説明

自然肛門または人工肛門の閉鎖システム

【課題】 簡単な構造で挿着が容易であり、腸の粘膜にかかる圧力負荷をできるだけ小さくした自然又は人工の肛門の閉鎖装置を提供できる。
【解決課題】 本発明は自然肛門または人工肛門の閉鎖システムに関係し、ほぼドーナツ型の構造をもつ膨張可能なバルーンを具備し、バルーンが折り重なる平らな管状セクションから構成され、その両端(13、14)が互いに同軸上に延びるとともに、スリーブに繋げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自然肛門または人工肛門の閉鎖システムに関係する。
【背景技術】
【0002】
人工肛門形成の医療的な管理は相変わらず日々継続する問題のままである。非常に一般的なある方法は、成形接着袋で使用する容器に便を回収することである。このような体外での保管は臭いや汚損の不快さ、漏洩のおそれといった問題を伴う。
【0003】
体外での回収システムに加えて、体内での保管とその後の便の慎重な取り出しを目的としたシールが開発された。その取り扱いの難しさのために、この回収システムはそれほど広く受け入れられなかった。問題は本当に密封してしまうことであった。このシールは変化する体内の腹圧には対応しきれなかった。
【0004】
便失禁を患う人は同様な問題を抱える。ここでの目的は、コントロールできない排便を防ぐために適切な装具で肛門を密封することである。他方で、自発的な排便を促すまたは助けなければならない。この目的で使う装具には必ず肛門に挿入するためのホースが付いているが、柔軟性が非常に限られているために、ほぼ必ず痛みを生じ、ときには傷つくこともある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記説明した先行技術の欠点から生じる問題が、構造が複雑ではなく、簡単に埋め込め、とり扱いしやすく、さらに組織、特に腸の粘膜にかかる圧力負荷をできるだけ小さくした自然または人工的な腸の排出口を作るという発明のきっかけであった。最後にシステムは高価でないことが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この問題の解決策は、二次元の表面をもつホースセグメントから成り、ドーナツ型の構造となるようにした可膨張性バルーンによって得る。ホースセグメントは裏返され、それによってその両端が互いに重なってほぼ同軸上に延び、両端(各々)がスリーブに接続される。発明の有利な改良点は、従属する請求項に記載する。
【0007】
バルーンは事前成形して製作されるため、高い過圧力で膨張させる必要がなく、大気圧と比べて数ミリバール高い圧力で膨張させればよい。そのため、膨張した状態でも柔軟性が残り、自然な体の状態に順応することができ、例えば腸内での急な曲げなどにも追従できる。腸粘膜に対する圧力は必ずほぼ一定であり、バルーンの内圧にのみ一致する。バルーンがガイドシャフトを持たないことは非常に重要で、そのため、ガイドシャットのようなエレメントは、径の小さいものでも全く腸に出っ張ることがない。ガイドシャフトが存在しない本発明では、円環体の内壁がバルーン自体によって形成され、そのため柔軟性が高い。
【0008】
バルーンの両端は、円環体の同じ片側(ホースの裏返しのため)に、具体的には、人体の内側から離れた側に位置する。そこでホース(バルーンの両端)を一または複数のスリーブに固着するが、スリーブはバルーンを差し渡って突き出ることはなく、膨張したバルーンよりも短く、すなわちまだ裏返していない元のホースの長さの半分より短く、好ましくはこのホースの元の長さ(全長)の四分の一よりも短く、特に好ましくはこの長さの六分の一よりも短くする。
【0009】
使用中、このスリーブは人体の外側に置く、または腹壁からほんのわずかに突き出る、すなわちちょうど括約筋のところまで延びる位いとするのが好ましい。この方法では、肛門またはストーマが絶えず引っ張られないため、着け心地を大幅に改善できる。事前成形しているため、互いに同心上にあるバルーンの両端または接続ポートは、バルーン自体の先細りしたネック部位を形作り、例えばバルーン自体は肛門から直腸膨大部まで延びて、そこにはドーナツ型に膨らむバルーンを展開する余地があるので、そのまま固定される。
