説明

自動運転装置

【課題】車両の周囲の物体の衝突を回避することが可能な自動運転装置を提供する。
【解決手段】自動運転装置100は、運転開始位置から目標位置へ車両を自動運転する自動運転制御部10と、自動運転中に車両に接近する物体を検知する検知部11と、自車位置から目標位置まで移動するのに要する第1完了時間と、自車位置から運転開始位置まで戻るのに要する第2完了時間と、を演算する完了時間演算部31と、自車位置から目標位置まで移動した場合に物体が車両に衝突するまでの第1衝突予測時間と、自車位置から運転開始位置まで戻った場合に物体が車両に衝突するまでの第2衝突予測時間と、を演算する衝突予測時間演算部32と、第1完了時間と第1衝突予測時間と第2完了時間と第2衝突予測時間とに基づいて駐車位置を設定する駐車位置設定部41と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両を自動で運転する自動運転装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両を自動で運転する技術として、例えば特許文献1に記載の車両制御装置がある。この車両制御装置は、車両を自動走行させる自動走行装置と、障害物を検出した場合に車両を自動制動する自動制動装置とを備えて構成される。自動走行装置は障害物検出部と衝突余裕判定部と走行出力設定部とを備えて構成される。障害物検出部により車両後方の障害物を検出された場合に、衝突余裕判定部が障害物と車両との衝突予測時間に基づき、衝突までの余裕を判定する。走行出力設定部は、判定された余裕に基づき車両の走行出力を設定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−143337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、車両後方の障害物は停止している状態を想定している。このため、車両の進行方向に障害物が存在する場合であっても車両の走行状態を制御することにより衝突を回避したり、衝突時の衝撃を低減したりすることができる。しかしながら、障害物が車両に接近してくる移動体である場合には、仮に車両を停車しても、当該停車した位置によっては接近してくる移動体に対して危険な位置となり、衝突の回避や衝突時の衝撃の低減が十分でない場合がある。
【0005】
本発明の目的は、上記問題に鑑み、車両の周囲に存在する物体が移動体であっても、衝突を回避することが可能な車両を自動で運転する自動運転装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明に係る自動運転装置の特徴構成は、所定の位置から予め設定された目標位置へ車両を自動運転する自動運転制御部と、前記自動運転中に前記車両に接近する物体を検知する検知部と、前記物体を検知した際に、自車位置から前記目標位置まで前記自動運転で移動するのに要する第1完了時間と、前記自車位置から前記自動運転を開始した運転開始位置まで前記自動運転で戻るのに要する第2完了時間と、を演算する完了時間演算部と、前記自車位置から前記目標位置まで前記自動運転で移動した場合に前記物体が前記車両に衝突するまでの第1衝突予測時間と、前記自車位置から前記運転開始位置まで前記自動運転で戻った場合に前記物体が前記車両に衝突するまでの第2衝突予測時間と、を演算する衝突予測時間演算部と、前記第1完了時間と前記第1衝突予測時間と前記第2完了時間と前記第2衝突予測時間とに基づいて、前記車両の駐車位置を設定する駐車位置設定部と、を備えている点にある。
【0007】
このような特徴構成とすれば、車両の自動運転中において、車両の周囲の物体との衝突を予測し、目標位置まで移動した方が良いのか、或いは運転開始位置まで戻った方が良いのかを適切に判定し、衝突を回避するための駐車位置を容易に設定することができる。このため、車両に接近する物体との衝突を回避することができる。したがって、車両の周囲の安全を確保すると共に、他の交通の妨げとならないように自動運転することが可能となる。
【0008】
また、前記駐車位置設定部は、前記第1完了時間と前記第1衝突予測時間との差分、及び前記第2完了時間と前記第2衝突予測時間との差分に基づいて前記車両の駐車位置を設定すると好適である。
【0009】
このような構成とすれば、夫々の差分に基づき、目標位置まで移動した方がより安全であるのか、或いは運転開始位置まで戻った方がより安全であるのかを適切に判定することができる。したがって、物体との衝突の可能性をより低くすることが可能となる。
