比較的早期に、内部に灰やタールが混ざり合った固形物が堆積して用を成さなくなるため、継続して使用するには内部を度々クリーニングして固形物を除去する必要がある。
【0003】
そこで、このような問題点を解決するために、消火筒が分割して開くようにして内部に溜まった灰を落下させてクリーニングする技術が多々提案されている。これらは、灰皿に備えられたボタンを押すことで消火筒が開いたり、蓋などの開閉動作に伴って消火筒が開いたりするものがある。例えば、特開2004−189199号公報(特許文献1)に開示された灰皿は、消火筒5を第1消火筒部材5aと第2消火筒部材とで構成し、第1消火筒部材5aと指掛部6を一体に形成して、指掛部6を下に押すことで、消火筒5の下部が開いて内部に溜まった灰を落としてクリーニングするようにしたものである。
【0004】
また、実開昭61−30541号公報(特許文献2)に開示された「自動車用灰皿」は、灰皿の開閉に伴って消火筒が開閉して自動的に灰を落下させてクリーニングするようにしたもので、消火筒は有底の筒状で2個の筒状部材からなり、一方の筒状部材を回動可能にして、灰皿の閉鎖動作にともなって筒状部材の下部が開いて内部に溜まった灰を落としてクリーニングするようにしたものである。
【0005】
さらに、特許第4167136号公報(特許文献3)に開示された「灰皿」も、特許文献2と同様に灰皿の開閉に伴って消火筒が開閉して自動的に灰を落下させてクリーニングするようにしたもので、消火筒は、蓋体とともに回動する第1部材と、これに同軸で回動する第2部材とを合体状態とすることにより筒状として形成されたもので、蓋体を閉じる動作に伴って第2部材が回動し、消火筒の先端が斜め下方向を向いた状態で先端部が開いて内部に溜まった灰を落としてクリーニングするようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】 特開2004−189199号公報
【特許文献2】 実開昭61−30541号公報
【特許文献3】 特許第4167136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、着火したタバコを消火筒内部に差し込むと、消火する際の煙に混じったタールと灰が混ざり合って固形物として消火筒内部に付着する。タールは粘着質でベタベタしているため付着した固形物は、消火筒が開くだけでは落下せず、比較的さらさらしている灰だけが灰皿に落下するに過ぎない。結果的に固形物は消火筒に堆積して内部を詰まらせ、当初の目的を達成することができなくなる。
【0008】
特許文献1においては、消火筒の下部が開くようにして、重力によってできるだけ素直に灰が落下するように構成したもので、さらに、第1消火筒部材と指掛部を一体にして、指掛部を指で弾いて消火筒に衝撃を与えることで、付着した固形物をできるだけ落下させるように構成したものである。
【0009】
特許文献2においては、消火筒の下部が開いて灰は下方に落下するが、有底部分によって灰の落下が妨げられるとともに、付着した固形物が有底部の内隅に溜まり、当初の目的を達成することはできない。
【0010】
特許文献3においては、消火筒の先端が斜め下方向を向いた状態で先端部が開くので、素直に灰が落下できずに内部に滞留するとともに固形物と合わせて堆積して内部を詰まらせ、当初の目的を達成することはできない。
【0011】
また、これら灰皿は自動車の室内で使用されることが前提であるために、コンパクトで吸殻の収容部の容積が小さい。また、吸殻は収容部に無造作に捨てられるので吸殻の間に隙間が多く生じ、捨てた本数の割には収容部がすぐに一杯になり、その都度吸殻の処理を余儀なくされる。
【0012】
さらに、前記した吸殻収容部に溜まった吸殻は、灰皿を逆さまにしてゴミ箱に捨てるが、消火筒やタバコ受け、それらが備えられた枠体に吸殻が引っ掛かって、スムーズに吸殻が排出されず気付かずに捨て残しも生じる。このとき、吸殻収容部に嵌め込まれた枠体を取り外して捨ててもよいが、不用意に外れて自動車室内を汚損するといったことを防止するために外れ難くしたり、ロック機構を設けたりすればよいが、コストアップの要因ともなるため、前記した不都合があったとしてもそのまま灰皿を逆さまにして捨てることが多い。
【0013】
そこで本発明は、上記課題を解消し灰皿の消火筒に溜まった灰や固形物を効果的に除去すること、吸殻収容部の容積が小さくとも沢山の吸殻を収容すること、灰皿を逆さまにするだけでスムーズに吸殻を捨てることのできる自動車用灰皿を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
吸殻収容部と、フレームと、蓋とから灰皿本体を構成し、該フレームに固定された、消火筒を有する消火筒部材と、該フレームに回動可能に軸支された第1スロープ部材とからなり、該消火筒の側面から底面にかけて一条のスリットを備え、該第1スロープ部材には該スリットに係合可能にカギ状部を有する掻出部を備えたことで解決される。