【0010】
ネック部位は内圧が低いためそれ自体に柔軟性が残り、断面方向に圧縮できる。ホースの一端が他端よりも狭いため、バルーン自体に繋がるネック部位は、一端裏返せば同軸上の配列に予め決まり、バルーンのドーナツ型の内部からスリーブ側の端の接続部までの通路を形成する環状の隙間さえ残る。
【0011】
事前成形により、膨張させたバルーンの前側をラッパ型にしたことで、流体、便などが通る場合、それが通りやすくなる。
【0012】
他方で、バルーンの内部と連通しないために圧力が全くない中心の管腔を、チューブまたはホース(排液)およびカテーテル、もしくはホース(排液)またはカテーテルなどの挿入に使用できる。この点に関し、単壁の出口ホースが収まっていないまたは伸びていない膨張したバルーン部分を、その長さがその直径よりも大きくなるように選んだ場合、中心の圧力のない内部の管腔を円環体内部の圧力で平らに押しつぶして、二重のホースをそこで接するようにすることは有利である。二重ホースセグメントのうち押しつぶされた内側のホースが、さらに別に挿入される物体に締め付け圧力をかけ、それによって摩擦係合で別に挿入された物体をしっかり保持する。
【0013】
さらに、この層になって接したホースは、それぞれの縁領域に有限半径をもつ2つの折山を形成し、中心の管腔が自由であれば、すなわち物体が挿入されていなければ、そこに2つの狭い毛細管形の貫通路が残るので、例えば腸の内圧の上昇は自然に消失する。
【0014】
発明の装具は自然肛門の一部にのみ挿入するため、括約筋に対して作用する内部の圧力は、括約筋に反応を促すことによってこれを運動させることができる。このような運動はバルーンの膨張と収縮を交互にして強化できる。
【0015】
他の場合には、中心の管腔は、短い、できれば永久に固定した挿入リングセグメントで開いたままにできる。この場合、シーリングエレメント、具体的には別々の可膨張性バルーンを採用して、中心の管腔のこのリングの後ろに配設するのが賢明である。
【0016】
薄壁の可撓性で可膨張性のポリマーでできたバルーンを、膨張させた状態のその外寸に合わせて事前に成形する。バルーンは、バルーンの外皮を展開するためにのみ膨張する。バルーンに使う材料は、殆んど弾力性がないため、バルーンはごくわずかにしか伸張しない。
【0017】
使用するポリマーは、ポリウレタン、ポリウレタンとポリフッ化ビニルのブレンド、または同様なポリウレタンベースの材料が好ましい。この材料は中性であるため、腸の粘膜に対して有害な影響をもつことは絶対にあり得ない。
【0018】
その最も単純な実施例では、プラグに繋ぐ接続ホースポートをバルーンに備える。プラグを腹壁に挿入したら、バルーンはプラグにある溝型通路を通して展開され、その外壁が腸壁に接触することになる。バルーンを腹壁から腸に挿入しやすくするために、プラグには潰れたバルーンを収容できる空胴を備える。
【0019】
プラグ自体はそれ自体周知のシーリングキャップに凹凸形状のかみ合わせで接続するのが好ましく、シーリングキャップはプラグを腹壁に挿入した後に腹壁に接着できる。
【0020】
便を回収する回収袋はプラグの通路に接続できる。
【0021】
ただし、発明の主題の好適な実施例は、プラグは入れ子式に取り付けられる2個のスリーブを具備することと、バルーンは口をそれぞれスリーブの各1個に接続する2個の接続ホースポートを有することを供する。この場合、一方の口が外側スリーブに合う径をもつとともに、もう一方の口が内側スリーブに合う径をもつと好都合である。2つの口はともにスリーブの壁に接着できる。外側スリーブに繋げる口をさらにスリーブの外壁に固着し、内側スリーブに繋げる口を内側スリーブの内壁に接着する。
【0022】
プラグに空胴を作るために、内側スリーブを外側スリーブよりも短く実施して、この領域にある空胴が潰れたバルーンを収容するのに十分な大きさとする。
【0023】