【0010】
また、前記車両が退避する退避位置を設定する退避位置設定部を備え、前記完了時間演算部が、前記自車位置から前記退避位置まで前記自動運転で移動するのに要する第3完了時間を演算し、前記駐車位置設定部が、前記第3完了時間も用いて前記車両の駐車位置を設定すると好適である。
【0011】
このような構成とすれば、目標位置及び運転開始位置の双方に戻ることができるか否かに拘らず、より安全な退避位置がある場合には、当該退避位置に車両を移動させることができる。したがって、物体との衝突を確実に回避することができる。
【0012】
また、前記衝突予測時間演算部が、前記自車位置から前記退避位置まで前記自動運転で移動した場合に前記物体が前記車両に衝突するまでの第3衝突予測時間を演算し、前記駐車位置設定部が、前記第3完了時間と前記第3衝突予測時間との差分も用いて前記車両の駐車位置を設定すると好適である。
【0013】
このような構成とすれば、差分に基づき、退避位置まで移動した方がより安全であるのかを適切に判定することができる。したがって、物体との衝突の可能性をより低くすることが可能となる。
【0014】
また、前記車両の周囲の情景を撮影した撮影画像を取得する撮像画像取得部を備え、前記退避位置設定部が、前記撮影画像から前記退避位置を設定すると好適である。
【0015】
このような構成とすれば、適切な退避位置を自動運転中に見つけて、車両を退避位置に移動させることができる。したがって、物体との衝突の可能性を更に低くすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】自動運転装置を備えた車両を示した図である。
【図2】車両の位置を模式的に示した図である。
【図3】自動運転装置の構成を模式的に示したブロック図である。
【図4】車両に備えられるミリ波レーダの検出範囲を模式的に示した図である。
【図5】第1衝突予測時間を示した図である。
【図6】第2衝突予測時間を示した図である。
【図7】第3衝突予測時間を示した図である。
【図8】自動運転装置の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。本発明に係る自動運転装置100は、図1に示されるような車両1を自動で予め設定された目標位置に移動させる際、車両1の周囲の物体との接触を防止する機能を備えている。本実施形態では、自動運転装置100は車両1に備えられ、車外のユーザが所持するリモコン3により操作される。本自動運転装置100によれば、リモコン3による操作は自動運転を開始させる際に押下されるだけであり、目標位置への移動が完了するまでユーザはリモコン3を操作することを要しない。また、ユーザは車両1に乗車していても乗車していなくても良い。
【0018】
本実施形態では、図2に示されるような車両1を家Hに隣接する駐車スペースSから家Hの前の道路Rに駐車する場合の例を挙げて説明する。また、図3には、自動運転装置100の構成を模式的に示したブロック図が示される。以下では、図2及び図3を用いて、本発明に係る自動運転装置100を説明する。
【0019】
自動運転装置100は、自動運転制御部10、検知部11、自車位置情報取得部12、撮像画像取得部13、移動速度演算部14、目標位置記憶部21、開始位置記憶部22、自車位置記憶部23、退避位置設定部24、完了時間演算部31、衝突予測時間演算部32、差分演算部33、駐車位置設定部41の各機能部を備えて構成される。各機能部は、CPUを中核部材として車両1を自動で運転する際、車両1の周囲に存在する物体と接触しないようにする種々の処理を行うための上述の機能部がハードウェア又はソフトウェア或いはその両方で構築されている。
【0020】
自動運転制御部10は、所定の位置から予め設定された目標位置p1へ車両1を自動運転する。所定の位置とは、自動運転を開始した運転開始位置p2が相当する。本実施形態では、運転開始位置p2は図2(b)における駐車スペースSに駐車された位置が相当する。運転開始位置p2は、開始位置記憶部22に記憶される。また、目標位置p1は、図2(a)における家Hの前の位置が相当する。目標位置p1は、目標位置記憶部21に記憶される。これらの運転開始位置p2及び目標位置p1は、車両1が少なくとも目標位置p1に達するまで開始位置記憶部22及び目標位置記憶部21に記憶される。自動運転装置100は、車両1を自動で運転開始位置p2から前進させ、その後、後退させて目標位置p1に駐車させる。この自動運転については、上述の目標位置記憶部21に記憶された目標位置p1及び後述する自車位置情報取得部12により取得された自車位置情報に基づき行われるが、公知であるので説明は省略する。