【0015】
また、該フレームに第1スロープ部材と対向して、少なくともタバコの直径よりも広くした間隔部を備えつつ漏斗状をなすように第2スロープ部材を備えるとともに、該吸殻収容部の内部の底に、該吸殻収容部の後側から前側に向けて下がる斜面、該吸殻収容部の前側から後側に向けて下がる斜面、該吸殻収容部の後側と前側と平行に稜線を備えた山型の斜面の何れかを形成したガイド部を備えたことで解決される。
【発明の効果】
【0016】
吸殻収容部と、フレームと、蓋とから灰皿本体を構成し、該フレームに固定された、消火筒を有する消火筒部材と、該フレームに回動可能に軸支された第1スロープ部材とからなり、該消火筒の側面から底面にかけて一条のスリットを備え、該第1スロープ部材には該スリットに係合可能にカギ状部を有する掻出部を備えたので、消火筒内部に付着した固形物を第1スロープ部材を回動させて消火筒のスリットから係脱することで確実に除去することを可能とした。また、第1スロープ部材は、スプリングなどで付勢されることなく軸支しているので、灰皿本体を逆さまにすることで、自然に回動して開き、吸殻の排出を妨げない。さらに、逆さまにした灰皿本体を揺すり、開いた第1スロープ部材に、軸支部を中心に揺らせつつ周囲の部材に当てて衝撃を与えることで、消火筒の底や、掻出部に付着した固形物を振り落として除去することを可能とした。
【0017】
また、該フレームに第1スロープ部材と対向して、少なくともタバコの直径よりも広くした間隔部を備えつつ漏斗状をなすように第2スロープ部材を備えるとともに、該吸殻収容部の内部の底に、該吸殻収容部の後側から前側に向けて下がる斜面、該吸殻収容部の前側から後側に向けて下がる斜面、該吸殻収容部の後側と前側と平行に稜線を備えた山型の斜面の何れかを形成したガイド部を備えたので、吸殻が第2スロープ部材、または第1スロープ部材の傾斜面に置くことで間隔部に向かって転がりつつ落下し、間隔部を経てさらに落下した吸殻は、ガイド部の斜面によって谷底に転がって収まる。これが繰り返されることで、吸殻は斜面に沿って整然と積み重なり、従来のように乱雑に隙間が多く収容された吸殻の本数と比較して遙かに沢山の本数の吸殻を収容することを可能とした。また、第2スロープ部材は、スプリングなどで付勢されることなく軸支しているので、灰皿本体を逆さまにすることで、第1スロープ部材とともに自然に回動して開き、吸殻の排出を妨げず使い勝手の向上を実現した。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】灰皿本体の斜視図である。
【図2】灰皿本体の断面斜視図である。
【図3】スロープ部材を上方に回動させた状態の断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
【実施例1】
【0020】
本発明の第1実施例について、図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の灰皿本体の斜視図、図2は、灰皿本体の断面斜視図である。
【0021】
灰皿本体(1)は、吸殻収容部(2)、フレーム(3)、蓋(4)から構成され、フレーム(3)の後方(蓋(4)側)には、消火筒部材(5)と第1スロープ部材(6)が備えられている。また、フレーム(3)の前側には着火したタバコを挟んで一時的に置いておくためのタバコ置き(3a)を備えている。
【0022】
消火筒部材(5)は、フレーム(3)に固定して備えられ、上面は灰皿本体(1)の中央かつ下方向に向かって傾斜面を有するとともに、その下方には消火筒(5a)が備えられて構成されている。また、消火筒(5)には、フレーム(3)の前側(第2スロープ部(7)側)の側面から底面にかけて、スリット(5b)を備えた。
【0023】
他方、第1スロープ部材(6)は、フレーム(3)の蓋(4)側で軸支して備えられ、上面は消火筒部材(5)の上面と連続して、灰皿本体(1)の中央かつ下方向に向かって傾斜面を有するとともに、左右端部には操作杆(6a)を立設し、下方には下部をカギ状部(6c)とした掻出部(6b)を備えた。また、軸支した部分の上部には小さな突起部(6d)を備え、蓋(4)を閉めたときに底面に備えられたリブ(4b)が突起部(6d)に当接して第1スロープ部材(6)が少しだけ回動する。
【0024】
このように構成した消火筒部材(5)と第1スロープ部材(6)は、図2に示されるように、消火筒(5a)のスリット(5b)に第1スロープ部材(6)の掻出部(6b)が嵌入して構成される。また、蓋(4)を完全に閉めきったときに底面に備えられたリブ(4b)が突起部(6d)に当接して第1スロープ部材(6)が少しだけ回動する。これにより掻出部(6b)が消火筒(5a)のスリット(5b)から少しだけ外れて、灰皿本体(1)の不使用時に消火筒(5a)内部の固形物が固着しないように待機状態となる。
【0025】