別の展開では、内側スリーブはその内部に止め弁を備えることができる。これは流体を閉塞した嚢内に留める逆止め弁にすることもできる。さらに、ガス透過性として実施するカーボンフィルターを内側スリーブに取り付けることができる。生成される気体をこの手段(カーボンフィルタ)によって逸らすことができる。
【0024】
このように構成される閉鎖システムは、流体が外部に逃げない良好なシールを作り出す。また、回収袋などが不要になる。便を取り出すには、内側スリーブを外側スリーブから非常に簡単な方法で引き出せばよく、バルーン自体を外側スリーブの開口から引っ張ることができる。バルーンを適切な寸法にすれば、便の回収容器として使うことができる。
【0025】
バルーンのサイズがこの目的には十分でない場合、便専用の大型の回収容器を使用でき、これを第1アダプタでシーリングキャップに、第2アダプタで内側スリーブに接続できる。外側スリーブに押し込み力でかみ合わせて挿入される内側スリーブは、第2アダプタを介して、外側スリーブから引き出される。その過程で一緒にバルーンを導き、バルーンが全部引っ張られたらシーリングキャップから外側スリーブも引き出される。このように便は回収容器に残らず移すことができる。
【0026】
本発明に基づく別の特性、特徴、利点および効果は、以下の発明のいくつかの好適な実施例の説明と図面から明らかになるであろう。
【発明の効果】
【0027】
バルーンは事前成形して製作されるため、高い過圧力で膨張させる必要がなく、大気圧と比べて数ミリバール高い圧力で膨張させればよい。そのため、膨張した状態でも柔軟性が残り、自然な体の状態に順応することができ、例えば腸内での急な曲げなどにも追従できる。腸粘膜に対する圧力は必ずほぼ一定であり、バルーンの内圧にのみ一致する。バルーンがガイドシャフトを持たないことは非常に重要で、そのため、ガイドシャットのようなエレメントは、径の小さいものでも全く腸に出っ張ることがない。ガイドシャフトが存在しない本発明では、円環体の内壁がバルーン自体によって形成され、そのため柔軟性が高い。
このように構成される閉鎖システムは、流体が外部に逃げない良好なシールを作り出す。また、回収袋などが不要になる。便を取り出すには、内側スリーブを外側スリーブから非常に簡単な方法で引き出せばよく、バルーン自体を外側スリーブの開口から引っ張ることができる。バルーンを適切な寸法にすれば、便の回収容器として使うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
[実施形態1]
【0029】
図1〜図8は本発明の第1実施形態を示すものである。
【実施例1】
【0030】
図1に概略的に表されるのは、人工肛門形成で使用するための閉鎖システム1、具体的にはプラグ2が入れ子式に取り付けられる2個のスリーブ3および4からなるある実施例に基づく閉鎖システムである。内側スリーブ4は外側スリーブ3に隣り合って接触した状態で挿入される。このために、内側スリーブ4はわずかに円錐形に形作られる。
【0031】
図では、閉鎖システム1は腹壁の開口5に挿入された状態が示されている。腹壁6は正常な構造である。腸7はその端部8が腹壁6にそれ自体周知な方法で縫合される。
【0032】
その外側に設けられたフランジ9で外側スリーブ3はシーリングキャップ10を把持し、プラグ2を完全に挿入したときにシャーリングキャップ10は腹壁6と接触することになり、それに接着できる。シーリングキャップ10は、体内の流体を逃す点で患者の追加安全策になっていることに注目するべきである。また、キャップ10は体の表面に露出させた短い腸7のセグメントも保護する。そうでなければ、このセグメントは機械的な刺激に対し無防備なままである。しかし、特に、シーリングキャップ10は、ここの角化した上皮、すなわち天然の液体バリアがなく、この場所で体外に露出する腸セグメントに起こるおそれのある乾燥や壊死を防ぐのに役立つ。また、このためにプラグ2または外側スリーブ3に、開口5の縁と体外に露出する腸セグメントを覆う張り出した環状フランジ9を備えれば、それで十分である。体内で膨張するバルーンの受け面として、シーリングキャップつまり通常の場合においてはフランジは、腸の末端セグメントの神経分布が保全されている場合には、使用されない。腸の推進運動が常に腸を塞ぐバルーンを体の外側に向って、即ち腹壁の内側面に向かって押し当てるためである。