【0021】
検知部11は、自動運転中に車両1に接近する物体を検知する。自動運転は、上述のように自動運転制御部10により行われる。検知部11は、例えばミリ波レーダを用いると好適である。このミリ波レーダは、30〜50mを検知距離とし、30〜40°を検知角度として物体を検知することができる。このようなミリ波レーダが、車両1に複数搭載されている。例えば、車両1の前部には、図4に示すように、直進方向E1及び左右の斜め前方E2、E3を検出範囲Eとする3つのミリ波レーダが搭載される。これによって、前方に存在する物体について良好に検出することができる。また、車両1の後部には、後方E4及び左右の斜め後方E5、E6を検出範囲Eとする3つのミリ波レーダが搭載される。これにより、車両1の後方に存在する物体も良好に検出することができる。検知部11は、このようなミリ波レーダを備えて構成され、車両1に接近する物体を検知する。検知部11による検知結果は、後述する自車位置情報取得部12及び移動速度演算部14に伝達される。なお、検知部11として、カメラを用いることもできる。この場合には、カメラにより撮影された映像を画像認識することにより、物体を検出する。
【0022】
自車位置情報取得部12は、自車位置情報を取得する。自車位置情報には、車両1の位置や車両1が向いている方位を示す情報が含まれる。車両1の位置を示す情報は、例えば車両1に備えられるナビゲーションシステムに用いられるGPSアンテナを介して衛星から取得することが可能である。また、車両1の方位を示す情報は、例えば車両1に備えられる磁気センサから取得することが可能である。このような自車位置情報は、上述の自動運転制御部10に伝達され、車両1の自動運転の制御に用いられると共に、後述する自車位置記憶部23にも伝達される。
【0023】
自車位置記憶部23は、検知部11により車両1に接近する物体が検知された際の当該車両1の現在位置を記憶する。上述のように検知部11の検知結果は自車位置情報取得部12に伝達される。自車位置情報取得部12は、検知部11から車両1に接近する物体を検知した検知結果が伝達された場合に、車両1が現在存在する位置情報を、物体を検知した自車位置として記憶する。本実施形態では、物体を検知した際の自車位置を記憶する。
【0024】
移動速度演算部14は、検知部11により検知された車両1に接近する物体の移動速度を演算する。このような移動速度は、所定時間内における物体の移動距離を演算し、当該演算結果に基づき演算することが可能である。移動速度演算部14により演算された物体の移動速度は、後述する衝突予測時間演算部32に伝達される。
【0025】
撮像画像取得部13は、車両1の周囲の情景を撮影した撮影画像を取得する。このような撮像画像取得部13は車載カメラにより構成すると好適である。車載カメラは、車両1の少なくとも前部及び後部に設けられる。したがって、車両1の周囲の情景には、少なくとも車両1の前方の情景及び車両1の後方の情景が含まれる。撮像画像取得部13は、このような情景を撮影した撮影画像を取得する。撮像画像取得部13により取得された撮影画像は、後述する退避位置設定部24に伝達される。
【0026】
退避位置設定部24は、車両1が退避する退避位置p3を設定する。車両1が退避する退避位置p3とは、例えば図2(c)に示されるように、車両1の自動運転中において、車両1の後方から他の車両50が接近している場合に、当該車両50との衝突を避けるために車両1が退避する場所である。図2(c)においては、符号p3を付して示される。
【0027】
本実施形態では、退避位置設定部24は、撮影画像から退避位置p3を設定する。すなわち、撮像画像取得部13により取得された撮影画像から公知の画像処理を用いて、車両1が退避可能なスペースを検出し、設定する。退避位置設定部24は、このような退避位置p3を記憶しておく。
【0028】