図3は、スロープ部材を上方に回動させた状態の断面斜視図である。着火したタバコは消火筒(5a)に差し込んで消火させた後、吸殻収容部(2)に捨てられるが、これによって消火筒(5a)の底には、タールと灰が混ざり合った固形物が付着する。そこで、フレーム(3)に軸支された第1スロープ部材(6)の左右端部に立設された操作杆(6a)を、指で後方に押すことで、スリット(5b)に嵌入していた、下部をカギ状部(6c)とした掻出部(6b)が外れるとともに、カギ状部(6c)によって掻き出して強制的に固形物を除去する。
【0026】
また、第1スロープ部材(6)は、スプリングなどで付勢されることなく軸支しているので、通常は図1及び図2の状態で位置しているが、灰皿本体(1)を逆さまにすることで、自然に回動して開いて吸殻の排出を妨げない効果を得る。
【0027】
さらに、灰皿本体(1)を逆さまにして揺することで、自然に回動して開いた第1スロープ部材(6)も軸支部を中心に揺れつつ周囲の部材に当たって衝撃を受ける。これにより消火筒(5a)の底や、掻出部(6b)に付着した固形物を振り落として除去することも可能になる。
【実施例2】
【0028】
本発明の第2実施例においては、図1乃至図3に示されるように、第1スロープ部材(6)と対向するように第2スロープ部材(7)を備えるとともに、吸殻収容部(2)の底には傾斜面を有するガイド部(8)備えて構成した
【0029】
第2スロープ部材(7)は、フレーム(3)の前側に軸支して備えるとともに、灰皿本体(1)の中央かつ下方向に向かって傾斜面を備え、対向して備えられた第1スロープ部材(6)とで、その間に少なくともタバコの直径よりも広くした間隔部(7a)を備えつつ漏斗状をなすようにした。
【0030】
他方、ガイド部(8)は、本説明において山型の斜面を形成した状態を適用して説明する。ガイド部(8)は、吸殻収容部(2)の底に備えられ、山型に斜面が形成されるとともに稜線が間隔部(7a)と平行になるように配置した。
【0031】
このように構成した第2スロープ部材(7)とガイド部(8)は、まず、吸殻を第2スロープ部材(7)、または第1スロープ部材(6)の傾斜面に置くことで間隔部(7a)に向かって転がりつつ落下する。間隔部(7a)を通ってさらに落下した吸殻は、ガイド部(8)の山型の斜面によってどちらかの谷に転がって収まる。これが繰り返されることで、図2に示されるように吸殻は斜面に沿って整然と積み重なって収容されるので、従来のように乱雑に隙間が多く収容された吸殻の本数と比較すると遙かに沢山の本数の吸殻を収容することができる。
【0032】
また、第1実施例と同様に、第2スロープ部材(7)は、スプリングなどで付勢されることなく軸支しているので、通常は図1及び図2の状態で位置しているが、灰皿本体(1)を逆さまにすることで、自然に回動して開いて吸殻の排出を妨げない効果を得る。
【0033】
なお、ガイド部(8)は、アルミなどの金属プレートを用いて形成してもよいし、吸殻収容部(2)の底に一体に形成してもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 灰皿本体
2 吸殻収容部
3 フレーム
3a タバコ置き
4 蓋
4a 開閉ボタン
4b リブ
5 消火筒部材
5a 消火筒
5b スリット
6 第1スロープ部材
6a 操作杆
6b 掻出部
6c カギ状部
6d 突起部
7 第2スロープ部材
7a 間隔部
8 ガイド部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸殻収容部と、フレームと、蓋とから灰皿本体を構成し、該フレームに固定された、消火筒を有する消火筒部材と、該フレームに回動可能に軸支された第1スロープ部材とからなり、該消火筒の側面から底面にかけて一条のスリットを備え、該第1スロープ部材には該スリットに係合可能にカギ状部を有する掻出部を備えたことを特徴とする自動車用灰皿。
【請求項2】
前記、該フレームに第1スロープ部材と対向して、少なくともタバコの直径よりも広くした間隔部を備えつつ漏斗状をなすように第2スロープ部材を備えるとともに、該吸殻収容部の内部の底に、該吸殻収容部の後側から前側に向けて下がる斜面、該吸殻収容部の前側から後側に向けて下がる斜面、該吸殻収容部の後側と前側と平行に稜線を備えた山型の斜面の何れかを形成したガイド部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の自動車用灰皿。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−42347(P2011−42347A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−211043(P2009−211043)
【出願日】平成21年8月24日(2009.8.24)
【出願人】(000150970)株式会社ナポレックス (14)
【Fターム(参考)】