【0033】
内側スリーブ4は外側スリーブ3と比べて短く構成することによって、潰れたバルーン12を折りたためる空胴11ができる。図7に図示するように、バルーン12は、バルーンをそれぞれ外側スリーブ3と内側スリーブ4に接続する2個の接続ポート13および14を有する。
【0034】
接続ポート13および14を有するバルーン12は薄膜の可膨張性のポリマーから作り、膨張したときに直径Dが対応する腸セグメントの直径dよりもかなり大きくなるようにする。直径Dは様々なサイズで作られるので、腸の直径dのサイズに合わせることができる。このことはプラグ2とスリーブ3、4の製作についてもいえる。
図1に従う例示的な実施例では、大きい方の接続ポート13はその口15でスリーブ3の外壁に引っ張られる。接続ポート14の口16は内側スリーブ4の内壁に固着する。固着は接着剤で行えるが、締め付けリングなども適している。プラグ2に固着されていることから、二重壁の構成のバルーン12を膨張させるために、内側スリーブ4に溝型通路17を設ける。
【0035】
図2では、プラグ2が開口に完全に挿入されて、シーリングキャップ10が腹壁に当たる。ホースニップル18を通して空気がバルーン12に送り込まれて、バルーンが展開する。展開の始めの状態を図2に特に取り上げている。図2では、バルーン12はすでに空胴11からある程度押し出されている。
【0036】
図3はバルーン12が完全に膨張した状態を示しているが、環状リングの形状となっており、腸7の壁に密封して当たっている。製造中のバルーン12の事前成形が膨張時の形状に反映される。環状リングは別の長さでもよいため、円筒形に構成して、さらに長いセグメントの腸を塞ぐことができる。
【0037】
展開したバルーン12は、その直径Dを最大限に膨満した腸7よりも大きくなるように構成して、膨張させたときに外側ホースの余分なバルーンの壁材が折り重なるようにするが、これは壁の厚さが非常に薄いためにほぼ毛細管サイズの折山の「小穴」を形成する。そのため、流体が折山の小穴にとどまり、溝型通路(空気通路)17を介して外部から測定する圧力は、この材料でできた壁の張力が加わらないため、腸粘膜にかかる圧力に一致する。そのため、腸の梗塞形成のリスクはこの方法で完全には防げないものの、腸壁7にかかる圧力は密封するには十分である。密封に有利な要因は、環状リングも腹壁6に向かって外側に反り、そこで腹壁6の内側の腸7に密封して押し当たることである。
【0038】
内側スリーブ4の薄型通路(空気通路)17には、空気をバルーン12に保つ逆止め弁19が取り付けられる。この弁は必要なら開いて、換気できる。接続ポート14がバルーン12の内壁を効果的に形成し、腸7で生成されるガスの逃げ道20になっている。この逃げ道20または内側スリーブ4には、前記逃げ道20から液状便が漏洩するのを防ぐカーボンフィルター21が取り付けられる。
【0039】
腸を排泄するためには、たいていの場合、バルーン12からまたは開いた弁19から空気を解放する、あるいは内側スリーブ4を外側スリーブ3から引き出せばよい。内側スリーブ4を外側スリーブ3から引き出すと、腸7を塞ぐバルーン12が圧力を失い、そのためしぼむ。こうしてバルーン12全体を外側スリーブ3の内側に引き抜くことができる。さらに外部に配設されるバルーン12が便を受けることができる。外側スリーブ3のキャップ10を腹壁6から外したら、便を簡単且つ安全に取り除くことができる。
【0040】
図4はすでに外側スリーブ3から引き抜かれており、便を受ける準備ができているバルーン12の位置を示す。
【実施例2】
【0041】