完了時間演算部31は、物体を検知した際に、第1完了時間t1、第2完了時間t2、及び第3完了時間t3を演算する。第1完了時間t1は、自車位置から目標位置p1まで自動運転で移動するのに要する時間である。例えば、検知部11が図2(a)における符号p0を付した位置で物体を検知したとすると、第1完了時間t1は目標位置p1まで移動を完了するのに必要な時間であり、経路L1に沿って目標位置p1までそのまま自動運転で移動するのに必要な時間が相当する。以下では、理解を容易にするために、自車位置に符号p0を付して説明する。自車位置p0は自車位置記憶部23に記憶され、目標位置p1は目標位置記憶部21に記憶されている。よって、完了時間演算部31は、自車位置記憶部23及び目標位置記憶部21を参照して自車位置p0及び目標位置p1を取得し、第1完了時間t1を演算する。
【0029】
第2完了時間t2は、自車位置p0から自動運転を開始した運転開始位置p2まで自動運転で戻るのに要する時間である。第2完了時間t2は、図2(b)に示されるように自車位置p0から運転開始位置p2まで移動を完了するのに必要な時間であり、経路L2に沿って運転開始位置p2まで自動運転で戻るのに必要な時間が相当する。自車位置p0は自車位置記憶部23に記憶され、運転開始位置p2は開始位置記憶部22に記憶されている。よって、完了時間演算部31は、自車位置記憶部23及び開始位置記憶部22を参照して自車位置p0及び運転開始位置p2を取得し、第2完了時間t2を演算する。
【0030】
第3完了時間t3は、自車位置p0から退避位置p3まで自動運転で移動するのに要する時間である。第3完了時間t3は、図2(c)に示されるように自車位置p0から退避位置p3まで移動を完了するのに必要な時間であり、経路L3に沿って退避位置p3まで自動運転で戻るのに必要な時間が相当する。自車位置p0は自車位置記憶部23に記憶され、退避位置p3は退避位置設定部24に記憶されている。よって、完了時間演算部31は、自車位置記憶部23及び退避位置設定部24を参照して自車位置p0及び退避位置p3を取得し、第3完了時間t3を演算する。完了時間演算部31により求められた第1完了時間t1、第2完了時間t2、及び第3完了時間t3は後述する差分演算部33に伝達される。
【0031】
衝突予測時間演算部32は、第1衝突予測時間TTC1、第2衝突予測時間TTC2、及び第3衝突予測時間TTC3を演算する。第1衝突予測時間TTC1は、図5に示されるように、自車位置p0から目標位置p1まで自動運転で移動した場合に物体(車両50)が車両1に衝突するまでの時間を予測したものである。自車位置p0は自車位置記憶部23に記憶され、目標位置p1は目標位置記憶部21に記憶されている。また、第1衝突予測時間TTC1を演算するにあたり、車両50の移動方向及び移動速度も必要となるが、これは上述の移動速度演算部14から伝達される。よって、衝突予測時間演算部32は、移動速度演算部14から伝達される車両50の移動速度と、自車位置記憶部23及び目標位置記憶部21を参照して取得した自車位置p0及び目標位置p1と、により第1衝突予測時間TTC1を演算する。ここで、第1衝突予測時間TTC1を演算するにあたり、車両50が車両1に衝突しないこともあり得る。係る場合には、第1衝突予測時間TTC1が無いものとして扱うと好適である。
【0032】
第2衝突予測時間TTC2は、図6に示されるように、自車位置p0から運転開始位置p2まで自動運転で戻った場合に物体(車両50)が車両1に衝突するまでの時間を予測したものである。自車位置p0は自車位置記憶部23に記憶され、運転開始位置p2は開始位置記憶部22に記憶されている。また、第2衝突予測時間TTC2を演算するにあたり、車両50の移動方向及び移動速度も必要となるが、これは上述の移動速度演算部14から伝達される。よって、衝突予測時間演算部32は、移動速度演算部14から伝達される車両50の移動速度と、自車位置記憶部23及び開始位置記憶部22を参照して取得した自車位置p0及び運転開始位置p2と、により第2衝突予測時間TTC2を演算する。ここで、第2衝突予測時間TTC2を演算するにあたり、車両50が車両1に衝突しないこともあり得る。係る場合には、第2衝突予測時間TTC2が無いものとして扱うと好適である。
【0033】
第3衝突予測時間TTC3は、図7に示されるように、自車位置p0から退避位置p3まで自動運転で移動した場合に物体(車両50)が車両1に衝突するまでの時間を予測したものである。自車位置p0は自車位置記憶部23に記憶され、退避位置p3は退避位置設定部24に記憶されている。また、第3衝突予測時間TTC3を演算するにあたり、車両50の移動方向及び移動速度も必要となるが、これは上述の移動速度演算部14から伝達される。よって、衝突予測時間演算部32は、移動速度演算部14から伝達される車両50の移動速度と、自車位置記憶部23及び退避位置設定部24を参照して取得した自車位置p0及び退避位置p3と、により第3衝突予測時間TTC3を演算する。ここで、第3衝突予測時間TTC3を演算するにあたり、車両50が車両1に衝突しないこともあり得る。係る場合には、第3衝突予測時間TTC3が無いものとして扱うと好適である。衝突予測時間演算部32により求められた第1衝突予測時間TTC1、第2衝突予測時間TTC2、及び第3衝突予測時間TTC3は後述する差分演算部33に伝達される。