バルーン12は比較的大量の便を受けるには決して適さないため、適切に構成した回収袋23をそれに固着できるように、プラグ2およびシーリングキャップ10もしくはプラグ2またはシーリングキャップ10を構成することができる。回収袋23はシーリングキャップ10に接続できる環状フランジ24と、内側スリーブ4に配置できる蓋25とを有する。蓋25に引っ張り力をかけると、内側スリーブ4が外側スリーブ3から引き出されて、前の図3および図4に表したように、バルーン12が外側スリーブ3の内側開口から引き出される。この手順を図6に図示しており、外側スリーブ3もキャップ10の開口5またはその取付台から引き抜かれて、便を回収袋23に移すことができる。
【実施例3】
【0042】
図7は接続ポート13および14を備える事前成形したバルーン12を示す。接続ポート13および14は長さが比較的長い。それを使用する前に、すなわちプラグ2またはプラグ2のスリーブ3および4に接続する前に、接続ポート13および14は腹壁6の厚さに合わせて適切な長さに切断する。
【0043】
図8は腹壁6が厚い場合のバルーン12の埋め込みを示し、他の部分はすべて図3に図示するものと同じである。接続ポート13および14は腹壁6に合わせてただ長くしただけで、そのため、接続ポート13および14が構成要素となるバルーン12の展開できない部分は、腸7内へ達する。
【0044】
スリーブ3、4とそれらから形成されるプラグ2の長さが、腹壁6の厚さとほぼ等しいか、わずかに大きいだけであるため、またシーリングキャップ10の深さも手伝って、かろうじて腸7に届くだけの長さにすぎないことに注意するべきである。そのため、腸7の進路は完全に随意であり、腹壁6のすぐ下でねじれることさえできる。
【実施例4】
【0045】
図9に図示する構成から、ほぼドーナツ型に膨らんだバルーン12の内部にある中央の管腔26はまたカテーテル27の挿入に特によく適していることが分かる。この場合、バルーン容量28内部のわずかな過圧力が内側へ向けてほぼ放射状に中央の管腔26を押し、挿入したカテーテル27をしっかりと締めるため、ぴったり合う。カテーテル27は体外に配設されるスリーブセグメントの部位に永久的に固定でき、組織の損傷を最小にするよう適当な形状にした先端と、腸内のガスを出すための排出用の開口を備えることができる。シールに固定したカテーテル27は、そのシャフト機構が、シールを体内に挿入したときに、カテーテルが曲がらずにカテーテルシャフトで潰れたシーリングバルーンを支え、それによってシールが経肛門排泄しやすいように作る。好ましくは、カテーテル27の直径をわずか数ミリメートル(約2〜4mm)にするのが好ましい。カテーテル27は、その先端がいっぱいに膨らんだバルーン本体の遠位端からほんのわずかに突き出る。
[実施形態2]
【0046】
以下図10から図14は、自然の腸の出口で使用するのに適した実施例を表す。
【実施例5】
【0047】
この場合に使用する閉鎖システム1′は、前述したものと細かい部分が違うだけである
。例えば、接続ポート13、14はいくらか長く構成でき、それによって顕著なネック部位29は括約筋30を通過し、実際に放射状に膨らんだバルーン部分31が膨大部32を満たすことができることになる。バルーン12を膨張させると、放射状に膨らんだ部分31が膨大部32の床に押し当てられるため、この閉鎖システム1′は最適な状態でそのまま固定できる。この場合、プラグ2に固着されて、肛門のひだ34の組織に適応した形状の縦に折り曲げられたシーリングキャップ33により受け面が形成される。シーリングキャップ33には、その2つの翼部の外側に柔らかいフリースを備えることができる。
【0048】
膨張の副次的な作用として、バルーン容量28も中央の管腔26を押し付けて、そうしているうちに図11において太線で示すように、内側ホースセグメント(接続ポート)14をつぶす。中央の管腔26はそれによって大幅に密封される。とはいうものの、厚めのホース材料である内側ホースセグメント(接続ポート)14の変形能が限られているため、毛細管状の通路36が二層領域35の両側に残り、液体は逃さないが気体を逃すことができる。
【実施例6】
【0049】
図12は、この実施例1’が、腸7の洗浄を行える排液管37の挿入にも適することを示す。このために、液体、例えば水を、この排液管37から誘導するホース38によって腸7に送り込む。流出する液体を運び去るために、ホース39を排液管37の外部端に接続する、具体的には滑り込ませる。
【実施例7】
【0050】
図13の閉鎖システム1′で自然の腸の出口は密封できるが、必要なら腸の正常な排泄
ももたらすことができる。このために、中央の管腔26をリングまたは短い管セグメント40で常に開いたままにして、これを点状または直線状に内側ホースセグメント(接続ポート)14のみに固定する。このリングまたは短い管セグメント40は放射状に膨らんだバルーン部分31の軸方向の長さよりも短い。これを接続ポート13、14によって形成されるバルーン12のネック部分のみを介してリング状のプラグ2にも接続する。このリングまたはプラグ2の遠位端にホースセグメント41を装着する。リング又はプラグ2、管セグメント40とバルーン12よりも剛直なホースセグメント41は、中央の管腔26を常に開いたままにするので、自然の排便が可能である。反対に、上記排便をコントロールし、抑制あるいは後回しにさえするために、中央の管腔26、内側ホースセグメント(接続ポート又はネックセグメント)14、リング又はプラグ2、管セグメント40のうちの1つ、およびホースセグメント41に、もしくは中央の管腔26、内側ホースセグメント(ネックセグメント)14、リング又はプラグ2、管セグメント40のうちの1つ、またはホースセグメント41に、第2の別に膨張できるバルーン42の形で流入可能なシーリングエレメントを設け、例えばこれを、関係する前記の各部材2、14、26、40、41の内面に接着剤などで固着し、別のラインを介して充満したり空にしたりすることができる。排便の刺激も可能にするために、追加ライン43を設け、例えばリング又はプラグ2から中央の管腔26に通して、その端で例えば管セグメント(フロントリング)40に繋止できる。この追加ライン43を通して、腸を洗浄するために例えば水や別の液体を導入できる。
【0051】
この実施例1′で、腹の形状に事前成形するバルーン領域31の長さLがその外径Dよ
りも短い場合、バルーン12内部に適度な過圧力があることを考えると、中央の管腔26を開いたままにするためのリング40は必要ない。この場合理想に近いドーナツ型の形状が作られるので、常に中心26(中央の管腔)が開いているためである。
【実施例8】
【0052】
発明の閉鎖システム1′の別のアプリケーションを図14に図示する。ここでは、バルー
ン12は腸7に完全に挿入せずに、一部のみを挿入して、ちょうど括約筋30のレベルに配置する。それから、バルーン容量28内部の圧力を可変に上下することによって、括約筋30を伸ばすことができ、反対の閉塞反射を引き出せる。この過程を繰り返すことによって、括約筋30を定期的に運動させて、能動的に便失禁を減らすことができる。患者の正常な身体の動きの間(歩行、座る)、バルーン12がずれないように安全策を高めるために、バルーン12の経肛門セグメントをテーパーで適切に事前成形するか、または中央を細くできる(経肛門部分で直径約2〜5cm)。
【0053】
シーリング装具を患者の痔の出血のセルフケアやセルフイニシエーションに使えるようにするために、本体に図9に図示するものと類似したイニシエーション・排液エレメントを補足し、好ましくはスリーブの終端セグメントに固定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、人工肛門を形成した人の当該人工肛門を医療的に、安全に且つ衛生的に管理することができると共に、機能の低下した自然肛門の機能を補助的に強化することができ、医療産業や介護産業の分野での利用に供される。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】腹壁の開口に埋め込む過程中の腹壁と閉鎖システムの縦断面である。
【図2】バルーンを展開する過程が始まった時点の埋め込まれた閉鎖システムの断面を示す。
【図3】バルーンを膨張させた状態の閉鎖システムを示す。
【図4】内側スリーブとバルーンを引き出された状態の閉鎖システムを示す。
【図5】回収容器の取り付け準備ができた状態の閉鎖システムを示す。