【0034】
差分演算部33は、第1差分値m1、第2差分値m2、及び第3差分値m3を演算する。第1差分値m1とは第1完了時間t1と第1衝突予測時間TTC1との差分である。第2差分値m2とは第2完了時間t2と第2衝突予測時間TTC2との差分である。第3差分値m3とは第3完了時間t3と第3衝突予測時間TTC3との差分である。第1完了時間t1、第2完了時間t2、及び第3完了時間t3は、完了時間演算部31から伝達される。第1衝突予測時間TTC1、第2衝突予測時間TTC2、及び第3衝突予測時間TTC3は、衝突予測時間演算部32から伝達される。差分演算部33は、第1完了時間t1、第2完了時間t2、第3完了時間t3、第1完了時間t1、第2完了時間t2、及び第3衝突予測時間TTC3を用いて、第1差分値m1、第2差分値m2、及び第3差分値m3を演算する。
【0035】
駐車位置設定部41は、第1完了時間t1と第1衝突予測時間TTC1と第2完了時間t2と第2衝突予測時間TTC2と第3完了時間t3と第3衝突予測時間TTC3とに基づいて車両1の駐車位置を設定する。特に、本実施形態では、駐車位置設定部41は、第1差分値m1、第2差分値m2、及び第3差分値m3に基づいて車両1の駐車位置を設定する。具体的には、第1差分値m1が正の値であれば、すなわち、第1衝突予測時間TTC1が第1完了時間t1よりも大きい場合には、駐車位置設定部41は車両1の駐車位置を目標位置p1に設定する。この場合、車両50が車両1に接近してくるまでに、目標位置p1への自動運転を終了することができるからである。
【0036】
第1差分値m1がゼロ以下であり、第2差分値m2が正の値であれば、すなわち、第1衝突予測時間TTC1が第1完了時間t1以下であり、第2衝突予測時間TTC2が第2完了時間t2よりも大きい場合には、駐車位置設定部41は車両1の駐車位置を運転開始位置p2に設定する。この場合、車両50が車両1に接近してくるまでに、運転開始位置p2へ戻ることができるからである。
【0037】
第2差分値m2がゼロ以下であり、第3差分値m3が正の値であれば、すなわち、第2衝突予測時間TTC2が第2完了時間t2以下であり、第3衝突予測時間TTC3が第3完了時間t3よりも大きい場合には、駐車位置設定部41は車両1の駐車位置を退避位置p3に設定する。この場合、車両50が車両1に接近してくるまでに、退避位置p3へ退避することができるからである。
【0038】
このように本発明に係る自動運転装置100によれば、車両1の自動運転中において、車両1の周囲の物体との衝突を予測し、目標位置p1まで移動した方が良いのか、或いは運転開始位置p2まで戻った方が良いのか、更には退避位置p3まで移動した方が良いのかを適切に判定し、衝突を回避するための駐車位置を容易に設定することができる。このため、車両1に接近する物体との衝突を回避することができる。したがって、車両1の周囲の安全を確保すると共に、他の交通の妨げとならないように自動運転することが可能となる。
【0039】
次に、本自動運転装置100により行われる処理について図8のフローチャートを用いて説明する。自動運転制御部10による自動運転中でなければ(ステップ#01:No)、自動運転装置100は処理を行わない。自動運転制御部10による自動運転中であれば(ステップ#01:Yes)、検知部11が車両1に接近する物体の検知を開始する。
【0040】
検知部11が物体を検知すると(ステップ#02:Yes)、第1衝突予測時間TTC1が第1完了時間t1よりも大きいか否かの判定が行われる。第1衝突予測時間TTC1が第1完了時間t1よりも大きい場合には(ステップ#03:Yes)、駐車位置設定部41は目標位置p1を駐車位置に設定する(ステップ#04)。車両1が目標位置p1に達したら、自動運転を終了する(ステップ#05:Yes)。車両1が目標位置p1に達していない場合には(ステップ#05:No)、ステップ#02に戻り処理が継続される。一方、ステップ#02において、検知部11のより物体が検知されない場合に(ステップ#02:No)、ステップ#05以降の処理が行われる。
【0041】
また、ステップ#03において、第1衝突予測時間TTC1が第1完了時間t1よりも大きくない場合には(ステップ#03:No)、第2衝突予測時間TTC2が第2完了時間t2よりも大きいか否かの判定が行われる。第2衝突予測時間TTC2が第2完了時間t2よりも大きい場合には(ステップ#06:Yes)、駐車位置設定部41は運転開始位置p2を駐車位置に設定する(ステップ#07)。車両1に接近する物体が当該車両1を回避したら(ステップ#08:Yes)、自動運転制御部10は目標位置p1への自動運転を再開する(ステップ#09)。その後、ステップ#05から処理が継続される。一方、車両1に接近する物体が当該車両1を回避しない場合には(ステップ#08:No)、処理が保留される。
【0042】
また、ステップ#06において、第2衝突予測時間TTC2が第2完了時間t2よりも大きくない場合には(ステップ#06:No)、第3衝突予測時間TTC3が第3完了時間t3よりも大きいか否かの判定が行われる。第3衝突予測時間TTC3が第3完了時間t3よりも大きい場合には(ステップ#10:Yes)、駐車位置設定部41は退避位置p3を駐車位置に設定する(ステップ#11)。その後、ステップ#08から処理が継続される。一方、第3衝突予測時間TTC3が第3完了時間t3よりも大きくない場合には(ステップ#10:No)、車両1は自動運転を中断する(ステップ#12)。その後、ステップ#08から処理が継続され、物体が回避されるまで車両1はその場で停車する(ステップ#08:No)。本自動運転装置100は、このようなフローに基づき処理が行われる。
【0043】
〔その他の実施形態〕
上記実施形態では、駐車位置設定部41が、第1完了時間t1と第1衝突予測時間TTC1との第1差分値m1、第2完了時間t2と第2衝突予測時間TTC2との第2差分値m2、及び第3完了時間t3と第3衝突予測時間TTC3との第3差分値m3において、第1差分値m1、第2差分値m2、第3差分値m3の順番で判定を行い、車両1の駐車位置を設定するとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。例えば駐車位置設定部41が、第1差分値m1、第2差分値m2、第3差分値m3の順番とは異なる優先順位で車両1の駐車位置を設定することも可能である。或いは、第1差分値m1、第2差分値m2、及び第3差分値m3のうち、最も小さい差分値に対応する位置に駐車位置を設定する構成とすることも当然に可能である。
【0044】
更には、第1衝突予測時間TTC1が第1完了時間t1よりも大きいか否かを判定し、第1衝突予測時間TTC1が第1完了時間t1よりも大きくない場合に、第2差分値m2及び第3差分値m3のうち、小さい方の差分値に係る位置に駐車位置を設定する構成とすることも当然に可能である。
【0045】
上記実施形態では、駐車位置設定部41が退避位置p3も考慮して駐車位置を設定するとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。駐車位置設定部41は、目標位置p1及び運転開始位置p2の何れか一方に駐車位置を設定する構成とすることも当然に可能である。係る場合、撮像画像取得部13や退避位置設定部24を備えずに自動運転装置100を構成することが可能である。また、この場合には、第1差分値m1及び第2差分値m2のうち小さい方の差分値に係る位置を駐車位置として設定することも可能であるし、第1差分値m1及び第2差分値m2に優先順位を設けて設定する構成とすることも可能である。
【0046】
上記実施形態では、撮像画像取得部13が車両1の周囲の情景を撮影した撮影画像を取得し、退避位置設定部24が撮像画像取得部13により取得された撮影画像から退避位置p3を設定するとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。例えば、車両1がナビゲーションシステムを備えている場合には、退避位置設定部24はナビゲーションシステムが有する地図データを参照して退避位置p3を設定することも可能である。
【0047】
上記実施形態では、車両1を家Hに隣接する駐車スペースSから家Hの前の道路Rに駐車する場合の例を挙げて説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。車両1を家Hの前の道路Rに駐車した状態から、家Hに隣接する駐車スペースSに駐車する場合に適用することも可能である。更には、家Hの近辺に限定されることはなく、目標位置p1と運転開始位置p2とが設定されている各種のケースにおいて適用することが可能である。