【図6】バルーンを含めて内側スリーブを引き出し、回収容器が便を受ける予定の状態の閉鎖システムを示す。
【図7】ホースコネクタを付け事前成形したバルーンの断面である。
【図8】厚めの腹壁に埋め込み、細長いホースコネクタを付けたバルーンを示す。
【図9】カテーテルを挿入した状態の図8のバルーンに対応する発明のある実施例を示す。
【図10】自然の腸の出口での使用に最適な発明の別の実施例を示す。
【図11】図10をXI−XIの線に沿って切断した断面である。
【図12】図10および11で図示した実施例に関係し、排液管を受けるのに適したある種類の構造を示す。
【図13】発明の別の改造実施例を図示する。
【図14】括約筋を運動させるために本発明を使用したところを図示する。
【符号の説明】
【0056】
dは腸の直径
Dはバルーン内径
Lはバルーン長さ
1,1′は閉鎖システム
2はプラグ
3はスリーブ
4はスリーブ
5は腹壁の開口
6は腹壁
7は腸
8は腸の端部
9はフランジ
10はシーリングキャップ
11は空洞
12はバルーン
13は接続ポート
14は接続ポート
15はスリーブ3の口
16はスリーブ4の口
17は溝型通路(空気通路)
18はホースニップル
19は逆止弁
20はガス逃げ道
21はフィルター
23は回収袋
24は環状フランジ
25は蓋
26は管腔
27はカテーテル
28はバルーン容量
29はネック部分
30は括約筋
31はバルーン領域(部分)
32は膨大部
33はシーリングキャップ
34は肛門のひだ
35は二層領域
36は毛細管状通路
37は排液管
38は水ホース
39はホース
40は短い管セグメント
41はホースセグメント
42は第2バルーン
43は追加ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自然肛門または人工肛門の閉鎖システムが、二次元の表面をもつホースセグメントから形成されるほぼドーナツ型の構造を有する可膨張性バルーンで、ホースが裏返り、それによってその両端(13、14)がたがいにほぼ同軸上に延びるとともに、(それぞれが)各スリーブに接続される可膨張性バルーンを特徴とする閉鎖システム。
【請求項2】
前記バルーン(12)を2個の接続ポート(13、14)または両端をもつように事前成形することを特徴とする請求項1に記載される閉鎖システム。
【請求項3】
前記バルーン(12)の前記接続ポート(13、14)または両端を、裏返したホースセグメントの端領域(13、14)のそれぞれもしくは両方がほぼ一定の断面である、すなわち一定の断面長さとなるように事前成形することを特徴とする請求項1または2に記載される閉鎖システム。
【請求項4】
前記バルーン(12)の前記接続ポート(13、14)または両端を、裏返したホースの両端を通る断面が前記端領域の別の円周長さに対応する別の長さであるように事前成形することを特徴とする前述の請求項のいずれかに記載される閉鎖システム。
【請求項5】
裏返したホースを、互いに同軸上にある両端に対して遠位になるその前部が、膨張させた状態で縁領域のない緩やかな曲線の輪郭を呈するように事前成形することを特徴とする前述の請求項のいずれかに記載される閉鎖システム。
【請求項6】
前記バルーンを、膨張させた状態で、腸セグメントの直径dより大きい直径Dをもつように事前成形することを特徴とする前述の請求項のいずれかに記載される閉鎖システム。
【請求項7】
スリーブの長さが、各場合で膨張したバルーンの対称軸と同軸で測定したバルーンの長さよりも短く、好ましくはバルーンの長さの半分よりも短く、特に好ましくはバルーンの長さの三分の一よりも短いことを特徴とする請求項6に記載される閉鎖システム。
【請求項8】
潰れたバルーン(12)を、プラグ(2)に設けられて腸の内部の方向を向いている空胴(11)に収容することを特徴とする前述の請求項のいずれかに記載される閉鎖システム。
【請求項9】
前記バルーン(12)の2個の接続ポート(13、14)をそれぞれその口で前記プラグ(2)に接続することを特徴とする請求項8に記載される閉鎖システム。
【請求項10】