【0048】
上記実施形態では、第1完了時間t1、第2完了時間t2、第3完了時間t3、第1衝突予測時間TTC1、第2衝突予測時間TTC2、及び第3衝突予測時間TTC3に基づいて駐車位置を設定するとした。例えば、物体を検知した際の時刻を基準として上記夫々の時間を用いて夫々の位置に移動した場合の時刻を演算し、当該演算された時刻に基づいて物体との衝突を回避する駐車位置を設定することも可能である。また、第1完了時間t1、第2完了時間t2、第3完了時間t3、第1衝突予測時間TTC1、第2衝突予測時間TTC2、及び第3衝突予測時間TTC3の演算にあたり、夫々の演算中に車両1や他の車両50の移動距離を考慮して行うことも可能である。更には、演算処理が迅速に完了する場合には、上述の移動距離を無視して演算することも当然に可能である。
【0049】
上記実施形態では、検知部11は車両1に搭載されているものとして説明したが、これに限られるものではない。例えば、検知部11を車両1ではなく道路側に備え、この検知部11で検出した物体の情報を無線通信で車両1に伝達して構成することも可能である。
【0050】
本発明は、車両を自動で運転する自動運転装置に用いることが可能である。
【符号の説明】
【0051】
10:自動運転制御部
11:検知部
13:撮像画像取得部
24:退避位置設定部
31:完了時間演算部
32:衝突予測時間演算部
41:駐車位置設定部
t1:第1完了時間
t2:第2完了時間
t3:第3完了時間
p0:自車位置
p1:目標位置
p2:運転開始位置
p3:退避位置
TTC1:第1衝突予測時間
TTC2:第2衝突予測時間
TTC3:第3衝突予測時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の位置から予め設定された目標位置へ車両を自動運転する自動運転制御部と、
前記自動運転中に前記車両に接近する物体を検知する検知部と、
前記物体を検知した際に、自車位置から前記目標位置まで前記自動運転で移動するのに要する第1完了時間と、前記自車位置から前記自動運転を開始した運転開始位置まで前記自動運転で戻るのに要する第2完了時間と、を演算する完了時間演算部と、
前記自車位置から前記目標位置まで前記自動運転で移動した場合に前記物体が前記車両に衝突するまでの第1衝突予測時間と、前記自車位置から前記運転開始位置まで前記自動運転で戻った場合に前記物体が前記車両に衝突するまでの第2衝突予測時間と、を演算する衝突予測時間演算部と、
前記第1完了時間と前記第1衝突予測時間と前記第2完了時間と前記第2衝突予測時間とに基づいて、前記車両の駐車位置を設定する駐車位置設定部と、
を備える自動運転装置。
【請求項2】
前記駐車位置設定部は、前記第1完了時間と前記第1衝突予測時間との差分、及び前記第2完了時間と前記第2衝突予測時間との差分に基づいて前記車両の駐車位置を設定する請求項1に記載の自動運転装置。
【請求項3】
前記車両が退避する退避位置を設定する退避位置設定部を備え、
前記完了時間演算部が、前記自車位置から前記退避位置まで前記自動運転で移動するのに要する第3完了時間を演算し、
前記駐車位置設定部が、前記第3完了時間も用いて前記車両の駐車位置を設定する請求項1又は2に記載の自動運転装置。
【請求項4】
前記衝突予測時間演算部が、前記自車位置から前記退避位置まで前記自動運転で移動した場合に前記物体が前記車両に衝突するまでの第3衝突予測時間を演算し、
前記駐車位置設定部が、前記第3完了時間と前記第3衝突予測時間との差分も用いて前記車両の駐車位置を設定する請求項3に記載の自動運転装置。
【請求項5】
前記車両の周囲の情景を撮影した撮影画像を取得する撮像画像取得部を備え、
前記退避位置設定部が、前記撮影画像から前記退避位置を設定する請求項3又は4に記載の自動運転装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−43475(P2013−43475A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180709(P2011−180709)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】