前記プラグ(2)が入れ子式に取り付けることができる2個のスリーブ(3、4)から構成され、各接続ポート(13、14)の口(15、16)を前記スリーブ(3、4)の各々に接続することを特徴とする請求項8または9のいずれかに記載される閉鎖システム。
【請求項11】
外側スリーブ(3)に接続できる口(15)が前記外側スリーブ(3)に合う径をもち、内側スリーブ(4)に接続できる口(16)が前記内側スリーブ(4)に合う径をもつことを特徴とする請求項8から10のいずれかに記載される閉鎖システム。
【請求項12】
前記バルーン(12)をスリーブから、好ましくは前記外側スリーブ(3)から引っ張ることを特徴とする前述の請求項のいずれかに記載される閉鎖システム。
【請求項13】
スリーブ、特に前記内側スリーブ(4)が空気の通路(17)を具備することを特徴とする前述の請求項のいずれかに記載される閉鎖システム。
【請求項14】
前記空気の通路(17)が止め弁(19)を具備することを特徴とする請求項13に記載される閉鎖システム。
【請求項15】
フィルター、特にカーボンフィルター(21)がスリーブ、好ましくは前記内側スリーブ(4)内に配設される、もしくは配設できることを特徴とする前述の請求項のいずれかに記載される閉鎖システム。
【請求項16】
前記プラグ(2)および一以上のスリーブもしくは前記プラグ(2)または一以上のスリーブがシーリングキャップ(10)に接続できることを特徴とする前述の請求項のいずれかに記載される閉鎖システム。
【請求項17】
前記シーリングキャップ(10)が前記プラグ(2)に隣接接触で接続されることを特徴とする請求項16に記載される閉鎖システム。
【請求項18】
前記シーリングキャップが折りたたみ構造であることを特徴とする請求項16または17に記載される閉鎖システム。
【請求項19】
前記シーリングキャップ(10)および前記プラグ(2)もしくは前記シーリングキャップ(10)または前記プラグ(2)が、回収袋(23)に接続できることを特徴とする請求項16から18のいずれかに記載される閉鎖システム。
【請求項20】
回収容器(23)が前記シーリングキャップ(10)および前記内側スリーブ(4)に接続できることを特徴とする前述の請求項16から19のいずれかに記載される閉鎖システム。
【請求項21】
前記バルーンが薄壁のポリマーでできていることを特徴とする前述の請求項のいずれかに記載される閉鎖システム。
【請求項22】
前記ポリマーがポリウレタン、ポリウレタンとポリ塩化ビニルのブレンド、または同様なポリウレタンベースの材料であることを特徴とする請求項21に記載される閉鎖システム。
【請求項23】
リング状のエレメントを裏返ったホースセグメントの中央の管腔に固定し、好ましくは前記固定をバルーンの動きの自由を損なわないように円周上の細い線に沿ってのみ行うことを特徴とする前述の請求項のいずれかに記載される閉鎖システム。
【請求項24】
前述の請求項のいずれかに記載される閉鎖システムが、裏返ったホースセグメントの中央の管腔に、もしくは該当する場合それに近接するホース領域に配設される外部から制御可能なシーリングエレメント、特に個々に膨張可能なバルーンの形のシーリングエレメントであることを特徴とする閉鎖システム。
【請求項25】
チューブ、カテーテルなどを裏返ったホースセグメントの中央の管腔に挿入できることを特徴とする前述の請求項のいずれかに記載される閉鎖システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2006−528012(P2006−528012A)
【公表日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−520801(P2006−520801)
【出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【国際出願番号】PCT/EP2004/008256
【国際公開番号】WO2005/009292
【国際公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(505414919)
【Fターム(参考)】